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米中摩擦煮え立ち続ける中、増勢を維持した販売高:2018年半導体

2018年が終わろうとしているタイミングでこの1年の半導体業界関連の動きを振り返ってみる。3月あたりから火がつき始めた米中通商摩擦が、双方の応酬を重ねていっていまだに半導体の世界にも微妙な懸念要因となり、持ち越しの情勢である。世界半導体販売高の方は、今年後半から特に市場減速、価格低下の流れが強まっているが、2016年後半からの増勢基調が保たれて史上最高更新の波が続いて、WSTS秋季予測では今年総計が15.9%増の$477.9 billion、来年、2019年が2.6%増の$490.3 billionと、早くも$500 billion台突入をうかがう読みとなっている。新技術、新分野の引き続く伸びへの期待とともに、世界情勢に敏感に注目する本年の締めとなる。

≪2018年の動きを振り返る≫

2018年の半導体業界について本欄のタイトル、計52件を分類する形で振り返って以下示しており、次の7つに分けて数字は項目数である。

【世界半導体販売高】      12件
【激しい応酬の米中摩擦関連】   9件
【メモリが引っ張る熱い市況】   4件
【新分野・新技術の躍動】     6件
【市場の敏感な波紋】      10件
【各社取り巻く動きから】     2件
【激動の業界構図】        9件

以下、それぞれのこの1年の概要&ポイントである。

【世界半導体販売高】 12件

米国Semiconductor Industry Association(SIA)からの定例の月次世界半導体販売高の発表を追って、以下のこの1年各月の見方となっている。昨年来の史上最高の表現が続く一方、後半からは先行きへの警戒感が高まる流れとなっている。

 「史上最高の11月販売高、あと$32.9 billionで$400 billionの大台に」 (1月)
 「2017年販売高、初の$400 Billion越え、米SIA発、足元の株価乱高下」 (2月)
 「1月として史上最高の世界半導体販売高、18ヶ月連続前年比増」 (3月)
 「米中間通商摩擦が続く渦中、2月の半導体販売高が熱い活況を維持」 (4月)
 「前年比20%増の第一四半期販売高、摩擦の中の中国半導体関連業界」 (5月)
 「続く増勢、単月$30 billion以上19ヶ月、$35 billion以上8ヶ月連続」 (6月)
 「5月の半導体販売高、単月史上最高、14ヶ月連続前年比20%以上増」 (7月)
 「今年前半20.4%増の販売高:スマホ&メモリ市場、見えてくる各社戦略」 (8月)
 「販売高増勢の一方、20%以上増15ヶ月連続で途切れ、先行きに警戒感」 (9月)
 「半導体販売高単月$40 billion突破の一方、DRAMの伸び鈍化&価格低下」 (10月)
 「半導体販売高増加も強まる警戒感:米中摩擦、各社警告、業界データ」 (10月)
 「10月販売高、伸長鈍化のなか増勢維持、2018年15.9%増の予測」 (12月)

2016年後半から盛り返して急激な増勢そして高みを保っている世界半導体販売高のこの10月までの推移が次の通りである。27ヶ月連続の前年同月比増、そして15ヶ月連続した前年同月比20%以上増が7月で途切れて、7月17.4%増、8月14.9%増、9月13.8%増、10月12.7%増と高水準ながら下がってきている経過である。史上最高の月次販売高の更新が続いてきており、伸びしろはあるだけに引き続き今後に注目するところである。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
(月初SIA発表)
2016年 7月 
$27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月 
$28.03 B
0.5 %
3.5 %
2016年 9月 
$29.43 B
3.6 %
4.2 %
2016年10月 
$30.45 B
5.1 %
3.4 %
2016年11月 
$31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月 
$31.01 B
12.3 %
0.0 %
$334.2 B
 
2017年 1月 
$30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月 
$30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月 
$30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月 
$31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月 
$31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月 
$32.64 B
23.7 %
2.0 %
2017年 7月 
$33.65 B
24.0 %
3.1 %
2017年 8月 
$34.96 B
23.9 %
4.0 %
2017年 9月 
$35.95 B
22.2 %
2.8 %
2017年10月 
$37.09 B
21.9 %
3.2 %
2017年11月 
$37.69 B
21.5 %
1.6 %
2017年12月 
$37.99 B
22.5 %
0.8 %
$405.1 B
 
2018年 1月 
$37.59 B
22.7 %
-1.0 %
2018年 2月 
$36.75 B
21.0 %
-2.2 %
2018年 3月 
$37.02 B
20.0 %
0.7 %
2018年 4月 
$37.59 B
20.2 %
1.4 %
2018年 5月 
$38.72 B
21.0 %
3.0 %
2018年 6月 
$39.31 B
20.5 %
1.5 %
2018年 7月 
$39.49 B
17.4 %
0.4 %
2018年 8月 
$40.16 B
14.9 %
1.7 %
2018年 9月 
$40.91 B
13.8 %
2.0 %
2018年10月 
$41.81 B
12.7 %
1.0 %
$389.35 B
(1-10月)

SIAの2018年10月データから地域別の販売高比率を示すと次の通りである。
前年同月と比較しているが、中国そして米国が伸びている状況である。

2017年10月
2018年10月
Americas
23.0%
23.3%
Europe
9.1%
8.6%
Japan
8.6%
8.1%
China
31.4%
34.4%
Asia Pacific/All Other
27.9%
25.6%

半導体市場での我が国の現時点の位置づけに改めて感じ入るところである。

【激しい応酬の米中摩擦関連】 9件

3月のBroadcomによるQualcomm買収に対して禁止命令を出すあたりから、ここでは米中摩擦の様相があらわれてきて、双方の応酬が続いて、結局来年、2019年3月1日期限の決着如何を待つという、膠着した年越しに至っている。
半導体の世界への影響、インパクトがそれぞれにあらわれる以下の内容になっていると思う。

 「BroadcomによるQualcomm買収禁止命令、米中技術&経済摩擦に至る様相」 (3月)
 「火がつき始めた米中通商摩擦および新市場・新技術に覆いかかる障壁」 (3月)
 「双方対抗・応酬の動きが続く米中通商摩擦:止まないIT・新技術逆風」 (4月)
 「摩擦のうねり…米国のZTE制裁緩和:中国の東芝メモリ審査通過」 (5月)
 「制裁関税第3弾発動の渦中の動き:生産移転、価格転嫁、働きかけ」 (10月)
 「摩擦エスカレート、中国国有DRAMメーカーへの輸出禁止・起訴の展開」 (11月)
 「米国の対中国牽制が高まる中、半導体業界の減速予測&勢力変化」 (12月)
 「摩擦激化、Huawei排除に向かう流れの一方、iPhone差し止めの動き」 (12月)
 「米中摩擦激化&膠着の年越しへ、半導体市場の前年割れ&価格低下一途」 (12月)

【メモリが引っ張る熱い市況】 4件

本年後半にきて伸びの鈍化、価格低下の流れが強まってきているメモリ半導体であるが、販売高を最も大きく引っ張る製品カテゴリーであることに変わりはなく、波乱、激動の持ち前の市場特性に引き続き目が離せない展開である。来年に向けて中国の動向がいっそう焦点となっていくメモリ分野でもある。

 「メモリが引っ張る大幅更新の熱い市場、新分野の躍動:2017年半導体」 (1月)
 「メモリsuperサイクル、市場の構造変化、困難を極める今年の読み」 (1月)
 「メモリ半導体の今:Samsungの最先端、3D XPoint連携、中国の生産化」 (7月)
 「またも激動の兆しのメモリ業界、および中国半導体業界アップデート」 (9月)

【新分野・新技術の躍動】 6件

多彩な新分野・新技術が織り成す市場の台頭が、半導体販売高の増勢を根強く支えている感じ方がある。定例の国際会議・展示会について揃い踏みとなっているAI、IoT、自動運転、などキーワード群である。

 「垣根を越えて拡がる「CES」、Nvidiaはじめ自動運転、AI向け半導体」 (1月)
 「ISSCCにて改めての注目:アーキテクチャー革新、人工知能、女性進出」 (2月)
 「Mobile World Congress(MWC)でも注目、AIおよび5G、そしてS9」 (3月)
 「追加関税で景況悪化の懸念が増す中、壮大な躍進の展望、SEMICON West」 (7月)
 「熱を帯びるAI半導体:「iPhone」新機種発表、Intelはじめ取り組み」 (9月)
 「IoTの現況:各社取り組みおよび連携、そしてCEATEC JAPANにて」(10月)

【市場の敏感な波紋】 10件

世界の政治経済情勢、特に米中摩擦の推移を受けて、そして新市場の台頭の流れを感じながら、半導体市場が呼応して敏感に波紋が広がっていく以下それぞれの時点の動きとなっている。

 「年末年始の敏感になる動き:半導体の押し上げ、脆弱性&安全性」 (1月)
 「敏感に受け止める日々の動き:市場の変わり目、5GおよびAI関連」(2月)
 「中国市場の波乱含みの先行き…ZTE関連:メモリ半導体:新ファンド」 (5月)
 「市況から:増勢維持の第一四半期市場、強気の読み、8インチ逼迫」 (5月)
 「激動&活況の中の中国市場の動き:ZTE、DRAM価格、連携、半導体業界」 (6月)
 「先行きの市場不安定性要因:米中摩擦、メモリ価格&歩留り」 (6月)
 「新たな潮流:M&A頭打ち、中国傾斜、技術イベント、スマホ中国」 (8月)
 「史上最高のオンパレードの一方で、米中摩擦はじめ水を差すいくつか」 (8月)
 「半導体市場の相次ぐ波乱要因:米中摩擦、7-nm、Qualcomm」 (11月)
 「先行きへの懸念と選択:市場の暗雲模様、最先端プロセス委託」 (11月)

【各社取り巻く動きから】 2件

各社ごとの動きでは、半導体販売高の首位、Samsungそして2位のインテル、そしてワイヤレス技術を引っ張るQualcommにどうしても目が行くところがある。摩擦、波乱含みの年越しで、各社の戦略的アプローチ如何が業界の構図模様に大きく影響してくる空気を受け止めている。

 「Samsungを巡る熱い動き:年間売上げ首位、Qualcommとの連携、新製品」 (2月)
 「インテルとAMDを巡るそれぞれの生産対応、ここ数週間での激動」 (10月)

【激動の業界構図】 9件

一方的な伸びへの釘刺しと映る米中摩擦のインパクトが、半導体業界そしてエレクトロニクス分野の広範囲に構図の変化、変動をもたらしている。以下それぞれに随時アップデートを要するところと思う。

 「自立化を図る中国、最先端技術を競う韓国/台湾の絡み合う市場構図」 (4月)
 「種々織り交ざった米中関係摩擦の渦中、見え始めた中国メモリ業界」 (4月)
 「予断を許さない先行き:東芝メモリ、米中摩擦、販売高首位」 (5月)
 「米中摩擦の渦中、米国の性能追求、中国のインフラ構築関連の動き」 (6月)
 「引き続く米中摩擦の中、スパコンでも凌ぎ合い & 中国関連業界の今」 (7月)
 「米中摩擦の渦中、米国DARPAのelectronicsリメイク・プログラム」 (7月)
 「中台韓の目立つ動き:YMTCのフラッシュ、ウイルス、新分野投資」 (8月)
 「激動模様|そして3社に…ロジック最先端:引き続くメモリcapex増大」 (9月)
 「最新ランキングが醸し出す業界模様:2018年販売高、スパコン性能」 (11月)


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連】

来年3月1日までに折り合えるか、一触即発の環境の中、越年となりそうな米中摩擦であるが、以下現下の関連する動きである。

中国側から技術の強制移転を禁ずるよう明文化を図るとしているが、実態と合わせて実効性が問われている。

◇中国、技術移転の強要禁止を明文化、実効性は不透明−米と次官級協議、新たな進展 (12月23日付け 日経 電子版 22:16)
→中国共産党機関紙、人民日報発。中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は23日、外資投資を保護する外商投資法案の審議を始めた旨。外資の技術を行政手段で強制的に移転することを禁じる規定を盛った旨。米国の批判を意識して明文化したようだが、中国はもともと「政府が技術移転を強制したことはない」との立場をとっており、米国が求めるような技術移転の阻止にどこまで実効性が上がるかは不透明の旨。

オーストラリアも、国益に照らして中国のテレコムメーカーを締め出している。

◇豪「中国排除、客観基準で」、5G、ファーウェイなど念頭 (12月26日付け 日経)
→オーストラリア外務貿易省の事務方トップであるフランシス・アダムソン次官、都内での日本経済新聞のインタビュー。豪政府が次世代通信規格「5G」のネットワークから華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)など中国の通信機器メーカーを締め出した理由について「重要な基幹インフラを守ることは政府の責務だ」と述べ、国益に基づく判断だと強調した旨。

その筆頭に挙げられる中国のHuaweiであるが、同社半導体子会社が最先端となるTSMCのEUVリソ・プロセスの最初の顧客になろうとしている。

◇Huawei to be first to adopt TSMC EUV process, says report-Report: Huawei is adopting TSMC's EUV processes (12月26日付け DIGITIMES)
→中国語・Commercial Times発。Huawei Technologiesが同社半導体設計子会社、HiSiliconを通して、TSMCのextreme ultraviolet(EUV) lithographyプロセス技術を利用しており、Huawei-HiSiliconはTSMCのN7 PlusおよびN5製造プロセスを用いる旨。

米中摩擦の影響から2019年の中国経済の減速予測が見られている。

◇中国経済、2019年6.2%成長に減速、現地エコノミスト予測−29年ぶり低水準 (12月26日付け 日経 電子版 16:00)
→日本経済新聞社と日経QUICKニュースがまとめた中国エコノミスト調査。
中国の2019年の実質国内総生産(GDP)伸び率の予測平均値が6.2%。米中貿易戦争の影響が本格的に表れ、29年ぶりの低水準にとどまる見通し。景気対策の効果が出るのは2019年下期以降との見方が多く、中国経済の先行きは不透明感が増している旨。

米国トランプ大統領が、HuaweiそしてZTEの中国テレコム大手2社を米国市場から締め出す緊急大統領令への署名を検討している動きである。

◇Exclusive: White House mulls new year executive order to bar Huawei, ZTE purchases-Trump may ban US firms from purchasing Huawei, ZTE gear (12月27日付け Reuters)
→Donald Trump大統領が、セキュリティ懸念から米国の会社がZTEおよびHuawei製造の装置使用を禁止する緊急大統領令への署名を検討している旨。rural companiesは特に、該命令により中国メーカー製装置の排除を求められ、1社で$50 millionをも上回る置き換えコストの補償が得られないことを心配の旨。

◇ファーウェイ機器、米企業の使用禁止、大統領令検討か−米報道 (12月27日付け 日経 電子版 22:15)
→トランプ米大統領は米国企業に対し、安全保障上重大な脅威となる外国メーカーの通信機器の使用を禁じる大統領令を出す検討に入った旨。早ければ2019年1月にも発動する旨。ロイター通信が通信業界や政府筋の話として報じた旨。中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の社名は明示しないが、2社の機器を米市場から事実上閉め出す狙いとみられる旨。

【メモリ半導体関連】

あまりに熱い活況の反動から、先行きの市場規模減少および価格低下が声高となっているメモリ半導体市況を受けて、Micronの設備投資そしてSamsungの業績見込みでの以下反映である。

◇Micron to Cut Capital Expenses Next Year by $1.25 Billion-Micron reduces 2019 capex budget by 10%, citing weaker demand (12月21日付け Electronic Design)
→Micron Technologyが、2019年の間のcapital expenditures(capex)を$1.25 billionほど削減する計画、同社生産capacityの拡大&更新に$9 billion〜$9.5 billionの予算となっている旨。「長期間のDRAM価格上昇から、我々の顧客の中には通常より高い在庫水準の持ち越しを決めたところがあると思うし、DRAMの供給が需要に追いつくと、これら顧客は在庫水準の落としにかかっていく。」と、アナリストに対してMicronのCEO、Sanjay Mehrotra氏。

◇Samsung expected to post weaker performance for Q4-Analysts see Samsung's Q4 results showing weaker performance (12月24日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→韓国のアナリストの見方。Samsung Electronicsの第四四半期operating profitが$12.3 billionで前年同期比7.6%減、一方、販売高見込みが同3.2%減。DRAMsおよびNANDフラッシュメモリの価格低下が該結果の背景に、と特に言及の旨。

来年で終わりを迎える平成のこの30年の間でのDRAMのビット単価の下がりようが、以下の通りあらわされている。

◇DRAM容量単価、30年で1万分の1、技術革新で低下−商品市況 平成の30年(6) (12月25日付け 日経 電子版 22:16)
→平成の30年間で価格が劇的に下がったのが半導体メモリ。データの一時保存に使うDRAMは世代交代で記憶容量が拡大する一方、回路の微細化などの技術革新が進み、生産コストが下がり続けた。記憶容量あたりの単価は30年で1万分の1以下の水準に下落。パソコンなど電子機器の高性能化を支えてきた旨。
現在、DRAMの指標となっているのはDDR4型の4ギガビット品。スポット(随時契約)価格は12月中旬時点で1個3.04ドル前後。30年前、主に流通していたDRAMは容量が小さい256キロビット品や1メガビット品。1989年の価格は256キロビット品で1個324円前後。当時の為替相場に換算すると2.25ドル程度になる旨。

Micronが、台湾・台中の新工場に向けて採用の拡充を図っている。

◇Micron goes on hiring spree in Taiwan (12月27日付け DIGITIMES)
→Micron Technologyが、2019年に台湾でさらに1,000人の従業員採用を図っており、年末までに現地チームを8,000人規模に高めていく旨。
Micronは、2018年12月以降台湾で採用キャンペーンを開始、主に台湾中部、台中(Taichung)の同社新工場site向けの旨。

【Foxconn-シャープの動き】

台湾・Foxconnが、傘下のシャープとともに、中国・広東省珠海市に新しい300-佝焼蛎旅場を建設する計画を以下の通り打ち上げている。現地珠海市政府が投資の大方を引き受けるという表わされ方もあり、米国側の反応に注目するところがある。

◇鴻海・シャープ、中国政府と半導体工場、総額1兆円規模 (12月21日付け 日経 電子版)
→台湾・鴻海精密工業と子会社のシャープは、中国に最新鋭の半導体工場を新設する方向で地元政府と最終調整に入った旨。広東省の珠海市政府との共同事業で、総事業費は1兆円規模になる可能性がある旨。米国との貿易戦争が過熱する中、中国は外資に頼る半導体の国産化を強力に進めており、新工場も多額の補助金などで誘致する旨。中国の先端分野に圧力を加える米国が批判を強める可能性がある旨。鴻海とシャープは珠海市政府と組み、直径300ミリのシリコンウエハーを使う最新鋭の大型工場を建設する計画。2020年にも着工する旨。今回の計画で製造品目については検討中だが、すべてのモノがネットにつながる「IoT」機器向けのロジック系半導体の生産が主体となるもようの旨。

◇Exclusive: Foxconn plans $9bn China chip project amid trade war -Zhuhai's subsidy to fund Apple supplier semiconductor ambition -Foxconn to build $9B wafer fab in China (12月21日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→Foxconn Technologyが、シャープとの合弁の一環、中国南部に12-インチウェーハfab拠点を建設する計画、広東省珠海市(Zhuhai)が大きく補助している$9 billionのプロジェクトの旨。建設は2020年までに始まる予定、該fabは顧客およびFoxconn社内用向けのチップセットを生産する旨。

◇Foxconn reportedly to start 12-inch semiconductor fab construction in China in 2020 (12月24日付け DIGITIMES)
→Foxconn Electronics(Hon Hai Precision Industry)の半導体製造分野での積極姿勢が具体化しており、該台湾conglomerateが、中国のZhuhai(広東省珠海市)政府と契約締結、総投資$9 billionで中国南部のZhuhaiで12-インチウェーハ工場の建設を始める旨。最新Nikkei報道によると、該投資の大方は補助金および税制優遇によりZhuhai政府が引き受ける旨。
Zhuhaiの該新12-インチ工場の建設は、2020年にも開始予定の旨。

◇Foxconn Reportedly Readies Chip Fab in China (12月27日付け EE Times)

こんどはシャープについてであるが、半導体事業を分社化する計画が以下の通りあらわされている。

◇シャープ、半導体事業を分社へ、「8K」「IoT」支える成長の核 (12月26日付け 日経)
→シャープは来春をメドに半導体事業を分社する方針。高精細の映像技術「8K」やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」を成長戦略の核に据える同社にとって半導体は最重要分野の一つ。最先端品の開発力強化が急務となっているため、分社で機動力を高め、親会社の鴻海精密工業グループなど他社の経営資源を取り込みやすくする旨。
シャープは福山事業所(広島県福山市)を中心に展開する「電子デバイス事業本部」を本体から切り出して事業子会社として独立させる旨。

◇Sharp to spin off semiconductor business-Sharp plans to spin off semiconductor business into 2 units (12月27日付け The Japan Times/Jiji Press)
→シャープが、同社半導体事業について2つの完全子会社を作り出す計画、1つはmicrochipsおよびセンサに重点化、他方は半導体レーザに特化の旨。この動きは来たる4月にも出てくる可能性の旨。

【製造関連の流れ】

車載およびIoTに向けた半導体はじめ、8-インチウェーハの需要が高まりを見せるなか、ファウンドリーにおける拡充対応が見られている。TSMCではなんと15年ぶりの新しい8-インチ対応建設計画である。

◇Foundries expanding 8-inch capacities on roust demand for automotive, IoT chips-Sources: Auto and IoT chips drive demand at foundries (12月24日付け DIGITIMES)
→中国および台湾のファウンドリーが、車載electronics, internet of things(IoT)およびIndustry 4.0応用に入る各種半導体の需要増大に対応、8-インチウェーハfab capacityを立ち上げている、と業界筋が特に言及の旨。TSMCは、車載およびIoT半導体を作るために15年ぶりの新しい8-インチウェーハfabをSouthern Taiwan Science Parkに建設する計画の旨。

もう1つ、中国のOSAT(outsourced semiconductor assembly and test)メーカーによるhigh-end実装分野への入れ込みである。

◇China OSAT firms foraying into higher-end packaging fields (12月27日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国のOSAT(outsourced semiconductor assembly and test)メーカーが、medium to high-end実装分野に入り込む備え、台湾の対するメーカーに1年で科学技術的に追いつけるとするflip chip(FC)実装分野などの旨。2019年には、Tongfu Microelectronics, Tianshui Huatian Technology, およびJiangsu Changjiang Electronics Technology(JCET)など中国OSATメーカーが、Elan MicroelectronicsおよびRealtek Semiconductorなど台湾のnon-processor半導体設計会社からのlower-end wire-bonding実装発注について台湾勢より10%低い見積もりを提示して競っていく見込みの旨。

【2019年を見通して】

2018年を振り返りながら2019年を見通していく記事3点。米中摩擦の中の台湾・情報通信技術(ICT)業界のプレゼンス、artificial intelligence(AI)分野に向けた予測7点、そして東アジアの半導体業界について予想される様相である。

◇2018 review and 2019 outlook: How Taiwan ICT industry can regain ground (12月24日付け DIGITIMES)
→2018年のグローバル経済に対する重要な脅威、米中貿易戦争が、2019年も中枢の役割を果たしていこうが、それは世界最大の製造地および市場、そして台湾海峡を挟んだ近隣のテクノロジーに精通した島におけるICT業界にどんな意味合いとなるか?該貿易戦争により中国の成熟してきている携帯電話市場に災難が加わって、出荷が縮小、ベンダーがどこか他での伸びを求めている旨。2018年第三四半期のグローバルhandset販売は380 million台に上り、中国がうち100 million台、そしてインドが米国に替わって世界第2のhandset市場となっている旨。そしてSamsung Electronicsすらも、インドがhandset販売に向けて重要市場と言っている旨。

◇7 Predictions for AI in 2019-2019 predictions for AI technology-Artificial Intelligence is a vast field with many unknowns, but it's not hard to predict a few things that will or should happen in 2019 with the part of it that is deep learning. (12月26日付け EE Times)
→artificial intelligence(AI)分野には来る新年、大きな変化が見えてくる旨。deep neuralネットワークスの仕込みに向けたacceleratorsは、Baiduなどweb大手が吸収し、そしてdeep learningの限界が明らかになってくる、などの予測と特に言及の旨。以下の内容:
 1. Accelerators will get traction
 2. Valuations will get scrutinized
 3. Inference will get benchmarked
 4. Chip vendors will embrace benchmarks
 5. AI software platforms will get overgrown
 6. Deep learning will bump into some limits
 7. Interest will emerge in general Artificial Intelligence

◇2018 review and 2019 outlook: The semiconductor scene in East Asia-Looking back on 2018 and looking ahead to 2019 (12月28日付け DIGITIMES)
→米中貿易戦争が依然煮え立っており、東アジアの半導体業界は来る新年、複数の挑戦課題に直面する旨。World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)の評価では、2018年のmicrochip販売高が15.9%増の$477.94 billion、2019年販売高は$490.1 billionと予測の旨。


≪グローバル雑学王−547≫

第二次世界大戦末期の特攻作戦用の軍機、「桜花」の設計に当たり、その大きかった被害への責任からキリスト教に救いを求めたとされ、そして戦後は平和利用に徹して鉄道技術開発に従事、「夢の超特急」、新幹線の開発に当たった三木忠直に、

『日本人だけが知らない本当は世界でいちばん人気の国・日本』
 (ケント・ギルバート 著:SB新書 443) …2018年8月15日 初版第1刷発行

より焦点を当てていく。ネット事典より、三木 忠直(1909年-2005年)は、日本の大日本帝国海軍軍人、航空機技術者、鉄道技術者。最終階級は海軍技術少佐。新幹線の開発者、とある。悲惨な戦争末期でのあまりにも不本意な経過、経験を経て、戦争には組しない鉄道技術に参画、世界に先駆ける新幹線を完成させたという、ここでも信念、思いに心動かされている。


第一章 匠
 ―――世界に轟かせた「ひらめき」の妙 …その2

□特攻専用機「桜花」への痛恨の思いを託した「夢の高速鉄道」 ―――三木忠直

〓特攻性能しか持たない飛行体「桜花」を生んだ技術者
・大東亜戦争の当時、世界に名だたる性能を誇った日本の軍需技術
 →一時期、向かうところ敵なしの強さを誇った「零戦(零式艦上戦闘機)」
  …設計者・堀越二郎
・リバースエンジニアリングにより零戦の特長と欠点を分析
 →米軍の戦闘機の性能向上に役立てた
・資源も燃料もまったく不足していた日本
 →次第にパイロットの養成も追いつかなくなり、終盤には十分な操縦技術も持たずに飛び立ったケースもあるといわれる特攻作戦へ
 →堀越が痛恨の手記を残している
・目標に体当たりする特攻性能にのみ特化した、安価な「飛行体」を開発することに
 →「桜花」と名づけられた
  …「花と散る」ための「飛行体」
・桜花の設計者も、大きな心の曲折を経て、戦後の日本のために大変貴重な貢献
 →その技術者が、三木忠直

〓「自分が乗る」と言った海軍少尉の提言
・桜花の設計は、1944年6月ごろ、海軍少尉の大田正一が、航空技術廠長・和田操中将に提案したもの
 →大田少尉は、三木に誘導装置はどうするかと聞かれ、人間が乗るとの答え
 →三木が「体当たりというが誰を乗せるのか」と反対したのに対して「自分が乗る」と答えたとのこと
・1944年8月、桜花の研究は、軍上層部も認めることに
 →航空技術廠は、研究と試作を正式に命じられた
・出来上がった桜花は、ロケット噴射で進む爆弾に羽がついた形
 →敵艦の近くまでは大型の一式陸上攻撃機(一式陸攻)につるされて運ばれ、母機から切り離されて、敵艦に突入
 →のちに「人間爆弾」とも呼ばれるように
・後日談として、三木の娘である東洋大学名誉教授の棚沢直子より
 →世界で初めて音速を超えたアメリカのロケット飛行機「X-1」の開発において、三木の考案した技術が参考にされた可能性
 →きっかけは、三木がアメリカの宇宙開発計画を描いた映画「ライトスタッフ」を観たこと
 →終戦からわずか2年後に、桜花と同様の切り離し方式がとられたX-1が音速を超えた。これは単なる偶然か

〓桜のように散った「桜花」の戦果
・桜花が初めて出撃したのは、1945年3月のこと
 →当時「一億総玉砕」という言葉に、多くの日本人が感化されていた時代
 →10回出撃した戦果は芳しくなく、大勢の戦死者を生むことに
・明らかに大きかった日本の被害
 →桜花を用いた特攻作戦自体の致命的な欠陥
 →桜花による作戦は、特攻を始める前に母機ごと撃ち落される可能性が高かった
・靖国神社境内にある、神社の祭神ゆかりの資料が展示されている宝物館「遊就館」
 →「桜花」が天井からつるされる形で展示
・戦後しばらくしてから、桜花に採用されなかった図面の存在がわかった
 →操縦席を緊急脱出させる装置が描かれている

〓戦後の航空業界を支えた五人のサムライ
・長かった戦争がようやく終わり
 →GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、航空禁止令を布告
・その厳しい措置が解かれたのは、1952年、サンフランシスコ条約により日本が再び独立国に
 →東京大学に、財団法人「輸送機設計研究協会」(略称:輸研)が設立
 →多くの企業が参加して小型旅客機の設計を開始
 →「オールジャパン」と呼ぶべき名だたる人物の参加が可能に
・「五人のサムライ」と呼ばれたメンバー:
 →堀越二郎…新三菱
  太田稔 …中島飛行機で戦闘機「隼」を設計
  菊原静男…新明和工業、川西航空機で「二式大艇」などを設計
  土井武夫…川崎航空機で戦闘機「飛燕」などを設計
 →加えて、木村秀政…「航研機」の製作
・そして出来上がったのが、旅客機「YS-11」

〓「すべての労する者・重荷を負ふ者、われに来れ。われ、汝を休ません」
・特攻専用機、桜花を設計したことで、大きな責任を感じていた三木
 →キリスト教に救いを求めた
 →次の聖書の一節に出会って、背負った重荷を下ろす頼みにしたよう
  →「すべての労する者・重荷を負ふ者、われに来たれ。われ、汝を休ません」
・桜花だけでなく、防弾装置がなかった零戦の設計
 →昔の日本は全体的に人命を軽視する傾向が強かったように感じる
・一方のアメリカも、焼夷弾を用いた空襲や二発の原爆投下で大量の民間人を殺害した行為は、明確な戦時国際法違反
 →戦争とは、人間らしさを失わせてしまうところがあるよう

〓「桜花」を彷彿とさせる新幹線の先端部
・優れた航空技術者だった三木が、旅客機開発に参加しようとしなかった理由
 →ひとえに「戦争はこりごり」ということだったよう
 →平和利用が基本というもの、それは鉄道しかなかった
・当時の国鉄(日本国有鉄道、JR各社の前身)
 →軍隊解体により活躍の場を失ってしまった多くの技術者を受け入れ
・鉄道技術研究所に勤務することになった三木
 →初代の新幹線車両、「新幹線0系電車」の先端のデザインを設計
 →ほかにも、小田急電鉄の特急ロマンスカー3000形や懸垂型モノレールなどの設計にも
・棚沢が紹介する父の言葉
 …「飛行機の形を列車に持ち込みたいと考えている。車体を流線型にし、軽量化すればスピードは向上する。最高速度は200kmを超える。」

〓「平和産業」としての新幹線開発
・鉄道技術研究所創立50周年に当たる1957年、「東京-大阪間 三時間への可能性」と題する講演会開催
 →車両構造研究室長に就任した三木忠直はじめ4人の講演
 →この計画を最も喜んだのは、国鉄総裁だった十河信二
・この講演は、聴衆、つまり国民にも大きな反響、新聞も好意的に紹介
 →もちろん、反対意見も多々。まず、第一の問題は経費
  …当時の国家予算のなんと約14.5%にも
 →反対意見をものともしなかったのが、十河総裁

〓「夢の超特急」誕生の日
・建設計画に拍車がかかった1964年の東京でのオリンピック開催
 →1959年、新丹那トンネル東口で起工式
 →しかし、ここで再び持ち上がった経費の問題
・国鉄は1961年、世界銀行(国際復興開発銀行)から資金を借り入れる決断
 →建設計画を進めた十河総裁と技師長の島秀雄は、責任をとって辞任
・国際復興開発銀行(International Bank for Reconstruction and Development:IBRD)は、第二次世界大戦後の各国の経済復興を支援するために設立された国際金融機関
 →日本は新幹線だけでなく、黒部ダムの建設でも融資を受けている
・棚沢が父から聞いた話:「超特急の実用化には、173もの課題があった」
 →それらの課題をクリアしたのは、前述の講演会における講演者たちのチームワーク
 →1963年3月、走行実験で当時世界最速、256kmを達成
 →生前の三木も、「世界一安全といわれた新幹線」をとても誇りに
・フランスの高速鉄道、TGVが完成したのは、1981年のこと
 →日本の新幹線は、世界的にも先駆的で代表的な高速鉄道

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