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アップル、中国が引っ張る今までにない半導体業界における変化

本年、2015年もあとひと月を残すのみとなったが、春先から現時点に至るまで半導体業界のM&Aの嵐が吹き荒れ続いて、今までにない大きな変化に見舞われているという強い実感がある。モバイル機器が引っ張ってぐんと拡大した半導体市場の規模、大きさであるが、特に本年に入ってから強まった減速感、停滞感からの脱却、そして次への飛躍を図る動きがこの大きな変化を引き起こしていると受け止めている。その矢継ぎ早の速さ、そしてグローバルに世界各地を巻き込む規模は類例を見ず、そこにはアップル、中国が引っ張る現時点の激動の渦が見られている。

≪グローバルな激動≫

現時点の激動を起こしているインパクトの1つ目、アップルについては、まずSiP組立の発注を中国の実装&テスト最大手、JCETに来年出すという以下の動き、そして台湾の同業界の受け止め方である。

◇China firm reportedly lands SiP device orders from Apple (11月25日付け DIGITIMES)
→中国最大の実装&テストサービス・プロバイダー、Jiangsu Changjiang Electronics Technology(JCET)が、2016年に向けたAppleからのSiP(system-in-package)モジュール組立受注を獲得の旨。業界筋によると、日本のMurataおよび台湾・Advanced Semiconductor Engineering(ASE)のUniversal Scientific Industrial(USI)など現状のサプライヤに加えて、JCETがApple向けSiP組立サービスの新しいcontractプロバイダーになる旨。JCETが2015年始めに買収したSTATS ChipPACは、すでに韓国のoperationでAppleからの認証を得ている旨。

◇Commentary: Taiwan IC backend firms facing challenge from fast expanding China competitors (11月26日付け DIGITIMES)
→中国のJiangsu Changjing Electronics Technology(JCET)がAppleからSiP(system-in-package)モジュール受注を獲得という最近のメディア報道は、台湾のIC実装&テストサービス・プロバイダーには警告となる可能性の旨。QualcommおよびMediaTekも、中国のIC backendサービスプロバイダーと協力したい意向を表わしている旨。HuaweiおよびSpreadtrum Communicationsなど彼ら国内のclientsを合わせて、中国の実装/テストメーカーがグローバルIC backendサービス市場をまもなく席巻するかもしれない旨。

そしてさらに、アップルが2018年に発売する「iPhone」に有機ELパネルを採用する方針が明らかになって、韓国LGディスプレイが大型投資を打ち出す動きに至っている。

◇アップル、iPhoneに有機EL、韓国LG増産投資−3年後 (11月26日付け 日経 電子版)
→米アップルがスマートフォン「iPhone」の表示装置として有機ELパネルを採用、部品メーカーなど複数の取引先に伝えた旨。従来の液晶パネルに加え、鮮明な画像と省電力が特長の有機ELを搭載する製品を3年後に発売する計画の旨。供給元の1社となる韓国LGディスプレイは増産投資に乗り出す旨。スマホの技術を牽引するアップルが有機ELを採用することでパネル産業の世界市場は勢力図が変化しそうな旨。

◇LG、有機EL新工場に1兆円投資、iPhone向け (11月27日付け 日経 電子版)
→韓国・LGディスプレイがスマートフォンなどに使う表示装置である中小型有機ELパネルの新工場を韓国内に建設する旨。2017年末にも稼働させて徐々に生産量を増やし、投資額は数年間で1兆円を超える見通しの旨。米アップルから2018年に発売する「iPhone」に有機ELパネルを採用する方針を伝えられたため供給体制を整える旨。新工場は韓国北西部の坡州(パジュ)にある既存工場の敷地内に建てる旨。有機ELは鮮明な色が表示ができるほか省電力性能に優れる、ただ発光量など性能が経年劣化しやすく、生産効率も悪い旨。アップルはこうした弱点が克服できるかを今後1年程度で見極め、発注量を決めるとみられる旨。

この情勢を受けて、我が国内株式市場の敏感な反応である。

◇液晶関連株が下落、iPhone有機EL採用で、Jディスプレイ一時10%安 (11月27日付け 日経)
→米アップルがスマートフォン「iPhone」に有機ELパネルを採用すると伝わった26日、株式市場では関連銘柄の明暗が分かれた旨。従来型の液晶パネルが主力のジャパンディスプレイ(JDI)株が一時前日比10%安まで売られる一方、有機EL関連には需要拡大を期待した買いが入った旨。

もう1つのインパクト要因、中国については、材料に事欠かない状況が続いており、同国投資戦略を引っ張る急先鋒、Tsinghua UnigroupがRenesas Electronicsを視野に入れているという以下の内容である。

◇Tsinghua, Infineon Kicking Renesas' Tires (11月23日付け EE Times)
→Renesas Electronicsが、中国のTsinghua UnigroupおよびドイツのInfineon Technologiesなど日本以外のいくつかの企業にとって魅力的な投資ターゲットになっている旨。Tsinghuaのメモリ半導体事業での大きな志はよく知られるところ、Renesasへの投資は、中国にとってロジック事業、特に車載およびMCU分野において足場を得るvehicleとして狙っている旨。

中国が投資制限の解除を求めている台湾であるが、一筋縄にいかない事情も表わされている。

◇Taiwan To Welcome Chinese Investment In Semiconductor Industry (11月23日付け Bidness ETC)
→論議を呼ぶ決定、台湾政府が台湾半導体業界への中国投資の禁止を緩和する方向、2016年1月に総統選挙を控えており民進党の優勢が伝えられるだけに微妙なところがある旨。

Tsinghua Unigroupのトップが、活動の現時点を表わしている。

◇Targeting Taiwan IC sector: Q&A with Tsinghua Unigroup chairman Zhao Weiguo-Tsinghua Unigroup chairman looks beyond China and Taiwan for investments (11月23日付け DIGITIMES)
→中国のTsinghua Unigroupは現在、ここ2年総額$10 billion超の一連の買収をもってグローバル半導体業界の中でうまくいっている旨。Tsinghua Unigroupのchairman、Zhao Weiguo氏が最近、backendサービスのPowertech Technology(PTI)の25% stakeを$598 millionで買収する取引締結後、台湾を訪問、滞在中に再び台湾政府に対し台湾のIC業界への中国の投資に対する禁止令緩和を急ぎ求めるとともに、本インタビューではグローバル半導体supply chainに同社のcapacityを構築するTsinghua Unigroupの投資戦略を披露の旨。

半導体について話し合う米中会合が行われ、健全なグローバル半導体value chainに向けた確認が成されており、あとは今後の実行である。

◇SIA Welcomes Progress at U.S.-China Meeting on Semiconductor Issues (11月24日付け SIA Blog)
→SIAは本日、自国の半導体業界を大きく拡げていく活動の継続にさらに光を投じていく中国政府によるcommitmentsを歓迎の旨。今週の米中Joint-Committee on Commerce & Trade(JCCT)会合にて、中国は自国の半導体業界への投資は市場ベースであり、政府の介入には無縁としている旨。Office of the United States Trade Representative(USTR)のSecretary of Commerceが主導するJCCTは本日、中国広東省広州市でのannual meetingsを終えた旨。中国は、自国National Integrated Circuit(IC) Industry Investment Fundに$21 billion超を投資しており、各地域&都市が他に約十数の同様なIC業界投資ファンドを発表している旨。SIAは、健全なグローバル半導体value chainの維持に市場の力および政府介入制限が重要、と長らく強調している旨。該JCCTでの進展は良い第一歩の旨。

液晶分野での中国の台頭ぶり、そしてインパクトである。

◇中国の液晶台頭に危機感、中国、2018年にも韓国逆転、技術格差も縮小 (11月25日付け 日経)
→液晶パネル市場を創出した日本企業を積極投資で抜き去った韓国勢がいま、中国メーカーの挑戦を受けている旨。地域別の液晶パネル生産能力は2018年には中国が韓国を抜いて世界トップになる見通し、液晶パネルのシェアで世界一のLGが有機ELに注力するのは危機感の表れの旨。

Tsinghua Unigroupは、韓国・SK Hynixにもアプローチしたが拒絶されているという動きも見られている。

◇Like Micron, SK Hynix Rejects Chinese Advances (11月26日付け EE Times)
→韓国のメモリ半導体メーカー、SK Hynixが、中国の国家が支援するTsinghua Unigroupからの出資申し出を拒絶の旨。台湾現地メディア報道によると、中国でNANDフラッシュメモリを作るウェーハfabを建設する条件で、Tsinghua UnigroupがSK Hynixの20%を約$5.3 billionを買うとした旨。Barron's Asiaの記事では、SK HynixがTsinghua Unigroupからの申し出を受けたと確認している旨。

◇Tsinghua Unigroup seeking investment in SK Hynix, says report (11月27日付け DIGITIMES)
→中国のITHome.com発。国家が支援するハイテクconglomerate、Tsinghua Unigroupが、韓国・SK Hynixにおけるstakeを約CNY30 billion($4.7 billion)で買収する意向の旨。

中国側の人材引き抜き攻勢に対して政府に対策を求める台湾業界となっている。

◇TEEMA urges Taiwan government to take action on China hostile headhunting (11月26日付け DIGITIMES)
→Taiwan Electrical and Electronics Manufacturers' Association(TEEMA)が、中国企業の敵対するヘッドハンティングに対して対策をとるよう台湾政府に督促、台湾メーカーが多くの無形資産を失っている旨。

以上、アップル、そして中国が引き起こしている現状のグローバルな激動を見てきたが、以下半導体業界におけるあまりにも大きな変化の受け止め方の1つである。

◇The Pain Of Change-Why the semiconductor industry needs less rigid walls and a new roadmap.-Viewpoint: Change is good, but change is painful (11月24日付け Semiconductor Engineering)
→以前には見られなかった規模、そしてやり方で、半導体業界に変化が起きている旨。今違うのは、変化が今までよりも素早く起きていること、そしてより多くの場所および多くの市場で起きていること、の旨。


≪市場実態PickUp≫

【GlobalFoundriesの売却話】

AMDの製造部門をAbu Dhabi政府が買収して始まっているGlobalFoundriesは、IBMの半導体製造部門を買収して加えたばかりであるが、その一部あるいは全部について売却に向け買い手候補との話し合いに入っている、と以下の通り表わされている。いくつか候補の取り沙汰が見られるが、真相および今後の成り行きに注目である。

◇Samsung might be ideal buyer if GlobalFoundries is sold (11月24日付け Albany Times Union)
→Bloomberg News発。Abu Dhabi政府が、MaltaのFab 8 computer用半導体工場などGlobalFoundriesの売却を模索している旨。本当であれば、韓国のSamsungが最もフィットする可能性の旨。Bloombergは$15 billion〜$20 billion規模の売却としている旨。GlobalFoundries(Santa Clara, Calif.)は、国営Abu Dhabi投資ファンド、Mubadala Development Co.がもっている旨。

◇Report: GlobalFoundries may be on the block (11月24日付け Poughkeepsie Journal)
→New York州地区の同社従業員は、Maltaが約3,500人、East Fishkillが約2,000人の旨。

◇GloFo Sale: Report Says Abu Dhabi Holding Talks (11月26日付け EE Times)
→匿名筋引用、Bloomberg発。Abu Dhabi政府が出資する投資ファンド、Mubadala Development Co.が、Globalfoundries社の全部あるいは一部について可能性のある買い手と話し合いをもっており、進めば$15 billionあるいは$20 billionの可能性としている旨。9月に遡って、中国の国家IC投資ファンドに奉仕するHua Capital ManagementがGlobalfoundriesに協力の可能性を巡って接近、と伝えられた旨。

【M&A案件の各国・地域の承認状況】

NXP Semiconductors N.V.のFreescale Semiconductors Ltd.買収について、韓国は承認するとともに、米国でも1つのハードルがクリアされている。

◇FTC conditionally OKs merger between global chip firms-Korean commission greenlights NXP-Freescale merger, with conditions (11月23日付け The Korea Herald (Seoul))
→韓国のantitrust watchdog、Fair Trade Commission(FTC)が月曜23日、NXP Semiconductors N.V.のFreescale Semiconductors Ltd.買収を承認、該取引は同国における公正な市場競争を妨げないとしている旨。

◇NXP, Freescale Merger Clears FTC Hurdle (11月26日付け EE Times)
→NXP Semiconductors NV(Eindhoven, The Netherlands)が、同社RF power amplifier事業の中国国家傘下Jianguang Asset Management Co. Ltd.への売却についてCommittee on Foreign Investment in the United States(CFIUS)からの認可を受けた旨。該売却は、Federal Trade CommissionがNXPのFreescale Semiconductorとの合併について置いている条件である旨。

また、Avago Technologies LimitedによるBroadcom Corporationの買収について、欧州委員会が承認している。

◇Mergers: Commission clears Avago's acquisition of Broadcom (11月25日付け ELECTROIQ)
→European Commission(EC)がEU Merger Regulationのもと、Avago Technologies LimitedによるBroadcom Corporationの買収を承認、両社ともに半導体のグローバルメーカーの旨。ECは、該合併entityが引き続き欧州で実効性のある競争に直面していくと結論づけの旨。

【入札競争の結末】

光ストレージ&通信用半導体メーカー、PMC-Sierra社を巡る買収は、Skyworks Solutions社が先行、Microsemi社が後追いする展開となったが、結局Microsemi社が買収する形になっている。SkyworksはPMCから解約金を受け取る一方、Microsemiの株価は買収合意後下がる動きを示している。

◇Microsemi to Buy PMC-Sierra In Deal Valued at About $2.5 Billion-Skyworks withdraws bid for PMC-Sierra; Microsemi to buy PMC-Sierra for $2.5B (11月24日付け Bloomberg)
→Microsemi社が、ネットワークdrives用半導体メーカー、PMC-Sierra社を巡る1ヶ月に及ぶ入札競争に終止符、PMC-Sierra社の約$2.5 billionでの買収に合意後、同社株価が7か月ぶりの下げ幅となった旨。

◇Microsemi to buy PMC-Sierra in $2.5 bln deal as Skyworks bows out (11月24日付け Reuters)

◇Microsemi Sees off Skyworks to Win PMC-Sierra (11月25日付け EE Times)
→Microsemi社(Aliso Viejo, Calif.)が、光ストレージ&通信用半導体メーカー、PMC-Sierra社(Sunnyvale, Calif.)を買収する合意に入った旨。これまで入札していたSkyworks Solutions社(Woburn, Mass.)は、同社のPMC-Sierraを買収する合意は終結となり、PMCから$88.5 millionを受け取ると発表の旨。mixed-signal半導体メーカー、Microsemiは、約$2.5 billionでPMCを買収、cashおよび株式の取引の旨。

【三次元半導体実装技術関係】

三次元半導体実装のビジネス展開が見えてきて、台湾の半導体業界に製造装置含め光が当たってくるのでは、という期待感の見方である。

◇Growth of 3D IC technology May Shed Light for Taiwan Semiconductor Industry (11月20日付け CTIMES)
→3D IC技術の活況が見えていて、台湾のend-use製品ベンダーは量産対応に適うようにどうしてもコスト削減(装置、原材料も同様に)の必要があり、TSMCがその例の1つである旨。CoWoSプロセスに加えて同社は、量産コストを下げるためにInFO 3D実装技術を開発の旨。high-endプロセスと違って3D ICに向けた該技術ノードはμmレベルであり、台湾の装置ベンダーが開発競争力を発揮できる旨。それ故、3D IC技術の伸展は台湾ベンダーが該市場における海外ベンダーの席巻を打ち破る助けになる旨。

本格的な三次元半導体実装に至る前の現実的な解として、TSMCが推進しているfan-out実装に、下記の通り弾みがついてきている。

◇Fan-Out Packaging Gains Steam-Systems companies migrate from board to ultra-thin package for next-gen smartphones.-Thinness of fan-out packaging attracts Apple, others (11月23日付け Semiconductor Engineering)
→Appleはじめ半導体設計メーカーが、package-on-package(PoP)技術から切り換えて、wafer-level fan-out実装の使用に惹かれている旨。アナリストは、TSMCがiPhone 7に入るA10 applicationプロセッサに向けてfan-out実装を用いている、としている旨。

Samsungは、TSV(Through Silicon Via:貫通電極)技術を駆使、世界初の128GBのDRAMモジュール量産を発表している。

◇Samsung starts mass production of 128GB DDR4 modules for enterprise servers (11月26日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsが、業界初、enterpriseサーバおよびデータセンター向け128GBモジュールでのTSV DDR4メモリの量産を発表、該128GB TSV DDR4 RDIMMは、全体144個のDDR4半導体から成り、36の4GB DRAMパッケージに配列され、各々先端TSV実装技術で組み立てられた4個の20nm-ベース8Gb半導体が入っている旨。

◇世界初、128GBのDRAMモジュール量産…サムスン15カ月ぶり「メモリ半導体神話」更新 (11月27日付け 韓国・中央日報)
→サムスン電子が「小さくして(微細工程)、積み重ねて(3次元技術)、突き抜ける(TSV、シリコン貫通電極)」各種の新技術を前面に出し、メモリ半導体の限界に挑戦している旨。今度はチップを積み重ねた後にこれらの間を突き抜けて電極につなげるTSV技術によって業界最大容量の128ギガバイト(GB)のDRAMモジュールを開発、このモジュール1つでフルHD級(1080p)映画15本を一度に処理できる旨。特にこの技術で製造したDRAMモジュールは従来のワイヤーボンディング(Wire Bonding、電気線の連結)方式の製品よりもスピードが速く、消費電力は半分に過ぎない旨。

【wearableアップデート】

wearable関連イベントで見られるstart-ups各社の取り組みの例である。

◇Meet The Startups From Wearable World Accelerator (11月24日付け EE Times/Slideshow)
→先週のWearable IoT World Labs(SAN FRANCISCO)のfall demo dayにて、wearableおよび車載の世界の8社が出展、以下の例:
 TheraBraceletのIgnite bracelet
 クルマの活動をモニターするCarfit
 NuhearaのIQbuds…ノイズキャンセル、補聴

◇Promising start-ups take on wearable world (11月26日付け EE Times India)

米国の感謝祭のお休みに向けて、一般の目を最も引きそうなwearable製品トップ10が挙げられている。

◇Saleable Wearables: A Surprising List-What the public wants (11月25日付け EE Times)
→Argus Insights発。今年の感謝祭(Thanks Giving Day)の買い物で最も流行りそうなwearable製品トップ10:
 1. Lumo Lift Posture & Activity Tracker
 2. Fitbit Charge HR(heart rate)
 3. Microsoft band
 4. Samsung Gear Fit
 5. Garmin Vivofit
 6. Fitbit Zip
 7. Jawbone Up4 HR
 8. Garmin Fitbit Charge
 9. Garmin Vivosmart
 10.Withings Activite Pop


≪グローバル雑学王−386≫

国際エネルギー市場の劇的変化の中、日本の歩むべき道とは?、を探る書、

『国際エネルギー情勢と日本』
 (小山 堅・久谷 一朗 著:エネルギーフォーラム新書 034) …2015年9月11日 第一刷発行

を、今回から読み進めていく。身近には、ガソリンスタンドの表示価格で日々の動きを知る一方、ニュース報道では、原子力発電の是非が問われ続けている現状がある。エネルギー自給率が極端に低い我が国のエネルギー安全保障の重みを捉えて、まずはその歴史、次に福島原発事故がもたらした変化、そしてグローバルな最新のエネルギー情勢を理解することの重要性に迫っていく。


≪はじめに≫

・本書ができるだけ分かりやすく試みる解説
 →大きく変化しつつある国際エネルギー情勢の全体像
 →日本がどのような立ち位置に、どのような対応策をとるべき
・日本は、中国、米国、ロシア、インドに次ぐ世界第5位のエネルギー消費大国
 →現在の日本のエネルギー自給率は6%、世界の主要国の中で最低レベルの低さ
・大きな、そして激しい変化や流動化が目につく国際エネルギー情勢
 →国際エネルギー市場に劇的な変化をもたらす「ゲームチェンジャー」、米国のシェール革命の例
 →アジアにシフトしてきている世界のエネルギー市場の重心
・世界の石油・天然ガスの供給基地、中東
 →「アラブの春」以降も引き続き不安定な状況
・ウクライナ問題の深刻化
 →ロシアと欧米の関係には高まる緊張感
 →欧州の脱ロシア依存:ロシアの「東方シフト」(アジアに重点)
・原油価格が2014年後半から急落
 →産油・ガス国経済に対して深刻なダメージ
・日本国内での対応
 →2014年、長期エネルギー戦略、「エネルギー基本計画」が閣議決定
 →2015年6月、2030年の電源構成で、原子力20〜22%、再生可能エネルギー22〜24%などのシェアを目指す政府案
・大事なのは、世界の、そして日本のエネルギー情勢について、全体像をしっかりつかむこと
 →できるだけ正確で最新の状況についての情報を頭に入れること
・本書では、世界のエネルギー情勢を幅広く、主にエネルギー安全保障の視点から考察

第一章 日本のエネルギー安全保障の現状と課題

■エネルギー安全保障とは
・1次エネルギー供給の構成
 ※1次エネルギー供給…自然から得られた加工される前のエネルギー源のこと
 →我が国のエネルギーは、石油・石炭・天然ガスを中心とする化石エネルギーをベースに、原子力や水力などによって賄われている
・日本のエネルギー自給率はわずか4%程度
 →エネルギーの必要な量を、合理的な価格で確保することが必要
  →"エネルギー安全保障"
・特定の国に多くのエネルギー源を依存することを避ける:特定のエネルギー源に依存しない
 →"エネルギー源の分散化"が重要に

■日本のエネルギー安全保障政策の歴史
・戦後の復興期
 →石炭が主力、石油がそれを補完 …"炭主油従"
 →1960年時点、エネルギー自給率は60%程度も
・高度経済成長期
 →エネルギー消費も年率10%を超える水準で爆発的に増加
 →安定確保に加えて、エネルギー価格の低廉化が目標に
・より安価であった石油の利用への傾斜
 →1962年、日本のエネルギー供給において、初めて石油が石炭を抜き首位に
・1970年、1次エネルギー供給の70%を石油に依存する状態に
 →エネルギー自給率も15%程度まで低下
・ついに、リスクが顕在化する事態が発生
 →1973年の第1次石油危機
  →石油供給の途絶による国内産業の混乱を予想、トイレットペーパーの買い占めが発生するなど大混乱に
 →1979年の第2次石油危機
  →欧米諸国では第1次石油危機を上回る大混乱、一方、日本ではさまざまな対策が講じられていて、大規模な混乱には至らず
・実際に、日本がどのような対策を講じてきたのか、4点の目標
 →・石油依存度の低減と非石油エネルギーによるエネルギー源の多様化
  ・石油の安定供給の確保
  ・省エネルギーの推進
  ・新エネルギーの研究開発
・1979年に省エネ法が制定
 →今では日本の省エネルギーへの取り組みは世界でもトップクラス
・石油供給の途絶に備えて石油を備蓄する措置も
 →東南アジア等、中東以外の地域から調達する動きも活発化
・1980年、石油代替エネルギー法の制定
 →「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の設立
・発電構成を多様化することを目的に、天然ガス火力や原子力の導入が加速化
 →米国や東南アジアから、天然ガスを液化した液化天然ガス(LNG)の形で輸入
 →中東地域以外の多くの国から調達が可能
・原子力の利用も増加
 →"準国産エネルギー"として積極的に開発
 →特に原子力の建設地域には手厚い支援、原子力の開発に寄与する結果に
・上記の通り、電力供給の多様化を実現させるには20年から30年の歳月を要している
 →長期的な視点のもとに実現に向けて工程をしっかりと立てていくことが必要

■福島第一原子力発電所事故がもたらした変化
・2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故
 →これを境に、日本のエネルギー情勢は大きく変化
 →事故以降に定期点検に入った原子力発電所は、安全性が確認されるまでは再稼働ができない状況
・2015年7月現在、すべての原子力発電所が停止している状況
 →以前は日本の発電電力量の約30%が原子力、日本は震災後に30%の電源を失っているといってもよい状況
・対応する措置として、まずは大規模な節電、そして火力発電による不足代替
 →石油およびLNG火力の発電電力量の増加
 →電力会社が不測の事態に備えて予備の発電所を確保、エネルギー安全保障の強化に貢献
・震災後の2012年度には発電電力量の90%が火力発電
 →大部分を化石エネルギーに依存、石油危機時と同じようなリスクを抱えていることにほかならない
・増加した火力発電電力量の多くはLNG火力
 →生産余力のあるカタールからのもの、再び中東地域への依存度が高まっている
 →輸送の航路であるホルムズ海峡、欧米とイランを巡る対立のように、常に封鎖されるリスクを抱える
・2010年に策定されたエネルギー基本計画
 →地球温暖化対策の観点から、原子力発電の利用を拡大する方針
 →現在は、火力発電で代替、地球温暖化対策の面でも大きな課題
・震災を契機に再生可能エネルギーの導入を増やす動きも加速
 →太陽光や風力といった再生可能エネルギー電源により発電した電力に、「固定価格買取制度」を導入
 →安定供給とコストとのバランスを踏まえながら考えていくことが必要
・現在の発電から送配電・小売りまでを地域の電力会社が担う体制を大きく変える電力システム改革が進んでいる
 →送電の管理を電力会社の枠を超えて行う組織の設立
 →すべての人が電力供給会社を選択可能 …小売りの全面自由化
 →発電と送配電部門の分離

■日本の課題
・福島第一原子力発電所の事故が発生、再び化石燃料への依存度が高まった
 →揺らぐエネルギー安全保障
・海外で起こっている変化を見据えて、日本のエネルギー安全保障を向上させるための措置を講じていく必要
 →他の国の先行事例から、日本が学べることも多い

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