Semiconductor Portal

» ブログ » インサイダーズ » 長見晃の海外トピックス

「COVID-19」インパクト:全世界で規制、封鎖;半導体業界への打撃

「COVID-19」感染が世界全体で59万人超、米国が最多で10万人突破、全世界の17%相当と、一層深刻さを増すインパクトという金曜27日時点の状況である。我が国でも週末28日、29日は、首都圏に外出自粛要請が行われて、世界全体に感染撲滅に向けた規制あるいは封鎖の措置が敷かれている。半導体業界では、各社の拠点がある現地への支援活動が見られるとともに、米国・Semiconductor Industry Association(SIA)をはじめ各国政府に該ウィルスと戦う上で半導体operationsを優先させる訴えが行われている。打撃を被る中で半導体製造を維持する努力が見られる一方、SamsungのEUV DRAMなど先端の取り組みが続けられ、様々な挽回に向けた各社の動きに注目している。

≪インパクト概況&半導体関連≫

「COVID-19」インパクトを受け激震が続く世界の概況について、以下日々の動きからの抽出である。鎮静化加減にまだ目が離せない中国の一方、欧州そして米国は日々増加の一途で対応に追われる状況が以下にあらわされる通りである。

□3月23日(月)

米国はじめ主要各国の経済対策が打ち出される今週である。

◇主要国、新型コロナの経済対策拡張、GDP比10%も (日経 電子版 00:49)
→新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、主要国は経済対策を大幅に積み増す旨。米政権は対策が当初の2倍の最大2兆ドル(約220兆円)に達すると表明。国内総生産(GDP)の10%近い規模になる国が出てきた旨。2008年の金融危機時を超す巨額支援で雇用と企業を守り、経済ショックが長期化するのを防ぐ狙い。

◇FRB、量的緩和を無制限に、資金供給を大幅拡大 (日経 電子版 22:50)
→米連邦準備理事会(FRB)は23日、臨時の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れ量を当面無制限とする緊急措置を決めた旨。これまでは計7000億ドル(約77兆円)を目安としていたが、「必要量」に切り替える旨。消費者や中小企業の資金繰りを支援する新たな措置も発動し、ドル資金の目詰まり解消を急ぐ旨。

□3月24日(火)

◇全米人口の約半数に外出規制、感染者4万人超 (日経 電子版 04:44)
→全米での新型コロナウイルス急拡大を受け、各州で外出規制や必需品を除いた店舗・施設の閉鎖が相次いでいる旨。23日時点で、15州以上が在宅勤務の義務化などの対策をとり、全米人口の約半数が影響を受ける旨。米国の感染者数は4万人の大台を突破し、死者数は500人を超えた旨。医療現場の崩壊を防ぐため、市中感染のペースを最大限おさえられるかが焦点となっている旨。

米国株式市場は、以下に示すようにその日の経緯を受けた気分で大きく上下に振れる状況が続いている。

◇NYダウ582ドル安、追加緩和も3年4カ月ぶり安値 (日経 電子版 05:44)
→23日の米国株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、終値は前週末比582ドル安の1万8591ドルだった旨。米議会で大規模経済対策の調整が難航したことが嫌気され、朝方に米連邦準備理事会(FRB)が発表した追加緩和も十分な下支えにならなかった旨。

各国の規制の動きが度を増す状況も続いている。

◇独仏など15カ国を入国拒否へ、茂木外相、中韓入国制限も延長 (日経 電子版 13:00)
→茂木敏充外相は24日の閣議後の記者会見で、新型コロナウイルスの感染が広がるフランス、ドイツなどの欧州15カ国を入国拒否の対象に加える方針を明らかにした旨。一部地域を対象にしていたイタリア、スペイン、スイス、イランは全土に広げる旨。入国申請日より前の14日間に該当地域に滞在した外国人が対象になる旨。

□3月25日(水)

東京オリンピックもついに延期となり、致し方ないものの多大なインパクトである。

◇東京五輪、2021年夏に延期、IOCが首相提案を承認 (日経 電子版 02:35)
→安倍晋三首相は24日夜、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話で協議し、今夏の東京五輪・パラリンピックを1年程度延期することで合意、遅くても2021年夏までに開催すると確認した旨。「東京2020」の大会名称は維持する旨。新型コロナウイルス感染の収束が見通せず、選手らの準備期間も踏まえ判断した旨。

◇NYダウ、2100ドル超上昇、上げ幅過去最大 (日経 電子版 06:52)
→24日の米国株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比2112ドル98セント(11.4%)高の2万704ドル91セントで取引を終えた旨。上げ幅は過去最大となった旨。米与野党が新型コロナウイルスの感染拡大にともなう経済対策で合意するとの観測が広がり、投資家の安心感が株の買いにつながった旨。

米国の2兆ドル(約220兆円)規模の景気刺激策が議会両院で合意されている。

◇Congress, White House strike deal for a $2 trillion stimulus package (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇White House, Senate reach deal on $2 trillion stimulus package-Senate, White House agree on $2T stimulus bill (The Hill)

◇米与野党、「過去最大」2兆ドルの経済対策で合意 (日経 電子版 15:54)
→トランプ米政権と与野党の議会指導部は25日未明(日本時間同日午後)、新型コロナウイルス対策として2兆ドル(約220兆円)規模の景気刺激策で最終合意、同日中にも上下両院で可決し、早期実施を目指す旨。4月をめどに家計に現金を給付するほか、企業支援にも9000億ドルを充てる旨。国内総生産(GDP)の10%にあたる巨額対策で、景気の底割れ回避を目指す旨。

インドでも全土の外出禁止、世界最大規模の抑制対応である。

◇インド全土で外出禁止、13億人が対象、世界最大の感染抑制対応 (日経 電子版 20:43)
→インド全土で25日から21日間の外出禁止が始まった旨。対象は全人口13億人以上にのぼり、新型コロナウイルスの感染拡大防止で世界最大規模の規制となる旨。工場などの企業活動も休止を余儀なくされ、生活に不可欠な業種以外はすべての生産拠点や事業所、商業施設の閉鎖を命じている旨。
自動車や電機など、インドに進出する日系企業にも影響が広がっている旨。

□3月26日(木)

◇Senate unanimously passes $2T coronavirus stimulus package-$2.2T coronavirus bill unanimously clears Senate (The Hill)
→米上院が、coronavirus pandemicで影響を受ける業界、中小事業およびworkersを救済する$2.2 trillion景気刺激策を96-0で票決、下院は金曜27日該法案対応予定の旨。

◇Senate approves $2 trillion stimulus after bipartisan deal (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇NYダウ、1カ月半ぶりの連騰、政府の企業支援に期待感 (日経 電子版 05:50)
→25日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均が続伸し、前日比495ドル64セント(2.39%)高の2万1200ドル55セントで終えた旨。トランプ米政権と与野党の議会指導部が新型コロナウイルス対策として2兆ドル(約220兆円)規模の景気刺激策で合意し、先行き懸念が和らいだ旨。航空機大手、ボーイングやエアライン大手、デルタ航空など政府支援が期待される銘柄に買いが集まった旨。

□3月27日(金)

中国が、こんどはウィルス持ち込みを防ぐ措置である。

◇中国、ビザ保有でも外国人の入国を拒否へ、28日から−新型コロナ逆流を警戒 (日経 電子版 04:20)
→中国外務省は26日、外国人は有効な査証(ビザ)や居留許可を持っていても、28日から当分の間、中国に入国できなくなると発表、新型コロナウイルスの逆流を防ぐための措置としている旨。日本人に観光などの短期のビザを免除する措置もすでに停止しており、実質的にほとんどの日本人が中国に渡航できなくなる旨。

◇NYダウ3日続伸、1351ドル高、経済対策への期待で (日経 電子版 05:35)
→26日の米国株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、終値は前日比1351ドル高の2万2552ドルだった旨。3日間の上昇幅は4000ドルに迫り、2週間ぶりに2万2000ドルを回復。米上院が25日、新型コロナウイルスに対応する2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策法案を可決し、早期に景気刺激策が実施されるとの期待が高まった旨。

我が国首都圏での外出自粛要請、閑散とした都心の状況を土曜28日のテレビ画面で目にしている。

◇首都圏に外出自粛要請、新型コロナ感染拡大抑制目指す−1都4県が合意、企業も対応急ぐ (日経 電子版 06:23)
→東京と神奈川、千葉、埼玉、山梨の1都4県は26日、不要不急の外出を自粛するよう住民に求めた旨。東京都で新型コロナウイルスの感染者数が急増し、爆発的な感染拡大の恐れが出ているため、結束して人の往来を抑える旨。政府も同日「緊急事態宣言」を可能にする新たな対策本部を設置した旨。企業は営業の休止や在宅勤務の推進に着手しており、首都圏を挙げた危機対応が動き始めた旨。

◇米、きょう2兆ドル対策が成立へ、家計・企業に巨額資金 (日経 電子版 08:25)
→米下院は27日に2兆ドル(約220兆円)の新型コロナウイルス対策を採決する旨。ペロシ下院議長は「超党派による圧倒的な賛成多数で可決する」と明言し、同案は同日中に成立する見込み。家計には現金給付や失業保険の拡大で5000億ドル規模の効果があり、企業にも8500億ドルの資金枠を用意する旨。戦後最大の巨額対策で、景気の長期悪化を避ける旨。

米国の感染者が26日時点で中国を上回って、世界最多となっている。

◇米国の感染者、中国抜き最多、新型コロナ、世界50万人感染 (日経 電子版 09:21)
→米国の新型コロナウイルスの感染者数が26日、中国を上回り、世界最多となった旨。人口密度の高いニューヨーク州を中心に感染が急拡大している旨。世界の感染者数は50万人を超え、死者は2万人を突破した旨。比較的拡大を抑えてきた日本でも爆発的な感染のおそれが出てきたとの見方がある旨。

□3月28日(土)

◇NYダウ反落、915ドル安、米国の感染者急増を嫌気 (日経 電子版 05:52)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日ぶりに反落、前日比915ドル39セント(4.1%)安の2万1636ドル78セントで終えた旨。米国の新型コロナウイルスの感染者数が26日に中国を上回って世界最多となるなど、感染拡大が続いた旨。世界的に外出制限の動きが広がり、人や物の移動の停滞長期化による景気不安から売りが膨らんだ旨。

米国の大型経済対策法が成立している。

◇米、2兆ドル景気対策が成立、企業や個人に「安全網」 (日経 電子版 05:53)
→トランプ大統領は27日、米議会が可決した新型コロナウイルスに対処する2兆ドル(約220兆円)の大型経済対策法案に署名し、同法は同日成立した旨。家計への現金給付や企業の給与支払いの肩代わりなどに取り組む旨。
売上高の急減や生活の困難に直面する企業や個人への「安全網」を整備するのが柱。過去最大の経済対策で景気を早期に立て直すV字回復シナリオを描く旨。

週末金曜27日時点の感染拡大の状況である。

◇新型コロナ感染者、米は10万人突破、全世界の17%に (日経 電子版 06:56)
→世界で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない旨。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、米国の感染者数は27日時点で10万人の大台を突破、全世界の17%に相当する規模。世界全体の感染者数も59万人を超え、死者数は2万7000人に迫っている旨。多くの国は感染拡大の抑制へ総力戦体制で臨んでいるが、患者の増加に医療が追いつかない厳しい状況が続いている旨。

米国半導体の中核、シリコンバレーでの状況が以下の通りであるが、米国の感染者数が世界最多となるに至る切迫した推移があらわれている。

□3月24日(火)

◇Coronavirus roundup: Santa Clara County releases testing numbers, with a few caveats (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Santa Clara County当局がCOVID-19感染検出に関する具体的な数字の最初をリリース、3月22日時点で647人から1,044 samplesをテスト、月曜23日の19件を含め321件のCOVID-19 casesを確認の旨。死亡3件が新たに報告され、同county総数は13人に。

□3月25日(水)

◇Coronavirus roundup: Mortgage relief | More testing numbers | Eviction moratoriums | Millions of masks from Apple (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→大手米国銀行の4つ、Wells Fargo, Citi, JPMorgan, and US Bankが、COVID-19によりインパクトを受けたCaliforniaの自家所有者に向けた抵当貸付控除に合意、と水曜25日午後Gavin Newsom知事。特に、同氏は該90日猶予期間に合意した貸し手の1つとしてBank of Americaを挙げなかった旨。Newsom氏はまた水曜午後、Californiaではコロナウィルスの検査を約67,000人が受け、2,535人が陽性判定、うち37人が17才以下、51%が18才〜49才であった旨。

□3月27日(金)

◇Coronavirus roundup: Large employers pause hiring | Hundreds laid off at local hotels | 1,000 Google volunteers ramp up testing in Bay Area (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→米国が新記録の失業claimsを示しCOVID-19感染の最大数の国家となった週、Silicon Valleyの雇用者は、workersをすぐさまレイオフするか休暇とするか、雇用のためらいに当たっている旨。Stanford Universityは木曜26日、新たな教職員&スタッフの採用を凍結の旨。

半導体および関連業界における各社のコロナウィルス関連の対応&動き、鎮静化に向かうとされる中国での動き、業界団体の各国政府に対する働きかけ、等々以下日々の動きの中からの抽出である。

□3月20日(金)

半導体市場へのインパクトについて、IDCの見方である。

◇Coronavirus to have significant impact on 2020 semiconductor market, says IDC-IDC: Outbreak to weigh heavily on chip market this year (DIGITIMES)
→半導体業界などハイテクsupply chainが向こう数ヶ月新型コロナウイルス大流行の影響を感じる、と予測するIDC。「不安定性およびパニックの増大にも拘らず、ハイテクサプライヤは引き続き長期的投資に重点化、パートナーおよび展望を伴った契約を維持、そして安定性に向けて特別の市場に注目しなければならない。」と、IDCのprogram VP of semiconductors and enabling technologies、Mario Morales氏。

Samsungの人材採用の動きが見られている。

◇Samsung to hire record number of experienced workers for chip biz (Yonhap News Agency)
→業界insiders、金曜20日発。Samsung Electronics Co.が、新型コロナウイルス世界的大流行にも拘らず、今年前半に半導体事業に向けて記録的な数の熟練workersを採用予定の旨。

□3月21日(土)

◇Samsung reports another virus-infected worker at Gumi plant, production unaffected (Yonhap News Agency)
→Samsung Electronics Co.が土曜21日、Gumi, North Gyeongsang Province(大韓民国慶尚北道亀尾市)のスマートフォン工場で新たな従業員のコロナウィルス感染、しかし生産ラインは正常に稼働、工場の閉鎖はない旨。

□3月22日(日)

◇IBM, White House, Department of Energy, and others launch consortium to give coronavirus researchers access to supercomputers-IBM to offer supercomputing access for virus research (VentureBeat)
→IBMが、White House Office of Science and Technology Policy,Department of Energy(DoE)およびほかいくつかと連携、COVID-19 High Performance Computing Consortiumを設立、該コロナウィルスとの戦いに"最も即座のインパクト"を起こす活動において研究者に16台のsupercomputingシステムへのfree accessが得られる旨。

□3月23日(月)

◇Home work triggers demand jump for chips, laptops and network goods-Stay-at-home orders boost business for chips, laptops (Reuters)
→何百万もの人々が遠隔での仕事を余儀なくされて、必要なmicrochips,laptopsおよびネットワーク周辺の需要が増大しており、Samsung Electronicsは半導体輸出が20%高まるとしている旨。「大流行の間在宅で仕事および学習する人々が多くなって、インターネットサービス需要が増大してきており、データセンターには該trafficを運ぶより大きなパイプが必要になる。」と、Cape Investment & Securitiesのアナリスト、Park Sung-soon氏。

中国の回復に向かう状況があらわされている。

◇COVID-19: What Can We Learn from China's Experience? (3D InCites)
→中国の経済は活発な回復に移行しており、SEMI Chinaのcore半導体事業、fabsおよびOSATsは大流行前に近い水準に立ち上がっている旨。全体として、中国本土の大手fabsなど生産ライン、並びに武漢の生産ラインは2月始め以降稼働に戻している旨。それ以降、clientsの大方から聞こえてくるのは、彼らが約80-90% capacityの機能回復を間違いなくしていると言っているように思われる旨。

□3月24日(火)

深刻な事態の欧州の状況に視点を置いた以下記事2件である。

◇Despite Covid-19, Our (Electronic) Beat Goes On (EE Times)
→Covid-19 pandemicのパニックの渦中、重大性にも拘らずこの危機は企業およびその従業員がうまく処理しなければならない課題のただ1つであることが忘れられやすい旨。学校、博物館、レストランおよびほか多くの営業並びに公共サービスが、閉鎖されている旨。中国は漸次正常に戻ろうとしているが、該感染の震央、湖北省は依然封鎖のままの旨。European Union(EU)は、移動などの活動に30日の制限を課している旨。

◇Stop, Cut or Maintain European Chip Production Amid Covid-19-European chip firms face production issues amid outbreak (EE Times)
→1.新型コロナウイルス大流行で欧州の事態が悪化、半導体メーカーがworkersに向けた健康問題およびリスク要因を調べなければならなくなっている旨。以下の内容項目:
  Adjusting workforce
  Struggling on a different level
  Preparing for the after-crisis
  Donating is a selfless act
  2.欧州の半導体メーカーが、その顧客の多くが工場を閉鎖している中、生産を続けるかどうか論争している旨。「遠隔作業を一般化してから、構内にいるスタッフの健康&安全を引き続き守るために状況の進展に適応させている。」と、STMicroelectronicsのhead of corporate external communications、Alexis Breton氏。

この状況下、米国・Texas Instruments(TI)は半導体製造およびR&Dの取り組みを次の通り継続している。

◇Despite 'shelter in place', TI will continue operating manufacturing, some R&D-TI maintains manufacturing, R&D during shelter in place (The Business Journals/Dallas)
→Texas Instruments(TI)のステートメント。「稼働しているlocationsでの政府guidanceに伴って、TIは、多くの重要インフラ業界および応用における我々の製品への必要があれば製造およびあるR&Dの取り組みを続けられる。製造operationsで働く従業員およびengineering labsでの何人かの従業員は、その役割が顧客ニーズ適応に非常に重要であり、引き続き対応していく。」

HPおよびIntelの防護用品の提供である。

◇HP uses 3D printing to manufacture protective gear for health workers (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→病院がコロナウィルス患者に対応するヘルスケアworkers用防護器具の不足に直面、HP社(Palo Alto)は、3D printingを用いてhands-freeドアopeners, mask adjustersおよびface shieldsを製造している旨。

◇Intel donating protective gear to health care authorities in four states (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Intel社(Santa Clara)が月曜23日、同社の工場在庫および防災用品から100万の防護itemsをヘルスケアworkersに寄付の旨。同社は、製造拠点があるOregon, California, ArizonaおよびNew Mexicoの州および現地health当局に送る手元用品を準備している旨。

◇DRAM市況強弱交錯、新型コロナで供給不安、需要に懸念も、スポット、急上昇後に反落 (日経)
→新型コロナウイルスの影響で、データの一時保存に使う半導体メモリであるDRAMのスポット(随時契約)市場に不透明感が広がっている旨。アジアでの感染拡大で供給が細るとの観測から指標品の価格は2月末〜3月上旬に急上昇したが、欧米での感染拡大に伴う株価急落で上昇が止まり、弱基調に転じた旨。世界的な景気の悪化で需要不安が強まっており、上値が重くなっている旨。

□3月25日(水)

◇Intel Donates More Than 1 Million Protective Items For Healthcare Workers In Coronavirus Fight (SEMICONDUCTOR DIGEST)

Micronが在宅勤務需要から売上げ見込みを上げている。

◇Micron Gives Strong Outlook Lifted By Data-Center Demand-Micron forecasts revenue of $4.6B-$5.2B in current quarter (Bloomberg)
→Micron Technology社が、在宅勤務の人々の増大に対応してcapacity拡大を構築しているデータセンターoperatorsからの受注急増が支えて、予想より力強い売上げを予測の旨。5月締めの第三四半期売上げが$4.6 billion to $5.2 billionと、Micronが水曜25日ステートメントにて。

SIAが、pandemicだからこその半導体operationsの継続維持の必要性を訴えている。

◇Why the Semiconductor Industry Must Stay Up and Running as We Confront COVID-19 (SIA Blog)
→SIAが本日、short white paper、"Global Stakeholder Primer:The Semiconductor Industry & COVID-19"をリリース、該documentは、半導体分野が非常に重要な業界である理由、ウイルス伝染リスクを最小にする該業界独特のcleanroom動作条件、および世界中の多くの半導体会社がCOVID-19から守るためにとる一方、非常に重要なoperationsの連続性を確実にしている驚くほどの対策を示している旨。

Computer chip makers seek U.S. permission to work during pandemic (Reuters)

□3月26日(木)

5Gの遅れが取沙汰される内容である。

◇5G Rollout Will Slow as Standards Work is Suspended (EE Times)
→新型コロナウイルスのインパクトにより仕様のいくつかの重要な部分の取り組みを中止する3GPPの決定で、5G展開が急に鈍化していく旨。該遅延は、3GPPがすべてのface-to-face meetingsを少なくとも3ヶ月中止すると発表した数週間前に示されていた旨。

◇5G対応iPhoneの発売、数カ月先送り検討、Apple (日経 電子版 09:22)
→米アップルが次世代通信規格「5G」対応とみられている新型スマートフォン「iPhone」の発売時期を通常より数カ月延期する検討を始めたことが、サプライヤ関係者らの話でわかった旨。新型コロナウイルスの欧米での感染拡大による消費の減退で販売環境への懸念が高まっているほか、開発にも遅れが出ている旨。部品供給を担う日本などのサプライヤに影響が広がる可能性がある旨。

◇Can't wait for Apple's new 5G iPhones? Well, you might have to. (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→COVID-19危機継続による経済悪化の渦中、Apple社が5G-capable iPhonesの展開を遅らせようとしている旨。

上にも示したSIAの働きかけである。

◇SIA asks US government to designate semi industry ‘essential’-SIA: The semiconductor industry is "essential"-The SIA has written to President Trump and government bodies asking them to designate the semiconductor industry as “essential business” allowing companies to continue to operate in spite of shutdowns. (Electronics Weekly (UK))
→Semiconductor Industry Association(SIA)が、coronavirus pandemicの間microchip製造を"essential business"と明確に示すよう、Donald Trump大統領および政府当局に働きかけの旨。「半導体および関連supply chainsの連続性を確固とすることが、向こう数週間および数ヶ月でディジタル化されるより大きな範囲のサービスのサポートに必要。」と、SIAのCEO、John Neuffer氏がステートメントにて。

◇Infineon Withdraws 2020 Outlook as Industry Visibility Falls (EE Times)
→Infineon Technologiesが本日、2020年度のearnings見通しを取り下げ、coronavirus pandemicから生じる経済的インパクトが"現在信頼性良く評価できず"、“low visibility”となっていると述べている旨。

◇Intel Offers $6 Million In Donations To Local Coronavirus Relief Efforts-Intel donates $6M to coronavirus relief in Santa Clara, Calif. (CRN (US))
→Intelが、coronavirus救済活動への寄与を拡大、同社が大きなpresenceを持つcommunitiesにおける現地機関およびfoundationsに$6 millionを出す旨。

◇How Are Europe's Engineers Adapting to Remote Working? (EE Times India)
→各国がCovid-19の拡がり鈍化の期待でlockdownに入っており、欧州の設計エンジニアが如何に在宅で働いているか、見ている旨。video conferencingおよびVPNs(Virtual Private Networks)などの技術への依存の旨。

◇新型コロナ報告―ファーウェイ、5G投資加速、中国、景気てこ入れの柱に (日経)
→新型コロナウイルスの感染拡大の影響により世界のスマートフォン市場が悪化するなか、シェア世界2位の中国・華為技術(ファーウェイ)が次世代通信規格「5G」事業で巻き返しに動いている旨。中国の習近平(シー・ジンピン)政権が5G関連事業を景気のてこ入れ策の柱に位置付けていることが背景にある旨。

□3月27日(金)

◇5G: Rollout Stalls as Standards Work Is Suspended-The delays are bound to impact the development of products and thus the deployment of both networks and devices. (EE Times India)

◇Covid-19: More Closures Hit Asia-Our colleagues in China, Taiwan and other regions in Southeast Asia continue to report, from the ground, on the coronavirus's impact on the electronics industry. ESMChina shared the following update. (EE Times India)
→EETimes Asia sister publication、ESMChina発。Covid-19の拡がりが引き続いて、世界中少なくとも30ヵ国が緊急事態を宣言、欧米諸国における緊急の"都市閉鎖"に加えて、フィリピン、マレーシアなど東南アジア諸国における主要製造業界が連続して閉鎖を発表、electronicコンポーネントの供給面に課題をもたらす旨。以下の項目:
 Philippines: MLCC capacity
 Malaysia: Resistors stop production for 14 days
 Bangkok, Thailand
 Vietnam and India: Smartphone supply and demand

米国・SIAはじめ各国業界団体がいっしょになって半導体operationsの優先を各国政府に訴えをあらわしている。

◇Global Semiconductor Industry Calls on Nations to Prioritize Semiconductor Supply Chain Operations During COVID-19 (SIA Blog)
→数100の半導体および半導体supply chain各社を代表する10の業界団体が本日、COVID-19 pandemicと戦うための公共健康対策をつくっていることで半導体operationsを優先させるよう各国に呼びかけるステートメントを出した旨。中国、Chinese Taipei, EU, 日本, 韓国, 米国, およびSingaporeのSemiconductor Industry Associations、並びにマレーシアおよびフィリピンの半導体&エレクトロニクス業界を代表する業界団体など。

武漢市にあるLenovoの工場の再開状況である。

◇Lenovo restarts Wuhan plant production-Lenovo's Wuhan factory to resume 60% of production (DIGITIMES)
→新型コロナウイルス大流行を受けて数週間の中止の後、Lenovoが、3月末までに武漢(Wuhan, China)工場での生産の約60%を再開、4月半ばまでにフル生産に戻す運びの旨。


≪市場実態PickUp≫

【米国 vs. Huawei】

米国政府が中国・Huaweiに対する縛りをまたぞろ強化する検討に入っているのに対して、当のHuaweiの総帥、Ren Zhengfei(任正非)氏は、COVID-19でもHuaweiを止められないとのコメントである。

◇Exclusive: U.S. prepares crackdown on Huawei's global chip supply- sources-Sources: US will further restrict Huawei's chip supplies (3月26日付け Reuters)
→本件事情通筋発。中国と米国の間の緊張が引き続き増大、Trump政権がHuawei Technologiesに向けた半導体の世界的供給についてさらなる制限の置き方を検討している旨。

◇Even COVID-19 can't stop Huawei, says founder (3月26日付け Light Reading)
→Huaweiのfounder、Ren Zhengfei(任正非)氏が、同社はcoronavirus pandemicに関する問題から立ち直ってきている、としている旨。

【Intel関連】

前回、Intelのneuromorphic(神経派生型)半導体、Loihiを示したが、今回はLoihi半導体768個から成るcomputingシステムである。neurons数では、小型哺乳動物の脳に匹敵するとしている。

◇Intel Scales Neuromorphic Computer to 100 Million Neurons (3月22日付け EE Times)
→Intelが、同社のLoihi半導体768個を5 rack-unitシステム、Pohoiki Springsに統合、同社neuromorphic computingシステムの規模を拡大の旨。該cloud-ベースシステムはIntelのNeuromorphic Research Community(INRC)に向けて利用でき、より大規模で複雑なneuromorphicアルゴリズムのresearch and development(R&D)が行なえる旨。Pohoiki Springsには100 million neurons相当が含まれ、mole ratあるいはhamsterなど小型哺乳動物の脳とほぼ同じ数である旨。

◇Neuromorphic Computing System Reaches 100 Million Neurons (3月24日付け EE Times India)

Intelのインターネット上開催の「5G」関連新製品の説明会である。

◇インテル、5G製品の説明会 (3月25日付け 日経産業)
→米半導体大手、インテルの日本法人は次世代通信規格「5G」の基地局向けの半導体など新製品の説明会をインターネット上で開いた旨。中核を担うパソコン向けやサーバ向けのCPUは好調だが、製品の幅を広げることで業容の拡大を目指す旨。ただ通信向け半導体は競合企業も多く、CPUのような存在感を示せるかは不透明。

【SamsungのEUV DRAM】

TSMCは昨年10月、業界初のEUV技術商用化として7nmプロセス「N7+」を発表しているが、メモリ半導体では初めてということで、Samsung ElectronicsがEUV技術を取り入れた10-nanometerプロセスDDR4 DRAMを、モジュール出荷という形で以下の通り発表している。新たな生産技術世代の到来というあらわし方である。

◇Samsung announces EUV DRAM-Samsung ships 1M DRAM modules made with EUV (3月25日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsが、extreme ultraviolet(EUV) lithography技術を伴う10-nanometerプロセスで製造したメモリ半導体搭載のDDR4 DRAMモジュール1 million個を出荷の旨。該新EUV-ベースDRAMモジュールは、グローバル顧客評価を完了している旨。Samsungは、DRAM scalingにおける課題克服に向けてDRAM生産でのEUV採用は初めてとしている旨。EUV技術は、multi-patterningにおいて繰り返しstepsを減らし、patterning精度を改善、性能強化および歩留まり向上、並びに開発期間短縮を可能にする旨。
EUVは、同社第4世代10nm-class(D1a)あるいは高度先端14nm-class DRAMで始めて、Samsungの今後のDRAM世代において完全運用される旨。

◇Samsung Announces Industry's First EUV DRAM with Shipment of First Million Modules (3月26日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)

◇サムスン、メモリ生産で新技術、微細化で高性能 (3月26日付け 日経)
→韓国・サムスン電子は25日、半導体生産の主要工程に次世代露光装置「EUV」を使った量産ラインを稼働させたと発表、半導体メモリの分野でEUVを活用するのは世界で初めて。生産技術の本格的な世代交代は約20年ぶりとなる旨。
EUVは波長が13.5-nmと極めて短い極端紫外線のこと。露光装置はシリコンウエハーに半導体の回路を焼き付ける重要な工程を担う。EUVの露光装置を使うとより短時間で微細な回路を描くことができ、製造コストの低減にもつながる。サムスンは「従来技術に比べてメモリの性能が高まるうえ、生産性が2倍に向上する」と説明している旨。

【Micronの「5G」対応製品】

Micron Technologyが、「5G」スマホ向けの高速メモリ製品、新パッケージ「uMCP5」の採用である。LPDDR5を搭載したUFS規格対応のuMCPである「uMCP5」のサンプル出荷であり、DRAMと3次元NANDフラッシュのMulti Chip Package(MCP)化である。

◇uMCPs Ready Smartphones for 5G (3月24日付け EE Times)

◇マイクロン、5G製品試験出荷 (3月24日付け 日経産業)
→半導体大手の米マイクロン・テクノロジーは次世代通信規格である「5G」に対応したスマートフォン向け高速メモリ製品のサンプル出荷を始めた旨。低消費電力の規格に対応したDRAMと高速フラッシュメモリをワンパッケージ化した旨。ミドル価格帯のスマホへの採用を想定、高解像度カメラや複数人での通信ゲーム、仮想現実(VR)アプリなど、5Gの高速通信を生かしたサービスをサポートできる旨。
新製品はマイクロンの新パッケージ「uMCP5」を採用。低消費電力DRAMの最新規格「LPDDR5」に、高速規格「UFS」に対応した3次元NAND型フラッシュメモリを同じパッケージにまとめた旨。最大で毎秒6.4ギガビットでデータ処理できる旨。

◇uMCPs to Prepare Smartphones for 5G-Micron aims to be ahead of the curve before widespread 5G adoption. (3月25日付け EE Times India)

【注目させられるデータから】

この第一四半期のファウンドリーベンダー・トップ10の売上げが、この現在の環境下前年比30%あまり増の見方である。昨年の低調な出だしとは言え、TSMCは好調という現時点ではあるが、コロナ・インパクトの軽重如何というところである。

◇Foundry revenues thought to have jumped 30% YoY in first quarter-TrendForce: Q1 foundry revenues increased 30% on year (3月24日付け New Electronics)
→TrendForceの評価。今年第一四半期の間のファウンドリー・トップ10の売上げが$18 billionを上回り、前年同期の$13.74 billionから31.5%増。
TSMCが第一四半期売上げ$10.2 billionで該ファウンドリー分野を引き続き引っ張っている旨。

半導体intellectual property(IP)市場で代表格のArmが、ここ2年のシェアの低下ぶりがあらわされて、改めての注目である。

◇Arm down in an up market-Arm loses market share in semiconductor IP-Arm's revenues declined slightly in 2019 in a market that grew,says IPnest, reflecting similar situations in 2018 and 2017. (3月27日付け Electronics Weekly (UK))
→IPnestの評価。ある時期半導体intellectual property(IP)市場の半分を支配したArmが、市場シェアを2018年の44.7%から昨年2019年は40.8%に落としている旨。Appleが来年desktopおよびlaptop form factorsでArm-ベースMacsを出すという噂が依然引き続き広まっている旨。

【台湾IT主要会社の2月売上げ】

世界のIT景況の指標ともなる台湾のIT主要19社の売上高であるが、2月についてのデータが以下の通りである。ここでもTSMCは好調とは言え、全体では前年比6.4%減であり、3月以降はさらに厳しくなる見方にもなる現時点である。

◇台湾IT、5カ月連続減収、2月、新型コロナで供給混乱 (3月24日付け 日経)
→世界のIT景気を占う台湾の主要19社の2月の売上高を集計したところ、合計額は前年同月比6.4%減と5カ月連続の減収となった旨。新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーン(供給網)の混乱が重荷となった旨。一方、半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は53%増と好調を維持した旨。

◇台湾IT、新型コロナ直撃、2月売上高6.4%減、生産停滞、鴻海18%減収、稼働率5割 (3月27日付け 日経産業)
→新型コロナウイルスの感染拡大で、世界のIT景気を占う台湾の主要19社に打撃が広がっている旨。2月の売上高合計額は前年同月比6.4%減と5カ月連続の減収となった旨。サプライチェーン(供給網)の混乱で中国生産を主体とする企業の苦戦が鮮明で、需要面の懸念も台頭し始めた旨。一方で半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は好調を維持している旨。


≪グローバル雑学王−612≫

インドネシアの先住民が伝え継いだ話を、ドイツの民俗学者およびスコットランドの社会人類学者がそれぞれに、19-20世紀のこと、あらわした2つのタイプがあるインドネシアの神話について、

『世界の神話』
 (沖田 瑞穂 著:岩波ジュニア新書 902) …2019年8月22日第1刷発行

より読み迫っていく。1つは「ハイヌウェレ型」で、世界各地に見られる食物起源神話の型式の一つ。殺された神の死体から作物が生まれたとするもので、農耕の起源神話とされる。もう1つは「バナナ型」、死や短命にまつわる起源神話であり、重要なアイテムとして、共通してバナナが登場することから、この名があるとのこと。生をつなぐ作物の有難さ、そして生と性と死のあり方が、営々と受け継がれている受け止めである。


7 インドネシアの神話

・インドネシアの先住民の間の神話
→主に2つのタイプ
→1.農耕の起源神話…「ハイヌウェレ型」
 2.死の起源神話 …「バナナ型」

⇒「ハイヌウェレ神話」
 …インドネシアのセラム島に住むウェマーレ族に伝わる話
 …ドイツの民俗学者アードルフ・イェンゼン(1899〜1965年)が現地で聞き取ったもの
 *アメタという男が、ココヤシの実を見つけ、ハイヌウェレはその実から誕生した
 *ハイヌウェレは、3日後には結婚可能な女性に
 *彼女は、自分の排泄物として高価な皿や銅鑼などを出した
 *あるとき村で、マロ舞踏と呼ばれる9日間にわたる盛大な祭が行われた
 *ハイヌウェレは、村の人々に高価なものを毎日配った
 *村人たちも、次第に彼女を不気味に感じ始め、9日目に集団で彼女を殺して舞踏の広場に埋めた
 *アメタはハイヌウェレの身体を細かく切り刻んであちこちに埋めた
 *その諸部分から、そのときにはまだ地上になかったさまざまな物、とりわけ主食となるイモが生じた
 *人々は、以降、農耕を行って生きていくことになった
 *地上を支配していたムルア・サテネという女神が、人々を呪い、彼らに死の運命を定めた
 *ハイヌウェレの死が世界で最初の死となり、以来人々は死の運命を背負うことになった
―この神話の中の重要なできごと、2つのポイント
 →1.「死の起源」が語られている
  2.ハイヌウェレという神的少女の死によって、はじめて農耕が発生した
―死の起源と農耕という文化が同時に発生したものとして語られる神話
 →「ハイヌウェレ型神話」
 …「生きている間は排泄物として食物や貴重品などを出し、殺されて、死体から有用植物を発生させる女神あるいは神の神話」

→「アメリカのミシシッピ河の下流域に住んでいた先住民ナチェズ族に伝わる話」
 …離れた地域であるにもかかわらず、とてもよく似ている話
 *一人の女が、二人の少女と暮らしていて、女は少女たちにいつもおいしい食べ物を食べさせてやっていた
 *なくなると、女はかごを両手に一つずつ持って、ある建物の中に入っていく
 *出てきたときには、そのかごが食べ物でいっぱいになっている
 *少女たちは不思議に思い、のぞき見すると、食べ物は女の大便だった
 *女は少女たちに言った:「これが食べられないのなら、私を殺して、死体を燃やせ。すると夏に食べ物が生えてくる」
 *言われた通りにすると、夏に、トウモロコシと豆とカボチャが生えた
―完全な形のハイヌウェレ型神話
―イェンゼンによれば、この神話は、もとは熱帯で栽培されていたイモと、バナナやヤシなどの果樹を主作物とする、原始的な作物栽培をしていた人たちの文化を母胎にしてできた話
 →該熱帯の先住民を、「古栽培民」と名付けた
―古栽培民のもとではイモなどの作物は「生きた」もの
 →ハイヌウェレは、イモそのものの女神
―インドネシアの先住民の人たちは、イモを食べるのは殺害行為だと思っていた
 →だから、それを表わす神話を語り継いできた

〇バナナ型死の起源神話
・イギリスの社会人類学者ジェームズ・フレイザー(Sir James George Frazer)(1854〜1941年)が、おもしろい分類名「バナナ型」を与えた死の起源神話

⇒「石を拒んでバナナを選ぶ」−インドネシア スラウェシ
 *大昔、人間は創造神が天から縄に結んで下ろしてくれる贈り物によって暮らしていた
 *ある日、石を下ろすと、人間の夫婦は受け取らずに、他のものがほしいと要求した
 *バナナを下ろしてやると、夫婦は喜んで食べた
 *天の神は言った:「おまえたちの寿命は、バナナのようにはかなくなる。もし石を受け取れば、寿命も石のようになったのに」

⇒「石とバナナのけんか」−インドネシア モルッカ諸島 セラム島 ウェマーレ族
 *大昔、石とバナナの木が、「人間がどのようにあるべきか」について激しい言い争いをした
 *言い争いが高じて、怒った石がバナナの木に飛びかかって打ち砕いた
 *次の日には、そのバナナの木の子供たちが同じ場所に生えていて、その中の一番上の子供が、石と同じ論争をした
 *このようなことが何度か繰り返されて、あるとき、怒った石はバナナに飛びかかったが狙いを外して、深い谷底へ落ちてしまった
 *飛び上がれない石は言った:「人間はバナナのように死ななければならないぞ」
―2つの価値観の対比
 →石は個体として存続し続ける価値観
 →バナナは種として存続し続ける価値観
―この神話を語り継いだ人々は、このような生と性と死のあり方について、よく考え抜いていた
 →これこそ、神話の論理とも言える

ご意見・ご感想