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引き続く波紋 …新iPhoneの中身&今後:治まらないM&Aの動き

特に中国の減速から世界経済の停滞感が続いている中、半導体業界ではアップル社の新型iPhone(6sおよび6s Plus)の中身の技術や今後に向けた市場の展開に注目が集まる一方、この春から吹くまくるM&Aの嵐のような動きはいっこうに治まる気配のない状況となっている。現在の半導体市場を大きく引っ張るアップルはじめスマートフォンへの期待は依然大きく、サプライチェーンの敏感な反応が見られるとともに、シェア拡大、ポートフォリオ拡充そして新市場対応に向けたM&Aのインパクトが引き続く現時点である。

≪長引く景気減速の読みの渦中≫

新型iPhoneについては内部解析の結果が、技術面そしてBOMコストと以下の通り表わされている。注目のapplicationプロセッサ、A9については、SamsungとTSMCの2社供給であり、Samsungの方が小さいdie sizeとなっている。

◇Samsung Electronics boasts prowess in chip fabrication-Report: Samsung's AP for the iPhone 6S ranks tops for efficiency (9月29日付け The Korea Herald (Seoul))
→Chipworksのteardown解析によると、Samsung ElectronicsがiPhone 6S用に作っているapplicationプロセッサは、TSMCが該新Appleスマートフォン用に製造しているものよりdie sizeが小さい旨。このdie sizeからSamsung半導体では生産効率が高まり、性能が改善される旨。

◇iPhone 6S: A9 May Be Dual Sourced (9月30日付け EE Times)
→技術コンサルタント、Chipworksが行ったiPhone 6Sのteardown解析。
iPhone 6Sに搭載されているコンポーネントリストは、iPhone 6および6 Plusのそれと似ている旨。Bosch SensortecおよびInvenSenseが、iPhone 6および6 Plusにおいて勝ち取ったinertial MEMSセンサの場所を維持、マイクロフォンについてはGoertekはその場所を維持する一方、AACは3 slotsをKnowlesに取られている旨。
最も目を引くapplicationプロセッサは、ChipworksはAppleが二股供給(dual sourcing)にしていると見なしており、従って予想通り、SamsungおよびTSMCの両社がApple A9版を次の通り供給している旨。
 Samsung APL0898 die size  96mm2   14nm FinFET
 TSMC  APL1022      104.5mm2   16nm FinFET
ともにそれぞれのファウンドリー対応FinFETプロセスの旨。

コストについては以下の見方であり、市場販売価格との対比に注目である。

◇Upgraded components in iPhone 6S Plus costs Apple an extra US$16 per device, says IHS (10月1日付け DIGITIMES)
→IHS発。新しいiPhone 6S Plusでのコンポーネント格上げに、前のiPhone 6 Plusでのコンポーネントより$16多くかかっており、NANDフラッシュメモリ16GB搭載iPhone 6S Plusについてのbill of materials(BOM)コストは$231.50である旨。基本製造コストを加えて、iPhone 6S Plusを製造する全体コストは$236になる旨。

新型iPhoneは出だし最高の売れ行きとされたが、その後については以下の通り敏感な反応が見られており、今後に引き続き注目である。

◇IC suppliers concerned about new iPhone orders (10月1日付け DIGITIMES)
→業界筋発。最新iPhonesの第1週売上げ記録にも拘らず、関連ICsサプライヤがAppleの2015年第四四半期についての該スマートフォン向け半導体発注を下方修正する可能性に懸念をもってきている旨。Appleは、新しいiPhone 6sおよびiPhone 6s Plusスマートフォンについて発売後3日だけで13 million台以上と新記録の売れ行きを発表したが、ある大手アナログICサプライヤは、Appleが12月に向けての新iPhones供給に対する需要を僅かに下げているとしている旨。

次にM&Aの動きについて、まずはDialog SemiconductorによるAtmel買収合意を受けてCypress Semiconductorが対抗提示をぶつけてきたが、以下の推移で取り止めとなっている。

◇Cypress Semiconductor drops bid for chipmaker Atmel-Cypress Semiconductor: Offer for Atmel is off the table (9月28日付け Reuters)

◇Exclusive: Cypress to challenge Dialog with bid for Atmel- sources-Report: Cypress puts together an Atmel bid, challenging Dialog (9月28日付け Reuters)
→本件事情通発。Cypress Semiconductorが、Atmelに向けた対抗提示をまとめており、たぶんにDialog SemiconductorによるAtmelとの$4.6 billion買収合意を混乱させるものの旨。Cypressは、以前のIntegrated Silicon Solutionを買収する入札の戦いで負けている旨。

◇Cypress Bid to Acquire Atmel has Expired (9月29日付け EE Times)
→Cypress Semiconductor社が、Atmel社買収オファーは有効期限が切れており、もはや買収には関心がないとするステートメントを出した旨。
microcontroller(MCU) ICsのファブレスベンダー、Atmelは、Dialog Semiconductor plc(Reading, England)により9月20日発表のcash-and-stock取引で買収される運びにある旨。

◇Cypress succumbs to series of unfortunate bids (9月30日付け EE Times India)

台湾におけるSPILとFoxconnの株式交換にASEが異を唱える動きは、以下の通り引き続いている。

◇ASE argues SPIL shares offered to Foxconn at low price (9月29日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が、Siliconware Precision Industries(SPIL)のFoxconn Electronics(Hon Hai Precision Industry)に向けて発行、売却される新株の明示価格が株式公開買付によるSPIL株式買収の提示価格NT$45に比べて低い、と主張の旨。

◇SPIL to seek shareholders approval for stock-swap deal with Foxconn (9月29日付け DIGITIMES)
→Siliconware Precision Industries(SPIL)が来る10月15日に株主総会を開催、同社授権資本の増加およびFoxconn Electronics(Hon Hai Precision Industry)との株式交換合意の計画について承認を求めていく旨。

新たな動きとしていくつか。まずはマイクロンに買収提案している中国のTsinghua HoldingsがこんどはHDD大手、Western Digitalへの投げかけを行っている。

◇UPDATE 4-China's Tsinghua to buy Western Digital stake in U.S. tech push-Tsinghua takes minority stake in WD for $3.78B (9月30日付け Reuters)
→Tsinghua Holdingsの子会社が、データストレージ製品の大手サプライヤ、Western Digitalの15% equity stake買収に$3.78 billionを支払う旨。米国の連邦Committee on Foreign Investmentは、TsinghuaがWDのboardに代表を指名できる該取引を検討する様相の旨。

◇紫光集団、米HDD大手に4500億円出資、15%、取締役を派遣 (10月2日付け 日経)
→中国の半導体大手で清華大学傘下の紫光集団(北京市)が、米ハードディスク駆動装置(HDD)大手、ウエスタン・デジタル(WD)に15%出資すると発表、投資額は37億7500万ドル(約4500億円)、紫光は半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーにも230億ドルで買収を提案しており、世界のIT分野で存在感を強めている旨。紫光の上場子会社がウエスタン・デジタルが発行する新株を引き受け、紫光はウエスタン・デジタルに取締役を1人派遣する旨。

中国から米国に向けた買収攻勢が、まだまだ以下の通り続いている。

◇Chipmaker Synaptics rejects Chinese firm's offer: Bloomberg-Report: Synaptics turns down a $4B offer from Chinese investment group (9月30日付け Reuters)
→Bloomberg、水曜30日発。touchscreen半導体メーカー、Synaptics社(San Jose, CA)が、約$4 billionと同社を評価する中国投資グループからのオファーを退けた旨。該オファー価格はSynapticsの火曜終値に対して70%近くのpremium、同社株価は水曜に26%高の$81.86になった旨。

◇China's Montage Technology to buy Pericom in $430 million deal-Montage Technology makes $430M offer for Pericom Semi (9月30日付け Reuters)
→中国のアナログ半導体メーカー、Montage Technology Group Ltdが、約$430 million相当の取引でのPericom Semiconductor社(Milpitas, CA)買収を提示の旨。Montageのall-cashオファー、$18.50/株は、Pericomの火曜終値、$16.90を9.5%上回っている旨。Pericomの株価は、水曜のpremarket取引で7.3%跳ね上がり、$18.14となった旨。

中国関係以外でもネットワーキング半導体分野での買収が行われている。

◇Mellanox Targets Telcos with EZchip Buy (10月1日付け EE Times)
→ネットワーキング半導体ベンダー、Mellanox Technologies Ltd.(Sunnyvale, CA)が水曜30日、同業のイスラエルの半導体メーカーでネットワーク処理半導体のEZchip Semiconductorを約$811 million in cashで買収する最終合意に調印、Mellanoxは該取引により、データセンターおよびwide area networks(WANs)にintelligent interconnectおよび処理半導体を供給する能力が高まるとしている旨。

このような半導体業界の現状について、CAD分野からの1つの見方である。

◇Executive Insight: Lip-Bu Tan-Cadence's CEO discusses consolidation, Moore’s Law, and the next big things.-Cadence CEO calls for changes in chip design, more startups (10月1日付け Semiconductor Engineering)
→Cadence Design Systemsのpresident and CEO、Lip-Bu Tan氏。半導体業界の統合は、"不可避"であり、"加速していく"旨。半導体設計complexityが先端ノードでかなり増大しており、time to marketおよび全体システムアプローチの必要性について懸念を起こしている旨。また、たくさんの設計におけるブレイクスルーおよび革新をもたらすことから、より多くのstartupsを必要としている旨。


≪市場実態PickUp≫

【本年のM&A取引データ】

引き続き収まらない半導体業界におけるM&Aの動き、波紋に目が離せないこのところであり、特にこの春以降は毎度取り上げる形になっているが、本年前半のM&A取引データがIC Insights社より以下の通り表わされている。改めてその吹き荒れる凄さを受け止めている。

◇M&A Activity Continues Through Uncertain Business Climate-Slowing economic growth in China and a cloudy global economic picture added to list of reasons for ongoing M&A activity in 2015 (9月25日付け IC Insights)

◇M&A activity continues through uncertain business climate, says IC Insights (9月29日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。2015年前半だけで、発表された半導体買収合意の金額総計が$72.6 billion、ここ5年(2010-2014年)の間に確定したM&A取引の年間平均の約6倍の旨。Dialog SemiconductorがAtmelを買収する計画を発表したばかり、加えて今や$77.0 billionに達している旨。

◇16 Deals Feeding Chip Biz's Merger Fever-Unprecedented consolidation hits industry (9月30日付け EE Times/Slideshow)
→IC Insights社によると、2015年前半だけで半導体買収取引総額が約$72.6 billionの規模、ここ5年の間に確定したM&A取引年間平均の6倍以上になる旨。今年これまでに見られた以下の大きな半導体業界M&A取引16件について。
 Deal 1: Lattice Semi buys Silicon Image
 Deal 2: Intel gobbles up Lantiq
 Deal 3: MaxLinear snags Entropic
 Deal 4: NXP announces $11.8 billion acquisition of Freescale
 Deal 5: Microsemi snaps up Vitesse
 Deal 6: Chinese VCs ignite bidding war for ISSI
 Deal 7: China nabs Omnivision
 Deal 8: Microchip acquires Micrel
 Deal 9: Avago's megadeal to acquire Broadcom
 Deal 10: NXP offloads RF power unit
 Deal 11: Intel grabs Altera
 Deal 12: Cypress dumps mobile touchscreen business
 Deal 13: China looks to land Micron
 Deal 14: Autoliv acquires Active Safety Capabilities
 Deal 15: AMS buys NXP’s CMOS image sensor business
 Deal 16: Dialog bids $4.6 billion for Atmel

◇Industry mergers, consolidations reach record levels (10月2日付け EE Times India)

【PC出荷データ】

低迷が続くPC市場に関連する内容を以下取り出している。そんな中でも休むわけにはいかないというのは本当に然り。インテルおよびAMDの新たな取り組みに注目し、飛躍へのtriggerを期待するものである。

◇PCの出荷台数、8月国内19.8%減、15カ月連続マイナス (9月28日付け 日経産業)
→電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2015年8月のパソコン国内出荷実績は、前年同月比19.8%減の49万台。台数、金額ともに15カ月連続で前年同月を下回った旨。8月としては現行の集計方法となった2007年以降で過去最低の旨。

◇PCs, Not Profits, Drive Chip Companies-Intel, AMD hope for PC design wins in a matured market-AMD, Intel turn out new chips for a mature PC market (9月29日付け EE Times)
→2015年第二四半期のPC出荷についてGartnerおよびIDCは約10%減としており、2016年はフラットの一方、2017年の伸びはごく小さいとの予想の旨。
成熟市場の芳しくない予測にも拘らず、主要半導体メーカーはこの分野に向けて新製品を擁して引き続き引っ張っている旨。Advanced Micro Devices(AMD)はPCs用Carrizoプロセッサをもって一連の業績不振四半期の転換を図る期待、一方、IntelはSkylake SoCアーキテクチャーによるPC出荷増を期待している旨。PC市場が再び元気を取り戻すかどうか、幾人かのアナリストは疑問視している旨。

◇Singapore PC market growth driven by mobile PCs in 1H15, says Gartner (9月29日付け DIGITIMES)
→Gartner発。2015年前半のシンガポールでのPC出荷総計が588,300台、前年同期比12%増。

【IBMのCNTトランジスタ】

IBM Researchが、将来のcomputing技術駆動に向けてシリコントランジスタに代わってcarbon nanotubes(CNT)を前倒ししていく技術ブレイクスルーを発表している。2014年7月に発表された$3 billion半導体R&D投資をもとにしたpost-siliconの今後に目を遣っている。

◇IBM Nanotubes May Redefine Future of Moore's Law-Switch to carbon at 3-to-5 nanometer (10月1日付け EE Times)
→IBM Researchからのcarbon nanotubeトランジスタにおけるブレイクスルーがうまくいけば、International Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)での2028年のハードストップが延ばされていく旨。
IBMは、チャネル長を1.8-nmノード(4技術世代先)まで、そしてangstromレベルの先までもscale downする方法を見い出したとしている旨。もし正しければ、Moore's Lawが同じextreme-ultraviolet(EUV) CMOSプロセス技術を用いてsub-nanometer angstrom(nanometerの1/10)まで延ばせる可能性の旨。

◇IBM research eyes post-silicon future with carbon nanotube electronics (10月1日付け ELECTROIQ)

◇IBM carbon nanotube breakthrough could bring faster, smaller chips-IBM touts advance in carbon nanotubes (10月1日付け PCWorld/IDG News Service)
→IBM Researchが、シリコン-ベーストランジスタのcontacts縮小での抵抗問題に対し微小なcarbon nanotubesを用いて対応している旨。

◇IBM unlocks the secret to carbon nanotube transistors (10月1日付け Engadget)

【AMD関連】

上のPC出荷でもAMDのがんばりへの期待に触れたが、graphics processing units(GPUs)およびaccelerated processing units(APUs)の新機軸が以下の通り披露されている。

◇AMD Unveils New GPUs for Embedded Systems-AMD debuts embedded GPUs, Pro APUs (9月29日付け eWeek)
→Advanced Micro Devices(AMD)が、digital signs, gaming, Internet of Things(IoT)および医療機器応用に向けて、graphics processing units(GPUs)搭載の新しいEmbedded Radeonグラフィックスカードを披露、また、同社Pro accelerated processing units(APUs)の第6世代を投入、4つのCPUコアおよび8つのGPUコアを誇る旨。

◇AMD launches sixth generation of Pro processor line (9月29日付け Digital Trends)

◇AMD Adds to Embedded Graphics Lineup for Industrial and More (9月29日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices社(AMD)は今月始め、同社グラフィックスチップセット製品ラインに一層の焦点を当てるために新しいRadeon Technologiesグループを構築、その最初の成果がすでに出ており、広く多彩なシステムへのRadeon技術組み込みに向けて3つの新しいグラフィックスモジュールファミリー(E8950, E8870, およびE6465シリーズ)を発表の旨。

一方では、スタッフ部門が主な対象の人員削減も打ち出されている。

◇AMD Cuts 5% of Global Employees-Company hopes to turn around finances after several poor quarters (10月1日付け EE Times)
→AMDの2015年6月時点の従業員は9,469人であり、約470 positionsを削減する旨。

◇Chipmaker AMD to cut 500 global jobs, take $42 million charge-AMD to reduce workforce by about 5% (10月1日付け Reuters)

【景気減速】

中国の景気減速が世界経済にインパクトを与えているが、現下の関連する内容を取り出している。

◇中国減速で素材価格下押し、石化製品、アジアで3割下落も (9月29日付け 日経 電子版)
→中国の景気減速を契機に、アジアで素材価格の下げが勢いづいている旨。
7月下旬以降、鉄鋼や石油化学製品の取引価格の下げ幅が拡大、原油安も背景に9月半ばまでに3割値下がりした品目もある旨。10月から全品種を値下げした鉄鋼メーカーもあり、下落が国内物価などに影響しそうな旨。

◇世界で株安、時価総額1400兆円減、中国不安が影−資源安が企業に打撃 (9月30日付け 日経 電子版)
→株式市場の下落圧力が再び強まっている旨。中国の景気減速の悪影響が先進国に波及、業績悪化に見舞われる資源関連企業が日米欧で相次いでいる旨。世界経済の成長鈍化を織り込む形で株価が下げ、世界の株式時価総額はピークの5月末から12兆ドル(約1400兆円)減少した旨。市場では株安が消費を冷やす負の連鎖も警戒されている旨。

◇7〜9月「マイナス成長」予測増加、下方修正相次ぐ (10月1日付け 日経 電子版)
→政府の景気回復シナリオに暗雲が垂れ込めている旨。7〜9月期の鉱工業生産指数は2期連続のマイナスとなるのが確実な情勢、同期間の国内総生産(GDP)伸び率もマイナスになるとの見方がエコノミストの間で増えてきた旨。

◇中国成長6.8%どまり、7〜9月予測、エコノミスト調査 (10月2日付け 日経 電子版)
→日本経済新聞と日経QUICKニュースが1日まとめた中国エコノミスト調査。
19日発表の7〜9月期の実質国内総生産(GDP)成長率の予測平均値は前年同期比6.8%と、約6年半ぶりの低水準となる見通し、内需の低迷で、景気減速が長引くとの予想が増えている旨。中国の成長率が6%台に落ち込めば2009年1〜3月期(6.2%)以来となる旨。

中国からものづくりを移していく流れの加速が方々で見られているが、そのもっていく先の大きな1つということか、ベトナムの経済の活況ぶりが以下の通り表わされている。

◇ベトナム6.5%成長、1〜9月、5年ぶり高水準、スマホなど輸出好調 (9月30日付け 日経)
→ベトナムの1〜9月期の実質国内総生産(GDP)の伸び率は前年同期比6.5%と5年ぶりの高水準となった旨。主要輸出品の携帯電話、縫製品、靴の輸出が伸び、原材料の輸入元である中国が8月に人民元を切り下げたことも追い風の旨。通年では東南アジア最高の経済成長を達成する可能性もある旨。ベトナムの成長率が1〜9月期で6%台を回復するのは2010年以来の旨。


≪グローバル雑学王−378≫

ギリシアの財政破綻危機問題、シリアなどからの難民受け入れ、と連日の事態、対応が注目されるこのところの欧州連合(EU)であるが、

『地図で読む「国際関係」入門』
 (眞 淳平 著:ちくまプリマー新書 239) …2015年8月10日 初版第1刷発行

よりそのEUの成り立ち、推移、現状の構成そして多々抱える課題、問題点を2回に分けて見ていく前半である。かつての国により通貨の両替を行って国境を意識した頃を思い起こしながら、一層グレードアップした共同体、連合に向けて今なお問題を抱えながら邁進しているEUを受け止めている。


第4章 EU―――壮大な実験が描き出すもの =2分の1=

◆注目されたスコットランドの住民投票
・2014年9月18日に行われたスコットランドの住民投票
 →投票資格は16才以上の住民、85%近くの投票率
 →独立反対への票が約55%、200万票強、イギリス残留が決まった
・注目されたのは、拡大を続けてきた欧州連合(EU)において、国家内での分離・独立運動が生じたこと

◆超国家機関としてのEU
・EUは、当初の原加盟6ヶ国から6次の拡大を経て、現在の28ヶ国体制に拡大した「超国家機関」
・主権国家 …外国から一方的な命令を受けることがなく、国内の政治・社会の制度や治安などをきちんと維持して、諸政策を実施できる機能や権限を有している政治主体
・EUの特殊なところは、加盟各国が、この主権の一部を自らの意志で手放し、EUに委譲している点
 →EU域内でヒト、モノ、サービス、おカネが自由に移動
 →欧州各国における大学の学位互換制度
 →国境におけるパスポート・チェックや税関検査が廃止
  …「シェンゲン協定」という取り決め

◆ユーロという単一通貨
・単一通貨ユーロを導入している国
 →2015年5月時点で、EU加盟国のうち19か国
 →金融政策を、「欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)」に委ねる
・自国の金融政策を取るという主権を放棄、より大きなユーロ経済圏の中での生き残りを選択

◆始まりは「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」
・1950年、ドイツで大規模製鉄所を再開しようという計画が浮上
 →フランスはイギリスやアメリカなどと協議、最終的にドイツの後押しをすることに
 →そのときにつけた条件が、「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC:European Coal and Steel Community)」の創設
・1951年の発足時、イタリアとベネルクス3国(オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)も加盟
 →イギリスは、参加を見合わせ

◆「欧州経済共同体(EEC)」ができる
・ECSCは、加盟国にとって多くの利益に
 →1958年、「欧州経済共同体(EEC:European Economic Community)」、「欧州原子力共同体(EURATOM:European Atomic Energy Community)」の創設
・EECは、欧州統合の歩みを一気に加速
 →1967年、「欧州共同体(EC:European Communities)」設立
 →広範囲の権限を持った超国家機関へ少しずつ発展
・自国の意見が通らず、自国の主権が制限される領域も増加
 →にも拘らず各国は、自国の発展のために、ECに参加することを自発的に選択
・1985年、域内のヒトの異動を円滑にするための「シェンゲン協定」

◆深化するEU
・「欧州連合(EU:European Union)」を創設するための「マーストリヒト条約」
 →1993年11月に発効
 →(1)経済統合の一層の推進
  (2)「共通外交・安全保障政策」の深化
  (3)警察など司法・内務分野における各国政府間の協力促進 など
・単一通貨「ユーロ」の導入と金融政策を司る「欧州中央銀行(ECB)」の創設
 →2002年1月1日、ユーロが、実物の紙幣やコインとして市場で流通
・2009年、EUのさらなる統合深化を謳った「リスボン条約」が発効
 →(1)EUへの「法人格」の付与
  (2)「欧州理事会」の議長職を「EU大統領」の存在に
  (3)「外務・安全保障政策上級代表」の設置
  (4)立法機関としての性格を強める
  (5)「閣僚理事会」での審議で「特定多数決制」を採用
・EU自体を、国際交渉における主体となり得る、効率的でより影響力の強い存在に

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