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青天の霹靂、敏感な反応 …インドfab、14-nm量産、特許政策

アジアでは旧正月、南米ではカーニバルのこのタイミングではあるが、グローバル半導体業界では注目する動きに絶え間ないところがある。まさに青天の霹靂という表し方が見られるが、米国の馴染みのない半導体メーカーがインドでのアナログfab設立に$1 billionの投資を発表、驚かせている。また、敏感な反応が湧いてくる動きとして、Samsungの先端を切る14-nm FinFETモバイル半導体の量産開始、そしてQualcommはじめ反発が予想されるロイヤリティを下げる可能性を孕んだIEEEの特許政策の変更がある。

≪絶え間ない脈動≫

突然の発表で驚きとなったCricket Semiconductor(Richardson, TX)によるインド初のアナログfabへの$1 billionの投資は、以下の推移で受け止めている。

◇Cricket Semiconductor commits $1billion for India's 1st analog chip plant-Cricket Semiconductor to put $1B into India plant (2月13日付け Business Standard (India))
→Cricket Semiconductor(Richardson, TX)が、インドでの半導体ウェーハfab工場を計画、インドで建設する初のAnalog fab unitとなる旨。
 Cricketは該工場に$1 billionの投資を行う旨。

◇Cricket Semiconductor plans 6,000-cr India Rupee fab plant -US firm signs pact with Madhya Pradesh (2月13日付け THE HINDU Business Line)
→Cricket Semiconductor(米国)が、インド・Madhya Pradesh(マディヤ・プラデーシュ州)でのアナログfab設立に向けて、同州Governmentとmemorandum of understanding(MoU)に調印、同社はインドでのアナログウェーハfabに6,000-cr India Rupeeを投資する旨。「このfab ecosystem創出は、製品およびシステムvalue chainと結び合って、4.5 lakh(45万) jobsを作り出して$40 billionの将来的経済インパクトの可能性があり、インドのエレクトロニクス輸入負担を軽減する」(India Electronics and Semiconductor Association[IESA]のステートメント)旨。

インドの半導体業界団体、India Electronics and Semiconductor Association[IESA]がリリースしている内容となっており、アナログ半導体を展開する最大手、Texas Instruments(TI)社出身のメンバー2名の会社、Cricket Semiconductorとのことである。今後の注目材料に追加である。

◇Two Ex TI-ers Invest $1B in India's First Analog Fab (2月16日付け EE Times/India Chip Chat)
→青天の霹靂で行われた発表、ほとんど聞いたことのない半導体製造メーカー、Cricket Semiconductor(米国)が、インド中央部の州に$1 billion fabを設立する、とIndia Electronics & Semiconductor Association(IESA)が金曜13日夕方リリースの旨。誰もが2月14日に始まるCricket World Cup関係ニュースに注目していた矢先のタイミング、Cricket Semiconductorのwebsiteによると、次の2名の会社の旨。
 Lou Hutter氏…CEO。半導体業界に計35年、Texas Instruments(TI)社に29年。
 Mark Harward氏…半導体業界に25年超、TIで8年以上、R&D GroupのVLSI Design LabsおよびSemiconductor GroupのASIC事業新製品開発。

14-nmプロセス量産化の先陣をどこが切るか、この大きな注目材料にSamsung Electronicsが以下の通り応えている。Mobile World Congress(2015年3月2-5日:バルセロナ)を控えたタイミングでの発表と思われる。

◇Samsung's Next-Generation Chip-Making Technology Is Ready to Go-Samsung touts its 14nm FinFET process (2月15日付け Re/code)
→Samsung Electronicsが、3D, 14-nm FinFETプロセスでの量産を開始、該先端プロセスは、同社eight-core Exynos 7モバイルプロセッサの製造に用いられ、該プロセッサは、来る3月1日に投入するSamsung Galaxy S6スマートフォンに入る予定の旨。

◇Samsung announces mass production of 14nm FinFET mobile chips (2月16日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsが、14-nm FinFETプロセス技術により作られたモバイルapplicationプロセッサの量産を開始、「Samsungの先端14-nm FinFETプロセス技術は、疑いなく業界最先端のロジックプロセス技術である」(Samsung ElectronicsのSystem LSI Business、Executive VP of Sales & Marketing、Gabsoo Han氏)旨。

◇Samsung mass-produces 14-nano processors (2月16日付け The Korea Times (Seoul))

◇Samsung announces mass production of industry's first 14nm finFET mobile application processor (2月17日付け ELECTROIQ)
→Samsung Electronics Co., Ltd.が、業界初、先端14-nm FinFETプロセス技術によるモバイルapplicationプロセッサの量産開始の旨。

業界最先端をリードするIntelからは、14-nm半導体関連のリリースの先延ばしが次の通り見られている。

◇Intel reportedly to delay launch of 14nm Skylake desktop CPUs (2月16日付け DIGITIMES)
→台湾のmotherboard業界筋発。Intelが、同社14-nm Skylake desktop CPUsおよび対応する100-seriesチップセットのリリースを、2015年第二四半期とした当初予定から8月末に遅らせる、とmotherboardパートナーに通告している旨。

業界標準を定めるInstitute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE)からの技術ライセンス料を下げる基準化の動きを前回も示したばかりであるが、これに対するQualcommの反発はじめ業界の敏感な反応が引き続いている。

◇IEEE Waves Through Controversial Patent Policy-IEEE approves change in patent royalty policy (2月17日付け EE Times/Designlines blog)
→1)ロイヤリティ料を低くするIEEEの新しい特許標準が、いくつかのメンバーの怒りを買っている旨。厳しい論議があった特許政策への変更を承認するIEEEの決定は、たぶんに驚くまでもなくメンバーの間に亀裂を生じている旨。知的所有権(IPR)の補償は、一般に標準とされているデバイス全体ではなく、コンポーネント価格のpercentageに今や基づく旨。
 2)Institute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE)が、特にワイヤレス通信分野において特許所有者に支払われるロイヤリティを下げる可能性を孕んだ特許政策の変更議案を通過させており、この変更は、ワイヤレス半導体分野を席巻するQualcommにとって納得できるものではない旨。

◇Digitimes Research: Qualcomm antitrust probe reshapes patent licensing in China (2月17日付け DIGITIMES)
→中国のQualcommについてのanti-trust調査は、同社が中国でのoperationsに譲歩して終止符、同社への罰金およびlicensing料を調整する合意そのもののQualcommの売上げおよびgrossマージンに対するインパクトは、限られる範囲の見込みの旨。しかしながら、Qualcommの特許cross-licensing合意の取り消しは、自らのlicensing事業の拡大を図っている中国ベンダーには優位性となってくる旨。Qualcommはこれまで、同社clientsに対し該clientsのすべてに及ぶ"umbrella" cross-licensing合意への調印を求めた旨。それは特許侵害の申し立てについて大手ベンダーにより訴えられることから中小ベンダーを守る意味合いがあった旨。


≪市場実態PickUp≫

【推移データ】

DRAMビット伸長は年2倍の感覚でいた1970年代後半から1980年代であるが、1990年代以降を振り返る以下の内容から、飽和していく推移、度合いを改めて受け止めている。

◇Market dynamics and technology hurdles reduce DRAM bit volume growth, says IC Insights (2月16日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。1995年から2005年までDRAMビットvolumeが、平均年当たり67%で伸びたが、それ以降の10年では、平均年当たり43%となっている旨。景気後退で苦境に陥った世界経済により、2009年のビットvolumeの伸びが史上最低の21%となり、年間DRAMビットvolume伸長が70%以上を維持した1990年代から2000年と全く対照的な旨。

こんどは半導体出荷全体数量の伸びであるが、1978年から2017年まで見渡して以下の通りである。世界経済の波の影響を受けながらも着実に伸びて、2017年には初めて1 trillion個の大台を超える読みとなっている。

◇Semiconductor Unit Shipments To Exceed One Trillion Devices in 2017-Updated forecast expects robust 8.2% average annual unit shipment growth through 2019. (2月17日付け IC Insights)
→IC InsightsのThe McClean Report -A Complete Analysis and Forecast of the Integrated Circuit Industry、2015年版予測。半導体出荷数量全体(integrated circuits[ICs]およびopto-sensor-discrete[O-S-D]デバイス)が、現状の周期的段階を伴った増大を続け、2017年に初めて1 trillion個を上回ると見る旨。半導体出荷数量は、1978年の32.6 billion個から2017年には1,024.5 billion個に増加すると予測、39年の期間にわたって平均年間伸長が9.2%に上る旨。2009年から2014年にかけては、半導体数量の平均年間伸長が7.6%と長期伸長率からは幾分鈍いが、この5年の期間のグローバル経済不安による旨。electronicシステムの推進力が強まって、2014年から2019年までは8.2%と力強い年間伸長が予想される旨。

【RFソリューション開発連携】

GlobalFoundriesが、IMECと連携、Internet of Things(IoT)応用に向けた革新的な高周波(RF)ソリューション開発に取り組んでいる。

◇GlobalFoundries Teams with IMEC on RF CMOS (2月17日付け EE Times)
→GlobalFoundriesが、highly integratedモバイル機器およびIoT応用に向けた将来のradioアーキテクチャー&設計についての共同リサーチでIMECと連携する旨。今日、代表的なモバイル機器は世界中の2G, 3G, 4G, LTE network connectivityについて最大28 bandsサポートしなければならず、さらに複雑なキャリアaggregation方式および周波数帯の追加が将来世代で予想される旨。

◇Imec and GloFo get together on RF-GlobalFoundries will work with imec on RF architecture, ultra-low-power devices (2月17日付け Electronics Weekly (U.K.))

◇GLOBALFOUNDRIES joins imec to develop innovative RF solutions for Internet of Things applications (2月17日付け ELECTROIQ)

【中国の半導体投資】

中国の半導体業界を盛り立てて海外依存を減らそうという中国政府の5ヶ年計画にも表わされた投資支援が注目されているが、来月上海開催のSEMICON ChinaにてSEMIフォーラムが以下の通り予定されている。

◇China's semiconductor investment plans focus of SEMICON China 2015 (2月19日付け ELECTROIQ)
→最近の“National Guidelines for Development and Promotion of the IC Industry”で示されている中国の新しい産業投資および政府推進政策は、中国およびグローバル半導体メーカーにとっての大きなopportunitiesとなっている旨。SEMIは、SEMICON China 2015(3月17-19日:上海)にて、Market and Investmentフォーラムを主催、政府decision makers、ICファンドマネージャー、そしてグローバル業界アナリストが該政策への洞察および業界へのインパクトを共有する旨。

【AMATとTELの合併提案】

Applied MaterialsとTokyo Electronの合併提案について、韓国が以下の通り条件付きOKを出す運びとのことである。他の本件の各国対応は、ドイツ、イスラエルおよびシンガポールが承認、中国、日本および米国がこれから(2月20日付け Semiconductor Engineering)という現時点となっている。

◇Tokyo Electron, Applied merger deal gets conditional nod-Korean regulators approve merger of Applied Materials, TEL with conditions (2月17日付け The Korea Times (Seoul))
→韓国・Fair Trade Commission(FTC)が月曜16日、Tokyo ElectronとApplied Materialsの間の合併提案を来月条件付きで承認する旨。

【チャレンジ2件】

まずは、電気自動車。Googleの試作車デモに続いて、Appleも取り組んでいるという報道が流れて、Apple Watchの次にApple carと業界を騒がせているが、真相確認はこれからである。

◇Apple is working on creating a car: WSJ (2月13日付け Reuters)
→Wall Street Journalが本件事情通引用、金曜13日発。Apple社には、Apple-branded電気自動車の創出に取り組んでいる秘密のlabがある旨。該プロジェクトは、ミニバンのように見えるクルマを設計、とその筋の1人が言っている旨。プロジェクト完了には何年か、Appleがクルマを作るようになるかは確かでない旨。

◇Bosch CEO: Tech industry interlopers force car industry to react (2月17日付け Reuters)
→Boschのchief executive、Volkmar Denner氏。自動車業界は高度に自動化された車を投入する動きを高めており、ソフトウェアメーカー、GoogleそしてたぶんAppleも車を作る計画を構築している旨。Googleによる試作車の出現は、Apple carというものの騒ぎの可能性をすでに示している旨。

そして、米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」でIBMのコンピュータがチャンピオンを破ったのが数年前のこと。コンピュータが人間を打ち負かすこんどのハードルはimage認識と、以下の取り組みが見られている。

◇Microsoft, Google Beat Humans at Image Recognition-Deep learning algorithms compete at ImageNet challenge (2月18日付け EE Times)
→チェス、それからポーカー、そしてついにJeopardyで人類の最善を打ち破ったコンピュータの次のハードルはimage認識。こんどMicrosoftが、image認識で人類を負かす最初のコンピュータプログラムを行っている旨。ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge 2015(ILSVRC2015)が12月17日に該判定を行う旨。競争は熾烈、Googleは、Microsoftを0.04%ほど上回ったとしている旨。


≪グローバル雑学王−346≫

未来を読みとおす卓見は、歴史への正確な理解から生まれる!、20世紀の歴史を読み解き、国際社会の変化を大胆に見通す!と謳う

 『大局を読むための世界の近現代史』
  (長谷川 慶太郎 著:SB新書 276) …2014年11月25日 初版第1刷発行

を、今回から読み通していく。テレビでも長らく馴染みがあり、多彩な評論活動で知られる国際派エコノミストである著者から見た世界の近現代を辿っていく。歴史認識の問題が依然尾を引き、実態がどこまで理解できているかいまだに自問することが多い20世紀2度の世界大戦を巡る経緯について、至る所新たな見い出しを受け止めている。


≪はじめに≫

・過去の戦争がなにを発端とし、どのような経緯で、いかにして終わったのか
 →歴史の「大局を読み解く」ということ
 →いまを生きる我々のとって意義あること
  →大きな流れを知り、その背景を読み解くこと
・昨今も、少しずつではあっても確実に、世界は変容
 →いまこそ歴史を学び直し、その大局をつかんで未来を見通すことが必要

第1章 20世紀、二度の大戦と世界の変容   =3分の1=

◇19世紀の戦争と20世紀の戦争の違い
・イギリス人の平均寿命は、1800年から1900年の間に30才も延びた
 →30代前半から60代前半に
・ところが、2000年までの100年では、10才代しか延びていない
 →その理由はただひとつ、「戦争」
・19世紀の戦争はそのほとんどが短期戦、これに対し、20世紀には大規模な戦争が相次ぐ
 →要因として、「産業革命」
・生産力・輸送力の向上に加え、技術も飛躍的に進歩
 →人々の消費量も増
 →同時に戦争の規模も拡大することを示唆

◇民族国家の誕生が新たな戦争の火種を生む
・「戦争」は、あらゆるものを消耗する巨大な「消費活動」
 →20世紀に大規模な戦争が起こった要因のひとつ
・もうひとつ、「民族国家の誕生」も
 →軍備拡張競争が始まり、国際情勢はにわかに緊張の様相
・20世紀のおもな戦争
 →1899〜1902年 ボーア戦争
  1904〜1905年 日露戦争
  1911〜1912年 伊土戦争
  1912〜1913年 第一次バルカン戦争
  1913〜1913年 第二次バルカン戦争
  1914〜1918年 第一次世界大戦
  1918〜1919年 ハンガリー・ルーマニア戦争
  1919〜1921年 アイルランド独立戦争
  1935〜1936年 第二次エチオピア戦争
  1939〜1945年 第二次世界大戦
・第一次世界大戦直前のバルカン半島は、「ヨーロッパの火薬庫」

◇世界の誰もが短期決戦だと思っていた
・1914年6月、第一次世界大戦の火ぶた
 →予想に反して長期戦に拡大化、結果的には世界で2000万人近くが犠牲に
・最大の要因は、ヨーロッパ諸国で進んだ「経済の分業化」
 →ヨーロッパの首脳は「現在の体制をつぶしてまで戦いを続ける国はないだろう」との考え
・イギリス、フランス、ドイツ、オーストリアなど欧州の強国がこぞって参戦
 →ヨーロッパの経済活動は衰退、国際分業体制は崩壊へ

◇多民族国家の軍隊が抱える「言葉の壁」のリスク
・英仏軍とドイツ軍が対峙した西部戦線
 →泥沼の長期戦へと突入
・東部戦線では、オーストリア=ハンガリー帝国とロシア帝国の軍が対峙
 →オーストリア=ハンガリー帝国が多民族・多言語国家ゆえ、軍隊がとても脆弱
 →第一次世界大戦では、ロシア帝国軍に完膚なきまでに叩きのめされてしまった

◇「国家総力戦」で戦ったヨーロッパの国々
・相手に大打撃を与えても、それが決定打にはならないという状況が続く
 →戦いはいつしか「消耗戦」の様相へ
 →象徴するのが、ベルギー南部からフランス北東部においてドイツと英仏軍が戦った西部戦線
 →また、1916年7月、フランス北部のピカルディ地方を流れるソンム河畔で両軍激突
・まさに「国家総力戦」
 →「戦争に勝つ」という目的を果たすために、国民に重い負担を課すもの
・イギリス海軍の海上封鎖で世界市場から遮断されたドイツ
 →「戦時原料品課」を設立 →やがて疲弊を生むことに

◇オーストリア=ハンガリー帝国の限界と解体
・国力が弱い国から迎える限界
 →第一次世界大戦の主要交戦国で最初に音を上げたのは、
  オーストリア=ハンガリー帝国
 →ドイツは、多民族・多言語国家であるオーストリア=ハンガリー帝国に足を引っ張られ続けた
・長引く戦争によって疲弊、厭戦ムードが漂っていたオーストリア国内
 →オーストリア=ハンガリー帝国は解体
  →大部分の領土が、ポーランド、セルビア、ルーマニアなどに割譲

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