米国はじめ組立・実装・テストを固める動き;AI市場争奪に向けた現状
米国政府が国内での半導体製造強化を推進している中、いわゆる半導体の後工程、すなわち組立、実装、およびテスト分野への支援を求める関連業界の動きが、昨年あたりから見られていた。どうしても金額比率が圧倒的に高い前工程にまず目が注がれることが背景にある。近年、三次元実装、そしてチップレットが最先端半導体に欠かせない技術として浮上していることもあり、このほど日米の半導体材料・装置メーカー10社がコンソーシアムを設立している。さらに、マレーシアでは、世界最大のウェーハテストサイトが開設されている。次に、現下の半導体市場を引っ張るAI(人工知能)関連市場争奪に向けて活発化するM&Aなどの動きについて、以下取り出している。
≪半導体設計製造の自己完結に向けて≫
組立・実装・テスト分野を固めていく動きとして、日米の半導体材料・装置メーカー10社のコンソーシアム設立が、以下の通りあらわされている。
◇Resonac Announces Consortium For Next-Generation Semiconductor Packaging in Silicon Valley (7月8日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→レゾナック株式会社は本日、シリコンバレーにおける半導体後工程R&Dにおいて、「US-JOINT」と呼ばれる10社のパートナーからなる新しいコンソーシアムを発表した。日米の半導体材料・装置メーカー10社は以下の通り:
Azimuth、KLA、Kulicke & Soffa、Moses Lake Industries、MEC、ULVAC、NAMICS、TOK、TOWA、そしてレゾナックである。
◇US-JOINT chipmaker consortium coming to Silicon Valley (7月9日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→当初は、半導体をパッケージングするいわゆるバックエンド技術の開発に重点を置く。該Union City拠点は2025年に本格稼働する予定である。
◇レゾナック、半導体後工程の日米10社連合 開発迅速化 (7月9日付け 日経)
→レゾナック・ホールディングス(HD)は8日、半導体を最終製品に組み立てる後工程の開発や評価に取り組む日米10社の企業連合を設立したと発表した。半導体材料メーカーなどが集まり、後工程の技術開発に向けて米テック大手などとの連携を円滑にする。シリコンバレーに開発・評価の拠点を設けることで、情報収集や開発の迅速化につなげる狙いだ。
いわゆる後工程の重みに触れる関連の論調が、続いている。
◇CMOS 2.0-Making a case for CMOS 2.0 (7月8日付け Electronics Weekly (UK))
→1)imecのJulien Ryckaert氏は、ヘテロジニアス・パッケージングの代わりにモノリシック・ヘテロジニアス・オンチップ・インテグレーションを使うという、ヘテロジニアス・インテグレーション(HI)の新しいアプローチを提案している。同氏はこのアプローチを「CMOS 2.0」と呼んでいる。
2)半導体産業は、モノリシック・システム・オン・チップ(SoC)の限界に対処するために、従来の相補型金属-酸化膜-半導体(CMOS)のスケーリングからCMOS 2.0へと進化すべきである、とImec社のJulien Ryckaert氏は書いている。同氏は、CMOS 2.0がどのようにシステムオンチップをなる機能層に分割し、それぞれが最適な技術で最適化されるかを説明し、このアプローチが高度な3D相互接続技術とシステム技術の協調最適化を活用することを説明している。
◇Semiconductor Fabs and Raw Materials: Strategies to Manage the Growing Risk of Supply Bottlenecks-Semiconductor industry grapples with supply risks (10月9日付け Morningstar/Sustainalytics)
→半導体業界は、原材料が数カ国に集中しているため供給リスクに直面しており、地政学的不安がこうした脆弱性に拍車をかけている、と本分析では指摘している。これらのリスクを軽減し、持続可能性を高めるために、業界はリサイクル、地理的分散および代替材料の革新などの戦略を模索している。
米国Biden政権も、後工程での海外企業の米国への進出を呼び掛けようとしている。
◇U.S. Creates High-Tech Global Supply Chains to Blunt Risks Tied to China-US taking steps to mitigate security risks related to China (10月9日付け The New York Times)
→1)バイデン政権は、外国企業に米国でのチップ製造に投資してもらい、さらに多くの国に最終組み立てとパッケージングを行う工場を設立してもらおうとしている。
2)バイデン政権は、中国がチップメーカーとしての力を弱め、外国企業に米国でのチップ製造への投資を奨励し、そしてチップ製造を最終的に行う他のグローバル・パートナーを求めようと、いくつかの戦略を追求している。国務省経済ビジネス局のRamin Toloui(ラミン・トルイ)前次官補は、「グローバル・サプライ・チェーンをより強靭なものにするため、多様な国々の生産能力を拡大することに全力を尽くすことが焦点となっている」と語った。
マレーシアでは、世界最大のウェーハテストサイトが開設されている。
◇Melexis Opens its Largest Wafer Testing Site Worldwide in Malaysia (10月10日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→世界的なマイクロエレクトロニクスエンジニアリング企業であるMelexis(メレクシス)は、マレーシアのKuching, Sarawak(サラワク州クチン)に世界最大のウェーハテストサイトを開設した。この拡張は、増加する半導体需要に対応し、アジア太平洋地域におけるプレゼンスを強化するというMelexisのコミットメントを示すもの。
後工程はアジアに任せるという長年の分担となっているが、米国でも半導体製造自己完結を図ろうとする動きが見られる中、今後のこの分野の動きに一層注目するところである。
次に、AI市場争奪に向けた現状に注目であるが、まずは、関連する現況から。
中国のAI市場関連の現状について、以下の通りである。
◇9 of China's top AI models and startups-China is developing AI chips, models amid trade limits (7月7日付け Quartz)
→1)米国がAIの進歩を抑制しようとする中、中国では先進的なチップや多くの欧米で開発されたAIモデルを利用できない
2)米国の貿易規制にもかかわらず、中国は独自のチップとモデルでAI競争に参入している。BaiduのErnie Bot、Alibaba CloudのQwen 2およびByteDanceのDoubaoなどがこのラウンドアップに掲載されている。
◇Nvidia could earn $12B from AI chips in China despite U.S. export controls (7月8日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→最新レポートによると、中国での新型H20チップの販売数は100万個を超えると予想されている。
◇Chinese computer OS maker releases AI-focused openKylin to tap potential PC demand boost (7月9日付け South China Morning Post)
→中国の国産オープンソースOS「openKylin」は、AI PC業界のトレンドに従い、デバイス上で大規模な言語モデルの実行をサポートするよう設計されている。
◇Chinese AI chip makers sell themselves at Shanghai conference with Nvidia comparisons (7月10日付け South China Morning Post)
→ファーウェイやMoore Threadsといった企業は、世界人工知能会議でNvidiaの名前を連呼していたが、中国のハードウェアはまだ遅れている。
◇China’s homebrew openKylin OS creates a cut for AI PCs -China's openKylin OS aims for AI PC market with on-device models (7月11日付け The Register (UK))
→中国がAI PCの流行に乗り、ローカルOS openKylinの開発チームは、デスクトップ上でAIモデルを実行できるLinuxベースのソフトウェアのカットを作成した。
米国政府の中国に対する警戒が、以下の通り続いている。
◇US Treasury's Yellen: China AI investment restrictions are narrowly targeted-Yellen points to narrow focus of China AI investment restrictions (7月9日付け Reuters)
→Janet Yellen(ジャネット・イエレン)財務長官が火曜9日、米下院金融サービス委員会の議員に語ったところによると、米国は中国における人工知能(AI)への特定の投資を、国家安全保障上の明確なリスクとして絞り込んでいる。
「我々は、重要で、軍事情報や懸念国のサイバー能力に貢献しうる技術をターゲットにしようとしてきた。私たちがここで行っていることは、国家安全保障上の明確なリスクに対して対象を絞ったものであることを確認したい」とイエレン財務長官は語った。
◇US lawmakers raise worries about China in Microsoft deal with Emirati AI firm-Lawmakers want briefing on Microsoft's investment in UAE's G42 (7月11日付け Reuters)
→米共和党議員たちが、敏感な技術の移転およびUAEの人工知能(AI)企業、G42の中国に対する歴史的なつながりの懸念を巡って、MicrosoftのG42への$1.5 billion投資の調査をBiden政権に求めた。
AI半導体の評論記事から。
◇Securing AI Silicon-Securing AI silicon important as threat surface expands-Where and how it can be secured, and how that will change in the post-quantum world. (7月8日付け Semiconductor Engineering)
→AIシステムの脅威が拡大するにつれ、AIシリコンのセキュリティ確保がますます重要になってきている、とRambusのdirector of anti-tamper security technology、Scott Best(スコット・ベスト)氏は書いている。
量子コンピューターの新たな脅威は、AIシステムを将来にわたって保護するための量子セキュアなメカニズムを必要とする、と同氏は付け加える。
AI企業とのM&A、あるいは連携の動きが、ここにきて続いて見られている。
≪AMD≫
◇AMD to Buy European AI Lab Silo in Race Against Nvidia-AMD aims to boost AI capabilities with Silo AI acquisition (7月10日付け BNN Bloomberg (Canada))
→アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、AI能力を強化しライバルのNvidiaに対抗するため、ヨーロッパ最大の民間AI研究所であるSilo AIを買収する予定。$665 million相当のこの契約は、AMDが昨年行ったいくつかの投資に続くもの。
◇AMD to acquire Silo AI, Europe’s largest private AI lab (7月11日付け New Electronics (UK))
→AMDは、欧州最大の民間AI研究所であるSilo AIを$665 million相当で買収すると発表した。
◇米AMD、欧州のAI新興を1000億円で買収 NVIDIAに対抗 (7月11日付け 日経 電子版 07:17)
→米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は10日、人工知能(AI)開発を手掛けるフィンランドの新興サイロエーアイ(Silo AI)を$665 million(約1000億円)で買収すると発表した。ソフトウエア分野を強化し、AI半導体で先行する競合の米エヌビディアに対抗する。
◇AMD to acquire Finnish AI lab (7月11日付け DIGITIMES)
→AMDは、欧州最大の民間AI研究所であるSilo AIを、約$665 million相当の全額現金取引で買収する正式契約を締結したと発表した。
≪Samsung≫
◇Samsung reveals plans for chip ecosystem with domestic fabless clients-Samsung outlines new chip ecosystem strategy (7月10日付け The Korea Times (Seoul))
→Samsung Electronics社は、韓国ソウルで開催されたファウンドリーフォーラムにおいて、国内ファブレスクライアントとのチップエコシステム構築戦略を発表した。同社は、韓国の開発企業、Gaonchipsおよび日本のAI企業、Preferred Networksと、2-nanometerファウンドリープロセスおよび2.5Dパッケージング技術を用いたターンキー半導体ソリューションで協力する計画である。
◇サムスン、プリファードとAI協業 専用の半導体受託 (7月10日付け 日経)
→韓国サムスン電子は9日、人工知能(AI)サービスを手掛けるスタートアップ、プリファード・ネットワークス(東京・千代田)専用のAI半導体を受託生産すると発表した。AIサービスで有力な新興企業と協業することで、AI半導体向け技術を磨く。
≪SoftBank≫
◇AI Chip Startup Graphcore Acquired by SoftBank-The British chipmaker will join SoftBank as part of its grand vision for artificial superintelligence. (7月11日付け EE Times)
→英国のAIチップ新興企業、グラフコアが、日本のテクノロジー大手、ソフトバンクグループに買収された。Graphcoreはソフトバンクグループの完全子会社となり、社名はGraphcoreのままとなる。買収の金銭的条件は明らかにされていないが、業界関係者はEE Timesに$400 million程度と語っている。Graphcoreは前回の資金調達ラウンドの後、$2.8 billionの評価を受けており、投資総額は$700 millionに迫っていた。
◇ソフトバンクG、英半導体グラフコア買収 AI戦略推進 (7月12日付け 日経 電子版 09:58)
→ソフトバンクグループ(SBG)は英半導体スタートアップのグラフコアを完全子会社化した。SBGは英子会社の半導体設計アームを軸に人工知能(AI)や半導体、ロボット事業を融合する戦略を描いており、買収はその戦略推進の一環とみられる。英国の関連企業買収はアームに続き2社目となる。
AI市場の覇権はいろいろ波乱含み、できるだけ見据えながらの注目である。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□7月9日(火)
FRB議長の9月利下げに布石のトーンの証言で安心感、2ヶ月ぶりの4万ドル台に乗せた今週の米国株式市場である。
◇NYダウ、反落し31ドル安 FRB議長発言控え持ち高調整 (日経 電子版 06:15)
→8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前週末比31ドル08セント(0.07%)安の3万9344ドル79セントで終えた。週内にはパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言機会や物価指標の発表があり、持ち高調整の売りが優勢だった。半面、米株相場の上昇に対して出遅れ感のある銘柄への買いが目立ち、指数を下支えした。
□7月10日(水)
◇FRB議長「もはや過熱していない」 9月利下げに布石 (日経 電子版 04:17)
→米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は9日の議会証言で米経済は「もはや過熱していない」と述べ、利下げを探る局面に入ったと示唆した。9月の利下げ開始シナリオを織り込む市場関係者に自信を持たせる内容で、金融引き締めからの方向転換に向けた布石となる。
◇S&P500小幅高で最高値、利下げ観測支え ダウ52ドル安 (日経 電子版 06:25)
→9日の米株式市場でS&P500種株価指数が前日比4.13ポイント高の5576.98と小幅ながらも最高値を更新した。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言を受けて9月の米利下げ観測が意識され、買いが優勢になる場面があった。ダウ工業株30種平均は続落し、前日比52ドル82セント安の3万9291ドル97セントで終えた。
□7月11日(木)
◇NYダウ429ドル高 FRB議長証言で波乱無く、買い安心感 (日経 電子版 06:22)
→10日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発した。前日比429ドル39セント(1.09%)高の3万9721ドル36セントと、5月下旬以来の高値で終えた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が米下院での議会証言で金融引き締めに積極的なタカ派的な発言に踏み込まず、買い安心感につながった。ダウ平均の構成銘柄ではないが、エヌビディアなど半導体株が上昇し、投資家心理を支えた面もあった。
米国の6月の消費者物価指数(CPI)が前月比で下落、薄まる「粘着インフレ」とあらわされている。
◇Inflation falls 0.1% in June from prior month, helping case for lower rates (CNBC)
→*モノとサービスのコストを幅広く示すCPI(consumer price index)は5月より0.1%低下し、12ヵ月率は3%と過去3年以上で最低の水準となった。
*変動の大きい食品とエネルギーコストを除いた、いわゆるコアCPIは前月比0.1%増、前年同月比3.3%増となった。コアCPIの年間上昇率は2021年4月以来最小となった。
*ガソリン価格の3.8%下落がインフレを抑制し、食品価格と住居費の0.2%上昇を相殺した。
□7月12日(金)
◇米経済、近づく軟着陸 6月CPI「粘着インフレ」薄まる (日経 電子版 03:59)
→米経済が景気後退を避けながら高インフレを鎮圧する「軟着陸」に近づいている。11日に発表された6月の消費者物価指数(CPI)は前月比で下落に転じた。家賃など値上がりが収まりにくかったサービス価格にブレーキがかかりつつある。金融引き締めの正常化を模索する米連邦準備理事会(FRB)には追い風だ。
◇NYダウ32ドル高、利下げ観測高まる ナスダック大幅安 (日経 電子版 07:07)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅に続伸し、前日比32ドル39セント(0.08%)高の3万9753ドル75セントで終えた。5月下旬以来の高値。朝発表の6月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回った。米連邦準備理事会(FRB)による9月の利下げ観測が高まり、景気敏感株の一角が買われた。一方、ハイテク株には持ち高調整の売りが出て相場の重荷となった。
□7月13日(土)
円相場で見られた急伸に対する観測である。
◇政府、「弱い円」に危機感 3兆円規模の介入観測 (日経 電子版 00:48)
→外国為替市場で11日夜と12日夜に円相場が急伸した。市場では政府・日銀が円買い・ドル売り介入に踏み切ったとの観測が浮上した。日銀が為替介入の準備のために市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を対ユーロで実施したことも分かった。「弱い円」は輸入物価の上昇を招く。政府はコストプッシュ型のインフレが家計や企業の負担となる事態を危惧する。
◇NYダウ、2カ月ぶり4万ドル台 高まる9月利下げ観測支え (日経 電子版 06:10)
→12日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比247ドル15セント(0.6%)高の4万0000ドル90セントで引け、約2カ月ぶりに4万ドル台を回復した。物価指標の落ち着きを背景に市場参加者は米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げを始めるとの観測を有力視する。リスク許容度の高まりが株買いを促した。
≪市場実態PickUp≫
【Samsung関連】
SK Hynixが先行とされているHBM半導体に向けた開発チームが新設されている。
◇Samsung Electronics sets up development team for HBM chips (7月4日付け Yonhap News Agency)
→世界最大のメモリー・チップ・メーカーであるサムスン電子が、人工知能(AI)半導体市場での主導権奪還を目指し、高帯域幅メモリー(HBM)の開発を専門とする部署を新設したと、業界関係者が木曜4日に語った。
該情報筋によると、この新しいHBM開発チームは、同社の半導体部門の組織見直しの一環で、研究開発(R&D)機能を統合し、研究努力を強化することを目的としているという。
Samsungの4-6月期業績は予想を上回る利益を計上している。
◇Samsung shares hit over 3-year high after better-than-expected guidance on strong AI demand (7月5日付け CNBC)
→*LSEGのデータによると、サムスン株は金曜の朝、2.24%上昇し、86,500韓国ウォン($62.73)の高値で取引された。木曜4日の終値は84,600ウォンだった。
*サムスンは金曜5日、4-6月期の営業利益が約10兆4000億ウォンになり、1年前の6700億ウォンから1,452.2%増加すると予想、LSEG予想の8兆5100億ウォンを上回った。
*大和証券キャピタル・マーケッツのSK・キム氏は、「サムスンは業績サプライズを発表するが、業績の上振れは主にメモリー価格の高騰によるものだ」と述べた。
IntelブランドのSSD事業がSK hynix資本の新会社、Solidigmへ移管という経緯であるが、SamsungのSolidigmに対抗するSSDの発表が行われている。
◇Samsung hints at 122.88TB SSD as it quietly releases a 61.44TB model - world's largest NAND maker finally competes with Solidigm for top capacity crown, but you won't be able to use these in your PC-Samsung debuts 61.44TB SSD, challenging Solidigm's tech-Samsung's BM1743 SSD will be available in U.2 and E3.S form factors (7月8日付け TechRadar)
→サムスン電子は、容量61.44TB、176層QLC V-NAND技術を搭載したBM1743ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)を発表した。このドライブは、Solidigm(ソリディグム)の192層SSDへの挑戦と見られている。
Samsungの生成AI搭載折りたたみ式スマホの発表、首位固めの切り札とあらわされている
◇Samsung bolsters AI in foldable phones, health monitoring in smartwatch, ring-Samsung upgrades foldable phones, wearables with AI (7月10日付け Reuters)
→サムスン電子の最新の折りたたみ式スマートフォン「Galaxy Z Fold 6」と「Flip 6」は、より軽量・薄型で、AI機能を強化し、クアルコムのGalaxy向けプロセッサ「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載している。同社はまた、ギャラクシー・ウォッチと新しいGalaxy Ringに高度なヘルス・モニタリング機能を追加している。
◇サムスン、スマホ首位固め 生成AI×折りたたみ式 仕事メール自動作成・16言語通訳 革新性で中国勢に対抗 (7月12日付け 日経)
→韓国サムスン電子がスマートフォン事業の再成長にのろしを上げた。10日発表の折りたたみ式スマホは生成AI(人工知能)を初めて搭載した。スマホ市場では米アップルや中国勢との競争が激化する。新製品でAIを活用した多彩な利用シーンを提案し、首位固めを狙う。
【Samsungストライキ関連】
会社側と労働組合のすれ違いの様相が、以下の通りの現時点である。
◇Samsung Electronics union launches first strike in 55-year history-Samsung workers stage first-ever strike over wages, incentives-Workers warn of additional walkouts unless demands are met (7月8日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子最大の労働組合は月曜8日から3日間のストライキを開始し、経営陣が賃上げとインセンティブ引き上げに同意しない限り、同社のチップ製造ラインを混乱させると迫った。このストライキは、55年にわたるサムスン電子の歴史の中で初めてのことである。
全国サムスン電子労組(NSEU)は、京畿道(Gyeonggi Province)にある同社の華城(Hwaseong)キャンパスでの集会に、全国のサムスン工場から約4000人の組合員労働者が参加したと主張した。警察は約3000人の組合員が集会に参加したと推定している。
◇サムスン、2度目のスト 会社側「半導体生産に影響ない」 (7月9日付け 日経)
→韓国サムスン電子の最大労働組合は8日、計3日間のストライキに突入した。ストが実施されるのは同社の創業以来2度目となる。労組によると8日は6000人超の組合員が参加し、半導体部門の人員が多くを占めた。サムスン側の担当者は同日、「生産ラインへの影響は出ていない」と説明した。
◇Unionized workers at Samsung Electronics declare 'indefinite' strike (7月10日付け The Korea Times)
→サムスン電子の55年の歴史の中で最大の労働争議を行っているサムスン電子の労働組合は水曜10日に「無期限ゼネスト」を宣言し、賃上げ要求に対する圧力を強めた。
水曜日に予定されていた3日間のストライキが終了した後、世界最大のメモリー・チップ・メーカーで最大の労働組合である全国サムスン電子労組は、7月15日からさらに5日間のストライキを計画していた。しかし組合によると、3日間のストの間、会社が一切対話を試みなかったため、そのまま無期限ストに突入する計画に変更したという。
◇Strike at Samsung Electronics enters 2nd day (7月10日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子で働く数千人の労働組合員は火曜9日、賃上げをめぐって2日目の業務を停止した。この3日間のストライキは、技術大手サムスン電子の55年の歴史の中で最大の労働行動となった。
世界最大のメモリー・チップ・メーカーで最大の労働組合である全国サムスン電子労組(NSEU)は、月曜8日に3日間のストライキを開始した。
◇Samsung union announces 'indefinite' strike; risk of semiconductor plant shutdown rising (7月11日付け DIGITIMES)
→サムスン電子の最大労組である全国サムスン電子労組(NSEU)は当初、7月8日から3日間のストライキを計画していたが、最近になって7月11日から2段階の無期限ストライキを開始すると発表し、会社経営陣に対して厳しい姿勢を示した。
【TSMC関連】
台湾で最も儲かっている企業と、改めての評価である。
◇TSMC remains Taiwan’s most profitable company (7月6日付け Taipei Times)
→台北を拠点とする信用情報会社CRIFが発表したところによると、世界最大の受託チップメーカーである台湾積電(TSMC)は、昨年も台湾で最も収益性の高い企業であった。
第二四半期業績が発表され、AI需要の急増のまさに波に乗る好業績、本年1月から6月まで連続してその月としての過去最高を更新という結果内容である。
◇TSMC outstrips forecasts in posting 40% surge in second quarter sales (7月10日付け Market Watch)
◇TSMC Q2 revenue jumps on AI boost, handily beats market forecasts-TSMC's revenue beat forecasts in Q2 on AI demand (7月10日付け Reuters)
→台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング社(TSMC)の第2四半期の売上高は$20.67 billionで、前年同期比32%増となり、市場予測を上回った。アップルやエヌビディアのAIアプリケーション需要の急増がこの成長に寄与した。
◇Nvidia chip supplier TSMC’s sales surge past expectations on AI infrastructure demand (7月10日付け South China Morning Post)
→世界最大の受託製造チップメーカーの第2四半期の売上高は、前年同期比40%増の$20.69 billionだった。
◇Surging TSMC 2nm demand to spark chip investment race in 2025 (7月10日付け DIGITIMES)
→UBSの予測を引用したBloombergによると、台湾積体電路製造(TSMC)の2025年の設備投資額は最大$37 billionに達する可能性があり、2024年の予測、$32 billionから前年比15.6%増となる。この急増は、先端プロセス、特に2nm技術への継続的な投資と、2nm生産能力に対する予想以上の需要が背景にあるとされている。
◇TSMC、売上高32%増 6月の最高更新、先端半導体が好調 (7月11日付け 日経)
→半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が10日発表した6月の売上高(速報値)は、前年同月比32.9%増の2078億台湾ドル(約1兆円)だった。生成AI(人工知能)向けなどに先端半導体の販売が好調で、同月としての過去最高を更新した。
TSMCの売上高は1月に前年同月比プラスに転じて以降、6カ月連続でその月としての過去最高を更新している。5月比でみると6月は9.5%の減収だった。
◇TSMC’s second quarter results may fuel its US$420 billion rally as AI demand soars-TSMC valuation soars as AI chip demand fuels growth (7月11日付け BNN Bloomberg (Canada))
→アナリストは、TSMCの第2四半期の純利益が29%増加し、AIチップの旺盛な需要に後押しされ、通期の売上高見通しが上方修正されると予想している。TSMCの評価額は時価総額1兆ドルまで上昇し、先端チップの値上げによってさらに成長する可能性がある。アナリストによれば、先端チップの価格が3%から6%の上昇が予測される場合、来年の粗利益率は58%上昇する可能性があるという。
【中国関連】
地政学的摩擦関連の内容がどうしても多いが、いろいろな切り口から現下の動きに注目、以下の通りである。
◇Semiconductor, AI firms dominate venture capital deals in China amid government push (7月4日付け South China Morning Post)
→Preqinの調査によると、昨年の世界のベンチャーキャピタル(VC)によるチップ分野への投資の90%は中国からのものであった。
◇China now only supports promising chip firm consolidation amid doubling IPO terminations (7月4日付け DIGITIMES)
→中国の「質の高い生産性」イニシアティブの下、中国を拠点とするチップ新興企業の多くがIPOプロセスを取り下げたり、打ち切ったりしており、テクノロジー分野のブレークスルーにリソースを集中させるため、IPOsではなくM&Asを支援している。
◇Semiconductor analyst on what would happen if China destroyed TSMC's factories-It wouldn't be pretty for the US (7月9日付け TechSpot)
→今年初め、共産党政府が台湾自治州の領有権を主張したことで、中国と他国、特にアメリカとの間の緊張が高まった。中国が台湾を併合した場合、TSMCの工場に何が起こるかについて、アナリストたちは多くの説を唱えている。エレクトロニクス産業にとって暗い見通しになるというのが大方の意見だ。
◇China’s legacy chips in EU’s crosshairs-EU following US in scrutiny of Chinese subsidies for legacy chip makers but neither have the capacity to produce viable alternatives (7月9日付け Asia Times)
→欧州連合(EU)は、中国の旧世代半導体の生産能力拡大がEUにどのような影響を及ぼしているかを確認することを目的とした2つの調査を準備している。
7月6日(土)にReutersが報じたところによると、欧州委員会(EC)は、チップを消費する主要産業企業とチップ業界を対象とした2つの調査をそれぞれ9月に実施する予定である。
◇Microsoft、中国社員のスマホ「iPhone限定」安全対策で (7月9日付け 日経 電子版 05:03)
→米マイクロソフトが中国で働く従業員に対し、9月から業務用スマートフォンを米アップルのiPhoneに限るように指示していることが8日わかった。中国では米グーグルのアプリ配信サービスが使えないため、必要なセキュリティー対策を講じられないとして「アンドロイド」端末の利用を制限する。
【半導体市場の見方関連】
半導体販売高の本格回復の一歩を前回示したばかりであるが、関連する内容を以下示している。
◇Prices for commodity DRAM and NAND chips stall as demand recovery lags (7月4日付け DIGITIMES)
→汎用DRAMとNANDフラッシュの製品価格が4ヵ月連続で横ばいとなり、需要回復のペースが予想以上に遅いことがうかがえる。
韓国メディアNewsisによると、2024年1月まで4カ月連続で上昇していた汎用DRAMとNANDフラッシュの製品価格は、その後横ばいとなっている。4月にわずかに上昇した後、横ばいが続いている。
◇Wi-Fi 7 expected to take flight in late 2024, Taiwan IC design houses gear up-Wi-Fi 7 market set for year-end surge; Taiwan IC design houses prepare (7月8日付け DIGITIMES)
→Wi-Fi 7市場は、モバイルおよびPCアプリケーションからの旺盛な需要に牽引され、2024年後半に急拡大すると予想されている。台湾を拠点とするICデザインハウスは、このブームの恩恵を受ける好位置にある。価格は依然としてWi-Fi 7採用の大きなハードルとなっているが、生産量の増加とともに低下していくと予想される。
今週は、SEMICON West 2024(7月9-11日:サンフランシスコ)が開催され、半導体製造装置の販売高の見方が示されている。
◇GLOBAL TOTAL SEMICONDUCTOR EQUIPMENT SALES FORECAST TO REACH RECORD $109 BILLION IN 2024, SEMI REPORTS (7月9日付け SEMI)
◇Global Total Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach Record $109 Billion in 2024, SEMI Reports (7月9日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SEMIは本日、SEMICON West 2024で発表した「Mid-Year Total Semiconductor Equipment Forecast - OEM Perspective」において、半導体製造装置メーカーによる半導体製造装置の世界売上高が、2024年には前年比3.4%増の$109 billionに達し、業界新記録を達成すると予測している。半導体製造装置の成長は2025年も続き、前工程および後工程の両セグメントが牽引し、2025年の売上高は過去最高の$128 billionに達すると予測されている。
「今年すでに進行中の半導体製造装置総売上高の成長は、2025年には約17%の力強い拡大が続くと予測される。」と、SEMI会長兼CEOのAjit Manocha氏。「世界の半導体産業は、人工知能(AI)の波から生まれる多様な破壊的アプリケーションを支える強力なファンダメンタルズと成長の可能性を示している。」
◇Back-to-back record years for chip manufacturing equipment sales-SEMI: Chip equipment market set for record growth (7月11日付け Electronics Weekly (UK))
→1)SEMIによると、今年のチップ製造装置売上は前年比3.4%増の$109 billionを記録する見込みである。
2)SEMIのCEOであるAjit Manocha氏によると、半導体製造装置の売上高は2025年に$128 billionに達し、17%成長すると予測されている。ウェーハファブ装置セグメントは、AIコンピューティングとメモリアプリケーションへの投資が牽引し、2024年に$98 billion、2025年に$113 billionに成長すると予測されている。中国、台湾および韓国が引き続き装置支出でリードし、中国は2024年に過去最高を記録すると予想されている。
本格回復が待たれるPC市場関連である。
◇PC Recovery Continues as the Market Grows 3% in the Second Quarter, According to IDC (7月9日付け IDC)
→トラディショナル PC 市場は、7 四半期連続の減少に続いて第 2 四半期も成長した。International Data Corporation (IDC) Worldwide Quarterly Personal Computing Device Trackerの速報によると、2024年第2四半期(2Q24)の世界出荷台数は6,490万台に達し、前年同期比3.0%の成長となった。市場全体は2023年との比較で有利な結果となったが、中国の不振が引き続き市場を押し下げた。中国を除く全世界の出荷台数は前年同期比5%以上の伸びとなった。
◇世界パソコン出荷4〜6月3%増 買い替でAppleは2割増 (7月10日付け 日経 電子版 04:57)
→米調査会社IDCは9日、2024年4〜6月の世界パソコン出荷台数(速報値)が前年同期比3%増の6490万台だったと発表した。業務用パソコンの買い替えが進んで2四半期連続の増加となった。データ処理が高速で人工知能(AI)機能が使いやすくなる「AIパソコン」に市場回復の期待がかかる。
◇台湾IT、13.5%増収 6月19社、パソコン回復の兆し (7月12日付け 日経)
→世界のIT大手に半導体やデジタル製品を供給する台湾メーカー主要19社の6月の売上高合計は、前年同月比で13.5%増だった。プラスは4カ月連続だ。人工知能(AI)向けのサーバーの好調が続いたほか、特需の反動が長引くパソコン関連に回復の兆しが出ている。