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AI需要続伸で世界半導体市場規模は驚異的拡大中、今年は昨年比6割以上増加か?

半導体業界は、人工知能(AI)と高性能コンピューティング(HPC)の需要急伸で新たな局面を迎えている。米国半導体工業会(SIA)は、2026年3月の月間世界半導体売上高(3カ月移動平均)が2025年3月の555億ドルと比較して79.2%増加したと5月4日に発表した(参考資料1)。2026年第1四半期の売上高は1年前の2025年第1四半期と比べると78.0%増加しており、このところ、データセンター向けAI需要の継続的な増伸により世界半導体売上高は、垂直に近い急峻な増加を続けている(図1)。まずは、最新のデータで世界半導体売上高の驚異的な急伸の現状を確認したうえで話を進めよう。

Worldwide Semiconductor Revenues / WSTS,SIA

図1 世界半導体月間売上高(単位10億ドル:青線)および対前年同月比増減率(単位%;赤線表示)の過去20年間の推移 出典:WSTS/SIA、2026年5月4日


Omdiaは、今年の世界半導体売上高を前年比63%増に上方修正

英Informaグループの市場調査ブランドであるOmdiaは4月23日、2026年の世界半導体売上高成長率予測を1月発表の前年比30.7%増から同62.7%増へと大幅に上方修正したことを明らかにした(参考資料2)。Omdiaによれば、今年の半導体売上高は1兆3千億ドルを超えるという。

持続的なAI需要の高まりと、DRAMならびにNANDの価格高騰による伸びを反映した結果で、DRAM市場は2025年比でほぼ倍増すると予測されるほか、DRAMに比べて規模が小さいNANDは同4倍増となる可能性がある、とOmdiaは説明している。


Greatest market contributors to semiconductor revenue growth in 2026 / Omdia

図2 2026年の世界半導体売上高予測(単位:100万ドル)。全体と各製品カテゴリ別売上高と 対前年比増加率 出典:Omdia、2026年4月23日


DRAMの高騰は、サプライヤ各社が高価なHBM(高バンド幅メモリ)の生産に注力していることが要因とされている。データセンター向けGPUやカスタムASICからの旺盛や需要が少なくとも2026年いっぱいは続き、供給の緩和は2027年の後半まで見込まれない、とOmdiaでは予測している。

さらに、多くの企業が2026年により高度なワークロードへの対応に向けてサーバの更新を行うが、そこにハイパースケーラの設備投資が重なるため大きな市場機会が生まれるとしている。また、次世代シリコンと高度な持続性に基づいた、より高付加価値なシステム設計への明確なシフトが見られるとのことで、こうした高性能化と継続的な部品不足が相まって、平均販売価格が上昇し、金額ベースの成長を後押しすると指摘している。


TSMCは今年の世界半導体売上高を前年比45%増に上方修正

TSMCは、去る4月22日にシリコンバレーで開催した同社の北米技術シンポジウム(参考資料3)で、2026年の世界半導体市場の成長率を前年比45%増との新たな予測を発表した(図3)。以前は30%台と予測していた。この上方修正は、AI主導の半導体需要急伸が予想を超えて進んできているためであるが、チップの販売個数の増加よりはむしろチップ価格の上昇によるものであり、特にメモリ価格の上昇が最も大きな要因であるとしている。


Booming Semiconductor Market Growth / TSMC

図3 2025年(年初予測と実績)および2026年(予測)の世界半導体市場成長率 出典:TSMC 2026 Noth America Technology Symposium, Santa Clara, CA, April 2026

2025年初にTSMC だけではなく多くの半導体関係者が同年の世界半導体売上高を前年比10%増と予測していたが、実際は23%増しとなった。AI 需要の続伸を読み切れていなかったためだ。今年も同様に予測の上方修正が今後各所で発表されるだろう。


2030年に1兆ドル超を1兆5千億ドル超に上方修正

TSMCだけではなく、ほとんどすべての半導体企業や市場調査会社がつい最近まで、世界半導体市場が2030年に1兆ドルを超えると予測していたが(図4)、TSMCは予測を上方修正し、2030年には1.5兆ドルを超えるという新たな予測を4月下旬に発表した(図5)。


Growth of the Semiconductor Industry, SK Hynix  / Semiconductor Industry Outlook, TSMC

図4 2024年時点でのSK hynix(左)およびTSMC(右)による世界半導体市場拡大の推移と今後の予測 いずれも2030年に1兆ドルを超えると見ていた 出典: imec Technology Symposium World 2024にて筆者撮影、 Antwerp, Belgium、 2024年5月


Semiconductor 1T dollars Milestone Accelerated / TSMC

図5 2026年4月時点での世界半導体市場の拡大の推移と今後の予測 出典:TSMC 2026 Noth America Technology Symposium, Santa Clara, CA, 2026年4月


2030年の世界半導体市場の最終製品向けプラットフォーム別売上高、HPC/AIが総売上の55%を占め、スマートフォン(20%)、自動車(10%)、IoT(10%)などの他のセグメントを大きく上回るとTSMCは見ている(図6)。同社は以前、2030年時点のHPC/AIの市場シェアを40%程度になると見ていた(図4右参照)。


2030 Semiconductor Market by Platform / TSMC

図6 2030年時点の世界半導体市場のプラットフォーム別売上高の内訳(%)予測 出典:TSMC 2026 Noth America Technology Symposium, Santa Clara, CA, 2026年4月


半導体産業は、関税、エネルギーコスト、地政学的緊張といったマクロ経済的な圧力に加え、AIインフラへの巨額投資額に関連するリスクに直面する中にあって、多くの人々の予測を裏切って、AI需要続伸に支えられて、いつまで驚異的な成長を続けられるか注目される。

参考資料
1. “Global Semiconductor Sales Increase 25% from Q4 2025 to Q1 2026”, SIA Latest News, (2026/05/04)
2. “Omdia Raises 2026 Semiconductor Forecast to 62.7% as AI Drives Global Memory Crunch”, Omdia Newsroom, (2026/04/23)
3. “TSMC Debuts A13 Technology at 2026 North America Technology Symposium”, Latest News, (2026/04/23)

Hattori Consulting International代表/国際技術ジャーナリスト 服部 毅
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