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メモリsuperサイクル、市場の構造変化、困難を極める今年の読み

度々の上方修正が行われて、最終的には約20%増、$400 billionの大台突破が見込まれている昨年、2017年の世界半導体販売高となっているが、本年、2018年をどう見るか、いまだ続く急激な増勢基調の中だけにその読みが困難を極める様相である。メモリ半導体が大きく引っ張っているだけに、いつまで続くのか変わり目に非常に敏感にならざるを得ない一方、データセンター、AI、自動運転など新分野が台頭してきて市場の性質、性格が変わってきている側面がある。しばらくは続きそうな本年の世界半導体市場の展開の読みの議論の現時点に注目している。

≪メモリを巡る敏感な反応≫

半導体が主役というタイトル表現が見られているが、我が国の機械受注に半導体製造装置分野が構造変化をもたらしている現状である。

◇設備投資、半導体が主役に、機械受注の構造変化 (1月17日付け 日経 電子版)
→民間企業の数カ月後の設備投資を占う機械受注額が、リーマン・ショック後で最大となった旨。投資の主体として目立つのは5年間で8割増えた「はん用・生産用機械」(…製品を造るために必要な工作機械、 半導体製造装置などのメーカーを分類したもの)。あらゆるモノがネットにつながるIoTの需要を映し、半導体製造装置メーカーなどの投資が活発の旨。生産用機械からの受注は電気機械を抜き、設備投資の主役になってきている旨。

メモリ半導体への敏感な現状を示す1つである。約60%も伸びた昨年から今年をどう見るか。話半分でも大きい伸びだけに、当面の方向、道筋をしっかり追って見定めるしかないところである。

◇End of a chip boom? Memory chip price drop spooks investors-Experts predict steady decline in memory chip industry for 2018 (1月15日付け Reuters)
→業界アナリストの何人か曰く、半導体メーカー、SamsungおよびSK Hynixの最近の株価下落が、該業界の小幅な減少の始まりである旨。エキスパートは今年の該業界の伸び率が30%と半分になると見ているが、この低下は失速ではなく着実なものとしている旨。

恒例のIndustry Strategy Summit(ISS:2018年1月15-18日:HALF MOON BAY, Calif.)の場でも、現下の熱い活況がいつどのように変わり目を迎えるか、議論されているものの明確な結論には至らない模様がうかがえている。

◇Forecasters See Slowdown Ahead-2018 looks good, 2019-2020 looks flat (1月17日付け EE Times)
→Industry Strategy Symposium(HALF MOON BAY, Calif.)での講演から。半導体は2018年も良い年になるが、伸びは鈍化していく旨。該業界そしてより広い経済界に低迷が訪れて来ようが、いつそしてどうしてそうなるかはまだ明らかでない旨。Gartnerは、昨年の売上げ22.2%増の後の今年の半導体市場はまだ平均を上回る7.5%増としており、2019年および2020年では基本的に横這いで半導体市場は冷めていくと予想の旨。

このISSにおける技術的な読みである。

◇EUV, 7-nm Roadmaps Detailed-7 nm looks good but resists lag at 5 nm-EUV is good to go for 7nm chips; 5nm could be tougher (1月18日付け EE Times)
→Industry Strategy Symposium(ISS:HALF MOON BAY, Calif.)にてリリースされた分析。extreme ultraviolet lithography(EUV)は向こう数年にわたって10-nmおよび7-nmプロセスnodesを可能にしていくが、5-nm半導体を可能にするにはphotoresistsについて依然かなりの取り組みを要する旨。
同時にEUVメーカー、ASMLが、昨年10台のEUVシステムを出荷、今年は20から22台以上と発表、該システムには、125枚ウェーハ/時間の処理に必要な250-Wレーザ光源があるか、少なくともサポートする旨。

将来に向けて子供たちに如何に半導体に関心をもち夢中にさせるか、という議論も行われている。微細化、高性能化に向かって飽くことのない面白さを感じて取り組んだ、そして続けていく熱気をどう伝えるかが問われている。

◇Chipmakers Rally in Talent War-Cloud giants dominate with STEM grads (1月19日付け EE Times)
→Industry Strategy Summit(2018年1月15-18日:HALF MOON BAY, Calif.)にて、Applied Materialsのchief financial officer(CFO)、Dan Durn氏。「今日、子供たちはGoogle, Facebook, およびAppleについて夢見ており、我々半導体関連についてはそうではない。我々はそれを変える必要がある。」

さて、今年の世界半導体販売高をどう読むか。Gartnerは、7.5%増の$451 billionとしているが、大半はメモリ半導体が占める見方となっている。

◇Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Forecast to Grow 7.5 Percent in 2018 (1月15日付け Gartner)

◇Semi market to grow 7.5% this year, says Gartner -Gartner: 2018 semi sales to increase 7.5% to $451B (1月16日付け Electronics Weekly (UK))
→Gartnerの予測。世界半導体販売高が2017年の$419 billionから今年は7.5%増の$451 billionと見ている旨。当初の2018年予測を$23.6 billionだけ増やしており、そのうち$19.5 billionをメモリ半導体が占めている旨。

強気の読みで知られるFuture Horizonsは、世界経済の動向指数から21%増と打ち出している。

◇IC market to grow 21% this year, says Penn (1月18日付け Electronics Weekly.com)
→今週のIFS2018(London)にて、Future HorizonsのCEO、Malcolm Penn氏の見方。

各社からも確たる明らかな打ち上げはやりづらいところを感じるが、TSMCは、スマホに代わってhigh-performance computing(HPC)が引っ張る役柄となり、同社売上げ10-15%増の見方をとっている。

◇TSMC Sees HPC Driving Business (1月19日付け EE Times)
→TSMCが、cryptocurrency mining用半導体需要などhigh-performance computing(HPC)が事業の牽引役としてスマートフォンに置き換わってきている、としている旨。

◇TSMC to see revenues rise 10-15% on HPC, IoT, 7nm orders in 2018 (1月19日付け DIGITIMES)

メモリ半導体を牽引する韓国の2017年を振り返って、以下のようにまとめられている。2018年も増勢が続くとメモリsuperサイクルの波が収まらない前提である。

◇Korea is at full throttle on memory investments (1月17日付け ELECTROIQ)
→SEMI発の記事。2017年は半導体業界にとって記録打ち立ての年、World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)によると、世界半導体市場は20%の伸び、初めて$400 billionを越える旨。中でもメモリが最も力強く、60%の伸び、2017年の世界半導体販売高の30%を占める旨。メモリの伸びの勢いは2018年も続くというコンセンサスがあり、安定な市場需要および組するpricing環境が引っ張っていく旨。韓国のメモリメーカーがこのメモリsuperサイクルの最大の恩恵を受けており、Korea International Trade Association(KITA)によると、韓国からのメモリ輸出額は2017年11月までで前年同期比86%増、市場シェアを一層高めている旨。供給面ではSamsungおよびSK Hynixの2017年設備投資が最高を記録、韓国サプライヤからの売上げを高めている旨。

メモリ半導体の立ち上げを急ぐ中国が本年の大きな焦点になっていくと思われるが、技術の壁は打開が容易ではないと台湾からの発信である。

◇China DRAM firms unlikely to offer competitive products without licensed tech, says Nanya president-Nanya president: China DRAM makers should license tech (1月17日付け DIGITIMES)
→Nanya TechnologyのPresident、Lee Pei-ing氏が主張、中国のDRAMメーカーは重要なメモリ技術のライセンス供与を受けるべきであり、そうでないと社内で開発された半導体が世界市場での競争力がない旨。intellectual property(IP)および企業秘密盗用の申し立てが、中国メーカーを相手取った特許侵害訴訟とともに、中国で作られたDRAMsのマイナスイメージを強めていく、としている旨。


≪市場実態PickUp≫

【CESを振り返って】

自動運転、AIはじめ注目させられたInternational Consumer Electronics Show(CES)(2018年1月9日〜12日:Las Vegas)について、振り返っての余韻が以下の通り続いている。

◇Voice and AI Explosion Rocks CES-Voice is 'really hard,' AI moves to the edge (1月15日付け EE Times)
→音声、connectivityおよびAIに先週のConsumer Electronics Show(CES)でのスポットライト、今年のCESが指し示す何かといえば、これら3つのbuilding blocksがconsumer electronicsの三位一体を構成、2018年およびその先の市場を引っ張っていく旨。

◇You're Stuck With Batteries - But New Tech Will Make Them Last Longer-Innovators are making devices that are more efficient while giving us new ways to recharge lithium-ion batteries-Companies unveil wireless charging options (1月16日付け The Wall Street Journal)
→ワイヤレス給電optionsに数社が取り組んでおり、先週のCESでワイヤレス給電transmitterを披露、最大30 feet離れて機器給電が可能としているOssia社などの旨。他には、同様な機器、3 feet離れて給電が行なえるWattUpについてFederal Communications Commission認証を最近得たEnergous社がある旨。

実際に現地、現場に出かけてこそわかる10点が挙げられている。

◇Data Rocks at CES: 10 Things You Missed if You Didn't Attend (1月16日付け EE Times)
→以下の10点:
 FordのCEO, Jim Hackett氏基調講演
 artificial intelligence(AI)に全財産を賭けるBaidu Group
 5G, AI, およびroboticsが引っ張って、2018年のelectronics業界は米国だけで$351 billionに
 5Gワイヤレスnetworksは4Gより100倍高速
 Google HomeおよびAmazon Alexaなど、AIが会話になりつつ
 IntelのCEO、Brain Krzanich氏が披露、Voxel(三次元pixel), Volocopter(drone taxi)
 companion robots、一層スマート化しているロボット
 CTA国際革新スコアカード・トップ5…フィンランド、英国、オーストラリア、スウェーデン、米国
 Bosch, Ford, Continentalなどによるconnected smart cityシステム&インフラ
 3D Printingの現実的なソリューション

◇Robocars: What We Saw in Vegas (1月17日付け EE Times)
→先週のConsumer Electronics Show(CES:LAS VEGAS)の間、我々の多くはメディアおよびconference出席者ともに、たくさんのrobocarデモ, マーケティングpitchesおよび発表が殺到した旨。ベンダーたちは、署名されたばかりの提携契約を披露、design winsを獲得、そして新技術&製品を展開の旨。以下の目次内容:
 1. Introduction
 2. Vision Thing
 3. AV at China speed
 4. AV processors
 5. What is Level 2+?
 6. Renesas goes ‘all in’ with Robocars
 7. Plug & play automation
 8. New Sensors and modules

【SamsungのHBM2】

Samsungがメモリで先陣を切るキーワードで3D NANDと並ぶHBM2(High Bandwidth Memory-2)。そのHBM2について、第2世代8-gigabyte(GB)品の量産開始が以下の通り発表され、メモリそして半導体全体サプライヤ首位として他社へのリードを広げようとしている。

◇Memory Chip for Supercomputer: Samsung Electronics Starts Mass Producing HBM2 Memory 9.6 Times Faster-Samsung's 2nd gen dynamic random-access memory chip in mass production (1月12日付け BusinessKorea magazine online)
→Samsung Electronics Co.が11日、市場で最高速のデータ伝送速度をもつ同社第2世代8-gigabyte(GB) High Bandwidth Memory-2(HBM2)の量産開始を発表の旨。HBMは、データ処理用の新しい型のdynamic random-access memory(DRAM)であり、その非常に高い処理速度からスーパーコンピュータ, ネットワークおよびグラフィックカードで用いられる旨。Samsung Electronicsは世界中でHBMを生産する唯一の半導体メーカーの旨。

◇AI Fuels Next-Gen HBM Demand (1月16日付け EE Times)
→high bandwidth memory(HBM)が先週推進力を得ており、Samsung Electronicsが同社第2世代技術、Aquaboltの量産開始を発表の旨。
SamsungのHigh Bandwidth Memory製品マーケティングmanager、Tien Shiah氏は、次世代スーパーコンピュータ、artificial intelligence(AI)およびグラフィックスシステム用に設計されている該8 GB High Bandwidth Memory-2(HBM2)により、1.2Vで2.4 gigabits-per-second(Gbps)データ転送速度/pinと今日最高のDRAM性能水準および最高速データ伝送レートが得られる旨。

【M&A関連様々な動き】

QualcommのNXP Semiconductors NV買収を巡る動きが、大詰め以下の通りである。

◇Qualcomm raises profit forecast, may buy back stock if bid for NXP fails-Qualcomm issues rosy outlook, may buy stock instead of NXP (1月16日付け Reuters)
→Broadcom Ltdによる敵対的入札を防いでいる米国の半導体メーカー、Qualcomm社が火曜16日、利益予測を上方修正、NXP Semiconductors NVを買収する同社の$38 billion入札が失敗すれば、株式買戻しの資金手当てに用いる可能性の旨。NXPの株主からは強い反対に直面、Qualcommが初めてNXPを買収する代替として買戻しを挙げている旨。

◇S. Korea's trade watchdog sets conditions for Qualcomm's NXP takeover-Korea's antitrust agency outlines conditions for Qualcomm's NXP buy (1月18日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→韓国のcorporate watchdogが木曜18日、米国半導体メーカーのQualcommがオランダのグローバル会社、NXP(韓国・世宗特別自治市)を買収するには、NXPの標準重要特許の売却などいくつかのcommitmentsを果たさなければならない旨。2016年にモバイル半導体に特化するQualcommが、大方はNFC connectivity製品を作っている半導体メーカー、NXPを約$38 billionで買収すると提示している旨。

◇Qualcomm receives authorization from the European Commission and Korea Fair Trade Commission for NXP Semiconductors acquisition (1月19日付け ELECTROIQ)
→Qualcomm Incorporated発。European CommissionおよびKorea Fair Trade Commission(KFTC)が、Qualcommの間接完全子会社、Qualcomm River Holdings B.V.によるNXP Semiconductors N.V.の買収を認可の旨。これで世界中9件の承認のうち8件が得られ、中国が残っている旨。

◇Qualcomm-NXP Deal Cleared by Europe, South Korea (1月19日付け EE Times)

このQualcommを買収しようと仕掛けているBroadcomについて、Federal Trade Commission(FTC)が調査をしようとしている。

◇Broadcom Under Investigation by FTC (1月17日付け EE Times)

◇FTC investigating Broadcom for antitrust practices-FTC launches antitrust probe of Broadcom (1月17日付け Reuters)
→Federal Trade Commission(FTC)がBroadcomに対して召喚状を発して、同社の顧客との契約を通した反競争的慣行の如何について調べていく旨。
「このFTCの見直しは我々のビジネスには取るに足らないもの、ワイヤレスには関係せず、Qualcommを買収する我々の提案に対するインパクトはない。」とステートメントにてBroadcomの言い分。

◇Broadcom Says It's Under Antitrust Investigation by FTC (1月17日付け Bloomberg)

Qualcommは、Broadcomの仕掛けに賛同しないよう、株主に呼び掛けている。

◇「取締役の交代、株主は不賛成を」、クアルコム、ブロードコム案に反論 (1月18日付け 日経)
→米クアルコムが同社に敵対的買収を仕掛けるブロードコムとの対決姿勢を強めている旨。16日に株主向けの書簡と経営陣によるビデオメッセージを公表。収益向上のため10億ドル(約1100億円)のコスト削減策を打ち出し、ブロードコムが買収実現のため提案しているクアルコム取締役の交代案に賛同しないよう呼びかけた旨。

中国の半導体製造装置サプライヤ、Naura Microelectronics Equipmentによる米国の半導体製造装置サプライヤ、Akrion Systems買収を、米国政府当局が認可、トランプ政権下では初めての買収とのことである。

◇U.S. clears Chinese acquisition in rare move-Chinese firm allowed to buy US supplier of chip gear (1月17日付け Reuters)
→Naura Microelectronics Equipmentが、米国政府から何の制限条件も出されることなく半導体製造装置サプライヤ、Akrion Systemsの$15 million買収を完了の旨。Trump政権になって、連邦Committee on Foreign Investment in the United States(CFIUS)は、中国の会社が米国の会社の買収を求める取引のいくつかを阻止したり、遅らせている旨。

◇NAURA Akrion Inc. acquired Akrion's surface preparation business (1月18日付け ELECTROIQ)

◇U.S. Clears Chinese Firm's Acquisition of Fab Tool Vendor (1月19日付け EE Times)
→中国の半導体製造装置サプライヤ、Naura Microelectronics Equipment Co. Ltd.(北京)が今週、米国のウェーハ表面処理toolsプロバイダー、Akrion Systems(Allentown, Penn.)を買収する比較的小さい$15 millionの取引を完了、該取引は、Donald Trump大統領就任以降Committee on Foreign Investment in the United State(CFIUS)が承認する米国半導体技術メーカーの最初の買収になると思われる旨。

【UMCの特許侵害提訴】

以前から係争関係にある米国・Micronと台湾・UMCであるが、こんどはUMCがMicronの中国の子会社2社を相手取って、中国の裁判所に特許侵害で訴えている。メモリ半導体関連であり、今後中国を舞台とした展開が高まっていきそうである。

◇UMC files patent infringement lawsuit against Micron (1月12日付け ELECTROIQ)
→UMCが、Micron Semiconductor (Xi'an) Co., Ltd.およびMicron Semiconductor (Shanghai) Co., Ltd.を相手取ってPeople's Republic of China(PRC)のFuzhou Intermediate People's Courtに特許侵害提訴、DDR4, SSDおよびグラフィックスカード用メモリに関するメモリ応用など中国におけるUMCの特許権を侵害とする3つの領域に関する対象の旨。

◇UMC Files Countersuit Against Micron (1月15日付け EE Times)
→UMCが、Micron Technologyの中国の子会社を相手取って特許侵害提訴、メモリ半導体に関して高まる論争の一環の旨。Micronが米国のUMCを相手取って提訴して約1ヶ月の対抗提訴の旨。

◇UMC files patent infringement lawsuit against Micron in China-UMC charges Micron with patent infringement (1月15日付け DIGITIMES)
→UMCのMicron Technologyとの法的係争が激化、Micronの子会社2社を相手取ってFuzhou(福建省福州市) Intermediate People's Courtに特許侵害提訴の旨。該中国裁判所での訴えは、グラフィックスカードおよびsolid-state drives(SSDs)で用いられるメモリ半導体技術を巡って約$42 millionの損害賠償を求めている旨。Micronは昨年、前Micron Taiwanの従業員2人がUMCに入社する前にDRAM製造企業秘密を盗んだと申し立てている旨。

【CPU脆弱性問題】

年初からのセキュリティ欠陥に関するCPU脆弱性の問題であるが、以下の関連する動き、記事が見られている。該脆弱性を初めて発表したという研究者の若者の記事には驚かされている。

◇U.S. lawmaker asks Intel, others for briefing on chip flaws-Congressman seeks briefing on chip security flaws (1月16日付け Reuters)
→米下院議員、Jerry McNerney氏(D-Calif.)が、Intel, Advanced Micro Devices(AMD)およびArm HoldingsのCEOsに手紙を送り、microchipsにおいてMeltdownおよびSpectre脆弱性が科すcybersecurityリスクについてbriefingを求めている旨。「これら重大な脆弱性の性質、消費者に起こす危険および各社が消費者保護に向けてどんな対策をとろうとしているか、より良く理解したい。」と、手紙にて同氏。

◇How a 22-Year-Old Discovered the Worst Chip Flaws in History (1月17日付け Bloomberg Technology)
→昨年の夏、22才のGoogleサイバーセキュリティ研究者として、史上最大の半導体の脆弱性を初めて発表したJann Horn氏について。

◇インテルなどCPU脆弱性、修正ソフトで副作用、処理力低下や再起動頻発、企業向け、検証に時間 (1月19日付け 日経産業)
→米インテルなどのCPUにデータ流出につながる脆弱性が見つかった問題で、インテルや米マイクロソフトは相次いで修正ソフト(パッチ)を公開、しかしソフトを更新したパソコンやサーバで性能が低下したり、再起動を頻繁に繰り返すといった「副作用」が生じている旨。データ流出被害はまだ報告されていないが、水面下では攻撃プログラムの開発が進んでいる模様。企業向けにシステムを提供する富士通やNECなどは影響を見極めながら慎重な対応を進めている旨。


≪グローバル雑学王−498≫

1989年のベルリンの壁、そして1991年のソ連の終焉と東西冷戦が終結する世界の大きな節目の前後について、

『国際法で読み解く戦後史の真実  −文明の近代、野蛮な現代』
 (倉山 満 著:PHP新書 1116) …2017年10月27日 第1版第1刷

より経緯を振り返っていく。我が国も昭和から平成に、また、バブル崩壊に向かう渦中、ソ連崩壊、湾岸戦争と大きな動きの断片は否応なく目に耳に入るものの、当事国はじめ関連諸国の刻々つながる動き、インパクトの大きさに改めて認識を新たにするところがある。イスラム国のテロ、北朝鮮の核問題など今につながるその発端、根源があらわされており、修正の効かない根深さというものを知らされている。


第5章 冷戦が終結し、世界はさらに野蛮になった …3回に分けパート2

□本気でソ連をつぶしにかかったレーガン
・東西冷戦の本当の終結は、1991年のソヴィエト連邦崩壊
・1981年、アメリカでは「負け犬」カーターに代わって、ロナルド・レーガンが大統領に就任
 →「強いアメリカ」を掲げ、本気でソ連をつぶしに
 →ソ連を「悪の帝国だ」と罵った
 →レーガンは、核兵器から新たな宇宙兵器まで含めた、大軍拡競争をソ連に仕掛けた

□「ロン、ヤス関係」の中曽根は、実は親米ではなかった
・レーガンが大統領を務めた8年とその後のソ連が亡びるまでの2年こそ、東西冷戦の最激戦期
 →軍拡は経済力の勝負、レーガンは、減税と規制緩和を柱とする経済(レーガノミクス)を実施
 →アメリカの景気そのものは上向く一方、ソ連は国を持ちこたえさせることができなかった
・レーガン時代というと、日本では「ロン、ヤス」の中曽根康弘首相
 →中曽根内閣は実は親米ではない
 →レーガン政権は日本に矢銭を出させることに
 →日本はしぶしぶプラザ合意を受け容れ、結果は、なぜか空前の好景気、バブル時代へ突入

□ヨーロッパ・ピクニックと東欧自由化ドミノ
・1985年、チェルネンコの急死によってソ連最後の指導者の地位に就いたゴルバチョフ
 →当時、ソ連国内の経済は最悪
 →改革のために、グラスノスチ(情報公開)やペレストロイカ(再建)という方針を掲げる
・1979年6月、ポーランド出身のローマ教皇、ヨハネ・パウロ二世が、故国を訪問
 →1980年から、ポーランドでは自主管理労働組合「連帯」の活動が盛り上がる
・1988年、ゴルバチョフが新ベオグラード宣言で、各国独自の社会主義路線を肯定
 →1989年5月、ハンガリーはオーストリア国境にあった鉄条網を撤去
・かつてオーストリア=ハンガリー二重帝国の皇帝として君臨していたハプスブルク家
 →当主のオットー大公が「ヨーロッパ・ピクニック」という交流イベントを企画
 →1989年8月19日実施
 →東ドイツのホーネッカー書記長は烈火の如く怒ったが、ゴルバチョフは何の制裁も加えず
・かくて、ついに東西の鉄のカーテンに大きな穴が開くことに
 →東欧諸国に自由化ドミノが起こる
 →ベルリンの壁が壊されたのは、その3ヶ月後のこと

□ソ連共産党がロシア共和国に負けた日
・ベルリンの壁が壊された同じ月、ゴルバチョフはマルタ島で父ブッシュと会談、冷戦終結宣言を出した
 →1990年3月、ゴルバチョフは大統領制と複数政党制を導入する憲法改正を実施
 →同年11月には、新連邦条約を提案
  …ソ連を構成していた各共和国(15か国)や自治共和国、自治管区の権限が大幅に強化される内容
・これに危機感を抱いた保守派が、1991年8月19日にクーデターを起こした
 →「8月政変」、首謀者はヤナーエフ副大統領など
・ここで立ち上がったのがロシア共和国の大統領、エリツィン
 →反クーデターを呼び掛け
・エリツィンに救出されたゴルバチョフは、ソ連共産党を解散
 →時期を同じくして、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国も独立を宣言
 →ロシア、ベラルーシ、ウクライナの3つの共和国が、独立国家共同体(CIS)を成立させた
・ロシア共和国だけロシア共産党がなく、ソ連共産党が直にロシア共和国政府に指示を出すという関係
 →エリツィンはそのロシア共和国の最高責任者になった後、新たに大統領制を敷いた
 →ロシア共和国がもうソ連共産党の支配を受けないということを意味
  …「ソ連共産党がロシア共和国に負けた」ということ
・ゴルバチョフは1991年12月、ソ連大統領を辞任
 →ソヴィエト連邦は69年の歴史に幕
 →国家主義がファシズムを打倒した

□湾岸戦争を「総力戦思考」で評価したアメリカの愚
・1990年8月2日、イラクがクウェートに侵攻
 →湾岸戦争が始まる
 →国際連合の集団安全保障が機能した事例
・戦後の紛争が、なぜ悲惨だったか
 →戦後一貫して「国際連合による秩序」なるものが、まったく機能していなかった
・しかし、湾岸戦争のときは、ソ連のゴルバチョフが国連安保理の武力行使容認決議に賛成した
 →有志連合による多国籍軍が結成された
・このときフセインは、イラクに駐在していた外国人を軟禁、「人間の盾」戦術という非道を行った
 →もちろん国際法違反
・さらにイラクは、戦争が始まると、イスラエルやサウジアラビア、バーレーンなどにミサイルを撃ち込んだ
 →無差別爆撃であり、これもまた重大な国際法違反
・ブッシュ大統領(父)は、アメリカ人にしては珍しくウェストファリア型の目的限定戦争ができる人
 →ところが、アメリカ国民の大多数は「総力戦思考」
 →ブッシュ(父)大統領は再選できなかった
・息子のブッシュ大統領がイラク戦争に踏み切り、ファシズムでなんとか正気を保っていたイラクをズタズタに
 →やらざるを得なかった
 →ダーイッシュ(Daesh:イスラム国)などテロリストが跋扈、地獄の地にしてしまった根源はここに

□チャンスを逸した北方領土奪還と北朝鮮核開発阻止
・ソ連が崩壊したとき、日本がやっておけばよかったことがいくつか
 →その1つが、北方領土の奪還
・アメリカが小笠原諸島や沖縄本島を交渉で返還
 →「話し合えば流血なしに領土は取り返すことができる」という間違った認識を日本人に抱かせることに
・これまで述べてきた近現代史にあるのは野蛮な歴史ばかり
 →我々は、この野蛮な国際社会の中で生きている
・東アジアの共産主義国は、ソ連が崩壊しても、その後は独自の道
・北朝鮮が唯一困ったのは、核兵器を持つアメリカに対抗できる核の傘を失ったこと
  →金正日は毛沢東主義の独裁者
 →軍事をすべてに優先させるという「先軍政治」を行うことを宣言、国民への救済よりも核開発を優先
・クリントン大統領は1994年頃には、北朝鮮・寧辺の核施設を空爆することを真剣に検討
 →韓国と日本、2国が反対

□1994年・朝鮮半島危機の教訓
・1994年にアメリカの空爆に反対した韓国の大統領は金泳三
 →韓国が賛成しないものをアメリカが無理する理由はない
 →この構造はいまも変わっていない
・1994年当時、日本の首相は細川護熙
 →「加害責任」を表明する言葉を使った人でも
・その直前の1993年8月4日、当時官房長官だった河野洋平が河野談話を発表
・野蛮な国際社会の中で、一度認めてしまった歴史観を修正するのは容易ではない

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