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TSMCの12-インチfabが加速する中国半導体業界構造の移行

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今までどちらかというと引いたスタンスであった世界最大のファウンドリー、台湾のTSMCの中国に対する投資姿勢であったと感じるが、このほど江蘇省南京市に完全所有、自前の12-インチウェーハfabおよび設計サービスセンターを建設する取り組みを発表、申請を台湾政府に対して行っている。最先端の度合いはじめ認可の対応が注目されるとともに、半導体業界の自立化を進めて本年の世界半導体業界でのM&Aの嵐の目の大きな1つになっている中国での設計への重点の移行について、加速していく展開が見込まれてくる。

≪製造から設計への傾斜≫

台湾のTSMCに続くファウンドリー、UMCは、合弁の形で中国でのfabオープンに向けて先行して進めている。

◇UMC to Start 12-inch Fab in China Ahead of Schedule (12月7日付け EE Times)
→世界第3位のファウンドリー、UMCが、予定より約2ヶ月早く中国での合弁12-インチfabをオープンの見込みの旨。同社spokesman、Richard Yu氏によると、生産が2016年第三四半期末ごろスタート、来年第四四半期とした当初予定より1-2ヶ月早い旨。中国における建設の早さが高まっている旨。

今まで中国への投資には引いたスタンスが目立っていたTSMCであるが、ここにきて同社の総帥、Morris Chang氏による中国での12-インチウェーハfabおよび設計サービスセンターを設ける決定が発表されている。$3 billionの投資規模となっている。

◇TSMC Aims to Build Its First 12-inch Fab in China (12月7日付け EE Times)
→世界最大のファウンドリー、TSMCが本日、世界で最も急成長の半導体市場での力強い需要に対応、中国での同社初の12-インチfab建設を目指す旨。
「中国半導体市場の急成長に照らして、そこでの我々の顧客に密着してサポート、さらにビジネスopportunitiesを拡大するよう、中国で12-インチウェーハfabおよび設計サービスセンターを設けることを決めた。」(pressステートメントにて、同社Chairman、Morris Chang氏)

◇Taiwan's TSMC plans new China plant worth $3 billion-TSMC to build $3B 12-inch wafer fab in China (12月7日付け Reuters)

江蘇省南京市に完全所有、自前の12-インチウェーハ製造拠点および設計サービスセンターを建設する内容の台湾政府への申請である、取り組みの概要が以下の通りである。

◇TSMC applies for 12-inch wafer fab and design service center in China (12月7日付け DIGITIMES)
→TSMCが本日、Nanjing, China(中国の江蘇省南京市)に完全所有の12-インチウェーハ製造拠点および設計サービスセンターを建設する投資プロジェクトについて、台湾・Ministry of Economic AffairsのInvestment Commissionに申請提出の旨。該拠点のcapacity計画は12-インチ20,000枚/月、2018年後半に16-nmプロセス技術の量産を始める予定の旨。
該設計サービスセンターは、中国でのTSMCの設計ecosystemを構築する狙いの旨。

◇台湾のTSMC、南京に大型半導体工場、スマホ需要囲い込み (12月8日付け 日経)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が7日、中国・江蘇省南京市に半導体工場を建設すると発表、投資額は30億ドル(約3700億円)で2018年下半期に稼働させる旨。同社が直径300mmのシリコンウエハーを使う大型工場を中国に設けるのは初めてで、スマートフォン用などの受注を囲い込む旨。

◇TSMC applies for 12-inch wafer fab and design service center in China (12月11日付け ELECTROIQ)

台湾政府もこの申請の受け取りを認め、扱いの決定を2ヶ月以内に行うとしている。

◇Taiwan MOEA confirms receipt of TSMC application for 12-inch fab in China (12月7日付け DIGITIMES)
→台湾・Ministry of Economic Affairs(MOEA)のInvestment Commissionが、TSMCによる中国・南京に12-インチウェーハ製造拠点および設計サービスセンターを構築する申請を受け取ったことを確認の旨。該申請を承認するか、拒否するかの決定は2ヶ月以内に行われる旨。TSMCは、該プロジェクトに総額$3 billionを投資する計画の旨。

TSMCの中国でのfabを巡る観測、そしてインパクトの見方が、以下の通り表わされている。

◇New TSMC fab in China likely to target orders for driver ICs, touchscreen solutions (12月10日付け DIGITIMES)
→台湾のIC設計分野筋発。TSMCが中国で計画している12-インチウェーハfabは、主にモバイル機器応用向けのLCD driver ICs, touchscreen controllers, TDDI(touch and display driver integration)半導体などsingle-chipソリューションの開発に特化する中国現地のIC design housesからの16-nm半導体受注獲得を競い合う可能性の旨。TSMCの12-インチfabが量産対応可となるまでに、16-nmノードはすでに成熟しており、同時に、モバイルSoCsの開発に取り組むTSMCの主要clientsは、10-nm、そして7-nmも視野に移行に備えていく旨。

◇Commentary: TSMC new fab to boost China semiconductor industry (12月10日付け DIGITIMES)
→TSMCが中国・南京に12-インチウェーハ製造拠点を建設する発表は、中国における半導体業界clusterの構築、並びに向こう数年での中国半導体業界の離陸を予告するものである旨。該新拠点についての12-インチウェーハ20,000枚/月のcapacity計画はTSMCの全体生産capacityの2.5%を占めるに過ぎないが、半導体生産の自給率を上げるという中国の大きな志を高めてくる旨。中国は、2025年までに半導体生産自給率を70%にもっていきたいとしている旨。

関連する動きを見ていくと、まずは引き続くM&A攻勢であり、こんどはFairchildに対して中国筋からの競合入札が行われている。

◇China Resources Said to Offer $2.46 Billion for Fairchild-Report: Fairchild Semi receives $2.46B bid that tops ON's offer (12月8日付け Bloomberg)

◇Chinese Group Bids for Fairchild (12月9日付け EE Times)
→中国政府が支援するある1社が、先月ON Semiconductor社からの買収提示を受けた半導体メーカー、Fairchild Semiconductor International社(San Jose, Calif.)についての入札の戦いを開始の旨。Fairchildは火曜8日、$21.70/株, すなわち約$2.46 billion規模の競合入札を受けたとしており、11月18日発表のON Semi提示は約$2.4 billionである旨。
Fairchildは入札元を明らかにしなかったが、Bloomberg news serviceによると、国有のChina Resources Holdings Co.および4月に発表されて依然仕掛っているOmniVision Technologies社買収に関係している投資会社、Hua Capital Management Ltd.などから成るコンソーシアムが入札している旨。

ファブレス半導体メーカー・ランキングにおける中国の台頭ぶりが以下の通り表わされている。

◇China chips away at U.S., Taiwan semiconductor dominance-China's fabless firms challenge Taiwan, US chip companies (12月9日付け Reuters)
→世界のファブレス半導体メーカー・トップ50に入る中国メーカーが、2009年は1社だけであったが、9社になってきている旨。「中国のファブレス業界はうなぎ登りに拡大している。」とBernsteinのアナリスト、Mark Li氏。同氏は加えて、中国は2015年、$20 billionのIC設計業界ランキングで台湾に代わって2位になる見込みの旨。

中国での製造拠点離れが進んでいる現状の分析である。

◇Why manufacturers are starting to leave China (12月9日付け EE Times India)
→世界中のメーカーが他に代替を見い出していて、中国が低コスト生産に向けた世界の中心としてのアピールを失い始めている旨。中国の産業基盤は短期的には引き続き拡大が見込まれるが、伸びは鈍化していく旨。より和らいでいくこのペースはまた、同国を日本を抜いて世界第2の経済国家に押し上げたここ数10年の間の驚異的な成長とは著しく異なるものである旨。

アジアでの専業ファウンドリーのデータが以下の通り表わされている。TSMCの今回の動きの今後へのインパクトに注目である。

◇Asia pure-play foundries to generate combined US$40 billion in 2016, says TrendForce (12月9日付け DIGITIMES)
→TrendForce発。2015年のアジアの専業半導体ファウンドリー売上げ合計が$36 billionを越える見込み、2016年には$40 billionを上回ると見る旨。
アジアのファウンドリーは、グローバルファウンドリー売上げの80%超を占めている旨。TSMCが、2015年売上げ$26-27 billionで該専業ファウンドリー市場を引き続きリード、2016年には$30 billionに達すると見ている旨。


≪市場実態PickUp≫

【IEDM 2015】

恒例の半導体デバイス技術に関する国際会議、IEDM(International Electron Devices Meeting) 2015(12月7-9日:Washington D.C.)から、目についた講演&概要である。

◇ARM Sizes Up Moore's Law-Memory wall, cost per transistor tackled-Moore's Law still relevant, ARM researcher says (12月7日付け EE Times)
→ARM Research(Austin)のsenior researcher、Greg Yeric氏の基調講演。
半導体を小さく、速くすることが難しく高コストになっているが、Moore's Lawを進める希望は依然ある旨。広範にバランスした講演で同氏は、多彩な技法および控える課題について詳細にプレゼンの旨。

◇IEDM 2015が開幕、ディープラーニングを超える“脳型チップ”に脚光 (12月8日付け 日経テクノロジーonline)
→今回の主な議題は、
 1)メモリ技術
 2)Siに代わる新材料
 3)3次元構造のトランジスタやIC
 4)パワー半導体
 5)Siフォトニクス
 6)フレキシブルデバイス
 7)ディスプレイと撮像素子技術
 8)脳型コンピューティング(Brain-like Computing)
などから成る旨。

特に、IntelとMicronが共同する3D-NANDフラッシュの発表に注目していたが、以下の概要を受け止めている。今後の精査を要するところである。

◇Intel/Micron Detail Their 3D-NAND at IEDM (12月10日付け ELECTOIQ)
→月曜午後の注目は、Intel/Micronの3D-NANDフラッシュ(paper 3.3)、現在顧客にサンプル配布中の旨。Samsungは昨年V-NANDフラッシュを市場投入、charge-trap技術を用いているのに対して、Intel/Micron品は従来のfloating gate技術を垂直方向に適用の旨。垂直チャネルsurround-gate構造をフラッシュセルに用い、CMOSデコーダおよびセンスアンプをNANDフラッシュアレイの下に置いて、die面積を大きく節減している旨。この製品は256-Gビットメモリ、あるいはTLC版を投入すると384-Gビットの模様の旨。チップサイズは168.5mm2、MLCおよびTLCデバイス対応では1.52および2.28 Gビット/mm2のビット密度となる旨。

【NXPとFreescaleの合併完了】

M&Aの嵐が富に吹き荒れている今年、先を行く大型合併の完了が、NXP SemiconductorsとFreescale Semiconductorについて次の通りである。

◇Chipmakers look to autos for demand, deals and disruption-Auto electronics draw more chipmakers, drive consolidation (12月4日付け Reuters)
→半導体メーカーが車載electronicsビジネスを積極的に追及しており、2015年の半導体業界の統合の波を推進している旨。NXP SemiconductorsとFreescale Semiconductorの$11.8 billion合併は本日完了の運び、世界最大の車載用半導体サプライヤが生み出されるとともに、他の取引が進んでいる旨。

週始めから、新生NXPが始動、以下様々な切り口の視点評価が見られている。

◇Scope, Not Scale, Drives Freescale/NXP Nuptials (12月7日付け EE Times)
→NXP SemiconductorsとFreescale Semiconductorが月曜7日、正式に大合併を完了、続いて起こりそうなレイオフの数についての質問にNXPのCEO、Rick Clemmer氏は返事を控えている旨。該新生会社は、5つに分かれた市場、security & connectivity, 車載, RF, digital networkingおよび標準製品に重点化する旨。Clemmer氏は、車載グループが最大で売上げ全体の40%を生み出し、security & connectivity部門も40%近い、と見ている旨。

◇NXP completes deal to buy Freescale and create top auto chipmaker-Merged NXP enables the connected car (12月7日付け Reuters)
→NXP SemiconductorsとFreescale Semiconductorの合併が今や完了、車載デバイスからの年間売上げが約$4 billionとなる半導体大手が作り出される旨。該合併会社は、microcontrollers(MCUs)などInternet of Things(IoT)半導体でも大きな市場の存在感がある旨。

◇NXP Says Freescale Will Boost Operations in IoT, Connected Cars-With the $12 billion deal complete, NXP executives expect the combined company to be number-one in such areas as automotive and identification tech. (12月7日付け eWeek)

◇The merged NXP and Freescale will make cars smarter from bumper to bumper (12月7日付け ITWorld.com/IDG News Service)

◇NXP and Freescale announce completion of merger (12月8日付け ELECTROIQ)

◇Inside NXP Merger: Dos & Don'ts-'Let's not forget this is about people. It's personal.' (12月9日付け EE Times)
→Freescale-NXP合併の第1日、月曜7日、Freescale Semiconductorから今やNXPとなったAustinキャンパス往訪記事&写真。

以前のNXPのRF事業部門は、中国の会社所有となってこれも新たなスタートとなっている。

◇The World's No. 2 RF Firm Emerges Behind NXP (12月10日付け EE Times)
→今週始めに完了したFreescale-NXP mega-mergerの後に、NXPの前RF事業部門で今では世界第2位のRF powerメーカー、Ampleonが出現の旨。オランダ・Nijmegenに本社を置くAmpleonは現在、中国の証券会社、Jianguang Asset Management Co. Ltd.が所有しており、人員、技術およびfabs全部維持している旨。

【Qualcomm追求】

中国から罰金を科されたQualcommであるが、欧州当局も独占禁止法違反の疑いで異議告知書をこのほど同社に渡している。

◇Qualcomm Denies European Antitrust Charges (12月8日付け EE Times)
→European Commission(EC)が、Qualcommに対して2点のStatements of Objectionsを送りつけ、違法な排他性支払いが行われ、チップセットの不当に安いpricingが追求されている、としている旨。Qualcommは、その申し立ては間違いであることを示すとして応答の旨。statement of objectionsを出すのは、European Union(EU)公正取引法侵害の疑いへのEC調査では形式的な1段階である旨。

◇EU Slaps Qualcomm With Antitrust Charges-European Commission says chip maker sought to stifle competition-EU moves against Qualcomm with antitrust suit (12月8日付け The Wall Street Journal)

◇EU accuses Qualcomm of using market power to hinder rivals (12月8日付け Reuters)

◇クアルコム、欧州当局からも異議告知書 独禁法違反疑い (12月9日付け 日経 電子版)
→米半導体大手、クアルコムが8日、欧州委員会から競争法(独占禁止法)違反の疑いで異議告知書を受け取ったと発表した旨。7月から始まった調査の結果で、クアルコムがチップの販売価格の調整やリベートなどで競争相手を市場から排除しようとしたとしている旨。クアルコムには数カ月間の反論期間が与えられ、最終決定ではないが、制裁が科される可能性が極めて高くなった旨。

台湾も、特許licensingに絡めて同社を調べ始めている。

◇Taiwan Joins Pack Pursuing Qualcomm (12月11日付け EE Times)
→Taiwan Fair Trade Commission(TFTC)が、Qualcomm社の特許licensing取り決めがTaiwan Fair Trade Actを侵害するかどうか、調査を開始の旨。
ここ数年Qualcommを追及する一連の国・地域に台湾が加わる旨。

【韓国での事業強化の動き】

SK Groupが、日本あるいは米国との半導体合弁を計画、傘下のメモリのSK Hynixとの双璧のイメージが伝わるところがある。

◇SK plans semiconductor joint venture -SK Group said to partner in semiconductor joint venture (12月7日付け The Korea Times (Seoul))

→SK Groupが、半導体技術における同conglomerateの位置づけを強化するために日本の会社あるいは米国の会社と合弁での連携を図っている旨。該半導体合弁は、同グループの子会社でメモリ半導体の大手サプライヤ、SK Hynixを補完するものとなる旨。

現代自動車は、自動運転に向けた半導体およびセンサ開発を自前で行う検討を進めている。

◇Hyundai to Invest 2 Trillion Won to Develop Semiconductor Chips for Driverless Car -Hyundai to invest $1.69B in chips for self-driving cars, sources say (12月10日付け BusinessKorea magazine online)
→Hyundai Motor Groupが、autonomous drivingで用いられる半導体およびセンサを自前で開発する計画を検討している旨。車の将来がself-driving vehiclesにかかると考えており、先行してコア競争力を確保する重要性からきている旨。

【台湾半導体メーカー11月業績】

本年の世界半導体販売高が史上最高の昨年を上回るかどうかぎりぎりの状況であるが、台湾の大手、TSMC、UMCおよびMediaTekの11月業績が大きな指標の1つということで以下の通り注目している。

◇MediaTek reports robust November revenues (12月7日付け DIGITIMES)
→MediaTekの2015年11月連結売上げがNT$20.96 billion($640 million)、前月比5.8%減、前年同月比24.9%増。この11月売上げは同社史上3番目の記録、最高だった10月のNT$22.24 billionには及ばなかった旨。本年1-11月累計はNT$194.74 billion、前年同期比0.6%減。

◇UMC sees November revenues drop (12月9日付け DIGITIMES)
→UMCの2015年11月連結売上げがNT$11.117 billion($338.5 million)、前月比7.81%減、前年同月比3.62%減。1-11月累計はNT$134.157 billion、前年同期比4.97%増。

◇TSMC November revenues fall (12月10日付け DIGITIMES)
→TSMCの2015年11月連結売上げがNT$63.43 billion($1.93 billion)、前月比22.4%減、前年同月比12.2%減。1-11月累計はNT$785.15 billion、前年同期比13.2%増。


≪グローバル雑学王−388≫

米国シェールオイル大増産、そしてサウジアラビアの政策転換と、原油価格急落に至る経緯、実態を、

『国際エネルギー情勢と日本』
 (小山 堅・久谷 一朗 著:エネルギーフォーラム新書 034) …2015年9月11日 第一刷発行

より見てきたが、後半は、本当に底打ちしたのか、まだまだ下がるのか、今後の原油価格をどう見るか、に迫っていく。半導体業界での価格を見遣る思いに非常に通じるところがあり、世界経済の全体そしてインパクトのある主要地域の動向をタイムリーにつかむこと、そして主要市場の需給状況の推移&成り行きを適確に把握することの重みと受け止めている。

第二章 原油価格急落の背景と今後 =2分の2=

■原油価格下落の「光と影」:将来の需給逼迫要因?・低価格がフィードバック効果を生み出し、需要拡大を刺激、供給拡大を抑制
 →中長期的には需給逼迫をもたらしてしまう可能性がある
・低価格が経済浮揚に効果を持てば、全体としてエネルギー需要は増大する方向に向かう
・米国での石油生産のための油井を掘削する設備、「リグ(rig)」の活動数は、原油価格が低下した後、劇的に減少
 →生産量の伸びは徐々に鈍化している
・原油価格低下は、石油生産企業の業績を圧迫
 →投資が削減される傾向
・天然ガス・LNG市場でも同様の問題・懸念が高まっている
 →中長期的な投資不足が将来の需給逼迫要因になる可能性の指摘に
・今後も市場の動きを注意深く見守っていく必要

■低油価への対応迫られる国際石油産業
・上流・下流(精製・販売事業)・その他(石油化学等)を総合的に事業運営する「石油メジャー」
 →上流が利益の約8割、場合によってはそれ以上の割合
 →上流事業の収益を左右するのは原油価格
・エクソンモービル、BP、シェル、シェブロンの米英系メジャー4社
 →2014年第4四半期の純利益が前年同期比6割以上減少
・各企業は、コスト削減と合理化を一層進めることが必須の課題に
 →課題がある案件を中心に投資支出を削減する方針の打ち出し
 →中長期的な国際市場での需給状況に影響を及ぼす可能性
・低価格環境がある一定期間持続する場合、国際石油産業の再編成につながる動きが出てくる可能性
 →1990年代末、現在の5大メジャー体制確立につながる大きな再編
・2015年4月、シェルによる英国の大手国際エネルギー企業、BGグループの買収合意が成立
 →これがさらなる再編の契機となるのかどうか

■原油価格は底打ちしたのか?
・2015年3月に43ドル台まで低下したWTI原油価格
 →5月にはついに5ヶ月ぶりに60ドル台を記録
・値戻しの動きの顕在化
 →低価格が需要を刺激している側面
 →供給サイド、特に米国シェールオイルの生産への影響
  →油価下落とともに、まずは掘削活動に影響
  →2014年のピーク時と比べると6割以上の低下
・シェール生産企業の経営が油価低下で急速に悪化
 →しかし、効率が高く、コストが低い油井での掘削活動は、この低価格期間でも持続している
・シェールオイルの生産は、従来予想されていた以上に低価格の環境に耐える力を示している、との見方
・それでも、油価低下は徐々に米国石油生産の伸びを鈍化させてきている
 →2015年4月以降には頭打ちの傾向
 →原油価格上昇をもたらしてきている
・この価格回復は持続的なものなのかどうか。現時点では、その判断は早すぎると思われる。
 →米国シェールオイルは、油価の上昇に対しても、下落に対しても、市場全体での需給調整役を果たすのではないか、という可能性の指摘
 →今後、原油価格が一本調子で右肩上がりの回復・上昇となるかどうか、見極めが難しい
・当面の原油価格に影響する要因
 →≪上げ要因≫ −備蓄・在庫需要の拡大
         −高コスト石油の生産低迷
         −産油国での供給支障
         −予想外のOPEC減産
         −需給均衡価格帯への移行
 →≪下げ要因≫ −備蓄・在庫需要の剥落
         −製油所メンテナンス
         −ギリシア問題の深刻化
         −中国・新興国の経済減速
         −資源国経済悪化と金融不安の波及
・まだまだ今後の原油価格動向には上下双方に大きく動く可能性も
 →本格回復軌道に入ったとは言い切れない状況にある

■今後の原油価格をどう見るか
・2011年から3年半続いた100ドル台という原油価格
 →2015年初につけた40ドル台といった水準も行き過ぎ
 →持続可能な均衡価格の水準は、その間のどこかに存在すると考えられる
・リスク発生を除いて考えれば、2015年後半にかけて原油価格は、現状並みの50ドル台の水準で推移していく可能性
 →2016年には、低価格で需要が伸び、緩やかに需給は引き締まっていく方向に
・中長期的な市場均衡という視点での原油価格動向
 →今後5年間で500万B/D(barrel per day)の追加供給が世界で必要に
 →2020年に頃にかけて、原油価格は70〜80ドル前後の水準を目指していくのではないか、と見る
・石油資源の賦存状況などの問題
 →2030年以降にかけて、原油価格が再び100ドルに接近、それを大きく上回る水準となる可能性は十分に
・原油価格を見通すことは大変難しい問題
 →さまざまなリスク要因、あり得るシナリオを複数想定、それに合わせた対応策・戦略を用意していくことが重要に

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