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最先端アプローチ、インテルとSamsungそれぞれの取り組みから

新型コロナウイルスによる累計感染者数は金曜21日昼前時点、世界全体で2253万人に達し、増勢が続いている。地域別では中南米が最も多く、北米、アジアそして欧州と続く形である。半導体の7-nmはじめ先端微細化のアプローチでTSMCがリードの様相、今年の売上げ20%増を見込むとともに株価も高騰している。盟主、Intelは、直近四半期業績は好調ながらも7-nmの重なる遅れで生産外部委託もありとして株価が低下したばかりであるが、このほど2年ぶりにArchitecture Dayをオンライン開催、先端技術全体の革新の推進を図ると訴えている。もう1つのSamsungは、IBMのPower10プロセッサをEUVリソ7-nmプロセスで製造する取り組みを発表、TSMC対抗を鮮明にしている。

≪最先端の凌ぎ合い≫

最先端微細化プロセスの遅れ&不調から、担当部門の組織改編が行われる事態に至ったと言われるIntelであるが、このほど2年ぶりにArchitecture Dayをオンライン開催、2年前に発表している「技術の6つの柱」の全体の革新を一層推進して引っ張っていくスタンスをあらわしている。プロセス微細化一辺倒でなくアーキテクチャー革新の重要性が以下の通り強調されている。

◇インテル、「技術の6つの柱」全体の革新を推し進め、リーダーシップ製品のロードマップを強化-Architecture Day 2020を開催し、インテルの技術担当リーダー達がインテリジェント時代に向けた新しいアーキテクチャーと革新を紹介 (8月14日付け https://newsroom.intel.co.jp/editorials)
→2018年12月のArchitecture Day 2018にて次の「技術革新における6つの柱」を発表、今回のArchitecture Day 2020では、画期的な新しいブレイクスルーを交えながら、この6つの柱の進捗状況について紹介の旨。
 1.プロセス …10 nm SuperFin
 2.アーキテクチャー …Xe GPU
 3.メモリ
 4.相互接続
 5.セキュリティ
 6.ソフトウェア

◇Intel Looks to Regain Innovation Lead-Intel touts next-generation tech in transistors, CPUs (8月17日付け EE Times)
→1.Intelが、2年ぶりにArchitecture Dayをオンライン開催、いくつかの最近の失策の後で技術のリードを取り戻すチャンスであった旨。Intelは、アーキテクチャー革新がプロセス縮小と同様に重要であり得る、と披露の旨。IntelのSVP, chief architect and GM Intel Architecture, Graphics and Software、Raja Koduri氏がプレゼン。
 2.Tirias Researchのprincipalアナリスト、Kevin Krewell氏記事。Intelが最近のArchitecture Dayプレゼンにて、同社が開発しているいくつかの革新を議論、それらは、"SuperFin" FinFETトランジスタ技術および"Tiger Lake"統合CPUなどの旨。

◇Intel Architecture Day: Time to Regain Innovation Lead-Intel demonstrated that architectural innovation can be just as important as process shrinks. Intel's Xe, for example, looks able to give competing chips from AMD and Nvidia a run for their money... (8月19日付け EE Times India)

プロセッサに関する国際会議「Hot Chips 32」(2020年8月16〜18日:オンライン開催)にても、このIntelの主張がプレゼンされている。

◇Hot Chips 2020: It's a Wrap (8月21日付け EE Times)
→いつもよりソフトウェアについての話が多い今年のHot Chips。以下の項目:
 Opening keynote reveal the industry challenges
 …IntelのRaja Koduri氏基調講演“No Transistor Left Behind”
 Sometimes bigger can be better; but smaller can be faster and cheaper
 Machine Learning need to scale

Samsungも、この「Hot Chips」において、かねてから協力関係にあるIBMの最先端半導体、Power10プロセッサをextreme ultraviolet(EUV) lithography技術を用いる7-nmプロセスで製造する取り組みを以下の通りあらわしている。

◇IBM unveils Power10 processor for big data analytics and AI workloads (8月16日付け VentureBeat)

◇IBM rolls out newest processor chip, taps Samsung for manufacturing-IBM will have Samsung fabricate Power10 processor (8月17日付け Reuters)
→virtual Hot Chips 2020 conferenceにて、IBMが、artificial intelligence(AI)およびビッグデータ解析向けにPower10プロセッサを披露の旨。Samsung Electronicsが、extreme ultraviolet(EUV) lithography技術を用いる7-nanometerプロセスで該半導体を製造、該プロセッサは来年の後半に利用できる旨。

◇IBM Reveals Next-Generation IBM POWER10 Processor (8月17日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→IBMが本日、同社IBM POWER central processing unit(CPU)ファミリーの次世代版、IBM POWER10を披露の旨。

◇Samsung will manufacture IBM's Power10 processors (8月17日付け JoongAng Daily (South Korea))

◇Samsung to manufacture IBM's new processor chip (8月17日付け Yonhap News Agency)

◇サムスン、IBMサーバ向け最先端半導体、次世代技術で受託生産 (8月19日付け 日経)
→韓国サムスン電子が米IBMの最先端半導体を受託生産する旨。IBMが設計するサーバ向けCPUを「EUV(極端紫外線)」と呼ばれる次世代製造技術を用いて量産する旨。サムスンは有力顧客を獲得して競合する台湾積体電路製造(TSMC)の切り崩しを狙う旨。

Samsungは別途、7-nmでの独自の三次元実装を発表したばかりでもある。

◇3D stacked memory at 7nm-Samsung's eXtended-Cube (X-Cube) 3D IC packaging technology is aimed at stacking SRAM memory on 7nm die and beyond for 5G and AI applications. (8月17日付け EE News Europe)

Intel、Samsungに対抗、迫られるTSMCであるが、強気の取り組みそして主張が以下の通りである。

◇TSMC stepping up recruitment to cope with chip demand-TSMC aims to meet chip demand by doubling hiring efforts (8月19日付け The Taipei Times (Taiwan))
→TSMCが、2020年に8,000人を採用する計画、同社の代表的な新規年間従業員募集4,000人の倍の旨。同社は、2020年売上げ伸長について、大方は高性能computingおよび5G半導体から15% to 19%の増加を先に予想した後、20%に高めている旨。

◇TSMC celebrates 1 billion defect-free 7-nanometer chips-1 billion defect-free 7nm ICs served, TSMC boasts -The amount of silicon used to make those processors is enough to cover 13 Manhattan city blocks (8月21日付け Taiwan News)
→TSMCが、7-nanometerプロセスでのmicrochips、10億個を製造、すべて欠陥無しの旨。

最先端を引っ張るこれら3社それぞれの取り組み、進捗に引き続き注目するところである。

コロナ禍のもと、経済再開への当面の警戒感を伴った舵取りが各国それぞれに引き続き行われている世界の概況について、以下日々の動きからの抽出であり、発信日で示している。

□8月17日(月)

シリコンバレーでの生々しい現時点の状況である。

◇Coronavirus roundup (update): Santa Cruz County is off the state's watchlist (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Santa Cruz Countyは、ヘア&ネイルサロン、ジム、礼拝など、州の許可が下りるまでまだ再開できない旨。

我が国の第二四半期、4-6月のGDPが戦後最大の下げ、そして日米欧も同様のあらわし方となる。

◇GDP実質27.8%減、4〜6月年率、戦後最大の下げ (日経 電子版 08:50)
→内閣府が17日発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比7.8%減、年率換算では27.8%減、マイナス成長は3四半期連続、減少率は比較可能な1980年以降でこれまで最大だった2009年1〜3月期(前期比年率17.8%減)を超えた旨。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより、経済活動が停滞したことが影響した旨。1〜3月期は年率換算で2.5%減だった旨。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比7.6%減で、年率では27.1%減だった旨。

◇日米欧GDP戦後最悪、4〜6月、日本はデジタル化カギ (日経 電子版 11:30)
→2020年4〜6月期は日米欧の経済がそろって戦後最悪のマイナス成長に沈んだ旨。新型コロナウイルスの感染拡大で消費をはじめ幅広い経済活動に急ブレーキがかかった旨。7月以降も感染拡大が続き、持ち直しかけた消費が再び落ち込む動きもある旨。日本は社会のデジタル化などによる生産性向上が回復力のカギになる旨。

□8月18日(火)

◇Coronavirus roundup: Santa Clara County gives out first warnings for Covid health order violations (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Santa Clara Countyによると、3つのunnamed事業にCovid health order侵害通告が送られた旨。

経済対策、各社業績などを受けて、下げから上げに推移した今週の米国株式市場である。

◇NYダウ86ドル安、景気敏感株に売り、ナスダック最高値 (日経 電子版 06:24)
→17日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小反落、前週末比86ドル11セント(0.3%)安の2万7844ドル91セントで終えた旨。追加経済対策を巡る米与野党協議の停滞する中、景気敏感株には買い見送りムードが強まった旨。
米中関係への懸念も相場の重荷だった旨。

□8月19日(水)

◇Coronavirus roundup: Santa Clara adds more time to its eviction ban | Two restaurants buck the closure trend (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Santa Clara市議会が、立ち退き中止にさらなる延長、South BayおよびPeninsulaの2つのレストランが先の閉鎖の後takeoutを再開の旨。

◇NY株ハイライト、好決算のウォルマート失速、晴れぬ消費の霧 (日経 電子版 07:08)
→18日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比66ドル安の2万7778ドルで終えた旨。米与野党の経済対策を巡る協議に進展がみられず、米景気を冷やしかねないとの見方が重荷となった旨。18日朝に好決算を発表した小売り大手のウォルマートは買いが先行したが、米国の個人消費の霧は晴れずに失速した旨。

□8月20日(木)

◇Coronavirus roundup: First-time unemployment claims drop again in California (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→shelter-in-place指令がCalifornia州から行われてまもない3月21日以降、初期失業申請が最低になっている旨。

◇NYダウ続落85ドル安、FOMC議事要旨で景気に懸念 (日経 電子版 05:40)
→19日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落し、前日比85ドル19セント(0.3%)安の2万7692ドル88セントで終えた旨。午後発表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けて米景気の不透明感が強まり、売り優勢となった旨。一方、追加経済対策を巡る米与野党協議が進むとの期待は相場の支えとなった旨。
米連邦準備理事会(FRB)が発表したFOMC議事要旨(7月28〜29日開催分)では、コロナ感染による米経済への悪影響が「中期的には経済見通しにとってかなり深刻なリスクになる」との見解で一致していたことがわかり、米景気回復の遅れが懸念された旨。

□8月21日(金)

◇NYダウ4日ぶり反発、46ドル高、ハイテク株に買い (日経 電子版 05:34)
→20日の米株式市場ダウ工業株30種平均は4日ぶりに反発し、前日比46ドル85セント(0.2%)高の2万7739ドル73セントで終えた旨。スマートフォンのアップルなど主力ハイテク株が買われ、相場を押し上げた旨。朝方発表の米新規失業保険申請件数が市場予想以上に増え、景気懸念から売りが優勢になる場面もあった旨。

◇Coronavirus roundup (updated): Bay Area adds back some jobs in July | First school district gets waiver to reopen (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Santa Clara Countyが、病院が広範囲の人々に検査を開く公共health orderを侵害、としている旨。

□8月22日(土)

以下の≪市場実態PickUp≫で取り上げるアップルの株式時価総額であるが、米国株式市場の強力な押し上げ要因となっている。

◇NYダウ続伸190ドル高、アップルは5%上昇で高値更新 (日経 電子版 05:41)
→21日の米株式相場は続伸し、ダウ工業株30種平均は前日比190ドル60セント(0.7%)高の2万7930ドル33セントで終えた旨。スマートフォンのアップルが5%を超える大幅高となり、相場上昇を牽引した旨。米経済指標の改善で景気への過度な懸念が薄れ、景気敏感株が買い直されたのも相場を支えた旨。前日に時価総額が初めて2兆ドルを超えたアップルは連日で上場来高値を更新。月末の株式分割で個人投資家が買いやすくなり、投資資金が流入するとの期待が強い旨。1銘柄でダウ平均を170ドル近く押し上げた旨。


≪市場実態PickUp≫

【Huaweiへの禁輸措置強化】

Huaweiのモバイルプロセッサ生産中止などの波紋を引き起こした米国の禁輸措置強化が発表され、即座に米国・Semiconductor Industry Association(SIA)の驚き&懸念のステートメントが出されている。

◇SIA Statement on Export Control Rule Changes (8月17日付け SIA Latest News)
→米国商務省が本日発表した新しい輸出管理規則の変更に対して、Semiconductor Industry Association(SIA)のpresident and CEO、John Neuffer氏ステートメント。「該規則をなお見直しているが、これら商用半導体販売に対する広範な制限は、米国半導体業界に大きな混乱をもたらす。国家セキュリティ目標達成に向ける一方米国各社への害を抑えるより狭いアプローチのこれまでのサポートからの政権の急な移行に驚き、懸念をもつ。中国への敏感でない商用製品の販売は、ここ米国における半導体リサーチ&革新を引っ張り、アメリカの経済的強みおよび国家セキュリティに非常に重要となる。」

以下、業界各紙の取り上げ&あらわし方である。

◇US Tightens Chip Export Screws on Huawei (8月17日付け EE Times)
→Trump政権が、中国に対する半導体輸出の締めつけ強化、ライセンス必要リストにHuawei Technologies関連会社をさらに加えて、米国先端半導体製造装置へのアクセスをさらに制限の旨。

◇New U.S. curbs threaten Huawei's smartphone crown and hit suppliers (8月18日付け Reuters)

◇米、ファーウェイ禁輸強化、半導体の調達を完全遮断 (8月18日付け 日経 電子版 05:23)
→米商務省は17日、中国の華為技術(ファーウェイ)に対する事実上の禁輸措置を強化すると発表、米国技術が関わる半導体やソフトがファーウェイにわたるのを完全に遮断する旨。同社の経営への打撃は一段と広がり、米中対立が激しくなるのは必至。
商務省は5月、外国製の半導体でも、米国の製造装置や設計ソフトを使っていればファーウェイに輸出するのを禁じた旨。今回は禁輸対象の定義を拡大し、第三者を使って半導体を調達し続けることを不可能にする旨。声明で「ファーウェイが米国の規制を迂回する試みを阻止する」と強調した旨。

中国の反発があらわされている。

◇New sanctions deal 'lethal blow' to Huawei. China decries US bullying-US puts more restraints on Huawei's business (8月18日付け CNN)
→Trump政権が、アメリカの半導体ベンダーがHuawei Technologiesにデバイスを供給し続けられる抜け穴を閉めて、米中貿易戦争を強めている旨。中国外務省のspokesperson、Zhao Lijian氏は、米国にはこのような制限を課するのに必要な証拠がないと主張の旨。

アジアでのHuaweiサプライヤの株価急落である。

◇China Calls U.S. Rules on Huawei ‘Nothing Short of Bullying’ (8月18日付け Bloomberg)
→Trump政権が、Huaweiの半導体へのアクセスについて制限強化、アジアにわたってHuaweiサプライヤの株価が急落の旨。

◇米、テック経済圏からファーウェイ遮断、禁輸包囲網強化、年1兆円取引、日本企業にも余波 (8月19日付け 日経)
→米政府は17日、中国の華為技術(ファーウェイ)への包囲網をさらに強めるため、米国の技術がからんだ半導体の同社への供給を事実上、全面禁止した旨。スマートフォンなどの生産に支障が出る可能性がある旨。ファーウェイは日本企業だけでも年1兆円の部品取引があり、影響は広範に及びそうな旨。米商務省が対ファーウェイで最初に規制を打ち出したのは2019年の5月。米企業に対し電子部品やソフトウエアでの同社との取引を禁じるなどした旨。

成り行きに注目していた米中貿易協議であるが、Trump大統領は延期を指示している。

◇トランプ氏、対中協議延期を指示 (8月19日付け 共同通信 08:49)
→ブルームバーグ通信は18日、トランプ米大統領が15日を軸に計画していた閣僚級の米中貿易協議の延期を指示したと報じた旨。トランプ氏は18日、中国と「今は話したくない」と述べた旨。新型コロナウイルスの情報開示問題やハイテク分野を巡る対立が、貿易交渉にも及んだもよう。
トランプ氏は新型コロナに関し「中国が世界に対して行ったことは考えられないことだ」と批判した旨。新たな日程は決まっていない旨。

【Nvidia関連】

株式時価総額がIntelを初めて上回る一方、Armの買収が有力と取り沙汰されて一際注目が集まるNvidiaが第二四半期業績を発表、過去最高の売上高となっているが、Intelに対抗するデータセンター事業については投資家たちが満足しない結果模様となっている。

◇Nvidia CEO Jensen Huang: Our Future Is About ‘Data Center-Scale Computing’-Nvidia CEO pins future on data center-scale computing (8月19日付け CRN (US))
→Nvidiaがアナリスト評価を上回る第二四半期業績を示す一方、同社CEO、Jensen Huang氏はアナリストに対し、同社は成長継続に向けてデータセンターデバイスに注目、としている旨。「今後に向けデータセンターの規模を最適化すること」と同氏。

◇Nvidia beats estimates but data center performance leaves shares flat (8月19日付け Reuters)
→Nvidia社が水曜19日、予想を上回る第三四半期販売高を予測、しかし、半導体業界の上りゆく星のデータセンター事業の結果がある投資家たちを失望させ、株価を抑えている旨。

◇Nvidia boss sets out plan to rule the data center (8月20日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→NvidiaのCEO、Jensen Huang氏が、大規模データセンターを動かすcore技術のメインサプライヤになるために、このままでは同社をIntelとの紛争に突入させる計画の概略を述べている旨。

◇米半導体エヌビディア、ゲームからAI用へ「脱皮」、5〜7月増収、事業別売上高初の逆転 (8月21日付け 日経)
→ゲーム用の半導体メーカーだった米エヌビディアの「脱皮」が鮮明になってきた旨。19日に発表した2020年5〜7月期決算は、売上高が前年同期比50%増の$3.866 billion(約4100 億円)と9四半期ぶりに過去最高、人工知能(AI)計算用の半導体を中心とするデータセンター事業の売上高が初めてゲーム事業を上回った旨。時価総額は米半導体業界で首位。英アームの買収観測も出るなか、評価にたがわぬ成長を続けられるか。

【アップルの株式時価総額】

株式時価総額がキーワードとして続くこのところであるが、アップルが米国の会社として初めて2兆ドルの大台を超えている。前述の通り、米国株式市場を押し上げとあらわされている。1兆ドル超えからは21週での達成、現下のコロナ禍での資金集中ぶりがあらわれている。

◇Apple Reaches $2 Trillion, Punctuating Big Tech's Grip-Apple becomes first US company to reach $2T in market cap -Apple is the first U.S. company to hit that value, a staggering ascent that began in the pandemic. (8月19日付け The New York Times)
→Appleの株価が水曜19日、$468.65で株式時価総額が米国の会社として初めて$2 trillionに到達、2つ目の$1 trillionはここ21週で達成の旨。

◇Apple reaches $2 trillion market cap-Apple's market cap reached $2 trillion-What recession? (8月19日付け TechCrunch)

◇Apple is worth $2 trillion, punctuating Big Tech's grip (8月19日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇Apple、米初の時価総額2兆ドル超え、成長株に資金集中 8月20日付け 日経 電子版 06:48)
→米アップルの時価総額が19日、初めて2兆ドル(約210兆円)を超えた。2兆ドルはサウジアラムコに続いて2社目、米企業として初めて。新型コロナウイルスの感染拡大と景気回復の遅れが懸念されるなか、在宅での学習や勤務が増え、製品需要が拡大、安定成長が見込める企業にマネーが集中している旨。
19日の米国株式市場でアップル株は続伸し、一時、前日比1.4%高の468ドル65セントを付けた旨。7月下旬に発表した2020年4〜6月期の決算で、売上高と純利益がともに市場予想を上回ったことで上昇に弾みがついている旨。年初来の上昇率は5割を超える旨。

【中国半導体関連】

前回も示したが、TSMCからの人材獲得の現況である。

◇China hires over 100 TSMC engineers in push for chip leadership-Emerging chipmakers offer lavish pay packages to snap up talent (8月12日付け Nikkei Asian Review)
→複数の筋がNikkei Asian Reviewに語ったこと。2つの中国政府支援半導体プロジェクトで合わせて、昨年以降TSMCから100人を上回るveteran engineersおよびmanagersが採用されている旨。

◇China Poaches Over 100 TSMC Engineers to Bolster Domestic Chip Industry-Nikkei: More than 100 TSMC employees take jobs in China-It's all about the talent. (8月14日付け Tom's Hardware)
→Nikkei Asian Review発。昨年以来、Quanxin Integrated Circuit Manufacturing(QXIC:山東省済南市)とWuhan Hongxin Semiconductor Manufacturing Co.(HSMC:湖北省武漢市)が、人材強化に向けてTSMCから100人を上回るmanagersおよびengineersを採用、給与&ボーナス倍額を提示してTSMC従業員を引き寄せの旨。

台湾半導体業界への中国からのハッカー攻撃が、次の通りである。

◇‘China-backed hacking hits Taiwan semiconductor industry’ (8月15日付け Sunday Guardian)
→中国から発出の国家支援の戦略的サイバーhackingキャンペーンが、台湾の賭けがいない半導体業界を攻撃の旨。半導体は、スマートフォンおよびcomputer製造toolsの重要なコンポーネントであり、台湾のこの業界からの売上げは2019年で$87.6 billionの旨。該攻撃は、台湾のcyber security会社、Cycraft Technologyが最初に発見の旨。

米国からの禁輸措置で締めつけられるHuaweiの半導体fab建設の取り組みである。中国内での自立化の指標として注目である。

◇Huawei building a fab-Report: Huawei to build a wafer fab to make 45nm chips (8月20日付け Electronics Weekly (UK))
→Huaweiがfabを建設しており、年末までに45-nmウェーハを動かしていく旨。Huaweiは該fabプロジェクトを勇敢、あるいは勇気という意味の‘Tashan’と呼んでいる旨。該45-nmラインは、米国の製造装置を用いないで完了するとしている旨。Shanghai Microelectronicsが、該45-nmプロセスに向けたlitho machinesを供給、来年には28nm-capable litho machinesをつくっていくと謳っている旨。

【メモリ半導体市場データ】

価格低下が続いていく今後の流れという現時点の見方である。

◇Memory prices to fall for rest of the year-Forecast: Memory chip prices will decline into 2021 (8月17日付け Electronics Weekly (UK))
→Digitimes発。メモリ価格が供給過剰から第四四半期にさらに10%低下、価格弱含みが2021年第一四半期にかけて続く見込みの旨。

◇DRAM安、一段と、スポット価格、スマホ向け不振 (8月19日付け 日経)
→DRAMのスポット(随時契約)価格が一段と下落、指標となるDDR4型の4ギガビット品は3月の高値から3割ほど安くなった旨。新型コロナウイルスの影響でスマートフォンや産業機器向けが不振のほか、パソコン向けなどに見られた在宅特需も鈍っている旨。

対して、第二四半期の韓国およびグローバル市場の売上げの伸びが以下の通りである。

◇Korea memory chip output value up in 2Q20-Q2 memory chip output value in S. Korea rose 22.1% (8月18日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Research発。韓国のメモリ半導体業界の2020年第二四半期output valueが、前四半期比13.9%増、前年同期比22.1%増、スマートフォン需要のcoronavirusによる低迷をサーバおよびnotebooksの需要の伸びが打ち消している旨。

◇Global DRAM revenue surges 15% in 2Q20, says DRAMeXchange-DRAMeXchange: Q2 DRAM revenue rose to $17.1B (8月20日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。average selling prices(ASPs)およびbit出荷の伸びが2020年第二四半期のDRAMs世界市場を$17.1 billionに押し上げ、前四半期比15.4%増。第二四半期ASPsは第一四半期から約10%高、と特に言及の旨。

今年のDRAM設備投資については、20%減と見込まれている。

◇DRAM Capex Spending Expected to Decline 20% in 2020 (8月20日付け EE Times India)
→IC Insights予測。DRAMプレーヤー大手3社の今年のDRAM capital expenditure(capex)予算:
 Samsung  21%減の$4.9 billion
 SK Hynix  38%減の$4.0 billion
 Micron   16%減の$3.6 billion

◇DRAM capex spending to decline 20% in 2020, says IC Insights-IC Insights: 2020 DRAM capex falls to $15.1B, down 21% (8月21日付け DIGITIMES)


≪グローバル雑学王−633≫

30年もの時間をかけて開発した青色LED、前回から続いてその実現を確信した瞬間から

『次世代半導体素材GaNの挑戦−22世紀の世界を先導する日本の科学技術』
 (天野 浩 著:講談社+α新書 825-1 C) …2020年4月13日 第1刷発行

より経緯、そして電灯に使えることからの社会的貢献など、以下にあらわされている。まったく綺麗な結晶が得られなかったGaNであるが、電気炉の故障が幸いしてツルツルの表面に、というくだりは世の中を大きく変える取り組みには本当によくあるものとの感じ方がある。日本の大学で行われた研究を実用化する際には、事業化を真剣に考える企業との産学連携が必須である、と産学が協力、共同する重要性が本書ではこれからも繰り返し強調されていく。


第一章 青色発光ダイオードが教えてくれた真実 …後半

■青色LEDの実現を確信した瞬間
・SiCやZnSeのLEDは、GaNのLEDの発光に成功する5年以上前に、すでに青く光っていた
 →とはいえ、暗い箱の中で弱々しく光っている程度
 →弱々しくとはいえ、それでも光っていたのだから、この2つの素材の可能性を追求
・ZnSeは脆いためLEDを作っても寿命は短い
 →私は、GaNから他の素材に変更することは、いっさい考えなかった
・GaNを光らせる上での問題
 →SiCやZnSeの2つと比べると、綺麗な結晶を作るのが難しい
 →GaNの場合、それまで築いてきたノウハウを応用しても、まったく綺麗な結晶にならなかった
・ところが、低温窒化アルミニウム・バッファ層の実験のときには、装置から外に出したらツルツルの表面に
 →電気炉の故障によって温度が上がらなかったことによるもの
・当時は日亜化学工業におられた中村修二先生が、窒化インジウム・ガリム活性層のLEDを発表
 →明るい室内でも眩しいほどに光るLEDを作ることに成功
 →私もGaNの選択が間違っていなかったことを確認できた

【コラム 杆を生み出すために必要なエネルギー
・LEDの出す色
 →使用されている半導体の持つ「バンドギャップ」で決まる
・窒化インジウム・ガリウムは、GaNとInNを混合した結晶、混晶
 →混合する割合によって様々な色のLEDを作る際に用いられる

■ビル・ゲイツから受けた影響
・GaNのLEDを実用化する研究は、1986年から、豊田合成と名古屋大赤崎研究室の共同研究としてスタート
 →各分野のエキスパートの協力が得られたことにより、研究開発は一気に軌道に乗り、GaNによるLED光源の普及につながった
 →日本の大学で行われた研究を実用化する際には、事業化を真剣に考える企業との産学連携が必須
・私は学部生のころ、ビル・ゲイツ氏に憧れていた
 →ビジネスに対する氏の姿勢や数々の書籍
 →自分の目指すべきものは人々に幸せをもたらすための研究を行う研究者になりたい、と考えるように

■モンゴルの大草原に灯ったLED
・1980年代半ばから現在に至るまで、私は継続して、GaNに関する研究や実験
・青色LEDの青の光の一部を黄に変換すると、青と黄は補色なので、混ざると白に見える
 →この仕組みが使えるのは、青色LEDだけ
・青色LEDがもてはやされる理由の1つは、電灯に使うことができるから
 →LED電灯が生活必需品となっているのは、たとえばモンゴル
 →家庭向けの太陽光発電システムによって光が灯る
・これからも困っている人たちのために研究を続けていかなくてはならないと、改めて決意

■イノベーションに重要なスピード
・現代の大学教員は、研究だけでなく、研究資金の手当てや若手の人材育成など、様々な問題に直面
 →これからも社会の課題を解決するアイデアを出し、産学で力を合わせて「良いイノベーション」の実現を目指し、研究を進めていく
・イノベーションを実用化に結び付けるには、スピードが大切
 →青色LEDの開発には、30年もの時間
 →日本でも、今後はより一層、産学が力を合わせて研究開発に力を入れるべき

■白色LEDの産業界へのインパクト
・液晶パネルの裏面を照射する白色の光源、いわゆるバックライト
 →かつては冷陰極管という、蛍光灯と同じ原理で発光する部品を使用
  →エネルギー効率が低く、短寿命、薄くしにくい、など改良すべき点
・明るい青色LEDを利用した白色LEDの開発で、バックライトとしての寿命が格段に延びた
 →軽くて薄い液晶ディスプレイを作ることができるように

【コラム◆枩朕А棆色で白色を作る
・白色LEDは、以下の3つに分けられる
 (1)赤色LED、緑色LED、青色LEDを組み合わせたもの
 (2)紫外線LEDと赤、緑、青で発光する蛍光体を組み合わせたもの
 (3)青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせたもの
 →現在、(3)の構成が白色LED光源の主流
・波長が短く、また強く光る青色LEDが生まれたことにより、蛍光灯よりも省エネルギーの白色光源が誕生
 →もう一段、省エネルギー化を進める技術の実用化に期待したいところ

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