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TSMCの熊本工場で3nmプロセスを推進する意味は何か

先週のビッグニュースは、TSMCが熊本工場(JASM)の第2工場で3nmプロセスの生産を検討していることが明らかになったこと。日本で初めての3nmプロセスとなる。AI用の半導体生産能力を上げるためだ。AI投資は依然として続いており、これからのAIデータセンターの拡張によるものだ。そのためAIモジュールに使われるメモリも欠かせなくなってきている。

TSMCのC.C.Wei会長兼CEOは2月5日、首相官邸で高市早苗首相と会談、Wei氏が熊本の第2工場の生産計画をこれまでの6〜40nmから3nmプロセス半導体の生産を検討していることを説明した。6nmプロセスは、FinFET構造のトランジスタを使う「先端プロセス」ではあるが、さらなる配線やビアホールなども含めた立体構造化によりトランジスタの集積度を上げた3nmプロセスへ移行することになる。

3nmプロセスは、AI用の新型GPU半導体「Rubin」に使われるようだ。Blackwellの次世代版と位置付けられるRubinは、Blackwellでの4nmプロセスからNvidiaのAI半導体として初めての3nmプロセスに移行することになる。

Wei氏の動きは、NvidiaのJensen Huang CEOの動きとリンクしており、2月2日の僑務委員会(OCAC: Overseas Community Affairs Council、日本の外務省に相当)のニュース(参考資料1)でHuang氏がAI需要は次の10年間で2倍以上になると明言したこととリンクする。少なくとも今後10年間はAI需要が増えていくため(参考資料2)、AIプロセッサも増やしていくことになる、としている。


図1 台北市に予定しているNvidiaの台湾本社予定地 出典:OCAC


また、Nvidiaと台湾との結びつきはますます強まる。本日(2月9日)のニュースでは、台北市とNvidiaは、台北市の北投士林科技園区(Beitou-Shilin Technology Park)にNvidiaの台湾本社を建設する契約を交わし(図1)、そのロイヤルティを122億台湾元(3.8億米ドル)と決めた(参考資料3)。台湾生まれでタイ育ちのJensen Huang氏は9歳で米国に移住したものの(参考資料4)、台湾ではテイラー・スウィフト並みの人気を誇ると言われており、将来この本社に優秀な学生が集まると台湾がAIの巨人になる可能性は十分ある。

日本にとっては、ラピダスがGAAトランジスタを利用する2nmプロセスの量産化を目指しているが、筆者が昨年夏にラピダスを取材した時にFinFETはやらない、と明言していた。5〜3nmプロセスを日本では誰もやらないことになり、巨大な市場がごっそり抜けてしまう恐れがあった。この点、JASMがFinFETの3nmプロセスを手掛けることは、将来、日本の潜在顧客が先端プロセス技術の重要さに気がついたときでも十分対応できることになる。

加えて、JASMが3nmプロセスを手掛けるということは、日本の製造装置産業、材料産業にとってもTSMCの投資金額が増えることになるため、ビジネスチャンスとなりうる。

AIモジュールではAI用のGPUと共にメモリ(HBM)も同一基板上に載せて使うため、DRAMチップを複数枚重ねたHBM(高バンド幅メモリ)向けが優先され、パソコンやスマートフォンに使うメモリ(DDR DRAM)の生産が間に合わない状況が続いている。このため、中国製のメモリを使う動きが出始めている。特に台湾のAcerやASUSなどが中国製メモリの採用を検討しており、米国のHPとDellも追従しているようだ(2月6日の日経)。

中国ではCXMT(中国長鑫存儲技術)社の製品認定検証をHPやDellが始めており、彼らの品質認定に合格すれば、すぐにでも中国製が使われる可能性がある。DRAMのトップスリー(Samsung、SK hynix、Micron)がDRAMの生産増強に今年半ばまでに間に合わなければ中国製メモリが世界に進出してくる可能性は高い。


参考資料
1. “AI demand could more than double TSMC capacity: Nvidia CEO”, ODAC News, (2026/02/02)
2. “Nvidia CEO Says AI Capital Spending Is Appropriate, Sustainable”, Bloomberg, (2026/02/07)
3. “Taipei finalizes NT$12.2 billion royalty deal with Nvidia”, ODAC News, (2026/02/09)
4. 津田建二、「エヌビディア〜半導体の覇者が作り出す2040年の世界」、PHP研究所、2024年8月

(2026/02/09)
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