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スマホ市場急減、国内業界強化はじめ中国半導体業界を巡る波動

中国の人民元の3日連続切り下げが世界経済に影響して各国の株価が下落、その後の週末にやや安定してきた現時点である。中国市場の予想以上の景気減速は、半導体・エレクトロニクス業界でも中国スマートフォン市場急減速という形で表れている。国家5ヶ年計画に盛り込まれている中国国内の半導体業界の強化、中国の投資家グループなどが介在する世界半導体業界におけるM&A、と半導体業界において現時点見られる中国発インパクトによるいろいろな切り口での波動を追っている。当面、そして今後さらに世界を巻き込んで目が離せない動きになっていく受け止め方である。

≪底流に中国の市場&先行き懸念≫

人民元の切り下げの発端が次の通りである。

◇人民元2%切り下げ、中国人民銀、輸出回復めざす (8月11日付け 日経 電子版)
→中国人民銀行(中央銀行)が11日、人民元売買の基準となる対ドルの為替レートである「基準値」の算出方法を変更すると発表、これに伴い人民銀は11日の基準値を前日から約2%切り下げた旨。市場では人民元が一時約3年ぶりの安値水準に急落、事実上の人民元切り下げにより、中国は低迷する輸出競争力の回復を目指す旨。

中国経済の現下の懸念を映し出しているが、中国メーカーの業績に以下の対照である。政府の半導体業界強化策が1つにあるのか、ICファウンドリーのSMICの直近四半期売上げが最高を記録している。

◇SMIC posts record 2Q15 revenues (8月13日付け DIGITIMES)
→中国のICファウンドリー、Semiconductor Manufacturing International(SMIC)の2015年第二四半期売上げが$546.6 millionで最高を記録、前四半期比7.2%増、前年同期比6.9%増。第三四半期においても売上げの前四半期比さらなる伸びを予想の旨。

一方、パソコン、スマートフォンのレノボ・グループは大苦戦、人員削減の事態に至っている。

◇レノボ純利益51%減、4〜6月、スマホ苦戦、3200人削減 (8月14日付け 日経)
→中国のレノボ・グループが13日発表した2015年4〜6期決算。売上高が前年同期比3%増の$10.716 billion、2桁増のペースで増収が続いていた成長に急ブレーキ、純利益が同51%減の$150 million(約130億円)。主力のパソコン市場の縮小に加え、力を入れるスマートフォンが中国や南米市場の競争激化で苦戦、相次ぐ大型買収で関連費用も負担となった旨。業績悪化を受け、全従業員の5%に相当する3200人の人員削減に踏み切る旨。

SMICは、28-nm製品を今年年末までに販売、Qualcommと連携してプロセッサ、Snapdragon 410を作るとしている。同社の売上げの半分以上がすでに中国国内の顧客向けと、国内半導体業界の強化の程を示している。

◇SMIC's 28nm Chips Power Mainstream Smartphones Marking a New Era for Advanced Chip Manufacturing in China (8月10日付け Market Watch)

◇SMIC successfully makes Qualcomm chips in 28nm process (8月10日付け DIGITIMES)
→Semiconductor Manufacturing International(SMIC)およびQualcommが、28-nm Qualcomm Snapdragon 410プロセッサ製造という大きなmilestoneに到達、両社が28-nmウェーハ生産でコラボする初期計画発表後6ヶ月で達成の旨。

◇SMIC Expects First 28nm Revenue by Year End-51.1% of SMIC's revenue now comes from China (8月12日付け EE Times)
→中国最大のファウンドリー、Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)が水曜12日、今年末までに同社最初の28-nm製品を販売する予定の旨。SMICの中国の顧客への販売高は第二四半期に売上げの51.1%と連続して増大する一方、同期間の北米への販売高は約9 percentage points落ちて32.0%の旨。

中国のスマートフォン市場が急減速、最大手のXiaomiが中国以外のBRICS市場に進出を図っている。

◇中国スマホ市場急減速、小米、海外で成長探る、低価格、ネットで数量限定、「成功モデル」新興国で (8月14日付け 日経)
→中国のスマートフォン大手、小米(シャオミ)が新たな成長の場を求め、海外に打って出始めた旨。インドやブラジルなどの新興国がターゲット、低価格機を数量限定で売り、口コミでファンを広げるという、中国で成功した事業モデルで勝負をかける旨。13日には海外市場の開拓を担う新製品を発表、小米は創業5年で世界3位にのし上がったが、売上高の9割を占める中国市場は減速が鮮明の旨。

Xiaomiはインドでは、台湾のEMS、Foxconnと組んでスマートフォンを作ろうとしている。

◇Xiaomi, Foxconn to make smartphones in India (8月11日付け EE Times India)
→Hindustan Times発。中国のXiaomiが、世界最大のelectronics contract manufacturingメーカー、Foxconn(台湾)と連携、Andhra Pradesh州でスマートフォンを作る旨。該取引は、FoxconnがMaharashtra州の新拠点への$5-billion投資を披露した後に出てきており、該投資はNarendra Modi首相によるMake in Indiaキャンペーンのこれまでで最大の成果と多くが考えている旨。

中国での台湾メーカーの12-inch fabs稼働について、台湾政府がまもなくGOサインを出すとの見方も表わされている。

◇Taiwan foundries may soon get green light for 12-inch fabs in China, says report -Report: Taiwan may let foundries build 12-inch fabs in China (8月12日付け DIGITIMES)
→最近の中国語Economic Daily News(EDN)発。台湾の半導体メーカーの中国での12-inch fabs稼働がまもなく認可される可能性の旨。台湾・Ministry of Economic Affairs(MOEA)が、現地半導体メーカーに対する中国での12-インチウェーハ工場稼働の禁止を緩和する計画を評価しており、新たな法制が2015年8月16日の週にも発表される見込みの旨。

世界の半導体業界で続いたM&Aの嵐であるが、その後ということでまずは、中国・Tsinghua UnigroupによるMicron Technology買収はまかりならないと米国上院議員の反応&働きかけである。

◇As China Ties Fester, Senator Calls for U.S. to Block Bid for American Chip Maker-U.S. shouldn’t allow tech-firm acquisitions by Chinese state firms, Sen. Schumer says in letter-Senator wants U.S. to block Chinese acquisition of Micron (8月12日付け The Wall Street Journal)
→Charles Schumer米上院議員(D-N.Y.)が、米国政府のCommittee on Foreign Investmentに書簡作成、該panelにTsinghua UnigroupによるMicron Technology買収提案を拒絶するよう急がせている旨。Micronのメモリ半導体など入る可能性がある最新米国防衛システムにつながるコンポーネント生産を巡って中国に市場コントロールをもたせるという国家セキュリティ問題に深く懸念がある旨。

中国投資家コンソーシアム、Uphill Investment Co.によるISSI(米国)買収の方は、次の通り現時点が示されている。

◇ISSI provides update on closing of acquisition by Uphill (8月14日付け ELECTROIQ)
→グローバルファブレス半導体メーカー、Integrated Silicon Solution, Inc.(ISSI)が、中国投資家コンソーシアム、Uphill Investment Co.による$23.00/株 in cashでの同社買収終結についての最新状況を披露の旨。
ISSIとUphillは引き続き、合併合意にある締結条件に関して進めており、特にISSIは、該合意で期待されている台湾の同社operationsの内部再構築を完了している旨。ISSIとUphillでは依然、calendar今四半期末までに合併完了を見込んでいる旨。


≪市場実態PickUp≫

【Samsungの新型スマホ】

アップルの次期iPhone発表が9月9日か、と言われるなか、Samsungが先駆ける形で新型スマートフォン2機種を発表している。ともにディスプレイ画面を大きくして、市場、消費者の好む流れに沿う展開である。

◇Samsung Slims Phones, Boosts Displays -Exynos 7, not Qualcomm inside handsets (8月13日付け EE Times)
→自ら始めたモバイル機器画面大型化の流れに頼って、Samsungが外形寸法小型化の中でディスプレイを大きくした2つの新しいスマートフォンを披露、該Samsung S6 Edge+およびNote 5は、8月21日米国およびカナダで出てくる旨。

◇サムスン、新型スマホ2機種、大画面でデザイン重視 -iPhoneに対抗 (8月14日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が13日、米ニューヨークでスマートフォンの最新機種を披露、発表したのは大画面スマホなど2機種、サムスンが強みを持つ大画面スマホの最新機種「ギャラクシー・ノート5」、および旗艦機種のギャラクシー「S6」シリーズの派生機種「S6エッジ・プラス」。9月にも予想される米アップルの新型「iPhone」の発表を前に、サムスンは2機種を同時に市場に投入することで巻き返しを図る旨。

【Samsungの3D V NANDフラッシュ展開】

同じくSamsungの新たな動きとして、同社が引っ張る三次元V NAND市場において256Gビット、triple-level cell(TLC)、48層品の量産開始を発表、先週の東芝/SanDiskの同等品サンプル配布に先行性の差をつける内容である。また、solid-state drives(SSDs)製品についてもV NANDフラッシュを用いた展開が続いている。

◇Samsung Drives Up 3-D Flash-Products flow, costs high until 2016 or later (8月11日付け EE Times)
→Samsungが、Flash Memory Summitにて、3-D NANDの量産市場化に備える半導体、solid-state drives(SSDs)およびシステム設計を発表、しかしながら、アナリストおよび他のベンダーでも該技術を主流にもっていくにはさらに1年以上と見ている旨。Samsungのマーケティングexecutive、Jim Elliot氏基調講演によると、今月Samsungは、最新48-層, 3-bit/cell, 256 Gbit 3-D NAND半導体を用いた同社850 EVO SSDsバージョンの製造を開始、該新半導体により同社現在の32-層半導体よりも性能が2倍、パワー効率が50%以上良くなる旨。

◇Samsung Begins Mass Producing Industry First 256-Gigabit, 3D V-NAND (8月11日付け ELECTROIQ)

◇Samsung mass produces 256Gb 3D vertical NAND chips (8月11日付け CIO.com/IDG News Service)

◇Samsung mass-produces 256-gigabit vertical NAND chips-Samsung starts volume production of 256Gb 3D NAND flash (8月11日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→Samsung Electronicsが、256-gigabit vertical NANDフラッシュメモリデバイスの量産を開始、solid-state drives(SSDs)などの応用向けの旨。該V-NANDメモリは、3-ビットmultiple-levelセルアレイが48層ある旨。

◇Samsung announces mass production of 256Gb, 3D V-NAND flash memory (8月12日付け DIGITIMES)

◇サムスン電子、第3世代「V NAND」量産…世界初 (8月12日付け 韓国・中央日報)
→サムスン電子が世界で初めて第3世代256ギガビット(Gb)「V NAND」量産に成功、拡大するNAND型フラッシュメモリ市場で技術格差を広げ、独走体制を固める戦略の旨。V NANDはデータを保存する「cell」を3次元垂直構造に重ねたNAND型フラッシュメモリで、世界でサムスン電子だけが量産している旨。サムスン電子によると、第3世代V NANDはセルを従来の第2世代128G(32段)に比べ1.5倍多い48段まで重ねることができる旨。大きさは従来の製品と同じだが、段数が増えるほどセルをより多く重ねることができるため、保存容量を256Gbまで増やすことができる旨。

◇Samsung ups the SSD ante with faster, higher capacity drives-These look like the fastest consumer drives ever, until someone one-ups Samsung.-Samsung debuts 3 SSDs with 3D NAND flash memories (8月13日付け ITWorld.com)
→Samsung Electronicsが、3D V-NANDフラッシュメモリデバイス搭載の次の3つのsolid-state drives(SSDs)を投入の旨。
 PM1725モデル …3.2 terabyteおよび6.4 TB configurations
 PM1633モデル …480 gigabytes, 960 GB 1.92 TBおよび3.84 TB
 PM953モデル  …480 GB, 960 GB and 1.92 TB sizes

【Foxconnのインドでの拠点展開】

世界最大のEMS(electronics manufacturing services)企業グループ、Foxconnが、向こう5年にわたってインド西部に最大十数の工場を建設する展開に$5 Billionをかけるという内容のMoUを州政府と取り交わしている。上に示したFoxconnとXiaomiのインドでの連携も大きな1つという受け止め方である。

◇Foxconn Plans to Spend $5 Billion on Factories in India's Maharashtra State-Taiwanese electronics manufacturer signs MOU as a ‘first step,’ says state government official-Foxconn commits $5B to building factories in India (8月8日付け The Wall Street Journal)
→Foxconnが、インド西部に最大十数の工場建設を考えている旨。

◇Taiwan's Foxconn plans $5 billion investment over five years in Indian facility (8月8日付け Reuters)

◇Foxconn to invest $5B to set up first of up to 12 factories in India (8月9日付け PCWorld/IDG News Service)

◇Foxconn returns with $5B investment (8月10日付け EE Times India)
→The Indian Express発。世界最大のelectronics contract manufacturingメーカー、Foxconn Technology Groupが、マハーラーシュトラ(Maharashtra)州政府とMemorandum of Understanding(MoU)調印、向こう5年にわたって$5 billionを投資、製造拠点を構築する旨。

【モバイルプロセッサの攻防】

インテルが次期iPhonesに入るmodemビジネスの一部を獲得、Qualcommに置き換わる動きという次の見方である。そのQualcommは、発熱問題が云々されたSnapdragon 810の後継、820を近々展開という見方もあり、攻防の動きに注目である。

◇Intel Said to Unseat Q'Com in iPhone -Analyst pegs modem deal at $1B-Intel takes some iPhone modem orders away from Qualcomm, analyst says (8月12日付け EE Times)
→Northland Capital Marketsのアナリスト、Jeff Sheley氏。Intelが9月打ち上げの運びのAppleの次世代iPhonesにおいてmodemビジネスの一部を獲得、と思われ、該design winはcalendar year 2016年のIntel売上げで約$1 billionになると見積もられる旨。現時点、Intelが9月9日発表予定の次期iPhonesにおけるAppleのmodemビジネスの約50%を獲得する、と見ている旨。

◇Qualcomm lays groundwork for Snapdragon 820 (8月14日付け EE Times India)
→Qualcommが、批判の多いSnapdragon 810の後継をまもなく展開の可能性、同社によると該Snapdragon 820は、全く異なる設計であり、新しいGPU、Adreno 530並びにDSP強化版、そして2つのSpectra 14bit ISPsを搭載の旨。

【16-nm半導体】

これもアップルの次期iPhoneの核となるA9プロセッサの製造について覇を競い合っているSamsungとTSMCであるが、16-nmプロセスの量産対応について予定通り進んでいるというTSMCからの繰り返しと感じる主張である。

◇TSMC says 16nm ramp on schedule (8月11日付け DIGITIMES)
→TSMCがAppleから16-nm半導体受注を削減されているというメディアの憶測の渦中、TSMCは、16-nmプロセスの量産立ち上げが予定に沿ってスムースに進んでいると主張の旨。Appleは、同社次期A9半導体サプライヤ、Samsung ElectronicsおよびTSMCに対して価格を下げるよう要求、SamsungおよびTSMCは、2015年後半に打ち上げ予定の新しいiPhoneモデルに入る該半導体に向けて14/16-nm FinFETプロセスcapacityをすでに用意している旨。

◇TSMC starts producing 16nm chips in volume-TSMC begins volume production of 16nm chips (8月11日付け The Taipei Times (Taiwan))


≪グローバル雑学王−371≫

戦後70年の今年、そしてこの夏、アジアの近隣各国との改めての総括が行われているが、アジアの国々の国際情勢に翻弄された推移と我が国の繋がりについて、

『「逆さ地図」で読み解く世界情勢の本質』
 (松本 利秋 著:SB新書 301) …2015年5月25日 初版第1刷発行

より2回に分けて読み進める1回目である。ベトナム、カンボジア国境で中国とインドに分かれる文化圏から入って、反日にこだわる韓国、そして日本とともに20世紀初頭のアジアの2ヵ国だけであった独立国家の1つ、タイに注目していく。いかし方のない国際関係が為せる事実を、改めて納得するところ、随所である。


第四章 歴史を通じて深く繋がる日本とアジア=2分の1=

■ベトナム、カンボジア国境で分かれるアジア文化圏

◇箸を使う文化と手を使う文化
・東南アジアには、2つに分類できる大きな地理的集団
 →1つは東南アジア大陸部…ビルマ(現ミャンマー)、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム等
 →もう1つは東南アジア島嶼部あるいはマレーシア群島
・ベトナムとラオス、カンボジアの国境線に沿う安南(アンナン)山脈
 →東側は、食事に箸を使う中国文化圏
  西側は、手で食事をするインド文化圏
 →アジアの2つの巨大文化圏がぶつかり合う
・「インド化された王国」…ベトナムの北部とフィリピンを除く東南アジア各地にその痕跡
 →巨大石像・建造物 −インドネシアのボロブドール
           −カンボジアのアンコールワット
・中国大陸の東南沿海部に接するベトナム
 →圧倒的な中国文化の影響の下に置かれるという東南アジアの中でも変わった歴史的経緯

◇20世紀初頭のアジアに独立国は2ヵ国しかなかった
・東南アジアの島嶼部に広まっていったイスラム教、大陸部ではスリランカ系の上座部仏教が信奉
 →ビルマ、タイ、ラオス、カンボジアの4ヵ国では、現在でも国民の大多数が仏教を信仰
・東南アジア諸国は、19世紀の末までにタイを除いて、そのすべてが欧米の植民地に
 →豊かな資源が収奪されていった
・20世紀初頭、アジア全体で中央集権体制を持った独立国家は、日本とタイの2ヵ国のみ
 →当時清国であった中国は、半植民地国家のような状態

◇宗主国の文化・言語で表現せねばならなかった植民地
・東南アジアは、オランダ、イギリス、フランスそしてアメリカによって分割
 →現地の王族や貴族などのエリートたちは、まず宗主国の言葉を習得、西欧の近代文化に触れ、自民族の文化を近代化しようと試みた
・フィリピンがスペイン領であった時代のホセ・リサール(Jose Rizal:1861年-1896年)
 →フィリピン人の生活改善を願った改革者
 →フィリピンの独立を訴えた小説『我に触れるな』はスペイン語
・インドネシアの民族主義運動家で女性解放運動家のカルティニ(Raden Ajeng Kartini:1879年-1904年)
 →オランダ語で『光は闇を超えて』を発表
・自国の言葉で表現し、国民文化を創造していくこと
 →各国はそのための努力を現在も

◇アジア各国は日本の明治維新を手本にした
・戦後、独立を達成し近代国家建設を開始したアジアの指導者たちの前には、旧植民地の負の遺産が横たわる
 →植民地政府によってアジア各地から労働力として連れてこられた各民族は、現地人たちとの間で相互不信を生むことも
・インドネシアでの中国人の存在の例
 →軍事独裁政権であったスハルト政権は、中国人弾圧をしたことで成立
・民族問題のほかにもう1つの重大問題
 →西欧近代化を否定しながらも、自国を近代国家にするためには西欧を無視できないというジレンマ
 →この答えは、伝統と近代を巧みに織り交ぜて成功した日本の明治維新にあると考えた多くのアジアの指導者
・ベトナム独立運動の英雄とされるファン・ポイ・チャウ(Phan Boi Chau)
 →日露戦争直後に訪日、フランス駆逐のために日本へ武器の供与を申し入れ
 →若者に日本の近代化を学ばせるために東遊運動(ドンズー運動)
・第二次世界大戦の敗戦から、目覚ましく復興した日本にいち早く注目、マレーシアのマハティール首相
 →LookEast政策(東方重視策=日本に学べ)
・日本とは非常に親しいインドネシアの初代大統領、スカルノ
 →デヴィ夫人を日本から迎えた
・韓国、北朝鮮、中国を除いたアジアの国々は、現在でも日本と友好関係を保ちながら、自国の発展を目指している

■韓国が反日にこだわる本当の理由は日中に挟まれた地理にある

◇二頭のクジラに挟まれた小エビ
・朝鮮半島を中心に眺める北東アジア
 →この半島は日本と中国という大国に挟まれて常に翻弄されてきた
 →「巨大な二頭のクジラに挟まれた小エビ」(韓国の初代大統領、李承晩[イスンマン])
・長い間アメリカに留学、敬虔なキリスト教徒であった李承晩大統領
 →戦勝国、アメリカの論理に則って、日本に対する敵対意識を盛り上げることに

◇李承晩のライバル、金日成は抗日戦線の英雄
・北朝鮮の金日成が終戦直後、日本軍を打ち破り、朝鮮を解放した抗日パルチザンの英雄として登場
・李承晩大統領は、戦争中はアメリカに居住、都合のよい人物と見られて、戦後にアメリカが連れてきて大統領に
 →一層反日政策を採り、自らの正当性を示そうと躍起に
 →「李承晩ライン」という領海線の中に、竹島を取り込んだ

◇竹島問題を歴史問題としたい韓国
・2012年8月10日、当時の李明博(イミョンバク)大統領の竹島上陸
 →李大統領が過激な言葉を使用、さすがの韓国メディアもその内容の意訳を報道、日本のマスコミもそれに倣ったというのが真相
・日本人にとって、竹島で起こっていることは領土に関する揉め事
 →国際法という客観的な基準に準拠することが大前提
 →これに応じる気配がまったくない韓国の態度への疑念
・「竹島」を歴史認識の問題として捉えると、永遠に決着のつかない問題に

■東南アジアで唯一植民地にならなかったタイ国   …前半

◇東南アジアで独立を保ったタイ
・タイ国を中心にして東南アジアを俯瞰
 →東西交通の要衝であるこの地域の中央に位置
・17世紀後半からの西欧列強のアジア侵略
 →タイ国はそれにも耐え抜いて、今日に至るまで独立した王国として存在
・タイ国は多民族国家、さまざまな情報収集手段に優れ、戦略的に外交交渉を進め、できるだけ争いを避けることに専念
・18世紀後半から19世紀にかけての西欧列強の東南アジア進出
 →当時シャムと名乗ったタイ国(1939年、シャムからタイに改称)にも影響
・タイ国は東と北からフランスが牙を剥き、西と南からはイギリスが吠え立てるという、植民地主義の脅威
 →1867年から1909年までの間、6回にわたってイギリスとフランスに領土を割譲、タイ国の領土はほぼ半減
・タイ国は1855年、イギリスとの間に友好通商条約締結
 →西欧列強の国際秩序に組み込まれる契機に

◇国王自らが積極的に西欧化を受け入れる
・1851年〜1868年に在位したモンクット王
 →タイの国内統一を図り、タイの伝統文化の強化を推進
 →それと同時に、西欧の文明を知るようにも
・1868年〜1910年在位のチュラロンコーン王
 →海外留学のための奨学金を設立
 →現在タイで最難関の国立大学「チュラロンコーン大学」
・タイが独立を保てたのは、強大な外国勢力との戦いを避け、国内の政治的安定を図り、徹底した現実主義的政策を貫き通したことに
 →自らの努力によってイギリスとフランスの信頼を得るように
・イギリスとフランスには、東南アジアで互いの対立をなくし目標を達成するには、タイ国の独立が必要不可欠な条件
・日本は、フランスのインドシナにおける主権と保護権を尊重、英仏間の緩衝国家としてのタイ国独立を間接的に担保することに
 →タイ国を巡る国際環境は、イギリス、フランス、日本の協定で安定した

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