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環境、安全から自動運転に至るまで車載用半導体を巡る活発な動き

高信頼、車載規格、カーエレクトロニクスと、時間軸を遡って車載用半導体を巡るキーワードが浮かんでくる。暑さ、寒さの極限の環境のもとでの動作に耐えなければならないということで、特に低温、-40℃保証の選別検査に奮闘したころを思い出すところがある。最近の車を目にすると、あまりにも多くの機能の説明に驚かされ、モバイル機器を使いこなせない状況に通じるところである。メモリ、マイコン、センサはじめ車の電子化を支える最新の技術、取り組みが数多く目に入ってきて、現時点のアップデートである。

≪改めて見る急速な電子化≫

最新の自動車工場の生産ラインの例を以下から目にしている。

◇Slideshow: BMW's Hybrid EVs (10月26日付け EE Times/Slideshow)

→できてまだ5年、未来派の外観のBavarian Motor Works(BMW)のLeipzig, Germany工場で作られているgreen plug-in hybrid electric vehicles(EVs)の生産ライン見学。2年の5-ドアhatchback、i3($40,000)および1年のsupercar 2-ドアcoup、i8($140,000)など。以下下記参照。
http://www.eetimes.com/document.asp?doc_id=1328110

車載用半導体の現時点の取り組みを見ていくと、まず、Broadcom社のEthernetスイッチが次の通りである。

◇Broadcom Rolls 100Mbit Auto Ethernet, Gigabit Later (10月27日付け EE Times)
→BroadR-Reach標準の発明元、Broadcom社が、同社第2世代車載Ethernetスイッチportfolioを展開、28-nmプロセス技術により設計の旨。その結果、"世界最小で最もパワー効率の良い"車載Ethernetスイッチが得られている旨。

Infineonからは、セキュリティに向けたアプローチが表わされている。

◇Infineon Throws Hat into Automotive Security Ring-"gradual transition to electric drives" (10月27日付け EE Times)
→ELIV automotive electronics congress(ドイツ・Baden-Baden)にて、InfineonのAutomotive Systems、vice president、Hans Adlkofer氏。車載electronicsとなると、パワーデバイスで最もよく知られる同社であるが、洗練された制御ロジックも非常に活発な取り組み、セキュリティsensitive応用に向けて大きなノウハウがある旨。

Texas Instruments(TI)の3-D surround-view用のSoCは、高級車から一般車にもっていくとのことである。

◇TI to Bring 3-D Surround-View to Entry-Level Cars-TI debuts ADAS SoCs, offering 3D views for more vehicles (10月27日付け EE Times)
→Texas Instruments(TI)が、最新車載system-on-chip(SoC)ファミリーを投入、3-D surround-view応用を高級luxury categoryからentryおよびmid-level車にもっていく活動の旨。該新プロセッサ、TDA2Ecoは、TIのSoCsのAdvanced Driver Assistance System(ADAS)ファミリーと同じアーキテクチャーを用いて設計されている旨。

車といってもこんどはレーシングカーであるが、Qualcommが、走行データのWi-Fi経由伝送に成功している。

◇クアルコム、レースカーの走行データをWi-Fi経由で伝送成功 (10月27日付け 未来生活)
→クアルコムとメルセデスAMGペトロナスF1チームは、米国時間10月23〜25日に開催された「FIAフォーミュラ・ワン世界選手権アメリカGP」の練習走行セッションにおいて、レースカーの走行データをWi-Fi経由で伝送することに成功と発表の旨。クアルコムと同F1チームは、5GHz周波数帯のWi-Fiを利用することで、タイヤカメラの映像をはじめとする走行データをワイヤレス伝送、これまでデータの取得にはケーブル接続が必要だったため、大きな進歩といえる旨。

◇Qualcomm Speeds Data Transfer in F1 Racing Cars (10月28日付け EE Times)

車載用のメモリ&ストレージ製品はさらに拡大する市場となっており、各社の製品アピールがまとめられている。

◇Automotive Memory Market in High Gear (10月28日付け EE Times/Slideshow)
→Databeans発。車載半導体市場が、今年$28.5 billion、2020年には$40 billionに達する見込み、assisted-driving systems, built-in GPS, satellite radio menus, vehicle-to-vehicle communicationsなどinfotainmentシステムなど今日のクルマに入るelectronicコンテンツ量の増大がある旨。よりsmartでconnectedな需要に対応するメモリ&ストレージについて、以下の内容:
 MicronのXTRMFlash …現在のparallel NORに対しピン数75%減
 Micronの車載LPDDR4 …-40 to 95°Cの温度範囲
 Samsungの12GビットLPDDR4モバイルDRAM …車載使用可
 CypressのSRAM …車載の電力消費&サイズに適合
 CypressのFRAM …車載event data recorders(EDRs)に用途
 CypressのHyperRAM …少ない12ピン、21x21 BGAと小型
 Silicon MotionのFerriSSD …小型BGA、長寿命
 SanDisk Automotive iNAND embedded flash drive …eMMC 4.51 HS200仕様
 SK Hynixの車載用メモリ製品…LPDDR4, DDR3, DDR2およびeMMCなど広範囲

注目の自動運転について、水準の定義が分かれている現状があるとのこと。
人間に代わる、代えられる段階の考え方が表わされている。

◇12 Steps of Recovery from Self-Driving Car Hype (10月29日付け EE Times)
→以下の12段階の項目内容:
 1.Stop being so gullible
 2.The premature extinction of the driver
 3.Nailing down HMI
 4.Keep an eye on the driver
 5.Black box needs to be defined
 6.Privacy
 7.Who's at fault?
 8.Car as a service
 9.Programming ‘brand signature’
 10.V2X
 11.Autonomous cars behaving like humans?
 12.New drivers education

時あたかも東京モーターショーの開催である。概要が以下の通り表わされている。引き続きじっくりとアップデートを要する領域、車載用半導体という認識である。

◇東京モーターショー、自動運転・環境など競う (10月29日付け 日経 電子版)
→第44回東京モーターショー2015が29日、東京ビッグサイトで開幕、世界の自動車メーカーが、燃料電池車(FCV)や自動運転など最新の技術を搭載した自動車を発表する旨。以下の項目内容:
 ■環境配慮、一段と
 ■自動運転、周辺技術も進化
 ■コンピューターが運転支援
 ■コンセプト車も続々


≪市場実態PickUp≫

【東芝の画像センサ事業、ソニーへの売却】

東芝が、事業再構築の一環として、画像用半導体、すなわちCMOSイメージセンサ事業を、この分野の最大手、ソニーに売却する動きが、以下の経緯で見られている。

◇Toshiba to sell image sensor production line to Sony (10月24日付け The Japan Times)

◇Sony Near Deal to Buy Toshiba Sensor Business-Sources: Toshiba may sell image-sensor unit to Sony (10月25日付け Nasdaq.com/Dow Jones Newswires)
→東芝が、イメージセンサ部門をソニーに売却する合意間近、大分工場売却は、東芝のモバイル機器用イメージセンサ事業からの撤退となる旨。

◇Toshiba to downsize semiconductor business (10月26日付け Forex Report Daily)

◇Sony CEO aims to build on recovery with Toshiba sensor deal (10月26日付け The Japan Times)
→ソニーは、スマートフォンの画像を捉える半導体製造において支配的な位置の拡大を図っていく旨。

◇Toshiba to Sell Image Sensor Unit to Sony (10月27日付け EE Times)
→Reuters、匿名筋発。東芝が、イメージセンサ事業を約200億円($164.69 million)で売却の旨。

交渉の中身が以下の通り表わされている。

◇ソニーへ最大1100人、東芝、事業売却で転籍協議 (10月27日付け 日経)
→東芝がソニーと売却に向けて大詰めの交渉に入っている大分工場(大分市)の画像用半導体事業について、工場全体の人員のうち約4割に相当する最大1100人をソニーに転籍させる方向で協議していることが26日、分かった旨。東芝はシステムLSIなど半導体事業の一部や白物家電などを課題事業と位置付け構造改革の具体策作りに乗り出している旨。

◇Toshiba to sell sensor business to Sony, overhaul chip unit-Toshiba says it will restructure chip business, sell image-sensor plant (10月28日付け Reuters)
→東芝が、儲からない半導体事業を再構築、日本のイメージセンサ工場をソニーに売却、白色LEDs製造を止める旨。ソニーとの取引は、4月までに完了の見込み、約$166 millionの旨。

◇Sony and Toshiba sign MOU for transfer of certain semiconductor fabrication facilities (10月28日付け DIGITIMES)

◇東芝、画像センサ事業から撤退、ソニーに設備売却 (10月28日付け 日経 電子版)
→東芝が28日、スマートフォンなどに使う画像センサ事業から撤退すると発表、大分工場(大分市)の直径300-mmウェーハラインはソニーに売却する旨。製造や設計を担う従業員、約1100人はソニーに転籍する調整に入る旨。経営再建を急ぐ東芝は設備売却を伴う本格リストラに着手、ソニーは画像センサで世界首位の座を固める旨。

◇東芝、半導体改革メド、センサ、ソニーに売却発表、白色LED、年度内に撤退、家電が次の焦点に (10月29日付け 日経)

【半導体業界M&A関連】

SeagateによるSamsungのHDD事業買収について、中国政府が承認している。
両社の取引合意から4年の時間経過となっている。

◇Seagate gets the go-ahead on Samsung integration-China clears Seagate's acquisition of Samsung's HDD business (10月23日付け Bit-Tech.net)
→Chinese Ministry of Commerceが、Seagate TechnologyによるSamsung Electronicsのhard-disk drive(HDD)事業買収を承認、両社が該$1.375 billion取引に合意して4年になる旨。該提案取引の完了で、SamsungはSeagateにおける10% equity stakeを得る旨。

半導体業界のM&Aがまだこの先続くとともに、インパクトもこれからという見方が表わされている。

◇Chip Mergers, Impacts Still Ahead-Analysis: What lies ahead after all the big mergers? (10月26日付け EE Times)
→半導体業界の統合は終わりには程遠く、雇用および半導体pricingに対するインパクトの大半がまだ先に控えている旨。エキスパートには、メモリおよびストレージからnetworking, プロセッサ及びアナログに至る分野での合併がさらに見えている旨。

確かにM&Aの動きは引き続いており、まずはIDTによるZMDI買収の合意である。

◇IDT to Buy ZMDI for $310 Million-Deal is expected to close by end of the year and add $20 million of revenue each quarter, increase profit-IDT makes $310M deal to buy German chip company (10月26日付け The Wall Street Journal)
→Integrated Device Technology(IDT)社が、同業半導体メーカー、Zentrum Mikroelektronik Dresden AG(ZMDI)を$310 millionで買収することで合意に達し、成長する車載および産業用ビジネスで足場を得る旨。

◇IDT to Acquire ZMDI for $310 Million (10月27日付け ELECTROIQ)

◇IDT to buy ZMDI for India Rupee 1.9 crore (10月28日付け EE Times India)

噂段階ではあるが、STMicroによるFairchild買収検討の動きである。

◇STMicroelectronics Said to Weigh Bid for Fairchild Semiconductor-Sources: STMicroelectronics could make an offer to buy Fairchild Semiconductor (10月28日付け Bloomberg)
→本件事情通発。欧州最大の半導体メーカー、STMicroelectronics NVが、ディジタル製品事業の伸びを高めて支えていこうと、FairchildSemiconductor International社への買収入札を検討している旨。

同じく、TIがMaxim Integratedを買収する交渉に入っているとのことである。

◇Texas Instruments Said in Talks to Acquire Maxim Integrated-Report: TI approaches Maxim (10月28日付け Bloomberg)
→本件可能性の情報筋発。Texas Instruments(TI)が、Maxim Integrated Productsとの買収取引の交渉を行っている旨。Maximのmanagement側は、premiumが高くなければ同意しない可能性の旨。TIおよびMaximは本件にコメントしていない旨。

◇Reports: TI, STMicro to add to semiconductor acquisitions spree (10月30日付け ELECTROIQ)

中国の買収を進める大元、Tsinghua Unigroupに引き抜かれたInoteraのchairman、Charles Kau氏について、Inoteraでは変わらず留任が確認されている。

◇Charles Kau remains Inotera chairman, says company CFO (10月28日付け DIGITIMES)
→10月27日のinvestors conferenceにて、Inotera MemoriesのCFO、Peter Shen氏。中国のTsinghua UnigroupによりヘッドハントされたCharles Kau氏は、依然Inotera Memoriesのchairmanであり、該postに変更もない旨。

今回の最後として、上記のTsinghua Unigroupによる台湾のPowertech買収が発表されている。

◇China to take 25% Stake in Taiwan's Powertech (10月30日付け EE Times)
→グローバル半導体市場への道筋を買収する中国の活動の継続、Tsinghua Unigroupが、台湾のPowertech Technologyにおける25% stakeを$600 millionで買収していくと発表の旨。Powertechは、先端組立&テストサービスのkeyプレーヤーであり、該取引はTsinghua UnigroupをPowertechの最大株主にする旨。両社はこの発表を10月30日に行ったが、なおPowertech株主および関連法制当局による承認を必要とする旨。

【Oracle OpenWorld conference】

Oracleのイベント、Oracle OpenWorld conference(San Francisco)について目に入った動きが以下の通りである。同社が2010年にSun Microsystemsを吸収合併して以降最大のSparcラインプロセッサの発表が行われている。

◇Oracle Aims To Sparc Sales with New Chip-Oracle looks to new M7 chip to boost sales of Sparc servers (10月26日付け NewsFactor Network)
→Oracleが月曜26日、Oracle OpenWorld conference(San Francisco)にて、SparcラインにM7プロセッサを投入、Sparc-ベースサーバの販売高を上げるために該半導体のソフトウェアcapabilitiesを謳っている旨。

◇Oracle just made its biggest Sparc announcement since buying Sun (10月26日付け CIO.com/IDG News Service)

◇Oracle Hedges Server Bets-Company targets open and proprietary systems with OpenWorld announcement (10月28日付け EE Times)
→Oracleが、今週のOracle OpenWorld conference(San Francisco)にて、5つの新しいサーバおよびIntelとの個別のサーバ連携を披露、該新サーバは、同社最新SPARC M7 microprocessor(MPU)ベース、一方該連携は、IBMが好んでいるmission criticalシステムを狙っている旨。

【GAMS】

世界の半導体業界は、WSC(世界半導体会議)を日米欧中韓台の6極持ち回りで毎年開催しており、そこで決まった結果や要望を各地域の政府に送り、それを受けた政府が政府/当局間会合(GAMS)を毎年開催し、議長声明を出している。今年で第16回を迎えたGAMSが、以下の通り表わされている。

◇Semiconductor Leaders Collaborate with Governments to Advance Free Trade-SIA co-hosts annual meeting of industry and government leaders from across the globe; significant progress made on range of initiatives to spur growth and open markets (10月26日付け SIA Press Release)
→第16回annual Governments/Authorities Meeting on Semiconductors(GAMS)が先週、Semiconductor Industry Association(SIA), the Office of the U.S. Trade Representative(USTR), およびDepartment of Commerce(DoC)の共催でSan Franciscoにて開かれ、世界中から半導体業界leadersが政府側とともに会合、米国そして世界中の半導体、electronicsおよびハイテク業界を強化する一連の国際通商initiativesを取り巻く政策提言について議論、合意に達した旨。GAMSは、中国、Chinese Taipei, European Union(EU)、日本、韓国および米国からの政府当局から成り、半導体業界へのグローバルな重要問題への対応で業界leadersと毎年会合、協働している旨。

【韓国半導体の切迫感】

韓国での半導体に関する論調から2件。中国のグローバル半導体に向けた国家計画に沿う攻勢が強まっているなか、IEDM(国際半導体素子学会)での論文数で中国に大きくリードされたという危機感である。10月29日が韓国では「半導体の日」とのこと。重みを表わすところとなっている。

◇半導体の論文、韓国13・中国26…脅威を受ける1位 (10月29日付け 韓国・中央日報)
→韓国の輸出1位品目である半導体産業が、中国からの激しい挑戦を受けている旨。資金力を前面に出した中国は、買収合併(M&A)を通じて韓国の主力産業であるメモリ半導体市場に参入、半導体の未来の技術を見通せる学術誌の論文数ではすでに中国が韓国を圧倒している旨。このままでは韓国の半導体産業の未来が暗いという懸念が出てくる旨。
業界と学界によれば28日、昨年のIEDM(国際半導体素子学会)の学術誌に掲載された論文のうち中国の学者や企業家が作成した論文は26本で、韓国(13本)の2倍だった旨。

29日は第8回半導体の日。半導体輸出が100億ドルを達成した1994年10月29日を記念して政府が2008年に制定した旨。

世界の圧倒的シェアを誇る韓国の半導体メモリであるが、インテルのSSDメモリ、そして中国のDRAM関連買収と安閑としていられない切迫した状況の以下内容である。

◇中国・インテル、メモリ進出…最高利益でも笑えない「半導体の韓国」 (10月29日付け 韓国・中央日報)
→サムスン電子が1993年に世界のメモリ市場1位に上がった後、牙城を守って22年。だが業界を取り囲む雰囲気は穏やかではない旨。韓国が掌握しているメモリ半導体市場に対する中国と米国の挑戦が激しい一方、平沢(ピョンテク)半導体団地の送電線設置反対など内部からも雑音が出ている旨。


≪グローバル雑学王−382≫

最近ではTPPの大筋合意がトップニュースとなったが、そこに至るまでの何年もの経緯、そしてこの合意後も反対の声がなかなか鳴り止まない実態を知らされている。世界を横差しするグローバリゼーションのいくつかの切り口について、

『地図で読む「国際関係」入門』
 (眞 淳平 著:ちくまプリマー新書 239) …2015年8月10日 初版第1刷発行

より、それぞれの実態を探っていく。仕事の時差分業、金融危機の波及、感染症の拡大、といずれも我々の生活に身近に関わってくる内容であり、実態把握に取り残されてはならないところである。

第6章 グローバリゼーション―――その実態を探る

◆急拡大する自由貿易圏
・近年、グローバリゼーションが進展する中、世界の貿易規模が急拡大
・第二次世界大戦に至るきっかけの1つが、各国の築いた「ブロック経済」に
 →戦争終結後まもなく、アメリカを始めとする主要各国は、関税などの貿易障壁を引き下げるための話し合いを開始
 →「関税及び貿易に関する一般協定(GATT)」が誕生
・1995年、GATTに代わり、国際機関、「世界貿易機関(WTO)」が発足
 →加盟国が2015年5月現在、160か国以上
 →合意を、締約国が短期間のうちに成し遂げることは次第に困難に
・代わって近年、活発化している動き
 →同じ地域内で、あるいは地域横断的に、「自由貿易協定(FTA)」などの「経済連携協定(EPA)」を締結
 →こうした協定の規模は、急速に増加
  →1999年以前の段階で77件が、2014年11月時点では266件にまで

◆東アジアでの地域統合
・日本を含む東アジアとその周辺地域でも、自由貿易の促進などに主眼、「地域統合」と呼ばれる動き
 →東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)
  …16か国の間でモノやサービスの貿易自由化、投資の自由化などを進める動き
 →アジア太平洋経済協力会議(APEC)
  …法的な強制力を伴わない、各国政府間の緩やかな協議・協力の場
 →環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)
  …12か国が参加、自由貿易を進めるための取り決め
  →中でも、日本で注目されている分野の代表は、農業の自由化問題
   −「重要五品目」…コメ、麦、牛・豚肉、牛乳・乳製品、サトウキビ
  →関係国の企業が不利を被った場合に、相手国を訴えることができる「投資家対国家紛争解決(ISDS)条項」を問題視する声も

◆自由貿易のプラスとマイナス
・自由貿易伸展のプラスの影響
 →消費者が、商品やサービスをいつでも安く手に入れられるように
 →輸入国側の生産者が、安い輸入品に対抗、必死に努力、結果的にその国の産業が活性化され、国際的な競争力が強化
・一方、マイナスの影響
 →生産者を含む多くの労働者などが、強い競争力を持つ外国との激しい競争の中、生計を立てられなくなってしまう可能性
・先進各国は、例えば2002年時点、年間3180億ドル規模という巨額の補助金を農家に支払い
 →農産物の輸出価格を下げ、途上国の農業は、農産物の輸出価格の低迷という事態に直面、損失を被っている
 →農村を捨て、職を求めてアメリカへの不法移民となる人々も多数

◆帰宅前に海外企業に仕事を頼むと……
・グローバリゼーションが進む中、仕事のやり方にも変化
 →時差を利用、アメリカ企業とインドのIT企業が、インターネット経由で分業、素早く課題に対処したというケース
 →先進国の企業などが、途上国に投資、現地に工場を建てることで、仕事の分業化
  …イタリアのアパレルメーカー→東欧諸国の工場など
  …日本のアパレル企業    →中国や東南アジア諸国などに工場
・企業が、外国の下請け企業などに自社の仕事の一部を肩代わり、自社の商業活動の一定部分を移転
 →「オフショアリング」
 →先進各国での失業率の高さに影響を与えている、とも

◆「世界金融危機」が起きた
・2008年後半、「世界金融危機」と呼ばれる事態が発生
・そもそもの発端は、2007年前半にアメリカで起きた「住宅バブル」の崩壊
 →「サブプライムローン」(低所得者などを対象にした住宅ローン)を返せない人が増え、手放した土地や住宅の価格が急落
 →アメリカの金融市場全体が激震に
 →その影響は、瞬く間に国外にも拡大
・さらに2008年9月、大手投資銀行、リーマン・ブラザーズの経営破綻
 →世界の多くの国で、資金の貸し手がいなくなり、経済のより一層深刻な停滞に

◆密接につながる世界経済
・世界銀行によるグローバリゼーション
 →「世界規模での経済・社会の統合、一体化が進展すること」
・今や、ヒト、モノ、カネ、情報などが、世界中を1つの土俵として、利益の見込めそうな地域・分野に向けて、極めて短期間のうちに移動
 →グローバリゼーションの進展とともに、一体化しつつある領域がさらに拡大

◆金融改革の成功と投機的資金の急増
・金融市場におけるグローバリゼーションの大きなきっかけの1つ
 →1986年にイギリスで行われた「ビッグバン」と呼ばれる金融改革
 →1979年に保守党のサッチャー政権が登場、さまざまな規制撤廃を実施
 →一連の改革でイギリス経済は活性化、強い競争力を取り戻すことに
・1990年代には日本でも、「金融ビッグバン」の実施
・こうした改革で、「投機的な資金」と呼ばれるおカネも急増
・「アジア通貨危機」のきっかけとなった、1997年7月のタイの通貨、バーツの暴落
 →ヘッジファンドが大量の資金を使って、「空売り」と呼ばれる投機的攻撃を仕掛けたことが大きな原因
 →東南アジアや韓国などに深刻な影響
・膨れ上がる投機的な資金
 →グローバリゼーションの1つの結果

◆感染症の拡大
・グローバリゼーションが進むことで、ヒトの流れも急増
 →感染症の急速な拡大の危険性
 →1997年、中国南部で鳥インフルエンザが突然変異
 →2013年末、エボラ出血熱を巡る一連のできごと

□進め続けるグローバリゼーションの中、正負それぞれの側面からその意味を理解、よりよい未来を作り上げていく必要

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