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1-3月四半期半導体販売高、前年比15.2%増;対中輸出規制措置の波紋

米国・Semiconductor Industry Association(SIA)より月次世界半導体販売高が発表され、今回は四半期の区切りで、1-3月について$137.7 billionで、前年同期比15.2%増、前四半期比5.7%減、3月単月については$45.91 billionで、前年同月比15.2%増、前月比0.6%減となっている。市場回復の材料が多々見えながら、本格的な盛り返し待ちの状況に見えている。米国政府が、中国のHuawei向け半導体出荷を認めていたライセンスを一部取り消した、という動きが報じられて波紋を呼んでいる。インテルやQualcommが含まれるとされ、現下の売上げ見込みへのインパクトもあらわされている。半導体販売高回復基調に水を差す懸念もあり、今後の推移に注目するところである。

≪第一四半期の世界半導体販売高≫

米国・SIAからの今回の発表が、次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○第一四半期のグローバル半導体販売高が、前年同期比15.2%増;3月の販売高が、前月比0.6%減少 …5月7日付け SIA/Latest News

Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2024年第一四半期の世界半導体販売高が$137.7 billionで、前年同期、2023年第一四半期と比べて15.2%増、しかし前四半期、2023年第四四半期を5.7%下回った、と発表した。
2024年3月の販売高は、2024年2月に対して0.6%減少した。月次販売高はWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。SIAは、売上げで米国半導体業界の99%およびnon-U.S.半導体会社の約3分の2を代表している。

「第一四半期のグローバル半導体販売高は、昨年第一四半期の合計を大きく上回ったが、販売高は通常の季節的傾向を反映して前月比および前四半期比でいくぶん落ち込んだ。」と、SIAのpresident and CEO、John Neuffer氏。「市場は今年いっぱいは成長を続け、2024年には年間2桁成長が予測される。」

地域別では、3月の販売高前年同月比で、China(27.4%), the Americas(26.3%), およびAsia Pacific/All Other(11.1%)と増加したが、Europe(-6.8%)およびJapan(-9.3%)では減少した。前月比では、中国がフラットであったが、the America(-0.1%), Europe(-0.9%), Asia Pacific/All Other(-1.2%), およびJapan(-2.0%)と減少した。

                         【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Mar 2023
Feb 2024
Mar 2024
前年同月比
前月比
========
Americas
9.61
12.14
12.13
26.3
-0.1
Europe
4.60
4.32
4.28
-6.8
-0.9
Japan
3.86
3.57
3.50
-9.3
-2.0
China
11.10
14.13
14.14
27.4
0.0
Asia Pacific/All Other
10.67
12.00
11.85
11.1
-1.2
$39.83 B
$46.17 B
$45.91 B
15.2 %
-0.6 %

--------------------------------------
市場地域
10-12月平均
1- 3月平均
change
Americas
12.83
12.13
-5.5
Europe
4.55
4.28
-5.8
Japan
3.81
3.50
-8.1
China
15.14
14.14
-6.6
Asia Pacific/All Other
12.32
11.85
-3.8
$48.66 B
$45.91 B
-5.7 %

--------------------------------------

※3月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒https://www.semiconductors.org/first-quarter-global-semiconductor-sales-increase-15-2-year-to-year-march-sales-tick-down-0-6-month-to-month
★★★↑↑↑↑↑

今回の発表を受けての業界紙の取り上げである。

◇First-Quarter Global Semiconductor Sales Increase 15.2% Year-to-Year; March Sales Tick Down 0.6% Month-to-Month (5月7日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)

2021年、2022年と相次いで年間半導体販売高の最高を更新して、昨年、2023年は減少に転じた経緯であるが、2024年はどうなるかということで、2022年以降の推移で照らし合わせながら見ていくことにする。
以下、米国・SIAの月初の発表時点の販売高、そして前年同月比および前月比が示されている。
2024年の出だし、1月は$47 Billion台の販売高であるが、2022年の前半のように$50 Billion台が続けられるかどうか、今後の推移に注目していくことになる。2月は$46 Billion台に下げたが、反転盛り返しへの期待である。3月も僅かながら下げて、反転待ちである。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
2022年 1月 
$50.74 B
26.8 %
-0.2 %
2022年 2月 
$50.04 B
26.1 %
-1.4 %
2022年 3月 
$50.58 B
23.0 %
1.1 %
2022年 4月 
$50.92 B
21.1 %
0.7 %
2022年 5月 
$51.82 B
18.0 %
1.8 %
2022年 6月 
$50.82 B
13.3 %
-1.9 %
2022年 7月 
$49.01 B
7.3 %
-2.3 %
2022年 8月 
$47.36 B
0.1 %
-3.4 %
2022年 9月 
$47.00 B
-3.0 %
-0.5 %
2022年10月 
$46.86 B
-4.6 %
-0.3 %
2022年11月 
$45.48 B
-9.2 %
-2.9 %
2022年12月 
$43.40 B
-14.7 %
-4.4 %
$584.03 B
 
→史上最高更新
 
2023年 1月 
$41.33 B
-18.5 %
-5.2 %
2023年 2月 
$39.68 B
-20.7 %
-4.0 %
2023年 3月 
$39.83 B
-21.3 %
0.3 %
2023年 4月 
$39.95 B
-21.6 %
0.3 %
2023年 5月 
$40.74 B
-21.1 %
1.7 %
2023年 6月 
$41.51 B
-17.3 %
1.9 %
2023年 7月 
$43.22 B
-11.8 %
2.3 %
2023年 8月 
$44.04 B
-6.8 %
1.9 %
2023年 9月 
$44.89 B
-4.5 %
1.9 %
2023年10月 
$46.62 B
-0.7 %
3.9 %
2023年11月 
$47.98 B
5.3 %
2.9 %
2023年12月 
$48.66 B
11.6 %
1.4 %
$518.45 B
 
2024年 1月 
$47.63 B
15.2 %
-2.1 %
2024年 2月 
$46.17 B
16.3 %
-3.1 %
2024年 3月 
$45.91 B
15.2 %
-0.6 %


半導体販売高が今後増加に向かうと予想させる材料が、AI需要を中心に以下の通りである。パソコン、スマホ、そして産業など、上向きとされながらも、推移をよく見定める必要はある。

◇Tablet Shipments Show Signs of Recovery in Q1 2024, According to IDC (5月3日付け IDC)
→International Data Corporation(IDC)のWorldwide Quarterly Personal Computing Device Trackerの速報データによると、2年以上減少が続いていたタブレット端末の世界出荷台数は、2024年第1四半期(1Q24)に前年同期比0.5%増の3,080万台と小幅な伸びを記録した。

◇HBM chip demand to drive H2 revenue: GlobalWafers (5月8日付け Taipei Times)
→世界第3位のシリコンウエハーサプライヤーであるGlobalWafers Co.(環球晶圓)は昨日、人工知能(AI)技術の主要コンポーネントである広帯域メモリー(HBM)半導体に使用される先端ウエハーの堅調な需要に牽引され、今年下半期の売上げは緩やかに増加すると発表した。

◇TSMC、4月売上高59%増の1兆円超;AI向け半導体好調 (5月10日付け 日経 電子版 18:00)
→半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が10日発表した4月の売上高(速報値)は、前年同月比59.6%増の2360億台湾ドル(約1兆1300億円)だった。生成AI(人工知能)サーバー向けなどの先端半導体の販売が好調で、4月としての過去最高を更新した。

現下の市場関連の見方として、米国・SIAがボストン・コンサルティング・グループに委託した調査が、以下の通りあらわされ、業界各紙が取り上げている。sub 10-nmの先端ロジック半導体の生産シェアにおいて、2032年までに米国がCHIPS and Science Act制定のもと、如何に伸びていくか、を予測している。

◇America Projected to Triple Semiconductor Manufacturing Capacity by 2032, the Largest Rate of Growth in the World (5月8日付け SIA Latest News)
→*米国・Semiconductor Industry Association(SIA)/ボストンコンサルティンググループのグローバル半導体サプライチェーンに焦点を当てた新レポートによると、CHIPS and Science Act制定後の10年間に米国は国内半導体製造能力を203%増加させ、世界の総ファブ生産能力におけるシェアをこの数十年で初めて拡大させるとの予測
 *米国・Semiconductor Industry Association(SIA)は本日、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と共同で、CHIPSおよび科学法(CHIPS)が制定された2022年から2032年にかけて米国国内の半導体製造能力が3倍になると予測する世界の半導体サプライチェーンに関する報告書を発表した。203%という予測は、その間の増加率としては世界最大である。
「Emerging Resilience in the Semiconductor Supply Chain(半導体サプライチェーンにおける新興レジリエンス)」と題されたこの調査では、米国が先端ロジック(10nm以下)製造に占めるシェアが、2022年の0%から2032年までに28%に拡大するとも予測している。
※先端ロジック半導体(sub 10-nm)生産市場シェア

2022年
2032年
米国
0%
28%
台湾
69%
47%
韓国
31%
9%
日本
0%
5%
欧州
0%
6%
中国
0%
3%
その他
0%
2%

◇US to Triple Chipmaking Capacity by 2032, Industry Group Says―US chip production capacity expected to triple by 2032 (5月8日付け BNN Bloomberg (Canada))
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA)がボストン・コンサルティング・グループに委託した調査によると、米国の半導体生産能力は2032年までに3倍になり、世界シェアは10%から14%になると予測されている。同調査は、国内半導体生産の減少傾向を逆転させるために、CHIPS and Science Actおよびその他の連邦政府出資プログラムを指示している。

◇America Projected to Triple Semiconductor Manufacturing Capacity by 2032 (5月8日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)

◇Future geographics of IC production―Report: US expected to produce 28% of world's sub-10nm ICs by 2032 (5月10日付け Electronics Weekly (UK))
→SIAが発表した報告書、"Emerging Resilience in Semiconductor Supply Chain"によると、2032年までに米国は10nm以下のICsの28%を生産し、中国は2%を生産するようになるという。

台湾そして韓国から、引き加減に見えるあらわし方である。

◇US to triple chipmaking capacity by 2032, industry group says (5月9日付け Taipei Times)
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA)の予測によると、米国の半導体生産は今後数年で爆発的に増加し、東アジアへのリスク依存を緩和するのに役立つという。

◇Editorial: Semiconductor factories leaving Korea for the US to weaken Korea’s backbone industry (5月10日付け The Chosun)
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA)とボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の予測によると、韓国における10ナノメートル以下の先端半導体の生産率は、現在の31%から2032年までに10%以下に低下すると予想されている。
この減少は、サムスン電子やSKハイニックスのような大手企業が、現在台湾のTSMCと世界の先端半導体市場を共有しているが、最新の工場を韓国ではなく米国に設立することを選択したことに起因している。

米中半導体摩擦は新しい段階に入っている、との見方である。

◇The US-China Chip Contest Is Entering a New Phase (5月10日付け Bloomberg)
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA)によれば、Chips and Science Actは、半導体企業が米国内に工場を建設するための助成金、融資および保証に$100 billion以上を拠出するもので、国内半導体生産の減少傾向を逆転させる雪崩のような投資をもたらした。しかし、半導体生産能力を増強しているのはアメリカだけではない: ワシントンを拠点とする該ロビー団体は水曜8日に、中国はサプライチェーンの一部に約30の新しい拠点を建設しており、これはアメリカよりも多い、と述べた。

このような市況および今後への見方が交錯する中、米国政府がHuawei向け半導体輸出許可を取り消す動きが以下の通り伝えられている。

◇US Revokes Intel, Qualcomm Licenses to Sell Chips to Huawei―Sources: US pulls export licenses from Intel, Qualcomm (5月7日付け BNN Bloomberg (Canada))
→情報筋によると、アメリカはインテルとクアルコムが中国のファーウェイ・テクノロジーズに半導体を出荷することを許可していた輸出許可を取り消した。米国は、ファーウェイに半導体を供給している可能性のある他の中国企業6社に対する制裁も検討している。

◇US government revokes Intel's license with Huawei Technologies (5月7日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→米政府が、制裁対象の中国通信機器メーカー、華為に対するインテルのマイクロプロセッシング半導体販売ライセンスを2024年5月7日に取り消し。
この決定は、中国当局が同国最大の通信キャリアに対し、外国製マイクロプロセッサーを段階的に排除するよう命じた数週間後に下されている。

◇US revokes Intel, Qualcomm's export licenses to sell to China's Huawei, sources say (5月8日付け Reuters)
→米国は、インテルやクアルコムを含む企業が、制裁を受ける中国の通信機器メーカーであるファーウェイ・テクノロジーズにノートパソコンや携帯端末に使用される半導体を出荷することを許可していたライセンスを取り消した、とこの問題に詳しい3人が語った。
4人目の人物は、いくつかの企業は火曜日にライセンスが即座に剥奪されたと通知されたと述べた。米商務省は同日未明、いくつかのライセンスを取り消したことを確認したが、企業名を挙げるには至らなかった。

◇ファーウェイへの半導体輸出許可取り消し 米商務省 (5月8日付け 日経 電子版 09:43)
→米商務省が、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への半導体の輸出許可を取り消したことが分かった。ノートパソコンやスマートフォンに使う半導体とみられるが、同省は許可を取り消された企業名は明らかにしなかった。
英フィナンシャル・タイムズが同日、米インテルと同クアルコムがファーウェイ向けの輸出許可を取り消されたと報じた。

中国発のあらわされ方である。

◇US-China tech war: Intel expects revenue to fall ‘below midpoint’ projections after Huawei ban (5月8日付け South China Morning Post) 
→*火曜7日、米国は、ブラックリストに載っている中国の通信大手ファーウェイが、インテルとライバルのクアルコムから半導体を購入することを許可するライセンスを取り消した。
 *ファーウェイは、その技術がスパイツールとして北京に利用される可能性があるとの懸念から、長年にわたって米国の規制の網に絡め取られてきている。

この許可取り消し措置の業績への影響が、インテルにより以下の通りあらわされている。

◇Intel, Qualcomm say exports to China blocked as Beijing objects (5月9日付け Reuters)
→インテルは水曜8日、米国が中国の顧客に対する半導体メーカーの輸出ライセンスの一部を取り消したため、同社の売上は打撃を受けるだろうと述べ、北京は国家安全保障の名の下に行き過ぎた行為だと訴えた動きである。
インテルは、証券取引委員会(SEC)に提出した書類の中で、ライセンスを取り消された中国の顧客名を明らかにしていないが、ロイターは火曜7日に、米国がインテルやクアルコムを含む企業に、制裁を受けている中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)にノートパソコンや携帯電話に使用される半導体を出荷することを許可していたライセンスを取り消したと報じていた。

◇インテル業績、ファーウェイ規制が影響;半導体輸出減か (5月9日付け 日経 電子版 11:36)
→米インテルは8日、米国が中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)への半導体輸出許可を取り消したことが業績に影響するとの見通しを示した。パソコン向けなどの半導体輸出が減る可能性がある。IT分野の米中対立が米半導体大手の中国事業に影を落としている。

◇インテル4〜6月、下振れ 対中輸出規制が業績影響 (5月10日付け 日経)
→インテルは8日、米証券取引委員会(SEC)に提出した資料で「7日に米商務省から中国の顧客に対する輸出許可を即時取り消すと通告を受けた」と明らかにした。企業名を示さなかったが、ファーウェイへの輸出許可を指すとみられる。
インテルは「その結果、2024年4〜6月期の売上高は当初の$12.5 billion〜&13.5 billion(約1兆9400億〜約2兆1000億円)の範囲にとどまるものの、中間値を下回ると予想している」とした。

AI(人工知能)モデルについても、輸出規制の検討が取り沙汰されている。

◇Exclusive: US eyes curbs on China's access to AI software behind apps like ChatGPT―US weighs export controls on AI models, sources say (5月8日付け Reuters)
→情報筋によると、商務省は中国やロシアなどへの高度なAIモデルの輸出規制を検討しているという。規制の対象となるモデルを商務省に警告するのに、計算能力のしきい値が使われる可能性がある。

米中摩擦に関連する現下の動き&内容を、以下取り出している。

◇More funds needed for US telecoms to remove Chinese equipment, says FCC―FCC requests funding for "rip and replace" program (5月2日付け Reuters)
→FCCは、通信会社がファーウェイとZTE製の装置を撤去するための追加資金を議会に求めている。同局によると、装置交換にかかる費用は$4.98 billionだが、議会は同プログラムに$1.9 billionしかOKを出していない。

◇China-U.S. Trade Tensions Become Still More Intense―Opinion: US-China trade relations getting intense (5月4日付け Forbes)
→Vestedのチーフ・エコノミスト、Milton Ezrati(ミルトン・エズラティ)氏は、米中両国が関税やその他の貿易上の罰則を強化する中、米中間の貿易摩擦が高まっていると指摘する。同氏は、米国には日本、英国およびEUという強力な同盟国があり、すべてのプレーヤーが米国の選挙の行方を注目していると特に言及している。

◇Debunking China’s overcapacity myth―Data shows China’s exports are more economic miracle than deflation-driven devilry (5月6日付け Asia Times)
→過去4年間、中国は輸出の大半を先進国市場からグローバル・サウスにシフトさせ、同時にグローバル・サウス全域に生産拠点を建設し、先進国市場に再輸出して、ほとんどの中国製品に対するアメリカの25%の関税と、その他の先進国市場の貿易障壁を回避している。

◇ファーウェイOS全面移行 スマホ「脱アンドロイド」、復調続く クルマと連携念頭 (5月8日付け 日経)
→中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は2024年内にスマートフォンなど向けの新しい基本ソフト(OS)、「ハーモニーOS NEXT(中国名は鴻蒙・星河版)」を投入する。従来は米グーグルの「アンドロイド」をベースにしたが、すべて自社で開発したものに切り替える。米政府の規制をかわし、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の需要を取り込む。

◇New Biden tariffs on China's EVs, solar, medical supplies due Tuesday―Biden reportedly to reveal fresh China tariffs (5月9日付け Reuters)
→米政権は、電気自動車、バッテリーおよび太陽電池などの主要分野をターゲットとした対中関税を明らかにすると報じられている。火曜14日に発表される予定だと、この件に詳しい関係者は語った。これはバイデン政権にとって、中国との競争における最大の動きのひとつであり、中国製金属への関税引き上げ要求の上に成り立つもの。

◇Hypothetical TSMC invasion 'absolutely devastating' says Raimondo―US dependent on TSMC; risk of Chinese seizure alarming―No it's not happened, but officials want readiness in the South China Sea (5月9日付け The Register (UK))
→Gina Raimondo(ジーナ・ライモンド)商務長官は下院委員会で、中国による台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング社(TSMC)の差し押さえは、最先端半導体チップの92%を同社に依存しているアメリカにとって「絶対に壊滅的」な打撃になると語った。ライモンド氏はこのようなシナリオの可能性については言及しなかったが、国内での半導体生産の重要性を指摘した。

◇China seizing TSMC would be 'devastating' for U.S. economy, Commerce Secretary says―U.S. chip investment continues to mitigate risk. (5月9日付け Tom's Hardware)
→ジーナ・ライモンド米商務長官は、中国が台湾に侵攻しTSMCを掌握した場合、米国経済に悲惨な結果をもたらす可能性について重大な懸念を表明した。ロイター通信によると、ライモンド商務長官は、中国が台湾に侵攻しTSMCを掌握した場合、アメリカの重要技術コンポーネント供給に深刻な影響を及ぼす可能性があると懸念を示した。

◇Biden Set to Hit China EVs, Strategic Sectors With Tariffs (5月10日付け Bloomberg)
→*米国、電気自動車をターゲットに一律値上げを拒否へ
 *トランプ政権時代の関税を数年かけて見直した後の措置

また新たな米中摩擦のフェーズを予感させるそれぞれの内容であるが、推移をよく見定めながらの半導体市場の今後の捉え方を要する受け止めである。


コロナ「5類」移行とはいえ、依然用心怠りなくの現状と思われ、コロナ前に戻る舵取りがそれぞれに行われている中での世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□5月5日(日)

我が国のGDP、ドイツに続いてインドに抜かれる見通しである。

◇日本の名目GDP、2025年にインドに抜かれ世界5位へ…円安でドル換算が目減り (讀賣新聞オンライン)
→日本の名目国内総生産(GDP)が2025年、インドに抜かれ、世界5位になる見通しとなった。国際通貨基金(IMF)が4月に公表した推計によると、インドのGDPは4兆3398億ドル、日本は4兆3103億ドルとなる。円安でドル換算が目減りしており、逆転時期は1年早まった。
インドの人口は世界最大の14億人を超え、高い経済成長を維持している。IMFによれば、2023年の実質成長率は日本の1.9%に対し、7.8%だった。内需の強さに加え、政府は外国企業に国内での生産を促している。2027年にはドイツを上回り、3位に浮上する見込みだ。

□5月7日(火)

利下げ観測が支えて、上げ基調が続き、8日続伸で締めて、3月末に付けた最高値に迫っている今週の米国株式市場である。

◇NYダウ4日続伸、176ドル高;米利下げ観測が支え (日経 電子版 07:47)
→6日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続伸し、前週末比176ドル59セント(0.45%)高の3万8852ドル27セントで終えた。米連邦準備理事会(FRB)が年後半に利下げを始めるとの観測から主力株の一角に買いが入った。半導体などハイテク株が上昇したことも投資家心理を支えた。
前週末発表の4月の米雇用統計で雇用者数や賃金の伸びが市場予想を下回った。労働市場の過熱感が薄れ、FRBの利下げ開始が一段と先送りになるとの観測が後退した。

□5月8日(水)

◇NYダウ、続伸し31ドル高;利下げ観測支えも上値重く (日経 電子版 06:15)
→7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5日続伸し、前日比31ドル99セント(0.08%)高の3万8884ドル26セントで終えた。米国の利下げ先送りを巡る懸念の後退が引き続き相場を支えた。半面、ダウ平均は前日までの4営業日で1036ドル上昇し、主力株の一角に利益確定売りも出やすかった。7日に決算を発表したウォルト・ディズニーが大幅に下げたことも、指数の重荷となった。

□5月9日(木)

台湾の輸出について、中国への依存低下の度合いがあらわされている。

◇台湾輸出、中国依存が低下 1〜4月30%、22年ぶり水準 デジタル供給網分散進む (日経)
→台湾で輸出の対中依存度が下がっている。2024年1〜4月は金額ベースで30.7%と同期として22年ぶりの低水準だった。中国経済の減速や、米中対立を踏まえたサプライチェーン(供給網)の再編などを反映し、密接につながってきた中台経済に遠心力が働く。

◇NYダウ、6日続伸172ドル高;利下げ観測で1カ月ぶり高値 (日経 電子版 05:57)
→8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6日続伸した。前日比172ドル13セント(0.44%)高の3万9056ドル39セントと、約1カ月ぶりに3万9000ドル台を回復した。ダウ平均の6日続伸は9連騰した昨年12月中旬以来。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始時期を巡る不透明感が後退しており、引き続き投資家心理の支えとなった。

□5月10日(金)

◇NYダウ、7日続伸331ドル高;企業業績の堅調さが支え (日経 電子版 06:24)
→9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は7日続伸し、前日比331ドル37セント(0.84%)高の3万9387ドル76セントで終えた。4月1日以来の高値を付けた。7連騰は昨年12月以来。9日発表の米雇用指標が労働需給の緩みを示した。米連邦準備理事会(FRB)が年後半に利下げに動くとの期待が広がり、米株に買いが入った。

□5月11日(土)

◇NYダウ、5カ月ぶり8日続伸;利下げ観測で迫る最高値 (日経 電子版 07:26)
→10日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比125ドル(0.3%)高の3万9512ドルで終え、8日続伸した。2023年12月以来、約5カ月ぶりの続伸記録。インフレ圧力の緩みを示唆する指標により米国の利下げ観測が再び浮上。堅調な企業決算も後押し、ダウ平均は3月末に付けた最高値3万9807ドルに迫る。


≪市場実態PickUp≫

【Apple関連】

Apple社内独自の半導体に取り組む「Project ACDC」(Apple Chips in Data Center)について、以下の通りあらわされている。

◇Apple Is Developing AI Chips for Data Centers, Seeking Edge in Arms Race―The company is leaning on its long history of chip development in the effort, code-named Project ACDC (5月6日付け The Wall Street Journal)
→アップルは、データセンターのサーバーで人工知能(AI)ソフトウェアを実行するために設計された独自の半導体に取り組んできている。
過去10年間、アップルはiPhone、iPad、Apple WatchおよびMacコンピュータ用の半導体を設計するリーディング・プレイヤーとして台頭してきた。このサーバー・プロジェクトは、社内コードネーム「Project ACDC」(Apple Chips in Data Center)と呼ばれており、この才能を同社のサーバーに生かすことになると、この件に詳しい関係者は述べている。

◇Apple working on AI chips for data centers, WSJ reports―Report: Apple is developing its own AI chip for data centers (5月7日付け Reuters)
→ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、アップルはProject ACDC(Apple Chips in Data Center)のコードネームで呼ばれるプロジェクトで、データセンター向けのAI半導体の開発に取り組んでいるという。アップルのサーバー用半導体は、モデルのトレーニングではなく、AIモデルの推論に重点を置く可能性が高いという。

◇Apple launches Project ACDC (5月7日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Apple Chips in Data Centerの略称

◇Apple working on its own AI chip for data centers, ‘Wall Street Journal’ says (5月8日付け Taipei Times)
→アップル社は、データセンターで人工知能(AI)ツールを動かすための自前の半導体を開発しているが、この半導体が運用されるかどうかは不明である、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が月曜6日に報じた。

AppleよりAIについての言及が見られたという状況があらわされている。

◇Apple no longer silent on AI; GenAI major talking point at earnings call (5月6日付け DIGITIMES)
→先日行われた2024年度第2四半期の決算会見で、アップルはついにAIとジェネレーティブAIに関するこれまでの堅苦しいアプローチから脱却し、質疑の中でオープンに議論した。当然のことながら、AIは決算会見で中国市場に次いで最も議論されたトピックのひとつとなった。

新型「iPad Pro」での「M4」プロセッサが、以下の通りAI機能搭載とあらわされている。

◇Apple debuts M4 processor in new iPad Pros with 38 TOPS on neural engine―Apple's M4 to debut in iPad Pro for AI performance―The new chip is all in on AI. (5月7日付け Tom's Hardware)
→アップルは、MacではなくiPad ProタブレットにAI機能を搭載したM4プロセッサを発表している。該3ナノメートルプロセスには、毎秒38兆回の演算が可能な16コアのニューラルエンジンが搭載されている。

◇Apple、AI挽回へiPad最新半導体「M4」;新戦略に布石 (5月8日付け 日経 電子版 11:30)
→米アップルがタブレット端末の最上位機種「iPad Pro」の次期モデルに、最新半導体の「M4」を搭載した。人工知能(AI)アプリを端末上で動かせるよう高速処理に特化したのが特徴で、出遅れるAIで反転攻勢を狙う。6月にも示される生成AIの新戦略への布石という位置づけだ。

◇Apple、新型「iPad Pro」16万8800円から;円安など響く (5月8日付け 日経 電子版 09:34)
→米アップルは7日、タブレット端末の最上位機種「iPad Pro」の次期モデルを15日に発売すると発表した。人工知能(AI)の処理に適した高性能な独自設計の半導体を搭載した。容量や性能を高めたことで、日本での価格は16万8800円からと、現行モデルに比べて3割以上高く設定した。
新型iPad Proの米国での価格は999ドルから。頭脳となる半導体に新たに改良した独自設計の「M4」を搭載する。現行モデルに搭載していた半導体「M2」に比べて半分の電力で同等の性能を発揮する。


【インテル関連】

米中摩擦関連のインパクトは上記の通りであるが、ここでは、我が国の関連各社との半導体「後工程」自動化の取り組みである。

◇Intel partners with 14 Japanese firms to automate chipmaking process―Intel collaborates in Japan on automating "back-end chipmaking processes" (5月7日付け Kyodo News (Japan))
→インテル社の日本法人は、日米が半導体のサプライチェーン強化に向けた取り組みを強化する中、パッケージングなどの「半導体製造の後工程」を自動化するための研究機関を日本国内14社と共同で設立した、と該新機関が火曜7日に発表した。

◇インテル、日米で半導体「後工程」自動化;地政学リスク減 (5月7日付け 日経 電子版 00:00)
→米インテルとオムロンなど国内14社が半導体を最終製品に組み立てる「後工程」を自動化する製造技術を日本で共同開発することが6日、わかった。2028年までに実用化する。日米でサプライチェーン(供給網)の地政学リスクを軽減する。
半導体は回路を微細にする「前工程」の技術が物理的な限界に近づき、複数の半導体チップを組み合わせて性能を高める後工程に技術競争の重心が移る。

◇インテルなど15社、半導体「後工程」研究組織を設立 (5月7日付け 日経 電子版 10:55)
→米インテルやオムロンは7日、半導体を最終製品に組み立てる「後工程」の自動化技術を開発する半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS、サタス:Semiconductor Assembly and Test Automation Standardization Research Association)を4月16日付で設立したと発表した。ヤマハ発動機や信越化学工業傘下の信越ポリマー、レゾナック・ホールディングス、ダイフク、シャープなど計15社が参画する。

以下、インテルの目指す量子プロセッサー関連である。

◇Intel's quantum leap in wafer-wide cryo-testing sets cool new standard―Approach could help make forever upcoming tech more reliable (5月8日付け The Register)
→インテルは、シリコンベースの量子プロセッサーの実現に向け、標準的な製造プロセスの最適化と、300mmウェハー全体で個々のデバイスの品質をテストする手段の開発という2つの進歩を遂げたと発表した。

◇Intel's quantum leap in wafer-wide cryo-testing sets cool new standardーIntel moves toward silicon-based quantum with cryoprober―Approach could help make forever upcoming tech more reliable (5月8日付け The Register (UK))
→インテルはスピン量子ビット技術で信頼性の高い量子プロセッサーの実現を目指している。同社は、シリコン量子ビット・デバイスの「新しい統計的特性評価」のための極低温ウェハ・プローバを披露している。


【インド初の商用MCU半導体】

ファブレス半導体新興企業、Mindgrove Technologiesによる製品、「Secure IoT」の発表が、以下の通りである。

◇Semiconductor company Mindgrove launches India’s first commercial MCU chip―Mindgrove Technologies offers India's first SoC for IoT devices (5月6日付け The Economic Times (India))
→Peak XV Partnersが支援するファブレス半導体の新興企業、Mindgrove Technologiesは日曜5日、インド初の商用高性能SoC(システムオンチップ)だと主張する製品を発表した。Secure IoTと名付けられたこの製品は、IoT機器向けに設計されており、同様の分野の他の半導体より30%低コストとなる見込みである。

◇How Indian fabless startup's affordable new SoC will change India and global chip landscape―Mindgrove's RISC-V-based SoC seen as cost-effective option in India (5月7日付け DIGITIMES)
→インドのファブレス新興企業、Mindgrove Technologiesは、地元の需要増加に対応するため、新しいRISC-Vベースのシステム・オン・チップ(SoC)であるSecure IoTを発表した。
Chennai(チェンナイ)を拠点とする同社は、Peak XV Partnersの支援を受けており、この新しい半導体によってインドのOEMsはコスト効率に優れ、機能豊富なデバイスを製造できるようになると発表した。

◇Mindgrove Launches India’s First Indigenously Designed MCU Chip (5月8日付け EE Times India)
→Peak XV Partnersが支援するファブレス半導体新興企業、Mindgrove Technologiesは、インド初の商用高性能SoC(システムオンチップ)、「Secure IoT」を発表した。


【Microsoft関連】

前回に続くMicrosoftの取り上げ、まずは、同社CEO、Satya Nadella氏の東南アジア歴訪についてである。

◇Microsoft accelerates data center construction and digital talent cultivation in Southeast Asia due to AI potential (5月7日付け DIGITIMES)
→マイクロソフトのSatya Nadella(サティア・ナデラ)最高経営責任者(CEO)はこのほど、インドネシア、タイ、およびマレーシアを訪問し、政府首脳と会談した東南アジア歴訪を終えた。ナデラ氏の日程とマイクロソフトの発表から、マイクロソフトが東南アジアにおけるAIの発展可能性に乗り気であり、現地のデータセンター・インフラ建設とデジタル人材育成を加速させていることが見て取れる。

次に、ウィスコンシン州でのデータセンター建設の取り組みである。トランプ前政権からの経緯が絡む立地である。

◇Biden touts new $3.3 billion Microsoft data center at failed Foxconn site Trump backed―Biden to promote Microsoft data center coming to Wis. (5月8日付け Reuters)
→ジョー・バイデン大統領は本日、ウィスコンシン州へ向かい、数千の雇用を作り出す見込みのマイクロソフト社の$3.3 billionのデータセンター建設計画を宣伝する。この拠点は、フォックスコンが計画を縮小する前に$10 billionの拠点を計画していた土地に建設される予定である。

◇鴻海跡地にMicrosoft;バイデン氏、前政権の空約束批判 (5月9日付け 日経 電子版 06:14)
→米政府と米マイクロソフトは8日、同社が2026年末までに米中西部ウィスコンシン州でAI(人工知能)などのインフラに$3.3 billion(約5100億円)を投資すると発表した。トランプ前政権の時代に、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の投資計画がほぼ未実現に終わった場所にデータセンターを建てる。投資発表を機に8日、バイデン米大統領が同州を訪問し演説した。


【ランサムウエア開発者起訴】

国際共同捜査で摘発したランサムウエア(身代金要求型ウイルス)集団「LockBit(ロックビット)」の開発者を米当局が起訴、以下の通りあらわされている。

◇ランサムウエア「ロックビット」開発者 米当局が起訴 (5月7日付け 日経 電子版 23:19)
→今年2月、日米欧などが参加する国際共同捜査で摘発したランサムウエア(身代金要求型ウイルス)集団「LockBit(ロックビット)」について、米国の捜査当局がウイルスのプログラムの開発者とされるロシア人メンバーを起訴したことが7日、明らかになった。
7日夜、英国家犯罪対策庁(NCA)や米司法省などがホームページ上でロシア人メンバーの男について詳細を公表した。

◇最恐ランサムウエア、中枢はロシア人;有力情報に15億円 (5月8日付け 日経 電子版 19:41)
→被害規模が最大級とされるランサムウエア(身代金要求型ウイルス)集団「ロックビット」を巡り、日米欧などの捜査当局がロシア人の首謀者を特定した。世界中の企業などから脅し取った身代金が$500 million(約775億円)に上ることも新たに判明。米司法当局による起訴は被害抑止につながる一歩だが、新手の集団も暗躍している。

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