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それぞれの半導体サプライチェーン構築:中国、マレーシア、ロシア

米中摩擦に端を発し、地政学的インパクトに揉まれる経過の中、世界各国・地域それぞれに半導体サプライチェーンの構築が行われてきている。足もと現時点の動きから、まず、半導体の自給自足を図る中国は、米国の規制への対抗を続けて、第3の7兆円ファンドを立ち上げている。AI(人工知能)半導体への対応強化を図る狙いとの見方がある。東南アジアの半導体におけるプレゼンス向上に向けて、マレーシアが、半導体産業への少なくとも10.7兆円規模の投資を目標とするという打ち上げを行っている。そして、ロシアより同国初のフォトリソグラフィ装置の製造の記事が見られている。約30年遅れとされているが、自動車等の用途と見られる。それぞれの進展に注目である。

≪それぞれの歩み≫

中国の同国内史上最大という半導体投資ファンドの設立について、以下各紙の取り上げである。

◇China creates $47.5 billion semiconductor fund to back nation's firms (5月27日付け Business Standard)
→*中国が、国内チップ産業の発展を推進するために国内史上最大の半導体投資ファンドを設立、米国がその成長を制限しようとしている中、自給自足を達成するための北京からの最新の取り組みである。
 *Big Fund IIIとして知られる最新の投資ビークルは、米国との緊張がエスカレートする中、習近平政権が自国の半導体産業を構築しようとする新たな動きを強調している。

 ◇中国、7兆円ファンドで半導体供給網 米国の規制に対抗 (5月27日付け 日経 電子版 13:32)
→中国政府が新たな半導体の国策ファンドを立ち上げたことが27日分かった。資本金は過去最大の3440億元(約7兆4000億円)。人工知能(AI)に不可欠な半導体を巡って米国が対中包囲網の構築を強化しており、中国は独自のサプライチェーン(供給網)の構築を急いで対抗する。

◇China’s new $47B chip fund won’t assure quick productivity, analysts say (5月28日付け FierceElectronics)
→*中国は半導体の自給自足を望んでいるが、これは米国と欧州による中国への販売企業に対する制裁措置への反動である。その結果、中国はチップの設計と製造のために$47 billionの基金を設立すると発表した。
 *中国は、半導体の自給自足を目指す自国の動きを支援するため、$47.5 billionの基金を創設したばかりで、近年の米国の輸出規制に対する明らかな反動と見られている。

多難な経過を経て、第3のファンドとなるが、AI半導体への対応が焦点との見方である。

◇China’s $47.5 billion chip fund will likely focus on AI amid U.S. export curbs, NYU professor says (5月29日付け CNBC)
→中国が新たに設立する第3の半導体ファンドは、AI向けの先端チップおよびサプライチェーン全体の確立に焦点を当てるだろう、とニューヨーク大学School of LawのWinston Ma(ウィンストン・マー)非常勤教授は語った。「そして今、(ファンド3は)AIブームの真っ只中に設立されたので、将来のAIのための先進的なコンピューティング・チップとメモリー・チップにより力を入れ、重点を置くと思う」と馬氏は水曜29日にCNBCの「Squawk Box Asia」に語った。

米国の規制を受ける中の先端半導体への取り組みの一端があらわされている。

◇Huawei patent reveals 3nm-class process technology plans ‐ China continues to move forward despite US sanctions―Huawei patent points to 3nm-class manufacturing tech―Huawei and SMIC could produce 3nm chips using DUV tools and multi patterning. (5月28日付け Tom's Hardware)
→ファーウェイ・テクノロジーズは、3ナノメートル級製造技術に自己整合型4重パターニングリソグラフィ(self-aligned quadruple patterning lithography)法を使用する計画である。SiCarrier(中国の半導体製造装置メーカー、深セン市新凱来技術)はHuaweiと協力してマルチパターニング技術の特許を取得しており、Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)が将来のノードに該技術を使用する予定であることを裏付けている。

このところ、マレーシアでの進出の取り組みが見られたばかりである。

◇Taiwan’s SPIL breaks ground on RM6 billion semiconductor plant in Penang (5月26日付け The Sun)
→半導体パッケージング・テスト企業のSiliconware Precision Industries Co Ltd(SPIL)は、ペナンのBandar Cassia Technology Park(バンダル・カシア・テクノロジー・パーク)内の8ヘクタールに建設される60億RM(リンギット)のP1工場に着工した。

そこに、同国首相が、東南アジアの半導体でのプレゼンス向上を図る中、以下の通り投資目標を打ち上げている。

◇Malaysia targets over $100 bln in semiconductor industry investment―Malaysia seeks over $107B in chip investment (5月28日付け Reuters)
→マレーシアのAnwar Ibrahim(アンワル・イブラヒム)首相によると、マレーシアは世界の半導体サプライチェーンにおける役割の拡大を目指し、先端パッケージング、製造装置および集積回路(IC)設計への投資で$107 billion以上を目標としている。マレーシアは該目標達成のために$5.3 billionの貢献を期待している、とアンワル首相は述べた。

◇Malaysia targets over US$100 billion in semiconductor industry investment (5月28日付け Channel NewsAsia (Singapore))
→アンワル・イブラヒム首相は5月28日(火)、東南アジア諸国がグローバルサプライチェーンでの地位向上を目指す中、マレーシアは半導体産業への少なくとも5000億リンギット[ringgit]($107 billion)の投資を目標としていると述べた。

◇Malaysia targets over US$100 bn in semiconductor industry investment (5月29日付け Taipei Times)
→マレーシアのAnwar Ibrahim(アンワル・イブラヒム)首相は昨日、東南アジア諸国が世界的な製造拠点としての地位を確立するために、マレーシアは半導体産業への少なくとも500 billion ringgit(5000億リンギット)($107 billion)の投資を目標としていると述べた。

具体的なリソースの手当ての関連が続いている。

◇Malaysia to train 60,000 engineers in bid to become chip hub―Government to allocate $5.3bn in new National Semiconductor Strategy (5月28日付け Nikkei Asia)
→マレーシアのAnwar Ibrahim(アンワル・イブラヒム)首相は火曜28日、世界的なチップハブになるという野望を達成するため、6万人の高スキルの地元半導体エンジニアを育成する計画を発表した。

◇Google to invest $2 bln in data centre and cloud services in Malaysia―Google investing $2B in Malaysia for data center, cloud (5月29日付け Reuters)
→グーグルはマレーシアでデータセンターとクラウド・サービスを開発するため、$2 billionの投資を計画している。マイクロソフトとNvidiaなど、マレーシアへの投資を発表しているハイテク大手である。

◇半導体人材、高度化に力 マレーシア新国家戦略 高付加価値の工程に重心 (5月29日付け 日経)
→マレーシアのアンワル首相は28日、半導体産業の発展を促す新たな国家戦略を公表した。250億リンギ(約8300億円)を投じて海外メーカーの投資誘致に力を入れるほか、人材育成や中小企業の支援を強化する。クアラルンプール市内で開かれたイベントの講演で明らかにした。
新たに策定した「国家半導体戦略」は半導体産業の中でも付加価値が高い工程を重点的に伸ばす計画だ。

ロシア初の国内半導体製造装置として、次の通りあらわされている。対立する米欧からは30年遅れとの見方であるが、それぞれの歩みとして注目するところである。

◇Russia develops its first chipmaking tool - outdated by 30 years from day one―Russia remains decades behind with its first domestic chipmaking tool ―For now, Russia's chipmaking industry is just a few decades behind the industry. (5月29日付け Tom's Hardware)
→ロシア初のフォトリソグラフィ装置は、350nm以上のプロセス技術でチップを製造できるもので、ロシアで製造され、Zelenograd(ゼレノグラード:ロシアの首都・モスクワの郊外にある行政区。人口は22万人。ハイテク企業が集中しているため、ロシアのシリコンバレーと呼ばれている。)でテストが行われている。この成熟した技術は現在、一部の自動車用チップや電力用チップに使用されているが、軍事用機器にも使用される可能性がある。われわれは、この新しい装置は該産業界から約30年遅れていると見積もっている。

さて、世界の主導権維持を図る米国の現下の動き関連である。

米国の半導体輸出規制は諸刃の剣など、以下の論調である。

◇Why US Semiconductor Export Controls Backfire―And how Washington can save its 21st century economic security strategy. (5月23日付け The Diplomat)
→米国の半導体輸出規制は諸刃の剣である。規制が機能すれば、先進的なチップ技術が悪質業者やその他の米国の敵対者の手に渡るのを防ぐのに役立つ。しかし、このような政策は、米国を技術的リーダーへと押し上げたビジネスそのものを歪めてしまう。外国の半導体能力を制限することで、ワシントンは自国の半導体能力も制限している。

◇The Missing Links in US Chip Policy (5月25日付け The Diploma)
→好むと好まざるとにかかわらず、半導体産業はグローバル化している。ワシントンの戦略は、民主的パートナーとの協調を高めることによって、この現実を反映しなければならない。

規制、米国内製造強化の関連について、以下取り出している。

◇TSMC Nanjing gets permanent US approval (5月25日付け Taipei Times)
→TSMCは昨日、米国政府から恒久的な認可を取得したと発表、米国輸出管理規制の対象となる品目およびサービスを、ベンダーが個別に認可を取得することなくTSMCの南京工場に引き続き提供できることを確認した。

◇CHIPs Act throws its weight behind glass packaging for chips ‐Biden admin invests in SK hynix affiliate―US to fund glass packaging for semiconductors through CHIPS Act ―The first time the CHIPS Act is funding new technology. (5月27日付け Tom's Hardware)
→バイデン政権は、CHIPS法を通じて半導体用ガラス実装の開発・生産に資金を提供する計画を発表した。$75 millionの契約は、SKグループとSK hynixの関連会社であるAbsolics(アブソリックス)社(Georgia州)に授与された。

電気自動車(EV)の中国・BYD、米国の高関税を受ける中、現実の動きである。

◇Weekly news roundup (5月27日付け DIGITIMES)
Despite increased EV tariffs, BYD makes its way into US 'backyard'
…中国を拠点とする大手EVメーカー、BYDは、米国がEVsへの100%関税を含む中国からの輸入品7カテゴリーへの関税引き上げを発表する中、メキシコで初のpickupトラックを発表し、注目を集めた。しかし、中国のEV企業は、この動きに躊躇していないようだ。主に中南米とヨーロッパ市場への拡大を続けている。中国製EVの関税引き上げは、アメリカでの販売に依存していないため、象徴的なものになるだろう。

中国に流れるのを警戒、AI半導体の中東向け輸出を抑制する動きである。

◇US Is Reining In AI Chip Sales to Middle East by Nvidia, AMD―Source: US evaluating security of AI development in the Middle East (5月30日付け BNN Bloomberg (Canada))
→この問題に詳しい関係者によると、米国当局は、エヌビディア社やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)社などのチップメーカーに対し、中東への大規模なAIアクセラレーター出荷のためのライセンス発行を遅らせている一方、当局者は、この地域におけるAI開発の国家安全保障上の見直しを行っている。

◇米政府、中東向け半導体輸出を制限 中国への流出警戒 (6月1日付け 日経 電子版 04:19)
→米政府が半導体大手エヌビディアなどが製造する人工知能(AI)向け半導体の中東への輸出を遅らせていることが分かった。中国への流出を警戒しているとみられる。米ブルームバーグ通信が報じた。
米商務省はエヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)などの半導体について、中東向け輸出許可を出すのを遅らせているという。

刻刻変化する情勢を受けての各国・地域それぞれの推移に、引き続き注目するところである。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□5月27日(月)

日中韓3カ国の首脳会談が久しぶりの開催、FTA交渉の再開で合意している。

◇日中韓首脳、FTA交渉再開で合意 「未来志向」で協力 (日経 電子版 13:14)
→日中韓3カ国の首脳は27日午前、ソウルで4年半ぶりとなる会談を1時間10分ほど開いた。2019年から中断している自由貿易協定(FTA)の交渉再開で合意した。人的交流や相互投資を拡充し、新たな協力関係を築くと確認した。台湾や北朝鮮を含む東アジアの安全保障問題についても話し合った。

□5月29日(水)

月曜が休日で4日の取引、前半3日大きく下げたが、物価統計でインフレ懸念が後退して最後に上げた、今週の米国株式市場である。

◇NYダウ反落216ドル安 NVIDIA高くナスダックは最高値 (日経 電子版 06:58)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落した。前週末比216ドル73セント(0.55%)安の3万8852ドル86セントと3週間ぶりの安値で終えた。米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始時期が後にずれるとの見方が一部の主力株への売りを誘った。米債券市場で長期金利が上昇(債券価格は下落)したことも株式相場の重荷となり、ダウ平均の下げ幅は360ドルを超える場面があった。半面、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は連日で最高値を更新した。指数の方向感がまちまちとなる中で、上げが目立ったのがエヌビディアだ。

国際通貨基金(IMF)が、中国の今年の成長率予測を引き上げている。

◇中国成長率24年5%に引き上げ IMF予測、住宅対策評価 (日経 電子版 12:27)
→国際通貨基金(IMF)は29日に公表した中国経済に関する審査報告で、中国の成長率見通しを2024年は5.0%、25年は4.5%とすると発表した。4月に示した世界経済見通しからそれぞれ0.4ポイント引き上げた。
中国政府は24年の国内総生産(GDP)成長率で5%前後の目標を掲げる。これまで主な国際機関で24年に5.0%を超える成長率を予測したところはなかった。

◇IMF upgrades China's GDP growth forecasts but warns of risks ahead―IMF upgrades China forecast after strong Q1 (Reuters)
→国際通貨基金(IMF)は、中国の今年の経済成長率予測を4.6%から5%に引き上げた。IMFは来年の見通しも4.1%から4.5%に修正した。好調な第1四半期と政策変更がIMFの予測引き上げを促したが、北京が国内消費促進を目的とした政策に重点を移す必要性を改めて強調した。

□5月30日(木)

◇NYダウ続落、411ドル安 長期金利4.63%に上昇で警戒 (日経 電子版 06:31)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比411ドル32セント(1.05%)安の3万8441ドル54セントで終えた。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ時期が後にずれるとの見方が根強い。米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたことから売りが広がった。

□5月31日(金)

◇NYダウ、330ドル安で3日続落 セールスフォースが急落 (日経 電子版 05:24)
→30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落し、前日比330ドル06セント安の3万8111ドル48セント(速報値)で終えた。前日夕に発表した四半期決算や見通しが売り材料となったセールスフォースが急落し、ダウ平均を押し下げた。主力株の一部にも売りが波及し、ダウ平均の下げ幅は400ドルを超える場面があった。

□6月1日(土)

米国の物価目標にたどり着くもどかしい状況があらわされている。

◇米インフレ鎮圧へ半歩前進 「最後の0.5マイル」は遠く (日経 電子版 03:03)
→米国のインフレ率が再び鈍化し始めた。米商務省が31日発表した4月の米個人消費支出(PCE)物価指数は市場に安心感をもたらす内容だった。ただ2%の物価目標への「最後の0.5マイル」に3年かかるとの分析もある。高金利政策からの正常化には時間がかかりそうだ。

◇NYダウ急反発、574ドル高 物価統計でインフレ懸念後退 (日経 電子版 05:43)
→5月31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反発し、前日比574ドル84セント高の3万8686ドル32セント(速報値)で終えた。朝発表の4月の米個人消費支出(PCE)物価指数がおおむね市場の想定に沿った結果となった。高インフレが続くとの懸念が和らぎ、米長期金利の低下を受けて買いが広がった。


≪市場実態PickUp≫

【AI関連の注目】

人工知能(AI)関連の連日の動き、まずは、イーロン・マスク氏について。

◇Elon Musk plans to build a supercomputer using NVIDIA's semiconductor chips―Report: Musk wants to build a supercomputer with Nvidia chips (5月27日付け Forbes (India))
→1)テスラとスペースXのCEOは、2025年秋までにこれを稼働させたいと考えている。彼の人工知能スタートアップ、xAIは、オラクルと提携してコンピュータを開発する可能性がある。
 2)テスラとスペースXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、AIチャットボット「Grok」を動かすために、Nvidiaのチップを使ったスーパーコンピューターの構築を計画しているという。マスク氏のAIスタートアップ、xAIは、2025年秋までに稼働させたいスーパーコンピューターでオラクルと協力する可能性がある。

◇マスク氏の「xAI」9400億円調達 OpenAIに対抗 (5月27日付け 日経 電子版 18:01)
→米起業家イーロン・マスク氏が設立した人工知能(AI)企業のxAI(エックスエーアイ)は26日、60億ドル(約9400億円)を調達したと発表した。人材獲得やAI半導体の確保に充てる。AI開発で先行する米オープンAIや米グーグルに対抗する。

マイクロソフトのAMD半導体採用について。

◇AMD AI hopes brighten with Microsoft deployment of MI300X (5月28日付け FierceElectronics)
→*マイクロソフトが顧客のAIコンピュート・ニーズにAMDのMI300Xを採用したことは、AIチップ市場におけるAMDの成長にとって一歩前進である。
 *NvidiaがAIチップ市場で早くから優位を占めていることに疑問の余地はないが、だからといって他の有名チップ企業がこの動きから取り残されているわけではない。マイクロソフトは、先日のMicrosoft Buildイベントで、AIトレーニングと推論のニーズにAMDのInstinct MI300X AIアクセラレーターGPUを顧客に提供する「最初のクラウドプロバイダー」であると主張し、このことを世界に知らしめた。

Gartnerが、AI半導体の今年の売上げを予測している。

◇Global revenue from AI chips sales to surge by 33% in 2024―Gartner: AI chip revenue likely to rise 33% this year - Strong demand is emerging for AI chips from the data centre market as well as the automotive and consumer electronics sectors, says Gartner. (5月29日付け Tech Monitor)
→ガートナーのレポートによると、データセンター、自動車および家電製品におけるAIチップの需要が世界的な売上げを牽引しており、2024年には33%増の$71 billionに達すると予想されている。AIパソコン市場も拡大しており、ガートナーの数字によれば、AIパソコンは今年のパソコン出荷台数の22%を占めると予測されている。

◇GenAI helps AI chip revenues to explode by 33% this year, Gartner says (5月29日付け FierceElectronics)
→*NvidiaのH100 GPUsは現在売れ筋で、しばしばバックオーダーになっており、NvidiaのBlackwell GPUプラットフォームは2024年後半に登場する。NvidiaのAIチップは、他のチップメーカーだけでなく、ハイパースケーラのカスタムアクセラレータとも競合している。AIチップの全カテゴリーの売上は今年33%爆発的に増加するとガートナーは予測している。
 *ガートナーは、AIチップの売上が2024年に33%成長し、世界で$71 billionに達すると予測している。そのうち$21 billionはサーバーのAIアクセラレータに起因すると、アナリスト会社は水曜29日に発表した声明で述べた。

◇Gartner Forecasts Worldwide AI Chips Revenue to Grow 33% in 2024 (5月29日付け Gartner)
→*サーバーにおけるAIアクセラレータの市場規模は2024年に$21 Billionへ
 *コンピュート・エレクトロニクスがAIチップの総売上の47%を占める市場へ
 *2026年末までに、企業向けPC購入の100%がAI PCになる

米OpenAIおよび我が国のPreferred Networksについて。

◇米OpenAI、安全対策強化へ委員会 新モデル開発に着手 (5月29日付け 日経 電子版 05:53)
→米新興企業オープンAIは28日、人工知能(AI)の安全対策について同社の理事会(企業の取締役会に相当)に提言する委員会を設置したと発表した。生成AI技術を進化させる一方、ガバナンス(企業統治)に懸念を招く事態が相次いだ。安全性を重視する姿勢を強調する狙いがある。
同社では非営利団体の理事会が営利企業を統治する。理事会の下に「安全・セキュリティー委員会」を新設した。

◇OpenAI「中ロが自社AI使い世論工作」 日本も標的に (5月31日付け 日経 電子版 06:08)
→米新興企業オープンAIは30日、中国やロシア、イラン、イスラエルのグループが同社の生成AI(人工知能)技術を使い、世界で様々な世論工作を図っていたと発表した。日本を標的にした事例もあった。米国などの大型選挙を控え、AIが情報操作に悪用される恐れが浮き彫りになった。

◇プリファード、垂直統合でAI開発 「デジタル赤字」削減―The Strategy (5月29日付け 日経 電子版 05:00)
→人工知能(AI)サービスを手掛ける有力スタートアップ、プリファード・ネットワークス(東京・千代田)がAI事業の垂直統合戦略を進めている。
半導体や計算用コンピューターまで一貫して開発し、総合力を高める。米マイクロソフトなど巨大IT(情報技術)企業に対抗し、AIビジネスの技術基盤を国内に確立する取り組みは実を結ぶのか。

AI関連各社トップが集まる台湾でのイベントについて。

◇Nvidia’s Huang Leads Parade of CEOs to Taiwan’s AI Tech Fest―Tech leaders are gathering to map the future of AI (5月30日付け BNN Bloomberg (Canada))
→エヌビディアのジェンセン・フアンCEOは、コンピューティングとAIの進歩、そして次なる課題について話し合うために台北で開催されるleaders meetingのメンバーである。該サミットにはAdvanced Micro Devices(AMD)のLisa Su氏およびQualcommのCristiano Amon氏も出席する予定。

◇Nvidia’s Founder Leads Parade of CEOs to Summit on Future of AI (5月31日付け Bloomberg)
→*Nvidia、AMD、Intel、Qualcomm、Armの首脳が講演*Computex人気で台湾の世界的重要性が強調される

AIは第二の経済の柱と、台湾でのあらわし方である。

◇AI has become a second vital industry in Taiwan: NDC head (5月30日付け Taipei Times)
→国家発展委員会(NDC)のPaul Liu(ポール・リウ:劉鏡清)大臣が火曜28日、メディアとの非公式会合で語ったところによると、人工知能(AI)は、活況を呈する半導体産業に次いで、台湾にとって第二の経済の柱となっている。
「台湾には 「huguo shenshan(護国神山:国を守る霊山)」がひとつあるだけでなく、ふたつ目がある。」とLiu氏。


【Samsung関連】

注目製品、今後の開発、そして事業運営と、Samsungの動き関連が以下の通りである。

◇Samsung Electronics says smooth progress in testing latest HBM chips (5月24日付け Yonhap News Agency)
→世界最大のメモリー・チップ・メーカーであるサムスン電子は金曜24日、最新の広帯域メモリー(HBM)チップのテスト・プロセスが顧客との協力の下、順調に進んでいると発表した。
「サムスン電子は現在、多くの企業と緊密に協力し、技術と性能を継続的にテストしている。」と、同社が声明にて。「我々はまた、HBMの品質と性能を徹底的に検証するため、さまざまなテストを実施している。」

◇Samsung eyes rolling out 1,000-layer 3D NAND by 2030 with new material―Samsung developing 1,000-layer 3D NAND with "hafnia ferroelectrics" (5月28日付け DIGITIMES)
→サムスン電子は、次世代のNANDフラッシュ材料として「hafnia ferroelectrics(ハフニア強誘電体)」を熱心に研究しており、この新材料によって1,000層を超える3D NANDの積層が可能になり、ペタバイトレベルのSSDsが実現できると期待している。
該ハフニア強誘電体材料は、現在3D NAND積層技術で使用されている酸化物ベースの薄膜に取って代わり、チップの耐久性と安定性を向上させると期待されている。サムスンの幹部は、同社の3D NANDは2030年頃には1,000層を超える積層が可能になると予測している。

◇Samsung’s New Chip Chief Seeks to Rally Troops After Setbacks―Samsung's chip division leader sees opportunity ahead (5月30日付け BNN Bloomberg (Canada))
→サムスン電子の半導体部門の次期トップであるJun Young Hyun(ジュン・ヨンヒョン)氏は、最近の難局を努力と決意で乗り越えられると確信している。ジュン氏は今月、Kyung Kye-hyun(キョン・ゲヒョン)氏の突然の退任の後任として就任した。

◇Samsung boosts workforce at Japan R&D lab to drive chips packaging innovations (5月30日付け DIGITIMES)
→サムスン電子はこのほど、横浜の新パッケージングR&D拠点への人員配置を拡大し、建設を迅速化するとともに、次世代半導体パッケージング技術の開発をサポートする。

◇Samsung Electronics grapples with labor dispute, semiconductor setbacks (5月30日付け Yonhap News Agency)
→サムスン電子は、事業環境が急速に変化する中、主要な半導体事業における競争力強化に注力すべき重要な時期に、社内外の課題に取り組んでいる。今週初め、National Samsung Electronics Union(NSEU:全国サムスン電子労組)は、経営陣との賃金交渉の停滞に抗議してストライキに突入する計画を発表した。

◇Samsung Electronics unveils new on-device AI laptop Galaxy Book 4 Edge (5月30日付け Yonhap News Agency)
→サムスン電子は木曜30日、AI時代をリードする計画の一環として、新しい人工知能(AI)搭載ノートパソコンを来月から全世界で発売すると発表した。クアルコムの次世代プロセッサー、スナップドラゴンXエリートを搭載したギャラクシーブック4エッジは、オンデバイスとクラウドの両方のAI機能を備えている。


【TSMC関連】

最先端微細化&実装、環境対応について、現下の状況&取り組みから、以下の通りである。

◇Weekly news roundup (5月27日付け DIGITIMES)
TSMC mass produces Tesla's Dojo AI training tiles, eying 40x power boost by 2027
…TSMCは2024年北米技術シンポジウムで、InFO_SoW(Integrated Fan-Out System-on-Wafer)技術でテスラの次世代AIトレーニングタイル「Dojo」の製造を開始し、より複雑なウェーハレベルのシステムで2027年までに計算能力を40倍向上させることを目指すと発表した。同ファウンドリーはまた、チップ製造とパッケージングの進歩に関する最新のロードマップを公開し、ウェハー全体に構築された超高性能システムへの道を開いた。

◇Weekly news roundup (5月27日付け DIGITIMES)
TSMC 3nm chip output to rise over 300% in 2024, says fab director
…TSMCのファブ18B担当シニアディレクターであるK. Hwang氏は、同社は3nmチップの生産を強化しており、2024年には2023年の3倍を超えると述べた。Hwang氏は、TSMCの年次技術シンポジウムの台湾セッションで、この発言と、ファウンドリの生産能力開発戦略や将来のファブ・プロジェクトに関するその他の詳細を語った。同氏は、TSMCが3nm技術の生産能力を拡大している一方で、生産能力不足は続いていると述べた。

◇TSMC's 7nm bridges academia and industry in Taiwan (5月28日付け DIGITIMES)
→TSMCやUMCのような台湾の重要なウェハーファウンドリーや、Win Semiconductorsのような化合物半導体企業は、この業界で極めて重要な役割を果たしている。ベルギーのInteruniversity Microelectronics Centre(IMEC)は、台湾の半導体研究所(TSRI)から学術・教育用チップの製造を長年委託されている。TSMCの7nmプロセスは間もなく学術・研究用途に利用できるようになる。

◇IFTLE 394: TSMC’s Foundry Market Share; UMC 3DIC for RFSOI (5月29日付け 3D InCites:Phil Garrou氏ブログ)
→Counterpointは、2023年第4四半期の世界ファウンドリー市場シェアランキングを発表、AIとスマートフォンの再入荷による旺盛な需要に牽引され、TSMCが61%のシェアを獲得している。
TSMCの5nm稼働率は最大100%に達したが、これはNvidiaのAI GPU需要によるものとされている。一方、アップルのiPhone 15は、主要3nmノードの成長を牽引し続けた。これら2つのサブ7nmノードのアプリケーションは、TSMCの当四半期の総売上の70%を占めている。

◇TSMC Launches Program to Enhance Green Conservation (5月29日付け EE Times India)
→TSMCの「Eco Plus! - Ecological Harmony Program」は、生息地、生物種、および知識の3つの重要な側面において、生態系の回復と自然教育に対する積極的な行動を加速させることを目的としている。


【Nvidia関連】

株価上昇が今週も注目されたが、AI半導体の現況とともに、以下に示す。

◇Weekly news roundup (5月27日付け DIGITIMES)
Lead times for Nvidia chips shortened
…業界筋によると、NvidiaのH100データセンターGPUのリードタイムは1年から20週間に短縮されたという。しかし、同チップやGH200など該GPUベンダーの他のハイエンドAIチップに対する需要は依然として高い。情報筋によると、クラウドサービスプロバイダーのような主要顧客は、9月にリリースされ、史上最も強力なAIプロセッサーになると期待されているNvidiaのB200とGB200の発注を開始しているという。

◇AI darling Nvidia's market value surges closer to Apple―Nvidia sees its market value surge, nearing Apple's value (5月28日付け Reuters)
→エヌビディアの株価は火曜28日に6%ほど上昇し、過去最高値を記録した。このAIチップメーカーの株式時価総額は、ウォール街の大物プレイヤーの大幅な入れ替えで、アップルを追い抜くまであと$100 billionほどとなった。

◇Nvidia jumps to FOPLP for AI server chips amid CoWoS capacity strain (5月29日付け DIGITIMES)
→Nvidiaは、TSMCにおけるCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)パッケージの生産能力の逼迫に対処することを目的として、GB200 AIサーバーチップにFOPLP(Fan-Out Panel Level Packaging)技術を前倒しで採用する予定であると報じられている。

◇エヌビディア株7%高も、半導体「後工程」に波及限定 (5月30日付け 日経)
→29日の日経平均株価は続落し、前日比298円安の3万8556円で終えた。前日に米エヌビディア株が7%高となり、日本でも半導体株高への期待が高まっていたものの、半導体関連で上昇したのはディスコやアドバンテストなど一部に限られた。
日本市場では「エヌビディア祭り」で半導体株が一様に買われる局面は終わり、半導体を最終製品に仕上げる「後工程」に関わる銘柄に人気が偏っている。


【Micronの広島新工場】

EUV導入で注目の先端DRAM工場は、2027年までに稼働との計画となっている。

◇Micron's plans for an additional DRAM fab in Hiroshima delayed until 2027―Micron delays its DRAM fab addition in Hiroshima by 2 years ―Better late than never. (5月28日付け Tom's Hardware)
→メモリメーカーのマイクロン・テクノロジーは、広島に新しいDRAM工場の建設を計画している。新工場は極端紫外線露光(EUV)装置を備え、マイクロン社の最先端メモリー製品の製造を可能にする。同社は2026年初頭に着工し、2027年までに工場を稼働させる計画である。
Digitimesによると、マイクロンは2023年、EUV装置を広島に導入するために最大5000億円($3.2 billion)を投資すると発表した。当初は、2025年末までに最先端DRAMの量産を開始する予定だった。今回のニュースは、該拠点の建設が2年遅れる可能性があることを意味する。

◇マイクロン、広島新工場を27年稼働 先端DRAM増産 (5月28日付け 日刊工業)
→EUV露光装置を複数導入
米半導体大手マイクロン・テクノロジーが2027年末にも先端DRAMの新工場を稼働することが分かった。26年早々に広島工場(広島県東広島市)の近隣で着工し、極端紫外線(EUV)露光装置も複数台導入する。投資総額は最大8000億円規模。DRAMはパソコンやサーバーなどのデータの一時記憶に使う。生成人工知能(AI)向けのデータセンターなどで需要が高まっており、生産能力を強化する。

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