ローム・東芝パワー半導体連合をテクノロジー面から考察する
デンソーのローム(図1)への買収提案に端を発した、パワー半導体連合の行方がますます混とんとしてきた。先週末になり三菱電機も加わってきたからだ。元々ロームは東芝デバイス&ストレージ社との協力提携で話を進めてきたという経緯がある。ここにデンソーからロームへの買収提案がなされ、さらに三菱も加わるとどうなるのだろうか。
図1 パワー半導体の特性を評価するシミュレーション 出典:Rohm
テクノロジー以外の要素である政治的な思惑や関係各社の調整などを省き、純粋にテクノロジーの観点を元に、連合を含めどのような形がこれからの成長につながるのか、という視点からこの問題を探っていきたい。あくまでも編集者の主観であることをお許しいただきたい。
元々、ロームと東芝の関係では、ロームが2023年に東芝の株式非公開化の時に3000億円を出資した。東芝はシリコンIGBTで強く、300mmウェーハ工場でパワーMOSFETやIGBTなどを生産し、シリコンのコストダウンを視野に入れていた。一方のロームはSiCパワーMOSFETで古くからの強みがあった。EV(電気自動車)への応用でパワーシステムの小型化と走行距離の延長などを特長としてきた。
ところが、中国での景気低迷を受けてSiCの不調、Wolfspeedの会社更生法(Chapter 11)からの再建、GaNへの移行の動き、などSiCへの風当たりが強くなりロームには不利な周辺状況になっていた。欧州企業でも中国に工場を設立・運営してきた企業が大きな痛手を被り、その影響が産業分野全体に広がり、産業分野は低迷してきた。少しずつ回復の様子は見えてきたが、回復の実感はまだ乏しいようだ。
ここに、半導体産業は数の論理とばかりにパワー半導体同士の連合を作り、数合わせで世界に勝負しようという想いが働いた。かつて日本は政府主導でNECと日立製作所を出発点とするDRAMビジネスのエルピーダを設立したが、故坂本幸雄氏がCEOに就任するまでは沈んでゆくだけだった。ルネサスも同様で、システムLSIへの移行で日立、三菱電機、そしてNECが加わり、たすき掛け人事で運営したが、これも失敗に終わった。外部主導で再建されたものの、成長という視点が抜けていた。
今回は、パワー半導体を手掛ける企業同士の合併を模索している。半導体産業は数量を生産すればするほど単価は下がるという性質のビジネスであるが、これはメモリのような大量生産品に限って成り立つ「ルール」であり、パワー半導体のような大量生産ではない製品には成り立たない。
さらに、パワー半導体はスイッチングや増幅というアナログ制御から始まったが、今は、デジタル制御方式に移りつつある。インバータエアコンでのモータの回転数を連続的に変えられるインバータ制御はもちろん、デジタル制御信号を発するだけでアクチュエータを動かすことができる時代である。ロボットや自動車、ドローンはまさにデジタル制御になりつつある。
そのためにパワー半導体だけではビジネスが難しい。パワー半導体を動かすゲートドライバ、そのドライバに信号を送るDAコンバータ、DAコンバータに信号を送るマイコンなど一連のシグナルチェーンでシステムができている。さらにそのマイコンを動かすためには複数のセンサやアナログICなども必要になる。フィジカルAIの一つ、ロボットを自律制御とインテリジェント化には、センサからアクチュエータまでのシグナルチェーン+AIという、システムを理解していなければ製品ポートフォリオを広げられない。
パワー半導体でInfineon Technologiesがなぜ強いか。これらのシグナルチェーンの半導体製品をほとんど持っているからだ。パワー半導体だけで顧客に何を提案できるだろうか。システム実装した時の性能、機能、コストなどトータルのシステムの要求案件が顧客にとって最も重要なのだ。
パワー半導体が得意な企業が本来、協力すべきは、自社が不足している分野の製品に強い企業だろう。あるいは垂直統合の企業ならシステム部門との連携や協力してこれから成長を模索することだろう。成長できるのはどのような組み合わせが望ましいのか、システム的な考え方も選択肢の1項目に加えてもよいのではないだろうか。


