Semiconductor Portal

AIが牽引、地政学インパクトの渦中で販売高最高の半導体市場:2024年

2024年も残りわずか、半導体関連の動きを振り返ってみる。AI(人工知能)関連需要が大きく引っ張っていく一方、引き続く米中摩擦はじめ地政学インパクトの渦中に置かれた2024年の半導体市場の様相である。世界半導体販売高で見ると、出だし低迷気味であったが、特に半ば以降増勢に転じて、月次最高を更新、年間販売高がこれまで最高の2022年を上回るのは確実な情勢である。半導体業界の景観も、AIをリードするNvidiaはじめ、TSMCおよびSK Hynixなどの好調さの一方、長年の業界の盟主、インテルの厳しい状況と大きな変容が見られている。新しい半導体市場圏としてインドおよび東南アジアの国々の取り組みが始まって、今後の進展に注目するところである。

≪2024年の動きを振り返る≫

2024年の半導体業界についてこの1年の本欄のタイトル、計52件を分類する形で振り返って以下示しており、次の5つに分けて数字は項目数である。
【世界半導体販売高関連】 12件
【半導体市況関連】 5件
【AI牽引の市場&技術関連】 9件
【米国の半導体製造強化および米中摩擦関連】 17件
【各社の戦略的取り組み】 9件

1年前の2023年の締めでは、次の通り分類してあらわしている。
【世界半導体販売高関連】 12件
【半導体市況関連】 7件
【米国の対中国規制関連】 16件
【各国・地域半導体強化関連】 9件
【AI半導体急伸はじめ技術&市場関連】 8件

以下、分類ごとに内容を示している。

【世界半導体販売高関連】 12件

米国・Semiconductor Industry Association(SIA)からの月次世界半導体販売高データ関連が、以下の通りである。

11月半導体販売高、15か月ぶり前年比増;CES 2024主として半導体関連」 (1月15日)
2023年の世界半導体販売高8.2%減;TSMC熊本オープン&第2工場発表関連」 (2月13日)
1月の半導体販売高、前年比15.2%増;対中規制さらに強化要請等の動き」 (3月11日)
2月の世界半導体販売高、前年比16.3%増;台湾地震の半導体への影響」 (4月8日)
1-3月四半期半導体販売高、前年比15.2%増;対中輸出規制措置の波紋」 (5月13日)
世界半導体販売高、本年初前月比増;Nvidia主導、Computex AI熱気」 (6月10日)
5月半導体販売高、増勢高め2年前の水準;回復材料など今後への動き」 (7月8日)
4-6月半導体販売高、前四半期比増加へ;インテルの今後への備え関連」 (8月13日)
7月半導体販売高、AmericasがChina上回る;SEMICON Taiwanでの注目」 (9月9日)
8月販売高が過去最高を記録、一方警戒感も;新興半導体圏の胎動関連」 (10月7日)
7-9月販売高が前Q比10.7%増、9月販売高史上最高;Trump 2.0反応関連」 (11月11日)
10月半導体販売高、さらに月次最高更新;インテルCEO退任を巡る動き」 (12月9日)

2021年、2022年と相次いで年間半導体販売高の最高を更新して、昨年、2023年は減少に転じた経緯であるが、2024年はどうなるかということで、2022年以降の推移で照らし合わせながら見ている。
以下、米国・SIAの月初の発表時点の販売高、そして前年同月比および前月比が示されている。
2024年の出だし、1月は$47 Billion台の販売高であるが、2022年の前半のように$50 Billion台が続けられるかどうか、以後の推移に注目していくことになる。2月は$46 Billion台に下げたが、反転盛り返しへの期待である。3月も僅かながら下げて、反転待ちである。そして、4月に本年初めての前月比増加、5月には増勢をさらに高めて、2022年半ば以来の販売高、および前年同月比伸び率となっている。そして、6月はほぼ$50 Billionであるが、この大台を本年後半に突破し続けられるかどうか、2022年と見比べての注目となる。7月は$51.32 Billionと2022年の月次最高に次ぐ水準である。2022年から大きく踏み上がれるかどうか、全体的な市場拡大の到来如何にかかってくる。8月は$53.12 Billionと、以下で見ると、月間最高値を示している。本年後半の増加踏み上げとなるか、引き続き注目である。そして9月、$55.32 Billionと、文句なしの史上最高となり、この勢いが続けば、2022年の年間販売高更新も視界に入ってくる可能性がある。
10月は、$56.88 Billionとさらに最高更新、2022年の年間販売高更新が確実となっている。AIが圧倒的に引っ張る現下の情勢のもと、半導体市場特性の見極めを要するところである。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
2022年 1月 
$50.74 B
26.8 %
-0.2 %
2022年 2月 
$50.04 B
26.1 %
-1.4 %
2022年 3月 
$50.58 B
23.0 %
1.1 %
2022年 4月 
$50.92 B
21.1 %
0.7 %
2022年 5月 
$51.82 B
18.0 %
1.8 %
2022年 6月 
$50.82 B
13.3 %
-1.9 %
2022年 7月 
$49.01 B
7.3 %
-2.3 %
2022年 8月 
$47.36 B
0.1 %
-3.4 %
2022年 9月 
$47.00 B
-3.0 %
-0.5 %
2022年10月 
$46.86 B
-4.6 %
-0.3 %
2022年11月 
$45.48 B
-9.2 %
-2.9 %
2022年12月 
$43.40 B
-14.7 %
-4.4 %
$584.03 B
 
→史上最高更新
 
2023年 1月 
$41.33 B
-18.5 %
-5.2 %
2023年 2月 
$39.68 B
-20.7 %
-4.0 %
2023年 3月 
$39.83 B
-21.3 %
0.3 %
2023年 4月 
$39.95 B
-21.6 %
0.3 %
2023年 5月 
$40.74 B
-21.1 %
1.7 %
2023年 6月 
$41.51 B
-17.3 %
1.9 %
2023年 7月 
$43.22 B
-11.8 %
2.3 %
2023年 8月 
$44.04 B
-6.8 %
1.9 %
2023年 9月 
$44.89 B
-4.5 %
1.9 %
2023年10月 
$46.62 B
-0.7 %
3.9 %
2023年11月 
$47.98 B
5.3 %
2.9 %
2023年12月 
$48.66 B
11.6 %
1.4 %
$518.45 B
 
2024年 1月 
$47.63 B
15.2 %
-2.1 %
2024年 2月 
$46.17 B
16.3 %
-3.1 %
2024年 3月 
$45.91 B
15.2 %
-0.6 %
2024年 4月 
$46.43 B
15.8 %
1.1 %
2024年 5月 
$49.15 B
19.3 %
4.1 %
2024年 6月 
$49.98 B
18.3 %
1.7 %
2024年 7月 
$51.32 B
18.7 %
2.7 %
2024年 8月 
$53.12 B
20.6 %
3.5 %
2024年 9月 
$55.32 B
23.2 %
4.1 %
2024年10月 
$56.88 B
22.1 %
2.8 %
$501.91 B
 
(1-10月総計)


【半導体市況関連】 5件
各国・地域の自己完結の半導体サプライチェーンを目指す動きが、それぞれ展開されている。インド、東南アジアの一大新興半導体圏を目指す動き、そして米国の後工程を固める動き、など今後の注目である。

底打ち漸増&新年回復期待の半導体市場、AI半導体が急伸牽引:2023年」 (1月4日)
年末&年初の半導体関連:市場好転の見方、政府補助金支給、AI搭載対応」 (1月9日)
各国の半導体サプライチェーン関連を巡る現時点それぞれの動きから」 (3月18日)
それぞれの半導体サプライチェーン構築:中国、マレーシア、ロシア」 (6月3日)
米国はじめ組立・実装・テストを固める動き;AI市場争奪に向けた現状」 (7月16日)


【AI牽引の市場&技術関連】 9件
AIに絞られた内容から以下の取り上げであるが、本年全体にわたってAIの何らかの色合いが見られるというのが実態である。AI規制がいろいろ謳われるなか、このまま熱気がいつまで続くか、見極めを要するところである。

AI-drivenの様相、2件の大型M&A:米国のNSTCコンソーシアム運営機関」 (1月22日)
AI半導体続く熱気、関連各社の注目の動き、今後への視点&取り組み」 (1月29日)
AI半導体を巡る戦略的な動き:Nvidia、OpenAI、SK HynixとTSMC連携…」 (2月19日)
AI一色に覆われた感のMobile World Congress 2024、半導体の視点から」 (3月4日)
AIの熱気2点:Nvidiaの抜きん出た業績、マイクロソフトの戦略急展開」 (5月27日)
鈍い半導体売上げ回復の中、一層強まるAI(人工知能)傾斜の市場空気」 (6月24日)
難路に向けたAIの各社の取り組みから:AI法、TPUs採用、値上げ、...」 (8月5日)
AI需要を巡る半導体市場の見方および各社の活発な戦略的動きの現時点」 (8月26日)
AIインパクトの週:ノーベル賞、TSMCとSamsung業績対比、新AI半導体」 (10月15日)


【米国の半導体製造強化および米中摩擦関連】 17件
米中摩擦の引く続く応酬は敏感にならざるを得ないため、取り上げの件数が多くなっている。バイデン政権での対中国輸出規制および米国内半導体製造強化の路線が以下の通り進められてきているが、トランプ次期政権でどうなっていくか、波乱含みの現状である。

米国半導体製造強化関連の進展および米中摩擦の各国への影響の現況」 (2月5日)
米政府のマイクロエレ国家戦略&インテルへの補助金:Nvidia GTCから」 (3月25日)
米国制裁下の中国の動き:Semicon China、インテル/AMD排除、製造対応」 (4月1日)
米Chips Act助成、TSMCおよびSamsungへ:embedded world 2024関連」 (4月15日)
米国政府補助金が出揃いゆく中、米中摩擦の現下のインパクト関連」 (4月22日)
米国政府の対中国規制の効果の評価&見方の中、マイクロンに補助金」 (4月30日)
一層の引き締め強化の米国、自立化に向かう中国、その流れの現時点」 (5月20日)
対中投資規制、新たな米中摩擦景観;韓国およびSamsungの追撃の動き」 (7月1日)
米中摩擦にまた新たな局面;米国の対中規制強化の動き、トランプ発言」 (7月22日)
米国のCHIPS and Science Act施行から2年、現状および各国への波及」 (8月19日)
AI牽引市況の中、米国の対外摩擦および半導体製造強化の現下の動き」 (10月21日)
米中最前線、中国市場の最先端node品の実態関連:CHIPS法の動き更新」 (10月28日)
TSMC、米中の狭間で続く揉まれる動き;Apple、生成AI対応PC新製品」 (11月5日)
米政府の先端半導体対中出荷停止の動き、Trump 2.0への反応が続く中」 (11月18日)
米政権交代に向けた半導体関連の動き;過熱問題の中のNvidia業績発表」 (11月25日)
米国政府、インテルへの助成支給決定、対中国HBM輸出新規制の動き」 (12月2日)
年末の注目懸案から:CHIPS法、Arm vs. Qualcomm、インテル再構築」 (12月23日)


【各社の戦略的取り組み】 9件
半導体および巨大IT各社の取り組みに注目する以下の内容であるが、半導体サプライヤランキングの圧倒的首位に躍り出るNvidiaの一方、苦境のインテルと、様変わりの景観の現時点である。

インテルIFS Direct Connectから、米政府補助金、AI & Foundry戦略」 (2月26日)
台湾、韓国および中国それぞれ、主要プレイヤーの覇権への凌ぎ合い」 (5月7日)
アップルWWDC 2024、AIを巡る波紋;米国の対中国&対ロシア制裁関連」 (6月17日)
Biden氏大統領選撤退の波紋の中、Nvidiaの中国向け次世代AI半導体」 (7月29日)
Nvidiaの5-7月業績発表を巡る動き関連;Hot Chips 2024での注目」 (9月2日)
iPhone 16はじめAppleの発表関連;「SEMICON India 2024」初開催」 (9月17日)
苦境のインテル、製造分離など再構築、米国官民の支援、世界の注目」 (9月24日)
続くインテル・インパクト:Qualcommの買収への反応、部門売却の沙汰」 (9月30日)
新たな取り組み:Willowチップ、自前開発、IBMのCPO、IBM/Rapidus」 (12月16日)

以上、所感寸描のタイトルを分類して示したが、こんどは、この1年の半導体市場関連の注目の動きを、月ごと取り出して数項目にまとめたものを、以下の通り示す。

2024年1月
*米国、中国はじめ年初に非常警戒措置解除方針、3年あまりぶりコロナ前に回帰
*CHIPS and Science Actによる米国政府の補助金支給が、Microchip社に対して
*「Consumer Electronics Show(CES)」がLas Vegasで開催され、「AI」「モビリティー」を主テーマとして多彩な展示
*米国政府が、National Semiconductor Technology Center(NSTC)運営に向けたNational Center for the Advancement of Semiconductor Technology(Natcast)を発表

2024年2月
*米国の半導体装置輸出規制は「公平な競争条件」を確保する上で見直しが必要、と米国・SIAが米国政府に求める
*米国・SIA発表、2023年の年間半導体販売高が$526.8 billion、史上最高を記録した2022年から8.2%減
*HBM3メモリで先行するSK HynixとTSMCが連携、AI向けHBM4の共同生産にもっていく動き
*インテルが、再建戦略の重要要素に掲げるファウンドリー事業のイベント、IFS Direct Connectを開催

2024年3月
*Mobile World Congress 2024、AI一色に覆われた感、AIパソコン、AIスマホ、そしてAI-RANアライアンスの取り組み
*インドが、同国内半導体工場建設承認へ踏み出す
*CHIPS Actによる米国内半導体製造強化支援が、インテルに対して助成金と融資が行われ、最大の規模
*Nvidiaのイベント、GTC(GPU Technology Conference)が開催、次期AIグラフィックス・プロセッサ、Blackwellが前面

2024年4月
*米国政府のCHIPS and Science Actによる補助金支給が、TSMC、Samsung、そして米国のマイクロンに
*Semicon Chinaで、中国国内メーカー一色の様相深まる
*中国政府が、パソコンなどの政府調達で搭載する半導体からインテル、AMDなど米国企業の製品を排除する指針
*韓国・サムスン電子の1−3月四半期業績が7四半期ぶりの増益、市況反転盛り返しの期待

2024年5月
*スーパーコンピュータTOP500ランキング・トップ10で、今回も中国勢が見られず
*米国政府の対中国規制強化がさらに強まる動き、中国からの輸入半導体に対する関税が2025年までに25%から50%に
*中国では、外国製半導体から中国製に切り替える要請
*AI(人工知能)半導体のNvidiaの2−4月四半期業績、売上高が前年同期比3.6倍、純利益が同7.3倍と抜きん出た内容

2024年6月
*中国が、第3の7兆円ファンドを立ち上げ、AI(人工知能)半導体への対応強化を図る狙いとの見方
*Nvidiaが大きく引っ張るAI半導体の熱気旋風は、Computex 2024(台北)にて引き続き吹き荒れ
*アップルのAIバージョン、「Apple Intelligence」発表
*Nvidiaの株式時価総額が世界首位とAIに一層傾斜する市場の空気

2024年7月
*米国政府が、AIおよびハイテク分野の中国企業への投資計画の事前通知を義務付ける規則案を発表
*米国はじめ半導体の後工程、すなわち組立・実装・テストを固める動き
*米国政府の対中国輸出規制一層強化、我が国とオランダの半導体製造装置取り上げか
*Nvidiaの中国向け次世代AI半導体、米国の規制をかいくぐれる仕様

2024年8月
*AIの熱気の一方、世界各国・地域で出始めている法規制の議論はじめ見定めを要する関門
*厳しい事業運営のインテル、今後に向けた備え、取り組みの動きがいくつか
*米国のCHIPS and Science Act施行から2年、助成の支給が進められ、Texas Instrumentsに対する発表
*AI半導体にうまく乗っかかって好業績をあげている各社が、限られて目立つ状況

2024年9月
*Nvidiaの5-7月四半期の業績、売上高および利益が前年比2倍超、あまりに期待過剰で株価が一時安
*米国・SIA発表の7月世界半導体販売高、地域別でAmericas(米州)がChinaを上回る、5年ぶり
*Appleが、iPhone 16はじめ新製品発表、A18アプリケーションプロセッサなど採用
*新興半導体圏の構築を目指しているインドにおいて、『SEMICON India 2024』が初開催
*事業運営の難局が相次いで伝えられているインテル、製造分離など戦略的再建計画、官民の支援

2024年10月
*米国・SIA発表の8月世界半導体販売高が$53.12 billion、少なくとも2022年以降では単月最高を記録
*人工知能(AI)関連で物理学賞および化学賞と、ノーベル賞の話題もちきりの中、AMDはじめ新しいAI半導体発表
*引き続く米中摩擦の応酬:中東のU.A.E.への先端AI半導体販売規制、中国当局系団体によるインテル製品が安全保障上の脅威とする発表
*中国・HuaweiのAscend 910Bの評価において、TSMC製のチップが見つかり、米国の対中国輸出規制に抵触する可能性

2024年11月
*Appleが3日連続で生成AI対応PC新製品を発表、最新の半導体「M4」搭載
*米国・SIA発表の9月世界半導体販売高が$55.3 billion、月間史上最高を記録、7−9月四半期も大きな伸び
*「米国第一」のトランプ前大統領が返り咲き当選、中国では、次期政権の高関税を予想して、米国製半導体の輸入が急増
*米国政府がTSMCに対し、7-nm以降先端半導体の中国向け出荷停止命令、一方、TSMCアリゾナ工場向けCHIPS法助成支給最終決定発表

2024年12月
*米国政府のCHIPS and Science Actによる助成金支給、インテルに対する最終決定発表
*米国・SIA発表の10月世界半導体販売高が$56.9 billionと、前月に続いて月次最高。2024年年間販売高が史上最高更新確実な勢い
*インテルのCEO、Pat Gelsinger氏退任発表、当座2人の暫定CEOsが引き継ぎ、次のCEO人選に向けた動き
*CHIPS and Science Actの助成金支給、政権交代を控え、予備契約から正式本契約を得る各社の動きが相次ぐ

来る新年、2025年はどうなっていくか、推移&展開に引き続き注目である。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□12月24日(火)

米国1強、K字もようの本年の世界経済の締めがあらわされている。

◇世界経済K字回復再び 米国1強、各国に通貨安リスク―Review2024(中) (日経 電子版 05:00)
→世界経済は米国とその他の二極化が鮮明な「K字回復」の様相だ。世界のマネーをひき付け、2024年は米国株高・米ドル高が加速した。市場では米国例外主義が語られる。米国以外の大国、欧州・中国の両方の景気が弱い近年では経験のない状況だ。マネー集中の副作用や逆流リスクへの備えも欠かせない。

今週4日の取引、半導体などハイテク株が買われて上げが続いたが、最後は下げて締めた今週の米国株式市場である。

◇NYダウ、続伸し66ドル高 半導体などハイテク株に買い (日経 電子版 06:54)
→23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、前日比66ドル69セント(0.2%)高の4万2906ドル95セントで終えた。クリスマスの祝日を控えて市場参加者が少なくなるなか値動きが大きくなりやすく、方向感に欠ける展開が続いた。
半導体などハイテク株の上昇が相場の支えとなった。個別銘柄では、米半導体大手エヌビディアが4%高となった。ダウ平均の構成銘柄ではないが、半導体のクアルコムも3%上昇した。英半導体設計のアーム・ホールディングスとのライセンス契約を巡る訴訟でクアルコム側を優勢とする評決が下り、好感した買いが入った。アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は5%高、メタは2%高で引けた。

□12月25日(水)

◇NYダウ4日続伸、390ドル高 ハイテク株がけん引 (日経 電子版 04:27)
→24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続伸し、前日比390ドル(1%)高の4万3297ドルで終えた。クリスマスの前日で午後1時までの短縮取引となり新たな材料も少ない中、引き続き主力テック株への買いが進んだことが全体をけん引した。

来年の中国経済、米国の関税による押し下げが見込まれている。

□12月26日(木)

◇中国経済、2025年4.4%成長予測 米関税が押し下げ要因 (日経 電子版 15:00)
→日本経済新聞社と日経QUICKニュースがまとめた中国エコノミスト調査によると、中国の2025年の実質国内総生産(GDP)伸び率の予測平均値は4.4%だった。トランプ次期米政権の追加関税の影響で成長鈍化が鮮明になる。輸出を下支えするため、当局が人民元安を一定程度容認するとの見方も出ている。
24年の成長率の予測平均値は4.9%で、政府が掲げる「5%前後」の範囲内だった。

□12月27日(金)

◇NYダウ、27ドル高で推移 長期金利の上昇一服は支え (日経 電子版 05:58)
→26日の米株式市場でダウ工業株30種平均は一進一退となっている。15時現在は前営業日の24日に比べ27ドル97セント高の4万3325ドル00セントで推移している。米連邦準備理事会(FRB)が来年の利下げを慎重に進めるとの見方が主力株への売りを促している。半面、午後になって米長期金利の上昇が一服したのは米株相場の下値を支えている。

□12月28日(土)

◇NYダウ6日ぶり反落、333ドル安 金利高でハイテク売り (日経 電子版 06:36)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6営業日ぶりに反落し、前日比333ドル59セント(0.76%)安の4万2992ドル21セントで終えた。米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が強まった。年末が近づくなか、ハイテク関連を中心に利益確定や持ち高調整の売りが広がった。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連】

引き続く米中摩擦、新年を控えるタイミングで、中国製の成熟プロセス、すなわちレガシー半導体に対して調査の目が入ろうとしている。米国の次期政権を間近に控えて、どう継がれていくか。半導体の世界のリーダーシップを謳い続ける米国のスタンスに目が離せないところである。

◇US plans to blacklist company that ordered TSMC chip found in Huawei processor, source says (12月21日付け South China Morning Post)
→*ビットコイン採掘装置サプライヤーであるBitmainの関連会社であるSophgoは、Entity Listに載せられる手続き中である。
 *ファーウェイの人工知能(AI)プロセッサーにTSMC製チップが不正に組み込まれた問題で、バイデン政権は中国企業のブラックリスト入りを計画している。
  この中国企業、Sophgoは、ファーウェイのAscend 910Bマルチチップシステムに搭載されていたチップが、TSMCに発注したものと一致したことから注目を集めた。

◇U.S. launches new probe into legacy Chinese chips as tech pressure on Beijing escalates (12月23日付け CNBC)
→*バイデン政権は月曜23日、自動車から家庭用品、防衛システムまで、あらゆるものに使われる可能性のある中国のレガシー半導体について、新たな調査を開始したと発表した。
 *ホワイトハウスは、中国がチップ業界に対して「非市場的な政策や慣行、また産業的な標的化を日常的に行っている」と述べた。
 *この調査は、中国の「半導体製造に投入される炭化ケイ素(SiC)基板やその他のウェハーの生産に関する行為、政策、および慣行」を調査するものである。

◇SIA Statement on Biden Administration’s Launch of Section 301 Trade Investigation Related to China’s Targeting of the Semiconductor Industry for Dominance (12月23日付け SIA Latest News)
→米国・Semiconductor Industry Association((SIA:半導体工業会)は本日、Biden政権が半導体業界の支配を狙う中国の行為、政策および慣行に焦点を当てた301条貿易調査を開始することを決定したことについて、SIAのPresident and CEO、John Neuffer氏の以下の声明を発表した。「中国は世界の半導体業界の主要プレーヤーであり、北京は、供給側と需要側の両方の措置を通じて、中国における 「独立した制御可能な」半導体業界の発展に取り組んでいる。最近の中国における米国製チップの調達制限の呼びかけや、米国製チップは『もはや安全でも信頼できるものでもない』との主張は、特に問題である。」
「日常的な家電や自動車から軍事システムやAIデータセンターに至るまで、我々の経済全体に半導体が普及していることを考慮し、我々は米国通商代表部(USTR)に対し、慎重に進め、プロセス全体を通じて産業界と緊密に協力するよう強く要請する。また、ワシントンの指導者たちは、国内の製造およびパッケージング能力を構築し、研究と設計のエコシステムを強化し、国内外でメイド・イン・アメリカ・チップの新たな需要を創出する、積極的かつ積極的なアジェンダを追求すべきである。」
「米国が世界の経済的・技術的リーダーであり続けるためには、半導体技術をリードし、チップ生産に使用される重要な上流材料の弾力的なサプライチェーンを構築しなければならない。米国の半導体サプライチェーンの弾力性を維持し、米国の半導体エコシステムが今後何年にもわたって世界のリーダーであり続けるよう、トランプ次期政権および新議会と協力することを楽しみにしている。」

◇US to probe China chips, setting up Trump for tariffs (12月24日付け Taipei Times)
→米国大統領、Joe Biden氏の政権が、米国次期大統領、Donald Trump氏に中国製半導体に新たな関税をかけるかどうかの選択肢を提示する調査を開始する。
White Houseは昨日、中国製のいわゆるfoundational chips―レガシーあるいはmature-node半導体としても知られる―について調査を開始すると発表した。

◇米政府、中国製の旧世代半導体を調査 「不当廉売」懸念 (12月24日付け 日経 電子版 06:00)
→バイデン米政権は23日、中国製の旧世代型「レガシー半導体」について、中国政府による支援や不当廉売に関する実態調査を始めたと発表した。レガシー半導体は付加価値は低い一方で防衛・医療・自動車など幅広く利用されている。中国製が不当な価格で販売シェアを高めることに歯止めをかける狙いだ。


【CHIPS Act関連】

米国政府の国内半導体製造強化に向けたCHIPS and Science Actによる助成の本契約確定の動きが続いている。Samsung、TIおよびSK Hynixに対して授与されている。これも今後の進捗&推移に注目である。

◇Samsung, Texas Instruments Finalize Chips Act Awards Deals―Samsung, TI secure CHIPS Act funding for US plants (12月20日付け Yahoo/Bloomberg)
→サムスン電子とテキサス・インスツルメンツは、CHIPS and Science Actの下で数十億ドルの政府支援を受けることで最終合意した。この資金は、テキサス州とユタ州における半導体工場の建設を支援し、米国のチップ生産を強化することになる。

◇US finalizes $4.7 bil. in CHIPS Act subsidy to Samsung Electronics (12月22日付け The Korea Times (Seoul)/Yonhap News Agency)
→米商務省は金曜20日、サムスン電子に対し、国内半導体生産の強化に努める韓国の該大手ハイテク企業のテキサス州中部でのチップ製造投資を支援するため、最大$4.745 billionの直接資金を供与したと発表した。

◇CHIPS for America: Successes, Misconceptions and What Next?―CHIPS for America Act has driven major projects (12月23日付け EE Times)
→1)*EE TimesはSanjay Kumar氏と面会し、CHIPS Actの授与プロセス、授与にまつわる成功と誤解について話を聞いた。
  *ちょうど3年前、米国はCHIPS for America Actのために$52 billionの資金提供を承認し、翌年2022年のCHIPS and Science Actを通じてこれを法制化した。これは、企業が地域の製造業のサプライチェーンを支援し、将来の人材を育成することを奨励するものである。今月初め、米国CHIPSプログラム・オフィス(商務省)の元シニア・ディレクターで、大規模な半導体製造、パッケージングおよびサプライ・チェーン・プロジェクトの投資評価と交渉を指揮し、$30 billion近い設備投資に貢献したサンジャイ・クマール氏に話を聞いた。
 2)CHIPS for America Actは、米国の半導体製造を促進するための資金を授与し、GlobalWafers America、Bosch、Micron、CoherentおよびSkyWater Technologyなどである。テキサス州、ミズーリ州およびカリフォルニア州での取り組みにより、数千人の雇用創出と先端技術の国内サプライチェーン強化が期待されている。

◇Samsung inks deal for US CHIPS funds―SEMICONDUCTORS: Samsung and Texas Instruments would receive US$4.75 billion and US$1.6 billion respectively to build one chip factory in Utah and two in Texas (12月23日付け Taipei Times)
→サムスン電子とテキサス・インスツルメンツ(TI)は、米国内の半導体工場新設のために数十億米ドルの政府支援を得る最終合意を完了、ジョー・バイデン米大統領のCHIPS and Science Actイニシアチブの主要一部分を固めた。

◇韓国サムスン・SK、米政府が半導体補助 8000億円 (12月23日付け 日経 電子版 17:02)
→バイデン米政権は23日までに、韓国半導体大手のサムスン電子とSKハイニックスに計約$5.2 billion(約8100億円)の補助金を給付すると発表した。両社は補助金を使い、人工知能(AI)などに使われる先端半導体の製造や研究開発(R&D)に力を入れる。
米国での半導体生産を支援する「CHIPS・科学法」に基づく措置。


【Arm vs. Qualcomm】

前回取り上げたArm vs. Qualcommの係争は、Qualcomm勝利という以下に示す裁定となっている。Qualcommが買収したNuviaにライセンス違反があったかどうかは、さらなる訴訟の余地があるとのこと。今後の成り行きを見守ることになる。

◇Qualcomm defeats Arm’s claim over chip design license breach (12月21日付け South China Morning Post)
→*クアルコムはアーム社の最大の顧客のひとつだが、両社はプロセッサー業界のライバルとなり、ますます対立を深めている。
 *クアルコムは、2021年に携帯電話用プロセッサの世界最大手メーカーである同社が新興企業を買収した際に取得したチップ技術についてライセンスに違反したとのアーム・ホールディングスの主張に対し、裁判で勝訴した。
  デラウェア州の連邦裁判所の陪審員団は金曜20日、クアルコムが$1.4 billionのNuvia(ヌービア)買収で取得したアーム社のチップ製品を、より高いライセンス料を支払うことなく自社チップに組み込むことでカバーする契約条件に違反しなかったと結論づけた。陪審員団は、ヌービアがライセンスに違反したかどうかについては合意できず、Maryellen Noreika(マリエレン・ノレイカ)米連邦地裁判事は、この問題は後日再審理される可能性があると述べた。

◇Jury spares Qualcomm's AI PC ambitions, but Arm eyes a retrial―Qualcomm wins key points in legal battle with Arm―The victory may be short lived as the chip designer gears up for second round (12月23日付け The Register (UK))
→クアルコムはNuviaの買収に関連するライセンス契約に違反しておらず、Nuviaを中心に製造されたプロセッサはクアルコムとArmのライセンスに含まれているとの判決を下し、陪審員はArm Holdingsとの法廷闘争においてクアルコムに大方の味方をした。ただし、陪審はヌビアが契約解除条項に違反したかどうかについては判断せず、さらなる訴訟の余地を残した。

◇Opinion: These two tech giants just ended a bitter court battle. Now comes the hard part.―Arm and Qualcomm aren’t done fighting yet (12月24日付け MarketWatch)
→先週金曜20日の午後遅く、デラウェア州ウィルミントンの連邦地方裁判所内で、コンピューター・チップ大手2社、アーム・ホールディングスとクアルコムの係争でクアルコムが勝利した。被告であるクアルコムは、要求のほとんどを得た。陪審は次のように決定した:
 ・クアルコムは、3年半前に$1.4 billionで買収したArm社と新興企業Nuvia社との間のライセンス契約に違反しなかった。
 ・クアルコムがヌービアを中心に構築したプロセッサは、アーム社との広範なライセンス契約の対象である。
しかし陪審は、現在買収されている新興企業NuviaがArm社とのライセンス契約終了条項を破ったかどうかという重要な問題については放棄した。


【ラピダス関連】

前回のEUVリソグラフィ装置搬入に続いて、日本政府のラピダス支援に向けた予算手当ての動きが、以下の通りである。

◇ラピダス支援、基金の返納金充当 「原資は赤字国債」批判 (12月23日付け 日経 電子版 20:47)
→2024年度補正予算に盛り込まれた最先端半導体の量産を目指すラピダス支援策の財源が波紋を広げている。新型コロナウイルス対策基金の返納金などを充てたため、野党は「原資は赤字国債ではないか」と批判する。今回の補正予算も基金で「水増し」されており、使い残しが出れば将来同じ問題が起こりえる。

◇ラピダス法案、きょう議論開始 有識者委 来年度予算案3328億円 (12月25日付け 日経)
→経済産業省は25日、次世代半導体を製造するラピダス向け法案の議論を始める。政府系機関による出資や劣後債の引き受け、税制優遇などを通じて国内での次世代半導体の量産を支援する。2025年度の予算案では、関連費用に3328億円を計上した。
経産省は次世代半導体の支援法案に関する有識者委員会を25日に初めて開く。ラピダスが念頭にある。同社は25年春から北海道千歳市で最先端品の試作を始める。政府はこれまで9200億円の研究委託費を拠出してきた。

◇ラピダス支援の法案、独立法人に金融機能 経産省、出資や債務保証 (12月26日付け 日経)
→経済産業省は25日、次世代半導体製造のラピダス支援に向けた法改正案を提示した。2025年の通常国会への提出を目指す。法改正で同省傘下の独立行政法人に、企業への出資や債務保証といった金融機能を追加する。政府が独法を通じてラピダスに出資し、最先端品の量産を後押しする。

◇経産省、次世代半導体で有識者初会合 ラピダス支援へ (12月26日付け 日刊工業)
→経済産業省は25日、次世代半導体の支援法案を議論する有識者会議の初会合を開いた。情報処理推進機構(IPA)を実施主体に金融支援などの諸制度を検討した上で、2025年の通常国会提出を目指す法案に反映させる。また、25年度当初予算案でラピダスへの出資に1000億円を計上したことも明らかにした。


【TSMC関連】

先端実装に向けた戦略的取り組み、および我が国への進出について、以下の通りである。特に、TSMC熊本工場での量産開始が計画通り行われている。

◇TSMC's wafer manufacturing 2.0 reshapes advanced packaging market―Advanced packaging supply chain takes a cue from TSMC (12月23日付け DigiTimes)
→TSMCは7月、パッケージング、テストおよびフォトマスク製造を統合したウェーハ製造2.0を導入し、先端パッケージングのサプライチェーンに変化をもたらした。この動きは、アウトソーシングの半導体組立・テスト企業にテスト能力の強化を促し、ウェハー・ファウンドリーにパッケージング領域への参入を促している。

◇TSMC進出、半導体「冬の時代」変化 JX金属1500億円工場 (12月26日付け 日経 電子版 02:00)
→半導体世界大手のTSMCの日本進出が、長く冬の時代が続いてきた日本の半導体産業を変え始めている。国内で半導体サプライチェーン(供給網)の再構築が進む。世界で5割のシェアを握る材料分野も、投資が日本に戻ってきた。
 *半導体の微細な回路形成に使う金属材料「スパッタリングターゲット」で世界シェア6割を誇る、JX金属
 *東京応化やSUMCOが新工場、九州で相次ぐ大型投資

◇TSMC熊本工場が量産開始 運営子会社、熊本知事に報告 (12月27日付け 日経 電子版 11:00)
→熊本県の木村敬知事は27日の定例記者会見で、TSMCの熊本工場運営子会社JASM(熊本県菊陽町)から「今月に量産を開始したと、23日に連絡を受けた」と明らかにした。TSMCはかねて2024年12月の出荷開始を計画していた。

ご意見・ご感想