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米中摩擦激化&膠着の年越しへ、半導体市場の前年割れ&価格低下一途

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来年3月1日までに折り合いが見いだせるか、不調であれば即関税引き上げと、米中摩擦双方の応酬、および関連する展開が日々刻々見られながら、年末そして年越しを迎えようとしている。「合意は険しい」と米国側の見方とともに、中国のサイバー攻撃が各国に及ぶ状況が示される現時点であり、予断を許さないところがある。その推移にも注目せざるを得ない半導体市場の方は、市況減速、価格低下の流れが続いており、北米半導体装置の11月の世界billingsが2年以上ぶりのこと、前年割れに至っている。

≪見逃せない刻々の展開≫

米中摩擦関連の多岐に及ぶ日々刻々の荒波模様を追って、以下の通りである。

90日期限合意に向けた協議について、不調に終わった場合の対中関税引き上げが米国により次のようにあらわされている。

◇米、対中関税引き上げは3月2日、協議不調なら (12月18日付け 日経 電子版 03:44)
→米通商代表部(USTR)は17日までに、中国との協議で合意できなかった場合、制裁関税を2019年3月2日に引き上げると明らかにした旨。米中首脳会談で10%から25%への関税引き上げを90日間猶予することで合意したが、日時は明確に示していなかった旨。3月1日の期限までに米中が妥協策を見いだせるかが焦点となる旨。2千億ドル(約23兆円)分の中国製品に対する追加関税の税率を米東部時間3月2日午前0時1分(日本時間午後2時1分)に10%から25%に引き上げると官報で公表した旨。

製品締め出しに遭おうとしているHuaweiからの反論である。

◇ファーウェイ製品締め出し「証拠ない」輪番会長が反論−セキュリティーに20億ドル (12月18日付け 日経 電子版 19:01)
→中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の胡厚崑(ケン・フー)副会長兼輪番会長[3人交代制]は18日、5年間でサイバーセキュリティー分野に20億ドル(約2200億円)を投じると発表、安全保障上の理由から同社製品を締め出す動きについて、胡輪番会長は「証拠がない」と反論、一方で、政府当局や顧客が安全性をチェックする拠点を増やして顧客離れを防ぐ考えを示した旨。

折も折、かつての日米半導体摩擦のいきさつを示す外交文書が公開されている。

◇日米貿易戦争の原点 サイドレターを追って(上)−外交文書公開で明らかになった秘密書簡と半導体交渉の迷走 (12月19日付け 朝日新聞DIGITAL)
→1980年代後半、日米が世界市場を争った産業のコメ・半導体をめぐる「貿易戦争」の詳細が、外務省による2018年12月の外交文書公開で明らかになった旨。そこから浮かぶのは、今のトランプ政権と日本、そして中国とのつばぜり合いを彷彿とさせる光景。かつて日米関係を迷走させた秘密書簡として長年取りざたされ、今回ついに開示された「サイドレター」を手に、当時の関係者を訪ね歩いた。・・・1986年の日米半導体協定署名の際に存在が伏せられた「サイドレター」には、「外国系半導体の販売が5年で少なくとも日本市場の20%を上回るという米国半導体産業の期待を、日本政府は認識」と書かれていた旨。

さて、米中間の協議、1月開催で調整されている。

◇米中貿易協議、1月開催で調整、米財務長官 (12月19日付け 日経 電子版 06:12)
→ムニューシン(Steven Mnuchin)米財務長官は18日、中国の構造改革を巡る貿易協議を2019年1月に開く方向で中国と調整していると明らかにした旨。米国は1月1日に予定していた制裁関税の引き上げを猶予しており、中国による知的財産権の侵害やサイバー攻撃を巡り、米国が期限と定めた3月1日までに解決策を見いだせるかが焦点となる旨。

中国の「国家情報法」、そしてサイバー攻撃と、米国の脅威の受け止めがさらに続けてあらわされている。

◇中国「国家情報法」米に衝撃、ファーウェイと取引停止 (12月20日付け 日経 電子版 07:01)
→米国政府・議会が、中国の通信大手、華為技術(ファーウェイ)など5社の製品への警戒を強めている旨。米国の最新技術を盗み取って軍備増強に利用する中国の動きが新たな段階に入り、このままでは米軍の優位が失われることへの米国の焦燥感が背景にはある旨。米中対立の激しさが増す中、日本や日本企業もかじ取りを誤れば自らの首を絞める事態に直面しかねない旨。
2017年6月28日に中国で施行された新法の名は「国家情報法」。効率的な国家情報体制の整備を目的に掲げ「いかなる組織及び個人も、国の情報活動に協力する義務を有する」(第7条)と明記する旨。

◇中国のサイバー攻撃、12カ国に被害、米司法省発表−英も中国非難「G20の約束違反」 (12月21日付け 日経 電子版 04:31)
→米司法省は20日、中国政府が関わるハッカー集団が主導したサイバー攻撃で、日本を含む12カ国が被害を受けたと発表、航空や自動車、金融機関など幅広い業界を対象に機密情報や先端技術を盗み出していた旨。トランプ政権は各国と協調し、不正に産業競争力を強化しようとする中国に是正を迫る考えの旨。

中国における半導体工場について、台湾・Foxconnグループの中核、鴻海精密工業が傘下のシャープとともに、広東省珠海市(Zhuhai)に新設していく動きが以下の通り見られている。

◇鴻海・シャープ、中国政府と半導体工場、総額1兆円規模 (12月21日付け 日経 電子版)
→台湾・鴻海精密工業と子会社のシャープは、中国に最新鋭の半導体工場を新設する方向で地元政府と最終調整に入った旨。広東省の珠海市政府との共同事業で、総事業費は1兆円規模になる可能性がある旨。米国との貿易戦争が過熱する中、中国は外資に頼る半導体の国産化を強力に進めており、新工場も多額の補助金などで誘致する旨。中国の先端分野に圧力を加える米国が批判を強める可能性がある旨。鴻海とシャープは珠海市政府と組み、直径300ミリのシリコンウエハーを使う最新鋭の大型工場を建設する計画。2020年にも着工する旨。今回の計画で製造品目については検討中だが、すべてのモノがネットにつながる「IoT」機器向けのロジック系半導体の生産が主体となるもようの旨。

米中協議の合意について米国側強硬派の見方である。

◇米中協議「合意は険しい」、ナバロ米大統領補佐官−中国の産業政策、全面転換迫る (12月22日付け 日経 電子版 04:54)
→トランプ米政権のピーター・ナバロ(Peter Navarro)大統領補佐官(通商担当)は日本経済新聞の取材に対し、中国との貿易や構造改革を巡る協議で設けた90日の期限内の合意は「険しい」と述べ、安易な妥協をしない決意を強調した旨。国家主導でハイテクを育成する中国の産業政策には「構造的な変化が不可欠だ」と、全面的な転換を迫る姿勢を示した旨。ナバロ氏は政権きっての対中強硬派。米中協議の設置で合意した1日のアルゼンチンでの米中首脳会談にも同席した旨。

激しくもつれ合う米中摩擦の中での半導体市場の同時進行の状況ピックアップが、以下の通りである。

SEMIからの半導体fab投資予測であるが、また一段と下方修正が施され、来年、2019年はマイナスへの反転が見られている。

◇Total fab equipment spending reverses course, growth outlook revised downward (12月17日付け ELECTROIQ)
→SEMI発行、World Fab Forecast Report最新版。2019年のfab装置spending総計が、前回予測の7%増から急激な反転、8%低下の見通し、2018年のfab投資伸長が8月時点の予測、14%増から今回10%増に下方修正の旨。
・2018年および2019年fab装置spending予測地域別データ:
 ⇒https://electroiq.com/wp-content/uploads/2018/12/vcsPRAsset_3390533_69028_eeaa71d5-453a-44d9-8eeb-1049184266e8_0.png

◇SEMI cuts fab equipment spending growth forecast for 2019 to negative (12月18日付け DIGITIMES)
→SEMI発。2018年のfab投資伸長が8月時点の予測14%から10%に下方修正されており、2019年のfab装置spending総計が、前回予測の7%増から急激な反転、8%減の見通しの旨。2018年に入って半導体業界は、2019年に稀な4年連続の設備投資投資の伸びが見込まれていたが、主要投資プロジェクトの400以上のfabsおよびラインを追っているSEMI World Fab Forecast Reportは、8月に2018年後半および2019年前半にかけての鈍化を予測している旨。今や最新の業界展開では、より急激なfab装置低迷が見込まれている旨。

他の予測と合わせ、2019年についての見方である。

◇Fab Equipment Challenges For 2019-Fab gear for 2019: Logic is up, memory is down -Logic is strong, memory is weak, and uncertainty in China could affect demand. (12月17日付け Semiconductor Engineering)
→Semiconductor Engineering、製造Executive Editor、Mark LaPedus氏記事。2019年にロジック半導体製造用装置は力強い需要が見込める一方、メモリ半導体製造用toolsは受注が減り、ファウンドリーは7-nm dimensionsのmicrochips製造用装置追加を続ける見込みの旨。VLSI Researchは、半導体需要boom yearsに切りがついて来年の半導体市場全体売上げが1.6%減ると予測、そしてSEMIは、来年の装置販売高4%減を予測の旨。

月次の恒例、SEMIからの北米半導体装置メーカー世界billingsであるが、この11月について次の通りついに前年比マイナスに立ち至っている。

◇North American Semiconductor Equipment Industry Posts November 2018 Billings (12月18日付け SEMI)
→SEMIのNovember Equipment Market Data Subscription(EMDS) Billings Report発。北米半導体装置メーカーの2018年11月の世界billingsが$1.94 billion、前月、10月の最終レベル、$2.03 billionに対して4.2%減、前年同月、2017年11月の$2.05 billionに対して5.3%減。「ここ2年以上ぶりのこと、北米装置メーカーのbillingsが前年同月を下回っている。
今年始め歴史的な売上げに到達後、billingsの動きは2019年に向けた伸びの予想弱含みに沿って減速してきている。」と、SEMIのpresident and CEO、Ajit Manocha氏。

ここ半年のbillings推移(金額:USM$):

Billings
Year-Over-Year
(3ヶ月平均)
June 2018
$2,484.3
8.0%
July 2018
$2,377.9
4.8%
August 2018
$2,236.8
2.5%
September 2018 (final)
$2,078.6
1.2%
October 2018 (final)
$2,029.2
0.5%
November 2018 (prelim)
$1,943.9
-5.3%

[Source: SEMI (www.semi.org), December 2018]

◇Fab Tool Billings Fall for First Time in 2 Years-Nov. billings declined for fab tools, SEMI says (12月19日付け EE Times)

◇North America semi equipment industry billings fall in November, says SEMI (12月20日付け DIGITIMES)

半導体品種別の予測であるが、注目のDRAMについて、圧倒的な伸びと比率を示した2017年、2018年から、ここでも2019年マイナスの伸びの販売高としているIC Insightsの見方である。

◇DRAM Growth Tops Industry Ranking in 2018; Outlook Dims for 2019-DRAM fastest growing market in four of past six years, demonstrating very cyclical market. (12月13日付け IC Insights)

◇DRAM remains best-growing IC in 2018 but outlook dims for 2019, says IC Insights-IC Insights: DRAM had a good year in 2018, slump seen in 2019 (12月17日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。DRAMの世界販売高が、77%増加した2017年から今年は39%増、2019年は模様が異なってDRAM販売高1%減を予想、この10年で見られている販売高サイクルに従う旨。

◇DRAM Outlook Dims for 2019 (12月18日付け EE Times)
→IC Insights発。DRAMが再び半導体製品の中で最高の伸び率で今年を締めるが、2019年は非常に異なる様相になっていく旨。

価格低下がDRAMより先行したNANDフラッシュであるが、2019年にかけてさらに下げとなる見方である。

◇NAND flash contract prices to fall 10% in 1Q19, says DRAMeXchange (12月18日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。NANDフラッシュ契約価格が、2019年前半にさらに低下に向かい、第一四半期に前四半期比約10%の価格低下の様相の旨。該業界ビットoutputは2018年これまで予想を上回っており、半導体サプライヤは64-層3D NAND生産歩留りを成熟レベルに改善しているが、需要が、米中貿易戦争、IntelのCPU不足および新型iPhonesの売れ行き不振などいくつかのマイナス要因から低迷している旨。

◇NAND型が一段安、11月大口価格 (12月19日付け 日経)
→データの長期保存に使うNAND型フラッシュメモリの大口需要家向け価格が一段と下落、指標となるTLC(トリプル・レベル・セル)の128ギガビット品は、11月の大口価格が1個3ドル前後。前月と比べ約3%安く、10カ月連続の値下がりとなった旨。

DRAMおよびNANDフラッシュともに2019年は価格が大きく下げる見方が広がっている。

◇DRAM, NAND flash prices to fall rapidly in 2019-Sources see DRAM, NAND flash prices rapidly dropping in 2019 (12月20日付け DIGITIMES)
→業界筋発。DRAMsおよびNANDフラッシュメモリデバイスの価格が、来る新年急激な低下見込み、2019年第一四半期のNANDフラッシュ価格が前四半期比15%以上低下の一方、DRAM価格は供給要因から2018年から2019年で30%〜35%急落すると予測の旨。

競合激化による価格低下が進んでいくTDDI(touch and display driver integration)半導体および指紋センサの現況が以下の通りである。

◇Fierce competition to drag down prices for TDDI chips, fingerprint sensors-Sources: Prices to fall for TDDI chips, fingerprint sensors (12月18日付け DIGITIMES)
→業界筋発。touch and display driver integration(TDDI)および光指紋センサに向けた価格づけが、該市場分野での競争激化から2019年の間落ち込む見込みの旨。Novatek MicroelectronicsおよびFocalTech Systemsは来年該競争から利益を被る様相、NovatekはUMCで45-nmプロセス製造capacityをまとめているとされ、FocalTechはTSMCでのcapacity割り当てのお蔭でTDDI半導体出荷を立ち上げている、と特に言及の旨。

◇Foundries see orders for TDDI chips, fingerprint sensors ramp up-Orders for TDDI chips, fingerprint sensors reportedly pouring into foundries (12月20日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCおよびUMCともに、特にTDDI(touch and display driver integration)半導体および指紋センサ分野のファブレス顧客からの発注踏み上げが見えている旨。Novatek MicroelectronicsおよびFocalTech Systemsがともにファウンドリー・パートナーでの12-インチ40/55-nmプロセスcapacity所要を立ち上げる一方、Egis Technology(Egistec)は発注の速度を踏み上げている旨。NovatekはUMCと契約、TDDI半導体を製造する一方、FocalTechおよびEgistecは主にTSMCと連携の旨。

米中摩擦そして半導体市況、両にらみの展開が続いていく。


≪市場実態PickUp≫

【Micronの四半期業績】

Samsung、SK Hynixとともにメモリ半導体を引っ張るMicron Technologyの2018年11月29日締め2019年第一四半期の業績が、以下の通り発表されている。このところの市場減速、価格低下をここでも反映、前年同期比では大きく上回る高水準ながら前四半期比の落ち込みに目が行くところである。

◇Micron sales, profit miss estimates as chip glut hurts prices (12月19日付け Reuters)
→Micron Technology社が火曜18日、Wall Street評価を下回る四半期販売高&利益を予測、phonesおよびcomputersの消費者およびビジネス需要が弱まりからくるメモリ半導体の市場供給過剰を引用の旨。

◇Micron Fears Memory Sales Slump-Gloomy forecast for the short term viewed as a speedbump en route to end of 2019 (12月19日付け EE Times India)

◇Micron posts revenue and profit growth for fiscal 1Q19 (12月19日付け DIGITIMES)
→Micron Technologyが、2018年11月29日締め同社2019年第一四半期の業績を発表、売上げおよびnet profitsが前年同期比増加の旨。該四半期売上げが$7.91 billion、前四半期比6%減、前年同期比16%増。net incomeが$3.29 billion、前四半期比24%減、前年同期比23%増。

【インテル関連】

最近のインテルのイベント、“Architecture Day”の全体概要が以下の通りまとめられている。CPU供給難、10-nmの取り組み後れ、と厳しい現時点の状況だけに、問題認識を問いかけるトーンの論点が目立っている。

◇5 Observations From Intel's Event (12月17日付け Semiconductor Engineering)
→Intelが最近、同社“Architecture Day”を開催、top executivesが最新の製品および次世代技術を披露の旨。不可思議なlocations, codenamesおよびプロセス遅延が、項目のトップにあり、以下の論点の旨。
 1) The Da Vinci Code and Architecture Day
 2) Where is 10nm (7nm and 5nm)?
 3) Changing its tune
 4) What about memory?
 5) What would Bob Noyce say now?

そのCPU供給不足に対して、同社3拠点での製造capacity増強が以下の通り図られている。

◇Intel makes early moves for more fab-Suffering from a shortage of capacity for CPUs, Intel is now moving early to ensure that it will have future capacity when it needs it.-Intel to add production capacity in US and abroad (12月18日付け Electronics Weekly (UK))
→Intelが、Ireland, IsraelおよびOregonの同社ウェーハ製造拠点での製造capacityを拡大する計画について現地当局と詰めている旨。「今年、capital expenditures(Capex)予測を上方修正、供給増加に向けて14-nm製造capacity拡大に努めるようその資金を入れている。」とDRAMおよびNANDフラッシュメモリ市場を圧迫しているCPU不足に対応して同社は述べている旨。

◇Intel factory expansion could boost Oregon's economy (12月18日付け The Oregonian)

【7-nm製造連携】

IBMがSamsungと連携を拡大、IBMの高性能システム搭載microprocessors(MPUs)をSamsungの最先端7-nm extreme ultraviolet(EUV) lithographyプロセスで製造するとしている。GLOBALFOUNDRIESが7-nmへの取り組みを中止した経緯を思い浮かべている。Samsungの7-nmは、Qualcommの5Gチップセット製造でも用いられている。

◇IBM expands strategic partnership with Samsung to include 7nm chip manufacturing (12月20日付け ELECTROIQ)
→IBMが、Samsungとの7-nm microprocessors(MPUs)を製造する合意を発表、IBM Power Systems, IBM ZおよびLinuxONE, high-performance computing(HPC)システムおよびcloud offerings向けの旨。該合意は、Samsungの業界を引っ張る半導体製造をIBMの高性能CPU設計と組み合わせている旨。

◇Samsung accelerates foundry biz with IBM, Qualcomm-Samsung Foundry ramps up to make chips for IBM and Qualcomm (12月21日付け The Korea Herald (Seoul))
→Samsung Foundryが、IBMからのビジネスが増しており、7-nm extreme ultraviolet(EUV) lithographyプロセスでIBMのPower Systemsに入っている旨。Samsung Electronics unitはまた、該7nm EUVプロセスでQualcomm向け5Gチップセット製造を受けている旨。

【MIPSオープンソース化】

AI(人工知能)半導体開発で注目のWave Computing(Campbell, Calif.)はこの6月にプロセッサ事業の老舗、MIPS Technologiesを買収しているが、このほどMIPSのオープンソース化を以下の通り発表している。WaveのCEOがかつてMIPSで働いていた経緯がある。

◇MIPS Goes Open Source-MIPS architecture becomes open source (12月17日付け EE Times)
→1.Wave Computing(Campbell, Calif.)が月曜17日、MIPS Instruction Set Architecture(ISA)および2019年第一四半期に出てくるMIPSの最新コア、R6とともに、MIPSをオープンソース化していくと発表、今月MIPS licensing事業のpresidentとしてWaveが採用したArt Swift氏は、ecosystemにおけるMIPSの採用を加速するのに非常に重要とこの動きを表わしている旨。
 2.Wave Computing(Campbell, Calif.)が、来る新年にMIPS instruction set architecture(ISA)をopen-source ISAにしていくと発表、open-source RISC-V ISAに競い合いを挑む旨。Waveは6月にMIPS Technologiesを買収、MIPS ISAでのopen-source化を静かに検討していた、とかつてMIPS Technologiesで働いたWaveのCEO、Derek Meyer氏。

◇Open Source Next Stop for RISC-V-Wave Computing looking to build on MIPS' 2018 momentum (12月18日付け EE Times India)

【Ciscoによる買収】

世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社、Cisco Systems (San Jose, CA)が、シリコンphotonics半導体メーカー、Luxtera(Carlsbad, California)を以下の通り買収している。

◇Cisco to buy semiconductor company Luxtera in a $660 million deal-Cisco expects to purchase Luxtera in $660M deal -Cisco says Luxtera's advanced chips will help it meet business client demand for faster and high-performing network service.-The companies expect to close the acquisition in the third quarter of Cisco's fiscal year 2019. (12月18日付け CNBC)
→Ciscoが、high-performingネットワークサービス改善に向けて、半導体メーカー、Luxtera(Carlsbad, California)を$660 millionで買収する計画、該取引によりCiscoにはデータnetworkingへのphotonicソリューションが得られ、networking装置の近代化が図れる旨。

◇Cisco to acquire silicon photonics chip maker Luxtera for $660 million (12月18日付け TechCrunch)

【Armの自動車向けIP】

Armが、自動車向けアプリケーションプロセッサIP、「Cortex-A65AE」を発表している。Cortex-A65AEは、Helios-AEとして説明されCortex-A53の後継であり、HeliosはCortexシリーズとしては初の「モバイルを対象としない」IPであるとのこと。

◇Arm debuts Cortex-A65AE, a 7-nanometer chip for ‘next-generation’ driving experiences-Arm launches 7nm processor design for automated driving (12月18日付け VentureBeat)
→Arm Holdingsが、Cortex-A65AEプロセッサを投入、autonomousおよびsemi-autonomous vehicles応用向けに7-nmプロセスで製造できる半導体の旨。該新設計は、9月に展開されたCortex-A76AE車載プロセッサを補完する旨。


≪グローバル雑学王−546≫

ケント・ギルバートさんが「草莽崛起」、すなわち志を持って在野の人々が日本の変革を担う原動力になる例として、

『日本人だけが知らない本当は世界でいちばん人気の国・日本』
 (ケント・ギルバート 著:SB新書 443) …2018年8月15日 初版第1刷発行

にて挙げている方々を読み進めていく。その最初として、「光通信の父」にして「ミスター半導体」と称される西澤 潤一先生である。我が半導体業界からまず挙がっているのは喜ばしく感じるが、承知はしているものの先生ご経歴のネット事典での紹介である。
専門は電子工学・通信工学で、半導体デバイス、半導体プロセス、光通信の開発で独創的な業績を挙げ、世界で半導体関連の特許を最多保有している学者。
東北大学総長、岩手県立大学学長、首都大学東京学長を歴任。
小生も、彼方昔の電通学会分科会にて発表の折り、先生の威厳あるお姿を目にしている。ギルバートさんによる下記の描述から、先生の信念、取り組みの凄さを改めて認識するところがある。


第一章 匠
 ―――世界に轟かせた「ひらめき」の妙 …その1

□世界に誇る「超ノーベル賞」級の功績
 ―――西澤潤一

〓10個のノーベル賞に値する天才
・冒頭を飾る本章
 →独創的な発明の数々で世界に「日本のものづくり」の素晴らしさを知らしめた発明品と、その生みの親たちの足跡
・最初にご紹介
 →「ミスター半導体」とも称される西澤潤一
・西澤のどこがどのように偉大なのかをきちんと説明できる日本人は、それほど多くはない
 →それも無理はないと思われる事実
  …最先端の科学情報に詳しいはずの特許庁の審査官が、何度にもわたって西澤のノーベル賞級の特許申請を却下している
・実は私自身、「西澤潤一の研究家」を自認する齋藤武雄氏のブログを目にして、俄然、興味が湧いてきた
・発光ダイオードの赤と緑を開発したのが西澤
 →青だけはなかなか開発できず、それを世界に先駆けた中村修二氏らがノーベル賞を受賞

〓赤色・緑色のLEDという偉大なる発明
・「LEDの父」と呼ばれるイリノイ大学名誉教授、ホロニアック(Nick Holonyak,Jr.)
 →西澤自身も、ホロニアックらアメリカ人の研究の上に、自身の研究があることを認めている
・数ある西澤の功績のうち、まずわかりやすいもの
 →発光ダイオードを「実用レベル」にまで引き上げたこと

〓自然、人、社会をつなぐ「工学」の底力
・西澤自身の話から、物理と電気の違い
 →物理…「物事の真相を突き止めるもの」
  工学…「人間の生活に支障をきたすような課題を解くもの」
・研究だけに明け暮れて、世間知らずの学者になることは許されないと、西澤は若い頃から思っていた

〓「自分で飯を食える男」になれ
・終戦後の悲惨な実情を目の当たりにして
 →「ご飯を食べていけるような仕事をしなければならない」という考え方に目覚めた
・飽食の時代といわれて久しい今日でも、西澤は若い人たちを諭している
 →皆で売れるものをきちんとつくっていないと、ご飯を十分に食べられない
・「ご飯が食べられない」ということに対する実感がない人たちへのアドバイス
 →「不幸せな条件下で育つと、ひとりでにちゃんと皆、勉強するようになるんです」

〓「光通信の父」にして「ミスター半導体」
・西澤が世界に先駆けて光通信に注目したのは、戦後間もない1950年代のこと
 →光通信には「発光素子」「受光素子」「伝送経路」の3要素が必要
  →これらに必要不可欠な基本技術、半導体レーザ、PINダイオード、光ファイバーなど、1950年代にすべて考案
・2002年、「IEEEメダルズ」の14番目として「IEEEニシザワメダル」が創設

〓誰もやらないことをやる――創造性の9つの源泉
・西澤の確たる信念
 →どのような状況に置かれても、迷うことなく不屈の信念で頂上へとどんどん突き進んでいく
 →これこそが独創力
・西澤自身が語っている「九つある『独創能力』」
 →1. 気力
  2. 体力
  3. 知力
  4. 独創力
  5. 集中力
  6. 決断力
  7. 指導力
  8. 夢・ロマン・理想・志
  9. 運
 →研究を続けるさまざまな能力、そして研究を支える熱い志がなければ、研究で身を立てていくことはできない
・西澤が、日本国内でいち早く認められなかったのは非常に残念なこと
 →捉えきれないほどの幅広い功績を上げてきた人物、西澤潤一の存在、その偉大な功績を胸に刻んでほしい

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