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8月までなんとか世界半導体販売高が最高ペース維持、深まるマイナス

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米国Semiconductor Industry Association(SIA)から月次世界半導体販売高の発表が行われ、今回はこの8月についてであるが、前月7月に続いて前年同月比でマイナス、その幅も増しており、前月比でもマイナスが続く形となっている。それまでの蓄積で本年の年初からの販売高累計は昨年同期を上回り、史上最高を記録している昨年を越える期待は依然残されている。業界最大手の顔ぶれの業績発表も、まだら模様ながら厳しい色合いが濃くなっており、新分野展開の一方M&Aの嵐が引き続く半導体業界の先行きにますます目が離せないところがある。


≪8月の世界半導体販売高≫

米SIAからの今回の発表が、次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
◯8月のグローバル半導体販売高が僅かに減少 …10月5日付け SIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2015年8月の世界半導体販売高が$27.7 billion、前月の$27.9 billionから0.5%の減少と発表した。2015年8月のグローバル販売高は、2014年8月の$28.6 billionを3.0%下回っている。地域別に、Americasの販売高は前月を僅かに上回ったが、2014年8月と比べると幾分低下している。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「グローバル半導体市場は、ここ数ヶ月需要が僅かに軟化しており、通貨切り下げおよび規則的な市場の周期性が合わさって販売高を幾分鈍らせている。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、John Neuffer氏は言う。「最近の市場の鈍い動きにも拘らず、今年の8月までの累計販売高は半導体売上げの最高を記録した昨年の同期を上回っている。」

地域別では、前年同月比でChina(4.4%)は増加したが、Americas(-3.5%), Europe(-12.4%), Japan(-13.0%), およびAsia Pacific/All Other(-2.3%)では減少した。EuropeおよびJapanにおける急減は、1つに米ドルに対する通貨切り下げがある。販売高前月比では、Japan(1.3%)およびAmericas(1.1%)では増加したが、China(-0.3%), Europe(-0.6%), およびAsia Pacific/All Other(-2.1%)では減少した。

【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域
Aug 2014
Jul 2015
Aug 2015
前年同月比
前月比
========
Americas
5.78
5.51
5.58
-3.5
1.1
Europe
3.22
2.83
2.82
-12.4
-0.6
Japan
3.07
2.63
2.67
-13.0
1.3
China
7.80
8.17
8.14
4.4
-0.3
Asia Pacific/All Other
8.73
8.71
8.52
-2.3
-2.1
$28.59 B
$27.86 B
$27.73 B
-3.0 %
-0.5 %
--------------------------------------
市場地域
3- 5月平均
6- 8月平均
change
Americas
5.62
5.58
-0.8
Europe
2.87
2.82
-2.0
Japan
2.54
2.67
5.2
China
8.08
8.14
0.8
Asia Pacific/All Other
9.00
8.52
-5.2
$28.11 B
$27.73 B
-1.3 %
--------------------------------------

※8月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/August%202015%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた業界各紙の反応もそのままの表し方である。

◇Global semiconductor sales decrease slightly in August (10月5日付け ELECTROIQ)

◇Global semiconductor sales decrease slightly in August, says SIA (10月5日付け DIGITIMES)

環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership:TPP)の大筋合意が同日に発表されたが、米SIAも早速に歓迎するステートメントを出している。大統領選挙を控えた米国、特に議会の今後の反応、対応が注目となる。

◇SIA Applauds Landmark Trans-Pacific Partnership Agreement-New rules in TPP will strengthen digital economy, promote semiconductor trade (10月5日付け SIA Press Release)
→Semiconductor Industry Association(SIA)が、米国および世界中でjobsおよび経済成長を促進する広大な通商取引交渉を完結させたことについて、Trans-Pacific Partnership(TPP)協議に関わった12か国を賞賛の旨。
Australia, Brunei Darussalam, Canada, Chile, Japan, Malaysia, Mexico, New Zealand, Peru, Singapore, the United States, およびVietnamの国々が本日、Atlantaでの閣僚会合に続く該取引を発表の旨。

半導体最大手各社の発表がいくつか見られたが、プラス、マイナス入り混じる中身となっている。パソコンの低迷がまず大きく響く一方、スマートフォンはじめモバイル機器も、新製品発表の一方で市場全体の飽和感が強まっている中での今後の推移、そして半導体市場への表れ方を引き続き注視していくことになる。

◇米マイクロン、純利益59%減、6〜8月、DRAM低迷 (10月5日付け 日経産業)
→米マイクロン・テクノロジーが1日発表した2015年6〜8月期決算。売上高が前年同期比15%減の$3.6 billion、純利益が同59%減の$471 million(約565億円)。パソコン販売の世界的な低迷を背景に、半導体メモリのDRAMが伸び悩んだ旨。

◇サムスンが2年ぶり増益 7〜9月期営業益80%増 (10月7日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が7日に発表した2015年7〜9月期連結決算の速報値。売上高が前年同期比7%増の51兆ウォン、営業利益が同80%増の7.3兆ウォン(約7500億円)。市場予想を大幅に上回り、前年実績を上回るのは2年ぶりの旨。半導体の好調に加えスマートフォン事業が最悪期を脱した模様、ウォン安も海外事業の採算改善につながった旨。

◇TSMC 3Q15 revenues rise 3.4% (10月8日付け DIGITIMES)
→TSMCの2015年9月連結売上げがNT$64.51 billion($1.98 billion)、前月比3.8%減、前年同月比13.8%減。2015年1-9月売上げ累計はNT$639.98 billion、前年同期比18.5%増。
TSMCの第三四半期売上げはNT$212.51 billionとなり、NT$211 billion〜NT$213 billionの同社guidance範囲内、同社3番目の四半期figureに達する旨。


≪市場実態PickUp≫

【自動運転技術】

annual Intelligent Transportation System(ITS) World Congress(BORDEAUX, France)の開催もあって、自動運転(autonomous driving:AD)技術を巡るいろいろな切り口での活動、議論が一層活発に行われている。

◇Daimler Tests Self-Driving Truck on Public Highway (10月5日付け EE Times)
→自動車メーカー、Daimlerが、初めての公道でのself-drivingトラック試験運転走行を実施、高い交通密度で知られる直線コース、Stuttgart近くのAutobahn A8で先週行われた旨。該試験運転の乗車メンバーとして、Daimlerのトラック&バス部門のヘッド、Wolfgang Bernhard氏およびBaden-Wurttemberg州のminister president、Winfried Kretschmann氏の旨。

◇Volvo Shows User Interface for Self-Driving Cars (10月5日付け EE Times)
→自動運転(autonomous driving:AD)技術の出現は、運転者とクルマのユーザインタフェースの間の関係が非常に重要になってきて、制御の安全で継ぎ目のない委譲が、いかなる信頼できるAD技術についても礎石となる旨。
この移行をできるだけ容易で直観的にするために、VolvoはIntelliSafe Auto Pilotコンセプトを開発、該自動モードは、ハンドル上の特別に設計されたpaddlesでもって活性化および不作動にされる旨。

◇Semi-Autonomous Vehicles Force Freescale's Hand in Cognivue Buyout-How Freescale is boosting its auto chip portfolio (10月5日付け Electronic Design)
→advanced driver-assistance systems(ADAS)で用いられるイメージプロセッサおよび光センサの需要増が、Freescale Semiconductorがクルマおよびconsumer electronics向けのイメージ認識intellectual property(IP)を開発する CogniVueを買収する背景にある旨。IHS Automotiveの予測では、2020年にクルマに取りつけられるセンサが約83 million個、2012年に使われた数量の5倍以上の旨。

◇Autonomous Cars: 'We Will Have Accidents' (10月7日付け EE Times)
→annual Intelligent Transportation System(ITS) World Congress(BORDEAUX, France)にて、Virginia Tech Transportation InstituteのRichard Hanowski氏。autonomously driven(AD) vehiclesほど早い展開は見たことがないが、閉じたテストtracksおよび保護された環境という現在のテスト条件は非現実である旨。

◇15 Techs, Apps to Steer Automotive Future (10月8日付け EE Times/Slideshow)
→今週のannual Intelligent Transportation System(ITS) World Congress(BORDEAUX, France)にて参加者は、自動運転車に乗車、業界パネルでの議論、connected, electricそしてautonomously-drivenの今後を可能にするのに必要な技術building blocksを目の当たりにするたくさんの機会があった旨。

【SEMICON Europa 2015】

恒例のSEMICON Europa 2015(10月6-8日:Dresden, Germany)の開催。会場がDresdenということで、Dresden University of Technology(TU Dresden)が関係する5G通信、organicデバイスといったキーワードが見られている。

◇Connect at SEMICON Europa 2015 for the Future of Electronics; Opens Tomorrow (10月5日付け SEMI)
→SEMICON Europa 2015(10月6-8日:Dresden, Germany)について。Intel, Microsoft, Infineon, STMicroelectronics, GlobalFoundries, Bosch, ABB, ASML, Applied MaterialsおよびSOITECなど各社が、プレゼンおよびフロア展示で技術開発、戦略および要求を示す旨。

◇5G for Command & Control-Running on Phones Just Sideline (10月6日付け EE Times)
→SEMICON Europa 2015(10月6-8日:Dresden, Germany)での多くの講演者の1人、"5G Man"ことDresden University of Technology(TU Dresden:Germany)でのCommunication Networks講座のヘッド、Frank Fitzek教授について。

◇Organics To Extend Moore's Law-SEMICON Europa touts tech beyond 7nm (10月7日付け EE Times)
→SEMICON Europa 2015(10月6-8日:Dresden, Germany)の今年のテーマはflexible & transparent electronics、そして近くのUniversity of Technology(TU Dresden)も2017年まで政府出資$38 millionを得てorganicデバイスを使用する賭けに約している旨。

【ソニーの半導体事業分社】

ソニーが、CMOSイメージセンサで好調な半導体事業を分社化、来年4月から営業を始めると発表している。特に海外での敏感な反応の見出しを受け止めている。

◇Sony to Spin Off Chip Business (10月6日付け EE Times)

◇Sony to split off fast-growing image sensor business (10月6日付け Reuters)

◇Sony spins off chipmaking business (10月6日付け CNBC)

◇Sony Corp spinning off semiconductor business next year (10月7日付け The Taipei Times (Taiwan)/Bloomberg)

◇ソニーの半導体事業分社、4月に営業開始 (10月7日付け 日経)
→ソニーが6日、画像センサを主力とする半導体事業を分社した「ソニーセミコンダクタソリューションズ」の営業を2016年4月に始めると発表、2017年度までの中期経営計画で打ち出した「分社化の推進」の一環、半導体事業の研究開発や営業、事業管理などを新会社に移管する旨。

【中国の自立化攻勢】

中国の半導体業界、特にDRAM分野の自立化に向けて、マイクロン買収の仕掛け人であるTsinghua Unigroupが、こんどは台湾DRAM業界の人材獲得に動いている以下の経緯&内容である。

◇Inotera chairman reportedly to be hired by Tsinghua Unigroup (10月5日付け DIGITIMES)
→Inotera MemoriesのchairmanおよびNanya Technologyのpresidentの両方を務めるCharles Kau氏を中国のTsinghua UnigroupがDRAM業界分野の構築支援に向けて採用するという噂が、台湾の半導体業界を駆け巡っている旨。この噂によると、Kau氏はTsinghua Unigroupのグローバルoperations、executive VPに指名され、中国国産のDRAM技術および生産capacityの展開を受け持つ旨。Kau氏はまた、中国のDRAM分野に向けた競争力のある人材確保も助ける旨。

◇Commentary: China DRAM industry set to rise (10月7日付け DIGITIMES)
→中国の国家が支援するハイテクconglomerate、Tsinghua Unigroupが台湾のDRAM業界からsenior executive獲得に成功、中国のDRAM業界が大きく一歩前進に向かう旨。Inotera MemoriesのchairmanでNanya Technologyのpresident、Charles Kau氏が、現職を辞めてTsinghua Unigroupに入る見込みの旨。

◇Nanya names new president (10月7日付け DIGITIMES)
→Nanya Technologyの役員会が、2015年10月6日付けでCharles Kau氏のpresident辞任および後任のPei Ing Lee氏president指名を承認の旨。Lee氏はNanyaの前に、IBMで12年間製品開発を担当の旨。

これに対して台湾・TSMCの総帥、Morris Chang氏は、次の通り距離を置いたスタンス&コメントとなっている。

◇No ‘red tide’ at my office window says TSMC head-TSMC founder: China's supply chain won't outpace Taiwan (10月5日付け The Taipei Times (Taiwan)/CNA)
→TSMCのchairman、Morris Chang氏。中国の半導体の"red supply chain"が3年以内に台湾のインフラよりも進んで大きくなっていくという話を却下、「TSMCオフィスの窓からはred tideが見えないし、中国が我々より速く走るのは容易でない」旨。

東芝とSanDiskも買収の視野の範囲という中国の戦略のシナリオ・ステップが次の通り表わされている。

◇Toshiba, SanDisk reportedly among takeover targets of Tsinghua (10月8日付け DIGITIMES)
→業界筋の見方。NANDフラッシュ技術を共同で開発しているSanDiskと東芝がともに、中国国有のTsinghua Unigroupによる買収の標的になっている旨。Tsinghua Unigroupの1部門、Unisplendorは、ストレージメーカー、Western Digitalの約15% stakeを買収する取引に到達、該成果は実際、ストレージデバイス、DRAMおよびNANDフラッシュメモリなど国産の業界を構築する中国の大きな志の一環である旨。Micron Technologyにequity投資を行い、Micronと12-インチ合弁fabを建設する計画が、DRAM分野参入という目標に近づく中国の次のステップである旨。Tsinghua Unigroupは、Micronの10-20% stakeを獲得、Micronとの戦略的連携を形成していく様相の旨。

【引き続くM&A】

毎回のように大型案件が現れてくる昨今の半導体業界M&Aという趣きであるが、今回は兆候が出てすぐに買収合意発表という感じ方があるSkyworksのPMC-Sierra買収である。

◇Report says another chipmaker could be sold, as industry consolidation continues (10月2日付け Silicon Valley Business Journal)
→Bloombergの記事「PMC-Sierra Said to Hire Financial Adviser to Seek Sale」より、PMC-Sierra社(Sunnyvale)の売却の可能性について。

◇Skyworks to Buy PMC-Sierra for $2 Billion (10月6日付け EE Times)
→アナログ半導体ベンダー、Skyworks Solutions社(Woburn, Mass.)が火曜6日、ネットワーク&ストレージmixed-signal ICプロバイダー、PMC-Sierra社(Sunnyvale)を$2 billion in cashで買収する旨。Skyworksは、この買収により製品portfolio、顧客ベースおよびtarget市場が多角化、拡大されるとしている旨。

◇Chipmaker Skyworks To Acquire PMC-Sierra For $2B In Cash-Skyworks to buy PMC-Sierra in $2B deal for Big Data chips (10月6日付け International Business Times)
→Skyworks Solutionsが、PMC-Sierraを$2 billion in cashで買収、製品portfolioにデータストレージおよびnetworking用半導体を加える旨。該取引は、2016年前半に完了予定の旨。

◇Skyworks Agrees to Buy PMC-Sierra for $2 Billion in Cash (10月6日付け Bloomberg)


≪グローバル雑学王−379≫

スペイン東部のカタルーニャ自治州で州議会選(定数135)が投開票され、同州のスペインからの独立を支持する3政党が過半数の72議席を獲得した、という報道が見られたばかりである(2015年9月28日付け YOMIURI ONLINE)。欧州連合(EU)の安定的な発展に向けて抱える問題の一端の表われと見るが、
『地図で読む「国際関係」入門』
 (眞 淳平 著:ちくまプリマー新書 239) …2015年8月10日 初版第1刷発行

よりEUについての後半は、EUの体制、理念を見た後、ギリシアの債務危機、移民問題に絡む右翼政党の躍進、そしてスコットランド、スペインと各地の分離・独立運動といった諸問題の根幹に近づいていく。まさに今時点の問題認識である。


第4章 EU―――壮大な実験が描き出すもの =2分の2=

◆EUの体制
・EUは、28の加盟国が持つ主権の一部を委譲された超国家機関
・中核の4機関
(1)欧州理事会 …EU加盟国の行政の最高責任者と、欧州委員会の委員長によって構成
(2)閣僚理事会 …外務や経済、環境などの10分野:国家に例えると「国会」に相当するとも
(3)欧州委員会 …国家で言えば政府、内閣と行政機関を兼ねたような組織
(4)州議会 …加盟各国における選挙で選出された議員によって構成:
       各議員の多くは、国ごとにではなく、国をまたがる会派・グループごとにまとまって行動
・直近の2014年の選挙結果による議会(全751議席)の内訳
→(1)中道右派キリスト教民主主義系の「欧州人民党」…221議席
 (2)中道左派の社会民主党系の「社会民主進歩同盟」…191議席
 (3)保守党系の「欧州保守改革グループ」     … 70議席
 ・・・
 (7)「自由と民主主義の欧州」          … 48議席
  →移民排斥などを訴え、多くの人々の支持
EUには他にも、「経済社会評議会」、「地域評議会」、
「欧州中央銀行(ECB)」、「欧州司法裁判所」、「欧州投資銀行」、
「欧州会計検査院」など多くの機関

◆政策に理念を反映させる
・EUの在り様、1つの大きな特徴
 →自由、民主主義、法治主義、人権の擁護といった理念を、政策に反映
・EUの経済政策では、「独占」の規制という要素が極めて濃厚
 →巨大企業同士の合併や談合、巨大企業による市場独占といった事態が起きないよう、厳しく目を光らせている
 →EUの巨大な経済力が、域外の企業にも影響力を発揮

◆ギリシアの債務危機
・EUにも、深刻な課題や問題点がたくさん
 →1つが、加盟国の財政問題であり、巨額の債務の存在
 →端的な例が、ギリシアの債務危機問題
・ギリシアの問題のそもそものきっかけは、2009年10月の政権交代
 →公表値を大幅に越える財政赤字予測額、同時に債務残高がGDPの110%以上、が明らかに
・状況を憂慮したEUは、ギリシアへの支援策を検討
 →7000億ユーロ(約82兆円)以上に上る「欧州安定化メカニズム(ESM:European Stability Mechanism)」と呼ばれる枠組みなど
・2015年7月、ギリシア政府はEUなどが金融支援の条件としている緊縮策の受け入れの是非を巡って、国民投票を実施
 →受け入れへの反対票が、全体の6割超
 →当面は、受け入れられる緊縮策を探るべく、EUとギリシアの間で話し合いの継続する可能性
・ここでの教訓は、EUの仕組みの課題が明らかになった点
 →財政政策などについては、各国の自由に任せてきた
・ギリシアでは長年、国家の歳出の多くを公共投資に
 →ギリシアの就業者の4人に1人が公務員、給与が高く、高額の年金
 →みんな政権の人気取りのため
・ギリシアは、ずさんな政策を取り続けてしまった結果、債務危機問題に陥ってしまったことに
 →一方、ドイツなどでは、歳入に見合った歳出、財務状況も健全
 →問題は、こうした格差が生じたこと

◆右翼政党が躍進する
・EU加盟国には、ギリシアのように、景気の後退や高い失業率に苦しんでいる国がたくさん
 →グローバリゼーションの進展の中、自国の新たな産業が育っていない、といった事情も
・近年、外国からやってくる移民を排斥しようとする運動が、EU各国で
 →右派政党が注目され、各国議会での存在感が増している
・そうした動きに拍車、2015年1月に起きた風刺週刊新聞「シャルリ・エブド」の襲撃事件を始めとするテロ事件
 →移民二世、三世といった、欧州生まれでありながら、いまだに差別を受け、満足な教育を受ける機会も与えられず、就職することもままならない多数の若者の存在
・EU内でのテロの拡散
 →周辺諸国・地域から多くの人材を呼び集め、域内での移動を自由にしてきたEUには、新たな試練

◆各地で起きる分離・独立運動
・各地の分離・独立の動きも、EU各国の安定に大きな波紋
 →自分は誰かという人々の帰属意識と密接に関わる問題
 →将来的にEU域内に何らかの影響を与える可能性は残る

◆EUは今後も発展するのか
・EU各国が今後も発展を続けるためには
 →欧州全体が政治的・経済的な一体性をさらに深め、その巨大な市場規模をフルに生かして、多くの分野で共同の研究・開発、投資などを行っていく必要
 →各国が協力、次世代の社会に適応できる人材を多数育てていくことも、極めて重要
・EUは今後、統合がより一層深まり、国家に似た存在へさらに近づいていく可能性は高そう
 →将来の断定はできないが、EUが今後も発展・深化を続ける可能性は高い、と思われる

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