AIの熱気2点:Nvidiaの抜きん出た業績、マイクロソフトの戦略急展開
世界半導体販売高が前年同月比では大きく伸びているものの前月比では僅かながらマイナスが続く、この1−3月四半期となり、本格的な持ち直しが待たれている現時点であるが、そんな中、AI(人工知能)半導体を圧倒的に引っ張るNvidiaの2−4月四半期業績が業績が発表され、売上高が前年同期比3.6倍、純利益が同7.3倍とまさに抜きん出た内容を示している。直近四半期の販売高サプライヤランキングでも大きく首位に挙げられるデータも見られて、現下のAIの熱気が引っ張る市況を象徴している。巨大IT大手各社のAIに向けたイベントでの活発なプレゼンが見られているが、中でもマイクロソフトのArmと組むAI半導体はじめ戦略の急展開に注目させられている。
≪規制含みのAI独走の様相≫
世界半導体販売高の見え方と同様、世界企業の業績も、踊り場に立ち入ろうとしている現況が、次の通りあらわされている。
◇世界企業3四半期ぶり減益 1〜3月、中国が「不況」輸出 (5月22日付け 日経 電子版 17:00)
→世界企業の業績が踊り場に差し掛かっている。2024年1〜3月期の純利益は前年同期に比べ6%減と3四半期ぶりに減益に転じた。中国の景気減速の影響が大きく、化学や鉄鋼、機械が振るわない。生成AI(人工知能)ブームを背景に米テック大手や半導体は好調を維持しており、世界経済の米国頼みの構図が一段と強まっている。4〜6月の業績も伸び悩む可能性もある。
そんな市場気分の中、Nvidiaの2−4月四半期業績が、水曜22日に発表され、以下業界各紙のそれぞれ取り上げである。非常に熱い一石を投じる内容である。
◇Nvidia shows no signs of AI slowdown after over 400% increase in data center business (5月22日付け CNBC)
→*エヌビディアの第1四半期の売上高は3倍以上に増加し、データセンター事業は前年同期比で400%以上の伸びを示した。
*現在エヌビディアは、同社のチップを何十億ドルも購入する企業も人工知能で儲けることができることを投資家に知らせようとしている。
*財務責任者のColette Kress(コレット・クレス)氏は水曜22日に投資家に対し、クラウドプロバイダーは投資に対して「即時かつ強力なリターン」を見ていると語った。
◇Nvidia shares pass $1,000 for first time on AI-driven sales surge (5月22日付け CNBC)
→*エヌビディアが水曜22日に発表した第1四半期決算は、売上高、利益ともに予想を上回り、株価は延長取引で1株あたり$1,000を超えて上昇した。
*水曜日の好決算は、エヌビディアが製造するAIチップへの需要が引き続き堅調であることを示唆している。
*ジェンセン・フアン最高経営責任者(CEO)は、「ブラックウェル」と呼ばれる次世代AIチップからの収益が今年後半には出始めるだろうと述べた。
◇Nvidia's latest amazing quarter―Nvidia's AI runway extends again with another revenue record (5月23日付け FierceElectronics)
→エヌビディアは2025会計年度第1四半期において、またしても四半期ごとの売上高予想を上回り、全体売上高とデータセンター売上高の両方で何度目かの四半期記録を樹立した。時計仕掛けのように、ウォール街のオブザーバーはまたもや毎四半期と同じ質問を投げかけた。このパーティーはいつ終わるのか?
それはこの第1四半期では終わらず、Nvidiaの売上高は$26 billionで、前年同期比262%増、前四半期比18%増となり、すでに予想されていた$24.9 billionを大きく上回った。
◇Nvidia Q1 profit up 628% y-o-y―Nvidia points to AI as a commodity as profits soar (5月23日付け Electronics Weekly (UK))
→Nvidiaの4月30日までの3ヶ月間(Q1FY25)の売上高は268%増の$26 billion、利益は628%増の$14.9 billionであった。データセンターの売上高は前年同期比427%増の$22.6 billion。
◇NVIDIA2〜4月売上高3.6倍 AI半導体「1強」予想上回る (5月23日付け 日経 電子版 06:53)
→米半導体大手エヌビディアが22日発表した2024年2〜4月期決算は純利益が前年同期と比べ7.3倍の$14.881 billion(約2兆3300億円)、売上高が同3.6倍の$26.044 billionだった。市場予想を上回り、人工知能(AI)向け半導体の需要の強さを示した。日米などの株式市場で半導体関連銘柄の押し上げ要因になりそうだ。
◇NVIDIA、AI半導体争奪戦で価格上昇 1年で売上高3.6倍 (5月23日付け 日経 電子版 13:27)
→米半導体大手エヌビディアの急成長が続いている。2024年2〜4月期の売上高は1年前に比べて3.6倍に拡大した。シェアが8割に達する人工知能(AI)向け半導体は奪い合いの状況が続き、高性能な製品の投入で価格も上昇している。AI開発用のソフトウエアを含め経済圏を築いていることで他社の追随を許さず、高収益につながっている。
関連するインパクト、動きが続いている。
◇Nvidia is the final hurdle for mega tech's earnings victory lap―All eyes on Nvidia as it reports its earnings, outlook (5月22日付け BNN Bloomberg (Canada))
→投資家はエヌビディアの2024年下半期の業績と見通しを聞くことになっている。Freedom Capital MarketsのJay Woods氏は、このレポートがAI関連銘柄だけでなく、より広い半導体市場にも影響を与えると予想している。
◇NVIDIA Might Shift To Improved FOPLP Packaging For A.I. Chips In 2025 ー Report―Report: Nvidia optimizing supply chain of AI chips (5月22日付け Wccftech)
→Nvidiaは、AIチップの不足を避けるため、チップ設計の多様化、特にBlackwellチップのfan-out panel-level packaging化に取り組んでいると言われている。同社のBlackwell GB200 GPUは、当初予定されていた2026年よりも早く、来年にはfan-out packagingを採用する見込みだ。
◇Nvidia forecasts quarterly revenue above estimates, unveils stock split―Nvidia forecast beats quarterly revenue estimates (5月23日付け The Korea Times (Seoul))
→エヌビディアの四半期収益予想は予想を上回り、同社は6月7日から株式分割を実施すると発表した。Jensen Huang最高経営責任者(CEO)は、AIチップ「Blackwell」が今四半期に出荷を開始し、来四半期には生産量が増加すると見込んでいる。
直近四半期の半導体サプライヤランキングがあらわされ、Nvidiaの突出ぶりが次の通りである。続く四半期、そして本年のランキングの顔ぶれ、様相がどうなるか、AIの熱気継続加減と合わせて、注目するところである。
◇Healthy growth for semis into 2025, says SI-AI helps buoy semiconductor growth this year and into next, report says (5月23日付け Electronics Weekly (UK))
→WSTSによると、2024年1Qの世界半導体市場は$137.7 billion。2024年1Qは2023年4Q比5.7%減、前年同期比15.2%増。
主要半導体企業の2024年第1四半期の結果はまちまちであったと、Semiconductor Intelligence誌が報じている。
2024年1Q販売高 | 1Q前四半期比 | 2Q前四半期比 | ||
1 | Nvidia | $26.0 Billion | 18% | 7.6% |
2 | Samsung SC | $17.4 | 6.7% | NA |
3 | Intel | $12.7 | -17% | 2.2% |
4 | Broadcom | $12.0 | NA | NA |
5 | SK Hynix | $9.3 | 9.9% | NA |
Dell、IBMなど各社の取り組みを後に続いて示しているが、巨大ITの一角、マイクロソフトのAI戦略の急展開が目立っている。
まずは、AI半導体搭載のパソコンである。
◇Microsoft announces new PCs with AI chips from Qualcomm (5月20日付け CNBC)
→*マイクロソフトは、人工知能(AI)モデルを実行するためのCopilot+規格に準拠した新しいSurface PCsを発表する。
*これらのPCなどにはArmベースのクアルコム・チップが採用され、より長いバッテリー駆動時間を実現するほか、AMDやインテルのチップを搭載したPCsも登場する。
マイクロソフトへのAIの取り組みは気候変動へのそれと両立するのか、という見方である。
◇Microsoft’s AI push imperils the company’s climate goal―The software giant’s electricity consumption last year rivaled that of a small European country, beating Slovenia easily (5月20日付け Taipei Times)
→マイクロソフト社が4年前、10年後までに排出量を上回る炭素を除去すると約束したとき、それは気候変動に取り組む最も野心的で包括的な計画のひとつだった。しかし今、人工知能(AI)の世界的リーダーを目指すこのソフトウェアの巨人のあくなき挑戦が、この目標を危ういものにしている。
アームとの半導体の取り組みがあらわされている。大きな変わりようである。
◇Microsoft、生成AIでパソコン再発明 アームと新半導体 (5月21日付け 日経 電子版 08:50)
→米マイクロソフトは20日、生成AI(人工知能)に特化したパソコンを開発したと発表した。端末に搭載した高性能半導体を使いてAIの処理性能を従来より最大20倍高め、瞬時に翻訳するほか画像生成ソフトが高速で動く。
通信がつながらなくても一部機能が使える。生成AIの使い方が変わり、コンピューターのあり方が変わる。
◇Microsoft、アームに接近 「ウィンテル」今は昔 (5月22日付け 日経 電子版 10:27)
→米マイクロソフトが生成AI(人工知能)の動作に最適化したパソコンを開発した。AIとパソコンの融合戦略でカギとなるのが半導体だ。パソコン向けでは主流でなかった英アームの設計技術が採用された。クラウドだけでなく端末側でAI処理をこなす「エッジAI」が、半導体を巡る新たな競争軸に浮上した。
◇MicrosoftとApple、3度目の端末決戦 AI半導体競う (5月21日付け 日経 電子版 12:01)
→米マイクロソフトは20日、生成AI(人工知能)の動作に最適化したパソコンを開発したと発表した。データ処理が必要なAIを端末上で素早く動かす「エッジAI」で先駆ける。米アップルもiPadやiPhoneにAIソフトの搭載を進める。パソコンとモバイルに続く両社の情報端末の新たな決戦は、AIに舞台が移った。
AIによる魅力的な新機能があらわされている。
◇Microsoft新型PC、AIで落書きも芸術 同時翻訳遅延なし (5月21日付け 日経 電子版 16:42)
→米マイクロソフトは20日、生成AI(人工知能)ソフトを組み込んだ「ウィンドウズ」の新型パソコンを公開した。特にリアルタイム翻訳と顔の補正といったウェブ会議の使い勝手をよくするツールや、タッチペンを使ったイラスト自動作成など、ビジネスで役立つ自動変換ソフトが充実している。
◇Microsoft、ウェブ会議TeamsにAI 企業の効率化を支援 (5月22日付け 日経 電子版 05:58)
→米マイクロソフトは21日、技術イベントを開き、人工知能(AI)を使う企業向け新サービスを発表した。ウェブ会議アプリ「Teams(チームズ)」にAIを導入し議事進行など運用を効率化できるようにした。クラウドサービスでは、ソフトとして米オープンAIの最新AIや自社AIの提供も始め、顧客が用途に応じAIの種類を選べるようにした。
◇通信不要AI、主戦場に 端末上で素早く作動 マイクロソフト、アップルに対抗 (5月22日付け 日経)
→米マイクロソフトは20日、生成AI(人工知能)の動作に最適化したパソコンを開発したと発表した。データ処理が必要なAIを端末上で素早く動かす「エッジAI」で先駆ける。米アップルもiPadやiPhoneにAIソフトの搭載を進める。パソコンとモバイルに続く両社の情報端末の新たな戦いはAIに舞台が移った。
アラブ首長国連邦(UAE)が支援するAI企業との連携の動きが、以下の通りである。
◇Exclusive: Microsoft’s UAE deal could transfer key U.S. chips and AI technology abroad―Proposed Microsoft-G42 deal in UAE eyed for national security risks (5月22日付け Reuters)
→マイクロソフトのBrad Smith(ブラッド・スミス)社長は、アラブ首長国連邦(UAE)が支援するAI企業、G42との注目の取引について、最終的には高度なチップやツールの譲渡を伴う可能性があると述べた。
今週、ロイターのインタビューに応じたスミス氏は、今回初めてその詳細が報じられたこの販売協定は、AIシステムのパワーを決定する宝石のようなmodel weightsなど、AI技術の重要なコンポーネントの輸出を伴う第2段階へと進む可能性があると述べた。スミス氏によれば、第2段階のスケジュールは未定だという。
「爆速経営」と以下にあらわされているが、AIの取り組みには、後でも示す通り規制がつきものであり、舵取りが問われるところである。
◇Microsoft、独自AIから端末まで 爆速経営に規制の影 (5月22日付け 日経 電子版 13:04)
→米マイクロソフトは21日、技術イベントを開き、法人向けの生成AI(人工知能)サービスを拡充すると発表した。20日にはAIに特化した端末も発表し、半導体も自社開発する。新興企業の技術を取り込みながら、AIに必要なあらゆる技術を次々とそろえる「爆速経営」を進めるが、背後には規制当局の影が迫っている。
AIの熱気について、今後の状況&情勢に伴う推移に、引き続き注目するところである。
コロナ「5類」移行とはいえ、依然用心怠りなくの現状と思われ、コロナ前に戻る舵取りがそれぞれに行われている中での世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□5月18日(土)
大台突破を経て高値圏を維持する米国の株価であるが、時価総額が世界の半分近くを占めるとのこと。
◇NY株4万ドル、米時価総額は世界の半分 新陳代謝で成長 (日経 電子版 15:42)
→米国の代表的な株価指数、ダウ工業株30種平均が17日、終値として初めて4万ドルの大台を突破した。リーマン危機翌年の2009年3月に付けた安値6547ドルから指数は15年で6倍超に拡大した。米国企業の合計時価総額は世界の半分近くを占める。イノベーション(技術革新)とけん引役の新陳代謝が、株価の持続的成長につながっている。
□5月20日(月)
台湾の頼総統が就任、中国が早々に威嚇の動き、TSMCはじめ半導体関連も一層目が離せないところである。
◇台湾の頼清徳総統が就任 中国と「現状維持」訴え (日経 電子版 12:49)
→1月の台湾総統選で当選した与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳(Lai Ching-te)総統が20日午前、就任した。台北市の総統府周辺で開かれた就任式で、中国との関係で現状維持を保ち、地域の平和と安定に貢献する考えを表明した。
□5月21日(火)
高値圏にあって利益確定売り、そして利下げ観測が再度後退して、本年最大の1週間下げ幅を記録した今週の米国株式市場である。
◇NYダウ反落196ドル安、4万ドル割れ ナスダック最高値 (日経 電子版 06:33)
→20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前週末比196ドル82セント(0.49%)安の3万9806ドル77セントで終えた。前週末に初めて4万ドル台で取引を終えた後で、主力株の一部に持ち高調整や利益確定の売りが出た。JPモルガン・チェースの大幅安も指数の重荷となり、ダウ平均は午後に下げ幅を広げた。
□5月22日(水)
◇NYダウ反発、66ドル高 NVIDIA決算控え様子見も (日経 電子版 07:17)
→21日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比66ドル22セント(0.16%)高の3万9872ドル99セントで終えた。米連邦準備理事会(FRB)が年後半に利下げし、米景気がソフトランディング(軟着陸)するとの期待が株式相場を支えた。22日のエヌビディアの決算発表などを見極めたいとの雰囲気も強く、ダウ平均の上げ幅は限定的だった。
□5月23日(木)
◇NYダウ反落201ドル安 FOMC議事要旨うけ利益確定売り (日経 電子版 06:02)
→22日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比201ドル95セント(0.50%)安の3万9671ドル04セントで終えた。米連邦準備理事会(FRB)が午後に公表した4月30日〜5月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で参加者が強いインフレ警戒の姿勢を示していたことが明らかになった。米主要株価指数が最高値圏にあるなか、足元で上昇が目立っていた景気敏感株の一角などに売りが出た。
□5月24日(金)
◇米株605ドル安、利下げ観測が再後退 利益確定売りも (日経 電子版 07:39)
→23日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比605ドル(1.5%)安の3万9065ドルで終えた。1日の下げ幅として2023年2月以来の大きさとなった。経済の底堅さを示す経済統計が相次ぎ、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始時期が後退するとの見方が広がった。
98才になられるとのこと、マレーシアのマハティール元首相の講演から。
◇マハティール元首相「米中対立、互いの寛容性が必要」―アジアの未来 (日経 電子版 15:51)
→マレーシアのマハティール元首相は24日午後、都内で開かれた日経フォーラム第29回「アジアの未来」で講演し、米中対立について「対話で解決されるべきだ。互いに寛容でなければいけない」と語った。
世界各地で紛争が続く現状に対し「歴史から学んでいない。戦争こそが問題の解決につながると考えている」と嘆いた。・・・・・
□5月25日(土)
◇米株、週間934ドル安 利下げ期待後退で今年最大の下落 (日経 電子版 06:14)
→24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比4ドル(0.01%)高の3万9069ドルで終えた。週間では934ドル(2.3%)下落し、1週間の下げ幅としては今年最大だった。米経済の堅調さを裏付ける経済統計が相次ぎ、米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測が後退した。米市場は3連休を控え利益確定の動きも出た。
≪市場実態PickUp≫
【Samsung関連】
半導体部門のトップ交代について、各紙の取り上げ、あらわし方である。
◇Samsung Electronics names new chief for semiconductor business as AI chip race heats up (5月21日付け CNBC)
→*サムスン電子は火曜21日、半導体事業の新しい責任者を任命したと発表した。
*同社は、「不透明なグローバルビジネス環境の中で競争力を強化するため 」だと述べた。
*サムスンはAIの波に乗るため、SKハイニックスと競って市場で最先端のメモリーチップを製造している。
◇Samsung's future planning chief to head semiconductor division―Samsung announces two executive moves in DS division (5月21日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子は、半導体事業を担当するデバイス・ソリューション(DS)部門で突然のリーダー交代を行い、チップ事業の業績が低迷する中、雰囲気を活性化させるために行われたと、同社は火曜21日に述べた。
◇サムスン電子、半導体トップ交代 業績不振影響か (5月21日付け 日経 電子版 11:30)
→韓国サムスン電子は21日、半導体部門を統括する事業部長に全永鉉(ジョン・ヨンヒョン、63)氏が就任したと発表した。2021年末から同部門トップだった慶桂顕(キョン・ゲヒョン、61)氏は半導体事業を去り、全氏の後任として新規事業部門のトップに就任した。
◇Samsung replaces chip chief, eyes Hynix lead (5月22日付け Taipei Times)
→サムスン電子は半導体部門のトップを交代させ、長年メモリーチップに携わってきたベテランを起用し、急成長する人工知能(AI)分野でSKハイニックスに追いつくための取り組みの陣頭指揮を執らせる。
◇Samsung implements 'shock therapy' to breakthrough memory chip crisis (5月22日付け The Chosun)
→サムスン電子が5月21日、半導体事業のトップを突然、Jun Young-hyun(ジュン・ヨンヒョン)副会長に交代させたのは、社内の課題意識の高まりを示すものだ。特に半導体のリーダーをターゲットにしたこのオフサイクルの人事異動は、世界のメモリー半導体市場でSKハイニックスがもたらす脅威に対するサムスンの対応を反映している。
◇サムスン半導体トップ交代 AI向け量産で後手 SK伸長、巻き返し図る (5月22日付け 日経)
→韓国サムスン電子は21日、半導体部門のトップを交代する人事を発表した。人工知能(AI)に欠かせない先端半導体メモリーで競合の韓国SKハイニックスに後れを取る中、巻き返しを図る。ただメモリーを巡る経営判断がぶれてきた面もあり、部門レベルの刷新で挽回できるかは不透明だ。
SK Hynixが先行優位とされる高帯域幅メモリー(HBM)半導体であるが、Samsung品のテストについての報道が次の取り上げとなっている。
◇Samsung refutes report of failing Nvidia's AI memory chip test―Samsung says HBM chip testing is on track despite reports ―Korean tech giant says its HBM chip testing proceeded smoothly (5月24日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子は、エヌビディアの高帯域幅メモリー(HBM)チップのテストに合格しなかったという金曜の報道に反論した。同社は、「HBMを供給するためのさまざまなグローバル・パートナーとのテストは順調に進んでいる」と述べた。
サムスンは現在、NvidiaのAIプロセッサーにメモリーチップを供給するため、米グラフィックチップ大手、NvidiaとHBMチップのテストを行っているが、ロイターはサムスンが熱と消費電力の問題でテストに合格しなかったと報じた。
【AIの規制関連】
AIに責任をもって取り組むと、韓国・ソウルでグローバルな協議の場が持たれている。
◇14 global tech giants adopt business pledge on 'responsible' development of AI (5月21日付け The Korea Times (Seoul))
→韓国と世界のハイテク企業グループは水曜22日、共同誓約を採択し、人工知能(AI)を責任を持って開発・活用し、この技術での社会的課題に取り組むことを誓った。
Seoul AI Business Pledge(ソウルAIビジネス誓約)が、ソウルで開催されたAI Global Forumの開会式で、韓国のサムスン電子、Naver, KakaoおよびKTを含む14社、並びにグーグル、マイクロソフト、OpenAIおよびIBMといった世界の大手ハイテク企業によって発表された。
◇Global tech giants call for responsible AI development at Seoul forum―Tech giants pledge to develop AI responsibly (5月22日付け The Korea Times (Seoul))
→韓国で開催されたフォーラムで、サムスン電子、SKテレコム、マイクロソフト、OpenAIおよびグーグルなどが、AIの安全で持続可能な発展を確保することを誓約した。「Seoul AI Business Pledge(ソウルAIビジネス誓約)は、責任あるAI開発と利益共有を追求する国内外のハイテク企業の自発的なコミットメント」と、韓国のLee Jong-ho(イ・ジョンホ:李鍾鎬)科学情報通信技術相。
◇Global tech companies pledge AI safety development (5月22日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→米国、中国、韓国およびアラブ首長国連邦(UAE)の企業が今週、韓国のソウルで開催された第2回グローバルAIセーフティ・サミットで顔を合わせた。
AI規制で先行しているEUにおいて、AI規制法が次の通り成立している。
◇EU AI法案が加盟国に承認され成立 規制は2026年に適用の見通し (5月21日付け NHK 21:03)
→EU=ヨーロッパ連合が世界で初めて包括的にAIを規制することを目指して手続きを進めてきたAI法案は21日、加盟国に承認され、成立した。
一部のAIの利用を禁止したり利用に厳しいリスク管理を求めたりする内容で、2年後の2026年に規制が本格的に適用される見通し。
◇EU、AI規制法が成立 生成コンテンツに明示義務 (5月22日付け 日経)
→欧州連合(EU)の加盟国からなる閣僚理事会は21日、世界初の人工知能(AI)規制法案を承認した。すでに立法機関の欧州議会も採択しており、正式に成立した。生成AIの提供企業にAI製であることを明示させるなど透明性の担保を求める。
日本など多くの国がAIに関するルール整備を検討するなか、世界標準をめざすEUの規制内容は他国の政策立案の参考になる。
米国議会下院での中国へのAIモデル輸出阻止に向けた動きである。
◇US House bill moves to block export of AI models to China (5月22日付け CyberNews)
→アメリカの議員たちは水曜22日、機密性の高いAI技術が中国共産党の手に渡らないよう保護することを目的とした法案を提出した。
Enforce Act - Enhancing National Frameworks for Overseas Critical Exports Act - は、バイデン政権にAIモデルの輸出を制限する権限を与えるものである。
◇Lawmakers advance bill to tighten White House grip on AI model exports―Bill to control AI model exports advances in House―Vague ML definitions subject to change ― yeah, great (5月23日付け The Register (UK))
→下院外交委員会の議員たちは、中国へのAIモデルの輸出を阻止する権限を拡大することを目的とした「重要輸出の海外制限のための国家的枠組みの強化法案(Enhancing National Frameworks for Overseas Restriction of Critical Exports Act)」を提出した。この法案は、国家安全保障上の脅威とみなされるAIモデルを米国企業が流通させる場合、ホワイトハウスが輸出許可を要求できるようにするものだ。
そして、我が国でのAI法規制に向けた動きである。
◇AI普及へリスク規制 開発者に報告義務 安全性評価など、法整備検討 大規模事業者が対象 (5月23日付け 日経)
→政府が人工知能(AI)の法規制の検討に乗り出した。生成AIの登場で社会の混乱を生むリスクが顕在化し、国際的に規制強化の方向で議論が進む。日本も法的拘束力を交えたルールを整備し、リスクを低減したうえでのAIの積極的な利活用や技術革新を促す。
政府の「AI戦略会議」(座長・松尾豊東大大学院教授)が22日の会合で今後のAI制度に関する論点を提示した。高市早苗科学技術相は「海外で様々な動きがあり、欧州連合(EU)では21日にAI規制法が成立した。国内外の動きを振り返り、今後のAI戦略を議論したい」と述べた。
【AI関連イベント】
6月上旬の台湾でのComputex 2024を控えた論評記事である。
◇AI PC will become an obsolete term soon, predicts tech titans at pre-Computex 2024 event (5月17日付け DIGITIMES)
→エッジにおける人工知能(AI)の時代が到来し、各社は6月4日から7日まで開催されるComputex 2024でのソリューションやAI PC製品の展示が待ちきれない様子だ。逆説的ではあるが、5月16日に開催された「AI PC Industry Exploration Forum」の業界専門家は、「AI PC」や「AIスマートフォン」という言葉は数年後には死語になるだろうと予測している。
◇Challenges for AI PCs are just about to start (5月20日付け DIGITIMES)
→予想外の展開がない限り、AI PCsはCOMPUTEX 2024の中心的な焦点になると予想される。また、2024年にはAIエンドユーザー製品の競争の第一波が始まるだろう。
5月16日、AsusのSamson Hu共同最高経営責任者(CEO)、PegatronのT.H. Tung会長、および複数の業界リーダーが「Pre-COMPUTEX Event Series - AI PC Industry Exploration Forum 」に参加した。該フォーラムでは、AI PCsの将来の発展に関する数多くの見識を共有した。
Dell開催イベントから、以下の通りである。
◇Dell's AI Factory is open for business, with Nvidia's help (5月20日付け FierceElectronics)
→デルは今週、独自のイベントを開催し、Nvidiaの技術を活用してエンタープライズ市場向けの新しいAI対応製品やサービスを開発する方法を紹介する最新のパートナーとなった。
◇Dell deepens AI push with new PCs, Nvidia-powered servers―Dell to add Nvidia-powered servers, 2 PCs for AI (5月20日付け Reuters)
→デル・テクノロジーズは、クアルコムのプロセッサーを搭載した一連のAI対応PCsを発表し、エヌビディアの最新チップをサポートする新しいサーバーは2024年後半から利用可能になると述べた。
デルは月曜20日にラスベガスで開催されたイベントでこれらの発表を行い、人工知能(AI)サーバーの収益性の高い市場での勢いを維持し、大流行後の受注不振の後に今年予想されるPC市場の回復に備えることを目指している。
IBMのThink 2024での最新状況である。
◇IBM CEO praises real open source for enterprise gen AI, new efforts emerge at Think 2024―IBM outlines its latest AI technology (5月20日付け VentureBeat)
→IBMは、企業向けAIを強化するために、Java向けWatsonxコード・アシスタント、Z向けWatsonxアシスタントおよびWatsonx Orchestrateを含む3つのWatsonxアシスタントを発表した。IBMはまた、AIアシスタントに実際の企業情報を提供するため、Retrieval Augmented Generationとベクトル・データベースにも注力している。
【imec関連】
ベルギーの半導体R&D機関、imec関連の動きが続いて見られており、以下の通りである。
◇A new game-changing memory tech that could supercharge AI is on the cusp of going mainstream ― rivals assemble at major event to discuss IGZO DRAM as in-memory computing inches towards reality―IGZO DRAM memory tech is coming from Imec for AI―IGZO DRAM technology is faster and more energy efficient (5月21日付け TechRadar)
→Imecは、インジウム-ガリウム-亜鉛-酸化物(indium-gallium-zinc-oxide:IGZO)技術を、アナログ・インメモリ・コンピューティング・アプローチを用いたAIメモリに使用するための実験を行っている。IGZO DRAM技術はスピードとエネルギー効率を提供する。
◇imec in Belgium is to host a pilot line to develop 1nm CMOS SoC and chiplet technologies with an investment of 2.5bn Euros. (5月21日付け EE News Europe)
→NanoICパイロット・ラインは2nm以下のCMOS技術に焦点を当て、1.6nm以下の特徴を持つインテル16Aプロセスの鍵となる。このラインでは、チップレットの試作が重要な技術になると予想される。
◇ベルギーimec「2ナノ以下」半導体試作ラインに4200億円 (5月21日付け 日経 電子版 14:00)
→ベルギーに本拠を置く半導体の研究開発機関「imec(アイメック)」は21日、欧州連合(EU)やオランダのASMLなどと最先端半導体の試作ラインを設けると発表した。回路線幅が2ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下の半導体を開発する。投資総額は約25億ユーロ(約4200億円)を見込む。
EUからの補助金約14億ユーロ(約2300億円)を充てるほか、ASMLなど半導体関連企業が投資額を拠出する。
◇Imec to build beyond-2nm pilot line―Imec developing the NanoIC pilot line to run processes beyond 2nm (5月22日付け Electronics Weekly (UK))
→Imecが、NanoIC pilot lineを構築、EU Chips Actが構想するR&Dプロセスラインで、2nm以降のプロセスを実行する。
◇AMD・東エレクなど半導体トップ「AI時代の企業連携を」 (5月22日付け 日経 電子版 02:00)
→ベルギーの半導体研究開発機関「imec(アイメック)」は21日、半導体イベント「ITFワールド2024」を同国アントワープで開いた。人工知能(AI)向けの半導体需要が急拡大する一方で、技術開発の難易度が高まる。米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)など半導体大手のトップが企業の垣根を越えた連携を訴えた。
◇imec、日本法人設立へ ベルギーの半導体研究 (5月24日付け 日経)
→ベルギーに本拠を置く半導体の研究開発機関「imec(アイメック)」が2024年内に日本法人を設立する。最先端半導体の国内生産を目指すラピダスとの連携を深めるほか、自動車など幅広い領域で協業パートナーを探す。アイメックは世界各国から研究者が集う非営利の研究機関。
【Apple関連】
TSMCの2-nmを巡って、以下の取り沙汰である。
◇Apple COO Jeff Willians Reportedly Visited Taiwan To Discuss Reserving First Batch Of TSMC’s 2nm Wafers, Potentially Adding $18.6 Billion To The Foundry’s Revenue―Apple exec's appearance in Taiwan fires up 2nm talk (5月20日付け Wccftech)
→アップルのJeff Williams(ジェフ・ウィリアムズ)執行役員が台湾で目撃された。おそらく、TSMCの2nmウェハーの最初のロットを調達する契約を取りまとめるためだろう。アップルは来年、iPhone 17のラインナップに2nm技術を採用すると報じられているが、他の報道では2026年とされており、詳細は異なる。取引が始まればいつでも、TSMCの売上げに数十億ドル加わるだろう。
中国での劣勢が伝えられる中、iPhoneの値下げの動きが以下の通りである。
◇Apple looks to boost sales in China with hefty discounts as e-commerce festival gets underway (5月21日付け CNBC)
→*中国のeコマースマーケットプレイスJD.comとアリババのTmallは、月曜20日に618祭りのプロモーションを開始して以来、iPhoneの一部モデルを20%もの割引価格で販売している。
*アップルの256ギガバイトのiPhone 15 Pro Maxは、元の9,999元から7,949元(US$1,120)で販売され、2月に報告されたものよりも大幅に高い割引であった。
*テクノロジー市場調査会社Canalysのアナリスト、Le Xuan Cheiw氏は、今回のプロモーションはショッピングの祭典に合わせたものだが、急な値引きはiPhoneの売れ行きが鈍化していることと関連している可能性が高いと述べた。
◇Apple cuts iPhone prices in China as competition heats up (5月21日付け Yahoo! Finance)
→アップルは中国で販売するiPhoneの価格を引き下げ、特に中国最大の電子商取引サイトであるTmallでの製品に割引を提供した。この積極的な値下げは、競合のファーウェイが最新のハイエンドスマートフォン「Pura 70 Ultra」を発表し、競争が過熱する中で行われた。