アップルWWDC 2024、AIを巡る波紋;米国の対中国&対ロシア制裁関連
先週のComputex 2024でのNvidiaから、今週はWorldwide Developers Conference(WWDC) 2024を開催のアップルに、人工知能(AI)を巡る波紋で集まる注目である。遅れた動きはじめでやっとの空気が漂う中、アップルのAIバージョン、「Apple Intelligence」が発表されている。AI半導体には話及ばず、iPhoneへのChatGPT搭載が、TeslaのElon Musk氏のアップル端末の同社での使用禁止という反発を生じている。今週開催の主要7カ国首脳会議(G7サミット)でもAIの倫理が話し合われる一方、EUがアップルをデジタル新法違反と判断との報道が見られている。米国の中国およびロシアに対する制裁関連にも注目、G7サミットで採択された首脳宣言にあらわされている。
≪世界の政治経済に色濃く反映の半導体&AI≫
アップルのWWDC 2024での「Apple Intelligence」発表関連が、次の通りである。
◇Apple Intelligence furthers Siri with OpenAI hooks, more (6月10日付け FierceElectronics)
→*WWDC2024でアップルのティム・クックCEOは、Mac、iPadおよびiPhone向けに今年後半にベータ版がリリースされる広範なAI機能セット「Apple Intelligence」を発表した。
*Appleは、月曜10日に行われたWWDC 2024の基調講演で、次期iOS 18、iPadOS 18およびMacOS Sequoiaオペレーティング・システムのAI能力を拡大し、人工知能のバージョンに対する呼称として「Apple Intelligence」というcatch-all term(包括的呼称)を使用した。
◇Apple execs explain why its AI is different from competitors (6月11日付け CNBC)
→*アップルは月曜10日、人工知能(AI)を全面的に採用し、同社幹部が新しいAIソフトウェア群であるApple Intelligenceの機能と理由を説明した。
*アップルは月曜10日、より限定的なアプローチを明らかにし、テクノロジーの可能性について将来を見据えた思考を避け、バッテリーを消費することなく今すぐできる小さなタスクを優先した。
*「AIの役割は、ユーザーに取って代わることではなく、ユーザーに力を与えることだと考えている」と、アップルのソフトウェア・チーフであるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏は語った。
◇Apple、iPhoneにChatGPT搭載 自社AI技術と連携 (6月11日付け 日経 電子版 07:35)
→米アップルは10日、自社開発の生成AI「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」を発表した。スマートフォン「iPhone」などに搭載する。米オープンAIの対話型AI「ChatGPT」との連携も発表し、一部のサービスでは消費者の許可を得た上でチャットGPTが対応する。
早々に、TeslaのCEO、Elon Musk氏の猛反発の様相である。
◇Elon Musk threatens to ban Apple devices from his companies over OpenAI partnership (6月10日付け CNBC)
→*テスラのイーロン・マスクCEOは月曜10日、アップルのデバイスを自社から追放すると脅した。
*アップルは年次開発者会議でOpenAIとの提携を発表し、マスクCEOはこの提携を "容認できないセキュリティ違反"と呼んだ。
*アップルによると、同社の音声アシスタント、Siriは、OpenAIの生成チャットボット、ChatGPTを利用できるようになるという。ユーザーは許可を求められ、リクエストや情報は記録されない。
◇マスク氏、iPhone「会社で禁止」 ChatGPT搭載に反発 (6月11日付け 日経 電子版 07:26)
→米起業家のイーロン・マスク氏は10日、米アップルが米新興企業オープンAIと提携し同社の対話型人工知能(AI)「ChatGPT」の機能を取り入れたことに反発し「私の会社でアップルの端末は使用禁止になるだろう」と述べた。オープンAIの生成AI技術を使うとセキュリティー面のリスクが生じると主張している。
アップルの発表、取り組みへの懸念も見られている。
◇Apple、期待外れの自社生成AI 収益源iPhoneに影 (6月11日付け 日経 電子版 12:21)
→米アップルが10日、自社開発の生成AI(人工知能)を発表した。音声応答や文章作成などでは米オープンAIの技術に頼っており、出遅れをかえって印象づける形となった。屋台骨であるスマートフォン「iPhone」の競争力低下につながる懸念もある。
しかしながら、1日で評価が一転、アップルの株価時価総額が以下の通り世界首位となっている。
◇Apple eclipses $1T in brand value (6月12日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→アップルがグーグルを抑えて3年目の首位
◇Appleの株価最高値、1日で評価一転 AIと中国期待で (6月12日付け 日経 電子版 06:56)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日に比べ120ドル安の3万8747ドルで終えた。12日に5月の米消費者物価指数(CPI)の発表や米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を控え、持ち高調整の売りが優勢だった。そんな中で気を吐いたのがアップルだ。200ドル台に乗せて最高値を更新。
◇Apple時価総額、Microsoft抜き一時首位「端末×AI」評価 (6月13日付け 日経 電子版 06:19)
→12日の米株式市場で、米アップルの時価総額が一時、米マイクロソフトを抜き、世界首位となった。10日発表したiPhoneに生成AI(人工知能)を搭載する取り組みについて、発表直後の市場の見方は厳しかったが、徐々に「iPhoneの買い替えサイクルが進む」との評価が勝った。生成AI導入後の同社の事業の先行きについて市場の見通しは揺れている。
◇Apple時価総額、終値でも世界首位奪還 Microsoft抜き (6月14日付け 日経 電子版 05:55)
→13日の米株式市場で、米アップルの時価総額が終値で米マイクロソフトを抜いて再び世界首位となった。10日に新たな生成AI(人工知能)を発表したことで、主力のスマートフォン「iPhone」の買い替えが促されるなどの期待が広がった。
イタリアで開催のG7サミットにて、AIの倫理、AI規制が、ローマ教皇出席のもと話し合われている。
◇G7サミット13日開幕 ローマ教皇は「AIの倫理」に関心 (6月13日付け 日経 電子版 05:00)
→主要7カ国(G7)は13〜15日、イタリア南部のプーリア州で首脳会議(サミット)を開く。ロシアによるウクライナ侵略や緊迫する中東情勢など、山積する課題にG7が結束して対応する姿勢を示す機会になる。人工知能(AI)がテーマの会合にはローマ教皇が参加する予定。
◇ローマ教皇、G7サミットに史上初出席 AI規制を訴え (6月14日付け 日経 電子版 23:35)
→ローマ教皇フランシスコは14日、イタリア南部プーリア州で開いている主要7カ国首脳会議(G7サミット)の討議に出席した。教皇のG7会議への参加は史上初。人工知能(AI)に関して軍事利用など負の側面を指摘したうえで、国際的な規制の必要性を訴えた。
一方、欧州連合(EU)はアップルを、欧州が引っ張るデジタル市場法に違反と判断、との報道である。
◇EU、Appleをデジタル新法違反と判断へ FT報道 (6月15日付け 日経 電子版 08:19)
→欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が、巨大IT(情報技術)企業を規制するデジタル市場法(DMA)に米アップルが違反したと判断する方針であることが分かった。英紙フィナンシャル・タイムズが14日報じた。3月に全面適用されたDMAの初の違反ケースとなる可能性がある。
いろいろ波紋が広がる中、アップルはじめ今後のAI機器の展開、市場の反応に注目である。
◇最新AIが端末変える iPhoneなど音声技術で手入力不要に (6月15日付け 日経 電子版 05:29)
→アップルやグーグルなど米IT(情報技術)がこぞって生成AI(人工知能)の新技術を公表した。生成AIをスマホやパソコンに積む計画を説明し、消費者が最新技術をまずどう使えるのか道筋を示した。目立ったのは音声技術だ。AIでスマホが「擬人化」され、ヒトと対話する感覚で操作できるようになる。
次に、半導体も前面に出てくる米国の対中国&対ロシア制裁関連の動きについてである。
まずは、多難な経緯を孕んだ中国のビッグ・ファンド、第3弾である。
◇China’s Big Fund 3.0: Xi’s Boldest Gamble Yet for Chip Supremacy (6月6日付け The Diplomat)
→*北京の半導体政策の第3段階は、過去の失敗から学ぶことを目的としている。習近平は中国の技術的未来を確保し、政治経済的遺産を固めることができるのか?
*中国は、通称「ビッグ・ファンド」として知られる国家集積回路産業投資基金の第3期を立ち上げ、世界的な半導体競争での勝負を強めている。3400億元($47.5 billion)という巨額の投資で、この構想は米国との技術的緊張が高まる中で展開されている。
半導体分野における中国の野心は、2014年のビッグファンドの初期段階で初めて正式に表明された。この段階では1,390億元が投資され、単なる国家支援からより市場主導型のアプローチへの移行を示した。
米国の制裁下、中国・Huaweiの現状である。
◇Huawei exec concerned over China’s inability to obtain 3.5nm chips, bemoans lack of advanced chipmaking tools―Exec: Huawei to focus on 7nm chips amid US sanctions―Cloud Services CEO believes Huawei should more effectively leverage 7nm technology, for now. (6月10日付け Tom's Hardware)
→ファーウェイのクラウドサービスCEOであるZhang Ping'an氏は、中国が先進的な半導体製造装置を持たず、米国の制裁のために3.5nmのチップを入手できないことを懸念している。Zhang氏は、同社は当面7nm半導体の使用に集中すべきだと言う。
◇Huawei, “Unable to Secure 3.5 Nanometer Chips” (6月10日付け Business Korea)
→6月9日、蘇州(Suzhou)で開催されたMobile Computility Network Conferenceにおいて、ファーウェイのクラウド・サービスCEOであるZhang Ping'an氏は、米国が制裁を科す中、中国が3.5ナノメートル(nm)チップを確保できないことへの懸念を表明した。「台湾のTSMCは、3.5 nm半導体の供給を増やしている。しかし、米国の制裁下で、中国はこれらの製品を確保する方法がない」と張氏は述べた。「7nmの問題に対処できたのは幸運だった。現実には、米国の制裁のために先進的な製造設備を導入することができない。7nm半導体を有効に活用する方法を見つける必要がある。」
中国のAI半導体企業の現下の対応である。
◇U.S. Sanctions Inadvertently to Strengthen Chinese AI Chip Firms’ Hold on Legacy Markets (6月10日付け Business Korea)
→米国の輸出規制が続く中、中国の人工知能(AI)半導体企業は生産の維持に苦慮している。こうした規制を回避するため、MetaXやEnflameといった中国企業は、チップ設計を米国の制裁の影響を受けないレベルまで引き下げ、TSMCのような海外のファウンドリーに生産を委託している。しかし、米国の制裁が続くと、中国は先端半導体からレガシー半導体へと軸足を移し、これらの市場を独占し、グローバルサプライチェーンを逼迫させる可能性があるという懸念がある。
米国政府は、AI半導体への中国のアクセス規制をさらに強める動きである。
◇U.S. is reportedly weighing further limits on China’s access to AI chip tech (6月11日付け CNBC)
→*ブルームバーグが火曜11日に報じたところによると、アメリカは中国のAIチップ技術へのアクセスに対する更なる制限を検討しているという。
*バイデン政権は、gate all-around(GAA)と呼ばれる高度に先進的なチップ・アーキテクチャをターゲットとした対策を検討していると、ブルームバーグが関係者の話を引用して報じた。
*GAAとは、より優れた性能と低消費電力につながる可能性のある新しいトランジスタ・アーキテクチャのことである。
米国政府はまた、ロシアおよびつながる中国に対して制裁を強化する動きが伝えられている。
◇US unveils tougher Russia sanctions for foreign banks (6月11日付け Financial Times)
◇US to widen sanctions on sale of semiconductor chips to Russia, sources say―US Treasury to expand secondary sanctions on Russia (6月12日付け Reuters)
→アメリカ政府は、ロシアへの半導体チップ販売やその他の品目に対する制裁を発表する予定であり、中国のサードパーティーセラーに影響を与えることを目的としていると報じられている。米財務省はまた、ロシアに対する二次的制裁を拡大し、制裁対象のロシア企業と取引する外国金融機関を、クレムリンの軍産基盤を直接支援しているかのようにターゲットにする予定だ。
米国の対中規制下、我が国の半導体製造装置の輸出の5割が中国向けという現状である。中国での成熟プロセス世代の生産重点化の影響と見られ、生産過剰の可能性の懸念を生じている。
◇半導体製造装置、輸出の5割中国向け 規制下で需要高く (6月12日付け 日経 電子版 02:00)
→中国で日本の半導体製造装置の需要が高まっている。日本からの輸出額に占める中国向けの割合は1〜3月期まで3四半期連続で5割以上だった。米中経済の分断(デカップリング)により、中国で生産ラインを組み替える特需が発生したとみられ、汎用品を中心に引き合いが強い。
財務省の貿易統計から半導体製造装置やその部品、フラットパネルディスプレー製造装置の輸出額のうち中国向けの比率を調べた。
G7サミットでも、半導体サプライチェーンの問題、そしてロシアおよび中国を対象とした制裁措置が以下の通り話し合われている。
◇Preventing another chip shortage on G7 summit agenda-G7 plans to address chip supply chain challenges ―Group will also look into protecting subsea communications infrastructure (6月13日付け The Register (UK))
→Group of Seven(7カ国首脳会議、G7サミット会議)は、半導体サプライチェーンの途絶防止を目的としたグループの設立を計画している。また、海底ケーブル接続の保護にも取り組む予定である。
◇G7首脳宣言採択 ロシア支援の金融機関制裁、中国名指し (6月15日付け 日経 電子版 08:11)
→主要7カ国首脳会議(G7サミット)が14日、首脳宣言を採択した。中国を名指しした上で、ロシアの軍需物資の調達などに関わる外国金融機関に制裁対象を広げ、金融システムからの排除といった措置をとることを決めた。中国のロシアの防衛産業への支援が戦争継続を可能にしているとし、兵器を含めた軍民両用の資材の移転を停止するように求めた。
一層色濃く世界の政治経済情勢に反映されている半導体&AI関連の動き&推移に引き続き注目である。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□6月9日(日)
上にたびたび触れているG7サミットであるが、事前の準備状況である。
◇13〜15日にG7サミット、ロシア凍結資産の活用策を討議News Forecast (日経 電子版 05:00)
→主要7カ国(G7)は13〜15日にイタリア南部プーリア州で首脳会議(G7サミット)を開く。最大の焦点となるのは、欧米などが凍結した総額$300 billion(約47兆円)のロシア資産に関するウクライナ支援への活用策で合意できるかだ。国際法の順守など越えるべきハードルが多く残っており、各国による詰めの作業が続いている。
□6月11日(火)
インフレ鈍化の物価指数の発表があって、利下げの期待が続く中、出だしは上げたが、後4日は下げる展開となった今週の米国株式市場である。
◇NYダウ小反発 FOMC前で様子見、ナスダックは最高値 (日経 電子版 06:05)
→10日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前週末比69ドル05セント(0.17%)高の3万8868ドル04セントで終えた。週内に米連邦公開市場委員会(FOMC)と5月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、投資家の様子見姿勢が強かった。積極的な売買を手控える雰囲気があるなか、個別に材料が出た銘柄やハイテク株の一角が買われ、ダウ平均を支えた。
世界銀行による世界経済の成長率見通しである。
◇World Bank boosts forecast: Strength of US economy will support global growth of 2.6% this year―World Bank global growth forecast increases to 2.6% (The Associated Press)
→世界銀行は、世界経済の成長率見通しを前回の2.4%から2.6%に引き上げ、米国の成長率見通しを予想以上の2.5%とした。しかし、世界経済の成長は歴史的な水準に比べると依然低迷しており、発展途上国は多額の負債、高金利および地政学的紛争に悩まされている。世界銀行は貿易障壁の増大に懸念を示し、高金利の長期化は経済成長をさらに減速させる可能性があると警告した。
□6月12日(水)
◇NYダウ反落し120ドル安 FOMC公表前で持ち高調整売り (日経 電子版 06:12)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比120ドル62セント(0.31%)安の3万8747ドル42セントで終えた。12日に5月の消費者物価指数(CPI)の発表と米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を控え、持ち高調整の売りが優勢だった。半面、米長期金利の低下が支えとなり、ハイテク株を中心に買いが入った。
◇Inflation slows in May, with consumer prices up 3.3% from a year ago (CNBC)
→*5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.3%増、市場予想を0.1ポイント下回った。
*変動の大きい食品価格とエネルギー価格を除いたコアCPIは、前月比0.2%上昇、前年同月比3.4%上昇、それぞれ0.3%および3.5%の事前予想であった。
*エネルギー指数が2%低下し、食品は0.1%の上昇にとどまり、物価上昇は抑制された。
□6月13日(木)
◇米株最高値、インフレ鈍化で利下げ期待継続 ダウは続落 (日経 電子版 05:25)
→12日の米株式市場で主要な株価指数のS&P500種株価指数とナスダック総合株価指数が上昇し、連日で最高値を更新した。朝方発表のインフレ指標が予想以上に減速し、米連邦準備理事会(FRB)が年内に複数回利下げするとの期待が高まった。同日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は年内の利下げを1回にとどめる中心シナリオを示したが、投資家の強気姿勢は大きく変わらなかった。
S&P500は前日比0.9%高の5421.03で取引を終えた。ハイテク株中心のナスダック指数は1.5%高だった。ダウ工業株30種平均は取引時間中に前日比300ドル超上昇する場面もあったが、終値は35ドル(0.1%)安の3万8712ドル21セント。
◇米利下げ「年内1回のみ」 FOMC、政策金利は据え置き (日経 電子版 06:57)
→・FRBは政策金利を5.25〜5.5%に7会合連続で据え置き
・年内の利下げ予想は参加者の中央値で3回から1回に減少
・パウエル議長はデータ重視で慎重に判断する姿勢を強調
米連邦準備理事会(FRB)は12日、米連邦公開市場委員会(FOMC)を開いた。参加者の多くは年内に3回としていた利下げ予想を1〜2回に修正し、中央値は1回になった。
◇Wholesale prices unexpectedly fell 0.2% in May―Producer price index fell 0.2% in May (CNBC)
→1)米国労働省労働統計局によると、5月の生産者物価指数は前月比0.2%低下したが、前年同月比では2.2%上昇した。一方、食品とエネルギーのカテゴリーを除いたコア指標は前月から横ばいだった。
2)*生産者物価指数(PPI)は、生産者が公開市場で商品とサービスを購入する際の価格を示す指標で、0.1%の上昇予想に対し前月は0.2%の下落となった。
*PPIは、最終需要財価格の0.8%下落に抑えられ、これは2023年10月以来最大の下落幅となった。
*その他の経済ニュースでは、6月8日締めの週の失業保険申請件数が24万2,000件に急増した。これは2023年8月以来の高水準である。
□6月14日(金)
◇NYダウ続落し65ドル安 ナスダックは最高値更新 (日経 電子版 06:08)
→13日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落し、前日比65ドル11セント(0.16%)安の3万8647ドル10セントで終えた。13日発表の米物価指標がインフレの鈍化を示した。米連邦準備理事会(FRB)が早期に利下げに転じるとの期待が高まった半面、米経済の減速も意識され、景気敏感株などに売りが出た。
□6月15日(土)
◇NYダウ57ドル安、消費懸念が重荷 ナスダックは最高値 (日経 電子版 07:24)
→14日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続落し、前日比57ドル94セント(0.14%)安の3万8589ドル16セントで終えた。同日発表の指標が米消費の減速を示す内容となり、経済の軟化が意識された。欧州の政治不安もあり、米株に売りが出た。
≪市場実態PickUp≫
【インテル関連】
イスラエルの$25 billion規模の半導体工場建設工事の延期が、以下の通り伝えられ、敏感な反応を呼んでいる。
◇Intel interrupts work on $25B Israel fab, citing need for 'responsible capital management'―Won't say when build might resume (6月10日付け The Register)
→イスラエルのKiryat Gat(キリヤット・ガット)にあるインテルの$25 billion規模の半導体製造工場の建設工事が延期されたと報じられた。イスラエルのメディア[ヘブライ語]によると、インテルはインフラ建設会社にプロジェクトの作業を一時停止するよう依頼したという。
◇Chipmaker Intel to halt $25-billion Israel plant, news website says (6月10日付け Reuters)
→イスラエルの金融ニュースサイト、Calcalistが月曜10日に報じたところによると、インテルはイスラエルに$25-billionの工場を建設する計画を中止している。この報道について質問された該米国企業は、このプロジェクトに直接言及することなく、大きなプロジェクトをスケジュールの変化に対応させる必要性を挙げた。
インテルは声明で、「イスラエルは引き続き当社の重要なグローバル製造・研究開発拠点のひとつであり、当社は引き続きこの地域に全面的にコミットしている」と述べた。
◇Intel Israel factory expansion cancellation rumors unfounded according to official statements―Intel officials deny rumors, say Israel factory plans are continuing ―A recent change of building contractor sowed the seeds of doubt. (6月11日付け Tom's Hardware)
→月曜10日、インテルがイスラエルで計画していた工場拡張を中止した可能性を示唆する報道が飛び込んできた。ビジネスニュースサイト『Calcalist』は、「Intel GlobalはKiryat Gat(キリヤット・ガット)の工場拡張を中止する」という見出しの記事を掲載した。しかし、インテルのイスラエルへの投資計画に変更はないとする政府高官の発言も引用している。インテルからの定型文も掲載され、当初の報道が根拠としていた証拠は、単に「スケジュール調整」を示しているに過ぎないことをほのめかしている。
◇Intel delays Fab 38―Intel is pausing $25B fab in Israel, sources say―Intel has delayed Fab 38 in Kiryat Gap, Israel, reports Calcalist. (6月11日付け Electronics Weekly (UK))
→情報筋によると、インテルはイスラエルに計画していた$25 billionのFab38を延期する。この拠点は2028年にウエハーの稼働を開始する予定であり、インテルはこの地域での事業に引き続きコミットしているという。
アフリカ大陸での大規模なAI教育である。
◇African Development Bank, Intel to train millions in AI―Intel, African Development Bank partner on AI training (6月10日付け ITWeb (South Africa))
→インテルはアフリカ開発銀行と協力し、300万人のアフリカ人にAIを教育する。この提携は、アフリカ大陸のデジタル・エコシステムを再構築し、地域政府がAI、データ、クラウド、その他のテクノロジーに関する政策や規制の枠組みを策定するのを支援することを目的としている。
電気自動車(EV)の全体的な性能を大幅に向上させるSoC、OLEA U310が、次の通りあらわされている。
◇Intel new SoC solution accelerates EV innovation, slashing costs―Intel's OLEA U310 system-on-chip tackles EV performance, design, cost (6月12日付け DIGITIMES)
→業界初となるこの新しいSoCは、ハードウェアとソフトウェアを一体化した唯一の完全なソリューションである。このSoCは、分散型ソフトウェアによる電気的アーキテクチャのパワートレイン領域制御のニーズに適合するように設計されている。
独自のハイブリッドおよびヘテロジニアスアーキテクチャで構築されたインテルのOLEA 310 FPCU(Field Programmable Controller Unit)は、システムの組み合わせで6つもの標準マイクロコントローラを置き換えることができる。
【TSMC関連】
TSMCの半導体での優位に揺るぎなし、と改めて表している記事である。
◇TSMC Believes Its Impossible For Huawei “China” To Catch Up In The Semiconductor Race (6月6日付け wccftech)
→*世界半導体大手TSMC、ファーウェイ「中国」および他の「新興」競合は同社にとって問題なしとの見解。
*TSMCの「優位性」は揺るがず、中国を含む競合他社に勝ち目はないとの見方
*さて、TSMCがプロセス技術と最先端半導体の開発に関してリードしてきたことは間違いない。インテル・ファウンドリーやサムスンといった主流の競合企業もこの差を縮めようとしているが、多大な努力にもかかわらず、台湾の巨人は、アップルやエヌビディアといった定評ある顧客との優れた関係とともに、その豊富な経験によって、優位性を維持することに成功している。
5月としては最高の売上高を記録、AIが引っ張っている。
◇TSMC、5月の売上高 30%増 生成AI向け好調 (6月11日付け 日経)
→半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が発表した5月の売上高(速報値)は、前年同月比30.1%増の2296億台湾ドル(約1兆1000億円)だった。生成AI(人工知能)を扱うデータセンターのサーバー向けなどで先端半導体の販売好調が続き、5月としての過去最高を更新した。
欧州子会社の取り組みについてである。
◇TSMC’s Europe subsidiary to hire nearly 2,000 employees (6月12日付け Taipei Times)
→台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC、台積電)の子会社であるEuropean Semiconductor Manufacturing Co(ESMC)は、ドイツやその他の欧州諸国から約2000人を雇用する、とESMCのChristian Koitzsch(クリスチャン・コイツシュ)社長が月曜10日に発表した。
中国・SMICとの株価の比較が、次の通りである。
◇TSMC’s premium over SMIC almost beats 2005 gap―LAGGING: The chasm between the two firms’ share prices shows the challenges facing China’s largest chip investment fund, which is focused on growing the local sector (6月12日付け Taipei Times)
→TSMCと中国最大のチップメーカーとの株価差は、過去20年近くで最も開いており、北京が国内チップ産業の育成で直面している困難を浮き彫りにしている。
最先端のチップ製造能力にも後押しされ、TSMCは台北で今年48%急騰した一方、セミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル(SMIC、中芯國際)は7.5%下落し、両社の年間業績差は2005年以来最大となる見通しだ。
【SamsungおよびSK Hynix関連】
まずは、SK Hynixについてのいろいろな動きである。
◇SK chief meets TSMC head for AI memory chip cooperation (6月9日付け The Korea Times)
→SKグループのChey Tae-won会長はTSMCのC.C.Wei会長と会談し、同グループのメモリーチップメーカーであるSK hynixの支配力をさらに強化するため、AI半導体に関する協力について協議した、とSKグループが金曜7日に発表した。
該韓国のコングロマリットの発表によると、同会長は木曜6日に台湾の台北で会談したという。TSMCは世界最大のファウンドリー会社で、チップ設計会社向けにチップを生産している。SK hynixはAIメモリーチップと広帯域メモリー(HBM)チップのリーダーで、昨年の市場シェアの半分以上を占めている。
◇SK Hynix: GDDR7 Mass Production To Start in Q1 2025―SK Hynix set to begin mass production of GDDR7 next year (6月11日付け AnandTech)
→SKハイニックスは2025年第1四半期にGDDR7チップの量産を開始する予定だ。サムスン電子は、JEDECメモリ規格を活用したメモリをすでにサンプル出荷している。マイクロン・テクノロジーは年内の完成品出荷を目指している。
◇SK’s AI Chip Startup Sapeon Agrees to Merge With Rebellions―SK Telecom: AI chip players Sapeon, Rebellions to merge (6月12日付け BNN Bloomberg (Canada))
→Sapeonの親会社であるSK Telecomによると、韓国のAIチップ開発企業であるSapeonとRebellionsが合併を模索しているという。この合併は、韓国のAIチップ企業とで世界的な競争を目指す該開発会社の狙いを強調するものだ。
◇South Korean AI chip developers Rebellions and Sapeon to merge (6月12日付け Reuters)
次にSamsungについて、AI半導体一括ファウンドリー対応はじめ、多彩な戦略的動き&取り組みである。
◇Samsung Chief Lee Discusses Cooperation With Meta, Amazon and Qualcomm―Samsung chair in talks with big tech leaders (6月13日付け U.S. News & World Report/Reuters)
→サムスン電子のJay Y. Lee(ジェイ・Y・リー)会長は、AI、メモリーチップおよびクラウドサービスなど、さまざまなテーマで協力する方法について話し合うため、3人の大手ハイテク企業CEOsと会談した。李会長は、クアルコムのCristiano Amon(クリスティアーノ・アモン)氏、アマゾンのAndy Jassy(アンディ・ジャッシー)氏およびメタのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏と個別に会談した。
◇Siemens and Samsung Foundry optimise EDA solutions for newest processes―Siemens teams with Samsung Foundry on design solutions (6月13日付け New Electronics (UK))
→1)Siemens Digital Industries Softwareは、Samsung Foundry社との協業により、先進ノードでのmulti-die実装設計の製造に向けた多くの新機能を開発した。
2)シーメンス・デジタル・インダストリーズ・ソフトウェアとサムスン・ファウンドリーは、電子設計自動化(EDA)技術を最適化するために協力している。サムスンはまた、低消費電力で高性能なAIチップに特化したオールインワンAIプラットフォームを開発している。
◇Samsung Electronics to provide comprehensive AI solution for foundry business (6月13日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子は木曜13日、高性能で低消費電力のAIチップのための最新技術に焦点を当て、ファウンドリ顧客に包括的な「ワンストップ」人工知能ソリューションを提供すると発表した。
◇Samsung Electronics to provide comprehensive AI solution for foundry business (6月13日付け Yonhap News Agency)
→サムスン電子は木曜13日、高性能で低消費電力のAIチップのための最新技術に焦点を当て、ファウンドリ顧客に包括的な「ワンストップ」人工知能(AI)ソリューションを提供すると発表した。
◇サムスン、AI半導体を一括請け負い 製造期間2割短く (6月14日付け 日経)
→韓国サムスン電子は13日、2027年までに「ワンストップAI(人工知能)ソリューション」と名付けたサービスを提供すると発表した。AI半導体の開発・製造を一括して請け負い、製造期間が従来より2割短くなるという。
◇Samsung vows to offer one-stop AI chip foundry solution to match TSMC (6月14日付け The Korea Times)
→サムスン電子は、AI時代をリードし、ファウンドリービジネスのリーダーであるTSMCに追いつく努力の一環として、ファウンドリー(受注ベースのチップ生産)、メモリーチップ、および先端半導体パッケージングソリューションを統合した包括的なターンキーサービスを提供する、と該韓国の大手チップメーカーが木曜13日に発表した。
【米国CHIPS Act関連】
米国国内の半導体製造強化を目指すCHIPS Actでは、米国政府による補助金がインテルはじめ各社に交付されてきているが、現下の関連する動き&記事を以下取り出している。
◇Where the CHIPS Act money has gone―8 companies have received over half of $52B chip subsidies/ More than half of the $52 billion subsidy for the semiconductor industry has now been disbursed. (6月7日付け The Verge)
→CHIPS法半導体産業補助金の恩恵を受けた8社は、割り当て予定の総額$52 billionのうち$29.34 billionを受け取っている。インテル、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)、サムスン電子、マイクロン・テクノロジーおよびグローバルファウンドリーズが、これまでのところそのトップである。
◇Biden admin fuels up Rocket Lab with $24M for space-grade solar cell chip shop―US to invest $24M in Rocket Lab's chip expansion ―Funding will expand manufacturing by 50% in three years, says Uncle Sam (6月11日付け The Register (UK))
→米国商務省によると、CHIPS法からの$23.9 millionの資金注入により、Rocket Labのチップ製造を3年間で50%増加させる契約が進んでいる。ロケット・ラボは、宇宙用太陽電池チップを製造している米国内の2社のうちの1社である。
◇The US is spending more money on chip manufacturing construction this year than the previous 28 years combined―Chip manufacturing construction in US sees rapid growth―The CHIPS Act is crushing expectations (6月12日付け Tom's Hardware)
→米国のチップ製造建設は歴史的な急増を遂げてきており、国勢調査局は、政府が今年、過去27年間の合計よりも多くの資金をこの分野に追加すると報告している。CHIPS法からの資金は、すでにマイクロン・テクノロジー、サムスン電子、インテルなどに割り当てられている。半導体産業協会(米国・SIA)の調査では、2032年までに米国のチップ製造能力は3倍になると予測されている。
◇Indiana lawmakers urge U.S. to give SK Hynix funding from CHIPS Act―Ind. lawmakers want CHIPS Act funds for SK Hynix's planned facility in state (6月13日付け Inside INdiana Business)
→連邦政府による$280 billionのCHIPSおよび科学法の共同執筆者である連邦上院議員は、その資金の一部を地元で計画されているプロジェクトに回すよう商務省に要請している。
インディアナ州選出のTodd Young(トッド・ヤング)上院議員をはじめとするインディアナ州選出の下院議員10名は、Gina Raimondo(ジーナ・ライモンド)商務長官に宛てた、チップメーカーであるSKハイニックス社の連邦政府への資金援助申請を支持する公開書簡に署名した。
【PCIM 2024】
世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会、PCIM(Power Conversion and Intelligent Motion) 2024(6月11−13日:ドイツ・ニュルンベルク)より、3日間の概要である。
◇PCIM 2024: Day One Wrap Up―Our daily wrap from the first day of PCIM 2024.―PCIM 2024 Conference Coverage (6月11日付け EE Times)
→PCIM(Power Conversion and Intelligent Motion) 2024(6月11−13日:ドイツ・ニュルンベルク)の初日は、特にワイドバンドギャップ・パワーデバイスの分野で多くの革新が見られた。例を挙げると、Cambridge GaN Devices社は650V ICeGaNデバイスの新しい高出力P2ライン、オンセミ社はシリコン・ゲート・ドライバを備えた統合GaNソリューション、そしてテキサス・インスツルメンツ社は150〜250Wの電力レベルに対応する業界初のGaNベースのインテリジェント・パワー・モジュール(IPM)を発表した。
◇PCIM 2024: Day Two Wrap Up―Our daily wrap from the second day of PCIM. (6月12日付け EE Times)
→GaNとSiC技術の革新、大電力アプリケーション、および信頼性モデリングなど、PCIM第2日目の主なハイライトについて語られるビデオ・インタビュー。
◇PCIM 2024: Day Three Wrap Up−Our daily wrap from the third day of PCIM. (6月13日付け EE Times)
→PCIMの3日目には、Power Electronics News編集長のMaurizio Di Paolo Emilio氏が司会を務めるパネルディスカッションが開催され、パワーアプリケーションにおける品質と故障試験に焦点が当てられた。EPC社のAlex Lidow氏、Wise Integration社のThierry Bouchet氏、SemiQ社のTimothy Han氏およびMicrochip Technology社のKevin Speer氏が登壇した。該ディスカッションでは、特にGaNデバイスの保護回路など、信頼性を高めるための統合の重要性が強調された。