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新たな取り組み:Willowチップ、自前開発、IBMのCPO、IBM/Rapidus

半導体の国際学会「国際電子デバイス会議(IEDM 2024)」が開かれた今週、新たないろいろな取り組みに注目させられている。Googleから新型半導体「Willow」の発表、量子コンピューティングの分野で大きなブレークスルーをもたらすとのこと。AppleおよびXiaomi、米中での自前半導体開発の取り組み。IBMの光でデータやりとりする新半導体実装技術、「Co-Packaged Optics:CPO」。そして2-nm半導体に向けた中核技術について、IBMとRapidusの共同開発がIEDM 2024で発表されている。目まぐるしいあらわれ方で概要すら消化しきれないが、今後の半導体業界&市場の一層の伸長&増大の新たな支えとして、それぞれの展開に注目するところである。

≪今後の成長基盤に向けて≫

5年前の2019年、Googleから「量子超越」を達成した、と世界を驚かす発表が行われている。

◇Google claims a quantum breakthrough that could change computing (2019年10月23日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Googleが水曜23日、長らく求められたブレイクスルー、“quantum supremacy”を達成、新しい種類のコンピュータが今日の技術では想像も及ばない速度での計算を行える旨。科学ジャーナル誌、Natureでの論文で、GoogleのSanta Barbara, Californiaにあるリサーチlabが、1980年代以降科学者たちが目指していたmilestoneに到達、同社の量子コンピュータが従来のコンピュータでは不可能なtaskを果たした旨。

今回も、似たニュアンスを感じるが、Googleの新型半導体「Willow」の発表について業界各紙の取り上げ、あらわし方である。

◇Google reveals quantum computing chip with ‘breakthrough’ achievements―Google's Willow chip shows quantum computing potential/ Google says Willow is a quantum computing chip capable of performing a task in 5 minutes that would take a supercomputer 10 septillion years to complete. (12月9日付け The Verge)
→グーグルはWillow量子コンピューティング・チップを発表し、最速のスーパーコンピューターが10 septillion years(10億年)かかる問題を5分で解決できるとしている。このチップは、量子コンピューティングの主要なハードルであるエラー訂正において進歩を示しているが、商業的に実行可能な量子コンピューターはまだ何年も先の話だと、グーグルの量子AIラボの責任者であるHartmut Neven氏は言う。

◇Google unveils 'mind-boggling' quantum computing chip (12月9日付け BBC)
→グーグルは、現在世界最速のスーパーコンピューターがten septillion(10垓(がい)年…10,000,000,000,000,000,000,000,000年)かかる問題を5分で解くとする新型チップを発表した。
このチップは、量子コンピューティングとして知られる分野における最新の開発である。量子コンピューティングは、素粒子物理学の原理を利用して、気が遠くなるほど強力な新しいタイプのコンピュータを作ろうとしている。グーグルのWillow開発から得られた科学的知見が、学術誌『ネイチャー』に掲載された。

◇グーグルなど、量子計算機開発の「壁」克服 エラー訂正技術改良で性能向上、初の実証 (12月10日付け 日経)
→米グーグルなどは量子コンピューターの開発で大きな障害となっている計算中のエラーを訂正する技術を改良し、計算性能の向上に役立つことを初めて実証した。論文が9日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。実用に向く量子コンピューターの開発につながる成果だ。

◇Google claims quantum computing milestone ― but the tech can’t solve real-world problems yet (12月10日付け CNBC)
→*グーグルは「Willow」と呼ばれる新型チップを発表した。このチップは、多くのハイテク企業にとって次のフロンティアと見られている量子コンピューティングの分野で大きなブレークスルーをもたらすものだという。
 *しかし、グーグルの業績がこの分野を前進させたと評価される一方で、専門家によれば、量子コンピューティングはまだ実世界では利用されていない。
 *量子コンピューティングの支持者は、現在のコンピューターでは解決できない問題を解決できるようになり、医療、科学および金融などの分野で飛躍的な進歩を遂げる可能性があると主張している。

◇グーグル、量子計算機向け新チップ開発 天文学的計算を5分で (12月11日付け 日経)
→米グーグルは9日、量子コンピューターに使う新型のチップを開発したと発表した。天文学的な時間がかかる計算を5分未満で実行できるほか、技術開発の壁となってきた計算時のエラーを劇的に減らすことに成功した。既存のスーパーコンピューターに代わる計算インフラとして、幅広い用途への実用化に道を開く。
新型チップ「Willow」を開発した。

◇Google reaches quantum computing breakthrough (12月11日付け Taipei Times)
→グーグルは月曜9日、実用的な量子コンピューティングを現実に近づけるブレークスルーとなる新しい量子コンピューティング・チップを披露した。
「Willow」と呼ばれるカスタムチップは、主要なスーパーコンピューターが10億年かかる計算を数分で行うものだと、グーグルの量子AI創設者であるHartmut Neven氏は語った。

◇A Quantum Leap Forward by Google (12月12日付け EE Times)
→グーグルの量子AIチームは、Willow・チップによる量子コンピューティングの成果を発表、技術的景観のパラダイムシフトが起こる可能性を示唆している。月曜9日に発表されたこのプロセッサは、従来のスーパーコンピュータを凌駕する能力を発揮し、医療、AIおよびエネルギーなどの分野に革命をもたらすことが期待されている。

「Willow」の今後にさらに注目していくとして、次は、米国・Appleおよび中国・Xiaomiにおける自前開発があらわされている。特に中国における実態は引き続き注目するところである。

◇Apple Plans Three-Year Modem Rollout in Bid to Top Qualcomm―Report: Apple plans to replace Qualcomm with in-house modem chips (12月6日付け BNN Bloomberg (Canada))
→情報筋によると、アップルは来春、iPhone SEを皮切りに自社製セルラーモデムチップを投入し、2027年までにクアルコムのコンポーネントを置き換えることを計画しているという。コードネーム「Sinope」と呼ばれる最初のモデムは、クアルコムの最新技術には及ばないものの、アップルのプロセッサーと統合され、電力効率の向上と衛星ネットワークへの対応が図られる。
両社はコメントを控えている。

◇Apple aims to reduce Qualcomm reliance with new modem technology―Apple’s first modem, code-named “Sinope,” is set to debut in entry-level devices such as the iPhone SE and certain iPad models. (12月9日付け Tech Monitor)
→アップルは、クアルコムへの依存度を下げるための大きな一歩となる、待望の一連のセルラーモデムチップを発表する準備を進めていると報じられている。Bloombergによると、このカスタム設計のモデムは、2022年以来のアップデートが期待される技術大手アップルのエントリー・レベルのスマートフォン、iPhone SEに搭載される予定だという。

◇小米、3ナノ半導体開発か 北京市幹部明かす 自力で技術力向上 (12月7日付け 日経)
→中国スマートフォン大手の小米は高性能半導体の開発を加速する。地元政府の関係者がこのほど、同社がスマホ用で最先端の回路線幅3ナノメートルのチップ開発に成功したと明らかにした。競争力を左右する半導体の技術力を自力で高める。
小米が本社を置く北京市の経済情報化局の幹部が会合で明らかにし地元テレビ局が伝えた。

データセンターのデータ通信を光で行って、AIの学習の5倍高速化が実現できるとのこと。光部品と半導体を同じ基板上に組み込み、電子の代わりに光を使ってデータをやりとりする新技術、「Co-Packaged Optics:CPO」がIBMより発表されている。

◇IBM Brings the Speed of Light to the Generative AI Era with Optics Breakthrough (12月9日付け 3D InCites)
→*新しいco-packaged opticsイノベーションは、データセンターの電気的相互接続を置き換え、AIやその他のコンピューティング・アプリケーションのスピードとエネルギー効率を大幅に改善する可能性がある。
 *IBMは、データセンターが生成AIモデルをトレーニングして実行する方法を劇的に改善する可能性のある光学技術の画期的な研究を発表した。研究者らは、次世代オプティクス技術であるCPO(Co-Packaged Optics)の新しいプロセスを開拓し、既存の到達距離の短い電気配線を補完するために、オプティクスを通じて光速でデータセンター内の接続を可能にした。IBMの研究者は、この技術に必要なポリマー光導波路(PWG)の設計と組み立てに初めて成功したことを公表することで、コンピューティング産業がチップ、回路基板、およびサーバー間で広帯域幅データを伝送する方法をCPOがどのように再定義するかを示した。

◇米IBM、光でデータセンターのデータ通信 AI学習5倍速 (12月10日付け 日経 電子版 08:54)
→米IBMは9日、データセンターのサーバーの間の通信を光で行うことで、AIの学習を高速化する技術を開発したと発表した。電気を使った従来の通信手法に比べ、大規模言語モデル(LLM)の学習時間を最大で5倍速められる。
光学部品と半導体チップを同じ基板上に組み込み、電子の代わりに光を使ってデータをやりとりする「Co-Packaged Optics:CPO」と呼ばれる分野で新技術を開発した。

◇IBM Boasts Industry-Leading Photonics to Cut AI Training Speed―IBM touts AI training speed boost with photonics tech―IBM unveils silicon photonics tech to boost AI training speeds by 5×. (12月11日付け EE Times)
→1)IBMは今週、データセンターのトレーニングを5倍も高速化できるシリコンフォトニクス技術の開発で半導体業界をリードしていると発表した。IBMのco-packaged optics(CPO)は、データセンターにおける接続性を可能にし、既存の短いリーチの電線を補完する。同社は、この技術の背後で初めて成功したポリマー光導波路(PWG)と呼ぶものを設計し、組み立てた。
 2)IBMは、データセンターのトレーニングを最大5倍加速できるシリコンフォトニクス技術を発表した。この技術は、co-packaged optics(CPO:共包装光学部品)とpolymer optical waveguides(ポリマー光導波路)を使用し、消費電力を削減し、ケーブル長を延長することで、ジェネレーティブAIの拡張コストを削減できる可能性がある。

◇IBM Brings the Speed of Light to the Generative AI Era with Optics Breakthrough (12月12日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→IBMは、データセンターが生成AIモデルを訓練・実行する方法を劇的に改善する可能性のある光学技術の画期的な研究を発表した。研究者らは、次世代オプティクス技術であるCPO(Co-Packaged Optics)の新しいプロセスを開拓し、既存の到達距離の短い電気配線を補完するために、オプティクスを通じて光速でデータセンター内の接続を可能にした。

そして、2-nm半導体の開発・量産を目指しているラピダスが、タッグを組むIBMと、中核技術の共同開発について「IEDM 2024」で発表と、次の記事である。ネットよりプログラムを参照して、次のタイトルの論文である。

「Advanced Multi-Vt Enabled by Selective Layer Reductions for 2nm Nanosheet Technology and Beyond」

◇ラピダス・IBM、2ナノ半導体を性能通りに動かす技術開発 (12月10日付け 日経 電子版 15:11)
→最先端半導体の量産を目指すラピダスと米IBMは、回路線幅が2ナノメートルの半導体を性能通りに動かすための中核技術を共同開発した。半導体の中を流れる電流の電圧を細かく制御する。ラピダスが2025年4月に製造を始める試作品に今回の技術を取り入れる。
米サンフランシスコで開催されている「国際電子デバイス会議(IEDM)」で論文が採択され、9日に2社が研究成果を発表した。ラピダスとIBMが2ナノ品の研究成果を対外的に公表するのは初めて。

ラピダスについては、Synopsysとの技術開発が次の通りあらわされている。

◇Rapidus and Synopsys deliver shortened design cycle―Synopsys, Rapidus cut IC design cycle with new method (12月11日付け Electronics Weekly (UK))
→1)2nm技術を追求する日本の新興企業ラピダスとシノプシスが、IC設計サイクルを短縮する手法を開発したと発表した。
 2)ラピダスとシノプシスは、プロセスの感度とばらつきをモデリングすることでIC設計サイクルを短縮し、再キャラクタリゼーションの必要性を低減してプロジェクト遂行を加速する手法を発表した。この協業は、シノプシスのAI駆動型電子設計自動化(EDA)スイートを活用し、ラピダスの2ナノメートルゲート・オールアラウンド(GAA)プロセスをサポートする。

以上、相次いで今週見られた新たな取り組みであるが、それぞれの今後の展開に引き続き注目するところである。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□12月7日(土)

欧州、そしてシリアと、それぞれ経済および政治面で今後の動向に注目である、

◇欧州株「一人負け」鮮明 AI相場、けん引役不在 (MarketBeat)
→欧州株の「一人負け」が鮮明になっている。2024年初からの株価騰落率は世界の主要市場で最低だ。人工知能(AI)をテーマとする世界的な大相場のさなか、欧州はけん引役となる革新的な成長企業の不在が痛手となり、投資マネーの素通りが常態化している。

□12月9日(月)

◇シリア半世紀の独裁に幕 「分断と恐怖の支配」もろさ露呈 (日経 電子版 04:34)
→父子2代にわたり自国民への弾圧を続け生き延びてきたシリアのアサド政権による独裁支配が幕引きを迎えた。士気も規律もない政府軍はあっさりと反体制派による首都ダマスカス制圧を許した。

□12月10日(火)

消費者物価指数(CPI)などインフレの高止まりリスクもあって、45,000ドル台の最高値から約5年ぶり7日続落で締める流れとなった今週の米国株式市場である。

◇NYダウ一進一退で始まる NVIDIA下落、半導体下げ重荷 (日経 電子版 00:25)
→9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は一進一退で始まり、午前9時35分現在は前週末比57ドル08セント高の4万4699ドル60セントで推移している。米連邦準備理事会(FRB)が利下げを継続し、米景気を支えるとの見方から株買いが入っている。半面、半導体株の一角が下落し、投資家心理の重荷となっている。ダウ平均は下げる場面もある。

我が国の巨大ITへの大きな支出拡大が続いている次の内容である。

◇デジタル赤字、24年最大の公算 DXで収益力の向上急務 (日経 電子版 20:07)
→巨大テック企業などに利用料を支払う「デジタル赤字」の拡大が止まらない。2024年1〜10月の累計額は5.4兆円超とすでに23年実績を上回った。暦年では6兆円超と過去最大になりそうだ。デジタルトランスフォーメーション(DX)のコストを付加価値向上につなげる取り組みが急務だ。

□12月11日(水)

◇NYダウ4日続落、154ドル安 物価統計前に買い手控え (日経 電子版 07:09)
→10日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続落し、前日比154ドル10セント(0.34%)安の4万4247ドル83セントで終えた。11月の米消費者物価指数(CPI)の発表を11日に控えて積極的な買いが入りにくかった。米連邦準備理事会の政策判断に影響する可能性があり、様子見の投資家が多かった。

□12月12日(木)

混乱が続く韓国、半導体へのインパクトに目が離せないところである。

◇韓国混乱、低成長に追い打ち 半導体育成にも逆風 ウォン安・株安 市場不安定 政府幹部、金融安全性訴え (日経)
→韓国の尹錫悦大統領が宣言した非常戒厳を巡る政治の混乱は、経済にも影を落としつつある。政府は経済成長率が低迷するなか、中国依存の経済の変革を探ってきたが、政治混乱で政策は停滞し、半導体など稼ぎ頭となる産業の成長にも暗雲がかかる。

◇NYダウ続落99ドル安 利下げ期待でナスダック最高値 (日経 電子版 08:19)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5日続落し、前日比99ドル(0.2%)安の4万4148ドルで終えた。主力のハイテク株は堅調で、テック株中心のナスダック総合株価指数は初めて2万の大台を超えた。朝方発表の米物価指標が市場予想通りの結果になり、米連邦準備理事会の利下げ継続を期待した買いが相場を支えた。

□12月13日(金)

◇NYダウ6日続落、234ドル安 アドビ14%安 (日経 電子版 07:14)
→12日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6日続落し、前日比234ドル44セント(0.53%)安の4万3914ドル12セントで終えた。6日続落は4月以来。このところ上昇が目立っていたハイテク株の一角に利益確定売りが出て、相場の重荷となった。半面、米連邦準備理事会の利下げ継続観測が根強く、ダウ平均は上昇に転じる場面があった。

□12月14日(土)

◇NYダウ、約5年ぶり7日続落 長期金利の上昇が重荷 (日経 電子版 08:08)
→13日の米株式市場でダウ工業株30種平均は7日続落し、前日比86ドル(0.2%)安の4万3828ドルで終えた。7日続落となるのは2020年2月以来4年10カ月ぶりだった。一連の物価指標でインフレの高止まりリスクが意識され、 政策金利の引き下げ回数が市場予想より減少するとの思惑から長期金利が上昇。株価を下押しした。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連】

米国の半導体装置輸出規制&制裁に対して、中国からは材料の輸出禁止と報復措置がとられている中、中国の本年のIC輸入および輸出額が過去最高を記録している。

◇China's chip industry able to withstand sanction attacks (12月6日付け China Daily.com.cn)
→米国による中国の先端チップ産業への弾圧は、この分野での中国のキャッチアップにある程度影響を与えた。しかしそれは、中国が中低級チップ産業における基盤を固め、関連市場における全体的な競争力を向上させることを大いに促している。中国は自国のことをうまくやるために、できることはすべて使っている。

◇The Price of US Semiconductor Export Restrictions (12月8日付け Brown Political Review)
→半導体は現代技術の基盤である。半導体は、炊飯器のサイクルの調整から、航空機の複雑な飛行システムの管理、さらにはAIの集中的なデータ処理に至るまで、多様な機器に電力を供給している。そのため、現在進行中の米中貿易摩擦の焦点として、また世界的なハイテク戦争の戦場として浮上している。半導体産業における米国の優位性を維持するため、バイデン大統領はCHIPS法を導入し、米国の半導体製造の競争力を強化するために$52.7 billionの連邦補助金を割り当てた。さらに政府は、多くの米半導体企業に対し、中国との取引に関わる前に取引報告や特別許可を得ることを義務付けることで、中国の先端チップへのアクセスを制限しようとした。

◇Tough New U.S. Controls on China May Miss Target―New U.S. export controls on China's AI and semiconductor sectors face criticism for potential weaknesses. (12月9日付け EE Times)
→EE Timesの取材に応じたアナリストによると、中国の半導体およびAI産 業の躍進を減速させることを目的とした米国の輸出規制の最新の一撃は、両国間の技術戦争においてこれまでで最も強力なものであるが、米国のイニシアチブはまだ不十分である可能性がある。
12月2日の米国の発表から数日以内に、中国は、国家が管理する主要な半導体材料の輸出禁止を含む報復措置を取った。中国の市場監視当局は、Nvidiaに対する独占禁止法の調査を開始したとSouth China Morning Post紙が本日報じた。今のところ、双方は煙が晴れるのを待っている。

◇Global Trade Restrictions on Semiconductor Materials Intensify: TECHCET Offers Critical Market Insights (12月11日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→一連のエスカレートする貿易措置の中で、中国は2024年12月3日、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、および超硬材料を含むレアアース材料の米国への完全輸出禁止を発表した。この動きは、米国政府が2024年12月2日、中国、マカオ、ロシア、北朝鮮、イラン、シリアなどの国々を対象に、エッチング装置やリソグラフィ装置などの半導体製造装置の輸出規制強化を発表したことに続くものである。これらの動きは、半導体業界に影響を及ぼす世界的な貿易摩擦という、より広範な流れの一部である。

◇Chip war: China’s semiconductor imports expand ahead of tightened US restrictions (12月11日付け South China Morning Post)
→1月から11月までの中国の集積回路(IC)輸入総額は5,014億7,000万個で、前年同期比14.8%増加した。

◇China’s semiconductor firms cash in chips as export boom bucks overall trend―Despite a bevy of US restrictions on China’s semiconductor trade, chip shipments remain high even as overall exports miss expectations (12月12日付け South China Morning Post)
→中国の半導体貿易を抑制することを意図した米国からの規制強化にもかかわらず、北京の基盤技術の出荷は、最近の輸出データ発表で稀に見る明るいスポットとして際立っている。
火曜10日に発表された税関データによると、中国の集積回路輸出は2024年の最初の11ヶ月間で過去最高の$144.7 billionを記録し、前年比18.8%増となった。

◇How U.S. Firms Battled a Government Crackdown to Keep Tech Sales to China―US chip firms fight to limit rules on selling tech to China (12月12日付け The New York Times)
→1)中国への技術販売の線引きをめぐって、ワシントンで企業と政府関係者の間で激しい争いが繰り広げられている。
 2)Applied Materials, Lam ResearchおよびKLA Corp.などの米国企業が、中国への半導体装置販売の継続を求めており、米国は企業の訴えを拒否し続けている、と米国政府当局者は言う。これら3社が販売する中国メーカーは、米国から制裁を受けている技術大手ファーウェイと関係がある。


【米国CHIPS法関連】

米国の半導体製造強化に向けたCHIPS法補助金について、インテルに続いてMicronへの支給が最終確定している。

◇Micron Inks $6.1 Billion Grant Deal for U.S. Chip Factories―Micron lands $6.1B grant deal for N.Y., Idaho plants (12月10日付け The Wall Street Journal)
→マイクロチップ・メーカーのマイクロン・テクノロジー社は、ニューヨーク州とアイダホ州のチップ工場建設計画を支援するため、$6.1 billionの政府補助金を最終確定した。この投資は、CHIPS法に基づく同社の米国半導体製造への$125 billionのコミットメントの一部である。

◇SIA Applauds Announcement of CHIPS Act Incentives for Micron Projects (12月10日付け SIA Latest News)
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA:半導体産業協会)は本日、米国商務省およびMicronがアイダホ州Boiseおよびニューヨーク州Clayの新規プロジェクトに対する半導体製造奨励策を最終決定したこと、およびMicronがバージニア州Manassasで計画している拡張に対する新たな奨励策を発表したことについて、SIAのPresident and CEO、John Neuffer氏の声明を発表した。
CHIPS and Science Actの一環であるこの最終優遇措置は、アイダホとニューヨークにおけるマイクロンのメモリーチップ製造施設に対する支援を強化するものである。さらに商務省は、バージニア州マナサスにあるマイクロンの製造施設を拡張するための$275 million2億7500万ドルの予備的優遇措置を発表、米国における半導体製造能力をさらに加速させる。


【Nvidiaへの中国の調査】

独占禁止法違反の疑いで、中国がNvidiaに対する調査を開始、以下業界各紙の取り上げである。

◇As China Probes Nvidia, How Trade Battle With the U.S. Could Get a Lot Worse―China launches Nvidia probe amid escalating US chip tensions (12月9日付け Barron's)
→気を引き締めて。最近では、中国の国家市場監督管理局が月曜9日、チップ大手のエヌビディアに対する独占禁止法の調査を開始した。

◇China launches probe into Nvidia over suspected violations of country’s anti-monopoly law―China investigates Nvidia for antitrust violations (12月9日付け The Globe and Mail (Toronto)/Reuters)
→中国は、Mellanox Technologies(Sunnyvale, California:EthernetおよびInfiniBandスイッチ)の買収に関連した独占禁止法違反の疑いがあるとして、エヌビディアに対する調査を開始した。この動きは、最近の米国の半導体規制に対する報復と見られている。Nvidiaはこの調査についてコメントを発表していない。

◇Chip war: China launches antitrust probe into US semiconductor giant Nvidia in sign of escalation―The action is an apparent response to Washington’s tightened chip restrictions against China (12月9日付け South China Morning Post)
→中国の反トラスト規制当局は、米半導体大手エヌビディアに対する調査を開始した。これは、米国政府によるチップ規制の強化に反撃する動きとみられる。
先端チップの中国への輸出を制限する米国の規制を遵守しているNvidiaは、イスラエルの相互接続製品とソリューション・プロバイダーであるMellanox Technologiesの$6.9 billionの買収において、中国の独占禁止法に違反した疑いがあると、State Administration for Market Regulation(国家市場監督管理局)は月曜9日の通知で述べた。

◇中国、エヌビディア調査 独禁法違反疑い 20年の買収巡り (12月10日付け 日経)
→中国の国家市場監督管理総局は9日、独占禁止法違反などの疑いで米半導体大手エヌビディアの調査を始めたと発表した。2020年のメラノックス・テクノロジーズ(イスラエル)の買収などを対象とする。米国が中国への半導体の輸出規制を強化したことなどへの対抗との見方もある。

◇China targets Nvidia with antitrust probe, escalates US chip tensions (12月10日付け Reuters)
→*北京、Mellanox(メラノックス)との取引をめぐりNvidiaも調査中と発表
 *米国による最新のチップ規制の数日後の動き
 *米中摩擦に巻き込まれたエヌビディア
中国は9日、エヌビディアの独占禁止法違反の疑いで調査を開始したと発表、この調査は、ワシントンの中国チップ部門に対する最新の規制に対する報復的な一撃と広く見られている。

◇China probes Nvidia for ’violating’ anti-monopoly law (12月10日付け Taipei Times)
→国営放送CCTVによると、中国は月曜9日、独占禁止法違反の疑いで米チップ大手Nvidia Corpの調査を開始した。
CCTVによると、独占禁止法に関する当局であるState Administration for Market Regulation(国家市場監督管理総局)は、「法律に従って」調査を開始したという。
CCTVによると、Nvidiaは2020年にMellanox Technologies Ltd.を買収した際の約束に違反した疑いもあるという。

◇NVIDIA、中国当局調査で株価一時4%安 「独占」に反論 (12月10日付け 日経 電子版 04:56)
→米半導体大手エヌビディアは9日、米株式市場で株価が一時、前週末と比べ約4%下落した。中国の競争当局が同社の過去の買収などを対象に独占禁止法違反の疑いで調査を始めたと発表したことを受け、先行きへの警戒が強まった。同社は同日「(市場で)実力で勝利を得ている」などと疑惑に対し反論した。

一方、Nvidiaは中国での人員増強の動きである。

◇Nvidia Developing AI-Driven Cars in China―Nvidia expands in China for autonomous vehicle R&D (12月12日付け PC Magazine)
→1)同地域での成長が続く中、Nvidiaは中国で200人のスタッフを増員し、同国への供給を停止するという噂を否定した。
 2)Nvidiaは、自動運転車技術に注力するため、中国での従業員を200人増員し、全世界の従業員数は約4,000人になった。米国の貿易制限にもかかわらず、Nvidiaは引き続き中国を重要な市場と見ており、中国からの四半期売上げは$5 billionを超えている。


【「セミコン・ジャパン2024」関連】

SEMIの半導体装置統計データ、そして本イベント(12月11-13日:東京ビッグサイト)でのプレゼン概要について、業界紙記事より以下の注目である。

◇Global Total Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach a Record of $139 Billion in 2026, SEMI Reports (12月8日付け SEMI)
→「半導体製造への投資が3年連続で伸びているのは、世界経済を下支えし、技術革新を進める上で半導体産業が果たす重要な役割を反映している。」とSEMIのpresident and CEO、Ajit Manocha氏。「2024年7月の予測以来、2024年の半導体装置販売の見通しは明るくなっており、特に中国からの投資とAI関連分野への投資が予想を上回っている。2026年までの予測延長と合わせて、セグメント、アプリケーション、および地域にわたる力強い成長ドライバーを浮き彫りにしている。」

◇Global Total Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach a Record of $139 Billion in 2026, SEMI Reports (12月9日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SEMIは本日、セミコン・ジャパン2024で発表した「Year-End Total Semiconductor Equipment Forecast ― OEM Perspective(年末半導体製造装置総予測-OEMの視点)」において、OEMsによる半導体製造装置の世界売上高が2024年に前年比6.5%増の$113 billionに達し、業界新記録を達成すると予測している。半導体製造装置の成長はその後も続き、2025年には$121 billion、2026年には$139 billionの新記録に達する見込みで、前工程と後工程の両セグメントがこれを支える。

◇24年半導体装置販売額、16・9兆円へ AI向けなど寄与で過去最高 (12月10日付け 日刊工業)
→半導体の国際団体SEMIは9日、2024年の半導体製造装置の販売額が23年比6・5%増の$113 billion(約16兆9500億円)で過去最高になるとの予測を発表した。人工知能(AI)向けのDRAM需要と中国への販売が寄与する。25年以降もAI需要が市場を引っ張り、ロジックやメモリーで堅調な投資が続くと見込む。

◇深層断面/「セミコン・ジャパン」開幕 日本、半導体技術で存在感 (12月11日付け 日刊工業)
→半導体関連の総合展示会では世界最大級の「セミコン・ジャパン2024」が11日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕する。半導体製造装置各社は世界的な生成人工知能(AI)ブームを背景に業績が好調だ。セミコン・ジャパン2024の出展者は23年から146社増え、1107社が今後のさらなる技術革新を示す。経済安全保障の観点からも半導体の重要度が増す中、日本の存在感を高めることができるか。

◇半導体技術”未来の萌芽”集結 セミコン・ジャパン24開幕 (12月12日付け 日刊工業)
→半導体産業の国際展示会「セミコン・ジャパン2024」が11日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕した。開会式に出席した自民党半導体戦略推進議員連盟の甘利明名誉会長は「(半導体業界は)今日の一番が明日の一番を約束されるわけではない。セミコン・ジャパンには未来の技術の萌芽が集まっている」と述べた。1107の企業・団体が出展する。会期は13日まで。

◇SEMI幹部「2030年、世界の半導体人材150万人不足」 (12月12日付け 日経 電子版 15:58)
→半導体の国際団体SEMIで人材開発を担当するシャリ・リス・バイスプレジデントは12日、2030年までに半導体業界で150万人の新規労働者が追加で必要になるとの見通しを示した。業界の人材の高齢化が進み、女性を含めた若手の育成が急務になると強調した。
リス氏は東京ビッグサイト(東京・江東)で開催中の半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」に登壇し、SEMIの人材育成策をテーマに講演した。

◇TSMCジャパン「AI半導体素材を1年で爆速開発」 (12月12日付け 日経 電子版 16:18)
→世界最大の半導体受託生産会社、TSMCで次世代技術の開発を担うTSMCジャパン3DIC研究開発センター(茨城県つくば市)の江本裕センター長は12日、AI半導体向けの素材について「サプライヤーに発注してから量産までの期間を1年程度にする」と語った。一般的に数年程度かかる期間を短縮して競争力を高める。半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」で講演した。


【Morris Chang氏】

前回に続いて、TSMCの創業者、Morris Chang氏のコメントであるが、苦境のインテルについて次の通りである。ずっと遡る時間軸での両社の関係を思い起こしている。

◇Intel should have focused on AI rather than chipmaking, TSMC founder says (12月9日付け Reuters)
→インテルは、受託チップメーカーになろうとするよりも、AIに集中すべきだったと、TSMCの創業者が月曜9日に述べた。
Morris Chang氏は、自伝を発表するイベントで、Pat Gelsinger氏がインテルを去った理由は分からないが、該米国企業は新しいCEOと同様に新しい戦略を求めているようだと述べた。

◇Morris Chang on Intel, Gelsinger and Samsung―Chang dishes on struggles at TSMC's rivals (12月9日付け Electronics Weekly (UK))
→1)インテルは「新しい戦略と新しいCEOの両方を探しているようだが、それは非常に難しいことだ」と、Morris Chang氏が台北で行われた新著の発表会で語ったと日本経済新聞が報じている。
 2)TSMCの創業者、モリス・チャン氏は、インテルが新たな戦略とCEOを探しており、TSMCに対するパット・ゲルシンガーCEOの態度を 「敵対的 」と表現していることを指摘し、インテルの現在のリーダーシップの課題についてコメントした。チャン氏はまた、韓国の政治問題の中でサムスンの技術的課題についても言及した。

◇Intel needs a core business strategy: Morris Chang (12月10日付け Taipei Times)
→TSMCの創業者であるMorris Chang氏は昨日、インテル社の取締役会が中核となる事業戦略を打ち出さなければ、4年前と同じ苦境に陥るだろうと述べた。
この発言は、かつてTSMCのライバルであった米国のチップメーカーが経営不振に陥っていることについて、台北で開かれた自伝第2巻の出版記者会見で、記者団の質問に答えたものである。

一方、インテルの現下の経営陣のコメントがあらわされている。IDMの存続が問われる事態であり、今後に目が離せないところである。

◇Intel executives say a manufacturing spinoff is possible―Intel executives eye a manufacturing spinoff (12月12日付け Yahoo/Reuters)
→CEO更迭後のインテル社を率いる2人の経営幹部は木曜12日、来年予定されている新しいチップ製造技術が成功しなければ、同社は製造事業の売却を余儀なくされる可能性があることを認めた。
インテルはチップの設計と製造の両方を行なっており、業界ではユニークな存在である。同社は、製造で失ったリードを取り戻すのに苦闘し、エヌビディアが支配するAIブームに乗り遅れたため、$100 billion以上の価値を失った。


【AI(人工知能)関連】

新機能躍進が打ち上げられる一方、安全対策など問題意識が合わせて見られる状況が、以下の通り続いている。なにより、ここ数週間で進歩が鈍化と懸念材料になる急展開ぶりではある。

◇The limits of intelligence ― Why AI advancement could be slowing down (12月11日付け CNBC)
→この2年間、生成AIは急速に発展してきており、大規模なブレークスルーは、「もし」ではなく「いつ」の問題であるように思われた。しかしここ数週間、シリコンバレーでは進歩が鈍化しているとの懸念が強まっている。

◇AIの「ゴッドマザー」、AIは人の代替ではなく能力を拡張 (12月12日付け 日経 電子版 11:41)
→AI研究の第一人者で「AIのゴッドマザー」とも呼ばれる米スタンフォード大学のFei-Fei Li教授は11日、カナダで開催中のAIの国際学会で講演した。AIとロボットが人間の仕事を奪うという懸念に対し、あくまでAIは「人間に『置き換わる』のではなく、人間の能力を『拡張する』存在だ」と訴えた。

◇OpenAIなど生成AI 6社「安全対策が不十分」 NPOが評価 (12月13日付け 日経 電子版 04:57)
→米NPOは11日、生成AIを開発する主要6社が十分な安全基準を満たしていないとする調査結果を公表した。偽情報や有害コンテンツを作成できてしまうリスクなどを調べたところ軒並み低評価にとどまり、米メタは最低だった。AIを制御する対策も不十分としている。

◇OpenAI、ChatGPTに「目」を追加 カメラで映像共有 (12月13日付け 日経 電子版 09:43)
→米オープンAIは12日、スマートフォンのカメラを通じてChatGPTと映像を共有する機能の提供を始めた。有料利用者は周囲の状況をリアルタイムでAIに伝え、対処方法などを教えてもらうことができる。AIが人に近い反応速度で会話する「アドバンスト・ボイス・モード」に、スマホのカメラ映像や操作画面を共有する機能を加えた。

◇Google、社内に散らばる資料を瞬時に要約 AI新機能 (12月14日付け 日経 電子版 00:30)
→米グーグルは13日、生成AIを使って企業内の文書や画像、電子メールなどを一括検索できる機能を開発したと発表した。社内に散らばるデータをAIが瞬時に引き出して要約する。資料作成の手間を省けるほか、素早い経営判断にも役立つという。

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