Nvidiaの5-7月業績発表を巡る動き関連;Hot Chips 2024での注目
AI需要が独り引っ張って、パソコン、スマホはじめ従来の半導体分野の本格回復待ちという率直な現状のあらわし方が多々見られる半導体市場のなかで、これもAI分野を大きく引っ張るNvidiaの5-7月四半期の業績が発表されている。売上高はが前四半期比15%増、前年同期比122%増の$30 billion、利益が前年同期比174%増の$18.64 billionと、非常に素晴らしい結果であるが、あまりに期待が過剰でこれでも不足ということか、これを受けた同社の株価は一時8%安と荒い値動きという反応である。AIのいろいろ先行きへの懸念など、発表を巡る動き&見方を追っている。そして、これもAIが1つの焦点、高性能プロセッサの祭典、Hot Chips 2024発表関連に注目している。
≪AI一辺倒の渦中での見方&判断≫
Nvidiaの5-7月四半期業績について、発表前の取り沙汰である。
◇Nvidia second-quarter sales likely to double, even a slight miss may hurt shares―Nvidia's revenue expected to double amid AI chip demand (8月27日付け Reuters)
→エヌビディアは、AIチップへの旺盛な需要に牽引され、第2四半期の売上高が倍以上に増加すると予想されている。同社のAIチップ、Blackwellの生産遅延については懸念が残る。
◇Nvidia has become world’s ‘most important stock,’ adding pressure to upcoming earnings report (8月28日付け CNBC)
→*大手クラウドプロバイダーが人工知能(AI)プロセッサーへの意欲に変化を示している兆候を投資家が探しているため、エヌビディアの株価はますます不安定になっている。
*エヌビディアはAIブームの主な受益者であり、4四半期連続で3桁増収を記録する見通しだ。
*ウォール街は、前年同期比の比較が難しくなっているため、この予測に特に注目するだろう。
そして、決算発表を受けての以下取り上げである。
◇Nvidia reports 122% revenue growth on surging demand for data center chips (8月28日付け CNBC)
→*エヌビディアは、ウォール街の予想を上回る決算を発表し、今四半期のガイダンスも予想を上回った。
*エヌビディアは、現在進行中の人工知能(AI)ブームの主な受益者である。
*株価は時間外で下落したが、年初来では約150%上昇している。
売上高など数字は次の通りである。
◇$30bn Q2 for Nvidia―Nvidia reports record $30B Q2 revenue on AI demand (8月29日付け Electronics Weekly (UK))
→1)エヌビディアの第2四半期の売上高は前四半期比15%増、前年同期比122%増の$30 billion。利益は174%増の$18.64 billionだった。第3四半期は$32.5 billionの売上を見込んでいる。株価は2.5%下落し、同社の時価総額は$3 trillionに達した。
2)エヌビディアの第2四半期の売上高は$30 billionで、前四半期比15%増、前年同期比122%増と過去最高を記録した。Jensen Huang(ジェンセン・フアン)最高経営責任者(CEO)は、Hopperへの強い需要とBlackwellへの期待が成長の要因だと述べた。
発表を受けて、株価が下落、その後反発、と荒い値動きがあらわされている。
◇S&P 500 Rally Loses Steam, But Most US Stocks Gain: Markets Wrap―Stocks rebound as markets digest Nvidia results―US economy expands at revised 3% rate on resilient consumer―Nvidia sinks on disappointing forecast, Blackwell chip snags (8月29日付け Bloomberg)
→今朝のハイテク株は、エヌビディアの第2四半期決算を受けて売られた後、反発した。ナスダック100先物は1.4%の下落の後0.2%上昇し、S&P500も上昇した。エヌビディアの売上げは第2四半期に倍増したが、投資家は当初、同社の見通しに圧倒された。
◇Nvidia Stock Drops. Why Strong Earnings Weren't Enough to Lift Shares.―Follow live coverage and analysis of the chip maker's second-quarter results. (8月29日付け Barron News-Shield (Wis.))
→FactSetによると、該半導体企業の7月期調整後1株当たり利益は、ウォール街のコンセンサス予想65セントに対し、68セントとなった。
売上高は$30.0 billionで、アナリスト予想の$28.7 billionを上回った。見通しも好調だった。今四半期について、エヌビディアは$32.5 billionを中点とする売上げ予想レンジを提示した。これはコンセンサスの$31.7 billionを上回る。
発表後、エヌビディア株は約4%下落した。
◇NVIDIAの5〜7月、売上高2.2倍 予想上回るも株価は下落 (8月29日付け 日経 電子版 05:34)
→米半導体大手エヌビディアが28日発表した2024年5〜7月期決算は売上高が前年同期と比べ約2.2倍の$30.04 billion(約4兆3500億円)、純利益が2.7倍の$16.599 billionだった。ともに市場予想を上回った。人工知能(AI)向け半導体の需要の高さを示したが、決算発表後の米市場の時間外取引で株価は一時8%下落した。
◇NVIDIA株、時間外取引で一時8%安 荒い値動きに (8月29日付け 日経 電子版 07:08)
→米半導体大手エヌビディアが28日発表した2024年5〜7月期決算を受け、同社の株価は時間外取引で一時、28日終値比8%安になった。売上高や純利益は市場予想を上回ったが、これまでの株高で過熱感が出ていたこともあり、市場では当初売りが先行した。
一筋縄ではいかない市場のジレンマがあらわれている。
◇NVIDIA好決算でも陰るAI相場 半導体株の価値1兆ドル減 (8月29日付け 日経 電子版 17:34)
→人工知能(AI)市場の急拡大を見込んだ株高が失速している。エヌビディアが米東部時間28日に公表した好決算はラリー再開の起点にならず、世界の半導体関連株の合計時価総額は直近ピーク時から1兆ドル(約144兆円)減った。半導体チップやサーバーへの先行投資がかさみ、収益化に時間がかかるとの見方から、AI革命に対する市場の過剰な期待がいったん後退した。
Nvidiaの次世代GPUs、Blackwellの設計欠陥について、同社がこれを認め、対処を施して計画通り進むと説明している。
◇Nvidia admits Blackwell defect, but Jensen Huang pledges Q4 shipments as promised―Nvidia confirms Blackwell design defect, still shipment confident―The setback won't stop us from banking billions, CFO insists (8月29日付け The Register (UK))
→Nvidiaは、Blackwellグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPUs)の設計上の欠陥が確認され、生産歩留まりに影響が出ていることを明らかにした。Jensen Huang(ジェンスン・フアン)最高経営責任者(CEO)とColette Kress(コレット・クレス)最高財務責任者(CFO)は、この欠陥はマスクの変更で対処され、第4四半期の出荷は計画通りに進むと投資家に保証した。
Nvidiaの業績、そして株価変化についてのインパクトが続いている。
◇Slowdown in Nvidia’s sales growth spooks chip stocks in U.S. and Asia (8月29日付け CNBC)
→*韓国のチップメーカーであるSKハイニックスやサムスン電子、並びに台湾の大企業であるTSMCやフォックスコンなど、該米国の巨大ハイテク企業と直接つながりのある企業の損失が最も顕著だった。
*また、香港や日本のハイテク株にも波及したが、その程度は小さかった。
◇AI投資、勢い続く エヌビディア「8割増収」――市場は「過剰期待」修正半導体株、時価総額1兆ドル減 (8月30日付け 日経)
→人工知能(AI)市場の急拡大を見込んだ株高が失速している。エヌビディアが米東部時間28日に公表した好決算はラリー再開の起点にならず、世界の半導体関連株の合計時価総額は直近ピーク時から1兆ドル(約144兆円)減った。半導体チップやサーバーへの先行投資がかさみ、収益化に時間がかかるとの見方から、AI革命に対する市場の過剰な期待がいったん後退した。
◇NVIDIAショック回避、高揚感なき最高値(NY特急便) (8月30日付け 日経 電子版 05:31)
→29日のニューヨーク市場でダウ工業株30種平均は前日比243ドル高い4万1335ドルとなり、過去最高値を更新した。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は小幅に下落した。米半導体大手、エヌビディアは前日の取引時間後に発表された2024年5〜7月期決算を受けて急落したが、ショックの波及は限られた。
一辺倒脱却を模索する市場である。
◇NYダウ再び最高値、「脱NVIDIA依存」探る市場 (8月30日付け 日経 電子版 06:11)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均が2日ぶりに最高値を更新した。前日夕に決算発表の米半導体大手エヌビディアの株価は市場の期待が高すぎた反動で6%超下げたが、米株相場は崩れなかった。人工知能(AI)銘柄から投資先に広がりが出るなか、市場の関心は再び米経済の軟着陸に向かう。ダウ平均は前日比243ドル(0.6%)高の4万1335ドルで終えた。
◇NVIDIA、決算後の下げは買いか AI好業績も3つの不安 (8月30日付け 日経 電子版 10:01)
→世界の人工知能(AI)インフラを支えるエヌビディアの急成長が続いている。28日夕発表の2024年5〜7月期決算で売上高と純利益ともに四半期で過去最高を更新し、業績見通しも市場予想を上回った。それでも29日の株価は6%安で終えた。市場が求める「完璧なシナリオ」が株価の重荷となったが、アナリストからは長期的にみれば「下げ局面は買いの好機」との楽観もある。
Nvidiaインパクトの熱い余韻が続きそうであるが、ここで冷静さを取り戻して、この時期恒例の高性能プロセッサの祭典、Hot Chips 2024(8月25−27日:スタンフォード大学)に注目、最先端の取り組みに触れてみる。議論の中心はAI処理向けプロセッサーと、ここでもAI取り上げである。
<新興企業Furiosa>
◇Furiosa Targets LLM Inference With Second-Gen Chip―The South Korean startup unveils its tensor contraction processor concept at Hot Chips. (8月26日付け EE Times)
→Furiosaは、本日開催されるHot Chipsカンファレンスで、第2世代のデータセンター向けAI推論チップ、RNGD(「Renegade(レネゲード)」と発音)を発表する。
フュリオサはまだソフトウェア性能の最適化に取り組んでいるが、RNGDの初期テストでは、1枚のPCIeカード(1個のアクセラレーター・チップ)で、100億個のパラメータを持つLLMに対して、コンテキストの長さにもよるが、2〜3000トークン/秒のスループット性能を実現できることを示している。消費電力は150-200Wである。
◇FuriosaAI unveils new AI inference chip ―FuriosaAI introduces high-efficiency RNGD AI chip for data centers (8月27日付け New Electronics (UK))
→AI半導体の新興企業であるFuriosaAIは、Hot Chips 2024でRNGD AIアクセラレーターを発表した。
◇IBM reveals upcoming chips to power large-scale AI on next-gen big iron―IBM introduces chips for next-gen mainframes―Telum II Processor and Spyre Accelerator set to boost performance and expand IO capacity (8月27日付け The Register (UK))
→1)IBMは、メインフレームシステムのパフォーマンスを向上させるため、Telum IIプロセッサーとSpyre AIアクセラレーターを発表した。このチップは来年初めに発売される予定で、IBMの次世代Zシステムをサポートする。
2)Big Blueによると、パロアルトで開催されたHot Chips 2024カンファレンスで発表されたTelum IIプロセッサは、メインフレームに大幅な性能向上をもたらすと期待されている。同社はまた、Spyre AIアクセラレータのプレビューも行い、両チップは2025年前半に登場する次世代IBM Zシステムで利用可能になる見込みだと述べた。
<インテル>
◇Intel shows off its next-gen Lunar Lake, Xeon 6, Guadi 3 chips at Hot Chips 2024―Intel unveils next-gen chips to redefine AI, performance (8月27日付け TweakTown (Australia))
→1)インテルがHot Chips 2024で次世代チップLunar Lake、Xeon 6およびGaudi 3をデモ、新チップの詳細が多数公開された。
2)インテルは次世代チップ、Xeon 6システムオンチップ(SoC)、Lunar Lakeモバイル・プロセッサーおよびGaudi 3 AIアクセラレーターを発表した。これらの進化は、AIとコンピューティング・テクノロジーの限界を押し広げるというインテルのコミットメントを強調している。
◇Tenstorrent's Blackhole chips boast 768 RISC-V cores and almost as many FLOPS―Tenstorrent debuts Blackhole AI accelerators with 745 teraFLOPS ―Shove 32 of 'em in a box and you've got nearly 24 petaFLOPS of FP8 perf (8月27日付け The Register (UK))
→RISC-VのチャンピオンであるTenstorrentは、今週開催されたHot Chipsで、同社の次期AIアクセラレータBlackholeを最も詳しく紹介、生の計算能力とスケーラビリティにおいてNvidia A100を凌ぐことができると主張している。
各Blackholeチップは、FP8で745テラFLOPSの性能(FP16で372テラFLOPS)、32GBのGDDR6メモリおよび10本の400Gbpsリンクで合計1TBpsの帯域幅が可能なイーサネットベースのインターコネクトを誇る。
<プリファードネットワークス>
◇プリファードネットワークスが推論用AI半導体、27年製品化 (8月30日付け 日経XTECH[クロステック])
→AI(人工知能)スタートアップのPreferred Networks(プリファードネットワークス、PFN、東京・千代田)は、推論処理用の半導体を2027年に製品化する。これまで学習用のAI半導体を手掛けてきた。今後、市場成長を見込める推論用のAI半導体を手掛けることで、事業拡大を狙う。
2024年8月25〜27日に開催のプロセッサー分野の著名な国際カンファレンス「Hot Chips 2024」(会場は米国カリフォルニア州スタンフォード)で明らかにした。
今回のHot Chipsの全体的な概況がそれぞれにあらわされている。
◇Accelerating The Pace And Precision Of AI Chip Innovation―AI chip innovation showcased in California ―Hardware-assisted verification solutions help verify and test complex AI chips at scale. (8月29日付け Semiconductor Engineering)
→Synopsysのdistinguished architect and executive director for the Center for Generative AI、Stelios Diamantidis(ステリオス・ディアマンティディス)氏記事。
今週シリコンバレーで開催された「Hot Chips 2024」会議は、AIチップのイノベーションのショーケースとなった。3日間のプログラムは、次の画期的なAIプロセッサーを提供するために、先進的なアーキテクチャを探求し、斬新な設計ソリューションを採用しようとする、既存のチップメーカーと新規参入企業の競争を示していた。本記事では、エコシステム・プレーヤーがこの広汎なインテリジェンスの時代に電力を供給するための課題と機会にどのように適応しているかを示す、カンファレンスでのいくつかの“hot takes”を紹介する。
◇Hot Chips 2024 Takeaways―As expected, the spotlight was on AI at Hot Chips 2024.―Video recap (8月30日付け EE Times)
→TIRIAS Researchの主席アナリストであるJim McGregor(ジム・マグレガー)氏とKevin Krewell(ケビン・クルーウェル)氏が、Hot Chips 2024の重要な要点について語った。ほとんどの業界イベントで期待されるように、AIは至る所で見られたが、重要なテーマは、チップの利用を最適化し、ボトルネックを取り除き、そしてダウンタイムを最小化するために、テープアウトやテストプロセスの後半ではなく、最初からバランスの取れた設計を考慮して、これらのAIチップを設計するということであった。
すぐ上のSemiconductor Engineeringの記事にある“hot takes”は、世間が大方合意している時、わざと反することを言って、トラフィックやフォロアー数の増加を狙う意見のこと、とネットにある。方向性、掘り下げなどいろいろ出てくる雰囲気を感じるが、AIの熱い推移に引き続き注目するところである。
半導体市場の全体動向、そして当面はAIが引っ張る推移に目が離せない現状である。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□8月27日(火)
利下げの期待で出だし、1カ月半ぶりに最高値更新、Nvidia決算前の調整で中日に下がった以外は最高値更新を続けた今週の米国株式市場である。
◇NYダウ、利下げ期待で最高値 テック下落に危うさも (日経 電子版 06:22)
→26日の米株式市場でダウ工業株30種平均が1カ月半ぶりに最高値を更新した。米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げを開始し、米景気が軟着陸を達成するとの期待が投資家の強気姿勢を後押ししている。不動産や中小型株など利下げの恩恵が大きい分野にマネーは向かうが、これまでけん引役だったIT(情報技術)関連株は失速し、FRB頼みの楽観ムードには危うさもある。
□8月28日(水)
◇NYダウ続伸9ドル高、連日で最高値 利下げ観測が支え (日経 電子版 06:31)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅に3日続伸した。前日比9ドル98セント(0.02%)高の4万1250ドル50セントで終え、連日で最高値を更新した。米連邦準備理事会(FRB)による利下げ観測が引き続き投資家心理の支えとなった。ただ、利益確定の売りも出やすく、ダウ平均は下げる場面があった。28日にエヌビディアの決算発表を控え、様子見の姿勢も強かった。
米中の対話が、先を見据えて行われている。
◇米中、大統領選後見すえ対話 リスク管理の重要性共有 (日経 電子版 16:23)
→中国を訪問しているサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は27〜28日、北京で王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相と戦略対話を開いた。11月の米大統領選後も米中間でリスクを管理する重要性を共有するとみられる。
両氏は2日間にわたり協議した。国家安保担当の米大統領補佐官の訪中はおよそ8年ぶりで、サリバン氏は2021年1月の就任後、初めて。
□8月29日(木)
◇NYダウ、反落し159ドル安 NVIDIA決算前に持ち高調整 (日経 電子版 05:24)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、前日比159ドル08セント(0.38%)安の4万1091ドル42セントで終えた。ダウ平均の構成銘柄ではないが、取引終了後にエヌビディアが決算を発表する。内容を見極めようとハイテク株を中心に持ち高調整の売りが出た。
□8月30日(金)
◇NYダウ反発243ドル高、2日ぶり最高値 NVIDIAは6%安 (日経 電子版 06:04)
→ダウ平均の構成銘柄ではないが、エヌビディアが6%あまり下げた。前日夕に発表した2024年5〜7月期決算や8〜10月期の売上高見通しは市場予想を上回った。ただ、業績期待で株価が上昇していたこともあって決算を受けて売りに押された。半導体株などの一部にはエヌビディアに連れ安する銘柄があった。
一方、エヌビディアの決算説明会での幹部コメントなどからは企業が依然として人工知能(AI)の開発や活用に積極的で、顧客のAI投資の収益化が早いことなども分かった。エヌビディア以外の半導体株やハイテク株を物色する動きもみられた。
□8月31日(土)
◇8月NY株、値幅1年10カ月ぶり大きさ 景気見通し揺れる (日経 電子版 06:20)
→30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比228ドル(0.6%)高の4万1563ドルで終えた。8月の値幅(高値と安値の差)は1年10カ月ぶりの大きさとなった。景気の先行き懸念から月初に急落した後、過度な景気不安の後退や米利下げ期待の高まりで後半に持ち直す不安定な展開になった。ダウ平均は30日、連日で最高値を更新した。朝方発表の7月米個人消費支出(PCE)物価指数は前月比0.2%上昇で、市場予想通りだった。米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げを始めるとの見方を支えた。
≪市場実態PickUp≫
【インテル関連】
厳しい動き&状況が、以下の通り引き続いている。
◇Senior Intel CPU architects splinter to develop RISC-V processors − veterans establish AheadComputing―Former Intel architects launch RISC-V startup―Extensive brain drain won’t help Intel bounce back. (8月25日付け Tom's Hardware)
→インテルの上級CPUアーキテクト4名が退職し、RISC-Vプロセッサの開発に特化した新興企業、AheadComputingを設立した。AheadComputingはオープンスペックコアIPの作成を目指しており、設計・検証職の人材を積極的に募集している。
◇Why Did Intel Stock Witness The Worst Crash In Its 50-Year History? (8月26日付け Forbes)
→インテルの株価は年初から60%近く急落し、今月初めには1日で同社最悪の26%下落を記録した。これとは対照的に、半導体業界の同業他社であるマイクロン・テクノロジーは21%増、エヌビディアは161%増、そしてアプライド・マテリアルズは25%増と、市場全体を見事に上回っている。それゆえ、痛みはインテルに特有のものであり、同社の健全性と見通しを取り巻く否定的な見方が株価のパフォーマンスに圧力をかけ続けている。
◇Intel’s Troubles Complicate U.S. Chip Independence ―Will more funding be needed to keep Intel competitive? (8月26日付け IEEE Spectrum)
→インテルの株価が大幅に下落したことからも明らかなように、このコスト削減計画は多くの人を油断させた。同社はここ数年、悪いニュースには事欠かなかったが、国内チップ製造の活性化を目的としたCHIPS・科学法からの投資や優遇措置が期待され、それにすがる希望もあった。インテルが苦境に立たされ続けていることで、米国政府はもっと手を打つ必要があるのではないかという疑問が投げかけられている。
◇US senator presses Intel CEO on chips award after job cut plan―Senator questions Intel's job cuts amid $20B US grants (8月28日付け Reuters)
→共和党のRick Scott(リック・スコット)上院議員は水曜28日、インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)に対し、チップ生産増強のために$20 billion近い助成金と融資を受けることが決まっているにもかかわらず、同社が15,000人以上の雇用を削減する計画について詳細を尋ねた。ロイターが見た書簡の中で、スコット氏は、商務省の計画した助成が、「米国の製造業と雇用創出のための高い基準を満たせない企業に税金が渡るのを防ぐための、真の評価基準を含んでいない 」ことに疑問を呈した。
AI関連の連携である。
◇F5 and Intel collaboration simplifies the security and delivery of AI services―Intel, F5 team up on AI service delivery, security (8月28日付け New Electronics (UK))
→F5は、インテルが動かすAI運用にアプリケーション・セキュリティとデリバリー機能を提供すると発表した。
インテル社内のファブ・ネットワーク、外部の製造能力、新しいIntel Foundry Services を組み合わせた強固な戦略「IDM 2.0」がこれまで謳われているが、根本的立て直しを図る内容&動きが見られている。
◇Intel Considers Options Such as a Foundry Split; Shares Soar―Intel eyes options amid financial struggles, sources say (8月29日付け BNN Bloomberg (Canada))
→インテルは、財務上の損失に対処するため、製造事業と設計事業の分割を含む様々な戦略的選択肢を模索している、と情報筋は述べている。同社のファウンドリー部門は依然として財政経営難に陥っており、Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)CEOの野心的な再建計画は頓挫し、人員削減、設備投資の削減および配当の停止に至っている。
◇Intel turns to investment bankers (8月30日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→インテルは、長年の投資銀行家であるMorgan StanleyとGoldman Sachs Groupに再建策を依頼した。
◇インテル、受託事業の分離検討 CEOの成長戦略が裏目に (8月31日付け 日経 電子版 05:40)
→米インテルが経営の立て直しに向け、複数案を検討していることが30日までに明らかになった。米ブルームバーグ通信が報じた。受託生産(ファウンドリー)事業を分離する案を含むという。受託で台湾積体電路製造(TSMC)を追う戦略が裏目に出て赤字が膨らみ、経営方針の見直しを迫られている。
【台湾業界関連】
TSMC関連はじめいろいろな切り口、以下の現下の内容&動きである。
◇TSMC’s 3nm & 5nm Processes Expected To Generate Over $31 Billion For The Firm In Just Three Quarters (8月25日付け Wccftech)
→TSMCの3nmおよび5nmプロセスは、台湾の巨大企業にとって業界の予想を上回る1兆台湾元もの売上高を計上する見込みである。
3nmおよび5nmプロセスで業界需要の大きなシェアを獲得したTSMCの優位性は、現代の市場でも明らかである。
◇中国半導体、TSMCの3年遅れに迫る 分解で見えた実力 (8月26日付け 日経 電子版 05:00)
→米政府が中国華為技術(ファーウェイ)に事実上の輸出禁止措置を発令して5年。米政府は中国の半導体技術を抑え込むための施策を繰り出してきた。ただ、その実効性が詳細に語られることは少ない。年間100製品の電子機器を分解する半導体調査会社、テカナリエ(東京・中央)の清水洋治社長は中国半導体の実力は台湾積体電路製造(TSMC)の3年遅れの水準にまで迫っていると解説する。・・・・・
◇Taiwan’s Semiconductor Sustainability and Global Implications (8月27日付け New Line Institute)
→台湾だけでなく世界経済の重要な一部である半導体産業は、エネルギー分野と密接に関わっている。台湾のエネルギー危機は、世界経済に甚大な影響を及ぼす可能性がある。台湾は輸入エネルギー資源に大きく依存しており、エネルギーが他のさまざまな産業を支える役割を担っているため、世界のエネルギー市場におけるショックのリスクにさらされている。
◇AUO to sell Tainan plant to Micron―STRATEGIC SHIFT: Diversifying away from the volatile flat-panel industry, AUO aims to boost sales contribution from non-panel business to half of total revenue by 2027 (8月28日付け Taipei Times)
→AUO Corp(友達)は昨日、同社が好不況の波が激しいフラットパネル・ディスプレイ業界からの影響を軽減するために戦略を転換する中、台南にある休止中の製造施設と土地をMicron Technology Inc.に74億台湾ドル($231.8 million)で売却することで合意したと発表した。
台湾証券取引所に提出した資料によると、同社はこの売却により41億7000万台湾ドルの売却益を見込んでいる。
◇Semicon Taiwan to feature historic number of exhibitors: SEMI (8月29日付け Taipei Times)
→台北で来週水曜、9月4日に開幕する半導体技術分野の国際見本市「セミコン台湾」に、今年は過去最多の出展者が参加すると、主催者のSEMI Taiwanが昨日発表した。
◇台湾エイサー、AIパソコンを出荷の4割に 25年7〜9月、高機能半導体の調達急ぐ (8月30日付け 日経)
→台湾パソコン大手、宏碁(エイサー)は生成AI(人工知能)の機能を搭載した高機能なパソコンの出荷を増やす。ジェイソン・チェン最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞の取材に応じ、出荷全体に占める比率を2025年7〜9月期に40%にすると明らかにした。AI機能の搭載に必要な専用半導体の調達先を広げ、生産拡大を急ぐ。
【中国業界関連】
米国の規制を受ける中での中国の半導体市場の実態、そして対抗して中国のガリウムとゲルマニウムの供給制限について以下に示す。
◇Chinese Imports of Chip Gear Hit Record $26 Billion This Year―China sets record with $26B in chip equipment imports―China has been stockpiling ASML systems and foreign machinery―US and allies have been limiting China’s access to their tech (8月22日付け Bloomberg)
→中国は、7月までに$26 billion相当の半導体装置を輸入し、大方はASMLおよびApplied Materialsなどの会社からの購入が引っ張っており、記録を更新した。中国は、先進的なチップ製造技術へのアクセスを制限することを目的とした米国の制裁にもかかわらず、国内の需要を満たすために旧いマシンを購入し続けている。
◇China AI devs use cloud services to game US chip sanctions―Reports: China is using US cloud services to bypass AI chip sanctions ―Orgs are accessing restricted tech, raising concerns about more potential loopholes (8月23日付け The Register (UK))
→中国の開発者が、AI開発を加速させるための先進的なチップやその他の技術へのアクセスを阻止することを意図した措置を回避するために、米国ベースのクラウドサービスを使用しているという主張がさらに浮上している。
ホワイトハウスは2年近く前から中国への先端チップの輸出規制を開始し、昨年はそれを延長してハイエンドのGPUsやアクセラレーターから中国市場を事実上遮断した。
◇China spends big on Samsung, SK Hynix chips in first half amid US sanctions fears (8月23日付け South China Morning Post)
→サムスンの中国向けチップ売上は上半期に82%増、SKは122%増、各社が半導体を備蓄している。
◇Chinese imports of chip gear hit record US$26 billion this year (8月23日付け South China Morning Post)
→オランダ企業ASMLの中国向け売上は第2四半期に21%急増し、総売上のほぼ半分に達した。
◇ASML, AMAT Among Firms That Sold Record $26 Billion Chip Equipment To China Through July (8月25日付け Wccftech)
→Bloombergがまとめた政府データによると、中国は記録的なペースで半導体装置の輸入を続けており、その注文のほとんどは旧世代の装置によるものだという。人工知能(AI)やスーパーコンピューティングといった先端産業の実現に不可欠なため、半導体製造装置は世界で最も注目される産業機械のひとつとなっている。
◇China restrictions on rare earths has caused pricing to double over the past year ー critical elements are used in processors, solar cells, and more―China's mineral restrictions spark fears of a chip shortage―Gallium and germanium have become significantly more expensive. (8月27日付け Tom's Hardware)
→中国がガリウムとゲルマニウムの供給制限を決めたと報じられ、世界的なチップ不足の懸念が高まっている。レアアース鉱物の価格は大幅に上昇し、必要な輸出ライセンスは官僚的なハードルと不確実性に拍車をかけている。
◇Is There Another Global Chip Shortage Coming? (8月27日付け Forbes)
→半導体の製造に使われるガリウムやゲルマニウムの供給が逼迫しているため、供給不足が再び始まるのではないかと懸念されている。
『フィナンシャル・タイムズ』紙の報道によれば、北京の供給制限の決定を受けて、ヨーロッパではこの2つの鉱物の価格が過去1年間で倍増しているという。
◇[News] China’s Gallium and Germanium Export Restrictions Risk Chip Production Shortages (8月28日付け Trend Force)
→重要な半導体材料に対する中国の輸出規制がサプライチェーンに打撃を与え、先端チップや軍事用光学ハードウェアの潜在的不足への懸念が高まっていると報じられている。
U.S. Geological Survey(米国地質調査所)によると、中国は世界のガリウムの98%、ゲルマニウムの60%を生産している。しかし、昨年7月以降、中国政府はこれらの鉱物に対して輸出制限を課しており、その結果、ヨーロッパでの価格は過去1年間でほぼ2倍になっている。中国は、これらの措置は米国の輸出制裁に対抗して、国家安全保障と利益を守るためだと主張している。
【韓国業界関連】
Samsung、SK Hynixはじめ現下の動き&内容から。
◇Korean company KoMiCo signs agreement to build semiconductor facility in Mesa―KoMiCo to build $50M semiconductor facility in Ariz. (8月25日付け KTAR-AM/KTAR-FM (Phoenix))
→韓国のKoMiCo社は、Mesa(メサ市)に半導体装置の部品洗浄・修理施設を建設する契約を締結。
プレスリリースによると、この施設はSuperstition Springs地区に建設され、KoMiCo社にとって米国最大の拠点となり、2026年までにオープンの予定。
◇Samsung Electronics Achieves Milestone with Qualcomm in Automotive Semiconductor Market―Samsung-Qualcomm collaboration deepens with LPDDR4X (8月27日付け BusinessKorea (South Korea))
→サムスン電子は、クアルコムのSnapdragon Digital Chassisプラットフォームに統合されるLPDDR4X車載メモリの認定を取得した。サムスンは、クアルコムの将来のプラットフォーム向けに次世代LPDDR5メモリを量産することで、マイクロン・テクノロジーの市場リードに挑戦する計画である。
◇Samsung chief invests in young people for WorldSkills Lyon―Samsung invests in youths for WorldSkills Competition in France ―IT giant sponsors National Skills Competition for 18th straight year (8月27日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子の最高責任者は、来月フランスのリヨン(Lyon, France)で開催される2年に1度の世界的なイベントである技能五輪大会に向け、国内の若者に投資していることを明らかにした。
同大会は、6つの主要産業分野における若者の技術力を競うものである。
◇SK hynix develops world's first 6th-gen DRAM chip―SK Hynix unveils 16GB DDR5 chip with 10nm technology (8月29日付け The Korea Times (Seoul))
→世界第2位のメモリー・チップ・メーカーであるSKハイニックスは木曜29日、第6世代の10ナノメーター・チップ製造技術を用いて、世界初の16ギガバイトDDR5チップを開発したと発表した。
SKハイニックスによると、新製品は前世代と比較してコスト競争力が改善され、設計の技術革新により生産性が30%以上向上したという。
◇SK hynix develops world's first 6th-gen DRAM chip (8月29日付け Yonhap News Agency)
→世界第2位のメモリー・チップ・メーカーであるSKハイニックスは木曜29日、第6世代の10ナノメーター・チップ製造技術を用いて、世界初の16ギガバイトDDR5チップを開発したと発表した。
【プリファードネットワークス関連】
我が国のAIスタートアップ、Preferred Networks(プリファードネットワークス)の協業およびHot Chips 2024での動き(上でも取り上げ)について、以下に示す。
◇SBI、プリファードに100億円出資へ AI半導体開発で協業 (8月26日付け 日経 電子版 21:00)
→ネット金融大手のSBIホールディングスは、人工知能(AI)サービスを手掛けるスタートアップ、プリファード・ネットワークス(東京・千代田)と資本業務提携する。第三者割当増資を引き受ける形で100億円程度を出資し、筆頭株主のトヨタ自動車に並ぶ大株主になる。プリファードのAI半導体の設計ノウハウを取り込み、AI半導体の開発に共同で乗り出す。
◇クアルコム、エッジAI開発でプリファード・AWLと協業 (8月28日付け 日経 電子版 17:08)
→半導体大手の米クアルコムは28日、国内新興のプリファードロボティクス(東京・千代田)、北海道大発スタートアップのAWL(アウル、同)と協業すると発表した。ロボットやスマートフォンに搭載されるクアルコム製半導体に適したソフト開発環境を提供し、人工知能(AI)のデータ処理を端末側で行う「エッジAI」の拡大につなげる。
◇プリファードネットワークスが推論用AI半導体、27年製品化 (8月30日付け 日経XTECH[クロステック])
→AI(人工知能)スタートアップのPreferred Networks(プリファードネットワークス、PFN、東京・千代田)は、推論処理用の半導体を2027年に製品化する。これまで学習用のAI半導体を手掛けてきた。今後、市場成長を見込める推論用のAI半導体を手掛けることで、事業拡大を狙う。
2024年8月25〜27日に開催のプロセッサー分野の著名な国際カンファレンス「Hot Chips 2024」(会場は米国カリフォルニア州スタンフォード)で明らかにした。