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米中摩擦の渦中、中国と台湾、半導体業界それぞれの伸び&障壁

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新型コロナウイルスによる累計感染者数は金曜18日昼前時点、世界全体で7475万人を超え、1週間前から約530万人余り増加と勢いを増している。地域別では欧州が最多で、ドイツではロックダウンの強化が行われる一方、我が国でも年末年始の旅行の自粛が広がる状況である。米中摩擦が半導体関連でSMICの「エンティティー・リスト」入りの事態を迎える現時点であるが、中国と台湾それぞれの半導体業界について目覚ましい伸長が見られる一方、宿命からくる障壁が並存する状況を一層色濃く受け止めている。すぐには到底払いきれない覆いの中での今後に向けた中国と台湾の方向性について、いろいろな切り口の分析、見方が続いて注目させられている。

≪制約に覆われた中の伸び≫

米中摩擦の現時点について、まずは引き続く米国における半導体製造を高める動き、アプローチである。

◇Legislation key to accelerating US domestic chip manufacturing - Part 2-Opinion: Congress needs to boost US chip manufacturing (12月16日付け Electronics360)
→米国における半導体製造の状況を復活させるために、連邦政府が米国内半導体業界により多くのサポート供給を行えるよう、議会が重要な法制を通過させる必要がある旨。「今時点なんら投資がないので、該法制化は形勢を一変させるもの」と、Semiconductor Industry Association(SIA)のvice president of global policy、Jimmy Goodrich氏。

◇U.S. Defense Department looks to bolster domestic chip manufacture with new program-Pentagon starts RAMP-C program for US chip production (12月17日付け Reuters)
→米国国防総省が、米国における半導体製造capabilitiesを高めるincentivesを与えるプログラム、“Rapid Assured Microelectronics Prototypes - Commercial”,“RAMP-C”に向けた提案の懇請をまもなく始める旨。

現下のGDPであるが、コロナ禍のもと、下振れする日米欧に対して、唯一主要国で今年プラス成長となりそうな中国。来年も「8%前後」の成長目標とのこと。

◇世界経済、中国頼みの危うさ(大機小機) (12月16日付け 日経)
→寒さが増し、新型コロナウイルスが猛威を振るう年の瀬に光明が差した。
英国や米国でワクチン接種が始まり、来年には「コロナ後」の世界を目にする希望がもてそうだ。
経済協力開発機構(OECD)が月初に発表した世界経済見通しは、ワクチンの普及などで2021年末までに、世界経済が「コロナ前」の水準に戻るとみている。
世界経済の成長率は2020年のマイナス4.2%が、2021年はプラス4.2%に回復するとの予測。この間、中国は主要国唯一のプラス成長(1.8%)から、8.0%成長に加速し、2021年の世界の経済成長の3分の1を担うという。・・・

◇日米欧GDP下振れ、10〜12月、感染再拡大で欧州マイナス (12月17日付け 日経 電子版 05:08)
→新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、世界経済にブレーキがかかりそうな旨。民間エコノミストの直近の予測によると、日米欧の10〜12月期の実質成長率は従来予測よりも下振れする旨。特に感染拡大が深刻な欧州はマイナス成長に陥る見通し。一方、感染対策と経済活動の両立に成功する中国は成長ペースを維持しており、明暗が分かれる旨。

◇中国、2021年成長率目標「8%前後」で調整、回復見込む (12月19日付け 日経 電子版 05:11)
→中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は2021年の実質経済成長率の目標を「8%前後」とする方向で調整に入った旨。新型コロナウイルスの打撃をうけた国内経済はほぼ正常化した旨。来年は輸出が引き続き好調なほか、民間投資にも回復が広がると見込む旨。2%程度の成長にとどまる2020年からのV字回復を描く旨。

最新の動きとして、米国商務省が、中国の半導体最大手、SMICを「エンティティー・リスト」に載せて、最先端半導体の国産化を阻止しようとしている。政権交代を控えるタイミングでの措置で、一層高まる緊張である。

◇U.S. blacklists dozens of Chinese firms including SMIC, DJI-Commerce Dept. blacklists more Chinese firms (12月18日付け Reuters)
→1.米国が金曜18日、中国のトップ半導体メーカー、SMICおよび中国のdroneメーカー、SZ DJI Technology Co Ltdなど十数の中国の会社を貿易ブラックリストに追加、Donald Trump米国大統領政権が在任最後の数週で中国との緊張を高めている旨。
 2.米国商務省が、中国最大のファウンドリー、Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)など十数の中国の会社を、中国軍と協働しているとして貿易ブラックリストに載せた旨。
Wilbur Ross商務長官はステートメントにて、ますますけんか腰の相手の軍備構築を先端米国技術が助けるのは許されない、としている旨。

◇米、中国SMICに禁輸、最先端半導体の国産化阻止 12月19日付け 日経 電子版 05:19)
→米商務省は18日、半導体受託生産の中国最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に対して事実上の禁輸措置を発動すると発表、最先端の半導体を生産するのに必要な製品の輸出を認めない旨。トランプ大統領が政権交代前に、中国が目指す半導体の国産化を阻止することを狙う旨。
安全保障上問題がある企業を並べた「エンティティー・リスト」にSMICを加えた旨。

さて、ここで中国の半導体業界の伸びが見られる、あるいは見込める内容である。

◇China's IC design industry maintains fast growth: expert -China's IC designers grow 2020 revenue by 23.8% on year (12月13日付け Xinhua News Agency (China))
→業界エキスパート発。中国のintegrated circuit(IC)設計業界が、今年速い成長を維持、中国はコロナ大流行を食い止めるために決定的な行動をとった旨。中国のIC設計業界の総販売高が、2020年末までに前年比23.8%増の381.94 billion yuan(約58.4 billion U.S. dollars)に達する見込み、とChina Semiconductor Industry Association(CSIA) IC Design Branchのgeneral director、Wei Shaojun氏。

ファウンドリー業界の伸びが期待されているが、SMICへの米国の禁輸措置が立ちはだかる現時点である。

◇China IC foundry output to continue growth in 2021, says Digitimes Research-Digitimes Research: China's foundries will grow in 2021 (12月16日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Researchが予言、中国に向けた予測ではSemiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC), Shanghai Huali Microelectronics Corp.(HLMC)など半導体メーカーにはさらに伸びる1年の旨。GalaxyCoreおよびMaxscend Microelectronicsは自前のウェーハfabラインを据えつけており、中国の半導体design housesの間で新しい流れ、と特に言及の旨。

ルネサスエレクトロニクスが中国の自動車大手と共同で取り組む市場開拓である。

◇ルネサス、中国車大手と吉林省に研究所 (12月17日付け 日経)
→半導体大手のルネサスエレクトロニクスは16日、中国の国有自動車大手、中国第一汽車集団と中国吉林省長春市に共同研究所を設立したと発表、電気自動車(EV)やネットにつながる車など「CASE」と呼ぶ次世代車向け技術開発で協業する旨。EVや自動運転の開発が活発な中国市場の開拓を進める旨。

中国政府は、所得税減免で半導体の早期育成を図っている。

◇半導体企業の所得税減免、中国、国内勢の育成急ぐ (12月18日付け 日経)
→中国財政省などは17日、半導体の製造や設計、製造設備などを手掛ける企業の所得税を減免すると発表、国務院が今年8月に発表した半導体産業の育成支援策に沿った取り組み。トランプ米政権は半導体を中国の「弱点」とみている旨。新たな優遇策を導入し、自国の半導体産業の早期育成を目指す旨。

一方、台湾に目を遣ると、今年の半導体市場で最も目立つファウンドリーの伸びということで、関連する意気軒高の内容が続いていく。

◇UMC forecast to become world's No. 3 contract chipmaker-TrendForce: UMC on pace to be No. 3 foundry, replacing GloFo (12月12日付け Focus Taiwan)
→Trendforce傘下のTopology Research Institute発。台湾のcontract半導体メーカー、United Microelectronics Corp.(UMC)が、今年第四四半期におけるグローバルランキングで1つ上がって第3位になる見込み、8-インチウェーハに向けた力強い需要で売上げが急増の旨。UMCは、第四四半期にグローバル市場で6.9%のシェアをとって、世界第3位のウェーハファウンドリーoperatorとしてアメリカのライバル、GlobalFoundries社に置き換わる旨。

◇Foundry Capex to Account for 34% of Total Semi Capex in 2020 (12月14日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→2021年1月リリース、IC InsightsのThe McClean Report第24版。半導体capital spending(capex)について次の見方。

2018年
2019年
2020年
$106.1 billion
$102.5 billion
$108.1 billion
6%増

2020年について、製品別でファウンドリーが34%と最大の旨。
(注)製品区分…MPU/MCU Logic Foundry DRAM/SRAM Flash/Non-Vlatile Analog/Other

台湾・MediaTekからは、ファウンドリーでの儲かる最先端微細化に傾斜する結果として不足する成熟プロセスのcapacity問題が指摘されている。

◇Foundry shortage a major issue for IC designers, says MediaTek chair-MediaTek chair: Foundry capacity worries IC designers (12月14日付け DIGITIMES)
→MediaTekのchairman、MK Tsai氏。半導体設計会社は、先端プロセスnodesにたくさんのお金を費やしているファウンドリーでの成熟プロセスに向けた生産capacityの低下に懸念している旨。ファウンドリーは成熟製造capacitiesに資金投入しそうにない一方、sub-10-nanometer features搭載半導体からより多くの利益が得られている旨。

「未曽有の活況」と政府関係が認める台湾IT市場の現状となっている。

◇台湾IT、売上高が最高に、11月単月で19社最高の5.4兆円、5Gや米制裁、波重なる (12月15日付け 日経)
→世界のデジタル景気の指標となる台湾IT、19社の11月の売上高合計額が単月として過去最高となったことが日本経済新聞の調べで分かった旨。前年同月比14%増の約5兆4千億円だった旨。半導体やIT製品の受注が一段と伸びたが、急激な需要の高まりで今後、顧客への供給リスクが高まる懸念もある旨。
「台湾は今、未曽有の活況にある。半導体のほかパソコン、サーバなど、海外から台湾企業への発注が急増している」と、現状に驚きを隠せない台湾の経済部(経済省)が所管する大手シンクタンクの資訊工業策進会産業情報研究所(MIC)で、半導体アナリストを務める劉智文氏。

◇Backend firms see strong demand for DDI, NAND controller chips-Sources: DDIs, NAND flash controllers are in demand (12月16日付け DIGITIMES)
→業界筋発。台湾のbackend housesでは、display driver ICs(DDIs)およびNANDフラッシュコントローラ半導体に向けた力強い需要が見えており、2021年第二四半期まで受注visibilityが明らかの旨。

新竹科学園区も40周年記念とのこと。TSMCおよびUMCをそれぞれ創設したMorris Chang氏とRobert Tsao氏の握手の場面が見られている。

◇TSMC says demand remains resilient-TSMC sees chip demand remaining robust in 2021 -BATTLE OVER? TSMC's Morris Chang and UMC founder Robert Tsao shook hands at an event at the Hsinchu Science Park, indicating a thaw in the two men's feud (12月16日付け The Taipei Times (Taiwan))
→TSMCのchairman、Mark Liu氏が、microchips世界需要は2021年に入っても好調に続くとしており、"来年の前半は季節的なサイクルが示すよりずっと良くなる"旨。一方、TSMCおよびUMCそれぞれのfounders、Morris Chang氏とRobert Tsao氏が、ファウンドリー両社のheadquartersがあるHsinchu Science Parkの40周年記念セレモニーで握手の旨。

◇Semiconductor giants shake hands in relationship ice-breaker (12月15日付け Focus Taiwan)

さて、宿命の障壁について、まず米国に遮られて追いついていかない中国の半導体業界である。

◇China's Drive to Make Semiconductor Chips Is Failing-Viewpoint: China's chip industry is not catching up-The stunning success of U.S. efforts to hobble Huawei shows the fragility of Beijing's highly centralized tech sector. (12月14日付け Foreign Policy)
→Foreign Policyのcolumnist、Salvatore Babones氏記事。世界最先端のCPUsはアメリカの会社から出ている一方、中国の最善のものは米国の業界技術使用制限が付きまとうHuawei Technologiesの社内半導体部門、HiSilicon Technologiesが設計したKirin 9000プロセッサである旨。中国は半導体製造をここ10年の民生技術優先順位トップにしているが、ほとんど示すものがない旨。

焦点のSMICについては、トップマネジメントの変更が以下の通り。TSMC出身者でいろいろこれまでの経緯を思い浮かべるところがある。

◇SMIC Management Team Undergoes Shakeup - Yet Again (12月16日付け EE Times)
→Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)(上海)が今週の間に、2件のtop management変更を発表の旨。12月15日に、業界ベテラン、Shang-Yi Chiang氏をexecutive director, vice chairmanおよびmember of the strategic committeeに任命、その後、同社co-CEO and executive director、Liang Mong-song氏が辞任としている旨。Chiang氏の任命は、現金が枯渇したWuhan Hongxin Semiconductor Manufacturing Company(HSMC)からCEOとして同氏が辞任後約1ヶ月のこと。Chiang氏およびLiang氏ともに、TSMCの前R&D executivesである旨。

かたや台湾については、中国の政治的脅威に対峙し、米中の狭間に揺れ動く立場ならではの論評が見られている。中核のTSMCはもちろんとして、シリコン盾というあらわし方もある。

◇Would China Invade Taiwan for TSMC? -The second piece of a two-part analysis focusing on semiconductors and cross-strait geopolitics. (12月15日付け The Diplomat)
→TSMCは最先端ロジック半導体をつくれる唯一の会社ではないが、多くの状況で半導体設計会社には唯一の実行可能な選択肢の旨。台湾におけるTSMCのファウンドリーの制御はしたがって、北京の力による統一を試みるリスクへの備えおよびこれに対する強力なスタンスをとるかどうかを決めるほかの状況の両方で決定的な要因となりそうな可能性の旨。

◇The most important company you've never heard of is being dragged into the U.S.-China rivalry-TSMC is beset by the US-China trade war (12月17日付け Los Angeles Times)
→台湾のシリコン盾と呼ばれ、それなしでは現代生活の多くが止まってしまう。TSMCは、世界のcontracted半導体の半分を上回る製造を行い、該技術supply chainの中心に鎮座、iPhones, Amazon cloud computers, 人気のビデオゲームそして軍事用dronesおよびLockheed MartinのF-35のような戦闘ジェット機をも動かすグラフィックスプロセッサにある回路を大量に作り出している。しかし、Texas Instrumentsで25年を過ごし、Bill Gatesのように崇敬されている台湾系アメリカ人が1980年代後半に設立したとき、決して予想しなかった問題にTSMCは直面している。同社は、グローバルな序列を再定義している時代において各国および各社に組みわけを強いている米国と中国の間のますます厳しく、ときには危険な敵対に引きずり込まれている。「中国が台湾を攻撃すれば、やっていることが非常に価値あって、TSMCが最も安全なところ、という言い習わしがある。」
と、ある同社前エンジニア。

長い目で今後の推移を辿っていくことになる。


コロナ禍のもと、いっそう収まらない状況推移に対して当面の警戒感を伴った舵取りが各国それぞれに引き続き行われている世界の概況について、以下日々の動きからの抽出であり、発信日で示している。

□12月14日(月)

米国議会でのコロナ経済対策の話し合いの状況である。

◇Congress nears deal on $1.4 trillion government funding measure-Congress reportedly close to $1.4T spending package-Lawmakers expect to announce an omnibus compromise Tuesday, according to sources involved with the process. (Politico)
→lawmakersが、政府閉鎖を回避する$1.4 trillion spending法案について合意に近づく様相の旨。Nancy Pelosi下院議長とSteven Mnuchin財務長官が月曜14日、spendingおよびcoronavirus救済を話し合い、lawmakers超党派グループが2つに分かれる救済package計画をリリースの旨。

◇Bipartisan group unveils two-part $908 billion coronavirus package (The Hill)

□12月15日(火)

米国株式市場は、感染拡大、経済対策に上下に揺られる展開が続いている。

◇NYダウ下げに転じる、コロナ感染拡大を警戒 (日経 電子版 05:24)
→14日の米株式市場でダウ工業株30種平均は下げに転じ、15時現在は前週末比18ドル29セント安の3万0028ドル08セントで推移している旨。新型コロナウイルスの感染再拡大に歯止めがかからず、経済の停滞を懸念した売りが優勢になっている旨。半面、週内に追加経済対策案が成立するとの期待から下げ幅は限られている旨。

◇GoToトラベル全国で一時停止、12月28日〜1月11日−東京・名古屋・札幌・大阪は先行 (日経 電子版 07:36)
→政府は14日の新型コロナウイルス対策本部で、観光需要喚起策「Go To トラベル」を全国一斉に一時停止すると決めた旨。期間は12月28日から2021年1月11日まで。新型コロナの感染が広がっているため人の往来を抑える旨。感染者数が多い東京、大阪、名古屋、札幌の4都市は先行して止める旨。個人の自由な移動は制限しないものの、年末年始の旅行の自粛が広がりそうな旨。

Joseph Robinette Biden, Jr.(Joe Biden)氏の米国次期大統領としての「明確な勝利」が謳われている。

◇バイデン氏「明確な勝利」、選挙人過半数確保 (日経 電子版 10:45)
→米大統領選は14日、次期大統領を正式に選出する手続きである選挙人による投票が全米50州と首都ワシントンで実施された旨。民主党のジョー・バイデン前副大統領(78)が当選に必要な538人の選挙人の過半数(270)を上回る306人を正式に獲得した旨。共和党のドナルド・トランプ大統領(74)は232人だった旨。
米連邦議会はこれを受け、2021年1月6日に上下両院合同会議を開いて選挙人の投票結果を集計する旨。バイデン氏の勝利が最終的に確定し、第46代大統領に正式に選出される運び。同20日に就任する旨。

□12月16日(水)

◇NYダウ340ドル高で推移、経済対策の進展期待 (日経 電子版 05:18)
→15日の米ダウ工業株30種平均は反発し、15時現在は前日比341ドル36セント高の3万0202ドル91セントで推移している旨。米国の追加経済対策を巡る与野党の協議が進展するとの観測が広がり、投資家心理が強気に傾いた旨。新型コロナウイルスのワクチン普及期待も、景気敏感株を中心とした買いにつながっている旨。

□12月17日(木)

◇NYダウ横ばいで推移、FOMC後に下げ幅縮小 (日経 電子版 05:35)
→16日の米株式市場でダウ工業株30種平均はほぼ横ばいとなり、15時現在は前日比2ドル36セント安の3万0196ドル95セントで推移している旨。11月の米小売売上高が市場予想を下回り、景気回復の鈍化を警戒する売りが先行した旨。半面、追加経済対策が近く成立するとの見方に加え、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和の長期化観測も相場を支えている旨。

□12月18日(金)

米国株式市場が最高値を上回る動きを見せている。

◇NYダウ140ドル高、最高値上回る、追加の経済対策期待 (日経 電子版 05:20)
→17日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発、15時現在、前日比140ドル08セント高の3万0294ドル62セントと、4日につけた過去最高値(3万0218ドル)を上回って推移している旨。追加の米経済対策の早期成立期待が買いを誘った旨。米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和の長期化観測も支えとなっている旨。

□12月19日(土)

◇NYダウ200ドル安で推移、経済対策に不透明感 (日経 電子版 05:42)
→18日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落、15時現在、前日比218ドル89セント安の3万0084ドル48セントで推移している旨。前日にダウ平均とハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数が過去最高値を更新しており、短期的な相場の過熱感を警戒した利益確定の売りが優勢となっている旨。追加の経済対策を巡る与野党協議の不透明感も相場の重荷になった旨。


≪市場実態PickUp≫

【半導体の不足】

中国の自動車での半導体不足に気づいたのが発端であるが、グローバルな半導体の不足の脅威にまで立ち至る以下の内容である。ファウンドリー業界では最先端に傾斜して成熟プロセスの回りが悪いと、またぞろアロケーションの分捕り合戦の様相が伝わってくる。

◇Chips a big hurdle for industry to overcome (12月14日付け China Daily.com.cn)
→いくつかの自動車メーカーがpandemicにより生じる半導体不足の目に、クルマがよりsmartになって、中国の各社は半導体需要の増大に備えるべきの旨。

◇ABF substrate shortages may dent 2021 shipments of new CPU, GPU chips-Sources: Lack of ABF substrates may affect CPUs, GPUs (12月14日付け DIGITIMES)
→業界筋発。ABF(Ajinomoto Build-up Film)基板の不足悪化が、2021年における半導体メーカーでの新しいCPUおよびGPU製品の出荷に影響を与える大きな災難の1つになる見込みの旨。NvidiaのRTX 30半導体の最近の出荷が、ファウンドリー・パートナー、Samsung Electronicsでの不満足な8-nm歩留まりのほかに、ABF基板供給不足などほとばしる要因で影響を受けている旨。

◇Analysis: Global chip shortage threatens production of laptops, smartphones and more-Crucial chips for cars, laptops, phones in short supply (12月17日付け Reuters)
→自動車、laptops, スマートフォン, テレビなどの製品の製造に非常に重要な半導体が世界中で不足、BluetoothおよびWi-Fi半導体の出荷に10週間を上回る遅れ、と日本の1つの筋発。「electronics業界全体で、コンポーネントの不足に遭っている。」と、Sand and WaveのCEO、Donny Zhang氏。加えて同氏は、smart headphone製品用のmicrocontroller(MCU) partの獲得の遅れに直面の旨。

◇200mm Demand Surges-Global interest increases for 200mm wafer fab lines (12月17日付け Semiconductor Engineering)
→いろいろな半導体の需要急増で、200mmファウンドリーcapacity並びに200mm fab装置に向けた不足を生じており、2021年にやわらぐ気配はない旨。

【インテル関連】

微細化一辺倒ではない多彩な方向性の最先端のアプローチをメインに、以下続いていく。

◇Intel's Xe GPUs - from Laptops to Supercomputers-Intel targets supercomputers, laptops with Xe GPUs (12月12日付け EE Times)
→1.2つのXe GPUsをリリースして、正式にdiscreteグラフィックスプロセッサ・メーカーであるIntel。該カテゴリーで引っ張っていくものがあるか?
 2.Intelは、3年前にgraphics processing units(GPUs)の開発を開始、統合および低電力discrete GPUs向けXe-LPアーキテクチャーを提案、そしてartificial intelligence(AI)およびdeep learning(DL)/machine learning(ML)応用向けに2つのXe半導体を投入の旨。この多目的に使えるGPUsは、laptopおよびdesktop computers, データセンターおよびsupercomputersで用いられる旨。

◇Intel to Keep Its Number One Semiconductor Supplier Ranking in 2020-Seven top-15 semiconductor suppliers forecast to show ≥22% growth this year with Nvidia expected to post a huge 50% increase... (12月14日付け EE Times India)

ダイバーシティ(多様な人材を積極的に活用しようという考え方)対応マネジメントの状況である。

◇Intel's U.S. workforce loses women, gains Latinx and veterans (12月15日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Intelの2020 Diversity and Inclusion(性別、年齢、国籍などが違う人々に、それぞれの個性や能力に応じて活躍できる場を与えよう、という考え方) Reportにて、技術的役割および全体の両方で米国における女性従業員の僅かな減少が見られる旨。

◇Intel Labs, What's Next for Quantum Computing? (12月16日付け EE Times)
→最近開催のIntel Labs Dayにて、Intelが、複数の領域にわたるリサーチinitiativesに焦点。Quantum Computingに関する議論の間、Intelは、第2世代Horse Ridge Cryogenic Quantum Control Chipを投入の旨。

◇Intel launches fastest Optane SSD, 144-layer QLC NAND SSDs-Intel debuts an Optane SSD with 144-layer NAND flash -New additions to Intel's memory and storage product roadmap include Optane's fastest solid-state drive yet and dense 144-layer QLC NAND SSDs that top out at 30.72 TB. (12月16日付け TechTarget)
→Intelが、データセンター向けにP5800X solid-state drive(SSD)を投入、該SSDには、quad-level-cell(QLC) NANDフラッシュメモリデバイス・ベースの第2世代3D XPointメモリ技術が入っており、最大30.72 terabytesのデータストレージが得られる旨。

◇Intel Teams Optane with QLC NAND (12月17日付け EE Times)
→Intelが、SK HynixへのNAND事業売却が仕掛かっている中、いくつかの新しいフラッシュ-ベースofferingsをもって最新Optane製品発表を前倒しの旨。該最新Optane drivesはデータセンターおよびclient両方向け、後者は同社NANDフラッシュもテコ入れの旨。

◇Intel debuts 'Clover Falls' companion chip for better laptop AI-Intel unveils "Clover Falls" chip for AI in laptops-Intel's Clover Falls AI chip will be part of the company's Evo platform, focusing on commercial PCs for now. (12月17日付け PCWorld)
→Intelが、Visual Sensing Controller "Clover Falls" artificial intelligence(AI)半導体を投入、特にmainプロセッサを楽にして他のPC半導体と協働していく旨。該AI co-processorは、laptop computersなどのPCsをより安全確実でよりsmartにする向きの旨。

【アップル関連】

マイナス&プラスの2点。インドのiPhone製造拠点での給与争議のゴタゴタ、そして来年上期のiPhone生産3割増という朗報である。後者は、Huawei失速の渦中、今後の推移に注目するところである。

◇Apple Probes Wistron’s India Facility Amid Riots on Pay Dispute (12月15日付け EE Times India)
→Apple社が、土曜12日にBangalore, IndiaのiPhone製造拠点で給与争議から騒動が発生、同社パートナー、台湾のWistron社がサプライヤガイドラインに違反しているかどうか、現在調査している旨。

◇AppleがiPhone生産3割増、2021年上期、5Gで買い替え需要 (12月15日付け 日経 電子版 14:00)
→米アップルが2021年1〜6月にスマートフォン「iPhone」の生産計画を前年同期比30%増の最大9600万台とする方針を取引企業に伝えていることが15日分かった旨。今秋に出した初の高速通信規格「5G」対応機種の販売が伸びている旨。競合の華為技術(ファーウェイ)が失速するなかでのアップルの増産は日本の部品メーカーにも追い風となりそう。複数の部品メーカーが明らかにした旨。

【公正取引関連】

巨大IT、米国のGAFAに厳しい目が向けられる状況が、このところ度を増してきているが、以下関連する内容を取り上げている。Apple 対 Facebookと、GAFAの間での対立も見られ、激しくなっている。

◇Big fines and strict rules unveiled against ‘Big Tech’ in Europe (12月15日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→European Union(EU)および英国当局が、有害なコンテンツの拡がりを止め、競争を改善するdraft lawsをリリースの旨。

◇アプリの個人情報利用を開示、Apple、開発者に義務化 (12月15日付け 日経 電子版 05:18)
→米アップルは14日、同社が配信する全180万のアプリを対象に個人情報の扱いの開示を始めた旨。どんな情報が収集され他社と共有されるかをユーザが把握しやすくする旨。欧州などは法律で同様の開示義務を課しているが、アップルは世界統一の自主ルールで対応企業の網を広げる旨。プライバシーへの姿勢がアプリ競争力を左右する流れが強まりそうな旨。

◇Facebook takes the gloves off in feud with Apple (12月16日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Appleが、Facebookのビジネスを脅かす変更を行っており、戦いが激しくなっている旨。

◇FacebookとApple、プライバシー巡り火花 (12月17日付け 日経 電子版 16:35)
→プライバシーをめぐる米フェイスブックと米アップルの対立が先鋭化している旨。自社製品上での個人情報の収集を制限するアップルに対し、フェイスブックは広告収入の減少につながり、中小企業の利益を損なうと批判を強める旨。フェイスブックはアップルを訴えた米ゲーム開発会社を支援する方針も示すなど、両社が互いの急所を突く異例の展開となっている旨。

◇EU、巨大ITに包括規制案、自社優遇「違法」に 12月16日付け 日経 電子版 06:14)
→欧州連合(EU)が、巨大IT企業への規制を抜本的に見直す旨。オンライン上で市場全体を支配するような影響力を持つプラットフォーマーについて、自社サイトで自社サービスを優遇するのをあらかじめ禁じるなど事前規制を導入する旨。違法コンテンツへの対応も義務化し、プラットフォーマーが負う責任範囲を広げる旨。

◇10 states accuse Google of abusing monopoly in online ads (12月16日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇Google独禁法調査、広告事業も提訴、テキサス州など10州 (12月17日付け 日経 電子版 06:59)
→米南部テキサスなど10州の司法長官は16日、米グーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴、ネット広告市場の競争を妨げたと問題視した旨。同社は検索でも連邦政府に提訴されたばかりで、巨大IT企業への包囲網が一段と狭まる旨。

◇Google独禁法提訴第3弾、米州当局「検索で自社優遇」 (12月18日付け 日経 電子版 07:56)
→米西部コロラド州など38州・地域の司法長官は17日、米グーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴した旨。圧倒的な市場支配力を持つ検索事業で自社サービスを優遇し、競争を阻害したと判断した旨。グーグルへの提訴は10月の司法省以来、3件目となる旨。
問題視したのは利用者がホテルや飲食店を比べる際に使う専門検索。

【北米半導体装置メーカー】

恒例の月次世界billingsがSEMIよりあらわされ、この11月について以下の通りである。9月のピークから下がり加減ではあるが、力強い水準を維持している様相である。

◇North American Semiconductor Equipment Industry Posts November 2020 Billings (12月18日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SEMIのNovember Equipment Market Data Subscription(EMDS) Billings Report。北米半導体装置メーカーの2020年11月世界billingsが$2.61 billion(3ヶ月平均ベース)、前月、2020年10月の$2.65 billionを1.4%下回り、前年同月、2019年11月の$2.1 billion水準を23.1%上回る旨。
「この秋の始めにbillingsが最高を記録、11月はいくぶん減少が予想されたが、依然力強い北米半導体装置メーカーのbillingsとなっている。」
と、SEMIのpresident and CEO、Ajit Manocha氏。
ここ半年の推移(金額:USM$):

Billings
Year-Over-Year
(3ヶ月平均)
June 2020
$2,317.7
14.4%
July 2020
$2,575.3
26.7%
August 2020
$2,653.3
32.5%
September 2020
$2,743.3
40.0%
October 2020 (final)
$2,648.2
27.3%
November 2020 (prelim)
$2,611.6
23.1%

  [Source: SEMI (www.semi.org), December 2020]

【オンライン開催】

コロナ禍、致し方なし、今月のセミコン・ジャパンの開催状況、そして新年早々恒例のCESおよびIndustry Strategy Symposium(ISS)、いずれもオンライン開催で、以下の通りである。

◇セミコン・ジャパン開催、コロナ下、供給網見直しを、米中摩擦「枠組み変わらず」、AI・5G主要テーマ (12月16日付け 日経産業)
→半導体製造装置の国際展示会「セミコン・ジャパン2020バーチャル」がオンラインで18日まで開催されている旨。基調講演などではハイテク産業を巡る米中摩擦の影響や、新型コロナウイルス下でのサプライチェーン見直しなどが議論された旨。データ経済や脱炭素を支える半導体の高度化に欠かせない装置の展示も相次いでいる旨。
「日本では情報漏洩の危機感や対策が欠落している」。基調講演で自民党の甘利明税調会長は米中摩擦を念頭に、こう発言した旨。半導体のサプライチェーンは国を超えて広がり、日本企業から機密情報が漏洩した場合に「国家や企業間でのアライアンスを結べなくなる」と懸念を示した旨。

◇CES、1000社・団体が出展、2021年1月オンラインで開催 (12月16日付け 日経 電子版 16:29)
→米民生技術協会(CTA)は15日、2021年1月に開かれる世界最大のデジタル技術見本市「CES」の主要イベントや出展企業・団体の概要を発表、出展企業・団体は1000を超え、人工知能(AI)や高速通信規格「5G」などの先端技術を展示する旨。期間中は100を超える講演や会議を開く旨。
CESの日程は1月11〜14日。

◇Industry Strategy Symposium to Lead Microelectronics Into New Era of Innovation (12月16日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SEMI発。virtual Industry Strategy Symposium(ISS) 2021が1月12-13日開催、テーマは"Bridging the Gap Between the Physical and Digital Worlds"。


≪グローバル雑学王−650≫

資源の需要供給に伴う「栄枯盛衰」のサイクルが短く、また激しいアメリカの中で、1世紀半を生き残ってきたシリコンバレーの変容について、

『シリコンバレーの金儲け』
 (海部 美知:講談社+α新書 831-1 C) …2020年7月20日 第1刷発行

より著者の体感、視点に迫っていく。「Next Big Thing」を求めて、その時点、時代の空気に煽られながらベンチャーに投入される投資家の大金であるが、詰まるところその成否は、努力して考え抜き、「血と汗」を流し、自分の力で判断するしかない、としている。近年、いろいろな要因で無理やり引き延ばされ、長過ぎる春感が続いているシリコンバレー。不動産が異常に高騰、一般には住むことができず社会格差の拡大が著しい状況が描かれていて、改めて驚かされるところである。つい最近の米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のカリフォルニア州サンノゼ市からテキサス州への移転も、シリコンバレーの生活費や人件費の上昇が背景とのこと。富をたくさんの人に分配、中流階級を作り出した「製造業」と大きく違って、裾野が小さく、雇用創出の力が弱いIT産業とあらわされ、GAFAの独占への告発が鳴り止まない所以と受け止めている。「栄枯盛衰に対応する体力」がベースのシリコンバレーは流れゆく川のよう、と結んである。


第3部 これからのお話

第8章 シリコンバレーの変容

◆そこにソフトウェアの金型効果はあるのか
・WeWork事件から考慮すべき2つの問題
(I)WeWorkは果たしてテクノロジー企業なのか、つまり「ソフトウェアの金型効果があるのか」
・「売上げマルチプル」…「企業評価額=株価x株数」が売上額の「何倍」となるか
 →テック企業では「成長すること」自体の価値が大きく、成長が見込まれる企業がとても大きな「マルチプル」で評価される
 →WeWorkの場合、事業にテクノロジーを利用してはいるが、利益構造の中では大きな役割を果たしていない
・中小都市では、大都市ほどの高密度ではユーザを詰め込むことができないはず
 →WeWorkの成功は、かえって参入障壁を低くし、競争は激化してしまうという、通常のテック企業とは逆の方向に行ってしまった
・テクノロジーを使っているかどうかよりも、「金型効果」と「好循環」の仕組みが基盤になっているかどうかが、「高いマルチプル」を得られるかどうかの境目

◆時代に合わなくなった「エア風呂敷」
(II)「エア風呂敷」のお話
・ベンチャー界隈では「大風呂敷」が大好きな人が多く、大言壮語で理想を語る度胸がなければ大成功できない、という強い考え方
 →「fake it till you make it(できるまではごまかせ)」
 →自社の事業とそれほど関係ない大げさな話であれば、単なる「こじつけ・牽強付会」
  →「大風呂敷」ではなく「エア風呂敷」
・正当な「大風呂敷」が成立するためには、ベースとなる技術が急速に進化していることが必要
 →外部の技術、プロダクト、インフラなどの多くの時代的要因も合わさった結果
・現在は「NBTが何か」が見えなくなった時期
 →「ネタ切れ感」が漂う時代

◆カリスマか、パワハラか
・祭り上げられていたWeWorkのAdam Neumannや、TheranosのElizabeth Holmes
 →「初めて大成功したシリコンバレーの女性起業家」というスターを熱望する空気
 →男性の起業家であっても、しばらく大物ベンチャーの出現が途絶えている中、「カリスマ起業家」を求める空気
 →VCという商売は、ときどき大当たりが出ないと成立しないので、なんとか大当たりを育てようとする力学が働く
・投資家のベンチャーへの大金投入
 →「好循環」の域に早く達するよう、急成長を促すため
 →ベンチャー創業者に「Work Hard, Party Hard(ハードに働きハードにパーティする)」という文化
  →パワハラや、セクハラが、起こりがち
・Steve Jobsが偉い人だったのは間違いない
 →しかし、経営者スタイルとしては、彼の悪い影響もそれなりにあるような気がしてならない

◆エア風呂敷屋に騙されないための「血と汗」
・本物の大風呂敷とエア風呂敷をどうやって区別すればよいのか?
 →ウソに引っかかって多額を投資していたのは、おもにPE(プライベート・エクイティ)
・WeWorkに対しては、初期には海千山千のVCたちも投資
 →有名VCが投資していればなんでもOKかというとそうでもない
・ベンチャー企業を評価するときには、数字だけ見ていたのではまるで無意味
 →プロダクトや事業の実態をあらゆる角度から見ることが必要に
・最終的には、努力して考え抜き、「血と汗」を流し、自分の力で判断するしかない

◆シリコンバレーの長過ぎる春
・シリコンバレーを支える資金の性質が変わった2016年以降
 →シリコンバレーの景気が、いろいろな要因で無理やり引き延ばされ、続いていた長過ぎる春感
・景気が悪くなると、ベンチャーは、大企業をレイオフされ失業したエンジニアを安い給料で雇える、オフィスを安く借りられるなどといったメリット
 →少なくとも、私が実地で見てきた過去30年、シリコンバレーは景気の浮き沈みとそれによる資金や人の出入りを繰り返すことで、バランスを保ってきた

◆土地と町の変容
・ここ数年の長過ぎる春のせいで、シリコンバレーでは不動産の異常な高値
 →特に治安の悪くない普通の地区の一軒家の販売価格は最低でも100万ドル(約1億円)
・ツイッターで話題:「シリコンバレーでは年収2000万円でもカツカツの生活しかできない」
 →2016年以降はまた国内への流出が急増し、「社会減」に移行
 →長期的に、どんどん住みづらくなっている体感
・この10年ほどの間に、だいぶ様変わり、「町の形」
 →優れたユーザインタフェース、デザイン、コンテンツなどのソフトな価値を担うエンジニアやデザイナーたちが都会に住むことを選ぶように
 →セールスフォース、ツイッター、ウーバー、リフトなどは、いずれもサンフランシスコ市内に本社
・サンフランシスコでも郊外でも、gentrification(市街地再開発により、高所得住民が流入して街が美化されていく現象)が進行
 →核となったのが、鉄道駅前の活性化
 →線路沿いに、急速に建ち始めた集合住宅
 →私(著者)自身の生活感覚の中で、こうした変化の最大の象徴は、「映画館」
  →2008年、少し内陸にある鉄道駅のすぐ前に、新しい映画館ができた
  →広い駅前街区に、人がたくさん歩いているように
・「クルマと公共交通機関と町」のバランスが変わってきた

◆社会格差の拡大
・最近、サンフランシスコで多くなっているホームレスの人
 →マウンテンビュー市やパロアルト市など、ずらりと並んでいるキャンピングカー
  →家を維持できない人の「路上生活」
・郊外に本社を置くグーグルやアップルなどの大企業
 →やや遠い場所からでも自家用車を使わず通勤できるよう、自前の通勤バスを運用
・アメリカ国内で、あらゆる社会格差が拡大
 →シリコンバレーでも、ハイテク技術者並みの高給はもらえないけれど大切な仕事をする人たちが、住むことができなくなっている
・GAFAなどのテクノロジー企業は、「金型効果」と「好循環」のおかげで、利益率が大変高い体質
 →しかし、ここに残る大きな問題
 →以前の第4世代型の「製造業」は、元祖金型効果で生み出した富を十分な給料としてたくさんの人に分配、中流階級を作り出した
 →しかし、IT産業ではそうした産業の裾野が小さく、雇用創出の力が弱い
 →むしろ社会格差の増大を助長しているとすら考えられる
 →「味方」も少なく、このために何かあればすぐに批判の対象になりやすい
・運転手が苦労する一方で、「カリスマ創業者」がハードなパーティでバカ騒ぎする様子の報道
 →ネットでさんざん叩かれている
・ビッグ・テックが長期的に取り組むべき課題であると思う

◆泥棒男爵方式とドーピングの懸念
・メディアのビッグ・テックへの批判の根底にあるもう1つの要因
 →「独占」に対する懸念
・ウーバーは、多額の資金を得て、サービスを急速に拡大
 →「throw money at the problem」、つまりカネで問題を解決
・グーグルなどのようなテック企業の場合、「好循環」に入れば「勝てば独占」になりやすい性質がもともと
 →19世紀後半の「泥棒男爵」跋扈の時代、資本家たちが採った手法
 →ライバルを潰して、業界で自分しかいない状態を作り出し、ルールや料金を意のままにすること
 →WeWorkも「カネの力でドーピング急成長」戦略
 →ベンチャーがGAFAに伍して急成長するためには、ドーピングでもして無理するしかなかった、とも考えられる

◆シリコンバレーは終わり?
・ディジタルがクラウドとモバイルに集中する流れの中
 →ソフトウェア、クラウド、ディジタル関連のベンチャーは、引き続きシリコンバレーが強いまま
・中国版のビッグ・テック、BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)
 →いずれもアメリカでは大きな商売はしていない
 →アメリカ市場に完全に依存する必要のない中国の強さの証
・米中の「ディカプリング(分断)」が進行する中、アメリカやその仲間の国
 →富とアイディアの点で、シリコンバレーがますます頼りにされるのではないかと考えている
・シリコンバレーの「総本山」としての地位はいまのところ安泰
 →生活しづらいなどの文句を言いながらも、やはり人もお金も、引き続き集まってくる

◆流れゆく川
・私(著者)が最初にホームステイした町は、ニューヨーク州北部でカナダ国境に近い山の中
 →一番町が繁栄した1960〜1970年代、「日本のボウリング・ブーム」のおかげ
 →1970年代後半にはブームはすっかり終わり、木材より他に産業もなく、閉塞感が漂う
 →当時5000人ほどだった人口は、いま調べると3000人台まで
・日本の第1世代/農業を中心とした長い歴史の世界と違い、アメリカでは第3世代/お宝探しの土地開発が大きな比重
 →資源の需要供給に伴う「栄枯盛衰」のサイクルが短く、また激しい
・ゴーストタウンがたくさんあるアメリカ西部
 →あっという間に町ができ、あっという間に人がいなくなる
・シリコンバレーは、お宝探しのゴールドラッシュから物流と農業へ、その後軍需産業からテクノロジーへと、栄枯盛衰を続けながら現在まで1世紀半を生き残ってきた
 →「栄枯盛衰に対応する体力」のようなものが、実はベースなのではないか
 →シリコンバレーは流れゆく川のよう

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