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政府の狙いは国内に自立したAI半導体サプライチェーン構築で経済安保確保

米Micron Technology は、日本法人であるマイクロンメモリジャパン広島工場(広島県東広島市)の既存製造棟の隣接地に1兆5千億円投資してAI用HBMなどの先端DRAM量産を行う新たな製造棟の起工式を去る7月4日に盛大に行った(参考資料1)。Micronの投資金額の1/3は日本政府(経済産業省)が支援するという。ここでは、Micron広島工場内で行われた赤澤大臣と記者団とのぶら下がり記者会見の模様を誌上実況して、経済産業省が何を考えているか明らかにしよう。読者諸兄姉はどのように感じられるだろうか。

マイクロンメモリジャパン広島工場新製造棟完成予想図 / Micron Technology

図1 マイクロンメモリジャパンの新製造棟完成予想図 後方の建物は既存製造棟。施工は大和ハウス/フジタ 出典:Micron Technology


式典には、Micronのサンジェイ・メロートラ会長兼社長兼CEOはじめ世界中の経営幹部、赤澤亮正経済産業大臣、地元選出の岸田文雄元首相、ソフトバンクグループ会長の孫正義氏、Micronと提携のうわさがあるラピダス小池淳義社長はじめ300人ほどの来賓が出席した。


なぜ儲けすぎ企業に今回5000億円超える資金援助をするのか?

記者:Micron Technologyの直近の2026年3〜5月期の業績は、売上高は前年比4.5倍、営業利益15倍で、営業利益率が80%を超えています。このような「儲けすぎ企業」に、日本政府は今回5360億円もの資金援助を行うのはなぜですか?政府の考え方をお聞きかせください。

赤澤経産大臣:半導体は供給給過多になると半導体不況が起きてきました。半導体業界はそういう状況にありますから、企業の経営について1社ごとにこの企業は儲けすぎだとかそうでないとか申し上げるつもりはありません。その上で、強い経済実現に向けたあらゆる産業分野のAIトランスフォーメーションの実現には、半導体が不可欠であるということを強調したいと思います。Micronは日本でDRAMを製造している唯一の拠点であるので、国内にしっかりとしたAI半導体の製造基盤を構築して安定的な供給体制を確保することは、経済安全保障の観点から極めて重要であります。

繰り返しになりますが、国内で唯一DRAMを製造する企業を支援することはかけがえのない価値があるということであります。我が国が経済の自立性を確保する上で非常に重要であるということです。需給ひっ迫時に増産を行うことや、(日本に対して)優先供給することを日本政府がMicronを支援する要件としており、半導体の安定供給に関して皆様の理解を賜りたいと思います。

筆者コメント:日本政府は2022年9月に、マイクロンメモリジャパンの生産設備先端DRAMの増強に465億円の資金助成、2023年10月に次世代DRAMの生産と研究開発に1920億円の助成、2025年9月にAI向け先端DRAMの量産計画と研究開発に5360億円の助成をそれぞれ決定している。Micronへの補助金累計は7700億円を超える。

赤澤経済産業大臣

図2 記者の質問に答える赤澤経済産業大臣 出典:マイクロンメモリジャパンにて筆者撮影


日本政府の狙いは国内に自立したAI半導体サプライチェーン構築

記者:地元広島の幹事記者として質問します。日本政府にとってMicron広島工場の位置付けは?地元への支援は?

赤澤大臣:DRAM(Micron)、 NANDフラッシュメモリ(キオクシア), 先端ロジック(ラピダス)をひとつなぎで生産できる製造基盤が日本国内に確保できることは大変大きな意味があります。端的に言えば、どれかひとつでも欠けていれば我々のニーズを満たせません。日本にAI向けチップ製造基盤がすべてそろう意義は大きいです。AIの時代に半導体の需要が急拡大するので、わが国の自立性が大きくかかわってきます。そのうえで、地元からいろいろな要望をいただいており、インフラ整備には2つの大きな問題があります。すでに広島工場までの道路で交通渋滞が起きておりますので道路整備の問題、もう一つはMicronの増産に伴う工業用水と電力の確保の問題であり、地元の自治体である広島県や東広島市をしっかりサポートしていきたいと考えています。


ラピダス・Micron・キオクシアの提携を歓迎

記者:赤澤大臣やMicron CEOは、来賓としてこられたラピダス小池社長とも意見交換されたようですが、ラピダスとMicronとの連携についてとのように考えていますか?

赤澤大臣:小池社長との話し合い内容は小池社長の許可を得ていないので公開できません。日本ではラピダスがロジック半導体を作り、マイクロンメモリジャパンがDRAMを作り、キオクシアがNANDフラッシュメモリを作るという補完的な関係にあります。日本国内にこれらの製造基盤があるということは経済安全保障上重要です。小池社長とメロートラCEOの話し合いではきっと提携の話が出たでしょう。各社間の連携については民間の話でありますから政府としてコメントすることは差し控えますが、もしもこれら3社が連携することになれば、我が国の半導体産業強靭化に寄与するので歓迎いたします。


マイクロンのライバルを日本に誘致する計画は?

記者:Micron以外の海外メモリ企業を日本に誘致する考えはありますか?

赤澤大臣:日本政府が掲げる成長戦略で半導体は大きな柱ですので、海外企業の日本への投資に関して門戸を開いており、経済産業省としても海外半導体企業が日本に投資することを歓迎しています。もしも手を挙げて日本に進出したい海外のメモリメーカーがあれば、私たちは積極的にその話を聞いてできる限りのことをオファーしたいと思っています。しかし、現時点で具体的な話が来ているわけではありません。

筆者コメント:2023年5月、岸田首相(当時)は、米国Micron Technology や韓国Samsung Electronicsを含む海外半導体企業7社のトップを首相官邸に招き、日本への投資を要請した(参考資料2)。キオクシアでは、筆頭株主の米ベインキャピタルが2026年7月9日までに全所有株を売却してキオクシア経営から手を引いたため、代わってSK hynixが大口株主(14.17%)として脚光を浴びている。SKは、千葉県や宮城県にメモリ工場進出のうわさが過去に一部のメディアに何度か取り上げられてきたが実現はしていない。


赤澤大臣がMicron CEOと非公開で意見交換

記者:赤澤大臣はメロートラCEOと今後のMicronの事業戦略について意見交換(図3)されたということですが、更なる経済的支援の要請がありましたか? 今後、更に追加助成を予定していますか?

赤澤大臣:常時、政府の事務方がMicronの要請を聞いて把握しているので、今回特に目新しい更なる支援要請があったわけではありません。ただし、今後とも工事の進捗に従い更なるお手伝いをすることはあるかもしれません。今後の資金助成に関しては、要請があればその都度審査し判断することにしています。


メロートラMicron CEOと赤澤経済産業大臣

図3 赤澤大臣(右側中央)とメロートラMicron CEO(左側中央)との非公開意見交換会議:赤澤大臣の奥は、経済産業省商務情報政策局長の野原諭氏 出典:経済産業省


半導体産業の人材育成政策は?

記者:半導体産業の人材育成をどのようにとらえていますか?

赤澤大臣:人材育成は極めて重要ととらえています。経済産業省では全国各地に産官学が連携したコンソーシアムを設立して講座を提供すると共に、米国の最先端半導体設計現場に人材を派遣しています。今日もMicronが広島大学に60もの講座を設けたとの話を聞いたばかりです。

Micronと東京エレクトロンは日米11大学と共同で次世代人材育成フレームワークである「UPWARDS」の取り組みを進めています。広島大学と地元企業が連携して「せとうち半導体コンソーシアム」が発足しています。

参考資料
1. 「Micron、広島工場の拡張に1.5兆円以上を投資」セミコンポータル、(2026/07/08)
2. 服部毅、「岸田首相が海外半導体関連企業のトップらと意見交換、日本への投資内容を読み解く」、マイナビニュースTECH+、(2023/05/22)

Hattori Consulting Internationl代表/国際技術ジャーナリスト 服部 毅
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