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対中投資規制、新たな米中摩擦景観;韓国およびSamsungの追撃の動き

米中摩擦のまた新たな景観模様が見られている。米国政府が、人工知能(AI)およびハイテク分野の中国企業への投資計画の事前通知を義務付ける規則案を発表、国家安全保障上の脅威となる中国技術への米国投資を抑制する狙いである。これに対して、世界のAIや半導体のサプライチェーンを危うくし、国際的な経済回復の不確実性が高まるものと、中国の反応である。さらに、米国の規制を受ける中国の半導体業界の先端技術製造の困難な状況もあらわされている。次に、メモリ半導体の落ち込みを受けて回復途上のなか、韓国が国を挙げる、そしてSamsungが特にファウンドリー対応で台湾のTSMCとの開きを狭めるよう追撃を図る、いくつかの動きに注目させられている。

≪覇権確立&奪取に向けて≫

米国政府の中国企業への投資について規制する動き関連が、次の通りである。

◇US closer to curbing investments in China's AI, tech sector―US proposes rules restricting investing in Chinese tech (6月21日付け Reuters)
→米国財務省は、中国のテクノロジー企業への投資を禁止したり、人工技術に取り組んでいる向きなど中国のテクノロジー企業への投資計画について米国政府への事前通知を義務付けたりする規則案を発表した。政府は8月4日まで該規則案に対するコメントを受け付ける。

◇U.S. Proposes Restrictions On Tech Investments In China―Chips, quantum, AI, and EDA would be sharply limited under Treasury Department plan. (6月24日付け Semiconductor Engineering)
→米国は、国家安全保障上の脅威となる中国技術への米国投資を抑制するための新たな規制を提案し、特に半導体とマイクロエレクトロニクス、量子情報技術、およびAIを挙げている。

これに対する中国での反応である。

◇US lens on investments to hinder AI, chip sectors (6月25日付け China Daily.com.cn)
→米国企業や個人の中国における主要技術への投資を制限・監視するというワシントンの最新の提案は、世界の人工知能(AI)や半導体のサプライチェーンを危うくし、国際的な経済回復の不確実性を高めるだろう、と政府関係者や専門家が月曜24日に述べた。

中国の半導体業界関連の課題および実態が、以下さまざま伝えられている。

◇A look at China's semiconductor industry (6月21日付け FierceElectronics)
→中国政府が半導体の能力を高めるために多額の投資を行っているにもかかわらず、中国国内の半導体産業は依然として大きな課題に直面している。
政府は最近、国内チップ産業の発展を後押しするために$47.5 billionの基金を設立すると発表した。国内販売が急落を続けるなか、これはおそらく時の要請である。

◇Tech war: Huawei sees HarmonyOS breaking the dominance of Android and Apple’s iOS in China (6月21日付け South China Morning Post)
→ファーウェイは金曜21日、HarmonyOS Nextのベータ版を開発者向けにリリース、Androidアプリのサポートを終了する。

◇Chinese consumers love AI smartphones but Apple faces localisation challenges, report says (6月22日付け South China Morning Post)
→中国市場は、大規模言語モデル(LLMs)やデータ主権に関する現地の規制により、世界のAIスマートフォンメーカーに課題を突きつけている。

先端製造の関連である。

◇Exclusive: China's ByteDance working with Broadcom to develop advanced AI chip―ByteDance partners with Broadcom to create 5nm AI chip (6月23日付け Reuters)
→バイトダンスは米チップ設計会社ブロードコムと共同で5ナノメートルのAIプロセッサを開発中で、米中が緊張状態にあるなか、ハイエンド・チップの安定供給を確保する狙いがある。このチップは米国の輸出制限に準拠し、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング社(TSMC)が製造する予定だが、生産開始は今年になる見込みではない。

◇Huawei struggling to ramp GPU production as US sanctions bite―Sanctions, tech issues hamper Huawei's GPU production―President Xi tells nation that battle for tech dominance, game between 'international powers' are 'intertwined' (6月26日付け The Register (UK))
→ファーウェイ・テクノロジーズは、米国の制裁措置により、Ascend 910Bグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)の生産拡大に苦戦している。NvidiaのGPUsに匹敵するよう設計され、Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)が7ナノメートル技術を使って製造しているAscend 910Bは、古い製造装置を再利用しているため、技術的な問題が生じている。

HBM(high-bandwidth memory)半導体への対応の難しさである。

◇China may miss booming global market for high-bandwidth memory chips, BofA analyst says (6月24日付け South China Morning Post)
→*中国の半導体サプライチェーン、ハイエンドメモリチップ製造にはまだ不十分
 *Bank of America(BofA)のアナリストによると、artificial intelligence(AI)プロジェクトのデータセンターで使用される広帯域メモリ(HBM)チップの需要急増が世界の半導体業界を熱くしているが、中国本土のsupply chainはこの活況の市場セグメントの利益を享受する準備が整っていない。

◇China's HBM development hits snags, South Korean chipmakers to fill the gap (6月26日付け The Chosun)
→バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストによると、中国がAI半導体向け広帯域メモリ(HBM)の開発で困難に直面していることから、当面は韓国メーカーに頼る見込みである。理由は2つある: 第一に、中国のAI市場が急成長しており、HBMの必要性が高まっていること。第二に、HBMを開発しようとする中国の努力は、先端半導体技術に関する米国の厳しい規制によって妨げられている。

HuaweiのOSについては、アジア最大級のモバイル関連見本市「MWC上海」(中国・上海市の上海新国際博覧センター)にて披露されている。

◇ファーウェイ、独自OS中国でApple超え 米規制も再成長 (6月26日付け 日経 電子版 17:20)
→中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は26日、中国で開幕したアジア最大の通信見本市で高速通信などの最新技術を披露した。同社は独自の生成AI(人工知能)や基本ソフト(OS)も改良し、OSは中国で米アップルを上回る規模で普及する。米政府の規制が続くなか、国内需要を取り込み再成長を狙う。

◇ファーウェイOS搭載9億台 中国シェア、アップル上回る 米規制下、内需取り込み (6月27日付け 日経)
→中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は26日、中国で開幕したアジア最大の通信見本市で高速通信などの最新技術を披露した。同社は独自の生成AI(人工知能)や基本ソフト(OS)も改良し、OSは中国で米アップルを上回る規模で普及する。米政府の規制が続くなか、国内需要を取り込み再成長を狙う。

米中の狭間での我が国の難しさである。

◇半導体規制、日米すれ違い 日本、中国の報復を懸念 米は管理厳格化求める (6月28日付け 日経)
→斎藤健経済産業相は26日、訪問先の米ワシントンでレモンド米商務長官や韓国の安徳根(アン・ドクグン)産業通商資源相と会談した。半導体など重要物資のサプライチェーン(供給網)強化で合意した一方、半導体に関する対中規制の強化には踏み込まなかった。

次に、AI需要が突出する様相の市況のなか、勢いNvidiaおよびTSMCがこのところの市場の前面キーワードとなっている。局面の打開、そして追撃を図るべく、韓国そしてSamsungのさまざまな動きが見られている。

まずは、Samsungを巡る関連、以下の通りである。

◇Samsung teases investment to get into the GPU game―Samsung hints at GPU market entry with new investment―A head-on assault on Nvidia seems unlikely ― but dumping AMD from Exynos has merit (6月24日付け The Register (UK))
→サムスン電子の2023年度コーポレート・ガバナンス報告書から、グラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)事業への投資計画が明らかになり、同社の将来戦略に関する憶測を呼んでいる。可能性のある動きとしては、GPUsを製造するファウンドリー事業を強化することで、Nvidiaのような顧客を引きつけるか、Exynosシステムオンチップ(SoCs)を使用するモバイル機器向けに独自のGPUsを開発することが挙げられる。

◇Could Samsung Seize Opportunity amid TSMC's Price Increase and Full Operation Capacity? (6月24日付け Business Korea)
→台湾のTSMCが半導体ファウンドリーサービスの値上げを発表するなか、サムスン電子が競争意欲を再燃させている。TSMCの稼働率が100%に迫るなか、業界関係者はサムスンへの顧客の流入を予測している。
6月23日、TSMCを含む台湾と中国のファウンドリー企業が値上げに乗り出していると報じられた。TSMCはグローバルリーダーとして認められており、値上げの先陣を切っているようだ。TSMCのMark Liu(マーク・リウ)会長は6月4日の株主総会で、コスト上昇のため価格調整は避けられないと述べた。また、エヌビディアのJensen Huang(ジェンセン・フアン)最高経営責任者(CEO)も、製造コストが低すぎるとして値上げを支持した。

◇Samsung Electronics Enters into Panel Level Packaging Field Ahead of TSMC (6月24日付け Business Korea)
→サムスン電子は半導体パッケージング業界で大きく前進しており、パネルレベルパッケージング(PLP)分野でTSMCに先行する位置付けとなっている。この進展は、Samsungが2019年にSamsung Electro-MechanicsからPLP事業を7,850億ウォン(約$581 million)で買収した後のことであり、この戦略的な動きが現在の前進の舞台を整えた。

◇[News] Samsung Gains Early Market Entry Advantage in the Panel-Level Packaging Sector Ahead of TSMC (6月25日付け Trend Force)
→日本経済新聞の以前の報道によると、TSMCはファンアウト・パネルレベル・パッケージング(FO-PLP)分野に参入すると言われている。現在、Business Koreaの報道によると、サムスンはPLP分野で大きく前進しており、同社は2019年にSamsung Electro-MechanicsからPLP事業を買収している。

◇Samsung poised to overtake Apple in Taiwan's mobile market by June (6月25日付け DIGITIMES)
→競争の激しい台湾の携帯電話市場において驚くべき変化が起きており、サムスン電子は早ければ2024年6月にも月間販売台数でアップルを追い抜くと予想されている。業界関係者は、この変化を促す2つの重要な要因を挙げている。
第一に、台湾の3Gネットワークが6月30日に閉鎖される予定であるため、中・低価格帯のスマートフォンの需要が急増すること。第二に、アップルの次期iPhoneの発売が9月に迫っていることが、消費者の購入延期を促しており、5月には両社の出荷台数の差がわずか1.1ポイントに縮小した。

◇Samsung builds infrastructure for AI chips used in faster, more efficient computing (6月25日付け Yonhap News Agency)
→サムスン電子は火曜25日、人工知能(AI)コンピューティング向けのより高速で効率的なチップを製造するためのインフラ構築を完了したと発表した。
いわゆるコンピュート・エクスプレス・リンク(CXL)技術のインフラは、ソウルの南約45キロに位置するHwaseong(華城)のSamsung Memory Research Centerにて構築された、と同社は声明で述べた。

こんな中、Samsungの半導体工場での製造工程での欠陥発生も伝えられている。

◇サムスン電子の半導体工場、ウエハー製造工程で欠陥発生(6月27日付け chosun Online 朝鮮日報)
→サムスン電子の韓国国内のファウンドリ(半導体受託生産)事業部で、半導体のウエハー製造工程で欠陥が発生したことが分かった。同社が26日、明らかにした。
韓国の財界などによると、このほどサムスン電子ファウンドリ事業部のウエハー製造工場で、品質に影響を及ぼす欠陥(defect)が発生し、このため収率にも影響が出る可能性があることが分かった。正確な被害規模は明らかになっていない。

一方、AI向けHBM半導体でリードするSK Hynixは、先行きをさらに早める動きである。

◇SK Hynix Speeds HBM Roadmap as AI Demand Soars (6月27日付け EE Times)
→SKハイニックスは、AIに不可欠な高帯域幅メモリー(HBM)の生産を引き続き独占することを示すロードマップを発表した。ライバルのメモリーメーカーであるSamsungやMicronに対してリードを築いてきた同社だが、今後はより厳しい競争に直面することになるだろう、と業界専門家はEE Timesに語っている。
SK Hynixは先月の業界イベントで、2025年に次世代HBM4を最初に導入する可能性があると述べた。

韓国政府の半導体産業をさらに支援する動きが、以下の通りあらわされている。

◇South Korea Kicks Off $19 Billion of Chip Loans, Funds From July (6月25日付け BNN Bloomberg (Canada))
→韓国は7月からチップメーカーへの援助を開始し、重要な産業を後押しするために誓約された26兆ウォン($19 billion)の財政支援パッケージを開始する。

◇Korea to provide $12.22 billion of policy financing for chip industry investment―South Korea unveils $12.22B in loans for chip industry (6月26日付け The Korea Times (Seoul))
→Choi Sang-mok(チェ・サンモク)財務相によると、韓国政府は半導体産業への企業投資を促進するため、来月$12.22 billionの低利融資を実施する。この構想は、Yoon Suk Yeol(ユン・ソクヨル:尹錫烈)大統領が世界的な競争の中で半導体産業を強化するために発表した$19 billion規模の支援策の一環である。

遅れめの半導体実装R&Dへの支援も、次の通りである。

◇Korea to inject $200 mn into semiconductor packaging R&D―South Korea lags far behind Taiwan, China and US in the semiconductor packaging market (6月26日付け The Korea Economic Daily)
→韓国は、AIアプリケーションに不可欠な高性能・低消費電力チップ製造の鍵となる半導体パッケージング技術の国営研究開発(R&D)プロジェクトに2,744億ウォン($200 million)を投入する。

韓国の現下の輸出の状況である。

◇South Korea's exports to rise for ninth month on chip, US demand: Reuters poll―Poll: South Korean exports expected to rise again on US demand, chip sales (6月27日付け Reuters)
→*6月の輸出予測は前年比6.3%増(5月は同11.5%増)
 *好調なチップ販売と米国需要、しかしカレンダー的には不利な影響
 *下期は成長率鈍化も、非米国地域の回復が下支え-エコノミストロイター通信が木曜27日発表した世論調査によると、韓国の6月の輸出は、カレンダーの影響で伸び率が鈍化する可能性が高いものの、米国向け半導体販売が増加をけん引し、9カ月連続で増加する見通しだ。

韓国と米国の業界同士の対話の場が持たれている。米中摩擦、AI需要対応など現下の課題となる。

◇South Korea, US lobby groups discuss ties in chip tech, supply chain (6月28日付け ET Telecom)
→韓国半導体産業協会(KSIA)と米国半導体産業協会(SIA)も、フォーラムを定期的に開催し、人工知能(AI)を含む新興分野でのビジネス・パートナーシップを模索する覚書(MoU)に署名した。

◇Korea-U.S. Semiconductor Forum Strengthens Supply Chain Alliance (6月28日付け Business Korea)
→6月27日(現地時間)、ワシントンD.C.で韓米サプライチェーン・産業対話半導体フォーラム(Korea-U.S. Supply Chain and Industry Dialogue Semiconductor Forum)が開催され、両国間の半導体サプライチェーン同盟強化に向けた重要な一歩を踏み出した。このフォーラムは、韓国と米国の半導体産業協会が共同で主催し、サムスン電子、SKハイニックス、インテル、およびクアルコムなどの大手半導体企業が一堂に会し、業界が直面している現在の課題について議論した。

主導権確保に向けた各国・地域の動きに、引き続き注目である。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□6月25日(火)

5日続伸、約1カ月ぶりの高値で始まったが、以後小幅な上げ下げとなった今週の米国株式市場である。

◇NYダウ、260ドル高で5日続伸 出遅れ銘柄の買いが支え (日経 電子版 06:38)
→24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5日続伸した。前週末比260ドル88セント(0.66%)高の3万9411ドル21セントと、約1カ月ぶりの高値で終えた。相対的に出遅れ感のあった銘柄などに買いが入り、ダウ平均を押し上げた。ダウ平均の構成銘柄ではないがエヌビディアなど半導体株やハイテク株の一角は売られた。

□6月26日(水)

◇NYダウ、反落し299ドル安 消費関連で持ち高調整売り (日経 電子版 06:11)
→25日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6営業日ぶりに反落し、前日比299ドル05セント(0.75%)安の3万9112ドル16セントで終えた。前日におよそ1カ月ぶりの高値を付けた後で、主力株の一部に持ち高調整の売りが出た。同日発表の米景気指標が経済の減速感を示したことも、重荷となった。下げ幅は400ドルを超える場面があった。

□6月27日(木)

37年半ぶりの円安ドル高水準、なお止まらない状況である。

◇円相場 1ドル=160円台後半に値下がり 対ユーロは最安値を更新 (NHK 06:09)
→26日のニューヨーク外国為替市場ではドルに対して円安が一段と加速し、円相場は一時、1ドル=160円台後半まで値下がりして、およそ37年半ぶりの円安ドル高水準を更新した。また、ユーロに対しても円安が進み、一時、1ユーロ=171円台後半をつけてユーロが導入された1999年以降の最安値を更新した。

◇NYダウ15ドル高 大統領選討論会前に慎重姿勢 (日経 電子版 07:08)
→26日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅に反発し、前日比15ドル64セント(0.03%)高の3万9127ドル80セントで終えた。アマゾン・ドット・コムやアップルなどハイテク株が上昇し、ダウ平均を支えた。半面、相場全体を方向付けるような材料に乏しい中、米長期金利の上昇(債券価格の下落)が株価の重荷となり、ダウ平均は下げる場面があった。

□6月28日(金)

◇円37年半ぶり安値、沈む日本の購買力 牛肉も「買い負け」 (日経 電子版 05:00)
→円相場が1ドル=160円台後半まで下落し、37年半ぶりの安値圏に沈んだ。ドルやユーロなど様々な通貨に対して円安が進んだことで、日本人が海外からモノを買うときの割高感は増している。円の購買力を示す指標はピーク時の3分の1にとどまり、過去最低水準に沈む。輸入コストの上昇で家計の負担は重くなるほか、牛肉など食料品の輸入で他国に買い負ける事例が広がってきた。

◇NYダウ36ドル高、金利低下支え 半導体株は下げ目立つ (日経 電子版 06:50)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅に続伸し、前日比36ドル26セント(0.09%)高の3万9164ドル06セントで終えた。米長期金利が低下(債券価格は上昇)し、ハイテク株の一部に買いが入った。半面、半導体株の下げが目立った。積極的に買いを入れる材料に乏しく、ダウ平均は小幅な上昇にとどまった。

□6月29日(土)

Nvidiaが大きく引っ張るAI市況が改めてあらわされている。

◇米株4〜6月3.9%高 続くNVIDIA1強、上昇分の4割稼ぐ (日経 電子版 07:25)
→28日の米株式市場でS&P500種株価指数は前日比0.41%安の5460.48で引けた。4〜6月期は3月末比3.9%高となり3四半期連続で上昇した。米半導体大手エヌビディアが相場全体をけん引する構図は変わらず、同期間中に37%高となった。S&P500採用銘柄の時価総額増加額のうちエヌビディア1社だけでおよそ4割を占めた。

◇NYダウ反落、45ドル安 期末の持ち高調整売り響く (日経 電子版 08:06)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日ぶりに反落し、前日比45ドル20セント(0.11%)安の3万9118ドル86セントで終えた。前日夕に決算を発表したナイキが急落し、指数を押し下げた。月末と四半期末が重なり、持ち高調整の売りも重荷となった。もっとも、5月の米個人消費支出(PCE)物価指数や消費者の景況感の改善を示す指標を受け、ダウ平均は上昇する場面もあった。


≪市場実態PickUp≫

【インテル関連】

インテルの新製品&新技術関連の内容が、以下の通りあらわされている。それぞれに方向性など注目である。

◇Intel’s Lunar Lake and Arrow Lake to launch this fall: Rumored launch dates revealed―Report: Intel readies Arrow Lake, Lunar Lake for fall debut―In September and October, respectively. (6月24日付け Tom's Hardware)
→報道によると、インテルは今秋、デスクトップおよびノートPC向けの次世代Arrow LakeおよびLunar Lakeプロセッサを発表する予定だという。薄型軽量ノートPC向けのLunar Lake-VプラットフォームおよびデスクトップPC向けのArrow Lake-SプロセッサーとZ890プラットフォームは、インテルのプロセッサー技術の大きな進歩を示している。

◇Intel’s Latest FinFET Is Key to Its Foundry Plans ―Company’s new process signals transition toward foundry service provider (6月25日付け IEEE Spectrum)
→先週のVLSIシンポジウムで、インテルは高性能データセンター顧客向けファウンドリーサービスの基盤となる製造プロセスについて詳述した。
同じ消費電力で、Intel 3プロセスは前プロセスであるIntel 4より18%性能が向上している。同社のロードマップでは、インテル3は、同社が2011年に開拓したフィン電界効果トランジスタ(FinFET)構造を使用する最後のものである。しかし、FinFETが最先端でなくなった後も、インテルの計画に不可欠な技術を初めて採用することも含まれている。さらに言えば、この技術は、ファウンドリーとなって他社向けの高性能チップを製造するという同社の計画にとって極めて重要である。

◇Intel demonstrates first fully integrated optical I/O chiplet―Intel unveils groundbreaking OCI chiplet for AI and HPC―Intel has announced what is being described as a milestone in integrated photonics technology for high-speed data transmission. (6月27日付け New Electronics (UK))
→インテルのIntegrated Photonics Solutions Groupは、インテル中央演算処理装置(CPU)とコ・パッケージされた初の完全統合型光compute interconnect(OCI) chipletのデモを行い、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)とAIインフラストラクチャ向けの高帯域幅インターコネクトの進歩を示した。該OCIチップレットは、最大100メートルまでの32Gbpsデータ伝送を64チャネルでサポートし、消費電力を削減するとともに帯域幅を向上させる。

◇Siemens EDA for Intel 16 and 18A nodes―Siemens, Intel Foundry certify Solido EDA software for 3D-IC designs (6月27日付け Electronics Weekly (UK))
→Siemens Digital Industries Softwareとインテル・ファウンドリーは、インテルの16Aおよび18Aノード向けSolido EDAソフトウェアを認定し、3D-IC(3次元集積回路)設計の性能、スペースおよび電力効率の利点をより迅速に活用できるembedded multi-die interconnect bridge(EMIB:組込みマルチダイ相互接続ブリッジ)を実現した。


【DAC 2024関連】

主催するANSYS社のNvidiaとの取り組みである。

◇Powering Next-Generation Insightful Design―Ansys, Nvidia to unveil 3D visualization for IC design―Visualizing physical phenomena in 3D is a new paradigm for IC packaging signal and power integrity. (6月24日付け Semiconductor Engineering)
→ANSYS社とNvidia社は、Design Automation Conference(DAC)において、3D IC設計における物理現象を可視化する新しい手法を発表する予定である。この技術は、複雑なICパッケージ設計のデバッグと精度を向上させることを目的としており、3Dフィールド・プロットは業界にとって貴重なツールになる、とアンシスのprincipal product manager、Sara Louie(サラ・ルーイ)氏は書いている。

◇Advances In 3D-IC At DAC 2024―Ansys highlights solutions for thermal integrity, power integrity, signal integrity, and mechanical integrity. (6月26日付け Semiconductor Engineering)
→2024 Design Automation Conference and Exhibitにおいて、ANSYSはNVIDIAと共同で、3D-ICマルチフィジックス解析、可視化、およびサインオフにおける最新の進歩を展示している。マルチダイ(3D-IC)エレクトロニクス・アセンブリのサーマルインテグリティ、パワーインテグリティ、シグナルインテグリティ、およびメカニカルインテグリティに関するANSYSソリューションが展示されている。

EE Timesの開催現地(サンフランシスコ)からの実況記事である。

◇DAC 2024 Day One: Designing Chiplets and AI with RISC-V―Our daily roundup from DAC 2024 day one. (6月25日付け EE Times)
→今週サンフランシスコのMoscone Center(モスコーニ・センター)で開催のDAC 2024のラウンドアップ第1弾。ここでは、チップレットや高度なパッケージングを使用したヘテロジニアスシステムの設計や、RISC-Vを使用したAIの設計のためのEDA、ツール、サポートについてお話しする。以下の各氏。
 Synopsysのgeneral manager of EDA business、Shankar Krishnamoorthy氏
 TenstorrentのCEO、Jim Keller氏

◇DAC 2024, Day 2: Wider Context For Systems Design, Plus GenAI EDA Startups―Our daily roundup from DAC 2024 Day 2. (6月26日付け EE Times)
→この2日目のまとめでは、シーメンスEDAのMike Ellow(マイク・エロウ)CEOにインタビューし、エレクトロニクス・システム設計に幅広い文脈が必要な理由や、AIツールを使ったより複雑なシステムの民主化と実現について聞く。また、ケイデンスのArif Khan(アリフ・カーン)氏に、同社のシリコンソリューション・グループがネットワークとメモリのトレンドについてどのように見ているかについて話を聞いた。ネットワーク・ファブリックについては、ステルス状態から脱したばかりの新興企業、Baya Systemsと、RISC-Vと新しいCHERIアライアンスについてはCodasipと話をする。

◇DAC 2024 Day 3: Wafer-Level Digital Twins, Reusable Chiplets―Our day three wrap of DAC 2024. (6月27日付け EE Times)
→このDAC2024の3日目のまとめでは、Silvaco(シルバコ)社(最近IPOを果たした)のCEO、Babak Taheri(ババク・タヘリ)氏に話を聞いた。同社はウェーハレベルのデジタル・ツインの開発に注力しており、同社がウェーハレベルの製造施設向けに「Fab Technology Cooptimization」(FTCO)というコンセプトを説明している。


【Micron関連】

台湾の工場での火災が懸念される中、直近四半期業績で黒字転換を果たしたMicronである。ここでもAI半導体が牽引とされている。

◇Fire at Micron Taiwan fab raises memory chip price concerns (6月24日付け DIGITIMES)
→台湾中部の台中にあるマイクロン・テクノロジーのDRAM工場で最近火災が発生し、業界関係者の間で短期的な価格動向に対する懸念が広がっている。台湾マイクロンによると、この事故は工場の操業や従業員、請負業者の安全への影響はなく、調査が開始された。
マイクロンは、生産能力に影響があるかどうかについてはまだ明らかにしていない。

◇Micron shares slide after revenue forecast fails to top estimates (6月26日付け CNBC)
→*マイクロンの株価は、四半期決算が予想を上回ったにもかかわらず、水曜26日に約7%下落した。
 *売上げガイダンスは予想通りだった。
 *マイクロン株は人工知能(AI)の波に乗り、この1年で2倍以上に値上がりした。

◇米マイクロン黒字転換 3〜5月、AI向け半導体が寄与 (6月27日付け 日経 電子版 08:00)
→米半導体大手マイクロン・テクノロジーが26日発表した2024年3〜5月期決算は、売上高が前年同期比82%増の$6.811 billion(約1兆1000億円)、最終損益は$332 millionの黒字(前年同期は$1.896 billionの赤字)だった。人工知能(AI)向けの半導体の需要拡大が業績改善に寄与した。


【Nvidia関連】

中東でのビジネス、および年次株主総会の状況が、以下の通りである。

◇Nvidia to sell its advanced AI processors to Middle East countries amid tough US export rules―Nvidia expands AI presence in Mideast through Ooredoo partnership ―But it is unclear what exactly Nvidia plans to sell to its partners. (6月23日付け Tom's Hardware)
→米国が高度なAIおよびHPCプロセッサーに関する最新の輸出管理規則を導入した際、中国企業への高度なプロセッサーの販売が制限されただけでなく、複数の中東諸国へのこれらのデバイスの供給も制限された。しかし、新たな報道によると、Nvidiaは中東の複数の国で事業を展開する通信大手にAI GPUsを販売するための輸出許可を取得できると考えているという。
Nvidiaは中東5カ国のデータセンターに「AI技術を導入する」契約をOoredooと結んだとReutersは報じている。

◇U.S. chip curbs in Middle East just ‘business as usual,’ Ooredoo CEO says after Nvidia deal (6月26日付け CNBC)
→*今週初め、OoredooはNvidiaとパートナーシップを締結し、Nvidiaは中東市場に初めて大規模な参入を果たした。両社は取引額を明らかにしていない。
 *この契約により、数千のNvidiaのGPUsがカタール(Qatar)とその他5カ国、クウェート(Kuwait)、オマーン(Oman)、アルジェリア(Algeria)、チュニジア(Tunisia)およびモルディブ(Maldives)の26のデータセンターに導入されることになる。
 *これらのチップは、データセンターが大量の情報を処理するのを助け、国のAIインフラの重要コンポーネントであるAIチャットボットやその他のツールに供給される。

◇Nvidia CEO Jensen Huang addresses rising competition at shareholder meeting after historic stock surge (6月26日付け CNBC)
→*エヌビディアのジェンセン・フアンCEOは、この1年で株価が200%以上も急騰したことを受け、同社の年次株主総会で質問に答えた。
 *同社は評価額$3 trillionを突破し、一時最も価値のある公開企業となった。
 *競合他社の名前は出さずに、フアン氏はその地位を維持するための同社の全体的な戦略を説明した。

Nvidiaがかくも引っ張っている現況、以下続いて示す巨大ITとともに米国当局の公正取引に向けた調査が行われようとしている。

◇生成AIで強まる寡占、米当局が調査へ 隠れM&A疑惑も (6月28日付け 日経 電子版 05:00)
→急成長する生成AI(人工知能)市場で、米国などの競争当局が寡占の弊害への警戒を強めている。報道によると、米司法省はエヌビディアの半導体取引、米連邦取引委員会(FTC)はマイクロソフトのM&A(合併・買収)戦略について、それぞれ調査を始める。市場支配力を強める一部の企業が不当に競争をゆがめていないか分析を急ぐ。


【EU規制関連】

デジタル市場法(Digital Markets Act)をAppleに初適用、とEU(欧州連合)の巨大ITに対する規制の動きが以下の通り見られている。

◇Apple charged with violating EU Digital Markets Act (6月24日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→これらの違反が証明された場合、EUはアップル社に対し、現在$1 billion強である同社の1日あたりの世界平均売上高の5%から10%の罰金を科す可能性がある。

◇EU、有言実行のApple違反認定 競争・利便性両立見えず (6月25日付け 日経 電子版 02:00)
→欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会がデジタル市場法(DMA)の運用で新たな段階に入った。暫定的ながら米アップルの行為が違法と初めて認定した。規制対象となった巨大IT企業が反発を強めるのは必至で、競争促進と安全や利便性の確保をどこで両立させられるかはまだ見えてこない。

◇Apple、成長モデル修正必至 EUデジタル市場法を初適用 (6月25日付け 日経 電子版 06:12)
→米アップルが、成長の原動力としてきた「経済圏モデル」の修正を迫られている。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が24日、巨大IT企業を規制するデジタル市場法(DMA)に同社が違反していると暫定的に認定した。国家を超える力を持ちかねない巨大プラットフォーマーの力を抑える規制が、アップルのビジネスモデルを揺らす構図だ。

◇Microsoft、「セット売り」再び見直しへ EU規制厳しく(6月26日付け 日経 電子版 06:17)
→米マイクロソフトが業務ソフト群を一括提供する「セット売り」の手法を再び見直す必要に迫られている。会議アプリ「Teams(チームズ)」と業務ソフトの抱き合わせが問題となり4月に「個別販売」に切り替えたが、欧州連合(EU)の規制当局が「対策は不十分」とし競争法違反の可能性を指摘した。EUの規制が想定を上回る厳しさとなっているためだ。

◇MicrosoftとオープンAI提携、EUが独占禁止法調査へ (6月29日付け 日経 電子版 06:55)
→欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は28日、米マイクロソフトと米オープンAIの提携関係について、競争法(独占禁止法)違反の疑いで調査を検討していると明らかにした。生成AI(人工知能)大手がマイクロソフトと組み、急成長する市場の競争を阻害することを懸念する。

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