4-6月半導体販売高、前四半期比増加へ;インテルの今後への備え関連
米国・Semiconductor Industry Association(SIA)より定例の世界半導体販売高の発表が行われ、4−6月四半期について$149.9 billionで、前年同期比18.3%増、前四半期比6.5%増となり、特に後者は、1−3月四半期での5.7%減から反転している。6月の販売高は$50.0 billionで、前月比1.7%増と3ヶ月連続の増加である。AI(人工知能)関連需要が引っ張って、全体としての本格回復が依然待たれる現下の半導体市場に、引き続き注目である。
事業運営上の厳しい要因がこのところ伝えられるインテルについて、今後に向けた備え、取り組みの動きがいくつか見られて、以下取り出している。長年にわたるランキング首位の同社には、目が離せないところである。
≪第二四半期&6月の世界半導体販売高≫
米国・SIAからの今回の発表が、次の通りである。
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○2024年第二四半期のグローバル半導体販売高が、2023年第二四半期に比べて18.3%増;前四半期比では6.5%増 …8月5日付け SIA/Latest News
Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2024年第二四半期の間のグローバル半導体業界販売高が$149.9 billionで、2023年第二四半期に比べて18.3%増そして2024年第一四半期を6.5%上回った、と発表した。2024年6月の販売高は$50.0 billionで、2024年5月の$49.1 billionに比べて1.7%の増加であった。
月次販売高はWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。SIAは、売上げで米国半導体業界の99%およびnon-U.S.半導体会社の約3分の2を代表している。
「2024年第2四半期のグローバル半導体市場は好調を維持し、前四半期比販売高は2023年第4四半期以来の増加となった。」とSIAのpresident and CEO、John Neuffer氏。「6月の販売高は前月比、前年同月比ともに増加し、Americas市場が2023年6月比42.8%増でリードしている。」
地域別では、6月のAmericasでの販売高前年同月比増に加えて、China (21.6%)およびAsia Pacific/All Other (12.7%)で増加したが、Japan (-5.0%)およびEurope (-11.2%)では減少した。6月の販売高前月比では、Americas (6.3%), Japan (1.8%), およびChina (0.8%)で増加したが、Europe (-1.0%)およびAsia Pacific/All Other (-1.4%)では減少した。
【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域 | Jun 2023 | May 2024 | Jun 2024 | 前年同月比 | 前月比 |
======== | |||||
Americas | 10.35 | 13.90 | 14.77 | 42.8 | 6.3 |
Europe | 4.71 | 4.22 | 4.18 | -11.2 | -1.0 |
Japan | 3.97 | 3.71 | 3.78 | -5.0 | 1.8 |
China | 12.42 | 14.97 | 15.09 | 21.6 | 0.8 |
Asia Pacific/All Other | 10.79 | 12.32 | 12.15 | 12.7 | -1.4 |
計 | $42.23 B | $49.12 B | $49.98 B | 18.3 % | 1.7 % |
--------------------------------------
市場地域 | 1- 3月平均 | 4- 6月平均 | change |
Americas | 12.79 | 14.77 | 15.6 |
Europe | 4.32 | 4.18 | -3.4 |
Japan | 3.56 | 3.78 | 6.0 |
China | 14.17 | 15.09 | 6.5 |
Asia Pacific/All Other | 12.10 | 12.15 | 0.5 |
$46.94 B | $49.98 B | 6.5 % |
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※6月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒https://www.semiconductors.org/wp-content/uploads/2024/08/June-2024-GSR-table-and-graph-for-press-release.pdf
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この発表を受けての業界紙の取り上げである。
◇Global Semiconductor Sales Increase 18.3% in Q2 2024 Compared to Q2 2023 (8月5日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
◇Q2 chip sales up 18.3% y-o-y―SIA: Q2 semiconductor sales rose 18.3% y-o-y to $149.9B ―Q2 semiconductor industry sales of $149.9 billion were up 18.3% y-o-y and up 6.5% on Q1, says the SIA, and June sales were $50 billion, up 1.7% on May’s $49.1 billion. (8月6日付け Electronics Weekly (UK))
2021年、2022年と相次いで年間半導体販売高の最高を更新して、昨年、2023年は減少に転じた経緯であるが、2024年はどうなるかということで、2022年以降の推移で照らし合わせながら見ていくことにする。
以下、米国・SIAの月初の発表時点の販売高、そして前年同月比および前月比が示されている。
2024年の出だし、1月は$47 Billion台の販売高であるが、2022年の前半のように$50 Billion台が続けられるかどうか、今後の推移に注目していくことになる。2月は$46 Billion台に下げたが、反転盛り返しへの期待である。3月も僅かながら下げて、反転待ちである。そして、4月に本年初めての前月比増加、5月には増勢をさらに高めて、2022年半ば以来の販売高、および前年同月比伸び率となっている。そして、6月はほぼ$50 Billionであるが、この大台を本年後半に突破し続けられるかどうか、2022年と見比べての注目となる。
前年同月比 | 前月比 | 販売高累計 | ||
2022年 1月 | $50.74 B | 26.8 % | -0.2 % | |
2022年 2月 | $50.04 B | 26.1 % | -1.4 % | |
2022年 3月 | $50.58 B | 23.0 % | 1.1 % | |
2022年 4月 | $50.92 B | 21.1 % | 0.7 % | |
2022年 5月 | $51.82 B | 18.0 % | 1.8 % | |
2022年 6月 | $50.82 B | 13.3 % | -1.9 % | |
2022年 7月 | $49.01 B | 7.3 % | -2.3 % | |
2022年 8月 | $47.36 B | 0.1 % | -3.4 % | |
2022年 9月 | $47.00 B | -3.0 % | -0.5 % | |
2022年10月 | $46.86 B | -4.6 % | -0.3 % | |
2022年11月 | $45.48 B | -9.2 % | -2.9 % | |
2022年12月 | $43.40 B | -14.7 % | -4.4 %$ | 584.03 B |
→史上最高更新 | ||||
2023年 1月 | $41.33 B | -18.5 % | -5.2 % | |
2023年 2月 | $39.68 B | -20.7 % | -4.0 % | |
2023年 3月 | $39.83 B | -21.3 % | 0.3 % | |
2023年 4月 | $39.95 B | -21.6 % | 0.3 % | |
2023年 5月 | $40.74 B | -21.1 % | 1.7 % | |
2023年 6月 | $41.51 B | -17.3 % | 1.9 % | |
2023年 7月 | $43.22 B | -11.8 % | 2.3 % | |
2023年 8月 | $44.04 B | -6.8 % | 1.9 % | |
2023年 9月 | $44.89 B | -4.5 % | 1.9 % | |
2023年10月 | $46.62 B | -0.7 % | 3.9 % | |
2023年11月 | $47.98 B | 5.3 % | 2.9 % | |
2023年12月 | $48.66 B | 11.6 % | 1.4 % | $518.45 B |
2024年 1月 | $47.63 B | 15.2 % | -2.1 % | |
2024年 2月 | $46.17 B | 16.3 % | -3.1 % | |
2024年 3月 | $45.91 B | 15.2 % | -0.6 % | |
2024年 4月 | $46.43 B | 15.8 % | 1.1 % | |
2024年 5月 | $49.15 B | 19.3 % | 4.1 % | |
2024年 6月 | $49.98 B | 18.3 % | 1.7 % |
さて、現下の半導体関連のデータを見ると、AIおよびHPCはじめ今後の増勢を期待させる一方で、電気自動車(EV)の市場復活遅れと、各分野そして全体の推移に注目せざるを得ないところである。
◇Tablet Market Finally Moves Past the Pandemic Era with Solid Growth in Q2 2024, According to IDC (8月2日付け IDC)
→International Data Corporation(IDC)のWorldwide Quarterly Personal Computing Device Trackerの速報データによると、2024年第2四半期(2Q24)の世界のタブレット端末出荷台数は前年同期比22.1%増の3,440万台を記録した。
◇Infineon misses expectations on delayed EV resurgence (8月6日付け Taipei Times)
→インフィニオン・テクノロジーズAGは、期待された電気自動車(EV)市場の復活が遅れ、アナリストの予想を下回る売上げを計上した。
同社は昨日、直近四半期の売上高が前年同期比9.5%減の37億ユーロ($4.1 billion)だったと発表した。比較として、ブルームバーグが集計したアナリスト予想平均が37.9億ユーロである。
◇Taiwan’s semiconductor industry output value grew 5.5% in May―AI applications and high-performance computing drive demand (8月6日付け Taiwan News)
→台湾の半導体業界生産額は、1月から5月にかけて5.5%増となった。
経済部(MOEA)の月曜日(8月5日)のプレスリリースによると、消費者および設備投資の勢いが鈍化し、2023年の生産額は7.3%減となった。CNAによれば、これは2012年以来11年続いた成長に終止符を打った。
次に、インテルに注目していく。半導体大手各社がいろいろ抱える課題が、次のようにあらわされている。
◇With US Chips Act Money Mostly Divvied Up, the Real Test Begins―US semiconductor industry faces some hurdles (8月9日付け BNN Bloomberg (Canada))
→CHIPS and Science Actの助成金$39 billionのほぼ全額が配分され、米国は半導体生産の拡大を目指している。インテル、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)、マイクロン・テクノロジーおよびサムスン電子が大規模な投資を進めているが、インテルの経営難、マイクロンの環境懸念および労働争議などが課題となっている。
事業立て直しに向けて、人員削減の計画が発表されたばかりである。
◇Chipmaker Intel to cut 15,000 jobs as tries to revive its business and compete with rivals (8月2日付け AP News)
→チップメーカーのインテルは、エヌビディアやAMDのような、より成功しているライバルに対抗、事業を立て直そうとするため、その膨大な従業員の15%、約15,000人の雇用を削減すると発表した。
インテル社のパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は木曜1日、従業員へのメモの中で、同社は2025年に$10 billionの削減を計画していると述べた。
株主からの集団訴訟が、次の通りである。
◇Intel shareholders sue chipmaker after job, dividend cuts cause stock plunge―Intel faces shareholder lawsuit (8月7日付け Reuters)
→インテルは、業績不振、人員削減および配当停止につながった問題を隠蔽したとして、株主からの集団訴訟に直面している。サンフランシスコで提訴されたこの訴訟は、インテル社が事業運営に関して虚偽の説明をしているとして非難している。インテルはこの訴訟についてコメントしていない。
インテルのCPUについて、電圧関連の不安定性問題とされているが、以下の対応がみられている。
◇Intel tacks two years onto Raptor Lake CPU warranty after voltage crash fiasco―Intel extends warranty on Core chips over instability (8月2日付け The Register (UK))
→インテルは、第13世代および第14世代コア・デスクトップ・プロセッサーの保証期間を5年間に延長した。これは、システム・クラッシュやCPUsへの潜在的な物理的損傷を引き起こした電圧関連の不安定性問題に対応するものである。
◇Intel extends Core chip warranty to soothe customers―Intel's latest Core chips now come with an effective five-year warranty. (8月5日付け PCWorld)
反転&巻き返しに向けて、新技術&新製品への取り組みが、以下の通りあらわされている。
◇Intel is taking another of ASML's High NA tools, says CEO―Gelsinger touts receipt of second ASML high-NA EUV tool (8月5日付け Reuters)
→Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)最高経営責任者(CEO)は、インテルがASMLからもう1台の高NA極端紫外線(EUV)ツールを取得したことは、将来のチップ製造におけるこの技術の重要性を強調するものであると述べた。このツールのインテルのオレゴン拠点への設置は、チップ製造能力を強化するための幅広い取り組みの一環である。
◇Intel moving second High NA EUV tool into Oregon―Intel is moving its second High NA EUV tool into its Oregon development fab. (8月6日付け Electronics Weekly (UK))
→「インテル4、インテル3の生産能力をアイルランドに移すことで、TD(technical development:技術開発)チームは18A次いで14Aおよび10Aの生産に集中できるようになる、そして、例えば、2つ目の高NAツールがオレゴン工場に導入される予定である。」とインテルのCEO、Pat Gelsinger氏が先週述べた。
◇Intel: Our balance sheet is a smoking ruin, but we think our new chips work―18A process delivers bootable Panther Lake AI PC processor and Clearwater Forest server silicon (8月7日付け The Register (UK))
→インテルは、その自慢の18A製造プロセスが、少なくとも初期のテストでは機能することを世界に発表した。
Chipzillaは火曜日、同社のファウンドリーについて「主要なマイルストーン」と説明するものを発表した。同社は現在、インテルとサードパーティ両方の顧客にチップ製造サービスを提供する独立した企業として扱っている。
◇Intel achieves major milestones with 18A chip production, solidifying foundry ambitions―Intel advances 18A chip production, eyes 2025 rollout―Intel revealed that its first external foundry customer is expected to tape out on the 18A node in the first half of 2025. (8月7日付け Business Today (India))
→インテルは、Panther LakeとClearwater Forestチップの電源オンとOS起動に成功し、先進の18Aプロセス・ノードの進展を示している。同社は、来年初めにこのノードで最初の顧客がテープアウトすることを期待しており、パートナーのケイデンス・デザイン・システムズとシノプシスは、18Aをサポートするためにツールを更新している。
◇Report: Intel Battlemage arriving in 2024, Arrow Lake will consume 100W less power than 14th Gen, overclocking unaffected by latest Raptor Lake microcode updates―Reports: Intel updates Arrow Lake for power efficiency―New Intel statements reveal that Arrow Lake will be significantly more power efficent than Raptor Lake and won't succumb to Raptor Lake's stability issues. (8月8日付け Tom's Hardware)
→報道によると、インテルはArrow Lake中央演算処理装置(CPUs)はRaptor Lake CPUよりも消費電力を100W削減し、高い周波数を維持するという。今後12ヶ月以内にリリースされる予定のBattlemageグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPUs)は、性能が向上すると予想されている。
インテルの取り組みについて、プラスマイナスいろいろあるが、以下の評論記事が目に入っている。
◇Why is Intel facing a downfall in the semiconductor sector?―The latest financial results show that Intel faces severe difficulties in the semiconductor sector. Many factors that have placed considerable pressure on Intel are to blame for this downfall. (8月6日付け Data Quest)
→困難な状況にもかかわらず、インテルは復活の可能性を示すいくつかの明るい兆しを見せている。統合デバイス製造(IDM)アプローチに専念しているため、同社は、競争の激しい半導体分野で極めて重要な要素であるサプライチェーンをコントロールできるという長期的な優位性を持っている。インテルが研究開発(R&D)により重点を置いているのは心強いことで、これは同社が再び主導権を握るための革新的な技術を生み出すのに必要だからだ。コスト削減の目標は、収益性と財務の安定性を向上させることでもある。こうした取り組みには、レイオフや業務の効率化が含まれる。これらの戦術が効果的であれば、インテルはその問題を克服し、半導体業界で再び地位を確立することができるだろう。
◇How chip giant Intel spurned OpenAI and fell behind the times (8月7日付け Reuters)
→AI時代に苦境に陥る前のコンピューター時代の寵児であった米チップ大手、インテルにとって、事態はまったく違っていたかもしれない。
約7年前、インテルは、生成人工知能(AI)と呼ばれるあまり知られていない分野で活動していた、当時はまだ駆け出しの非営利研究組織だったOpenAIの株式を購入するチャンスがあったと、この話し合いを直接知る4人がロイターに語った。
◇Intel Years From Success in Foundry Business, Analysts Say―Intel Foundry Services has a long road ahead before it can become a viable standalone business. (8月8日付け EE Times)
→EE Timesの取材に応じたアナリストによると、チップ製造部門を独立した事業として成功させるためのIntelの取り組みには何年もかかりそうだという。主な問題は、Intel Foundry Services(IFS)をより大きなライバル、TSMCに対するコスト競争力を持たせることだという。
同社の取り組みの推移に、引き続き注目である。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□8月4日(日)
トランプ氏の対中国のスタンスである。
◇トランプ氏、中国への対抗関税を強調 「相互貿易法」提起 (日経 電子版 13:22)
→米共和党のトランプ前大統領は3日、南部ジョージア州アトランタで演説した。「中国などが100%、200%の関税を課したら『相互貿易法』を制定する」とし、大統領選で再選した際は対抗関税を発動する方針だと表明した。
□8月5日(月)
米国の雇用関連指標に端を発した世界的な株安、そして我が国での円相場の動きである。
◇US stocks finish sharply lower to close out global market rout―Global equity sell-off worsens (Financial Times)
→米国の経済指標が期待外れだったため、世界的な株安が加速した。ナスダック100先物は4%以上下落し、S&P500は3%下落した。日本のTOPIXと日経平均株価は、日本銀行が水曜日に金利を引き上げ、それを継続する用意があることを示唆した後、12%以上下落した。台湾のベンチマーク指数は1967年以来最悪の一日となった。JPMorgan Asset Managementのglobal market strategist、Marcella Chow(マーセラ・チャウ)氏は、米国市場は米連邦準備制度理事会(FRB)の政策に注目し、ドル円相場や株価に影響を与えると予想している。
◇円相場一時142円台、朝から4円上昇 7カ月ぶり円高水準 (日経 電子版 13:29)
→5日の東京外国為替市場で対ドルの円相場は一時1ドル=142円台に上昇した。1月上旬以来およそ7カ月ぶりの円高・ドル安水準を付け、朝方から4円円高となった。前週末発表の7月の米雇用統計が市場予想を大きく下回り、米景気の先行き警戒感から幅広い通貨に対してドルが売られる流れが続いている。
□8月6日(火)
先週からの急落に始まって、自律反発買いなど上げ下げが続いた今週の米国株式市場である。
◇NYダウ1033ドル安、欧州株も急落 景気不安の売り続く(日経 電子版 08:09)
→5日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前週末比1033ドル99セント(2.6%)安の3万8703ドル27セントで終わった。欧州株式も軒並み急落した。米景気の先行き不安から市場参加者が株式相場の先行きに警戒感を強めており、リスク資産を売る動きが加速、幅広い銘柄が下落圧力にさらされた。
□8月7日(水)
◇NYダウ、反発し294ドル高 自律反発狙いの買い優勢に (日経 電子版 06:21)
→6日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反発し、前日比294ドル39セント(0.76%)高の3万8997ドル66セントで終えた。前日まで大きく下げていた後で、自律反発を狙った買いが優勢となった。下げがきつかったハイテク株や景気敏感株などが上昇した。ダウ平均の上げ幅は700ドルを超える場面があったが、取引終盤に急速に伸び悩んだ。
□8月8日(木)
◇NYダウ反落234ドル安 金利急変動、投資家不安が加速 (日経 電子版 06:22)
→7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比234ドル21セント(0.60%)安の3万8763ドル45セントで終えた。週初にかけて急落していた後で、短期的な戻りを見込んだ買いが先行した。米長期金利が上昇するなかで買いが続かず、ダウ平均など主要株価指数は午後に下げに転じた。
□8月9日(金)
◇NYダウ683ドル高 雇用指標改善、押し目買い広がる (日経 電子版 07:01)
→8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比683ドル(1.8%)高の3万9446ドルで終えた。朝方発表の失業保険申請件数が労働市場の底堅さを示し、先行き不安が若干和らいだことで押し目買いが入った。ただ、来週の7月の米消費者物価指数(CPI)発表などを控え、不安定な地合いが続くとの見方もある。
□8月10日(土)
◇NYダウ続伸51ドル高 大型テックに買い直しも上げ限定 (日経 電子版 06:13)
→9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比51ドル05セント(0.12%)高の3万9497ドル54セントで終えた。週初までの株式相場の大幅な調整を受け、大型ハイテク株などに買い直しの動きが続いた。一方、週末を前に持ち高調整の売りも出やすく、ダウ平均は下げる場面もあった。
≪市場実態PickUp≫
【米中摩擦関連】
中国の半導体製造装置業界の自らの見方があらわされている。
◇China’s ‘basic self-sufficiency’ in chip-making tools could come this summer, veteran says (8月1日付け South China Morning Post)
→*AMECのGerald Yin(ジェラルド・イン)最高経営責任者(CEO)は、中国はチップ製造装置の基本的な自給自足は目前だが、品質と信頼性では5年から10年遅れていると述べた。
*業界のベテランによると、中国は今年の夏までに、チップ製造装置の基本的な自給自足レベルに達する可能性があり、ほんの2、3年前にはあり得ないと思われたことであるが、洗練の度合いでは米国に何年も依然後れている。
AI半導体はじめ、抜け道を探る中国についてである。
◇With Smugglers and Front Companies, China Is Skirting American A.I. Bans―The U.S. is trying to stop China from getting Nvidia microchips (8月3日付け The New York Times)
→密輸業者とフロント企業により、中国はアメリカのA.I.禁止を回避している―米国は、中国がNvidiaのマイクロチップを入手するのを阻止しようとしている。
◇Sanctioned China firms creating front companies to acquire AI chips, says report − new firms pop up faster than the U.S. ban hammer can strike―Report: Chinese firms use fronts to bypass US sanctions―Let's play sanctions whack-a-mole. (8月4日付け Tom's Hardware)
→ニューヨーク・タイムズ紙によると、中国企業がアメリカの制裁を回避し、AIチップを入手するためにフロント企業を設立しているという。このような企業の急速な設立は取締りを複雑にしており、インテル、Nvidiaおよびマイクロソフトを含む企業は、うっかり高度なハードウェアをこれらの新しい企業に販売してしまったという。
◇Sugon spin-off helps China evade US chip bans (8月7日付け Asia Times)
→制裁を受けた中国のコンピューター・サーバー・メーカーが、いかに巧妙な企業工作によって米国製チップを入手し続けているか、Asia Timesが示した。
米国の制裁を回避するために4年半前に設立された中国のコンピューター・サーバー・サプライヤーが、制裁を受けた中国企業に製品を販売しているとして告発された。
中国製の車載用ソフトウェアについて、米国商務省の規制強化の動きである。
◇US eyes Chinese software ban for autonomous cars (8月6日付け Taipei Times)
→米商務省が今後数週間以内に、自律走行車やコネクテッドカーに搭載される中国製ソフトウェアの禁止を提案する見込みであることが、関係筋の話で明らかになった。
ジョー・バイデン米大統領政権は、米国内のレベル3以上の自動運転車への中国製ソフトウェアの搭載を禁止する規則を提案する予定であり、中国製自律走行車の米国公道でのテストも禁止されることになる。
広帯域メモリー(HBM)の備蓄はじめ半導体輸入の前倒しの様相が見られる中国である。
◇Tech war: China’s chip imports surge as firms stockpile ahead of fresh US restrictions (8月7日付け South China Morning Post)
→米国による広帯域メモリー(HBM)チップに対する新たな規制の可能性を前に、中国本土の企業が集積回路(ICs)の備蓄を急いでいるとの報告がある中、中国の最新の税関データによると、中国の半導体輸入は拡大を続けている。
税関総署が水曜7日に公表したデータによると、2024年1〜7月のチップ輸入は合計3081億個、約$212 billion相当だった。数量では前年同期比14.5%増、金額では11.5%増となった。
◇Chinese firms stockpiling high-end Samsung chips (8月7日付け Taipei Times)
→Huawei Technologies Co(華為)およびBaidu Inc(百度)を含む中国のテクノロジー大手並びに新興企業が、米国が中国へのチップ輸出を抑制することを見越して、Samsung Electronics Coからの高帯域幅メモリ(HBM)半導体を備蓄している、と3つの情報筋が述べた。
半導体自立化に向けた中国の半導体工場の取り組みの現状である。
◇Tech war: China advances in chip tool self-sufficiency but lithography still a ‘choke point’ (8月7日付け South China Morning Post)
→中国の半導体工場には、生産ラインの少なくとも70%を国産装置が占めるべきという不文律がある。
中国が先端チップおよび技術にアクセスするための米国の輸出制限は、外国製チップ製造ツールに取って代わろうとする現地の努力を後押ししているが、ボトルネックは残っている、と業界関係者およびアナリストは述べている。
【Samsung関連】
人材確保に向けた抜本的な改変の動きである。
◇Samsung reportedly reforming bonus system to prevent semiconductor talent outflow (8月1日付け DIGITIMES)
→サムスン電子は20年以上にわたり、Overall Performance Incentive(OPI:総合業績インセンティブ)報奨制度を導入してきた。従業員の要望と人材確保のため、同社は賞与計算の透明性と予測可能性を高める包括的な改革を計画していると報じられている。
AI半導体関連で、M&A、およびHBM半導体についての見方である。
◇Samsung joins funding for AI security startup valued at US$400 million―Samsung invests in $400M AI security startup Protect AI (8月2日付け DigiTimes/Bloomberg)
→セキュリティと人工知能の新興企業であるProtect AI Inc.は、AIとセキュリティの交差点がビッグビジネスになることに賭ける投資家から$60 millionを調達した。
◇Will Samsung benefit from Nvidia’s new AI chip delays?―Google, Microsoft join hands with AMD, buyer of Samsung’s HBM3 chips, for next-generation AI chip technology (8月5日付け The Korea Economic Daily)
→世界トップのメモリーチップメーカーであるSamsung Electronics Co.は、Nvidia Corp.のAIチップ出荷の遅れから恩恵を受けると見られており、世界の大手テック企業は、AI半導体大手の同社に代替を求める可能性。
◇Expectations grow on Samsung's possible HBM3E chip supply to Nvidia―Samsung's HBM3E could be headed to Nvidia amid testing report ―Samsung denies report on Nvidia test approval, but retains supply plan (8月7日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子の8層HBM3EがNvidiaの認定テストに合格したとの報道を受け、サムスン電子がNvidiaに第5世代広帯域メモリーチップ(HBM3E)を供給する可能性への期待が高まっている。
サムスンはこの報道を否定したが、業界関係者は、該韓国の大手チップメーカーが年内にNvidiaに先進メモリ・チップを供給する許可を得る可能性が高いと見ている。株式市場もこの報道を好意的に解釈し、この日のサムスンの株価は上昇した。
モバイルDRAM最先端品の量産開始である。
◇Samsung Electronics begins mass production of industry-leading LPDDR5X DRAM for mobile (8月6日付け Yonhap News Agency)
→世界最大のメモリー・チップ・メーカーであるサムスン電子は火曜6日、オンデバイスの人工知能(AI)に合わせた業界最薄のモバイルDRAM、LPDDR5X DRAMの量産を開始したと発表した。
サムスン電子によると、この新しい12ナノメートル(nm)クラスの12ギガバイト(GB)および16GB LPDDR5X DRAMパッケージの高さはわずか0.65mmで、業界最薄のLPDDR DRAMとなる。
【SK hynix関連】
AI向けHBM半導体について、次世代も引っ張っていく取り組みである。
◇SK hynix to focus on advanced packaging tech for next-generation HBM chips (8月5日付け Yonhap News Agency)
→世界第2位のメモリー・チップ・メーカーであるSKハイニックスは月曜5日、次世代高帯域幅メモリー(HBM)チップの先端実装技術の開発に注力し、急成長する人工知能(AI)チップ市場での主導的地位を固めることを目指すと発表した。
◇SK hynix to focus on advanced packaging tech for next-generation HBM chips―SK Hynix developing advanced packaging for HBM chips (8月5日付け The Korea Times (Seoul))
→SKハイニックスは、高帯域幅メモリ(HBM)チップのパッケージング技術を進化させている。同社のイノベーションにはハイブリッドボンディングとアドバンスドMR-MUF(mass reflow-molded underfill)が含まれ、より高いチップ積層を可能にしながら反りや放熱に対処している。
◇伏兵SK、サムスンにAI用メモリーで先行 技術転換逃さず―競合対決・AI半導体 (8月5日付け 日経 電子版 02:00)
→人工知能(AI)の計算に欠かせない半導体メモリー「広帯域メモリー(HBM)」の市場が急拡大している。韓国・SKハイニックスが先行し、供給が需要に追いつかない状態が続く。転送速度が4割高まるとされる次世代品でも牙城を守ろうと、台湾積体電路製造(TSMC)と組む。開発で出遅れた韓国サムスン電子は資金力を武器に反転攻勢を図る。
米国政府のCHIPS Actによる助成が、SK hynixのIndiana工場の建設に対して発表され、以下の通りである。
◇World’s Five Leading Chipmakers Have Now Promised U.S. Investment―SK Hynix joins leading chipmakers committed to US plant builds―The announcement of CHIPS Act funding for a plant in Indiana means the United States will have attracted investment from the world’s top chipmakers. (8月6日付け The New York Times)
→Gina Raimondo商務長官によると、大手半導体メーカー5社すべてが米国にチップ工場を建設することを約束した。SKハイニックスには、インディアナ州の拠点に最大$450 millionの補助金を出すと発表、インテル、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)、マイクロン・テクノロジーおよびサムスン電子に加わる。
◇SIA Applauds CHIPS Act Incentives for SK hynix (8月7日付け SIA Latest News)
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA)は本日、米国商務省とSK hynixが発表した半導体製造奨励策を称賛するSIAのPresident and CEO、John Neuffer氏の声明を発表した。この優遇措置は、SK hynixがインディアナ州で先端パッケージング事業とR&Dを拡大するのに役立つ。
◇SK hynix wins $950 mil. in US grants, loans for AI chip plant in Indiana (8月7日付け The Korea Times)
→米商務省は火曜6日(韓国時間)、SKハイニックスがインディアナ州に人工知能(AI)製品のメモリーパッケージ工場と先端パッケージR&D施設を建設する見返りとして、最大$450 millionの奨励金と$500 millionの融資を提供すると発表した。
◇SK、米から650億円支援 AI半導体工場建設で (8月7日付け 日経)
→韓国半導体大手SKハイニックスは6日、米インディアナ州に建設する生成AI(人工知能)向け半導体工場について、米政府との間で最大$450 million(約650億円)の補助を受ける覚書を交わしたと発表した。米国は半導体供給網のアジア偏重を避けるため、外資による国内の工場建設を支援している。
【Nvidiaの次期AI半導体】
Nvidiaの次期Blackwell AI半導体について、「設計上の欠陥」による遅れが以下の通り取り沙汰されている。影響は限定的とあらわされているが、引き続き注視を要するところである。
◇NVIDIA’s Blackwell AI chips have reportedly hit a snag and may arrive months late―Reports: Nvidia faces delay over design flaws in Blackwell AI chips (8月3日付け Engadget)
→エヌビディアは、同社の次期AIチップシリーズに「設計上の欠陥」を発見、少なくとも3ヶ月リリース先延ばし、とThe Information発。同社は、マイクロソフトを含む顧客に遅延の通知を始めたと報じられている。新しいBlackwellチップの大量注文は当初、今年中に出荷が開始される予定だったが、情報筋がThe Informationに語ったところによると、現在は2025年初頭まで出荷されない見込みだという。
◇Nvidia's AI chip demand to face limited impact from potential production delay, analysts say―Nvidia's market position solid in face of possible delay (8月6日付け Reuters)
→NvidiaがBlackwell AIチップの発売を延期する可能性があるが、これは設計上の欠陥が報告されているためで、同社の売上げや需要には影響しない可能性があるとアナリストは述べている。メタ、マイクロソフトおよびグーグルからの需要は依然として強く、NvidiaのGrace Hopperチップはそのギャップを埋める可能性があるとアナリストは言う。
【FMS 2024】
フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント、Flash Memory Summitが、名称を変更して、The Future Memory and Storageとして開催されている(8月6〜8日:Santa Clara, CA)。関連する内容を以下取り出している。
◇Micron Develops Industry’s First PCIe Gen6 Data Center SSD for Ecosystem Enablement (8月5日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→マイクロンテクノロジーは本日、AIに対する幅広い需要をサポートするメモリおよびストレージ製品ポートフォリオの一部として、エコシステムを実現するPCIe Gen6データセンター向けSSD技術を世界で初めて開発したことを発表した。このような需要に対応するため、マイクロンのコンピュート&ネットワーキング事業部シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーであるRaj Narasimhan(ラジ・ナラシマン)氏は、8月7日(水)午前11時(太平洋時間)からFMSで「Data is at the heart of AI: Micron memory and storage are fueling the AI revolution」と題した基調講演を行う。
◇Phison and WD unveil cutting-edge AI-driven storage solutions at FMS 2024―Phison, Western Digital spotlight AI-powered storage solutions (8月6日付け DigiTimes)
→2024年8月6日、FMS(Future of Memory and Storage)イベントが開始され、AIストレージ・アプリケーションや新製品が紹介された。大手企業のフィソンとウェスタンデジタル(WD)はそれぞれデータセンター向けSSD市場で躍進し、ともに最大64TBの容量を持つストレージ・ソリューションを発表した。
◇Winbond unveils 1Gb QspiNAND Flash for wearable and low-power IoT devices―Winbond debuts 1Gb QspiNAND Flash optimized for IoT devices, wearables (8月8日付け New Electronics (UK))
→ウィンボンド・エレクトロニクスは、1Gb 1.8V QspiNANDフラッシュ、W25N01KWを発表した。
このNANDソリューションは、ウェアラブル機器やバッテリーで動作するIoT機器の需要に対応するよう設計されており、低い待機電力、小型パッケージ、および高速ブートとインスタントオンをサポートする連続読み出しを提供する。
◇KIOXIA develops broadband SSD with optical interface for greener data centres―Kioxia debuts energy-efficient SSD with optical interface (8月8日付け New Electronics)
→1)メモリ・ソリューションの開発会社であるKIOXIA Europeは、次世代データセンター向けの光インターフェイス付きブロードバンドSSDのプロトタイプをデモした。
2)Kioxiaは、エネルギー効率と信号品質を向上させ、データセンター設計に柔軟性を付加するために、光インターフェイスを備えた広帯域ソリッドステートドライブ(SSD)を発表した。Kioxia Europeの最高技術責任者(CTO)であるAxel Stormann氏は、ストレージの効率と性能を改善することで、より環境に優しいサーバー環境を実現できる可能性を強調した。
【マレーシア関連】
新興半導体圏として、インドとともに注目のマレーシアであるが、半導体設計拠点、そしてSiCパワー半導体工場が動き始めている。今後の展開に注目である。
◇Malaysia Sets Up Chip-Design Hub to Boost Semiconductor Industry―Malaysia launches chip-design hub with Cadence, Arm (8月6日付け BNN Bloomberg (Canada))
→マレーシアはSelangor(セランゴール)州にチップ設計のハブを設立し、半導体産業を活性化させ、海外からの投資を呼び込もうとしている。東南アジア諸国は、チップ設計能力を向上させ、テストや梱包といった、従来はあまり複雑でなく価値の低いと考えられてきた作業からステップアップしようとしている。
◇マレーシア政府、半導体設計の拠点開業 アームなど協力、東南アのハブへ企業誘致 (8月7日付け 日経)
→マレーシア政府は6日、首都クアラルンプール近郊に半導体設計の企業やファンドが集積する拠点を開いた。ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手アームなどが協力する。集積回路(IC)設計に特化して企業を誘致し、東南アジアの半導体設計ハブに育てる。
◇Infineon’s $8 Billion Plant to Boost Malaysian Chip Ambitions―Infineon opens SiC power semiconductor plant in Malaysia (8月8日付け BNN Bloomberg (Canada))
→マレーシアは、インフィニオン・テクノロジーズAGが同国に大規模な半導体製造コンプレックスを開設したことで、グローバル・サプライ・チェーンにおける重みを増している、とAnwar Ibrahim(アンワル・イブラヒム)首相が木曜8日、マレーシア北部のKulim(クリム)地区にあるインフィニオンの70億ユーロ(約$7.7 billion)規模の生産拠点の第1期開所式にて。