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米国と中国の間の対照的な動き ―― M&A争奪戦:R&D合弁

半導体業界M&Aの熱い動きが依然続く中、世界の両大国、米国と中国の間の一方ではドイツの車載向けSRAM市場の覇権を巡る戦い、もう一つは中国の半導体業界自立化に向けた先端技術開発を行う合弁の設立と硬軟対照的な動きが業界の景観に映ってきている。前者はここ数ヶ月にわたり今なお及ぶCypressと中国投資家コンソーシアム、Uphillの間のIntegrated Silicon Solution Inc(ISSI)買収争奪戦であり、後者は中国政府から反競争的慣行について罰金を課せられたQualcommが中国のファウンドリー最大手、SMICなどとR&D合弁を組んで中国での14-nm技術開発を支援していく動きである。

≪戦略的な戦いと協調≫

このところCypressとUphillのどちらのISSI買収を巡る入札価格が上回ったかを追い続けている体であるが、現下まずはUphillが盛り返したところからである。

◇Integrated Silicon agrees to sweetened bid from Uphill (6月19日付け Reuters)

◇Integrated Silicon Receives Another Sweetened Bid from Uphill-Shares rose 3.1% premarket, adding to the 30% rise notched since the takeover saga started in March-Uphill increases bid for ISSI, topping Cypress' offer (6月19日付け The Wall Street Journal)
→Summitview Capitalが率いる中国投資家コンソーシアム、Uphillが金曜19日、Integrated Silicon Solution買収に向けて$22/株を提示、Cypress Semiconductorの最新出し値、$21.25/株を上回る旨。ISSIは、Uphillの新提示を検討するため木曜25日に臨時株主総会を予定の旨。

これを受けてCypressが対抗するオファーを出している。

◇Cypress Boosts Bid for ISSI, Countering Uphill Offer-Chip maker tops Uphill’s offer by 25 cents a share to $712 million-Cypress makes another counteroffer for ISSI (6月22日付け The Wall Street Journal)
→Cypress Semiconductorが月曜22日、Integrated Silicon Solution買収提示額を$22.25/株に増加、$712 million相当になる旨。その入札は、中国の投資家コンソーシアムが金曜19日に$22/株を提示した後に行われている旨。

◇Cypress raises bid for Integrated Silicon again (6月22日付け Reuters)

ISSIが対応を決める土壇場になってCypressおよびUphillともにさらに引き上げて額ではUphillが上回る形になっている。

◇Integrated Silicon bidding war hots up with Cypress's fresh offer-Cypress plans "best and final" offer for Integrated Silicon (6月25日付け Reuters)
→Integrated Silicon Solution Inc(ISSI)を巡る入札の戦いが、Cypress Semiconductor社の$22.60/株とさらなる引き上げで激化、しかしながら、これは中国のコンソーシアム、Uphill Investment Coの対抗提示、$23/株に及ばない旨。

Cypressのトップは、これが最終の提示であるとし、金額では下回るが米国政府の壁を考えると十分優るものとコメントしている。まだ尾を引いている現時点である。

◇Cypress in “final” offer for ISSI (6月25日付け SiliconBeat)
→Cypress Semiconductorが水曜24日遅く、Milpitasのメモリ半導体メーカー、Integrated Silicon Solution Inc.(ISSI)買収に向けた"最終提示"を行い、ライバルのUphill Investmentの提示を下回るが"優れる"旨。
Cypress Semiconductorsのfounder, president and CEO、T.J. Rodgers氏は、中国のコンソーシアムはWashington D.C.の大きな障壁を乗り越えなければならず、Cypressの提示がUphillに優る旨。

このようなつばぜり合いの一方で、中国政府から市場取引慣行で多額の罰金を科された米国のQualcommが中国のSMICと連携して上海にリサーチセンターを設立、その運営はSMICが行うとともに、中国のHuaweiおよびベルギーのImecもこのコラボに参画するとしている。

◇Qualcomm plans advanced facility for chip research-U.S. company teams up with Chinese vendors; analysts say move will boost market position (6月19日付け ECNS)
→Qualcomm社が、中国の半導体トップメーカーとhigh-end半導体リサーチ拠点を設立、今年始め反競争的慣行について記録的な$975 millionの罰金を科せられた後、同社の中国における最大の動きの旨。複数の筋によると、中国最大の半導体ファウンドリーの1つ、Semiconductor Manufacturing International Corp(SMIC)が、上海に位置する該新リサーチセンターの日常operationsを受け持つ旨。Huawei Technologies Co Ltdおよびベルギーのnano-electronicsリサーチセンター、Imecもこのコラボに参画、この合意は近くベルギーPhilippe国王の中国訪問時に発表される旨。

その中身がさらに明らかになって、該合弁リサーチセンターでは中国半導体業界の最先端となる14-nmプロセス技術開発が行われると一連、以下の内容、表わし方となっている。

◇China's SMIC, Q'comm in 14nm Deal -Huawei, Imec also part of R&D joint venture (6月23日付け EE Times)
→中国のファウンドリー最大手、Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)が、14-nm半導体製造に向けた自前の技術を開発するために、Huawei, QualcommおよびImec research instituteとの合弁を構築、SMIC Advanced Technology R&Dは2020年までに国産の14-nmプロセスのSMIC fabでの生産化を期待の旨。Intel, SamsungおよびTSMCなど半導体メーカー最大手は2020年までに10-nm半導体を作っている見込み、それにも拘らず、この動きは西側に対して2世代以上後れている中国では大きな飛躍となる旨。現在のところ、SMICでは最大手半導体メーカーで数年間主流となっている技術、28-nmプロセスでも問題があると言われている旨。

◇SMIC, Huawei, imec, and Qualcomm in joint investment on SMIC's new R&D company (6月23日付け ELECTROIQ)

◇Qualcomm in Venture With Chinese Chip Maker-Qualcomm teams with SMIC, imec, Huawei in China chip deal (6月23日付け The New York Times)
→Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)が火曜23日、次世代半導体技術開発についてQualcommおよびimecと協働していると発表、中国のテレコム装置サプライヤ、Huawei Technologiesともコラボの旨。

◇SMIC to form R&D joint venture with Huawei, Qualcomm and Imec (6月24日付け DIGITIMES)
→中国のトップファウンドリー半導体メーカー、Semiconductor Manufacturing International(SMIC)が、Huawei, Qualcomm, およびnano-electronicsリサーチ機関、Imecと合弁を設立する計画を発表、該合弁会社、SMIC Advanced Technology Research & Development(上海)は、先端CMOS技術の構築、および中国国産の14-nm以降のプロセス技術確立に向けたR&Dに重点化する旨。

◇SMIC, Qualcomm, IMEC in 14nm Process Development Deal (6月25日付け IHS Electronics360)

◇Qualcomm, Imec, SMIC agree upon joint chip venture (6月25日付け Taipei Times)

Qualcommが2014年サプライヤ賞をSMICに授与する記事も見られている。

◇SMIC receives “2014 Foundry Supplier of the Year” award from Qualcomm (6月25日付け ELECTROIQ)
→中国で最大、最も進んだ半導体ファウンドリー、Semiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)が、顧客のQualcomm Incorporatedの子会社、Qualcomm Technologies社から“2014 Foundry Supplier of the Year”を受賞の旨。

中国政府が自前の半導体育成に向けて力を入れている中、これからは合弁を組んでいく流れが避けられないという見方が表わされている。

◇China Has Big Plans for Homegrown Chips -The state’s $161 billion investment scares foreign industry leaders-China to spend $161B on domestic semiconductor industry (6月25日付け Bloomberg)
→中国が、同国内半導体業界を支えてelectronics業界向け輸入半導体への依存を減らすよう、10年にわたって$161 billion費やす計画の旨。「向こう数年にわたって中国にただ半導体を出荷している今日と同じにはいかなくなる。合弁およびlicenses供与を行わなければならなくなっていく。」(NXP SemiconductorsのCEO、Rick Clemmer氏)

これも合併の動きの渦中にあるBroadcomも、中国メーカーとの連携が発表されている。

◇Broadcom expands strategic collaborations in China (6月26日付け DIGITIMES)
→Broadcomが、Hangzhou H3C Technologies, InspurおよびStarTimesなど中国メーカー数社との一連のMoU合意を発表、これら合意調印は、アジアでの戦略的関係を拡大しhome entertainmentおよびdigital homeにおける革新をさらに推進する同社が継続するcommitmentを反映している旨。


≪市場実態PickUp≫

【M&Aの次の台風の目】

半導体業界のM&Aの嵐は鳴り止まない情勢となっているが、市場では次の台風の目となる大手はどこか、に集まる視線となっている。アナログ分野での期待にも似たものがあるTexas Instruments(TI)への以下投げかけである。

◇Texas Instruments tipped as chip industry's next consolidator-Analysts: TI could get into the chip M&A game (6月19日付け Reuters)
→業界bankersおよびアナリスト発。Texas Instruments(TI)が半導体業界におけるmerger-and-acquisition(M&A)の動きが活発なこの年に傍観者できているが、まもなく大きな取引を迫られる可能性の旨。同社は、Maxim Integrated Productsと話し合ったし、NXP Semiconductorsが買収攻勢をかける前にFreescale Semiconductorの買収を検討していた旨。
TI spokeswomanは市場の噂および憶測へのコメントを控えている旨。

◇Chip Industry Looking Forward To Texas Instruments' Next Big Deal, Preferably In Analog (6月24日付け Forbes)
→半導体業界M&Aの渦の次の目としてのTexas Instruments(TI)について。

【再構築の動きの報道】

Advanced Micro Devices(AMD)については、M&Aではなく自らを2つに分ける、あるいは一部事業を分離する検討が行われているという報道が出て、打消しに追われる以下の推移である。

◇Exclusive - Advanced Micro Devices mulling breakup, spinoff: sources-Sources: AMD considers options including a split (6月20日付け Reuters)
→本件3人の事情通発。Advanced Micro Devices(AMD)が、同社operationsを2つの会社に分割、あるいはあるoperationsの分離を検討しており、このためにconsulting会社を雇っている旨。同社spokeswomanは本件にコメントしていない旨。

◇AMD Denies Mulling Breakup (6月22日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices(AMD)社が月曜22日、同社を2つの会社に分ける、あるいは事業の一部を分離するという選択肢を検討しているという報道を否定の旨。AMDのspokesperson、Sarah Youngbauer氏によると、先の報道とは違って同社は分割あるいは分離の探求に向け外部agencyを雇っていない旨。

【Freescaleの活発なプレゼン】

現下のM&Aの嵐の起爆剤の感もあるNXP Semiconductors(オランダ)のFreescale Semiconductor(米国)買収発表であったが、そのFreescaleが、年次イベント、Freescale Technology Forumの場が大方と思われるが、新製品そして先端技術のアプローチを以下の通り相次いで発表している。

◇Freescale i.MX 7 Finally Here-Heterogeneous Core Solutions Here Now-Freescale debuts power-efficient i.MX 7 apps processors (6月22日付け EE Times)
→Freescale Semiconductor社(Austin, Texas)が、長らく噂のapplicationプロセッサ、i.MX 7シリーズをついに披露、Freescaleがheterogeneousプロセッサを発表する初めてではなく、TIがモバイル応用向けOMAP[Open Multimedia Applications Platform]で行っているが、embedded応用向けとしてはFreescaleが初めての旨。

◇Freescale Adds Comms to IoT MCUs-Freescale integrates communications in MCUs for connected devices (6月22日付け EE Times)
→Freescale Semiconductorが、home automationおよび産業用制御におけるInternet of Things(IoT)応用に向けて同社Kinetisラインの新しいmicrocontrollers(MCUs)に通信capabilityを統合の旨。

◇Freescale S32 Ups Automotive Ante-ARM Family Includes Free Software Glue (6月23日付け EE Times)
→今日の自動車には70から280個のmicrocontrollers(MCUs)が入っており、engine control unit(ECU)からdashboard液晶ディスプレイ、運転車支援システム、automatic brake system(ABS)など至っている。Freescale Semiconductorは、high-end機能(該jobの約70%)用microcontrollers(MCUs)をすでに供給しているが、こんどは同社S32K microcontrollers(MCUs)の新ファミリーを擁してlow-end機能も攻略したい旨。

◇'Smallest SoC for IoT' Adds Memory-Single Chip System Module packs dual A9s, security, Gbyte of DRAM (6月23日付け EE Times)
→Freescaleが半導体業界にもたらしている半導体の新しいカテゴリー、Single Chip System Module(SCM)について。馴染みのあるsystem-on-chip(SoC)をワンステップ越えた該製品(Freescale i.MX 6D)は、SoCがもつすべてに加えて、同社dual ARM Cortex-A9 applicationプロセッサに並べてpower management半導体およびフラッシュメモリ半導体とともにstackされたgigaBytesのDRAMが入っている旨。

◇Freescale Networks on 16nm-Freescale turns to 16nm FinFET process for multicore chips (6月24日付け EE Times)
→Freescaleのannual conference, Freescale Technology Forumにて水曜24日、同社次世代のmulticoreプロセッサが16-nm FinFETプロセス技術を用いると発表の旨。2つのQorIQ半導体, LS1048AおよびLS1088Aが、Internet of Things(IoT) networking向けにここで設計されている旨。該新QorIQは、1.5 GHz動作の8つの64-ビットARM Cortex-A53コアなどの特徴、Freescaleはどのfabで該新プロセスノードを製造するか言わなかったが、2016年半ばの16-nmを約束の旨。

◇Freescale takes its next generation QorIQ multicore platform to 16nm FinFET technology (6月24日付け ELECTROIQ)

◇Freescale delivers S32K for low-end car functions (6月24日付け EE Times India)
→Freescaleが、車載応用向けの新しい32ビットARM-ベースハードウェアプラットフォーム, S32Kを作成、現代のクルマで必要なoperationsの約30%を行える旨。

FreescaleおよびNXP両社のトップが、Forumの場での基調講演にてIoT向けMCUsが合併後を引っ張っていくと次の通りである。

◇Secure IoT MCUs Drive Freescale-NXP (6月24日付け EE Times)
→Freescale SemiconductorおよびNXP両社のCEOsが、Freescale Technology Forumでの基調講演(23日)において、11月に完了する様相の合併に向けた全体としてのビジョンを説明、両社の将来はInternet of Things(IoT)を安全確実につなぐことにあり、車載に主に重点化する旨。NXPのCEO、Rick Clemmer氏は、この合併で第5位のnon-memory半導体メーカーが作り出され、その目標は大規模なコスト節減を生み出すではなく、IoT顧客に向けて一層幅の広いoptionsを供給することである旨。

【IMEC TECHNOLOGY FORUM】

これも恒例のイベント、IMEC TECHNOLOGY FORUMから、注目を集めたという取り外し可能な心電図センサ入りのスマートTシャツ、そして眼鏡のコンセプトを大きく変えるスマートコンタクトレンズの取り組みである。

◇Smart Shirt Adorns IoT Efforts-Smart T-shirt for IoT is unveiled at tech forum (6月24日付け EE Times)
→IMEC TECHNOLOGY FORUM 2015(6月23-24日:BRUSSELS)にて、electronicsが取り外せるスマートTシャツが注目を集めた旨。これとは別に、本イベントを主催したImec instituteとその関連があるHolst Center(オランダ)が、Internet of Things(IoT)リサーチプログラム、そして最初のライセンス供与可能な製品として低電力大気品質センサを打ち上げの旨。

◇Smart shirt collects body data (6月25日付け EE Times India)
→flexible conductive silver tracesを用いるTシャツで、electrocardiogram(ECG:心電図)センサを制御electronicsにつないでSDカードの大きさのボードに収めている旨。シャツが洗えるよう、このカードは取り外せる旨。

◇Researchers Focus on Smart Contacts-Lenses actively refocus (6月25日付け EE Times)
→IMEC TECHNOLOGY FORUM 2015(6月23-24日:BRUSSELS)にて。従来の眼鏡の700年に及ぶ技術を更新するプレゼン内容。2年以内にactiveコンタクトレンズを出す期待、該機器はユーザがどこを見ているかを検出、遠近の焦点を正確に合わせていく旨。

【TDDI半導体】

AppleのiPhones向け半導体対応の新しいキーワードとしてTDDI(touch with display driver)技術がクローズアップされている。Appleが社内開発を進めている動きがあって、driver ICベンダーへのインパクトがあらわれてきている。

◇Apple in-house developing TDDI solutions, say Taiwan chipmakers-Apple is developing TDDI chips for its iPhones, sources say (6月22日付け DIGITIMES)
→台湾のIC設計業界筋発。Appleが、iPhonesに向けてtouch and display driver integration(TDDI) single-chipソリューションを社内で開発している旨。Appleは同社製品用CPUsをすでに社内で開発しており、社内設計拡大の様相はグローバル半導体業界の景観に大きなインパクトを与える旨。

◇Taiwan-based LCD driver IC vendors set on transition process-Sources: Transition starts in LCD driver IC market with emerging TDDI chips (6月24日付け DIGITIMES)
→いくつかの台湾のLCD driver ICベンダーが、中国のライバルメーカーのプレゼンス上昇およびTDDI(touch with display driver)技術の出現の渦中、それぞれの移行計画を打ち出している旨。


≪グローバル雑学王−364≫

古代まで遡って外国人の目による記録文書類から我が国の歴史を、

『外国人がみた日本史』
 (河合 敦 著:ベスト新書 469) …2015年3月20日 初版第1刷発行

より辿ってきたが、近現代の後半の今回で読み納めとなる。列強の一角に急速に上り詰めた我が国が、太平洋戦争に敗北、それからの復興、高度成長を僅か20年で達成する中、いろいろな角度でかくも生々しく捉える視点の凄さというものを受け止めている。日本人ならではの長短の特性がそれぞれ端的に表わされている。


第五章 外国人がみた近現代―――日本人はユニークな存在なのか? =2分の2=

□式年遷宮は貴重な天の賜物
◎ブルーノ・タウトの『ニッポン』
・世界的な建築家、ドイツのブルーノ・タウト(Bruno Julius Florian Taut)、伊勢神宮の式年遷宮という古来からの儀式についての感想
・政権をとったヒトラーから命の危険を感じたタウト、妻子を残して日本に亡命
 →商工省の嘱託となり、各地で工芸品などの指導、3年間を日本で過ごす
・「何という崇高な、まったく独自な考え方」と感嘆した式年遷宮
 →20年ごとに社殿その他を一新、皇祖神の天照大神に遷座してもらう儀式
 →1200年以上の歴史
・日本人としてもっと誇りに思うべきなのかも

□真珠湾攻撃の真相
◎コーデル・ハル(Cordell Hull)の『ハル回想録』
・アメリカのハル国務長官が、日本政府のアメリカ政府に対する最後通告書(最後通牒)の受け取り
 →アメリカのハワイ・オアフ島の真珠湾基地が日本の連合艦隊の攻撃にさらされてから、1時間以上も後のこと
・ワシントンの日本大使館の失態により、真珠湾攻撃は卑怯な騙し討ちに
 →「リメンバー・パールハーバー」、アメリカ側の戦意を大いに高揚させることに
・真珠湾より9ヶ月前の1941年4月、戦争回避のための日米交渉を開始
 →1941年7月、日本軍は蘭印(現インドネシア)の石油を確保するため南部仏印進駐を開始
  →激怒したアメリカは、石油の対日禁輸を断行
 →日本にとって死活問題
・アメリカも密かに開戦を決意、11月26日、覚書(ハル・ノート)を提示
 →当時の日本にとっては到底受け入れられない内容
 →最後通牒ととられても仕方のないもの
・どうして真珠湾攻撃前に最後通牒を渡さないという取り返しの付かないミスが起こってしまったのか
 →じつは、いまだによくわかっていない

□「恩」を忘れない習性
◎ルース・ベネディクトの『菊と刀』
・ルース・ベネディクト(Ruth Benedict)は、太平洋戦争が起こると、1944年6月、アメリカ政府から「日本人がどんな国民であるか」解明するよう依頼
 →戦後、『菊と刀』を出版
・人から受けた「恩」を忘れない、これは日本人の特性
・「義理」、「恥」、「人情」、「修養」といった日本人の心性を的確に分析

□昭和天皇と新生日本
◎ダグラス・マッカーサー(Douglas MacArthur)の『マッカーサー回想記』
・連合国軍最高司令官、マッカーサー元帥が、昭和天皇と初めて会見を行ったときの本人の回想
・マッカーサーは日本の権力者として強烈なリーダーシップを発揮、日本の民主化と非軍事化を実現
・マッカーサーは、アメリカ陸軍省に天皇制の存続を強く求めた
 →日本人に圧倒的に支持されている天皇家を占領統治に利用した方が賢明という米国政府の総合的な判断か
・「天皇との初対面以後、私はしばしば天皇の訪問を受け、世界のほとんどの問題について話し合った」(『マッカーサー回想記』)
・昭和天皇は、1946年正月元日、自らの神格を否定(人間宣言)、翌月から地方巡幸をスタート
 →以後8年の間に、沖縄を除き、すべての都道府県を巡幸
・1950年、朝鮮戦争が勃発、マッカーサーは国連軍最高司令官に任命
 →北朝鮮を支援する中華人民共和国への攻撃を計画
 →トルーマン大統領は、アジアにおける戦線の拡大を望まなかったため、1951年4月、マッカーサーのすべての役職を解いた
・日本を去るにあたり、「老兵は死なず。ただ消え去るのみ」という名言

□原爆投下に対する見解
◎『アインシュタイン・ショックII 日本の文化と思想への衝撃』
・1922年にアインシュタイン(Albert Einstein)が来日、すでに「相対性理論」を発表、前年にはノーベル物理学賞を受賞
・1949年、中間子理論が評価、湯川秀樹は日本人で初めてノーベル物理学賞を受賞
・ノーベル賞受賞後、湯川秀樹がプリンストンの高等科学研究所に客員教授として招かれた折り、アインシュタインが来訪
 →核兵器の存在を許しておけば人類は滅亡してしまうと強く訴え
 →深く湯川の心を打ち、彼を平和運動に覚醒させるきっかけに
・1955年4月、『ラッセル・アインシュタイン声明』
 →核兵器による人類絶滅の危機を訴えた平和声明
 →日本において、その意志を継いだ、湯川秀樹
  →世界平和アピール七人委員会を結成、水爆実験の中止や核兵器の廃絶、日本の軍縮などを求める平和運動を展開
  →世界連邦運動を推進…核兵器による人類滅亡を回避するには、世界連邦を創設するしかないという信念
  →湯川は最晩年まで、その実現に向け、精力的に行動
・「科学者は、スペシャリストである前に、ヒューマニストであるべき」という湯川の主張やアインシュタインの精神は、全く色あせていない

□アジアの希望となった日本
◎孫文の『三民主義』
・清朝を倒すために活動した革命家。清朝が瓦解した1912年、新たに建国された中華民国の初代臨時大総統に就任
・1905年あたりから掲げた三民主義
 …民族主義(民族の平等など)、民権主義(主権在民、共和国制など)、民生主義(近代化の推進や社会福祉の充実など)
 →日本の近代化がいかにアジア人に勇気を与えたか
 →日本の強大化によって、アジア人の国際的地位も上がった
・自国民に対して日本に学ぶべきだと強調
・1924年、誕生したばかりの中国共産党と手を組んだ
 …第一次国共合作
 →翌年、孫文は60才の生涯を閉じてしまった

□日本人が克服すべき課題
◎エドウィン・O・ライシャワーの『ライシャワーの日本史』
・日本で生まれ育った外国人、ライシャワー(Edwin Oldfather Reischauer)
 →ハーバード大学の大学院に入り、1935年に日本に戻ってきた
 →1938年にアメリカに戻り、太平洋戦争中は日本についての講演で全米各地を回った
 →戦後は、日本の専門家として国務省に招かれ、その後はハーバード大学で東アジア研究に
・1961年、アメリカの駐日大使に
 →日本で生まれ育った大使の着任、大いに上がっていったライシャワー人気
・不幸なことに、大使館に入り込んだ精神障害者により足に大けがを負わされる
 →日本人の血を輸血
 →「自分は日米の"混血"になったから、日本に一層の親近感を抱く」『ライシャワーの日本史』
 →度量の大きさとユーモア、日米関係の安定に寄与

《外国人がみた近現代 要点》
・1854年に開国した極東の小国・日本
 →十数年後、天皇を中心とする近代的な統一国家(明治新政府)を樹立
・1871年、廃藩置県を断行、一夜にして藩というものを消滅
 →このような無血革命は、西洋人には驚きをもって受け止め
・以後、桜の美しい貧しいこの小国は、殖産興業に励んで富国強兵を目指した
・「日本人は、働いて建設している時の方が幸福だということを発見し、実践。ほとんどあらゆる必需物資に欠けていながら、日本は偉大な産業国家に」(マッカーサー)
・憲法や議会制度を整えた日本
 →税の過半を軍事力に投入、日清・日露戦争に勝利、列強諸国と肩を並べる強国に
 →孫文などアジア人にとっての大いなる希望とも
・台湾、朝鮮を植民地とした日本
 →帝国主義の名のもとに満州を支配下に置き、中国や東南アジアへと進出
・太平洋戦争によって打ちのめされた日本
 →わずか20年で不死鳥のように復活を遂げた

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