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中国経済減速の中、こんどは台湾で高まるM&Aの動き&気運

世界経済の先行き、そしてスマホ市場の飽和感などの不安要因から、事業規模の拡大および製品portfolioの拡充を図るM&Aが急激に高まったこの春からの世界半導体業界であるが、人民元の切り下げから中国経済の減速への不安が高まる中、こんどは台湾の半導体組立&テストの2大大手の間で買収提案が投げかけられる事態となっている。中国が自国の半導体業界の強化を進めている中で、グローバルな統合の流れに合わせた台湾の半導体業界におけるM&Aが他にも進んでいるし、求めていく機運が高まっている様相である。

≪規模と幅の追求≫

世界経済を揺るがせた中国減速の事態は次の通りであり、中国政府による下支えが行われている。

◇中国減速、世界に波及、NY株、原油急落 (8月23日付け 中日)
→人民元の切り下げに端を発した中国経済の減速への不安が世界の金融・商品市場を揺るがしている旨。21日は、米国の株式市場と原油先物相場が大幅下落した旨。株価の急落は消費者心理を冷え込ませ、資源価格の下落は新興国経済に打撃を与える旨。世界経済は失速する恐れがある旨。

同じタイミングとなっているが、台湾の半導体組立&テストの2大大手で世界市場でも最大手に入るライバル同士であるAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)とSiliconware Precision(SPIL)の間で買収提案の動きが起きている。発端は以下の通りであり、ASEがSPILの最大25% stakeを買収する提案の投げかけである。

◇Taiwan's Advanced Semiconductor Engineering to buy up to 25 pct of Siliconware Precision (8月21日付け Reuters)

ASE側から今回の主旨が次の通り表わされている。

◇ASE seeking to buy up to 25% stake in SPIL (8月24日付け DIGITIMES)
→半導体組立&テストのAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)のCFO、Joseph Tung氏。ASEは、競合のSiliconware Precision(SPIL)のmajor stakeを取り上げる入札にも拘らず、SPILのoperationへの関与は求めていない旨。ASEがSPILの最大25% stakeを買収する計画への批判に反応、ASEのSPIL株式への入札は"敵対的買収"と見なされるべきでない旨。SPILへの投資を通して、ASEは競合よりも協力を求めている旨。

台湾半導体業界の最大手、TSMCからは本件中立的なスタンスとなっている。

◇TSMC stays neutral on ASE's bid for SPIL shares (8月24日付け DIGITIMES)
→最近発表されたAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)のSiliconware Precision(SPIL)におけるmajor stakeを取り上げる入札について、TSMCはコメントを控える旨。TSMCのファブレスclientsが求めるbackend生産の90%ほどが顧客指名となっており、TSMCはASEおよびSPILの両方と協働している旨。

今回の買収提案を前向きに捉えている論調が見られている。

◇Commentary: ASE purchase of SPIL shares is positive (8月25日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)がSiliconware Precision Industries(SPIL)の株式最大25%をNT$30 billion($919 million)を越えそうな額で買収する計画は、敵対的買収と見なされるかもしれないが、今日の半導体実装&テスト分野では避けられないプロセスとも見ることができる旨。いくつかの業界インサイダーおよびCLSAなど機関投資会社は、この統合計画がASE、SPILそして台湾のIC backendサービス業界全体にもプラスに働くとしている旨。

SPIL側の今回の提案への対応が次の通りとなっている。

◇Siliconware urges shareholders not to sell shares to ASE, for now (8月25日付け Focus Taiwan News)
→ASEがSPILの最大25% stake買収を求めているtender offerについて、SPILの役員会は3人の社外取締役から成る検討委員会を設けて株式市場が引けた後の金曜にその内容を評価する旨。SPILは株主に対し、その評価結果が出る前に持ち分をASEに売らないよう急ぎ求めている旨。

具体的なASE提案の中身が次の通り表わされている。

◇SPIL receives tender offer from ASE-ASE offers to buy 25% stake in SPIL (8月26日付け DIGITIMES)
→Siliconware Precision Industries(SPIL)が25日、Advanced Semiconductor Engineering(ASE)によるmajor stake買収に向けたunsolicited tender offer(求められていない株式公開買付)通知を受け取った旨。ASEは、SPILの普通株式およびADRs(American Depository Receipt:米国預託証券)の最大25%を買収する提案、NT$30 billion($919 million)を越えそうな額の旨。

一方、中国政府の自国半導体業界を支援する動きについてはグローバルな事業買収が明確に謳われている。

◇Digitimes Research: China government to support development of MCUs, CPUs, memory chips-China's government to support IC design firms under 5-year plan (8月26日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Research発。中国政府が、現下の2015-2020年5ヶ年経済計画の間で買収によりMCU, CPU, FPGA, MEMSおよびメモリ半導体分野における現地IC設計メーカーの開発をサポートする旨。それら製品に取り組んでいる中国のIC-design housesは大方が現在初期段階にあり、現地ICメーカーがcapacity立ち上げあるいは技術アップグレードに向けてグローバルに関連事業を買収するのを融資支援することが中国政府の確定した政策である旨。

グローバルに、そして中国の動きが加速して広がっていく半導体業界のM&Aの様相が見て取れるが、台湾のIC設計業界でもその機運が高まっている。

◇More consolidation efforts needed to shore up Taiwan IC-design industry (8月26日付け DIGITIMES)
→現地IC design houses筋発。グローバル競合の高まりに対応するために、台湾のIC設計業界ではさらなる統合活動が必要の旨。Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が最近、ライバル、Silicon Precision Industries(SPIL)の株式最大25%を買収するtender offerを行っている旨。

その具体的な事例が、MediaTekの子会社において以下の通りである。

◇MStar to acquire Ilitek for NT$51 per share (8月26日付け DIGITIMES)
→MediaTekの子会社、MStar Semiconductorが、主にスマートフォンなどモバイル機器用のディスプレイdriver ICsを設計&開発するILI Technology(Ilitek)を買収する計画、MStarはその完全子会社、Chen-Fa(中国語から音訳) Technologyを通してNT$51($1.57)/株、総額約NT$3.66 billionのall-cash取引で買収する旨。

◇MStar subsidiary acquisition of Ili approved-TACTICAL MERGER:Company mergers also equate to information and development sharing, but some analysts think the MStar-Ili acquisition is about Taiwanese pride-Ili board approves acquisition by MStar unit (8月27日付け The Taipei Times (Taiwan))
→handsetパネルdriver半導体設計のIli Technologyの役員会が、MStar Semiconductorの子会社による同社$112 million買収を承認、該取引は、2016年第二四半期末までに完了予定の旨。

もう1つ別の角度から、台湾政府が中国メーカーでの台湾での拡販拠点の設立にOKサインを出している。台湾半導体メーカーの中国での300-亶場を認める動きに続いている。

◇Taiwan approves BOE subsidiary set up (8月27日付け DIGITIMES)
→台湾・Ministry of Economic Affairs傘下のInvestment Commissionが、中国のTFT-LCDパネルメーカー、BOE Technologyによる台湾市場で電子材料を拡販する現地子会社設立申請を認可の旨。BOE Technology Taiwanは、全体投資NT$30 billion($926 million)で設立される旨。


≪市場実態PickUp≫

【ams AGのNew York州fab】

オーストリアのアナログ&センサ半導体のams AGが、米国New York州にfabを建設、アナログデバイスを製造するとしている。New York州での先端半導体の活動に欧州からの新メンバーが乗っかる形である。

◇ams to build fab in New York State-N.Y. will be the site of a new ams fab (8月21日付け New Electronics)
→アナログ&センサspecialist、amsが、200-および300-mmウェーハを動かせるNew York州のfab建設をサポート、1000 jobs以上を作り出し、向こう20年にわたって$2billion以上を投資する旨。建設は2016年春に開始予定の旨。

◇AMS to spend $2 billion on New York wafer fab (8月22日付け EE Times Europe)

◇New AMS fab going to Marcy, NY (8月27日付け ELECTROIQ)
→以前はAustriamicrosystemとして知られたams AG(オーストリア)が、New York州北部、Marcy, NYのNano Utica siteにて新しい360,000 ft2 fabを立地させる計画を発表、該fabは、200/300mmウェーハでのアナログデバイス製造に用いられる旨。

【Hot Chipsイベント】

恒例の高性能半導体シンポジウム、annual Hot Chipsイベント(2015年8月23-25日:Cupertino, CA)が開催され、目についたプレゼン内容のいくつかである。

◇Startup Wants Better IoT Radios-IoT SoC will run on energy harvesters (8月25日付け EE Times)
→高性能半導体シンポジウム、annual Hot Chipsイベント(2015年8月23-25日:Cupertino, CA)にて、IoT半導体設計のstartup、PsiKick(Charlottesville, Virginia)のco-founder、Benton Calhoun氏。Internet of Things(IoT)は、新しいradios低電力化およびシリコン設計への新鮮なアプローチを必要としている旨。

◇China Shakes Up ARM Servers-64-core chip leapfrogs competition-Chinese startup unveils 64-core processor for servers (8月25日付け EE Times)
→annual Hot Chipsイベント(2015年8月23-25日:Cupertino, CA)にて、中国のstartupが今までで最も積極的なARM-ベースサーバプロセッサをプレゼン、同じセッションでOracleが、同社初のInfinibandを統合したSparcプロセッサを示した旨。
2012年設立、ほとんど知られていないPhytium Technology Co. Ltd.(広東省広州市:Guangzhou Guangdong)のプロセッサは、64個のcustom ARMv8コアを用い、28-nm、最大2 GHz動作の旨。

◇China start-up bares 64-core ARM-based server chip (8月26日付け EE Times India)

◇Oracle Gives Details of Low-Power 'Sonoma' SPARC Chip-Report: Oracle describes low-power SPARC "Sonoma" processor at conference (8月26日付け eWeek)
→Hot Chips showにて、Oracleが、scale-out環境(サーバの数を増やすことで、サーバ群全体のパフォーマンスを向上させる)にて狙われる次期SPARC半導体についての計画を披露の旨。

◇Open Source GPU Debuts-Wisconsin's MIAOW joins Berkeley Raven-Paper presented on open-source general-purpose GPU (8月27日付け EE Times)
→annual Hot Chipsイベント(2015年8月23-25日:Cupertino, CA)にて、open-source RTLとして現在使える最初のgeneral-purpose graphics processor(GPGPU:汎用グラフィックスプロセッサ)が披露された旨。
University of Wisconsin-Madisonのリサーチチームが、汎用に使えるopen-source graphics processing unit(GPU)設計、Many-core Integrated Accelerator of Wisconsin(MIAOW)を発案、該MIAOWコアは3年にわたって開発の旨。

【SK Hynixの工場建設&計画】

SK Hynixの半導体2工場新設に向けた$26.25 billion投資計画が発表されるとともに、Icheon, South Korea(京畿道利川市)拠点では18年ぶりの建設が完成、朴槿恵大統領を迎えた式典が行われている。

◇SK Hynix says to spend $26 billion on two new chip plants in South Korea-SK Hynix to build 2 wafer fabs, costing $26B (8月25日付け Reuters)
→SK Hynixが、約$26.25 billionをかけて韓国でさらに2つのウェーハfab拠点を設ける計画を発表、該fabsは2024年に稼働予定の旨。該半導体工場は、SK Groupが先週披露した$39 billion投資計画の一部の旨。

◇SKハイニックス、半導体2工場新設へ、市場拡大先取り (8月26日付け 日経)
→韓国SKハイニックスが25日、韓国で2工場を新設する構想を発表、市場拡大を先取りして生産能力を拡大する旨。既存工場の増設も含めると2014年から10年間の投資額は最大46兆ウォン(約4兆6千億円)を想定する旨。具体的な計画は「市場の需給や相場を見極めて決める」といい、時期や規模はなお不透明の旨。

◇Record-setting Expansion-SK Hynix Begins to Run World's Largest Semiconductor Factory -SK Hynix dedicates M14 fab, the largest in the world (8月26日付け BusinessKorea magazine online)
→SK Hynixが火曜25日、18年ぶりに建設したIcheon, South KoreaのM14ウェーハfab拠点の完成の式典を挙行、該半導体製造工場の敷地は53,000m2、該300-mm fabは2015年末までに300,000枚/月の生産規模、メモリ半導体を作る旨。

【インテルの新たな動き】

先週のIntel Developer Forum(2015年8月18日〜20日:San Francisco)から追加の内容、以下の通りである。

◇18 Views of #IDF15-Intel amps up the energy level (8月24日付け EE Times/Slideshow)
→今年のIntel Developer Forum(2015年8月18日〜20日:San Francisco)は、若い聴衆を引きつけ同社のPCの根源を超えていくよう、これまでよりも芝居の色合いに富んでいた旨。以下の内容:
 Job reqs open at wearable drone startup
 Curing cancer with analytics
 Expanding root-of-trust security
 Smart baby seats and mirrors
 Smaller, cheaper PCs
 Computers for Africa
 Engaging virtual and augmented worlds
 Fellows speak
 Souped-up systems

◇Intel unveils ultra-compact 5x5 motherboard standard-Intel shows off smaller 5x5 motherboard (8月24日付け Bit-Tech.net)
→Intel Developer Forumにて同社が、Next Unit of Computing(NUC)ラインで用いられる超小型form factor、5x5マザーボード標準を投入、該ボードは、140 millimeters by 147mmの寸法の旨。

続いてインテルは、high-performance computing(HPC)およびサーバに向けたopen-sourceアーキテクチャー、Omni-Path Architecture interconnection fabricについて以下の通り発表している。

◇Intel's Open-Source Fabric Supersizes Comm for Data-Omni-Path Architecture scalable to supercomputers-Intel details new fabric architecture (8月26日付け EE Times)
→1)Intelが本日26日、IEEEのHot Interconnects Symposium 2015(Santa Clara, Calif.)にて発表したfabric、Omni-Path Architecture(OPA)は、high-performance computing(HPC)およびサーバの両方に向けて特に設計されたopen-sourceアーキテクチャーである旨。Intelは、networkingにおける社内外で獲得したノウハウすべてを集中させて、どんな大きさのデータセンターあるいはsupercomputer arrayにも対応するmulti-generational interconnection fabricなるものを作り出している旨。
 2)Intelが水曜26日、high-performance computing(HPC)およびサーバに向けたopen-sourceアーキテクチャー、Omni-Path Architecture interconnection fabricについての詳細を説明、該新fabricは、各linkについて100 gigabits/秒でデータを動かせる旨。

◇Intel's open-source fabric scalable to any-sized data centre (8月28日付け EE Times India)

【TSMCにおける激動】

TSMCを巡る目まぐるしいほどの動き。まずは、16-nm FinFET半導体受注の顧客ベース拡大ぶりである。

◇TSMC growing its 16nm client base-Sources: TSMC gains customers for 16nm chips (8月24日付け DIGITIMES)
→市場筋発。TSMCが、2016年からのFinFET分野での市場シェアの大多数を獲得するために、16-nm FinFET半導体受注を積極的に追い求めている旨。
AppleのA9半導体受注のある部分を確保する一方、TSMCは16-nm FinFET nodeを擁してAMD, Avago, Broadcom, HiSilicon Technologies, LG Electronics, MediaTek, NvidiaおよびXilinxからも受注を得ている旨。

TSMCの前従業員がSamsungに先端情報をリークしたとする係争の件、TSMC側に組する裁定が出されている。

◇TSMC Wins Lawsuit Against Ex-Employee Now at Samsung-'He has to quit working for Samsung,' says TSMC (8月25日付け EE Times)

◇Taiwan top court rules in favor of TSMC in lawsuit against ex-R&D director (8月25日付け DIGITIMES)
→TSMCの先端プロセス技術に関するtrade secretsおよび特許をSamsung Electronicsに漏らしたとして、TSMCが訴えたTSMCの前senior director of R&Dを巡る件。

◇TSMC wins case in trade secret battle with Samsung-Taiwan's high court has ruled in favor of TSMC in its lawsuit against a former employee-TSMC wins ruling over employee who quit to join Samsung (8月26日付け PCWorld/IDG News Service)

またTSMCは、経済的に続かないとしてsolar事業からの撤退を以下の通り発表している。

◇TSMC to quit unprofitable solar module business (8月25日付け Reuters)

◇TSMC to cease solar manufacturing operations (8月25日付け DIGITIMES)
→TSMCが、同社100%子会社、TSMC Solarの製造操業を2015年8月末で中止、同社solar事業がもはや経済的に持続可能でないとしている旨。

◇TSMC Solar shutdown reflects challenges to CIGS thin-film PV module makers (8月26日付け DIGITIMES)
→PV業界アナリスト発。完全子会社、TSMC Solarを閉鎖するTSMCの決定は、CIGS(copper-indium-gallium-selenide)薄膜PVモジュールメーカーに直面する課題を強調している旨。

◇台湾積体電路製造、太陽電池事業から撤退 (8月26日付け 日経)
→台湾積体電路製造(TSMC)が25日、台湾中部の台中市に持つ太陽電池工場を8月末で停止すると発表、アフターサービスは続けるが、実質的に太陽電池事業から撤退する旨。

◇TSMC Pulls Plug on Solar Business (8月27日付け EE Times)


≪グローバル雑学王−373≫

「逆さ地図」を基本の見方で世界の現在およびそれに至る動きを地政学的に、

『「逆さ地図」で読み解く世界情勢の本質』
 (松本 利秋 著:SB新書 301) …2015年5月25日 初版第1刷発行

より読み解いてきたが、今回で読み納めとなる。朝鮮半島を巡る緊張事態が起きたばかりであるし、来る9月3日の戦後70年の節目の「抗日戦争勝利記念日」式典の成り行きが注目されている現時点でもある。以下の内容を見るにつけても、改めての認識インプットが多々、まさに世界情勢の本質に近づくためにアップデートの継続の重みを受け止めている。


第五章 アメリカのアジア回帰戦略と日本の再起動

■シリア化学兵器問題から見える大国アメリカの求心力低下

◇「世界の警察」をやめたアメリカ
・冷戦が終わった現在、アメリカの軍事力に対抗できる国はもはや世界に存在しない
 →アメリカが目指したのが「世界の警察」
  …アメリカン・プレゼンス(アメリカの存在感)を全世界に示し、経済のグローバリゼーションが進む中、外交的にもアメリカに有利な展開をもたらそうという目的
・それを行動に移したのが、1990年8月の湾岸戦争
 →たった40日の戦闘、アメリカ多国籍軍の圧倒的な勝利
・2001年9・11で始まった国際テロ組織との闘いで、イラク、アフガニスタンに軍事介入
 →アメリカ国民に戦争疲れの気運
・オバマ大統領が誕生、リーマン・ショックが重なり、アメリカの経済そのものも窮地に
 →そこで出てきたのが軍事費の大幅削減
 →オバマ大統領は世界の警察官をやめることを宣言
・象徴的な例として、内戦中であるシリアの化学兵器使用を巡るアメリカの対応
 →シリアの化学兵器使用を認定しながらも、オバマ大統領は軍事介入には踏み込まず、国連に問題を預けることに
 →アメリカの覇権による世界秩序が音を立てて瓦解していくプロセスでも

◇中国・北朝鮮はオバマの弱腰を利用
・アメリカの求心力とは、一言で言えばcredibility(力への信頼性)
・シリア問題では、アメリカの最高指導者、オバマ大統領がアメリカのパワーを使うことができない弱腰に
 →北朝鮮が大量破壊兵器を実際に使用するためのハードルが低くなった
 →中国にとっては尖閣で先手を打つチャンスと見られる可能性

■大幅に削られる国防予算で揺らぎ始めたアジアの対米信頼感

◇米軍の増強を急務とする世界情勢
・アメリカの非営利政治研究組織「グローバル・セキュリティー」の調査報告書…2005年3月
 →当時のアメリカは世界の130ヶ国に兵士を駐留
・冷戦後は海外で強力な軍事力を維持する負担から解放されると考えられたが、現実にそうはならなかった
 →全世界に展開している米軍を削減することは困難、むしろ増強が当面の急務

◇アメリカの軍事費削減で不安を増すアジア
・2011年1月に発表された米国の国防費削減計画
 →5年間で1500億ドル以上削減可能
 →アフガニスタンへの陸軍、海兵隊の派兵人数を縮小
・この背景に、年間1兆ドルを超える財政赤字に対するオバマ政権の財政再建への切迫した事情
 →アメリカの議会や市民社会の中で高まる財政削減を動機とした軍事費削減必要論
・現状ではオバマ政権がアジアに対してどのようにコミット、安全保障環境を作っていくのか、ほとんど説明がない
 →アジア諸国の対米不信感のますます増大

■米軍再編と集団的自衛権行使のセットで大きく変わるアジア戦略地図

◇建国以来、拡張を続けてきたアメリカ
・1783年のパリ講和会議で、アメリカがイギリスから独立することが正式に承認
 →以来、アメリカ合衆国は領土拡大を続けてきた
・アメリカはあくなき拡張主義と国際警察としての力を発揮
 →建国の時からグローバルな世界観を持った唯一の国

◇「不安定の弧」の安定を目指す米軍再編
・アメリカから見る冷戦構造崩壊後の世界認識
 →「チャンスの弧」(arc of opportunity)
    …豊かな油田のあるアフリカ北部
  「安定の弧」(arc of stability)
    …治安と経済が安定している欧州
  「不安定の弧」(arc of instability)
    …東欧から中東、インド、東アジア、特に中国、北朝鮮にかけての地域
・日米両国は「不安定の弧」地域を安定化することで利害関係を供給する関係
 →在日米軍の再編 …グアムの空軍基地の強化
 →日本の自衛隊の役割も大 …「集団的自衛権の行使」

◇「積極的平和主義」で求める多国間協力
・安倍政権の「積極的平和主義」
 →価値観をともにする国家群が共同で安全保障政策の実効性を高めて、平和の構築を積極的に推進
 →外交と防衛が一体となった安全保障政策の遂行
・多国間協力の枠組みの中で、日本が対米協力へのバランスを取れる可能性

■核武装と日本―――米国の対日戦略

◇核による脅威は「能力」と「意思」による
・核保有国8ヶ国(アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、インド、パキスタン、北朝鮮)のうち、実に半数の4ヵ国がアジアに存在
・これら核保有国が、日本にとって脅威なのかどうか
 →日本の核武装問題の方向性が決まってくる
 →考え方の基礎となるのは、相手の能力と意思を推し量ること
・総合的な判断として、アメリカは日本にとって脅威となり得ない
・中国は近い将来、日本にとって脅威となり得ると判断できる
・日本はアメリカと同じ価値観を共有、アメリカの世界戦略にとって日本の技術力や地政学的な役割は極めて重要

◇希薄になったアメリカの核の傘
・現在日本の核戦略は、日米安保条約によってアメリカの核の傘の中に入るという政策
・日本の現状は核兵器を持たない国としては、最大かつ完結した核燃料サイクルを確立
・トマホーク巡航ミサイルの引き上げなどに象徴される核の傘の希薄化が進むなか
 →日本を含めアジアの中のアメリカ同盟国の不安はますます大きくなるのも事実

おわりに

・世界の中の主権国、20世紀に入った時には十数か国
 →21世紀が始まった時に、日本国が承認した国家は194ヶ国
 →この100年間で国境線の数が一挙に増えた
・人間の歴史と世界地図を重ね合わせて俯瞰
 →時間を追うごとにさまざまに変化
・国家が誕生する過程にはさまざまなストーリー
 →日本と世界の出来事の地理的連関性と歴史を繋ぎ合わせて、現在を俯瞰的に理解する手助けに本書がなれば幸い

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