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2024年半導体製造装置売上高トップはASML、顧客満足度トップはアドバンテスト

カナダに本拠を置く半導体市場動向調査およびリバースエンジニアリング企業のTechInsights が、2024年世界半導体製造装置サプライヤ売上高ランキングおよび2025年世界半導体装置サプライヤ顧客満足度ランキングを発表した。これらの製造装置メーカーに関するランキングは、もともと米VLSI Researchが独自の調査の基づき発表していたが、同社は2021年にTechInsightsに買収されてしまって以来、データを有料会員限りとしたため、メディアでもほとんど取り上げられないようになっている。

2024年世界半導体製造装置サプライヤ売上高ランキング

表1 世界半導体製造装置サプライヤ売上高ランキング 出典:TechInsightsデータを基に著者作成、2022年まではトップ10のみ発表


2024年世界半導体製造装置売上高トップは235億ドルの蘭ASML。売上高は前年比で微減だが、半導体製造装置の中でもっとも高価なEUV露光装置の唯一のサプライヤとしての存在感を示している。2位はApplied Materials(AMAT)、3位はLam Research、4位は東京エレクトロン(TEL)、5位はKLAとなっており、ここまでが装置サプライヤ5強で、6位以下の売上高と大きな差をつけている。

各社ともにWFE(ウェーハプロセス装置)で強みを持っており、この事実はWFEがほかのセグメントよりも大きな市場であることを意味する、とTechInsightsでは指摘している。

6位は日本のアドバンテストで、ここまでは前年の順位から変動はない。7位は日本のSCREENで、前年7位のASM International (ASMI) をわずかだが抜き去り、代わってASMIが8位に転落した。また、9位には前年10位に入った中国のNAURA(北方華創科技)がランクアップしたほか、10位には前年13位だったディスコが躍進し、初のトップ10入りを果たした。

11位は前年9位の米Teradyne、12位は韓Samsung傘下のSEMES、13位にはダイフクが新たにランクインする形となった一方、前年12位の日立ハイテクが14位に順位と落としたが、同社はトップ15社中唯一のマイナス成長を記録している。15位は、中国の先端プラズマエッチング装置・MOCVD装置メーカーのAMEC(中微半導体設備)で、初のトップ15位入りを達成した。同社の成長率は、トップ15社の中で唯一50%を上回っており、目覚ましい成長を見せつけた形である。

この結果、トップ15社の中に日本勢はTEL、アドバンテスト、SCREEN、ディスコ、ダイフク、日立ハイテクの6社がランクインした。2023年の14位にはKOKUSAI ELECTRIC、15位にレーザーテックが名を連ねていたほか、日本勢はトップ15社中7社を占めていたことから、2024年は6社へと減少させる結果となった。

その一方で、中国勢は前年のNAURA1社のみから、AMECもトップ15社入りを果たし、存在感を増している。米国の対中輸出規制などの影響で生じた中国市場の空白が成長をけん引していることが背景にあるといえる。また、年間を通じて日本円が対ドルで弱くなるなど、為替変動はあったものの、為替レートはランキングに大きな影響を与えなかったとTechInsightsでは分析している。


2025年世界半導体装置サプライヤ顧客満足度ランキング

世界中のIDM(Integrated Device Manufacturer)、ファウンドリ、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)を含む世界中の半導体企業の2034人の装置及およびサブシステムユーザーからの回答をもとに、「Supplier Performance」「Customer Service」「Product Performance」の3つの観点に基づく14項目で評価・格付けが行われた。詳細な数値データは一般公開していない。


表2 2025年世界半導体製造装置サプライヤ顧客満足度ランキングトップ10:カッコ内は本社所在国を示す。 出典:TechInsightsの情報をもとに筆者作成


TechInsightsは、大企業と中堅企業に分けて顧客満足度ランキングを発表しているが、これは半導体製造装置事業の売上規模による分類であり、会社全体の規模での分類ではない。

アドバンテストが、6年連続で顧客満足度第1位を獲得した。また、37年連続でトップ10入りを果たしており、ユーザーから絶大な信用を得続けていることは特筆に値しよう。
大企業としては日本企業が5社、中小企業としては日本企業が4社エントリしている。Edwards、ASMPT、キヤノンの3社は、売上高トップ15に入っていないが、顧客満足度トップ10にエントリしている。

2023年の顧客満足度ランキングと比較すると、大企業では、日立ハイテクが10位から6位に上昇し、代わりにKOKUSAI ELECTRICが6位から10位に落ちている。中堅企業では、2024年に9位Brooks(米)と10位MKS( 米)が、2024年にはランク外となり、代わりにAMECと堀場製作所がトップ10にエントリした。特に、AMECは、売上高が昨年、約5割成長した、世界レベルの技術力を持つドライエッチング装置メーカーで、顧客満足度調査でも、いっきに3位にエントリした点が注目される。

Hattori Consulting International 代表/ 国際技術ジャーナリスト 服部 毅
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