中国が半導体で脅威に、SiCでは上位10社に3社、華為は5nmチップを開発
中国の半導体が力を付けてきている。パワー半導体のSiCの世界ランキングで10位以内に3社も入ってきたという報道もある上、華為(ファーウェイ)が従来の7nmプロセスではなく5nmプロセスの開発に成功したというニュースもある。一方、日本市場を狙う動きもある。半導体売り上げトップのNvidiaが量子コンピュータ技術で日本を支援すると発表した。
図1 200mmのSiCウェーハ(左)とトランジスタ(右) STMicroelectronicsがカターニア工場で生産する
5月30日の日本経済新聞によると、2024年のSiCパワー半導体の販売額のトップ10位の中で3社を占めたという。23年はBYDなど2社で5.1%のシェアだった。それが嘉興斯達半導体(StarPower Semiconductor)が加わり3社になり、シェアも8.8%に上がった。特にEV(電気自動車)を生産しているBYDは、自前のSiCパワー半導体工場を本格稼働したという。24年にはSiCでロームを抜き5位に浮上したとしている。
現在のSiCパワー半導体ではEV向けが数量は多い。Teslaのモデル3にSiC半導体が採用されたSTMicroelectronicsが現在トップだが、最近のTeslaは不買運動も起きておりSTはシェアを落としたようだ。SiCパワー半導体は最先端の微細化が必要ないため、中国が最近力を入れている分野であり、SiC市場でシェアを増やしていくことは間違いない。
日本ではルネサスエレクトロニクスがSiCトランジスタの生産を高崎工場で今年初めに生産する予定だったが、EV市場が今悪化していることから生産を断念した。ルネサスはSiCだけではなくGaNも開発しているが、SiCからGaNへシフトしたと見るべきだろう。
GaNでは、民生用途ではなくAIインフラとなるデータセンター市場を狙う。データセンターでは、現在の48V系の電源を配備しているが、電源の効率をさらに高めるため広いデータセンターを600Vの直流高電圧で供給するという動きが出ている。ここにGaNによるダウンコンバータやスイッチなどにGaNパワートランジスタ(HEMT)を利用する。GaNはSiよりも効率が良いだけではなくSiCよりも効率を上げられる。GaNは200mmのSiウェーハ上にもバッファを介して成長できるというメリットもある。200mmのGaNウェーハで600Vのトランジスタは可能だとルネサスは見ている。またAIデータセンター以外でも産業オートメーションやロボット、EV関係でもOBC(オンボードチャージャー)にも向くという。
中国のファーウェイは6月6日にノートパソコンの新製品を発売、そこに5nmチップと独自開発のOS(Operating System)「Harmony」を搭載すると27日の日経が報じた。中国ではこれまで、ファーウェイの半導体子会社であるHiSiliconが設計し、SMICが製造していた。これが5nmとなると7nmでのFinFET技術のフィン数を減らすだけではなく、配線も3次元化する必要がある。実際の配線の微細化はほとんど止まっているため、プロセス上の3次元化によって単位面積当たりのトランジスタを増やしていく。HiSiliconのチップが5nm技術で設計されているとすると、SMICも5nmプロセスで製造していることになる。
また、トランプ関税によって米国から日本市場に注目が集まる。台湾のASUSはAIパソコンの売り先を日本市場に重点を置く、と28日の日経が報じている。AIパソコンはクラウドに接続せずにパソコン内のテキストや画像を元に、テキストだけではなく画像の検索までもできる。
また、Nvidiaは、日本ともパートナーを組むという考えを示した。台北で開催されたComputex 2025において同社のGPUと他社の半導体を接続する技術を発表したと29日の日経が報じた。理化学研究所が主導するスーパーコンピュータ「富岳」ではGPUなしに構成したが、次世代のスパコンにはGPUを使う。GPUは数値演算が得意でシミュレーションや可視化のグラフィックスなどで威力を発揮する。富岳のCPUを設計した富士通ともパートナー契約をしている。さらに産業技術総合研究所の量子コンピュータ技術の開発にも協力する。量子演算ユニット(QPU)そのものは開発しないが、量子演算の結果をGPUによって可視化するなどの支援を行う。


