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市場の飽和感、吹きまくるM&Aの嵐が席巻&進行中、2015年締め

2015年も終わりに近づき、新年、2016年を迎えるタイミングにて、この1年の本欄のタイトルを分類する形で半導体業界の動きを振り返っていく。次の6つに分けて示しており、数字は項目数である。

≪2015年の動きを振り返る≫

【世界半導体販売高】

米国Semiconductor Industry Association(SIA)から定例の月次世界半導体販売高の発表を追って、以下のこの1年各月の見方となっている。それぞれ前々月についての発表であり、市場最高となった昨年、2014年の$335.8 billionを本年が上回るかどうかが注目であるが、正確には来年2月の発表を待たなければならない。出だしから最高ペースが続いていたが、後の方になって市場の減速・飽和感が効いてきて、2014年から横這いか微増の2015年販売高の見方となっている現時点である。

2014年半導体販売高、11月までで2013年全体匹敵、ランキング速報も」(1月)

2014年の世界半導体販売高、9.9%増の$335.8 billionと最高更新」(2月)

相次ぐ注目…史上最高の1月販売高:NXP - Freescale合併:MWCから」(3月)

SIA:2月世界半導体販売高 & Factbookに今なお残る恨み節」(4月)

世界半導体販売高が23ヶ月連続前年比増、中国を初めて分けて表示」(5月)

M&Aの嵐吹き荒れる中、グローバル半導体販売高が24ヶ月連続の増加」(6月)

25ヶ月連続の前年比販売高増の一方、本年販売高予測の下方修正」(7月)

2015年前半の世界半導体販売高が前年比4%増、ランキングの波乱」(8月)

7月まで最高ペースの世界半導体販売高、一方、台湾で続くM&A激動」(9月)

8月までなんとか世界半導体販売高が最高ペース維持、深まるマイナス」(10月)

9月も前年下回る世界半導体販売高:M&Aの嵐の目、中国・Tsinghua」(11月)

微増の販売高、$336 billionに対し、$100 billion超のM&A規模」(12月)

【吹きまくるM&Aの嵐】

M&A(合併と買収)の話題、動きが本欄にあらわれたのが4月以降で、それからは毎月ほとんど複数回を数える頻出ぶりである。大型の案件が続いて、総額規模も従来記録を年半ばにして大幅に更新、$100 billion超が見込まれている。中国の半導体業界自立化に向けた買収戦略の動きが活発化して、後半にはTsinghuaグループが前面にあらわれて現在に至っている。

インテルの最先端プロセス開放から2年、買収の動きの噂の波紋」(4月)

引き続くインテルの波紋:買収関係、1Q業績、中国関連」(4月)

米国、中国を軸とする業界での駆け引き …買収、綱引き、協調」(5月)

半導体業界に引き続き押し寄せるM&Aの波、激変を加速」(6月)

またも急転繰り返す買収発表、抑えられない業界&市場の激変圧力」(6月)

米国と中国の間の対照的な動き ―― M&A争奪戦:R&D合弁」(6月)

半導体業界M&A、落ち着く懸案の一方、くすぶり続ける火種」(7月)

中国によるMicron買収提案の報道、大胆な動きへの様々な反応」(7月)

新たな激変のうねりに立ち向かう各国半導体業界の動き」(7月)

中国経済減速の中、こんどは台湾で高まるM&Aの動き&気運」(8月)

世界的に不透明感増す中、引き続くM&A、人員削減、新分野進出の動き」(9月)

本年の半導体M&A金額、すでに従来記録を大幅更新、続く動き&波紋」(9月)

引き続く波紋 …新iPhoneの中身&今後:治まらないM&Aの動き」(10月)

鳴り止まない半導体業界M&Aの嵐、強まる市場パイ縮小の警戒感」(10月)

激しさを増す半導体M&Aの嵐に反響する中国の動き」(10月)

世界を駆け巡る半導体業界M&Aの動き、アップデート&新規案件」(11月)

アップル、中国が引っ張る今までにない半導体業界における変化」(11月)

押し迫っても止まないM&Aの嵐、TsinghuaのSPILはじめ買収攻勢の波紋」(12月)

この1年のメモリ関連のM&Aの動きが、以下の通り抽出されている。

◇Mergers in Memory Abundant in 2015 (12月24日付け EE Times/Blog)
→2015年はメモリおよびフラッシュメーカーについてmerger and acquisition(M&A)の動きが以下の通り激しく起こって、業界統合が目まぐるしい年になっている旨。
 1. Western Digital to Buy SanDisk for $19 Billion
 2. Like Micron, SK Hynix Rejects Chinese Advances
 3. China Bids $23B for Micron
 4. Micron to Pay $4 Billion for Remaining Stake in Inotera
 5. Toshiba Reorg Cuts Consumer Unit
 6. Microchip Named as Atmel Bidder
 7. Cypress Puts Wafer Fab Up for Sale
 8. Cypress and ISSI: On Again, Off Again
 9. Report: Cypress Preps Bid to Snatch Atmel from Dialog
 10. Cypress Bids $4B For Spansion

【新市場の躍動…IoT、wearable】

M&Aへの注目で翻弄された感があるが、IoT、wearableなど新市場への取り組みそのものは熱気を帯びて繰り広げられてきている。振り返ると、以下の取り上げに留まったという感じ方がある。

新年、2015年、早々の脈動 …CES、新市場、グローバル市場」(1月)

熱を帯びるIoT/wearable市場に向けた多種多彩なアプローチ」(1月)

Apple Watchはじめアップル新製品発表への即刻の反応、波紋」(3月)

IoT、wearableに向けた連携、事業シフト&強化の動きが急加速」(3月)

M&Aの熱気続く中、IoTに向けたプラットフォーム・ツール展開の動き」(6月)

Internet of Things(IoT)市場の立ち上がり、伸びへの高まる期待」(11月)

IoTの設計関連記事について、本年のトップ10が以下の通り表わされている。

◇Security Leads Concerns for IoT-Low power FD-SOI process gets attention (12月23日付け EE Times/Blog)
→Internet of Things Designline記事について、2015年トップ10:
 1. Embedded Engineers: 10 Skills You Need Now
 2. How secure is AES against brute force attacks?
 3. 8 Views of Intel’s IoT Efforts
 4. The Hot, the Odd and the Risky -- Spotted at CES
 5. 8 FD-SOI Questions You're Afraid to Ask
 6. CES Sampler: Selfie Drones, Mobile Health
 7. 10 Tiny Development Boards That Are Up to the Task
 8. 13 Views of IoT World
 9. Top 10 Sensor Trends to Watch
 10. 8 Views of Intel’s IoT Efforts

【モバイル機器市場の試練】

タブレットの減少、スマホの伸びの減速と、ここ何年か半導体市場を引っ張ってきているモバイル機器には、相次いで試練に見舞われたこの1年である。とは言え、市場のパイの大きさは依然圧倒的なものがあるだけに、今後の半導体市場を支える中核としての注目を続ける必要がある。

早々、モバイルプロセッサ3社を巡る喧噪、実力本位の凌ぎ合い」(1月)

激しさを増すグローバルな攻防…中国が作る壁、モバイル市場」(2月)

Qualcommの圧倒的ポジションに迫る政府、業界、各社の攻撃、追撃」(2月)

モバイル半導体のユーザ選択とファウンドリー生産委託の錯綜」(4月)

2015年1-3月のモバイル機器市場に伴う各社の動き&読み」(5月)

スマホ市場急減、国内業界強化はじめ中国半導体業界を巡る波動」(8月)

アップルの新製品発表直後の反応:新たな快適さの一方、迫力不足も」(9月)

【最先端新製品・新技術】

これもM&Aへの注目に煽られたところが多々あるが、最先端新製品・新技術関係は以下の通りに留まっている。インテルとマイクロンの新型メモリに特に関心が向かっているのは、以下に続く2015年メモリ関係記事トップ10にも表れている。

半導体最先端を見据えるスタンス、チャレンジ、つばぜり合い」(3月)

ノンボラメモリを巡る動き…3D NAND出揃い:eNVM連携」(3月)

市場の空気一新を図るインテルとマイクロンの新型メモリ」(8月)

インテルの"3D XPoint技術"を使った試作SSD披露への反応」(8月)

◇Top Memory Stories of 2015 (12月21日付け EE Times/Blog)
→今年1年を振り返って、メモリ関係、最も注目記事:
 1. Intel, Micron Launch "Bulk-Switching" ReRAM    … 7月28日
 2. Marvell Shakes Up SoCs, DRAMs            … 2月23日
 3. Intel Memory Bus Draws Fire             … 8月20日
 4. China Bids $23B for Micron              … 7月13日
 5. Samsung Delivers Its 14 nm              … 4月 9日
 6. Hats Off to Hynix: Inside 1st High Bandwidth Memory … 7月27日
 7. Memory Advances HMC, HBM Gain Momentum        …11月30日
 8. IBM Nanotubes May Redefine Future of Moore's Law   …10月 1日
 9. 15 Views from the Flash Summit            … 8月14日
 10. Resistive RAM Memory is Finally Here         … 4月20日

【グローバル市場の波動】

相次ぐグローバル市場の波動、波紋を特に取り上げることとなった昨年、2014年であったが、やはりM&Aの嵐に大きく覆われた感じ方が残る本年であり、以下の取り上げに結果的になっている。中国の半導体業界の構造の推移に引き続き注目するところである。

青天の霹靂、敏感な反応 …インドfab、14-nm量産、特許政策」(2月)

半導体業界での統合が誘発する新局面:セマテック、さらなる展開」(5月)

環境、安全から自動運転に至るまで車載用半導体を巡る活発な動き」(11月)

TSMCの12-インチfabが加速する中国半導体業界構造の移行」(12月)


≪市場実態PickUp≫

【SPILのASEオファーへの反応】

台湾の実装&テスト業界でのM&Aの動きであるが、SPILの株式に対するASEの買収攻勢が続いており、現下のASEの投げかけの推移が以下の通りである。
完全買収が最終目標というASE側のコメントが見られるが、SPILからは何ら正当性が見えてこないと拒否的な反応の現時点となっている。

◇SPIL responds to ASE offer (12月21日付け DIGITIMES)
→Siliconware Precision Industries(SPIL)が、12月14日にAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)からのSPIL発行済み株式すべてをcashで買収するという提案を受け取ったことを確認、12月28日に予定の役員会にてASE提案を議論する旨。

◇ASE launches 2nd tender offer for Siliconware stake (12月22日付け Focus Taiwan News)

◇ASE seeking to buy another 25% stake in SPIL (12月23日付け DIGITIMES)
→Siliconware Precision Industries(SPIL)の株式25%をすでに購入しているAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)が、さらにSPILにおける25% stakeを買収する新たな計画を発表の旨。

◇ASE launches tender offer to increase stake in SPIL-ASE starts tender offer for more SPIL shares (12月23日付け The Taipei Times (Taiwan))
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が火曜22日、Siliconware Precision Industries(SPIL)における同社equity stakeを25%から49.71%に高めるべく、SPIL株式に向けた株式公開買付を開始の旨。「業界統合が現下の流れであることは明らか。完全買収が我々の目標である。」(ASEのCEO、Tien Wu氏)

◇Siliconware brands ASE buy-in deal 'hostile' (12月23日付け Focus Taiwan News)

◇No justification for ASE to take over SPIL, says SPIL (12月24日付け DIGITIMES)
→Siliconware Precision Industries(SPIL)がAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)による最新の株式買収提示に反応、SPILとしてはASEがSPILの事業を引き継ぐ正当性が何ら見えない旨。このような敵対的買収はSPILに利益はもたらさず、市場における秩序に大変なインパクトを及ぼす可能性、とSPILは特に言及の旨。

【販売高の落ち込み】

昨年の史上最高を上回るかどうかが注目される本年、2015年の世界半導体販売高であるが、ベンダーランキングの上位2社、MicronおよびMediaTekのそれぞれ直近および現下の売上げに下記の通り大きな落ち込みが見られており、予断を許さないところとなっている。

◇MediaTek December sales to fall (12月21日付け DIGITIMES)
→業界筋発。MediaTekの12月売上げが、handsetベンダーからの受注減少から前月比相当落ちる模様、また、handset顧客の要求への対応遅れも影響を及ぼしている旨。

◇Micron revenue falls 26.7 pct-Micron experiences a 26.7% dip in quarterly revenue (12月22日付け Reuters)
→メモリ半導体メーカー、Micron Technology社の12月3日締め第一四半期net販売高が$3.35 billion、前年同期($4.57 billion)比26.7%減、パソコン用半導体の需要低迷およびaverage selling prices(ASPs)低下による旨。

◇Micron forecasts surprise loss for current quarter (12月22日付け Reuters)

【知的財産関係2点】

まずは、中国の買収攻勢について、知的財産についても合法的に手に入れる、と以下の通り表わされている。

◇知的財産も爆買い 半導体の「飢えた虎」(中国と世界) (12月21日付け 日経 電子版)
→「大国」へと突き進む中国が世界であつれきを生んでいる旨。独自の行動原理は既存の国際秩序と相いれず、景気減速下での経済改革は時として市場を揺るがす旨。
・・・・・
清華大学が出資する紫光集団の董事長、趙氏は、今夏、DRAM世界3位の米マイクロン・テクノロジーに230億ドル(約2兆8000億円)で買収を提案、9月には米ハードディスク駆動装置(HDD)大手、ウエスタン・デジタルへの15%の出資を決めた旨。目的は「知的財産を合法的に手に入れる」こと。
資金の半分は国有保険会社が中心の国内投資家から調達、残りはかつて不動産事業などで得た利益や銀行借り入れで賄うと話す旨。2年前に参入した半導体で米インテル、韓国サムスン電子に続く世界3位を目指す旨。

次に、AppleとEricssonの間で長期にわたる特許係争にcross-license決着が行われている。

◇Apple Pays to Settle with Ericsson (12月22日付け EE Times)
→AppleおよびEricssonが、GSM, UMTSおよびLTE cellular標準に重要となる特許についてグローバルcross-licenseに合意、お互いに他の特許権を認め合って長きにわたる係争を決着させた旨。両社はまた、5G通信, videoネットワークtraffic managementおよびワイヤレスネットワーク最適化でのコラボを計画の旨。

【Samsungのファウンドリーの取り組み】

Samsungが、ファウンドリー顧客としてAMDを以下の通り取り込んでいる。
AMDから分離したGlobalFoundriesとともに、AMDのGPU製造を担う構図となっている。

◇Samsung to make chips for AMD (12月22日付け TechEye)

◇Samsung Electronics Does Toll Manufacturing for AMD's Next Chip-Report: Samsung picks up AMD as a foundry customer (12月22日付け ETNews.co.kr (South Korea))
→Advanced Micro Devices(AMD)の新しい"Greenland" graphics processing unit(GPU)が、Samsung Electronicsにより2016年に作られる旨。Samsungと低電力14-nm FinFETプロセス技術を共有するGlobalFoundriesも、来年の第二四半期に該"Greenland" GPUを作り始める旨。

STMicroelectronicsが主導するFDSOI技術についてもSamsungは、ファウンドリー対応の拡充を図っている。

◇Samsung Running 28nm FDSOI Chip Process (12月23日付け EE Times)
→Samsung Foundryのsenior director of marketing、Kelvin Low氏とSamsung System LSI欧州事業director、Axel Foscher氏のAdvanced Substrate Newsインタビュー記事。Samsungは、fully-depleted silicon-on-insulator(FDSOI)技術を開発したSTMicroelectronicsに向けて28-nm FDSOIウェーハを走らせており、他の顧客も並んでいる旨。FDSOI生産で用いられるSOIウェーハの製造元、Soitec SAが、Advanced Substrate Newsの発行元である旨。

【Consumer Electronics Show(CES)関係】

新年早々恒例のConsumer Electronics Show(2016年1月6-9日:Las Vegas)について、関係する動き、見方が出始めている。クルマへの重点化、あるいはそれに関連する話題が取り沙汰されている。

◇Ford, Google Car Deal: Who Needs Whom-Note to Google & Ford: Don’t Call It ‘Edsel’ (12月22日付け EE Times)
→GoogleとFord Motor Co.が、Consumer Electronics Show(CES)にて1月5日、革新的な業界横断連携取引を発表予定の旨。この奇妙な取り合わせの詳細は明らかでないが、月曜21日にまずYahoo Autosがニュースとして取り上げ、Automotive Newsがすぐさま続いてこの2社はGoogleの次世代自動運転車に向けてのFordの契約について話していると示している旨。

◇7 promising car tech companies (12月23日付け EE Times India)
→来月のConsumer Electronics Show(2016年1月6-9日:Las Vegas)は驚くほどにクルマに重点化、スマートフォン、UHDTVsおよびwearablesなどここ数年呼び物とされた通常の機器ではない旨。その革新を打ち上げるものとして、電気自動車、自動運転車、computer vision, over-the-air upgrades, deep learning/人工知能, HMI(Human Machine Interface)およびreal-time 3D mappingなどがある旨。

◇Etron chair sees modest chip market recovery in 2016-Consumer electronics to aid chip recovery in 2016, Etron CEO says (12月24日付け DIGITIMES)
→Etron Technologyのchairman and CEO、Nicky Lu氏の予想。来月のCES 2016にて披露されるvirtual-reality(VR)製品などが、来る新年の半導体市場回復にカギとなる旨。市場状態は2016年第二四半期には改善されて、第三四半期のいつもの季節的な伸びが続いてくる旨。


≪グローバル雑学王−390≫

度合はさまざまであるが経済高度成長の進展段階にあるアジア諸国と我が国の間のエネルギー情勢について、

『国際エネルギー情勢と日本』
 (小山 堅・久谷 一朗 著:エネルギーフォーラム新書 034) …2015年9月11日 第一刷発行

より経緯および現状を見ていく。市場の急拡大からエネルギー需要が増大、輸入国に転じなければならなかった中国、そしてエネルギー需要の拡大に対して国内生産が追いつかず、概して自給率が低下する傾向にある東南アジア諸国に分けて表わされている。


第四章 急変するアジアと日本

・かつて世界のエネルギー市場の中心は、欧米そして日本などの先進国
 →特にアジア新興国市場の動向が世界のエネルギー市場を大きく左右する現状に
・中国、東南アジアにおけるエネルギー問題に焦点、日本との関わりについて考えてみる

■中国のエネルギー需要の拡大
・中国の一次エネルギー需要は、1990年から2012年にかけて3倍強に増加
 …国際エネルギー機関(IEA)データ
 →世界に占める割合が、同じ期間で10%から22%に倍増した計算
・もはや中国は、世界のエネルギー需給バランスやエネルギー価格動向に最大の影響を与える国に
・中国は元来、天然資源が豊富な国
 →2013年時点、石炭の生産量は世界第1位、石油は第4位
 →ところが、需給の格差は拡大の一途、近年、その傾向が特に顕著なのが石油と天然ガス
・中国は1993年に、石油の純輸入国(年間の輸入量が輸出量を上回っている状態)となって以降、ギャップの拡大が続く
 →中国社会における急速な自動車の普及(モータリゼーション)
  →2012年 1.1億台
   2020年 2.1億台
   2030年 2.9億台
   2040年 3.7億台超
・需給ギャップの問題は、石炭にも
 →中国の石炭生産量は、2013年36.8億トン、世界全体の約5割
 →2009年に石炭の純輸入国となり、2011年には日本を抜いて世界最大の石炭輸入国に
・中国におけるエネルギー自給率の低下と対外依存度の上昇
 →国際市場にも大きな影響を与える問題に

■中国のエネルギー政策の変遷
・中国は1949年の建国以降、石油を中心としたエネルギー産業の育成を推進
 →1960年代には石油の自給自足を達成、1970年代からは輸出も開始
・1993年に石油の純輸入国のなったことをきっかけに、エネルギー安全保障政策を本格的に展開
 →国家主席や首相を含む政府要人を総動員する形で、エネルギー外交を積極化
・2012年には、中国による海外油田権益の獲得に向けた投資額は、過去最高の350億ドルに
 →IEAの予測によると、2015年には中国の石油企業が海外で生産する原油量は、世界屈指の産油国の生産量にほぼ匹敵
・中国は、量的な確保に加えて、輸送上のリスクの分散対策として輸入ルート、輸入源の多様化にも注目
・天然ガスについては、原油と同様に供給先の多様化を推進
・中国は近年、リスク分散対策および緊急時対策として、石油備蓄量の増大を急いでいる
 →原油や天然ガスの輸入ルートが遮断される可能性を危惧
・2011年3月に発表、「国民経済および社会発展第12次5ヶ年計画(2011〜2015年)」における法的拘束力をもつ目標値3点
 →1)一次エネルギーに占める非化石燃料の割合を8.6%(2010年)から11.4%(2015年)に
  2)GDP当たりのエネルギー消費量を2015年までの5年間で16%削減
  3)GDP当たりの二酸化炭素排出量を2015年までの5年間で17%削減
・先行する日本が中国のエネルギー安定化に果たし得る役割は、結果的に日本の利益となる

■中国経済の減速可能性とエネルギー市場への影響
・中国の実質GDP成長率は、2000年代前半から10%前後を維持
 →2012年から7%台に減速
 →経済発展の力点が「量」から「質」へと転換を迫られている
・一方、中国のエネルギー需要と輸入動向が、その規模において、世界のエネルギー市場全体における需要サイドでの最大の影響力をもつ
 →中国の一次エネルギー需要が世界全体に占める割合は、2012年時点で2割に
 →増加分が世界全体の増分に占める割合は、2012年から2020年にかけては37%、2030年にかけても33%
・石油や天然ガス、石炭、鉄鉱石など各資源の国際市場の需給環境は、中国の「買い」の程度によって大きく左右される可能性

■日中のエネルギー関係について
・中国は日本にとって最大の貿易相手国
 →2013年時点、輸出入総額は約3120億ドル(日本の貿易総額の約2割)
・かつてのように日本側から経済援助という観点でエネルギー協力を考える時代は終わった
 →国益確保の観点から、政策調整の可能性を探り、強化していくべき
・中国の特に化石燃料の増加のペースが少しでも和らぐ方向に導くことは重要
 →中国では発電量が急増する中、石炭火力の比率が極めて高く、PM2.5を代表例とする大気汚染問題に対する懸念は国内のみならず、日本を含む周辺諸国にも
 →日本が得意とする環境分野における協力の拡大の期待
・中国のエネルギー動向が日本に与えるマイナスの影響を最小限に食い止める発想が必要に
 →そこに新たなビジネス機会を発掘していくことも

■成長を続ける東南アジア諸国
・過去10年間で東南アジア全体では7000万人以上の人口増加
 →いずれの国も増加
 →エネルギー消費量の増加へ
・自動車保有台数と利用の増加、物流用のトラック利用も大きく増加
 →各国政府はすべての国民に対して電力を供給することを目指している
・いずれの国においても予測される2040年にかけての堅調なエネルギー需要の増加
 →地域全体でエネルギー輸入量が増加する傾向にあることは注目すべき点
 →一次エネルギー需要は2012年の石油換算5.7億トンから2040年には同12.5億トンへ
・概して東南アジア諸国では、エネルギー需要の拡大に対して国内生産が追いつかず、自給率が低下する傾向
 →石油・天然ガスの増産と同時に、代替となる国産エネルギーの生産量を増やそうとする取り組み
  →資金や技術といった面で抱えている問題

■東南アジアのエネルギー事情が日本にもたらす影響
・憂慮すべきなのは、東南アジアから日本への化石燃料資源の輸出減少
 →国内需要の増加に加えて、石油資源そのものの減少も
 →日本のエネルギー安全保障にとって懸念材料
・東南アジア諸国の輸入地域化は、国際エネルギー市場の不安定化要因となる可能性
 →東南アジアのエネルギー安全保障向上に対して、日本が積極的に関わっていくことは、日本の国益にとっても大きな意味
・日本はどのような役割を果たすことができるか
 →政策面での支援…エネルギーマスタープランなどの政策策定
 →エネルギー供給面での支援…必要な資金を出資または融資、相手国の開発を支援
  →開発した資源の一部の日本向け輸出を引き出すことは、交渉の余地があるかも
 →供給面での支援…再生可能エネルギーや原子力発電、高効率発電など、日本の強みを活かした貢献の期待
 →エネルギー需要面での支援…エネルギー利用効率の高い設備や機器の製造、またエネルギー管理技術は、日本が得意とする分野
・アジア地域で混乱が起きれば、即座に日本を含む国際エネルギー市場に影響が及ぶ
 →日本はその中で自国のエネルギー安全保障を損なうことがないように、柔軟かつ迅速に対応していくことが強く求められる

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