年末の注目懸案から:CHIPS法、Arm vs. Qualcomm、インテル再構築
本年、2024年もあと1週間あまり、追い込み&締めのこのタイミングで、半導体業界における注目の仕掛かり懸案の動き&状況である。Biden政権による米国国内の半導体製造強化に向けたCHIPS and Science Actの助成金支給であるが、予備契約から正式本契約を得る各社の動きが相次いでいる。Trump次期政権を年明けに控えたまさに駆け込みの動きに映る。Armの知的財産の使用と、Qualcommによる半導体スタートアップ、Nuvia買収に関する契約を巡るArm vs. Qualcommの訴訟の裁判が行われ、特にArmのエコシステムへの影響がどうなるか、注目されている。苦境のインテルの今後についての動き&見方とともに、以下取り出している。
≪波乱要因多々のなかの動き≫
米国政府によるCHIPS and Science Act、すなわちCHIPS法の助成資金支給最終確定が、対象の各社について以下の通り相次いで行われている。
[台湾・GlobalWafers]
◇GlobalWafers inks $406 million CHIPS Act deal to make 300mm wafers in the U.S.―GlobalWafers to make 300mm wafers in US in CHIPS deal―Wafers production is coming to America. (12月18日付け Tom's Hardware)
→GlobalWafers社は、米国で300ミリウエハーを生産するため、CHIPS and Science Actに基づき、米国政府から$406 millionの資金を確保した。同社は$4 billionを投じてテキサス州に量産シリコンウェーハ施設を設立し、ミズーリ州でシリコン・オン・インシュレーター(SOI)ウェーハを生産する。
◇Biden-Harris Administration Announces CHIPS Incentives Awards with GlobalWafers (12月18日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→バイデン-ハリス政権は、米国商務省がGlobalWafersの子会社であるGlobalWafers AmericaおよびMEMCに対して、CHIPSインセンティブ・プログラムの商用ファブリケーション施設に対する資金提供の機会に基づき、最高$406 millionの直接資金提供を行う。今回の供与は、2024年7月17日に発表された予備的覚書への署名と、同省によるデューデリジェンスの完了を受けたものである。同省は、GWAとMEMCによるプロジェクトのマイルストーン完了に基づいて資金を支出する。
◇GlobalWafers to get US$406m from US (12月18日付け Taipei Times)
→*CHIP SUBSIDY: 米国での資金調達は、米国に2つの工場を建設することによる財務的な圧力を軽減するのに役立ち、2026年には粗利益率が向上するはずである、とGlobalWafersは述べている。
*世界第3位のシリコンウエハーサプライヤーであるGlobalWafersは昨日、CHIPS and Science Actに基づき、米国商務省から2つの新しい米国工場のために$406 millionの補助金を受け取る予定であり、最初の分の支給は来年になりそう、と発表した。
[韓国・SK Hynix]
◇SIA Praises Finalization of CHIPS Incentives to SupplementSK Hynix’s $3.87 Billion Investment in Indiana (12月19日付け SIA Latest News)
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA:半導体産業協会)は本日、米国商務省とSKハイニックスが発表したCHIPS and Science Act製造投資の最終決定を称賛するSIAのPresident and CEO、John Neuffer氏の声明を発表した。この優遇措置は、インディアナ州におけるSK hynixの先端パッケージング事業と研究開発への$3.87 billionの投資を補完するものである。
◇US Department of Commerce finalizes $458 million grant for SK Hynix to build Indiana packaging plant ― plans to lend an additional $500 million for Lafayette project―SK Hynix secures $458M CHIPs Act grant―SK Hynix gets about half a billion dollars in direct federal grants from the CHIPS Act to build its Indiana factory. (12月19日付け Tom's Hardware)
→SKハイニックスは、インディアナ州ウェストラファイエットにパッケージング工場と研究開発施設を建設するため、商務省から$458 millionの助成金を獲得した。このプロジェクトはCHIPS法によって支援され、米国での半導体生産を強化するという目標に沿ったものである。
◇US finalizes $458 mil. award to SK hynix for chips packaging facility (12月19日付け The Korea Times (Seoul))
→4月、エヌビディアのサプライヤーであるSK hynixは、次世代高帯域幅メモリー(HBM)チップを大量生産するための組立ラインを含むウェストラファイエット(West Lafayette)施設を建設するために$3.87 billionを投資すると発表した。このチップは、AIシステムを訓練するグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPUs)に使用される。
◇SK hynix inks $958 million subsidy agreement with US: report (12月19日付け The Korea Times (Seoul))
→韓国No.2のチップメーカーSK hynixが、CHIPS and Science Actに基づき、米国政府から合わせて$958 million相当の補助金を獲得したと、Bloombergが木曜19日に報じた。
それによると、ジョー・バイデン政権からの補助金には、$458 millionの補助金と$500 millionの融資が含まれており、インディアナ州にある同社の新しい生産拠点の建設に使われる。
◇Biden-Harris Administration Announces CHIPS Incentives Award with SK hynix (12月20日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→本日、バイデン-ハリス政権は、米国商務省がSK hynixに対し、CHIPSインセンティブ・プログラムの商用製造施設に対する資金提供機会(Funding Opportunity for Commercial Fabrication Facilities)に基づき、最大$458 millionの直接資金を提供したことを発表した。
[韓国・Samsung]
◇SIA Applauds Finalization of CHIPS Incentives to Support Samsung’s Semiconductor Investments in Texas (12月20日付け SIA Latest News)
→米国・SIAは本日、米国商務省とサムスンが発表したCHIPSおよびScience Actによる製造投資の最終決定を称賛する、SIAのPresident and CEO、John Neuffer氏の声明を発表した。この優遇措置は、サムスンがテキサス州で最先端チップを開発・生産するための投資を支援するものである。
[米国・Texas Instruments]
◇SIA Praises Finalization of CHIPS Incentives to Supplement Texas Instruments’ Semiconductor Investments in Texas and Utah (12月20日付け SIA Latest News)
→米国・SIAは本日、米国商務省とテキサス・インスツルメンツ(TI)が発表したCHIPSおよびScience Act製造投資の最終決定を称賛するSIAのPresident and CEO、John Neuffer氏の声明を発表した。このインセンティブは、TexasおよびUtahに建設中のTIの新しい最先端半導体製造施設3つを支援する。
[米国:Amkor]
◇SIA Commends Finalization of CHIPS Incentives to Complement Amkor’s Advanced Packaging Investments in Arizona (12月20日付け SIA Latest News)
→米国・SIAは本日、米国商務省とAmkor社が発表したCHIPS and Science Actによる製造投資の最終決定を称賛するSIAのPresident and CEO、John Neuffer氏の声明を発表した。この優遇措置は、Amkorのアリゾナにおける先端パッケージング事業への投資を補完するものである。
CHIPS法に関連して、ワシントン州の対応の動きである。
◇Working Group Named Targeting Billions in CHIPS and Science Act Funding for Washington State (12月16日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→ワシントン州商務省は本日、連邦政府による超党派のCHIPSおよび科学法(CHIPS and Science Act)が可能にする現在および将来の助成金機会を確保するための包括的な州全体のアプローチを調整する官民ワーキンググループの最初のメンバー11人を発表した。Jay Inslee州知事は11月、州全体のCHIPS・科学作業部会(WG)の設立を指示し、ワシントン州の主要テクノロジー企業3社と3つのlegislatorsを代表する追加メンバーを選出する予定である。
次に、Arm vs. Qualcommの係争の裁判について、今週の関連記事が以下の通りである。
◇Arm, Qualcomm Case Goes to Court Over Arm Architecture Licenses (12月16日付け EE Times)
→QualcommによるNuviaの買収から約3年、アームとクアルコムの間で2年にわたる法廷闘争を経て、アームが起こした訴訟はデラウェア州ウィルミントンの連邦地方裁判所で裁判にかけられることになった。この裁判は最大1週間の証言の後に決定される予定で、その結果はArmのエコシステム全体に何らかの影響を与えることになる。
◇Jury trial kicks off Arm's wrestling match with Qualcomm―Qualcomm, Arm face off in court over Nuvia designs (12月16日付け The Register (UK))
→クアルコムとアーム社との間で、クアルコムのアーキテクチャ・ライセンスが買収前のNuvia(ヌビア)社の設計をカバーしているかどうかに焦点を当てた法廷闘争が始まった。Arm社は、クアルコムがNuvia社の設計を無断で使用し、Arm社に$50 millionの売上げの損害を与えた可能性があると主張している。クアルコムは、アーム社が自社製チップの製造を計画することで競争を阻害する狙いがあると主張している。
◇Qualcomm v Arm court battle gets under way (12月17日付け Electronics Weekly (UK))
→昨日、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington, Delaware)の法廷でクアルコム対アームの法廷闘争が始まった。裁判は1週間かかる見込みである。
◇Arm-Qualcomm Contract Fight Threatens to Upend Chip Industry―Legal battle could affect the wider tech industry (12月17日付け LiveMint (India)/Bloomberg)
→1)アームとクアルコムの法的紛争は今週、デラウェア州の連邦陪審で争われ、世界で最も影響力のあるチップメーカー2社が、テクノロジー業界を揺るがす恐れのある知的財産権訴訟で対立している。
2)チップ設計分野における両社の影響力を考えると、知的財産をめぐるクアルコムとアームの法的紛争の結果は、テクノロジー業界に影響を与える可能性がある。多くの製品がアームとクアルコムの技術に依存していることから、ハイテク業界はこの裁判を注視している。
◇Arm, Qualcomm lawyers grill ex-Apple exec in chip design battle (12月18日付け Reuters)
→・クアルコムのノートPC推進の中心的役割を担うアームのアーキテクチャ
・Nuviaの中核設計の譲渡権が法廷で争われる
・Williams氏、Nuviaの設計にArmの技術は最小限と主張
・クアルコム、Arm社に年間推定$300Mを支払い、$50Mの売上げ損失の可能性を主張
アームとクアルコムの弁護士は火曜17日、チップ業界の将来にとって重要な問題について、アップルの元幹部を尋問した: Armのコンピューティング・アーキテクチャの上に構築された知的財産は誰のものなのか?今週デラウェア州の連邦裁判所で行われる裁判では、クアルコムのノートパソコン事業への参入の行方がかかっている。クアルコムは、マイクロソフトなどのパートナーを支援し、iPhoneメーカーが独自のカスタムチップを導入した後、Windowsパソコンがアップルに奪われた地位を取り戻そうとしている。
◇Qualcomm CEO expected to save $1.4 billion in Arm royalties by purchasing Nuvia, assumed Snapdragon X chips would be a massive hit―Trial update: Qualcomm CEO defends Nuvia acquisition―That's a lot of money Arm could have lost out on, were Qualcomm to take the laptop market by storm. (12月19日付け Tom's Hardware)
→クアルコムのCEOクリスチアーノ・アモン氏は、アームとクアルコムの裁判の3日目に、2021年に$1.4 billionでNuviaを買収したのは、アームの支払いを節約できる可能性があったからだと証言した。アーム社は、クアルコム社はライセンス譲渡に同意していないため、ヌービア社の設計を破棄しなければならないと主張している。該裁判はライセンス契約の文言にかかっている。
◇Third day for Arm vs Qualcomm trial (12月19日付け Electronics Weekly (UK))
→*昨日(デラウェア州ウィルミントンで行われたArm対クアルコムの裁判の3日目)、クアルコムのCristiano Amon CEOが証拠を提出した。
*アモンCEOはクアルコムの取締役会に対し、2021年にArm社のライセンシーであるNuvia社を$1.4 billionで買収することで、Arm社への支払いを年間$1.4 billion節約できると述べたという。「それは買収を正当化するものだった」とアモン氏は法廷で語った。
◇Arm vs. Qualcomm: Analyst Insights from Court Proceedings (12月20日付け EE Times)
→アーム対クアルコムの訴訟は、双方の最終弁論を終えて終了したところである。陪審員はその指示を受け、現在審議中である。司法の天秤がどちらに傾くかはまだ決まっていない。TIRIAS Researchのプリンシパル・アナリストであるJim McGregor氏とFrancis Sideco氏が、デラウェア州の裁判所で審理を傍聴していたジムの視点から、この裁判の洞察と意味について語る。
1週間かかるという裁定であるが、今後に注目である。なによりArmエコシステムへのインパクトである。
最後に、インテルの今後について、前CEOの退社で引き継いだ2人の暫定共同CEOのコメントが以下に示されている。
◇Intel’s break-up remains an open question: co-CEO (12月14日付け Taipei Times)
→インテル社のDave Zinsner最高財務責任者(CFO)は、同社の工場部門と製品開発部門の正式な分離は未解決の問題であり、該チップメーカーの次期リーダーが決定することだと述べた。
今月Pat GelsingerCEOが更迭された後、暫定的に共同CEOを務めているジンスナー氏は、木曜日にサンフランシスコで開催されたBarclays technology conferenceで、共同CEOのMichelle Johnston Holthaus氏とともに発言した。
◇Intel Products CEO Gives Hints on New Strategy―Intel co-CEO outlines strategy for product competitiveness―Intel is now focusing on IP reuse and AI growth following Pat Gelsinger's departure. (12月16日付け EE Times)
→1)2週間前にパット・ゲルシンガー前CEOが突然引退したことを受け、インテル製品部門のCEO(兼暫定共同CEO)であるMJ Holthaus氏は、Barclays Annual Global Technology Conferenceに出席し、不振にあえぐインテルの製品部門に対する同氏の計画についていくつかのヒントを示した。
ゲルシンガー前CEOとの戦略の違いを尋ねられたホルタウス氏は、戦略の完全な変更は期待すべきではなく、インテル製品の競争力を高めることに「新たな焦点を当てる」だけだと答えた。インテル製品のCEOの地位が恒久的なホルタウス氏が追求する戦術の1つは、インテルのクラウドとエッジのポートフォリオ全体でIPを再利用することだ。
2)インテルの暫定共同CEO兼製品責任者(Products chief)であるM J Holthaus氏は、クラウドとエッジのポートフォリオにまたがるIPの再利用に焦点を当て、競争力強化のための戦略を説明した。ホルタウス氏は、データセンターにおける課題を認めた上で、Xeonのロードマップに自信を示し、PCsにおけるAIの需要増に言及した。
インテルのファウンドリー事業の今後のあり方についての評論記事が以下の通りである。
◇A bold plan to spin out and revive Intel’s foundry business (12月16日付け SiliconANGLE)
→インテル社は、今こそファウンドリー事業を撤退すべき時だ。前最高経営責任者のPat Gelsinger氏は、米国を拠点とする先端半導体製造について説得力のある説明をしていたが、同氏のビジョンには最初から欠陥があった。インテルのファウンドリー事業は、10年前のIBM社のマイクロエレクトロニクス事業と同様、マイナスの価値を持つ資産である。しかし、AI半導体競争における米国の競争力にとって、その戦略的重要性は誇張しすぎることはない。金融機関が大きすぎて潰せないと判断されるなら、インテルのファウンドリーも同様に米国の国益にとって重要なインフラとなる。
≪結論≫インテルのファウンドリー事業は、純資産がマイナスである同社にとって、重要でありながら持続不可能な事業である。解決策は、それを放棄することではなく、むしろ協力的なアプローチを通じてインテル・ファウンドリーを変革することである。ハイテク大手、プライベート・エクイティ、および米国政府からの戦略的投資によってサポートされるスピンアウトは、米国の半導体のリーダーシップを守ることができる競争力のある独立した事業体を生み出すだろう。
波乱要因を多々孕んだ半導体業界の年末年始に、引き続き注目するところである。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□12月15日(日)
欧州、そして中国も、多々波乱の様相を感じるが、英国および中国について市場関連の動きが以下の通りである。
◇TPP英加入、25年見直しで自由貿易磨く 保護主義に対抗 (日経 電子版 17:00)
→包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)に15日、英国が加わった。2018年の発足以来、初めての拡大で12カ国体制となった。25年には初の協定見直しに向けた取りまとめを控える。世界で保護主義的な動きが強まるなか、先端技術に対応した高い基準の通商ルールのけん引を目指す。
□12月16日(月)
◇中国、11月の工業生産5.4%増 車・工業ロボット伸びる (日経 電子版 11:28)
→中国国家統計局が16日発表した11月の工業生産は前年同月を5.4%上回った。伸び率は10月の5.3%からわずかに拡大した。電気自動車(EV)など新エネルギー車や工業用ロボットなどの生産が増えた。
主要産品の生産量をみると新エネ車は51.1%増だった。工業用ロボットは29.3%、集積回路は8.7%増えた。
□12月17日(火)
ついに50年ぶりという10日続落となった後、激しい値動きのなかの上げで締めた今週の米国株式市場である。
◇NYダウ8日続落、110ドル安 ナスダックは最高値更新 (日経 電子版 06:55)
→16日の米株式市場でダウ工業株30種平均は8日続落し、前週末比110ドル58セント(0.25%)安の4万3717ドル48セントで終えた。8日続落は2018年6月以来。ディフェンシブ株の一角に売りが出て、ダウ平均の重荷となった。半面、ハイテク株の一角に物色が進み、ダウ平均は120ドルあまり上昇する場面があった。
□12月18日(水)
◇NYダウ267ドル安、46年ぶりに9日続落 FOMC控え売り (日経 電子版 07:42)
→17日の米株式市場でダウ工業株30種平均は9営業日続落し、前日比267ドル(0.6%)安の4万3449ドルで引けた。9日続落するのは1978年2月以来、46年10カ月ぶりのことだ。長期金利の高止まりが株の割高感を強め、テック株などを中心に売りが進んだ。
□12月19日(木)
◇NYダウ1123ドル安 10日続落、「タカ派的利下げ」に失望 (日経 電子版 07:55)
→米連邦準備理事会(FRB)が18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で2025年の利下げをより慎重に進める「タカ派」姿勢を鮮明にしたことで、同日の米金融市場では米金利上昇とドル高・円安が進んだ。ダウ工業株30種平均は前日比1123ドル(2.6%)安になり、50年ぶりの10日続落となった。
ダウ平均は12月4日に終値で初の4万5000ドル台を付けた後に下げ続け、1974年10月以来の10日続落を記録した。この間に計2687ドル(6%)下落した。
次期政権に向けて慎重な舵取りの米国・連邦準備理事会(FRB)である。
◇FRB、急速利下げに区切り 「トランプ・リスク」見極め (日経 電子版 08:53)
→FRBが9月から続けてきた急速な利下げが区切りを迎える。パウエル議長は18日、追加利下げを決定した後で記者会見して「新たな段階に入った」と明言した。ここからは時間をかけて金融引き締めを緩める。トランプ次期米政権の政策を含め、経済の軟着陸に向けたリスクは多い。
□12月20日(金)
◇NYダウ、11日ぶり反発で始まる 見直し買い入る (日経 電子版 01:07)
→19日の米株式市場でダウ工業株30種平均は11営業日ぶりに反発して始まり、午前9時35分現在は前日比437ドル58セント高の4万2764ドル45セントで推移している。FRBが18日まで開いたFOMCで追加利下げを慎重に判断する姿勢を示し、ダウ平均は前日に1123ドル下げ、50年ぶりに10日続落していた。主力株の一角に自律反発を期待した買いが入っている。
□12月21日(土)
米国の政府予算案がまたも暗礁乗り上げの事態である。その後の動きで、一応回避された模様である。
◇米政府閉鎖の危機迫る 議会、「つなぎ予算」の調整難航 (日経 電子版 04:35)
→米連邦議会は19日、政府予算の執行期限が21日午前0時に迫るなか、つなぎ予算案の可決を目指して調整を続けている。トランプ次期米大統領は政府機関の閉鎖も辞さない強硬姿勢を共和党議員らに求め、民主党は超党派の合意通りに法案を可決するよう迫る。両者の隔たりはなお大きい。
米議会は与野党の議席が拮抗し、新たな会計年度に入っても正式な予算案を策定できない事態が常態化している。
◇NYダウ急騰、一時873ドル高 金融政策巡り激しい値動き (日経 電子版 05:08)
→20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落した。一時、前日比873ドル高の4万3216ドルまで上昇し、498ドル高の4万2840ドルで終えた。同日の物価統計でインフレの鈍化が確認され、FRBの利下げが続くとの見方が広がった。FRBの金融政策を巡り思惑が交差し、激しい値動きにつながっている。
≪市場実態PickUp≫
【米中摩擦関連】
米国政府の対中輸出規制強化、そしてNvidiaに対する調査、と以下の通り引き続く動きとなっている。
◇Tech war: China’s chip industry reports sharp drop in funding in 2024 amid US rivalry―In the first 11 months of 2024, China’s semiconductor industry recorded 677 investment deals, a decline of 35.9 per cent year on year (12月16日付け South China Morning Post)
→地元の業界調査会社のデータによると、米国の先端チップに対する規制とレガシーチップの生産能力過剰懸念の中、中国の半導体セクターは今年、資金流入が3分の1急減した。
2024年の最初の11ヶ月間で、国内のチップ産業は677件の投資案件を記録し、前年同期比35.9%の減少となった。地元のコンサルタント・調査会社JWインサイツが発表した報告書によると、同期間の資金調達総額は前年同期比32.4%減少した。
◇My Take | With Nvidia antitrust probe, China hardens its stance towards US ‘AI partners’ (12月17日付け South China Morning Post)
→*北京は、AIチップ・メーカーへの平手打ちを皮切りに、エスカレートするワシントンのチップ戦争への対応に歯止めをかけようとしているのかもしれない。
*中国は、5年前に承認したイスラエルのネットワーク製品とソリューションのプロバイダーであるMellanox Technologiesの$6.9 billionの買収をめぐり、米半導体大手Nvidiaに独占禁止法調査を開始することを決定した。
◇Biden Set to Announce Chinese Semiconductor Probe―US to investigate Chinese semiconductors for risks (12月17日付け Bloomberg)
→1)*米チップメーカーを海外との競争から守る捜査の可能性
*調査が終了するころには、トランプ氏が大統領に就任しているだろう。
2)バイデン政権は、中国製半導体の調査を計画しており、旧いチップやそれを搭載した製品への関税や輸入制限につながる可能性がある。この動きは、医療機器、自動車、スマートフォンおよび兵器などの分野に影響を及ぼす、国家安全保障上のリスクをもたらす技術への依存を減らすための広範な取り組みの一環である。
◇Biden to announce Chinese semiconductor probe (12月19日付け Taipei Times)
→*[引き渡し政策]:調査を承認するということは、Donald Trump米新政権が中国に貿易制限を課す選択肢を持つ可能性が高いことを意味する。
*ジョー・バイデン米大統領の政権は、国家安全保障上のリスクがあると米政府当局者が考えている技術への依存を減らす推進の一環として、中国半導体に対する貿易調査を数日中に開始する予定である。
この調査の結果、医療機器、自動車、スマートフォンおよび武器など、旧いモデルの半導体およびそれを含む製品の輸入を制限する関税または他の措置が取られる可能性がある、と関係者は述べている。
◇Nvidia Under Scrutiny: U.S. Investigates Illegal Semiconductor Exports to China Amid Trade Tensions (12月20日付け Yahoo! Finance)
→木曜19日にThe Informationに掲載された記事によると、米商務省はエヌビディアに対し、過去1年間に同社の製品がどのように中国に違法輸入されたかを調べるよう要請したという。
政府はまた、Dell TechnologiesやSuper Micro Computerを含む販売業者に対し、サプライチェーンの弱点を追跡するため、東南アジア全域で顧客の抜き打ち検査を行うよう連絡している。
【TSMC関連】
TSMCの工場海外展開、2-nm半導体競合、そして今後に向けた多機能ロボットへの注目、と以下の通りである。
◇TSMC says first advanced U.S. chip plant ‘dang near back’ on schedule. Here’s an inside look at the Arizona fab (12月13日付け CNBC)
→フェニックス北部のアリゾナ砂漠にある1,100エーカーの敷地に完成したばかりの350万平方フィートの建物の上には、マイクロチップのウエハーの巨大なロゴとTSMCの文字がある。
TSMCのアリゾナ初のチップ製造工場(ファブ)は、米国内で最も先進的なチップ製造工場として歴史を刻んでおり、アップルはこの工場の最大の顧客となることを約束した。
CNBCは、TSMCが着工して間もない2021年にこの工場を初めて訪れた。同社は当初、この工場の建設費は$12 billionで、2024年末までに5ナノメートルのチップを生産すると発表していた。それから3年後、その値札は$20 billionに高騰し、フル生産は2025年まで延期された。
◇TSMC熊本工場、年内から量産 ソニー・デンソー向け (12月14日付け 日経)
→TSMCの運営子会社、JASM(熊本県菊陽町)の堀田祐一社長は13日、TSMCの日本初の製造拠点となる熊本第1工場(同)について「本年中の量産を間近に控えている」と述べた。建設が従来の計画通りに進んでいると強調した。半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」で講演した。
◇Samsung and TSMC locked in intense 2nm chip competition―TSMC kicks off 2nm trial production in April while Samsung targets early next year (12月16日付け The Chosun)
→サムスン電子とTSMCは、来年量産を開始する2nmファウンドリー・プロセスの顧客確保に向け、熾烈な競争を繰り広げている。2nm技術への移行は、新しいトランジスタ構造を導入し、開発・設計上の課題を大幅に増加させ、テスト中の初期歩留まり率が市場のリーダーシップを形成する上で極めて重要な役割を果たすと予想される。
◇C.C.Wei and Elon Musk hooking up on robots―Reports: TSMC's Wei, Musk to collaborate on robots (12月16日付け Electronics Weekly (UK))
→1)C.C.ウェイ氏とイーロン・マスク氏が多機能ロボットで意気投合、と日本経済新聞が報じている。
2)TSMCのCEOであるC.C.ウェイ氏とテスラCEOのイーロン・マスク氏は、多機能ロボットで協力関係にあり、ウェイ氏はこのプロジェクトにチップを供給することを約束しているという。ウェイ氏はまた、公共事業におけるドローンとジェネレーティブAIの可能性を強調し、TSMCがAIを使って生産効率を向上させていることに言及している。
◇TSMC touts multifunctional robots―TECH CONFERENCE: Input from industry and academic experts can contribute to future policymaking across government agencies, President William Lai said (12月17日付け Taipei Times)
→TSMCのC.C. Wei会長兼CEOは昨日、多機能サービスロボットは、チップ製造とソフトウェア設計における台湾の強みを生かし、台湾が重要な役割を果たせる次の新分野になる可能性があると述べた。
【キオクシア関連】
ついに東証プライム市場に上場を果たしたキオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)のこの1週間の動き、以下の通りである。
◇キオクシア社長「新メモリー開発したい」 市況変動へ耐性 (12月14日付け 日経)
→半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスの早坂伸夫社長は13日、「現行のNAND型フラッシュに加えて、新しいメモリーを開発したい思いがある」と語った。AIの需要に応える次世代メモリーを量産して、市況変動への耐性や稼ぐ力を高める。半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」で講演した。
◇キオクシア、台湾社とDRAM新技術 酸化物半導体を活用 (12月17日付け 日刊工業)
→キオクシアは台湾の南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)と共同で酸化物半導体を使った新しいDRAM「OCTRAM(Oxide-semiconductor Channel Transistor DRAM)」技術を開発した。現在のシリコントランジスタによるDRAMに比べ、省電力と大容量化が期待できる。今後開発を進め、サーバーやIoT(モノのインターネット)製品でのメーンメモリーでの応用を目指す。
◇キオクシア、厳冬下の半額上場 AIメモリーで巻き返し (12月18日付け 日経 電子版 18:05)
→半導体大手のキオクシアホールディングスが18日、東証プライム市場に上場した。初値は1440円と公開価格を1%下回った。同日終値ベースの時価総額は8630億円と、東芝から独立時の2兆円の半分以下となった。上場を契機にAI向けメモリーの開発・量産投資を拡充できるかが株価浮揚のカギとなる。
◇キオクシアが上場、初値1440円 公開価格を下回る (12月18日付け 日経 電子版 15:45)
→半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスが18日、東証プライム市場に上場した。午前9時に公開価格(1455円)を15円(1%)下回る1440円で初値を付けた。長期記憶に使うNAND型フラッシュメモリーはスマートフォンやパソコン向けの需要が伸び悩み、市況改善に時間を要している。
◇キオクシア社長「3年以内の追加売却を」 ベインに促す方針 (12月20日付け 日経)
→半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスの早坂伸夫社長は19日、米投資ファンドのベインキャピタルと東芝に対して3年以内に保有株の一部売却を促す方針を明らかにした。経営の独立性を高め、上場基準への適合を目指す。AI向けの最先端メモリーのシェアを2倍にし、収益性を高める。
◇Japan’s Kioxia Valued at $5.8 Billion After IPO Surge―Kioxia shares rise 14% in debut after IPO (12月20日付け MSN)
→$5.8 billionの新規株式公開(IPO)後、キオクシアの株価は取引初日に14%上昇した。このIPOは今年日本で3番目の規模であり、世界的に市場が不透明であるにもかかわらず、投資家の関心を反映している。キオクシアはかつて東芝メモリだったが、2018年にベインキャピタル主導のコンソーシアムに買収されて以来、メモリーチップ市場の主要企業となった。
◇Kioxia IPO stirs tension in South Korean memory market (12月20日付け DigiTimes)
→世界第3位のNANDフラッシュ・メーカーであるキオクシアが、AI半導体技術への投資資金を確保し、日本で正式に上場した。この動きは韓国の大手半導体メーカーからも注目されている。
◇キオクシア、時価総額一時1兆円に 個人買いと市況懸念 (12月20日付け 日経 電子版 12:59)
→20日午前の東京株式市場で日経平均株価は反発し、前引けは前日比76円(0.20%)高の3万8889円だった。相場全体の膠着感が強まるなか、市場の注目を集めたのが18日に東証プライム市場に上場し、その後上昇ペースを速めている半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスだ。上場3日目となるきょうの午前には一時、前日比12%強の上昇となる場面があり、時価総額は1兆円を突破した。
【ラピダス関連】
2-nm半導体の開発&量産を目指すラピダスの北海道千歳拠点に、国内初のEUVリソグラフィ装置が納入・設置され、以下の通りである。
◇Rapidus faces three major challenges in 2nm chip production―Rapidus faces technical, funding hurdles for 2nm chips (12月16日付け DigiTimes)
→ラピダスは2ナノメートルチップの製造を目指しているが、技術的な実現可能性、市場での位置づけおよび資金調達などの課題に直面している。
東哲郎会長は、同社が日本政府の支援に依存していることを指摘しながらも、民間投資を促進することに期待を寄せている。同社は、ロボット工学や自律走行などの用途に特化した半導体を製造することで差別化を図ろうとしている。
◇Rapidus gets EUV machine―Rapidus receives ASML EUV tool for Japan foundry (12月18日付け Electronics Weekly (UK))
→ラピダスは、北海道千歳市に建設中のInnovative Integration for Manufacturing(IIM-1)ファウンドリーに設置するASML製EUV装置を納入した。
◇Rapidus Begins Installation of Japan’s First EUV Lithography Machinery (12月18日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→最先端ロジック半導体メーカーのラピダス株式会社は、北海道千歳市に建設中の最先端半導体開発・製造拠点「Innovative Integration for Manufacturing (IIM-1)」ファウンドリーに、ASML社製EUV露光装置を納入・設置したと発表した。これを記念して、新千歳空港内のPortom Hallにて、式典が行われた。
◇ラピダス試作控えASML・東エレク進出 千歳駅ビル一変―ラピダスと北の変革 (12月18日付け 日経 電子版 10:46)
→最先端半導体の量産を目指すラピダスの試作ライン稼働まで3カ月余りとなった。14日には2ナノメートルの半導体製造に欠かせない極端紫外線(EUV)露光装置の一部が新千歳空港に到着した。工場が立地する北海道千歳市にはラピダスをサポートする半導体関連の30社超が集まり、試作に向けた準備が大詰めを迎えている。
◇ラピダス、巨大EUV装置導入 日本の先端競争復帰へ一歩 (12月18日付け 日経 電子版 18:00)
→最先端半導体の量産を目指すラピダスが計画の実現に欠かせないEUV露光装置の搬入を始めた。18日には工場を建設中の北海道千歳市で記念式典を開いた。先端半導体の製造に使うEUV露光装置の導入は国内で初めて。同社を中心に高度なノウハウを蓄えることが、日本の半導体産業が世界競争に復帰する一歩となる。
【市場関連データ】
IDCの2025年半導体市場のトレンドの見方、JEITAの2025年電子デバイス世界市場見通しが初の1兆ドル超、など以下の通りである。
◇IDC: Global Semiconductor Market to Grow by 15% in 2025, Driven by AI―AI and High-Performance Computing (HPC) will drive growth in advanced chips, 2nm technology, and packaging, reshaping the semiconductor industry in 2025, says IDC. (12月12日付け IDC)
→IDCの最新Worldwide Semiconductor Technology Supply Chain Intelligenceレポートによると、AIおよびハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の世界需要は引き続き増加し、2025年には15%以上成長する。クラウドデータセンターから特定の業界セグメントに至る主要アプリケーション市場がアップグレードを受ける見込み、半導体業界に新たなブームの到来を告げる。
2025年の半導体市場で予測される主なトレンド:
1. AI-Driven Rapid Growth Will Continue Next Year
2. Asia-Pacific IC Design Market Heating Up, 15% Growth Expected in 2025
3. TSMC Will Continue to Dominate the Foundry 1.0 and Foundry 2.0 Industry
4. Strong Demand for Advanced Nodes and Accelerated Foundry Expansion
5. Mature Nodes Market is Warming Up, and the Capacity Utilization Rate Exceeds 75%
6. 2025 Will be a Critical Year for 2nm Technology
7. Reorganization of the Packaging and Testing Industry Greatly Benefits China and Taiwan
8. Advanced Packaging: FOPLP Layout and CoWoS Production Doubling
◇IDC’s Semiconductor Trends For 2025―IDC: Memory, advanced nodes to drive chips in '25―IDC predicts eight trends for 2025. (12月19日付け Electronics Weekly (UK))
→IDCによると、半導体業界は2025年に大きく成長し、メモリは24%以上、非メモリは13%の成長が見込まれ、高帯域幅メモリ(HBM)とAIおよびモバイル向け先端ノードICsが牽引する。TSMCは、従来型ファウンドリと拡張ファウンドリの両方で市場シェアを拡大すると予測され、サムスン電子とインテルはそれぞれのノードプロセスを進化させていく。
◇Q3 Earnings Highlights: Western Digital (NASDAQ:WDC) Vs The Rest Of The Semiconductors Stocks―Semiconductor earnings mixed in Q3 (12月16日付け Yahoo)
→半導体企業の第3四半期決算はまちまちだった。全体の売上げはアナリスト予想を1.3%上回ったが、ガイダンスは2.4%下回った。ウェスタンデジタルは48.9%の増収となったが、予想を若干下回った。一方、Marvell Technologyは6.9%の増収で予想を上回った。
◇IDC: China Becomes the Largest Wrist-Worn Device Market, Leading Global Growth (12月18日付け IDC)
→インターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)が発表した最新のWorldwide Wearables Quarterly Trackerによると、2024年第1〜3四半期の世界の手首装着型デバイス市場の出荷台数は1億3,900万台で、前年同期比1.0%減となったが、これは主にインドと米国における競争の均質化と市場の飽和によるものである。
◇PC記憶装置10%安 SSD、5四半期ぶり下落 10〜12月大口、中国など引き合い弱く (12月18日付け 日経)
→パソコン(PC)に組み込む記憶装置が5四半期ぶりに値下がりに転じた。ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)の10〜12月期の大口取引価格の交渉は7〜9月期に比べ10%程度安い水準で決着した。PCの引き合いが弱く、これまで四半期ごとに1割前後上昇してきた流れが一服した。
◇電子デバイス世界市場、25年は初の1兆ドル超 AI普及で (12月19日付け 日経 電子版 15:29)
→電子情報技術産業協会(JEITA)は19日、半導体や電子部品など電子デバイス分野の世界の市場規模が2025年に初めて1兆ドル(約155兆円)を超す見通しだと発表した。デジタル投資が加速しAI活用の普及が進む。電子機器やITサービスなどデジタル関連産業の世界市場は24年比8%増の3兆9909億ドルとなる。