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中国勢が国産液浸ArF露光装置を製造開始、EUV使わず1.4nm相当技術開発へ

中国・上海の国営半導体製造装置メーカーが、長年オランダのサプライヤである蘭ASMLが事実上独占してきた液浸深紫外(Immersion DUV)リソグラフィ装置(光源;ArFレーザー;波長:193nm)の製造を開始した。米国のハイテクメディア(参考資料1)が中国の半導体サプライチェーンからの情報として伝え、他のメディアの後追い報道によりあっという間に世界中に伝わった。

ASMLは、昨年、131台の液浸ArF露光装置を出荷しており、市場占有率は98.7%と事実上の独占状態である。ニコンも細々と製造を行っているが、今年の出荷数量は数台に留まるという。ASMLやニコンの強敵が現れたということで、両社の株価は10%を超えて下落した。

中国での当初の液浸ArF露光装置の生産台数は限られており、今年は約5台、2027年には約20台のDUV装置が生産される予定だという。中国製ArF露光装置は、まずはファウンドリの中芯国際集成電路製造(SMIC)と華虹半導体(Hua Hong Semiconductor)、それにDRAMメーカーの長鑫存儲技術(CXMT)に順次納入され、性能評価される予定であるという。

ASMLの液浸ArF露光装置は、中国への輸出が規制される直前に中国の顧客が爆買いしており、現在、中国本土の先進半導体メーカーがASML製を活用している。

液浸型ArF装置はシリコンウェーハに回路パターンを転写する装置で、輸出規制により極端紫外線(EUV)露光装置の調達が絶たれた中国の半導体メーカーにとって、利用可能な最先端の露光装置となっている(図1)。米国連邦議会は現在、中国の半導体産業に対する露光装置の輸出規制と保守サービスの禁止を強化する法案(MATCH法案)の審議を進めているが、今回の中国における液浸ArF露光技術開発は、中国の半導体メーカーに重要装置の代替調達先を提供する可能性がある。


Over 35 years, 2 orders of magnitude resolution reduction continues... / ASML

図1 露光技術の進化に伴う解像度の向上;EUVリソグラフィが入手できない中国勢にとっては液浸ArFリソグラフィが最先端の露光技術 出典:ASML


今回の中国の技術的進歩は将来的にASMLの立場を脅かす可能性があり、同社の株価は急落したが、中国製の露光システムは性能や信頼性の面で依然としてASML製に劣り、量産化にはさらなる改良が必要とされ、当面はASMLの技術的優位性は揺るがない見通しである。


Huawei、露光技術による寸法の微細化に頼らず信号伝達時間短縮を追求へ

中国科学院の長春光学・精密機械・物理研究所が中国製EUV露光装置を開発したとか、HuaweiがASMLやニコンなどのEUVリソグラフィ技術経験者を採用するとともに、新興露光装置メーカーとともに深センでEUV露光装置の開発も進めているなどの噂が絶えないが、いずれもプロトタイプの製作段階で、実用化には至ってはいない。

一方、Huaweiは最近、微細化に頼る「ムーアの法則」に代わる「タウ(τ)の法則」を発表し、2031年までにEUV露光技術を使用せずに(=液浸ArF露光技術だけで)1.4nm相当の半導体量産めざすことを明らかにした(図2;参考資料2)。ちなみに、τとは、電気回路の時定数を表す記号として広く用いられている。


Huawei presents the Tau Scaling Law

図2 上海で開催されたIEEE ISCAS 2026で「Tau (τ)Scaling Law(τの縮小測)について基調講演するHuawei Semiconductor プレジデントのTingbo He 氏 出典:Huawei


つまり、Huaweiは、ムーアの法則に従って幾何学的寸法の微細化を追求するのをやめて、VLSIの信号伝達時間の短縮を追求することに注力しているという。異種デバイスの3D集積や光インターコネクトはじめ、さまざまな先進技術を駆使してシステム内のデータをより速く処理し、遅延をより低く抑えることによりArF露光技術だけで、ムーアの法則に従いEUV露光装置を用いて作製した1.4nmデバイスに相当するトランジスタ密度(単位面積ではなく3次元の立方体としての密度)や電気的性能を持った半導体デバイスを量産するとしている。このために、同社は、先進パッケージング技術を多用してVLSI内の信号伝達時間の短縮を実現するために、この点に知見のある半導体設計・デバイス・先端パッケージングエンジニアを世界中から採用している。Huawei創業者のレン・ジェンフェイ氏は「タウの法則こそが当社の半導体分野にとって唯一の突破口」と位置付けて広く世間にアピールしようとしている。

Huaweiの半導体設計子会社であるHiSiliconは、Appleと並んで世界トップクラスの先端モバイルSoCの設計力があると言われているが、今後、最先端デバイス開発競争で、EUVを採用して先行するライバルに追いすがることができるか注目される。

参考資料
1. “China Begins Mass Production of Homegrown DUV Chip Tools”, The Information, (2026/07/27)
2. Tingbo He, “Keynote Address: New Semiconductor Path in Practice.” 2026 IEEE ISCAS, Shanghai, May 2026.

Hattori Consulting International 代表/国際技術ジャーナリスト 服部 毅
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