Biden氏大統領選撤退の波紋の中、Nvidiaの中国向け次世代AI半導体
米国のBiden大統領が今秋の大統領選挙撤退を表明、その後Kamala Harris副大統領を民主党候補として支持、新世代にバトンを託すと演説を行った。トランプ氏の前週の発言に続いて、半導体関連にもいろいろ波紋を呼んでいる。急転激変の情勢の渦中、火種となりそうな1つとして、Nvidiaの中国向け次世代AI半導体があらわされている。現状の最先端品が米国政府により対中国輸出が規制される雲行きが色濃くなっており、その規制をかいくぐれる仕様のものを出していく動きである。米中摩擦が激動の局面の中で如何に展開していくか、米国政府の国内半導体製造強化の動きなど関連含めて、一層目が離せないところであり、以下取り出していく。
≪さらに流動的な展開≫
前週末からの動きであるが、トランプ発言の株式市場へのインパクト、そして台湾の半導体は簡単には置き換わらないとの発言である。
◇The return of a US-China trade war? Q&A with political economist June Park (7月19日付け DIGITIMES)
→米共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏が、台湾が米国からチップ事業を奪っていると非難し、中国からの商品には60%、その他の国からの商品には10%の関税を課すというニュースの翌日、世界の株式市場は急落した。
◇Semiconductor industry a match for geopolitical shifts: NSTC deputy head (7月19日付け Taipei Times)
→台湾の半導体産業は、産業クラスターによって形成されたエコシステムであり、簡単に代替することはできないと、新たに就任した国家科学技術委員会(NSTC)のSu Chen-kang(蘇振綱)副大臣が昨日述べた。
前台湾南部科学工業園区局長の同氏は、各国が自国の半導体サプライチェーンを構築することに重点を置くようになったことが台湾に影響を与える可能性があるかとの質問に対し、このようにコメントした。
台湾の半導体産業が他より優れている点は、それがクラスターであり、30年から40年かけて作られたエコシステム全体を形成していることである、と同氏は台北での記者会見で語った。
今週はじめ、Biden氏の選挙戦撤退表明、後継にハリス副大統領支持である。
◇バイデン氏が米大統領選撤退 後継候補、ハリス氏支持 (7月22日付け 日経 電子版 04:01)
→米民主党のバイデン大統領は21日、11月の大統領選を戦う党の候補者指名を辞退し、選挙戦から撤退すると表明した。後継候補にハリス副大統領を支持すると明らかにした。大統領の職務は2025年1月の任期まで続ける。
ハリス副大統領のAIへのスタンスがあらわされている。
◇Biden bows out: Kamala Harris takes lead as AI regulations and semiconductor debates heat up―Harris' approach to AI, semiconductors in the spotlight (7月23日付け DIGITIMES)
→Kamala Harris(カマラ・ハリス)副大統領は、民主党候補として退任したジョー・バイデン大統領の支持を得ており、ハリス氏とAI規制および半導体サプライチェーンに対する彼女のスタンスに注目が集まっている。ハリス副大統領は過去にもAIに対する規制強化を求め、誤報や偏見のリスクを指摘してきた。
トランプ氏は、米国政府の半導体補助金をひっくり返さないか、韓国半導体業界の警戒である。
◇Korean chipmakers wary of possible US subsidy flip-flop (7月23日付け The Korea Times)
→共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏がこのような取り組みに否定的な見解を示し続けているため、韓国企業は米国に投資するチップメーカーに補助金を支給する米国のプログラムがひっくり返る可能性を警戒している。ジョー・バイデン米大統領が2024年の大統領選から離脱し、選挙をめぐる不確実性が高まるなか、韓国のチップ製造業界はトランプ氏の発言に警戒感を強めている。
中国メーカーがロシアの兵器用部品を輸出している、とまた新たな監視&制裁対象である。
◇中国メーカー、米制裁企業に部品供給 対ロ軍事支援疑い (7月24日付け 日経 電子版 05:30)
→・兵器生産に不可欠な精密部品をベラルーシ軍需企業に輸出
・ウクライナ侵略を続けるロシア軍への兵器供給に中国企業が関与
・米欧情報機関はこうした実態を把握、制裁網を広げる方針
中国の機械メーカーが米英の制裁対象であるベラルーシの軍需企業に、ロシアの兵器生産に不可欠な精密部品を輸出し続けていることがわかった。
民主党および共和党、双方の選挙絡みの内容が続いていく。
◇ハリス氏支持、若者がけん引 世論調査で「蜜月」の兆し (7月25日付け 日経 電子版 05:41)
→米大統領選挙で民主党の候補者指名が固まったハリス副大統領と若者の「蜜月」の兆しが広がっている。米CNNの世論調査によると、34歳以下の登録有権者のハリス氏への支持率は47%と、共和党のトランプ前大統領に対する43%を上回った。若年層を中心に有権者登録も増え、支持拡大の勢いをみせる。
◇バイデン大統領「新世代にバトン渡す」 撤退巡り演説 (7月25日付け 日経 電子版 10:05)
→米民主党のバイデン大統領は24日、ホワイトハウスの大統領執務室で演説した。11月の大統領選を戦う党候補者指名を辞退した理由について「新しい世代にバトンを渡すのが米国を団結させる最善の方法だと決断した」と説明した。
◇メキシコ大統領、トランプ氏に書簡 テスラショック警戒 (7月25日付け 日経 電子版 05:42)
→米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がメキシコ新工場計画の一時凍結を明らかにし、メキシコで動揺が広がっている。23年にテスラが進出を表明して以降、追い風が続いていた海外からの直接投資に影響しかねないという警戒感が強い。
このような激動の情勢の渦中、現下のAI市場を席巻するNvidiaの中国向けAI半導体を巡って火種の可能性を多々孕んだ米国政府の動きである。
◇Nvidia could lose up to $12 billion in revenue if US bans new China-oriented GPU ― analysts believe the H20 will get the banhammer ―A potential H20 ban would be a significant hit for Nvidia. (7月21日付け Tom's Hardware)
→Jefferiesの顧客向けメモによると、米国はNvidiaの中国向けAI GPU「HGX-H20」の販売を妨げる可能性のある新たな貿易制限を検討しているとQZは報じている。これは、中国の高度なAI技術へのアクセスを制限する米政府の計画の一部であり、実施された場合、Nvidiaの推定$12 billionの売上げを失う可能性がある。
このほどさらに米国の規制をクリアできるようにした新しいAI半導体、「B20」が、以下の通りあらわされている。
◇Nvidia has a new AI chip. Here’s what we know about the ‘B20’―Sources: Nvidia works on Blackwell series "B20" for China (7月22日付け Fast Company/Reuters)
→情報筋によると、NvidiaはInspur(クラウド・コンピューティングとビッグデータ・サービスを提供する中国の大手プロバイダー)と協力してBlackwellシリーズの中国市場投入版を計画しているという。同社のH20グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)が新たな規制案で禁止された場合、同社は大きな収入減に直面するため、該「B20」AIチップは米国の貿易制限に準拠する見込み。
◇Nvidia making new version of Blackwell AI chip for China, report says (7月22日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→ロイター通信によると、Nvidiaの新チップは暫定的にB20と呼ばれている。
中国企業との協力に注目である。
◇Nvidia preparing a version of new Blackwell AI chip for China market, sources say (7月22日付け South China Morning Post)
→Nvidiaは、「B20」と仮称されるAIチップの発売と販売について、中国のハイテク企業、Inspurと協力する。
◇NVIDIA、次世代AI半導体で中国向け準備 ロイター報道 (7月23日付け 日経 電子版 03:33)
→米半導体大手エヌビディアが次世代の人工知能(AI)半導体で、中国市場向けモデルを準備している可能性があることが22日分かった。ロイター通信が報じた。米政府は中国へのAI半導体の輸出を規制しているが、同社は先端品ながら規制に抵触しないモデルを開発したという。
◇Nvidia said to launch new AI chip for China―Report suggests H20 will be banned when Commerce Department does annual review of its export controls in October (7月24日付け Asia Times)
→世界最大価値評価の企業であるエヌビディアが、中国市場向けに主力製品B200をベースにした新しい人工知能(AI)チップを開発していると報じられた。
B20と呼ばれるかもしれないこの新型チップの量産は今年後半に開始され、出荷は来年第2四半期に開始されると、ロイターは関係筋の話として報じている。
米中摩擦関連の動きを以下取り出して示すが、まずは、米国政府のCHIPS and Science Actによる米国内半導体製造強化に向けた助成について以下の通りである。
◇Entegris Joined by White House Representatives and Colorado Governor to Celebrate $75 Million CHIPS Act Funding Announcement (7月22日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→エンテグリス社は本日、コロラド・スプリングス市の建設現場において、連邦政府、州政府および地方政府の来賓数名が出席する中、CHIPS法資金供与の決定を祝った。
6月26日、エンテグリス社と米国商務省は、CHIPS and Science Actの下でエンテグリス社に提案された最高$75 millionの直接資金について、拘束力のない予備的条件覚書(PMT)を締結したことを発表した。この資金は、コロラドスプリングスにおけるエンテグリスの最先端施設の開発を支援するもので、米国における半導体製造の将来にとって重要な製品を生み出すことを目的としている。
◇$1.6 Billion CHIPS Subsidy Boosts Advanced Packaging in U.S. (7月23日付け EE Times)
→EE Timesの取材に応じた業界関係者によると、$1.6 billionのCHIPS Act補助金は、需要が急増しているちょうどその時期に、米国で先端パッケージングのプレゼンスを確立するのに役立つ。世界最大のパッケージ・テスト企業である台湾のアドバンスト・セミコンダクター・エンジニアリング(ASE)などは、AMD、AppleおよびNvidiaのようなシリコンバレーの顧客が、省エネルギーのシリコンフォトニクスやその他の新技術を組み込んだ新しいチップ設計を製造するのを支援するため、カリフォルニアの生産能力を2倍に増やそうとしている。
◇From Legislation to Innovation: The CHIPS Act and a New Era of Semiconductor Innovation―Wave of chip innovation expected to follow CHIPS Act (7月23日付け The National Law Review)
→CHIPS and Science Actは、半導体の革新に拍車をかけるだろう。これは、LED照明や電気自動車が政府の主導でこれらの産業を後押しした後に見られたパターンである。US Patent and Trademark Office(米国特許商標庁)は、特許出願の増加と審査プロセスの迅速化を支援するため、Semiconductor Technology Pilot Programを設立した。
半導体実装&テストのAmkorのアリゾナでの拠点構築への支援である。
◇SIA Applauds CHIPS Act Incentives for Amkor Facility in Arizona (7月26日付け SIA Latest News)
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA:半導体産業協会)は本日、米国商務省とAmkor社が発表した半導体製造奨励策を称賛するSIAのPresident and CEO、John Neuffer氏の声明を発表した。このインセンティブはCHIPS and Science Actの一部であり、Amkorのアリゾナにおける先端パッケージング事業を支援するものである。米商務省は以前にも、米国の半導体サプライチェーン強化につながるさまざまな企業やプロジェクトに対する優遇措置を発表している。
◇US to award Amkor up to $400 million for chip packaging plant―Amkor to get up to $400M in US grants for packaging site (7月26日付け Reuters)
→米国政府は、アリゾナ州を拠点とする先端半導体パッケージング施設の建設を支援するため、アムコー・テクノロジー社に最大$400 millionの助成金を支給する。この$2 billionの工場では、自動車、データセンターおよび5G/6G向けチップのパッケージングとテストが行われる予定。アップルが最初の顧客となる予定。
◇Amkor Signs Preliminary Memorandum of Terms with US Department of Commerce for Arizona Advanced Packaging and Test Facility (7月26日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
その他、関連する内容を以下に示す。米中の狭間、そして中国の中での反応などが含まれる。
◇Nvidia challenger working with South Korea and Japan―Canadian venture Tenstorrent targets more economical AI, working with Samsung, Hyundai Motor and Rapidus (7月22日付け Asia Times)
→ドナルド・トランプ大統領の台湾に関する発言を受け、投資家がNvidiaとTSMCへのエクスポージャーを見直す中、カナダのAIチップ、ソフトウェアおよびハードウェア設計会社であるTenstorrentは、韓国と日本のICファウンドリーと協力する、TSMCに代わる競争力のある企業として際立っている。
◇CEO of chip maker YMTC says China to see ‘explosive’ semiconductor growth in 3-5 years (7月23日付け South China Morning Post)
→*中国トップのチップ産業協会の会長を務めるChen Nanxiang氏は、ムーアの法則が減速する一方で、中国は新しいパッケージング技術から恩恵を受けるだろうと述べた。
*中国の半導体業界トップが、アプリケーションおよびパッケージング技術の優位性を背景に、中国は今後3〜5年で「爆発的成長 」を遂げると予測、米国の技術制限を克服する道を描いている。
中国半導体産業協会(CSIA)の会長であり、中国のトップメモリチップメーカーYangtze Memory Technologies Corporation(YMTC)のトップであるChen Nanxiang氏は、中国国営テレビから引用された発言として、中国が大学や研究機関に依存する古いモデルを捨てる一方で、業界の新しい市場主導モデルを模索していると述べた。
◇The Limits of the China Chip Ban―Washington’s Export Controls Could End Up Helping Beijing (7月24日付け Foreign Affairs)
→2022年、米中間の緊張が高まる中、バイデン政権は、北京が先進的な半導体とそれを国内で生産するための設備を入手できないようにするための輸出規制を展開した。この規制の目的は、中国が核兵器や通常兵器の近代化に利用できる最先端のAI能力を否定することにあった。
しかし、チップの規制は、おそらくどちらの結果も達成できないだろう。北京の軍事的近代化を大幅に遅らせることはできないだろう。最先端のAIチップが必要な場合、中国軍は以前に輸入されたチップ、密輸されたチップ、および国内で設計・生産されたチップを使うことができる。
◇China's Semiconductor Industry Rallies with Strategic Moves and Legal Battles amid U.S. Sanctions (7月25日付け Business Korea)
→中国の半導体産業は、米国の技術制裁の影響を受けた後、再編成して攻勢を開始している。このような規制にもかかわらず、ファーウェイは昨年、世界の通信機器市場で31.3%の市場シェアで首位を維持し、2022年には特許使用料収入で$560 millionを稼いだ。この復活は、技術的な地歩を取り戻すことを目的とした一連の戦略的な動きと法廷闘争によって特徴付けられる。
◇US senator attacks Biden administration for failing to halt sales of advanced chips to China (7月26日付け South China Morning Post)
→*Louisiana州選出、共和党、John Kennedy氏、商務省がAI技術の鍵となるNvidia半導体を中国企業から引き離すのに十分なことをしていないと述べている。
*ジョー・バイデン米大統領の政権は木曜25日、Nvidia製の高度な半導体チップを不正なネットワークが中国に販売し、そのような販売を阻止するための輸出規制を逃れているとの報告をめぐり、議会で非難を浴びた。
ルイジアナ州選出のジョン・ケネディ上院議員は、今月ウォール・ストリート・ジャーナル紙が行った調査で、70以上のディストリビューターが制限付きNvidia製チップを中国の企業に販売していることが判明したことを引き合いに出し、輸出管理担当のThea Kendler(テア・ケンドラー)商務次官補にこの販売について問いただした。
Nvidia半導体へのさらなる締めつけを求める動きで締めとなっているが、一層流動的な情勢の中での半導体関連の動きに引き続き注目するところである。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□7月22日(月)
トランプ発言による米国および日独台の株価の大きな対比である。
◇市場、「米国第一」の再来警戒 トランプ氏、半導体・関税上げに言及 日独株急落招く (日経)
→世界の株式市場でトランプ前米大統領の「米国第一主義」的な政策運営への警戒が広がっている。前週(15〜19日)に米国のダウ工業株30種平均や中小型株指数が上げた一方、ドル高是正や関税引き上げ懸念で日本やドイツ、台湾などは急落した。
□7月23日(火)
バイデン撤退表明がさらに輪をかけている。
◇米株反発、トランプ相場揺り戻し テック買い・資源売り (日経 電子版 06:03)
→バイデン米大統領が大統領選からの撤退を表明して一夜明けた22日の米株式市場は、前週の相場を動かしたトランプ前大統領の再選を織り込む「トランプ・トレード」の揺り戻しが見られた。半導体などの銘柄に買い戻しが入り、主要な株価指数は反発した。混沌とする政治情勢が株価に与える影響について市場参加者は吟味を続ける。
ダウ工業株30種平均は前週末比127ドル(0.3%)高の4万0415ドルで引け、多くの機関投資家が参照するS&P500種株価指数も1.1%高だった。上昇が目立ったのがハイテク株の比率高いナスダック総合株価指数で、1.6%高で引けた。
□7月24日(水)
各社業績の期待が各日各様、揺り戻しではじまって大きく落ち込み、そしてインフレ鈍化を好感して大きく上げて締めた、今週の米国株式市場である。
◇NYダウ反落、57ドル安 注目決算前に持ち高調整が優勢 (日経 電子版 07:04)
→23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比57ドル35セント(0.14%)安の4万0358ドル09セントで終えた。取引終了後の大型ハイテク企業の決算発表を前に様子見の姿勢が広がり、持ち高調整の売りが優勢だった。相場全体を動かす材料に乏しいなか、決算発表など個別に材料が出た銘柄の売買が目立った。
□7月25日(木)
◇ナスダック1年9カ月ぶり下落率 業績期待剥落、売り再び (日経 電子版 06:10)
→主な米国株指数の一つであるナスダック総合株価指数が24日、前日比3.6%安の1万7342.41で引けた。下落率は2022年10月以来、約1年9カ月ぶりの大きさを記録した。電気自動車(EV)のテスラなどの決算内容が市場予想に届かず、景気減速感を示す経済指標も重荷となった。テック株安が再び加速している。
S&P500種株価指数は2.3%安の5427.13で引け、22年12月以来の下落率となった。ダウ工業株30種平均は504ドル(1.2%)安の3万9853ドルで取引を終えた。ハイテク株の比率の高い株価指数ほど下げがきついという関連性がみられた。
円安の補正を図る見え方があらわれている。
◇円、一時1ドル=152円台に 日銀追加利上げを意識 (日経 電子版 09:53)
→25日の東京外国為替市場で対ドルの円相場は一時1ドル=152円台に上昇した。およそ2カ月半ぶりの円高・ドル安水準になる。7月30〜31日の日銀の金融政策決定会合を前に、国内の政治家から日銀に追加利上げを求める発言が相次ぎ、日米金利差の縮小が意識されている。
米国経済のインフレの鎮まりも意識されている。
◇Economic Growth Quickens, Rising at 2.8% Rate in Second Quarter―US growth surges past expectations in Q2―Second-quarter GDP marks sharp acceleration from the first quarter (The Wall Street Journal)
→第2四半期の米国経済は年率2.8%と予想を上回るペースで拡大し、借入コストの上昇にもかかわらず消費者需要の底堅さを示した。個人消費が2.3%増加したことが主因となったこの成長率はアナリスト予想を上回り、インフレが安定し始める中、米連邦準備制度理事会(FRB)の戦略が功を奏している可能性を示唆した。
□7月26日(金)
◇米テック株売り継続 GDP好調も、業績期待の剥落重く (日経 電子版 06:05)
→25日の米株式市場ではテクノロジー銘柄の売りが継続した。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は、約1年9カ月ぶりの下落率を記録した前日からの流れを反転できなかった。4〜6月期の米国内総生産(GDP)は予想を上回る実質成長率となったが、米株は底上げ相場とはならなかった。
多くの機関投資家が参照するS&P500種株価指数は0.5%安の5399.22だった。一方で景気敏感株の比率が高い大型株指数、ダウ工業株30種平均は小幅反発して81ドル(0.2%)高の3万9935ドルで引け、中小型株指数ラッセル2000は1.3%高だった。
◇Fed’s key inflation gauge rose 2.5% in June from a year ago, easing path to rate cut―Key gauge shows moderate pace of June inflation (CNBC)
→1)*6月の個人消費支出物価指数は前月比0.1%上昇、前年同月比2.5%上昇、年率は前月より若干低下した。
*食品とエネルギーを除いたコア・インフレ率は前月比0.2%上昇、前年同月比2.6%上昇で、いずれも予想通りだった。
*個人所得は0.2%の増加にとどまり、予想の0.4%を下回った。個人貯蓄率は3.4%に低下した。
2)商務省によると、6月の個人消費支出価格指数は0.1%上昇し、前年同月比では2.5%上昇した。食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.2%上昇、前年比2.6%上昇。
□7月27日(土)
◇NYダウ続伸654ドル高 インフレ鈍化好感、値動き荒く (日経 電子版 06:04)
→26日の米株式市場でダウ工業株は大幅続伸し、前日比654ドル(1.6%)高の4万0589ドルで引けた。インフレ指標の鈍化で市場参加者は利下げ期待を強めた。このところ売り込まれていたハイテク株も含めて、幅広い銘柄が買われた。ただ値動きは荒く、売り買いが交錯している様子をうかがわせる。
≪市場実態PickUp≫
【各社業績発表から】
各社各様であるが、Nvidia向けAIメモリ半導体需要で好調なSK Hynixから、以下の通りである。
◇Nvidia supplier SK Hynix posts highest quarterly profit in 6 years on AI chip leadership―AI demand lifts SK Hynix's quarterly profit to 6-year high (7月25日付け CNBC/Reuters)
→1)*6月期の営業利益は2018年第2四半期以来の高水準を記録し、前年同期の2兆8800億ウォンの赤字から回復した。
*SK Hynixは23日、高帯域幅メモリ(HBM)を含むAIメモリへの旺盛な需要のおかげで、同社のメモリ製品の全体的な価格が継続的に上昇したため、前四半期と比較して売上高が32%増加したと発表した。
2)SKハイニックスは2018年第3四半期以来最高となる$3.96 billionの利益を第2四半期に計上し、AIチップの需要が急増したと指摘した。広帯域メモリーへの需要は、ジェネレーティブAIチップセットに使用されるため、今後も増加すると予想される。
◇(LEAD) SK hynix turns to black in Q2 on robust AI chip sales (7月25日付け Yonhap News Agency)
→SKハイニックスは木曜25日、高級人工知能(AI)メモリーチップの堅調な販売により、第2四半期は黒字に転換したと発表した。
世界第2位のメモリー・チップ・メーカーは、4-6月期に5兆4600億ウォン(3.95 billion)の営業利益を計上、前年同期は2兆8,800億ウォンの損失であった。
◇Rising memory prices, AI demand boost SK Hynix 2Q24 sales and profit (7月25日付け DIGITIMES)
◇韓国SK、営業益6026億円 4〜6月 生成AI向け需要 (7月26日付け 日経)
→韓国半導体大手のSKハイニックスが25日発表した2024年4〜6月期の連結営業利益は5兆4690億ウォン(約6026億円)となり、3四半期連続で前年同期を上回った。前年同期は2兆8820億ウォンの赤字だった。生成AI(人工知能)向け高性能半導体を中心とする需要を取り込んだ。
売上高は前年同期比2.3倍の16兆4230億ウォンだった。4〜6月期の売上高としては過去最高となった。
IBMも好調な内容である。
◇IBM shares jump on earnings and revenue beat (7月24日付け CNBC)
→*IBMの売上高と調整後1株当たり利益は予想を上回った。
*通期のフリー・キャッシュ・フローについては、ややプラスに転じている。
*IBMは、ジェネレーティブ人工知能に関連したビジネスが増えていると述べた。
◇米IBM、4〜6月純利益16%増 法人向けAIが寄与 (7月26日付け 日経)
→米IBMが24日に発表した2024年4〜6月期の決算は、売上高が前年同期比2%増の$15.77 billion(約2兆4286億円)、純利益が同16%増の$1.834 billionだった。企業が生成AI(人工知能)や自動化システムを積極的に取り入れたことが寄与した。
復活に向けて邁進中とのニュアンスがうかがえるTIである。
◇Texas Instruments Outlook Eases Fear of a Chip Downturn―TI's sales forecast points to an end to excess inventory (7月24日付け BNN Bloomberg (Canada))
→テキサス・インスツルメンツ(TI)は、最新の売上見通しで投資家を安心させ、需給バランスの回復を示唆している。Haviv Ilan(ハビブ・アイラン)最高経営責任者(CEO)は、同社の中国でのビジネスと「顧客が在庫を削減したという非常に明確なシグナル」を指摘した。
◇Texas Instruments gives outlook easing fears of a downturn (7月25日付け Taipei Times)
→テキサス・インスツルメンツは火曜23日、在庫過剰が解消しつつあることを示す売上見通しを示し、同社のチップの主要市場で復活が進行中であることを投資家に安心させた。
厳しい内容を受け止める以下各社である。
≪NXP≫
◇NXP Semi forecasts revenue below estimates on auto weakness, shares tumble (7月23日付け Reuters)
◇NXP Shares Slide Most in Four Years Following Weak Outlook―NXP's shares take a hit as outlook dims in challenging environment (7月23日付け BNN Bloomberg (Canada))
→NXPセミコンダクターズNVの株価は、第3四半期のガイダンスが投資家を失望させたため、過去4年間で最も下落した。
オランダのチップメーカーは、9月期の売上高を$3.15 billionから$3.35 billionと予想した。ブルームバーグがまとめたデータによると、この中間値はアナリストの平均予想$3.35 billionを下回っている。
≪STMicro≫
◇STMicro cuts full-year outlook for second time, shares tumble―STMicro shares down as it lowers full-year outlook again over weak demand (7月25日付け Reuters)
→チップメーカーのSTマイクロエレクトロニクスは、産業向け受注の低迷と車載用チップの需要減を受け、通期の売上高と利益率のガイダンスについて2度目の下方修正し、株価は急落した。
株価は13.5%下落し、1050GMT時点でフランスの優良株価指数CAC40(.FCHI)の最下位となった。
テスラやアップルなどを顧客に持つイタリア系フランコ企業は、2024年の売上高を$13.2 billion to $13.7 billionと予想し、前回予想の$14 billion to $15 billionから引き下げた。
≪ルネサスエレ≫
◇Renesas Falls Most in 15 Years on Sluggish Industrial Demand―Renesas stock down 14% over disappointing industrial segment profit (7月25日付け BNN Bloomberg (Canada))
→ルネサスエレクトロニクスの株価は、15年以上ぶりの大幅下落、利益未達に対する投資家の失望と、広範なハイテクの下落によって打撃を受けた。
ルネサスの株価は木曜25日に約14%下落した。トヨタ自動車や本田技研工業に製品を供給しているルネサスは、工場やInternet-of-Things(IoT)、インフラ関連のチップを含む主力の産業用セグメントで、期待外れの営業利益を報告した。
◇ルネサス、1〜6月29%減益 一時ストップ安に (7月25日付け 日経 電子版 11:15)
→ルネサスエレクトロニクスが25日発表した2024年1〜6月期連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比29%減の1396億円だった。中国景気の回復が遅れており、ファクトリーオートメーション(FA)など産業機器向けの需要が低迷した。営業利益は33%減の1475億円となった。
◇ルネサス「見誤った」半導体需要 時価総額7600億円減 (7月25日付け 日経 電子版 15:13)
→ルネサスエレクトロニクスが25日発表した2024年1〜6月期決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比29%減の1396億円だった。工場用ロボットなどに使う産業機器を中心に需要動向を見誤ったことが響く。同社株は25日、一時ストップ安を付け、終値ベースの時価総額は1日で約7600億円減った。顧客の在庫調整を促すために出荷数を減らすなど守備固めを進める。
【Samsung関連】
AI関連のM&A、ストライキその後、そして事情を孕んだNvidia向けHBM3半導体について、以下の通りである。
◇Samsung agrees to acquire British startup Oxford Semantic for AI―Samsung to buy AI startup Oxford Semantic Technologies (7月18日付け Reuters)
→サムスン電子は、人間の推論に近い方法で情報を管理するアプローチであるknowledge graph技術に取り組むOxford Semantic Technologiesを買収する契約を結んだと発表した。サムスンは、この新興企業の技術はAIのパーソナライズに利用できると述べた。
◇Samsung Electronics, striking labor union resume talks (7月19日付け The Korea Times)
→サムスン電子と同社最大の労働組合は金曜19日、賃上げをめぐるストライキに先週入って以来初めて協議を再開した、と本件に近い筋発。
該関係筋によると、経営陣と全国サムスン電子労組(NSEU)はソウルの南に位置する水原で会合を開き、スケジュールやプロセスおよび代表者など、今後の交渉の詳細を話し合った。
◇Exclusive: Nvidia clears Samsung's HBM3 chips for use in China-market processor―Sources: Nvidia greenlights Samsung's HBM3 chips for its H20 in China (7月23日付け Reuters)
→サムスン電子の第4世代の高帯域幅メモリー、HBM3チップが、エヌビディアのプロセッサーでの使用を初めて許可されたと、この問題に詳しい3人が語った。
しかし、サムスンのHBM3チップは、今のところ、米国の輸出規制に従って中国市場向けに開発された、より洗練されていないNvidiaのグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)であるH20にのみ使用されるため、これはやや控えめなグリーンライト(青信号)である。
◇Nvidia clears Samsung's HBM3 chips for use in China-market processor: sources (7月24日付け The Korea Times)
→サムスン電子の第4世代高帯域幅メモリー(HBM3)チップは、Nvidiaのプロセッサーでの使用が初めて許可された、と本件に通じた3人発。
しかし、サムスンのHBM3チップは今のところ、米国の輸出規制に従って中国市場向けに開発された、あまり洗練されていないNvidiaのグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)「H20」にのみ使用されるため、この許可はやや控えめなものだという。
【Huawei関連】
中国市場を引っ張るHuaweiの動きにますます注目、Appleを押しのけるスマホはじめ以下に示す。
◇Huawei files patent infringement lawsuit against MediaTek―Huawei sues MediaTek for alleged patent infringement―Legal proceedings started after patent licensing talks reportedly broke down (7月22日付け DatacenterDynamics)
→ファーウェイ・テクノロジーズは、ライセンス交渉が決着しないまま終了したことを受け、モバイルチップ開発企業のメディアテックに対して特許侵害訴訟を起こした。情報筋によると、該特許は3G、4Gおよび5Gセルラー技術に関連するものだという。
◇Huawei plans tri-fold smartphone as Apple weighs foldable iPhone, reports say (7月25日付け South China Morning Post)
→アップルはクラムシェル型(clamshell-style)の折りたたみ式スマートフォンを開発中で、早ければ2026年のリリースを目指すと報じられている一方、ファーウェイ、デュアルヒンジの(dual-hinged)折りたたみ式スマートフォンを生産準備中である。
◇Apple’s China market share shrinks as Huawei surges (7月26日付け Taipei Times)
→市場調査会社Canalysのデータによると、アップル社の中国における市場シェアは、今年第2四半期に2ポイント縮小、該米ハイテク大手はファーウェイ・テクノロジーズ(華為)などライバルとの競争激化に直面している。
この落ち込みは、米国の巨大ハイテク企業が第3の市場で直面している困難を浮き彫りにしている。
◇Apple、上位5社から5年ぶり陥落 中国4〜6月スマホ出荷 (7月27日付け 日経 電子版 05:51)
→米アップルが中国のスマートフォンのランキングでトップ5位から陥落した。米調査会社IDCが25日に発表した4〜6月の出荷台数で、中国の現地スマホメーカーが5位までを独占し、アップルは6位となった。5位圏外になるのは約5年ぶりとなる。各社の安値攻勢や米中対立により、成長エンジンとなってきた中国のiPhone販売が苦戦している。
【Micron関連】
米国半導体メーカーではMicronについて、メモリモジュールおよびデータセンター向けSSDが以下の通りあらわされている。
◇Micron sampling MRDIMMs for AI and HPC (7月19日付け DIGITIMES)
→マイクロン・テクノロジーは、AIやHPCなどのメモリ集約型アプリケーション向けのMRDIMM(Multiplexed Rank Dual Inline Memory Modules)のサンプリングを現在実施していることを明らかにした。
マイクロンの顧客は、MRDIMMsを使用することで、ますます要求の厳しくなるワークロードを運用し、コンピュートインフラの価値を最大限に高めることができるようになる。
◇Micron claims world’s fastest datacentre SSD―Micron calls its data center SSD the fastest (7月24日付け Electronics Weekly (UK))
→1)マイクロンは、シーケンシャルリード14.0GB/秒、シーケンシャルライト10.0GB/秒、ランダムリード3,300KIOPSを実現する世界最速のデータセンター向けSSD、9550 NVM SSDを有していると主張している。
2)マイクロン・テクノロジーは、同社の9550不揮発性メモリ・ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)が世界最速のデータセンター向けSSDであり、AIワークロードをサポートすると主張している。このデバイスは、シーケンシャルリード14GB/秒、シーケンシャルライト10GB/秒を実現するとマイクロンは述べている。
【インド関連】
巨大市場を擁して一大半導体製造圏構築を目指すインドでの動きにはやはり注目するところ、以下現下の関連する内容を取り出している。
◇Tata Group aims to make Gujarat's Dholera the global epicentre of semiconductor excellence: Tata Electronics CEO Randhir Thakur―Tata Electronics CEO points to Gujarat for chip supply chain, talent ―Speaking at the Gujarat SemiConnect Conference 2024, the CEO stressed on the importance of creating a robust supply chain and establishing a talent pool (7月19日付け Forbes (India))
→7月19日、GandhinagarのMahatma Mandir Convention Centreに米Micron社、Tata Group社、台湾外交官、およびインド政府およびグジャラート州政府の幹部が集まり、Gujarat SemiConnect Conference 2024を開始した。関係者は、同州の地場産業に対し、新興半導体エコシステムの一員となるべく製品ラインを拡大、多様化するよう促した。
◇Silicon dreams: a SWOT analysis of India's burgeoning semiconductor industry (7月19日付け DIGITIMES)
→半導体の熱狂は世界的な現象だが、インドの状況は際立っている。
一方では、AMDやMarvellのような大手設計会社がインドで強い存在感を示しており、多数のエンジニアがグローバル・プロジェクトに従事している。もう一方では、製造部門がいくつかの重要な工場設立の認可を受けたばかりである。
◇Tata Technologies partners with Arm to drive innovation in SDVs―Arm, Tata Technologies team up on SDV technology (7月23日付け New Electronics)
→1)エンジニアリングと製品開発のデジタルサービス企業であるタタ・テクノロジーズは、software-defined vehicles(SDV)の技術革新を推進することを目的としたアームとの戦略的パートナーシップを発表した。
2)アームはタタ・テクノロジーズと協力し、ソフトウェア定義車両技術の開発期間を短縮する。タタは、Armの車載向け強化ポートフォリオとArmの車載向けCompute Subsystemsを使用してSOAFEEリファレンス・アーキテクチャ・スタックを開発する計画。
◇India's latest fabless entrant iVP Semi targets domestic market with homegrown strategy―India's iVP Semi joins fabless startups, sets sights on domestic market (7月23日付け DIGITIMES)
→インドで成長するファブレス・スタートアップ・シーンに新たに加わったのが、チェンナイ(Chennai)を拠点とするiVP Semiであり、半導体のベテラン、Raja Manickam氏が創設している。最近のDigitimes Asiaとのインタビューで、マニッカム氏は、iVPが競合他社とどのように一線を画しているかを詳細に語っている。