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コロナ禍&米中摩擦の重しの中、健闘の半導体販売高:2020年

新型コロナウイルスによる累計感染者数は金曜25日昼前時点、世界全体で7900万人を超え、1週間前から約425万人と衰えない増加である。該ウイルスの変異種が世界各国から報告され、一層の用心が求められている。2020年が終わろうとしているタイミングでこの1年の半導体業界関連の動きを振り返ってみる。休戦状態で第1段階の合意に年初に至った米中貿易摩擦に対して「COVID-19」インパクトが圧し掛かってきて、当初の何もわからない段階から「第3波」の渦中に至る現時点である。半導体業界は、封鎖による打撃から段階を経て再開していく中、世界全体が対応せざるを得ないNew Normalが引き起こす需要により約5%増の年間販売高が見込まれる健闘である。

≪2020年の動きを振り返る≫

2020年の半導体業界について本欄のタイトル、計51件を分類する形で振り返って以下示しており、次の5つに分けて数字は項目数である。

【「COVID-19」インパクト】   25件
【世界半導体販売高】 12件
【米中摩擦&輸出規制関連】  15件
【新分野・新技術への取り組み】 6件
【業界の実態&構図】  8件

コロナ・インパクトが全体を覆うということで、項目件数には重複がある。
以下、分類ごとに経緯を辿っていく。

【「COVID-19」インパクト】 25件

[朝日新聞グローブ]5月3日付け『世界同時「鎖国」』より、コロナ・インパクトの経過のまとめとして、2019年12月31日、中国・武漢市当局が27人の「原因不明の肺炎患者」を報告、が発端となっている。我が国では、2020年1月15日、中国人男性の感染が確認されている。本欄のタイトルにあらわすことになったのが2月からであり、どんなものかわからない時期にわたって注目させられっぱなしの以下の推移である。コロナ・インパクトが直接あらわれているタイトルのみ取り出している。

2月
新型コロナウイルス・インパクト日々拡大、半導体業界に及ぼす影」 (2月3日号)
2019年世界半導体販売高が12%減の$412 Billion;覆う肺炎インパクト」 (2月10日号)
引き続く新型肺炎「COVID-19」インパクト:MWC中止、半導体関連」 (2月17日号)
「COVID-19」インパクト:Apple売上げ下方修正、半導体関連見方」 (2月25日号)

3月
「COVID-19」インパクト:非常時対応が進む中の半導体業界関連の動き」 (3月2日号)
「COVID-19」インパクト世界的波及の中、1月の世界半導体販売高」 (3月9日号)
「COVID-19」インパクト:世界的激震の渦中の半導体業界関連」 (3月16日号)
「COVID-19」インパクト:中国から欧米へ、半導体業界でも反映」 (3月23日号)
「COVID-19」インパクト:全世界で規制、封鎖;半導体業界への打撃」 (3月30日号)

4月
「COVID-19」インパクト:高まる危機感の中、2月半導体販売高発表」 (4月6日号)
「COVID-19」インパクト:緊急事態宣言、武漢封鎖解除の中の業界関連」 (4月13日号)
「COVID-19」インパクト:半導体業界の危機打開&支援の動き継続」 (4月20日号)
「COVID-19」インパクト:手探りの再開、技術的支援継続、1Q業績」 (4月27日号)

ここらあたりから再開に向かう動きがあらわれている。

5月
「COVID-19」インパクト:新たな米中対立、半導体関連市場の見方」 (5月4日号)
出口&再開に向けて:3月半導体販売高、前月&前年比ともにプラス」 (5月11日号)
経済再開に向けて:高まる米国の圧力の中、中国半導体の躍進ぶり」 (5月18日号)

落ち着き加減と感じられる中、「第2波」を巡る感染懸念の拡大である。

6月
第2波警戒の中の再開:米中摩擦激化、動揺高める半導体市場」 (6月1日号)
依然世界各地警戒:月次販売高、1-4月連続$34B以上踏み止まり」 (6月8日号)
コロナ・インパクト乗り越えに向け、半導体関連の見方&動き」 (6月22日号)

7月
「第2波」拡大懸念の中:5月世界半導体販売高、米国での製造、…」 (7月6日号)
コロナ逆風下、市場優位&新たな開拓に向けたM&Aの動き活発化」 (7月20日号)
コロナ一層警戒下、国益確保に向け各国政府の絡む半導体関連の動き」 (7月27日号)

8月
感染拡大&米国GDP急落:好業績のIntel、7-nmの遅れの広がる波紋」 (8月3日号)
感染拡大の中の各国舵取り:6月、第二四半期、上半期ともに5.1%増」 (8月11日号)
引き続く感染拡大:米国制裁実施を控えた米中双方の関連する動き」 (8月17日号)

タイトルに直接インパクト関連があらわれるのはここまでで、以降は半導体業界関連となっているが、少し小康状態を経て「第3波」に巻き込まれて至る現時点である。世界の感染状況から入らざるを得ないまえがきがいまもってであり、しばらくは続けざるを得ないところである。

コロナ・インパクトから逃れられない本年の振り返りであるが、通例の分類で以下のまとめである。

【世界半導体販売高】 12件

米国・Semiconductor Industry Association(SIA)からの月次世界半導体販売高データの月毎の経緯である。インパクトを受ける中、踏みとどまって2019年から5.1%増の年間販売高が見込める現時点となっている。在宅需要がデータセンター、ゲーム機はじめ大きく下支えする見方が優勢である。

11月の世界半導体販売高が前月比僅かに減、2020年に戻しの期待」 (1月6日号)
2019年世界半導体販売高が12%減の$412 Billion;覆う肺炎インパクト」 (2月10日号)
「COVID-19」インパクト世界的波及の中、1月の世界半導体販売高」 (3月9日号)
「COVID-19」インパクト:高まる危機感の中、2月半導体販売高発表」 (4月6日号)
出口&再開に向けて:3月半導体販売高、前月&前年比ともにプラス」 (5月11日号)
依然世界各地警戒:月次販売高、1-4月連続$34B以上踏み止まり」 (6月8日号)
「第2波」拡大懸念の中:5月世界半導体販売高、米国での製造、…」 (7月6日号)
感染拡大の中の各国舵取り:6月、第二四半期、上半期ともに5.1%増」 (8月11日号)
月次世界半導体販売高、1-7月、$35 billion前後維持、逆風下健闘」 (9月7日号)
8月半導体販売高、7ヶ月連続で前年比増;引き続く米国規制の余波」 (10月12日号)
増勢続く世界半導体販売高:高まるインテル絡みのM&Aインパクト」 (11月2日号)
10月世界半導体販売高、2年ぶり高水準、2021年過去最高の期待」 (12月7日号)

遡って、2016年後半から2年あまり史上最高を更新し続ける勢いの熱い活況が続いた半導体業界であるが、そこからの販売高の推移の見方を続けていて、現時点以下の通りである。本年のしり上がりの健闘が続いていくという期待感が膨らんでおり、来年、2021年の年間販売高がこれまでの最高、2018年の$468.94 billionを上回る可能性の見方につながっている。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
(月初SIA発表)
2016年 7月 
$27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月 
$28.03 B
0.5 %
3.5 %
2016年 9月 
$29.43 B
3.6 %
4.2 %
2016年10月 
$30.45 B
5.1 %
3.4 %
2016年11月 
$31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月 
$31.01 B
12.3 %
0.0 %
$334.2 B
 
2017年 1月 
$30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月 
$30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月 
$30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月 
$31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月 
$31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月 
$32.64 B
23.7 %
2.0 %
2017年 7月 
$33.65 B
24.0 %
3.1 %
2017年 8月 
$34.96 B
23.9 %
4.0 %
2017年 9月 
$35.95 B
22.2 %
2.8 %
2017年10月 
$37.09 B
21.9 %
3.2 %
2017年11月 
$37.69 B
21.5 %
1.6 %
2017年12月 
$37.99 B
22.5 %
0.8 %
$405.1 B
 
2018年 1月 
$37.59 B
22.7 %
-1.0 %
2018年 2月 
$36.75 B
21.0 %
-2.2 %
2018年 3月 
$37.02 B
20.0 %
0.7 %
2018年 4月 
$37.59 B
20.2 %
1.4 %
2018年 5月 
$38.72 B
21.0 %
3.0 %
2018年 6月 
$39.31 B
20.5 %
1.5 %
2018年 7月 
$39.49 B
17.4 %
0.4 %
2018年 8月 
$40.16 B
14.9 %
1.7 %
2018年 9月 
$40.91 B
13.8 %
2.0 %
2018年10月 
$41.81 B
12.7 %
1.0 %
2018年11月 
$41.37 B
9.8 %
-1.1 %
2018年12月 
$38.22 B
0.6 %
-7.0 %
$468.94 B
 
→史上最高
 
2019年 1月 
$35.47 B
-5.7 %
-7.2 %
2019年 2月 
$32.86 B
10.6 %
-7.3 %
2019年 3月 
$32.28 B
13.0 %
-1.8 %
2019年 4月 
$32.13 B
14.6 %
-0.4 %
2019年 5月 
$33.06 B
14.6 %
1.9 %
2019年 6月 
$32.72 B
16.8 %
-0.9 %
2019年 7月 
$33.37 B
15.5 %
1.7 %
2019年 8月 
$34.20 B
15.9 %
2.5 %
2019年 9月 
$35.57 B
14.6 %
3.4 %
2019年10月 
$36.59 B
13.1 %
2.9 %
2019年11月 
$36.65 B
10.8 %
-0.3 %
2019年12月 
$36.10 B
-5.5 %
-1.7 %
$411.10 B
 
2020年 1月 
$35.39 B
-0.3 %
-2.2 %
2020年 2月 
$34.50 B
5.0 %
-2.4 %
2020年 3月 
$34.85 B
6.9 %
0.9 %
2020年 4月 
$34.43 B
6.1 %
-1.2 %
2020年 5月 
$34.97 B
5.8 %
1.5 %
2020年 6月 
$34.53 B
5.1 %
-0.3 %
2020年 7月 
$35.20 B
4.9 %
2.1 %
2020年 8月 
$36.23 B
4.9 %
3.6 %
2020年 9月 
$37.86 B
5.8 %
4.5 %
2020年10月 
$39.03 B
6.0 %
3.1 %


【米中摩擦&輸出規制関連】  15件

「第1段階合意」署名でスタートして小康状態にあった米中貿易摩擦であるが、コロナ「第2波」あたりから激化の様相となって、米国がHuawei、そしてSMICを標的に輸出制限の制裁措置に踏み切っていく、以下の推移である。
米中の狭間にあって、最先端微細化で世界に先行するTSMCはじめ台湾市場の急伸長が注目されるところとなっている。

米国発2点:米中「第1段階合意」署名、2019年半導体ランキング」 (1月20日号)
「COVID-19」インパクト:新たな米中対立、半導体関連市場の見方」 (5月4日号)
経済再開に向けて:高まる米国の圧力の中、中国半導体の躍進ぶり」 (5月18日号)
米国の対中強硬姿勢:TSMCの米国新工場計画が巻き起こす波紋」 (5月25日号)
第2波警戒の中の再開:米中摩擦激化、動揺高める半導体市場」 (6月1日号)
米中摩擦の波及:HuaweiおよびTSMC関連、米国半導体業界関連」 (6月15日号)
米中摩擦の引き続く波紋:分断/断絶、資金調達、製造/出荷」 (7月13日号)
引き続く感染拡大:米国制裁実施を控えた米中双方の関連する動き」 (8月17日号)
米国の対中追加制裁発効間近、Huawei、SMICはじめ広範に走る動揺」 (9月14日号)
業界に2つの衝撃&混乱:NvidiaのArm買収 & 米国のHuawei制裁発効」 (9月23日号)
米国の対中制裁コントラスト:最高の活況の台湾 vs. 苦境のHuawei」 (9月28日号)
米国のHuaweiに加えSMICへの輸出規制、波及する多様なインパクト」 (10月5日号)
米国の制裁下、厳しい局面続きの中国半導体業界および関連評論」 (11月24日号)
米中摩擦の狭間、半導体業界における台湾の急伸長および脈動」 (11月30日号)
米中摩擦の渦中、中国と台湾、半導体業界それぞれの伸び&障壁」 (12月21日号)

【新分野・新技術への取り組み】 6件

インパクトが圧し掛かる中、AI、5Gなどの新分野、最先端微細化、そして注目の新製品関連と、中身の濃い内容の以下の取り上げである。直近では、アップルなどGAFAの自前設計への波動が、これまでの半導体業界の構図に如何に影響を与えていくか、注目されるところである。

「AI、5Gなどに向けた各社競演、世界の摩擦&緊張の中のCES 2020」 (1月14日号)
盛り返す中、相続く問題意識:AI規制、顔認識技術、サイバー攻撃」 (1月27日号)
最先端アプローチ、インテルとSamsungそれぞれの取り組みから」 (8月24日号)
3-nmプロセス"N3"、2-nmも視野のTSMC、米中の狭間での急進ぶり」 (8月31日号)
米国規制下のAppleの新型iPhone発表、スマホ&半導体市場への波紋」 (10月19日号)
アップルの自社設計開発半導体搭載パソコン「Mac」発表の波紋」 (11月16日号)

【業界の実態&構図】  8件

インパクト&激動の中での半導体業界のいろいろな切り口での波紋、波動を追った以下の取り出しである。大規模で活発なM&Aの動きが見られ、GAFAそしてBATHを巡る米中両政府の追求の目など、2021年に引き続いて目が離せない変化、変動である。

最前線更新模様:スパコン性能、Macプロセッサ、中国メモリ半導体」 (6月29日号)
コロナ逆風下、市場優位&新たな開拓に向けたM&Aの動き活発化」 (7月20日号)
コロナ一層警戒下、国益確保に向け各国政府の絡む半導体関連の動き」 (7月27日号)
感染拡大&米国GDP急落:好業績のIntel、7-nmの遅れの広がる波紋」 (8月3日号)
業界に2つの衝撃&混乱:NvidiaのArm買収 & 米国のHuawei制裁発効」 (9月23日号)
注目の動き2点:米司法省のGoogle提訴、インテルのNAND事業売却」 (10月26日号)
最先端技術&製品&生産、米中摩擦を巡って、打開を図る多彩な動き」 (11月9日号)
巨大IT、新分野リーダーを巡る様々な動き:独禁法、M&A、移転、…」 (12月14日号)


コロナ禍のもと、いっそう収まらない状況推移に対して当面の警戒感を伴った舵取りが各国それぞれに引き続き行われている世界の概況について、以下日々の動きからの抽出であり、発信日で示している。

□12月20日(日)

米国議会の新型コロナ追加対策が、やっとのこと、合意、採決に至っている。

◇Deal reached on $900B coronavirus relief package; votes likely Monday-Congress likely to vote today on $900B relief package-Legislative text still being finalized, as Trump signs one-day stopgap funding bill (Roll Call)
→米議会leadersが、約$900 billion規模のcoronavirus救済packageで合意、lawmakersが本日承認見込みの旨。交渉関係者は、Federal Reserve(FRB)の緊急貸付制度を巡る土壇場の問題を打開できた旨。

◇米、9000億ドル追加コロナ対策発動へ、与野党大筋合意 (日経 電子版 15:48)
→米議会の与野党指導部は19日、9000億ドル(約93兆円)規模の追加の新型コロナウイルス対策を発動することで大筋合意した旨。20日にも最終法案を策定し、上下両院で採決する旨。中小企業の雇用対策や失業保険の特例加算などを盛り込み、景気回復の減速懸念を払拭する旨。

□12月21日(月)

◇米議会、93兆円追加対策で最終合意、上下両院で採決へ (日経 電子版 10:31)
→米議会の与野党指導部は20日、9000億ドル(約93兆円)規模の追加の新型コロナウイルス対策を発動することで最終合意した旨。法案の確定を急ぎ、21日に関連法案を採決する方向。中小企業の雇用対策に3000億ドルを充てるほか、失業保険の特例加算なども盛り込んだ旨。米国は新型コロナの感染再拡大が深刻だが、大型の財政出動で景気不安を払拭する旨。

□12月22日(火)

そこにTrump大統領の横槍が入っている。議会は再可決で押し通そうとしている。

◇Trump demands changes to $900bn US stimulus package (Financial Times)

米国株式市場は、追加経済対策への期待、ワクチン普及などの好材料から、概して上げ基調の推移である。

◇NYダウ、70ドル高で推移、経済対策期待で上げに転じる (日経 電子版 05:23)
→21日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、15時現在は前週末比74ドル01セント高の3万0253ドル06セントで推移している旨。新型コロナウイルスの変異種への懸念からダウ平均は朝方に一時400ドル超下落したが、売り一巡後は徐々に下げ幅を縮め、午後に上げに転じた旨。米政府の追加経済対策への期待から買いが優勢となった旨。

□12月23日(水)

◇Trump threatens to not sign COVID-19 bill, wants bigger stimulus checks-Trump says he might refuse to sign relief bill (Reuters)
→Donald Trump大統領が、議会が承認した$900 billion coronavirus救済packageには署名しないとしており、"恥辱"と呼んでいる旨。同氏は、個人直接給付$600を$2,000に上げるべき、としている旨。

Trump大統領は、防衛関連法案にも拒否のスタンス、これには半導体関連が含まれて、米国・SIAからの早速のステートメントである。

◇Congress Needs to Override President's Veto of NDAA (SIA Latest News)
→Semiconductor Industry Association(SIA)が、National Defense Authorization Act(NDAA)のTrump大統領の拒否権に対し、遺憾とするステートメントをリリースの旨。該NDAAには、半導体製造および半導体リサーチへの連邦投資を推進する連邦incentivesを認可するTitle XCIX, “Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America”が含まれる旨。

◇NYダウ145ドル安、追加経済対策の成立で利益確定売り (日経 電子版 05:13)
→22日の米ダウ工業株30種平均は反落し、15時現在は前日比145ドル48セント安の3万0070ドル97セントで推移している旨。米議会が21日に9000億ドル規模の追加経済対策を可決し、目先の材料出尽くしとみた利益確定売りが優勢となった旨。半面、スマートフォンのアップルなどハイテク株が買われ、ダウ平均を下支えしている旨。

□12月24日(木)

Trump大統領の法案拒否関連が続く。

◇Trump's attack on Covid relief bill could lead to government shutdown, lapse in unemployment aid-Trump refuses to sign pandemic relief bill (CNBC)

◇トランプ氏、国防法案で拒否権、議会は再可決方針 (日経 電子版 07:08)
→トランプ米大統領は23日、2021会計年度(2020年10月〜2021年9月)の国防予算の大枠を定める国防権限法案に拒否権を行使すると表明、海外駐留米軍の削減に足かせをはめる条項などに不満を示した旨。米議会の上下両院は3分の2の賛成多数で再可決して成立させる方針。

◇NYダウ反発、200ドル超高で推移、ワクチン普及に期待 (日経 電子版 05:14)
→23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発、15時現在は前日比216ドル73セント高の3万0232ドル24セントで推移している旨。米製薬のファイザーが23日、来年7月までに1億回分の新型コロナウイルスワクチンを追加供給する契約を米政府と結んだと発表、先行きの経済活動の正常化への期待が強まり、景気敏感株を中心に買いが優勢となった旨。

□12月25日(金)

英国とEUの通商協定合意は、好材料である。

◇英EU、通商協定で合意、関税ゼロ維持へ (日経 電子版 05:36)
→英国と欧州連合(EU)は24日、新たな自由貿易協定(FTA)など将来関係を巡る交渉で合意、ジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長がそれぞれ表明した旨。英・EU間の関税ゼロでの貿易が維持される可能性が極めて高くなった旨。
英EU離脱(ブレグジット)の移行期間である年内中に双方が議会での承認や暫定適用の手続きを済ませれば、懸念されていた年明けからの経済活動の混乱は回避される旨。

◇NYダウ続伸70ドル高、英EUの通商交渉合意を好感 (日経 電子版 05:28)
→24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸、前日比70ドル04セント高の3万0199ドル87セントで取引を終えた旨。英国と欧州連合(EU)は24日、新たな自由貿易協定(FTA)の交渉で合意、英国のEU離脱を巡る不透明感が後退し、投資家心理が改善した旨。クリスマス前日の午後1時までの短縮取引で参加者は限られ、売買は低調だった旨。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連】

上記の米国の追加コロナ経済対策には、HuaweiおよびZTEの装置を置き換える費用関連も入っているとのこと。

◇U.S. lawmakers back $1.9 billion to replace telecom equipment from China's Huawei, ZTE - sources-Report: Relief bill to help with the swap out of Chinese gear (12月20日付け Reuters)
→議会leadersが合意したとされるCOVID-19救済packageには、carriersが中国のHuawei TechnologiesおよびZTE製の装置を置き換える支援の$1.9 billionが入っている旨。該$900 billion対策は、broadband access改善に向けた資金も割り当ての旨。

中国・SMICの米国貿易ブラックリスト入りについて、SMIC側からのインパクトの受け止めである。

◇SMIC says U.S. blacklisting will hurt its advanced technology R&D-SMIC: US blacklisting will be a drain on its technology R&D (12月20日付け Reuters)
→中国最大の半導体メーカー、SMICが日曜20日、米国貿易ブラックリストに載せられることは同社の10-nanometer以降の先端半導体技術におけるresearch and development(R&D)に大きく不利なインパクトになる、としている旨。

◇中国SMIC、「先端技術の開発に影響」、米の禁輸措置で (12月21日付け 日経)
→中国の半導体受託生産最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)は20日、米商務省から受けた先端技術に関わる禁輸措置について「回路線幅が10-nm以下の先端技術の研究開発や生産設備の建設に重大な不利な影響がある」との初期的な評価を発表した旨。
習近平(シー・ジンピン)指導部は米国企業に依存している半導体の国産化を目指しており、SMICはその牽引役を担っている旨。政権交代前に中国の半導体国産化の阻止を目指すトランプ米政権の新たな措置で中国への影響は避けられない見通し。

米国側からは、SMICにまだ"逃げ道"とさらなる締めつけを図る動きである。

◇Two lawmakers urge U.S. to further tighten restrictions on China's SMIC-US lawmakers call for tighter restrictions on SMIC (12月22日付け Reuters)
→米国上院議員、Marco Rubio氏(R-Fla.)および下院議員、Michael McCaul氏(R-Texas)が、中国最大のファウンドリー、Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)を商務省のEntity Listに載せるのは十分な制限ではなく、同社は依然"危険な抜け穴"を利用できるとしている旨。一方、北京のInformation Consumption Allianceのdirector-general、Xiang Ligang氏は、「SMICは生産を続けるのに必要な非常に重要な装置&材料を得ている。」としている旨。

◇How Chinese Chip Giant SMIC Can Evade Trump's Newest Crackdown (12月23日付け Bloomberg)

【TSMC関連】

最先端微細化で世界を引っ張る立場に上がってきている台湾・TSMCを巡るさまざまな動き。

台湾南部のハイテクパークで、TSMCの拠点に集まる半導体装置&材料サプライヤである。

◇Major IC equipment, materials vendors deepening presence in Taiwan-Sources: IC gear, semi materials vendors flock to Taiwan (12月22日付け DIGITIMES)
→業界筋発。国際的半導体装置&材料サプライヤの多くが、Southern Taiwan Science Park(STSP)に密集するTSMCのecosystemへのより良い対応を求めて台湾での投資を踏み上げ、あるいは運用を強化している旨。

来年のTSMCの5-nm capacityについて、割り当ての景観があらわされている。

◇Apple, Arm have secured 80% of TSMC's 5 nm capacity for 2021-Apple, Arm lock up majority of TSMC's 2021 5nm capacity-Remaining capacity expected to go to Broadcom, MediaTek, Qualcomm, and Marvell among others (12月22日付け Taiwan News)
→AppleおよびArmが、2021年第一四半期の間に量産に入るTSMCの5-nanometerプロセスで作られる半導体について、来年のTSMCのcapacityの80%を占める旨。残る5nm capacityが、Broadcom, Marvell Technology Group, MediaTek, Qualcommなどファブレス半導体各社に割り当てられる旨。

台湾政府が、TSMCの米国・アリゾナ工場の取り組みを承認している。

◇Taiwan approves TSMC chip plant in Arizona (12月22日付け Focus Taiwan)
→台湾政府が、TSMCが米国Arizona州で計画している半導体工場を承認、約8年で最大の台湾の会社による海外投資の旨。

そのアリゾナ工場への人材の手当てが、以下の通りである。

◇台湾TSMC、米新工場に600人超投入、現地採用も (12月24日付け 日経)
→半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、米アリゾナ州に建設する新工場の稼働に向け、当初600人超の投入を計画していることが明らかになった旨。2021年から新工場を建設し、既に技術者や管理職の300人超からなるタスクフォースを立ち上げた旨。近く台湾から米国へ派遣する予定。

◇TSMC recruiting for Arizona-Report: TSMC recruits in Arizona to fill 600 positions (12月24日付け Electronics Weekly (UK))
→Nikkei発。TSMCが、同社のArizona fabに向けた採用を行っており、600人のR&Dエンジニア, プロセスエンジニア, 装置エンジニア, ITソフトウェアエンジニアなどfab操業に必要なpositionsを求めている旨。

TSMCが台湾南部のハイテクパークで取り組む3-nmプロセスについて、アップルとの契約が次の通りである。

◇TSMC secures Apple contract for its 3 nm process chips-TSMC will make 3nm chips for Apple in 2021-22 -Apple plans to use the 3 nm chipsets for its own M-series processors and A-series chips (12月23日付け Taiwan News)
→TSMCが、Appleに3-nmプロセスを用いる半導体を供給する取引を獲得の旨。Appleは、TSMCの当初の3-nm生産capacityを契約する最初の会社であり、Mac notebooksおよびiPadsの次世代に向けたM-シリーズプロセッサおよびiPhone用A-シリーズプロセッサを生産、とUDN発。TSMCは現在、台南のSouthern Taiwan Science Parkにて3-nmプロセスfabを建設している旨。

活況の一方、米中の狭間の台湾。先々に目を遣る論調が続いている。

◇台湾TSMC巡り攻防―半導体技術圏、米中で分断、影薄い日本、問われる戦略(真相深層) (12月23日付け 日経)
→「九段線で囲い込まれた宝を救い上げなければならない」――。ワシントンの元米外交官はこう熱弁をふるった。
「宝」とは半導体受託生産(ファウンドリー)で世界最大の台湾積体電路製造(TSMC)のこと。クアルコム、エヌビディアなど米国の半導体企業は、その製造の大半をTSMCに委ねる。
台湾は中国が領有権を主張する九段線の内側にある。TSMCの工場は西岸の新竹市に集中し、海峡の先の中国福建省寧徳市には人民解放軍の水門空軍基地がある。戦闘機で約7分の距離だ。
世界の半導体ファブレス企業はTSMCの圧倒的な技術がなければ、製品をつくれない。その拠点が万が一中国の手中に落ちれば、米国と同盟国の供給網は崩壊する。

【巨大ITの自前設計】

上記の本年の総括でも触れたGAFAの自前設計への傾斜の流れであるが、マイクロソフトでの同様の流れが取り沙汰されている。Intelはじめこれまでのサプライヤには、非常に大きなインパクトを孕んでいる。

◇Microsoft reportedly designing its own ARM-based chips for servers and Surface PCs-Report: Microsoft designs Arm-based chips for computers-A warning shot to Intel (12月18日付け The Verge)
→Bloomberg News発。Microsoftが、Azure cloud computingサービス用サーバおよびあるSurface PCモデルで用いられるArm-ベース・プロセッサを開発している旨。該社内custom半導体は、Intel, Advanced Micro Devices(AMD)およびQualcommが供給するコンポーネントに置き換わっていく旨。

◇Microsoft is designing its own Arm chips for datacenter servers: Report-We already knew Microsoft was working to bring Arm-powered servers for internal use to its cloud datacenters. But what and when will this mean anything to its customers? (12月18日付け ZDNet)

現下の自前設計の流れの分析が見られている。

◇Chip Giants Intel and Nvidia Face New Threats From Amazon to Google to Apple -Amazon, Apple, Google, Microsoft design their own chips-Custom chip making has exploded at large tech companies, driven by expanding balance sheets and the growth of AI (12月20日付け The Wall Street Journal)
→Amazon, Apple, GoogleおよびMicrosoftがみんな、このところ自前のcustom半導体を設計しており、Intel, Advanced Micro Devices(AMD)およびNvidiaなど従来のmicrochipsサプライヤに新たな課題となっている旨。
「1990年代のIntelは顧客のすべてを一桁上回る規模であったのに対し、現在は該顧客が該サプライヤに優る規模を持つ。」と、money management company、ARK Investment Management(New York)のアナリスト、James Wang氏。

【アップルの車の取り組み】

2014年に最初の車載関連の取り組みが打ち上げられて、その後後退した経緯があるアップルが、こんどは2024年までに自動運転電気自動車(EVs)の販売を開始との報道が出て、慌ただしい反応が伺える以下の内容である。テスラのElon Reeve Musk氏からは、過去にアップルに買収するよう持ち掛けたが、袖にされたと明かされている。

◇Apple wants to make cars by 2024 (Really?) (12月22日付け FierceElectronics)
→Reuters発によると、Appleが自前の電池およびlidar技術が入るある水準のautonomy搭載の乗用車を2024年までに生産する計画の旨。同社は、自動車計画は何ら発表しておらず、Appleの計画を知る3つの匿名筋からのコメントに基づく報道の旨。Appleは、Project Titanで2014年に車載領域に最初に入ったが、Appleのveteran、Doug Field氏が該取り組みに従事の約200人をレイオフして2019年に見直している旨。

◇Velodyne, Luminar, QuantumScape stocks soar on news about Apple's self-driving car (12月22日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→ここ数ヶ月で上場したSilicon Valleyのlidarおよび先端電池の3社の株価が、Apple社が2024年に自動運転電気自動車(EVs)の販売を開始する可能性の報道を受けて月曜21日新高値に急上昇の旨。

◇Apple、2024年のEV生産開始を検討、ロイター報道 (12月22日付け 日経 電子版 09:00)
→ロイター通信は21日、米アップルが2024年の電気自動車(EV)の生産開始を目指し、車載電池技術の開発を進めていると報じた旨。同社は自動運転技術の研究に取り組むなど、モビリティー分野への進出が長年取り沙汰されてきた旨。実現すれば、既存の自動車大手にとっては米テスラに続く脅威となりそう。

◇Why Car? Here's What We Think Apple Wants from ‘iCar’ (12月23日付け EE Times)
→Appleが本当にiCarをつくる計画か?“iCar”の噂が何年も巡り、そしてまた巡り直している旨。

【巨大ITへの公正取引の追求】

米国政府がGAFAを相手取って公正取引、独占禁止の追求攻勢を強めているが、中国の方も、BATHに対する統制強化の動き、以下、関連の内容である。

◇Google, Facebook agreed to team up against possible antitrust action, draft lawsuit says - WSJ-Report: Google, Facebook agreed to fight antitrust suit together (12月22日付け Reuters)
→Wall Street Journal、月曜21日遅く発。Facebook社とAlphabet社のGoogleが、オンライン広告で協働する協定に調査が入る場合、"互いに協力、助け合う"ことで合意の旨。

◇中国、ネット企業の統制さらに、独禁法改正へ (12月24日付け 日経 電子版 04:51)
→中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は2021年にも独占禁止法を改正する方針を固めた旨。法改正で大手ネット企業の独占行為などの取り締まりを強化する旨。市場での影響力を高めているアリババ集団や騰訊控股(テンセント)などのネット大手を牽制する狙いもあるとみられ、中国経済の成長を引っ張ってきたネット企業の競争力に響き、イノベーション(技術革新)を阻む恐れもある旨。

中国では、まずアリババが標的になっている。

◇中国当局、アリババを独禁法違反の疑いで調査 (12月24日付け 日経 電子版 12:21)
→中国の規制当局は24日、中国ネット大手のアリババ集団を独禁法違反の疑いで調査を始めたと発表、アリババ集団傘下の金融会社アント・グループに対しても近く指導する旨。習近平(シー・ジンピン)指導部が中国経済で影響力を高めてきた巨大なネット大手への統制を本格的に強化した格好。

【サイバー攻撃】

ソフトウェアの欠陥を突くハッカー攻撃が、米国政府機関およびインテル、シスコなど大手各社に行われている、と以下の通りである。以下の≪グローバル雑学王≫にて以前読んだ『サイバー戦争の今』の内容を、改めて思い起こしている。

◇Big tech companies including Intel, Nvidia, and Cisco were all infected during the SolarWinds hack-SolarWinds hack hit Intel, Nvidia, Cisco, others-The full extent of the hack is still being investigated (12月21日付け The Verge)
→SolarWindsからのOrionソフトウェアにおけるセキュリティ欠陥を利用するhackが、いろいろな連邦政府機関およびCisco Systems, Intel, NvidiaおよびVMwareなどいくつかのハイテク会社を攻撃の旨。Wall Street Journalは、問題の該ソフトウェアがハッカーたちに"非常に敏感な企業および個人データへのアクセスの可能性"を与えた、としている旨。

◇NVIDIA and Intel used compromised SolarWinds software-The list of affected organizations keeps growing. (12月21日付け Engadget)

◇米サイバー攻撃、インテルやシスコなども標的に、米報道 (12月22日付け 日経 電子版 05:23)
→米政府機関などが大規模なサイバー攻撃を受けていた問題で、米半導体大手インテルや通信機器大手シスコシステムズなど20超の企業や大学などが攻撃対象となっていたことが21日、わかった旨。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)が報じた旨。サイバー攻撃の対象は政府のみならず大手企業にも広がっている旨。


≪グローバル雑学王−651≫

シリコンバレーのそもそもから、短い「栄枯盛衰」のサイクルの中で1世紀半を生き残って、GAFA席巻などまさに今激しい変容に見舞われている現時点まで、

『シリコンバレーの金儲け』
 (海部 美知:講談社+alpha;新書 831-1 C) …2020年7月20日 第1刷発行

より、ビジネスモデルの変遷を辿ってきたが、今回で読み納めである。シリコンバレーにおける日本企業は、1980年代ではライバルであったが、中国の存在があってかいまは親近感の高まるお付き合い、とあらわされている。締めは、シリコンバレーから日本は何を学ぶか。コロナ禍に見舞われて、否応なく迫られる「Digital Transformation」(Dx)であり、徐々に進んできている現下の実態であるが、日本の一般的なビジネスパーソンのITリテラシー(活用力)の低さは目を覆うばかり、という下りが見られて、最盛期のものづくりと拡販の歯車の一役に追われた我が身も打ち消しようのないところである。New Normalの世界に入っていろいろ意識改革に日々努めている現在、ITアプローチもシリコンバレーに学ぶスタンスの重みを感じるところ、すでにそうなりつつあることを願うところである。


第3部 これからのお話

第9章 日本企業とシリコンバレー

◆日本のささやかな復権
・一時は、シリコンバレーでも中国が人気に
 →AIや通信などの技術やプロダクトの面でも、徐々に大きくなった中国の存在感
 →例:ショートビデオをシェアする「TikTok」
  →アメリカのティーンの間で大人気となった最初の中国ブランド
 →しかし、多くのアメリカの企業や投資家が、中国の政治体制や価値観の違いにぶち当たった
 →アメリカ国内での中国に対する信頼感が徐々に低下
・主なビジネス相手の他の先進国と比べて、相対的に日本に対してはpositiveな見方が増えている
 →最近は、シリコンバレー・ベンチャーの海外進出先として、日本の重要度が高くなるケース
 →英語圏を優先する企業が多いために、逆に同業同士の競争が少なく、よい商売になるという話も
・例:ビデオ会議システムのZoom
 →「日本は有料顧客が多く、アメリカに次ぐ市場規模」(同社創業者CEO、Eric S. Yuan氏)
 →Zoomの「同期生」、企業向けグループチャットのSlackでも、日本は有料顧客が多い世界第2の大市場
・私(著者)が最初にカリフォルニアに来た1980年代
 →日本への興味は「ライバル、競争相手」としての研究対象
 →最近はもっと親近感のある興味に変わってきて、ささやかな日本の復権が進行中
・サンフランシスコ・ベイエリアに存在する日系企業の数
 →2017年末時点で913社
 →2000年ドットコム・バブル時代のピーク、680社をはるかに超え、引き続き増えている
 →以前は、エレクトロニクス・IT系が多かった
 →最近では機械などの製造業、外食・食品産業、アパレル・生活雑貨小売りなど、多様化
・シリコンバレーは、日本企業に限らず、出自がどこであっても「ヨソモノ」には冷たいところ
 →ある程度の時間をかけて根付くことがどうしても必要に

◆投資だけではない日本企業とシリコンバレーとのお付き合い
・新型コロナ後、これまでと同じ形での日米の行き来はできなくなる
 →とはいえ、大きな流れを見る限り、今後も何かと付き合いは続く
 →業種多様化に伴って、お付き合いの仕方も多様化
 →問われる、流れる川のように変化するシリコンバレーに対応する力

第10章 シリコンバレーから日本は何を学ぶか

◆Dxは「金型」を目指す
・日本でちょっとした流行語、「Digital Transformation」(Dx)
 →「企業の業務やプロダクトそのものにディジタル技術を取り入れて改善する」
・アメリカでも、もともとディジタルではない、伝統的な大企業が、種々のディジタル戦略を取り入れるように
 →事例:世界最大の小売りチェーン、Walmart
  →Walmart Labsを設立、「アマゾンに負けない」ためのディジタル化戦略を開始
・アメリカでも日本でも、Dxの推進
 →GAFAにやられて自分の商売が死んでしまう、という危機感
・日本の一般企業が、どうやってDxに立ち向かうべきか
 →それぞれの企業が、汗をかいて情報を集め、自分の頭で考えていくしか
 →Dxを推進したい「革新派」の方々にとってはチャンス

◆WhatではなくHowを学ぶ
・アメリカ大企業のDxも、「試行錯誤」の繰り返し
 →シリコンバレーは、それ自体が巨大な「試行錯誤のための実験場」
 →シリコンバレーがいま注目されるのは、「NBT」がわからない中で進むべき方向を決めるための「試行錯誤」がやりやすい場所であるから
・「How」、つまり試行錯誤の上手な具体的なやり方
 → 屮ープンイノベーション」
   →「外」のリソースの活用
   →世界中の自動車会社がこぞって、シリコンバレーにオフィスを開設
 →◆PDCA(Plan-Do-Check-Adjust)」の考え方を使った「迅速なアップデート」
   →完璧に作り上げることなく早めにプロダクトを出し、ユーザが少ないうちに失敗を表面化させ、迅速アップデートしていく
 →「許容範囲」の設定の仕方
   →VCでは、1つひとつの投資先ベンチャーが成功するか失敗するかという点よりも、複数の投資先ベンチャーのうちいくつかが成功すればよい、という「portfolio」の考え方で臨む
・ベンチャーや新事業の場合、「絶対失敗しない」ということはありえず、「試行錯誤」「PDCA」が不可欠
 →portfolioで考えたり、ある程度の指標を設けたりする
・AmazonやGoogleなど、ダメだとわかると、サッサとやめてしまう
 →「Googleの新サービスはいつまで続くか信用ならない」という批判があるのも事実
・せいぜい170年ほどしか歴史のないシリコンバレー
 →「NBTがわからない」状況への対応は、日本よりも経験が豊富

◆まず経営者・管理職がITを使ってみる
・長い間、「日本はソフトウェアが苦手だ、ソフトではアメリカに勝てない、だからモノづくりだ」という諦めの風潮
 →日本にも「先進ユーザ」はいるが、それ以外の一般的なビジネスパーソンのITリテラシー(活用力)の低さは目を覆うばかり
 →最初から手を動かしてみようとしない、挙句にわからないことを自慢するような大人が、IT人材やAI人材をどうやって育てればよいかがわかるはずはない
・ベンチャーがシリコンバレーで盛んに興るのは、「大人側」の大企業がこれらのベンチャーを買収したり、新しくできたプロダクトを使ったり、という役割を担っているから
 →シリコンバレーではみんながどんどん新しいサービスを使う、すなわちベンチャーのお客が近くにたくさんいるという点がとても重要
・大企業がこうした優秀なベンチャーを買収したりお客さんになったりすれば、大企業の競争力が増し、日本の国際競争力が増大
 →ITサービスの導入促進は、「働き方改革」のための業務効率のためにも非常に重要
・いまの日本に大切なのは、すでに身近にいくらでもあるITをどんどん活用し、産業を活性化すること
 →重要なのは、AIよりもUX(ユーザ・エクスペリエンス)
・「上から下まで、手を動かしてITを使いこなす」こと
 →停滞気味な日本の産業や社会において、金型効果を使った「第5.5世代」の金儲けを可能にし、未来を拓くことの第一歩に

≪エピローグ ニュー・ノーマルの世界へ≫

・この本の原稿の推敲をしているうちに、世界は全く変わってしまった
 →本年1月に出張で滞在した東京の風景をよく思い出す
 →1月の世界は、最後の輝きだったのかも、そんな気がする
・それでも、シリコンバレーの企業はもともと在宅勤務の人が多く、ビデオ会議も、オンライン書類手続きも、多くの人がすでに慣れており、それがさらに進展した
 →在宅勤務への対応で、急成長
  →映像配信のNetflix
   ビデオ会議のZoom Video Technologies
・なかなか進まなかった、病院での遠隔診療や、学校の遠隔授業などが、必要に迫られて急激に普及
 →いろいろな部分で「Dx」が一気に進んでしまった
・この先、すべてが良くなるわけではないが、すべてが悪くなるわけでもない
 →現在生きている世界があっという間に過去の歴史となり、やがて「ニュー・ノーマル」が新しい現在に

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