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2025年CIS売上高トップは市場シェア50%のソニー、なぜTSMCと合弁するの?

ソニーグループの子会社であるソニーセミコンダクタソリューションズが、高感度なモバイルイメージング、先進的な積層アーキテクチャ、ハイエンドスマートフォンメーカーの大口需要に支えられ、2025年の売上高シェア50%でトップの座をさらに強固にした。フランスの半導体市場動向調査会社であるYole Group が、このほど発行した「Status of the CMOS Image Sensor Industry 2026(CMOS イメージセンサ業界の現状2026年版)」レポートで明らかにした(参考資料1)。

直近の2026会計年度第1四半期(4〜6月)のソニーのCIS事業売上高は、前年同期比26%増の5127億円、営業利益は約2.3倍の1222億円となり、第1四半期として過去最高を更新し、絶好調な状況にある(参考資料2)。

2025 CIS PLAYER MARKET SHARES - SPECIAL FOCUS WITH SONY / YOLE Group

図1 2025年CMOSイメージセンササプライヤ売上高ランキング 本図は参考資料1には含まれていらず、筆者がYOLE取材の際に入手し掲載許可を得た 出典:YOLE Group


2位は、ソニーのライバルの韓Samsung Electronicsだが、ハイエンドCISではソニー、ミドルレンジからローエンド分野では中国メーカーに圧迫され、シェアが従来の20%台から17%に落ち込み停滞している。3位は、2桁成長を見せた中Omnivision、4位は欧STMicroelectronics, 5位は米onsemiだった。米onsemiは自動車市場における競争激化の中で業績が悪化し、韓SK hynixは利益の上がらないCIS事業から利益率の高い中核メモリ事業にリソースを振り向けた。


モバイル分野でソニーのシェアは57%、デジカメや産業向けでもトップの座

アプリケーションレベルの競争はますます多様化しており、様々な市場がそれぞれ異なるサプライヤ構造を反映している。モバイル分野では、ソニーが57%の市場シェアで圧倒的な地位を占め、Samsungを大きく引き離している。一方、Omnivisin、SmartSens、GalaxyCore、STMicroelectronicsは、モバイルおよびセンシング分野における特定のニーズに対応している。Omnivisionは世界の車載イメージセンサ市場を牽引し、STMicroelectronicsは車内センシング分野で確固たる地位を築いている。

生産性向上機器分野でも、ソニーが依然としてトップの座を維持しているものの、新型コロナウイルス感染症後のPC、タブレット、ウェブカメラの普及に伴い、成長は限定的となっている。コンシューマ向け静止写真分野では、ソニーとキヤノンが依然として大きなシェアを占めている一方、スマートIoT分野では、Omnivision、GalaxyCore、SmartSens、Samsung、Himaxが主導権を握っている。産業分野でも、ソニーが依然として圧倒的な地位を維持している一方、onsemi、Teledyne、Gpixel、浜松ホトニクスは、高性能かつ長寿命のアプリケーションにおいて確固たる地位を築いている。


好調なソニーがなぜTSMCと合弁企業を設立するのか

ソニーとTSMCは8月11日、熊本県合志市を拠点とする合弁会社(JV)「Advanced Vision Semiconductor Manufacturing」の設立に関する契約を締結したと発表した。

JVに対して、ソニーは現金出資及び会社分割による資産移管により約4650億円を拠出し、TSMCは約2820億円の現金出資を行う。別途、日本政府からも巨額補助金を受けることになっているという。

両社による戦略的提携の下、ソニーが「イメージセンサ・コア技術の開発、製品企画及び製品設計」を担い、JVは、TSMCが有する先端プロセス技術及び製造への専門的な知識・知見を生かし、「イメージセンサの製造」を担当する。

それでは、なぜ好調のソニーがTSMCと合弁会社設立に至ったのだろうか、この件に関して、主要な理由が2つあると筆者は見ている。


ソニーグループは脱モノ造りへの構造改革、半導体も例外ではない

ソニーセミコンダクタソリューションズの親会社であるソニーグループは、現在、エンターテインメントとファイナンスに資源を集中する構造改革を進めており、テレビ・ビデオ・オーディオはじめ家電事業の多くを中国家電大手のTCLとの合弁企業に移管する。かつてのソニーの中核事業の事実上の売却による、モノ造りからの撤退である。

去る5月のソニーグループの決算説明会で、同社の社長兼最高経営責任者(CEO)の十時裕樹氏は、「当社は、設備投資負担を抑えながら収益性を上げていくには、いろいろな工夫が必要だと繰り返し述べてきた。2025年度にはファブライト戦略を追求する意向を示したが、今回のTSMCとの合弁事業はその一環である」と説明した。

ソニーは、今までイメージセンサ製造において機密性の高い画素チップは自社内部で製造し、ロジックチップをTSMCに製造委託してきた。今回、大きな差別化要素である画素チップについてTSMCが製造に関与することへの技術流出懸念について決算説明会参加者から問われた十時社長は、「世界最高水準の半導体プロセス技術を持つ会社と組むことは、当社にとって大きな進化になる」と強調し、門外不出だった画素チップの製造を、事実上、TSMCにゆだねることを明白にした。

さらに十時氏は、「TSMCはファウンドリであるから、本来、特定企業との合弁事業を好まぬ会社だと理解している」とした上で、「今回のJVはTSMCにとっても大きなチャレンジになると思うが、当社としてはこの機会をぜひ成果に結び付けたい」と述べた。以上が、ソニーとTSMCの合弁企業設立の理由の一つである。


SamsungがAppleと組んだ新型CISの米国製造に対抗

もう一つの理由は、すでに過去の拙稿「AppleがiPhone用CISをソニー製からSamsung製に乗り換えか、どうするソニー?」(参考資料3)で明らかにしたような背景から読み解けると筆者は考えている。詳細は、参考資料3を見ていただくとして、簡単に復習しておこう。米Appleは昨年8月6日に突然、「テキサス州オースチンのSamsung米国子会社に於いて、『世界初となるチップ製造のための革新的な新技術』をiPhone はじめApple製品に導入するために共同で取り組んでいると発表した。韓国はじめ世界中のメディアは、これは、SamsungがすでにIEDMで発表し、試作を始めているCu電極のハイブリッド接合で3枚のウェーハを積層した3層積層CISを指すと報じた。オースチンの新CISラインは今春立ち上がり、量産の準備が始まっているので、最初にSamsung製CISが採用されるのは、2027年に発売されるiPhoneからではないかと見られている。

ソニーグループ執行役員で経営企画管理などを担当する堀井直也氏は、2025会計年度第1四半期の決算説明会(昨年8月)で、「ソニーには、米国内に半導体製造拠点がなく、(Samsungに対抗するため)短期的に米国内でのCIS生産対応は現実的に難しい」と説明していた。さらに、第2四半期の決算説明会(昨年11月)では、「パートナーとの共同投資など米国での生産に向けて何かできないか、明確な答えはないが検討を続ける」とさらに踏みこんだ発言をした。その検討の具体策が今回の合弁企業であり、Samsungに対抗した米国でのCIS製造に向けた前段階だと筆者は見ている。

2026年第1四半期決算説明会(今年7月)で、ソニーグループのリスク管理担当の陶琳CFOは、質問に答える形で、「モバイル向けイメージセンサについて、特に3Q及び4Qにかけてリスクがあると考えている」と述べたが、そのリスク内容については明言を避けた(参考資料2)。AppleもSamsungも、「世界初の革新技術」の具体的な内容およびiPhone導入時期 については極秘扱いで、外部に漏れ伝わってきていない。

参考資料
1. “CIS industry: Sony extends its lead as China overtakes South Korea”, YOLE Group プレスリリース, (2026/08/03)
2. ソニー決算業績説明会資料ライブラリ
3. 服部毅、「AppleがiPhone用CISをソニー製からSamsung製に乗り換えか、どうするソニー?」、セミコンポータル、(2025/08/19)

Hattori Consulting International代表/国際技術ジャーナリスト 服部 毅
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