最新ランキングが醸し出す業界模様:2018年販売高、スパコン性能
この時期恒例、2つのランキング・データに注目、ともに現下の業界模様が色濃く醸し出されている。IC Insightsからの2018年半導体サプライヤ(ファウンドリーを含む)販売高ランキング・トップ15予測では、Samsungの前年比26%増に対し、インテルは同14%増とともに大きく伸びていながら伸び率の差で首位と2位の開きが一層拡大、さらにSK HynixがTSMCを抜いて3位に入っている。米中摩擦をくっきり反映するデータ、スーパーコンピュータ・トップ500では、500の比率で中国が45%と拡げる一方、米国は22%とこれまでで最低、一方、計算速度ランキングのトップ2を米国が奪還している。
≪改めてメモリの躍進、米中凌ぎ合い≫
IC Insightsからの2018年半導体サプライヤ(ファウンドリーを含む)販売高ランキングの概要、ポイントが以下の通りである。
◇Nine Top-15 2018 semi suppliers forecast to post double-digit gains (11月12日付け ELECTROIQ)
→今月後半リリースのIC Insights' November Update to the 2018 McClean Reportより、2018年半導体サプライヤ・ランキング予測。2018年世界半導体(ICおよびO-S-D[optoelectronic, sensor, and discrete])販売高ランキング・トップ15が以下の通り:
⇒https://electroiq.com/wp-content/uploads/2018/11/286be44c-6f00-4562-af6e-969630d8fa61.png
本社所在地で、米国7社、欧州3社、韓国および日本それぞれ2社、台湾1社の内訳。本社をシンガポールから米国に移したBroadcomは米国でカウント。
◇Samsung takes 19% lead over Intel-Samsung has taken a 19% lead over Intel n the semiconductor rankings by revenue, assessed by IC Insights. Last year, when Samsung first gained the No.1 spot, it took a 7% lead. (11月12日付け Electronics Weekly (UK))
◇Samsung set to widen gap with Intel throughout 2018: IC Insights-IC Insights: Samsung extends its lead over Intel in chip sales (11月13日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→IC Insightsが予想する2018年半導体販売高ベンダー別ランキング・トップ15のうち、9社が二桁%の伸びと見ている旨。
Samsungとインテル、1位と2位の開きが拡大するとともに、メモリ半導体でSamsungに次ぐ韓国・SK Hynixがファウンドリー最大手、TSMCを抜いて3位に入り込む見方となっている。SK Hynixは41%増で、トップ15では伸び率最大である。
◇半導体業界でサムスンの首位盤石に、SKもトップ3入り=米報告書 (11月13日付け 韓国・聯合ニュース)
→市場調査会社の米ICインサイツがこのほど発表した「2018年半導体市場展望報告書」によると、韓国・サムスン電子の今年の半導体事業の売上高は$83.258 billion(約9兆4700億円)で、前年($65.882 billion)比26%増加すると推算された旨。米インテルは$70.154 billionの売上高を記録し、前年($61.720 billion)比14%増にとどまると予想され、昨年初めて首位に立ったサムスンと2位インテルの売上高の差は、昨年の$4 billionから今年は$13 billion以上に広がる計算になる旨。
春秋年2回のスーパーコンピュータ・トップ500発表であるが、今回の記事関連をまとめて次の通りである。
◇China Extends Supercomputer Share on TOP500 List, US Dominates in Total Performance (11月11日付け TOP500 News Team)
→スーパーコンピュータTOP500 list第52版について。トップ10に米国Department of Energy(DOE)の5つのスーパーコンが入り、トップ2が、Oak Ridge National Laboratory(ORNL)のSummitおよびLawrence Livermore National Laboratory(LLNL)のSierraであった旨。
◇Top 500 Shows China, U.S. Gains-Supercomputer list points to race to exascale systems (11月12日付け EE Times)
→月曜12日にリリースされたスーパーコンピュータ・ランキングにて、中国が数でリードを拡げたが、米国は全体性能で高まっている旨。該最新Top 500リストは、中国と米国が今日の最大システムより10倍強力なexascale-class machineを2022年前に出す競争で相並んで走っている中、出てきている旨。Top 500スーパーコンピュータのうち中国が227を占め全体の45%の一方、米国は109の22%と史上最低の旨。「大きなギャップ」と、University of Tennesseeの電気工学&コンピュータ科学教授で該Top 500 listのorganizersの1人、Jack Dongarra氏。中国のベンダーがsupercomputingのリーダーシップもとっており、中国のLenovo, InspurそしてSugonがトップ3ベンダーである旨。第8位のHuaweiを合わせて、中国ベンダーが該Top 500システムの295を、対してトップ10の米国ベンダー4社、Cray, HPE, Dell EMCおよびIBMで120システムを据えつけの旨。
・Top 500 listの国別、ベンダー別抜粋、下記参照:
⇒https://image.ibb.co/mef4VA/Top-500-Nov-2018.png
◇スパコン番付、1、2位は米国勢、日本勢は7位に後退 (11月14日付け 日経産業)
→スーパーコンピュータの計算速度を競ってランク付けする「TOP500」が米国の国際会議で発表され、米のスパコンが前回の6月に続いて首位となった旨。
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スパコンの計算速度ランキング(1秒あたりの計算回数):
1 サミット(米) 14京3500兆 …米オークリッジ国立研究所
2 シエラ(米) 9京4640兆
3 神威太湖之光(中) 9京3014兆
4 天河二号(中) 6京1444兆
5 ピーツ・ダイント(スイス) 2京1230兆
6 トリニティー(米) 2京0158兆
7 AI橋渡しクラウド(日) 1京9880兆 …産業技術総合研究所の人工知能(AI)専用スパコン
8 スーパーMUC―NG(独) 1京9476兆
9 タイタン(米) 1京7590兆
10 セコイア(米) 1京7173兆
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日本勢では、上記7位のほか、東京大と筑波大が運用する「オークフォレスト・パックス」が14位、2011年に1位を獲得した理化学研究所の「京」は18位といずれも順位を下げた旨。
1ワットの電力で1秒間に演算できる回数を競う「GREEN500」では、 日本の「菖蒲システムB」が首位を守った旨。上記の計算速度で首位だった「サミット」はGREEN500でも3位に入った旨。
トップ500の内訳で数的比率の中国の伸びは抑えきれないところがあるが、性能面でのリードでは米国が一矢を報いた格好となっている。地球シミュレータ、そして京と、かつては本ランキングでリードをとった我が国の一層の奮起が望まれるところでもある。
現下の趨勢を確認するこれらランキングデータであるが、今後の市場を見据えた関連の動きを以下に挙げている。
Gartnerが今後5年のIoTのトレンド・トップ10をあらわしている。
◇New Chip Architectures, Sensors and Trust in Top 10 IoT Trends-Trends in IoT: AI, intelligent mesh, sensors and more (11月12日付け EE Times)
→Gartnerが先週のBarcelonaでの同社シンポジウムにてプレゼンした2018年から2023年にかけての戦略的IoT技術トレンド10項目、以下の通り。来年14.2 billion台のconnected機器が2021年までに25 billion台に増大、と特に言及の旨。
1: Artificial Intelligence (AI)
2: Social, Legal and Ethical IoT
3: Infonomics and Data Broking
4: The Shift from Intelligent Edge to Intelligent Mesh
5: IoT Governance
6: Sensor Innovation
7: Trusted Hardware and Operating System
8: Novel IoT User Experiences
9: Silicon Chip Innovation
10: New Wireless Networking Technologies for IoT
台湾のメモリモジュールメーカーが見るメモリ半導体価格の先行きである。
◇Memory chip prices have room to fall further, says Transcend chairman-Transcend's Shu: DRAM and NAND flash are in oversupply (11月13日付け DIGITIMES)
→メモリモジュールメーカー、Transcend Information(台北)のchairman、Peter Shu氏。DRAMおよびNANDフラッシュメモリ価格が、少なくともさらに1年引き続き下がる流れにある旨。該半導体価格は、第四四半期以降急速に下がり始めている旨。DRAMおよびNANDフラッシュ分野ともに供給過剰となっており、来年あるいはもっと長く該メモリ価格が下がっていく余地が依然ある旨。DRAM分野ではサプライヤ数がNANDフラッシュ分野に比べて比較的小さく、DRAM価格の下げ具合はNANDフラッシュに比べて穏やかな水準となる旨。
現下のメモリ半導体価格の状況である。
◇DRAM、2年半ぶり下落、大口価格、スマホ向け停滞 (11月15日付け 日経)
→DRAMの大口需要家向け価格が2年5カ月ぶりに下落。スマートフォン市場が停滞し、サーバ向け投資も減速。一方、メーカーの量産の進展で市場で供給過剰感が台頭してきた旨。メモリメーカーの収益悪化要因になる一方、パソコンメーカーには恩恵となりそうな旨。
◇DRAM、2年半ぶり下落―NAND型、下げ続く (11月15日付け 日経)
→DRAMと並ぶ半導体メモリの代表品種、NAND型フラッシュメモリは値下がりが続く旨。指標となるTLC(トリプル・レベル・セル)の128ギガビット品の10月の大口需要家向け価格は1個3.1ドル前後。前月と比べ3%安い旨。
7-9月四半期もDRAM市場は史上最高を更新する勢いを維持している。囁かれる現下の価格の軟化の成り行きに注目である。
◇Global DRAM output value hits another record high, says DRAMeXchange (11月16日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2018年第三四半期のグローバルDRAM業界のoutput valueが前四半期比9%増の$28 billionとまたも最高を更新、ビット出荷は引き続き伸びが力強い一方、価格は該四半期の間弱含みとなり始めた旨。
韓国では、メモリ半導体の動向にさらに神経質にならざるを得ない状況があらわされている。
◇韓経:「半導体錯視」を除けば…韓国上場企業の営業利益11.4%減 (11月16日付け 韓国経済新聞/中央日報日本語版)
→韓国上場企業の7-9月期の営業利益増加率(前年同期比)が4-6月期に続いて2期連続で6%台にとどまった旨。有価証券市場上場企業の営業利益は半導体が好調のサムスン電子とSKハイニックスを除けばむしろ11%以上も減少した旨。景気が下降局面に入った状況で半導体までピークを過ぎる場合、上場企業の実績はさらに悪化するという懸念が強まっている旨。
≪市場実態PickUp≫
【米中摩擦関連】
中国のDRAMに取り組むFujian Jinhua Integrated Circuit Co.(JHICC)に対する米国の輸出禁止措置そして起訴について、波紋が尾を引いており、ともに起訴された台湾・UMCからの誤解との以下の主張である。
◇UMC says its DRAM technology design is different from Micron's-UMC says its DRAM tech differs from Micron's designs (11月12日付け DIGITIMES)
→Micron TechnologyからDRAM技術機密を盗んだとして今月米国で告発されたUMCが、同社のDRAM設計がMicronのものとは大きく異なると主張の旨。
同社はステートメントにて、"いかなる不正な告発および誤解している申し立てに対して精力的に正しさを主張していく"旨。
中国側は、米国の一連の決定についてWTOルールを破るものと訴えている。
◇China says U.S. controls on semiconductor firm break WTO rules (11月13日付け Reuters)
→中国が火曜13日WTO(World Trade Organization)会合にて、中国の国家支援の半導体メーカーが米国半導体メーカーからintellectual property(IP)を盗んだとの申し立ての渦中での該中国メーカーを米国のサプライヤから切り離す米国の決定は、WTO規則を破り、米国の独占保護を狙うものである旨。
米国の関税賦課が来年はメモリ半導体が絶好調の韓国に及ぶとの見方が、同国内で以下の通りあらわされている。
◇U.S. Likely to Impose High Tariffs on Semiconductors Next Year (11月14日付け Business Korea)
→米国の貿易保護が高まる中、韓国の輸出関連がうめいている旨。業界筋によると、Donald Trump大統領がSection 232 of the Trade Expansion Actof 1962に基づく過大な関税を賦課、韓国の半導体業界、並びに自動車業界に圧力をかける様相の旨。Federation of Korean Industries(全国経済人連合会)が13日、Washingtonによる2019年に韓国半導体および自動車業界への該section適用について80%の変化があるとしている旨。Korea Semiconductor Industry Association(KSIA)は、米国がハイテク業界において中国を寄せつけないよう来年該sectionを適用する様相と説明の旨。
米国トランプ政権の中国系技術者に対するスパイ容疑摘発が続く現下の情勢である。知的財産保護に向けての厳しいスタンスが覆っている。
◇米、「ハイテク鎖国」に走る、産業スパイ摘発続く−米中衝突 深まる断層(2) (11月14日付け 日経 電子版)
→トランプ政権発足後、全米各地で複数の中国系技術者が産業スパイ容疑で逮捕されている旨。彼らには共通点がある。中国共産党中央組織部の海外高度人材招致プログラム「千人計画」の認定を受けていること。千人計画は海外の先進技術を中国に導入する目的で、過去10年間で約8000人が認定された旨。・・・「半導体やAI、ロボティクスなどへの投資は厳しく審査されると思った方がいい」。10月、シリコンバレーに拠点を置く中国系産業団体、HYSTAのイベントで、登壇した弁護士は中国人起業家らに警告した旨。
我が国FA業界に顧客たる中国企業の投資見合わせのインパクトがあらわれている。
◇工場自動化8社の今年度、6社が下方修正、中国企業、投資見合わせで (11月14日付け 日経)
→産業用ロボットなど工場の自動化に関連する企業の業績改善幅が鈍っている旨。2018年4〜9月期を中心とする主要8社の連結決算が13日出そろい、そのうち三菱電機など6社が2018年度の通期予想を下方修正した旨。米中貿易摩擦の激化を受けて、顧客である中国企業などで投資を見合わせる動きが出ている旨。ただ、自動化需要は中長期的に高水準で推移するとみられ、今年度もなお4社が最高益を見込む旨。
以下の通り中国側による日本メーカーへのダンピング調査の動きも見られている。
◇中国商務省、ファナックなど日系5社でダンピング調査−今後1年間、台湾メーカー5社も (11月16日付け 日経 電子版)
→中国商務省はファナックなど日本メーカー5社(ほかにオークマ、ブラザー工業、ヤマザキマザック、ジェイテクト)などが同国に輸出する一部の工作機械に対して、反不当廉売(ダンピング)調査を始めた旨。工作機械は習近平最高指導部が掲げる産業高度化の長期戦略「中国製造2025」の重点領域になっている旨。米国との貿易戦争で業績に悪影響が及ぶ自国の工作機械業界を保護する狙いもあるとみられる旨。
米国議会の報告書で、IoTなどでの米中間の覇権争いに危機感があらわされている。
◇中国ハイテク「米の脅威」、議会諮問機関報告書、IoT覇権争いに危機感 (11月15日付け 日経)
→米議会の超党派諮問機関、米中経済安全保障再考委員会(USCC:U.S.-China Economic and Security Review Commission)は14日、中国のハイテク技術が米国の安保上のリスクになると警告する報告書を公表した旨。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や次世代通信で中国が国際標準を握れば「米国のデータが吸い取られる」と主張。米議会は野党・民主党も含めて、トランプ政権の対中強硬策に足並みをそろえる旨。
米中首脳会談が今月末にも予定されているが、駆け引きの一端が見えてきている直近時点である。
◇中国が対米貿易改善案、142項目、トランプ氏明かす (11月17日付け 日経 電子版)
→トランプ米大統領は16日、中国との貿易戦争を巡って「中国は142項目の行動計画を提出してきた」と記者団に述べた旨。米中は11月末にも首脳会談を開く予定で、トランプ氏は「取引で合意するかもしれない」と期待をにじませた旨。ただ、同氏は「大きな懸案がいくつか残っており、現時点ではまだ受け入れられない」とも述べ、中国側に一段の譲歩を促した旨。
【インテルの5G modemチップセット】
インテルが、XMM 8160 5G modemチップセットを投入、来年の後半に出荷予定とのことで、Appleの最初の5G iPhoneがこれを搭載するのではとの観測が流れている。modem半導体を席巻しているQualcommと、巨大なユーザのアップルそしてmodem突入を目指すインテルのそれぞれ絡み合う動きに注目である。
◇Intel's new 5G modem might power Apple's first 5G iPhones-Devices with the new modem are expected in early 2020 (11月12日付け The Verge)
◇Intel speeds up its 5G modem plans-It's not going to let Qualcomm hold the lead for very long. (11月12日付け Engadget)
◇Apple Said to Inspire Intel 5G Chip-Integrated part leaves 2019 market to Qualcomm-Apple's 5G iPhone may have an Intel modem chip (11月13日付け EE Times)
→Intelが、XMM 8160 5G modemチップセットを投入、来年の後半に出荷予定、Appleの最初の5G iPhoneがIntelデバイスを使うという憶測を焚きつけている旨。該XMM 8160は、5G New Radio標準に向けたstand-aloneおよびnon-stand-alone仕様をサポートする一方、4G, 3Gおよび2G cellular通信に向けた旧式サポートも得られる旨。
◇Intel XMM 8160 Supports LTE and 2/3G-Integrated modem looks set to hit market in 2020 (11月14日付け EE Times India)
【Samsungの新しいアプリ・プロセッサ】
Samsungが、AI機能に向けて最適化を図った新しいモバイルapplicationプロセッサ、Exynos 9820 system-on-chip(SoC)を披露している。8-nmプロセスによる以下の高性能が謳われている。
◇Samsung's 8-nanometer Exynos 9820 is 20% faster in single-core tasks (11月13日付け VentureBeat)
◇Samsung unveils new mobile application processor optimized for AI features -Samsung reveals Exynos 9820 processor (11月14日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→Samsungが、Exynos 9820 system-on-chip(SoC)を披露、single-core性能が20%改善、パワー効率が40%高い旨。該Exynos 9820は、artificial intelligence(AI)機能に向けた新しいneural processing unit、および2 gigabits/secのダウンロード速度が得られるLTE Advanced modemを特徴としている旨。
【SK HynixのDDR5 DRAM】
SK Hynixが、業界初、JEDEC遵守の16Gb DDR5 DRAMを投入している。ビッグデータ、AIおよびmachine learning応用に向けて最適化を図ったとしている。
◇SK Hynix intros 1Ynm 16Gb DDR5 DRAM (11月15日付け DIGITIMES)
→SK Hynixが、業界初のJEDEC標準適合DDR5である16Gb DDR5 DRAMを開発の旨。
◇SK hynix develops new DRAM optimized for big-data, AI, machine learning-SK Hynix's DRAM aims at AI, machine learning, big data (11月15日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→SK Hynixが、artificial intelligence(AI), ビッグデータanalyticsおよびmachine learning応用向けに16-gigabit DDR5 DRAM半導体を投入、該新メモリデバイスは、先行するDDR4 DRAMより消費電力が30%少ない一方、データ伝送速度が5.2 gigabits per secondとDDR4 DRAMの3.2Gbpsと比べ高まっている旨。
◇SK hynix develops next-gen DRAM DDR5 for big data, AI applications (11月15日付け The Korea Herald (Seoul))
【MRAMサプライヤ支援】
Spin Transfer Technologiesとして馴染みのあったMRAMサプライヤで現在はSpin Memoryと改めているが、これに対してARMおよびApplied Materialsのventure capital部門が以下の通り出資支援を行っている。
◇Arm, Applied Back MRAM Startup-MRAM supplier raises $52M in private funding (11月13日付け EE Times)
→以前はSpin Transfer Technologiesとして知られるmagnetoresistive random-access memory(MRAM)デバイスのサプライヤ、Spin Memory(Fremont, CA)が、ArmおよびApplied Materialsのventure capital部門、Applied Venturesが主導するSeries B fundingで$52 millionを調達の旨。2007年設立のSpin Memoryはまた、Armに対し顧客向けembedded MRAM技術が得られるようEndurance Engineアーキテクチャーのライセンスを供与の旨。
◇ARM and Applied Funds MRAM Effort-Spin Memory gets $52 million series B funding from heavyweights (11月13日付け EE Times India)
≪グローバル雑学王−541≫
2002年にイラクに次いで、そして2009年と、イスラエルを訪れた著者が、紛争下の悲惨な実態を目にし体験した内容、そしてエルサレムの街について、
『世界の路地裏を歩いて見つけた「憧れのニッポン」』
(早坂 隆 著:PHP新書 1149) …2018年7月27日 第1版第1刷
より生々しく触れていく。我が国にいる目からすれば到底理解が及ばない状況、場面がひしひし伝わってくる思いになる。イスラエルを取り巻く経緯、現況を理解する必要性は感じるとともに、日本人として足を踏み入れるにはかくも覚悟の要ること、と改めて現在の問題を考えている。
第九章 イスラエル―――ゴールデンブックに刻み込まれた感謝
□清濁が境目もなく混ざりあう街
・2002年の夏、イラクでの取材を終え、ヨルダンの首都、アンマンに戻った後、息つく暇もなくイスラエルへバスで
→中東を旅する日本人バックパッカーたちのイスラエルの呼称
…「イの国」「ディズニーランド」といった隠語
→無用な諍いに巻き込まれないための予防策
・国境での入国審査は、極めて厳格なもの
→小型爆弾の可能性を疑ったか、目覚まし時計を検査官が分解
→入国のスタンプは「ノースタンプ」と言って別紙に押してもらう
→アラブ諸国に入国ができなくなる恐れ発生のため
…イスラエル側も事情は承知
・エルサレムは、ユダヤ人が住む西エルサレムと、アラブ人が住む東エルサレムに分かれる
→街の中心部にあるのが旧市街
→ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地。周囲は城壁で囲まれている
→紀元前のヘロデ大王時代に建造されたエルサレム神殿の一部、「嘆きの壁」
→ユダヤ民族にとって最も神聖な場所
→旧市街の東部に位置する「岩のドーム」
→「預言者・ムハンマドが昇天した場所」
→イスラム教徒にとってメッカ、メディナに次ぐ「第三の聖地」
→新約聖書においてイエス・キリストが十字架に磔刑(たっけい)にされたという場所に建つ「聖墳墓教会」
→該教会への道に迷っていると、一人の少年が入り口まで案内、「マネー」と手を差し出した
…聖地の実態と人間の本質を垣間見た
□世界中から集まったユダヤ人が持ち込んだ料理
・旧市街には多くの食堂、イスラエル料理の「多彩さ」
→基本的なメニューは中東の料理、それと同時に世界各地の名物料理が日々の食生活の中に混在
→世界中からこの地に集まったユダヤ人たちが、それまでに暮らしていた国の味を持ち込んだ
・近代的なビルが立ち並ぶ新市街のエリアには、多くの「スシバー」
→海外の不味い和食屋は大抵が素材を「足し過ぎている」が、その典型
→素材の味が喧嘩し、まさに紛争地の趣
□そんなアザラシなど死んでしまえ
・エルサレムから乗り合いバスに乗り、パレスチナのヨルダン川西岸地区に位置するベツレヘムへ
→エルサレムの10km南方、イエス・キリストの生誕地、ベツレヘム
→現在はアラブ人が暮らす街に
→イエスが生まれた場所には聖誕教会が建つ
・当時のベツレヘムは、第二次インティファーダ(民衆蜂起)の真っ最中
→午後二時を回ったら「外出禁止」の命令
→過ぎたのと同時に、イスラエル軍の戦車と装甲車が街に進入
・ある日、イスラエル軍による空爆があったという情報を得て、エルサレムの安宿から乗り合いタクシーでその地へ
→いくつかの黒焦げの遺体が無惨に転がる光景
→憔悴し切った気持ちでエルサレムの宿へと戻り、暗鬱な気持ちのまま狭いベッドに
→翌日、日本のサイトには「多摩川に出没したアザラシのタマちゃん」のニュース
→日本人にとっては、パレスチナ人よりもアザラシの方が重要なのか
→「そんなアザラシなど死んでしまえ」、一人、そう呟いた
□「日本人の君に、僕たちの悲しみは理解できないよ」
・それから数日後、エルサレムからアンマンに戻ることに
→途中で立ち寄った村で再びイスラエル軍の外出禁止令に
→路地から路地へと身を隠しながら移動、不意に背後から何か怒声のようなもの
→振り返るとイスラエル軍の兵士が軍用小銃の銃口をこちらに向けて立っていた
→下手なヘブライ語で「ヤパン(日本)、ヤパニ(日本人)」と叫んだ
…その数日前、とあるジャーナリストから「毅然とした方が良い」と聞いていた
→そのうちにその兵士は小銃を下ろして、別の方角へ
→どうやら助かったようだ
・祖国に感謝した
→「日本」という国家の名前によって助けられたのだと思った
・その後、タクシーでヨルダンとの国境へ向かう途次、運転手のパレスチナ人の青年
→「日本人の君に、僕たちの悲しみは理解できないよ」
→その言葉が胸の奥まで突き刺さった
・少しばかり現地をうろついたくらいで、この地のことなど理解できるはずもない
□テルアビブ空港乱射事件という惨劇
・それから7年後、イスラエルを再訪、2009年の秋のこと
→目的は、陸軍中将・樋口季一郎に関する取材
→ユダヤ難民を救出した「オトポール事件」
・1938(昭和13)年3月、満洲のハルビン特務機関長だった樋口
→ナチスの迫害からソ連国境の地まで逃れてきたユダヤ難民に対し、特別ビザの発給を実現
→「ヒグチ・ビザ」により、多くのユダヤ人の命が助けられた
・イスラエルにはこの樋口の功績を讃える「ゴールデンブック」というものが存在
→その実在を確かめるため、イスラエルを再訪
→ソウルを経由、テルアビブのベン・グリオン国際空港に深夜に到着
→この空港では、1972年5月30日に起きた「テルアビブ空港乱射事件」
→パレスチナ側からは、日本赤軍を英雄視する見方も
→以降、イスラム過激派による自爆テロが増えたのは、この事件が契機になったとも
→テルアビブは近代的なビジネス街、街は地中海に面しており、意外にもリゾート地の顔も
・その後、長距離バスに乗ってエルサレムに移動、7年ぶりの再訪
□ゴールデンブックに名が載せられた意味
・エルサレム市内で、「ゴールデンブックを知っていますか?」という聞き込み
→JNF(ユダヤ民族基金)という団体の存在
・ゴールデンブックとは、JNFへの献金者の名簿
→「ヒグチの名前は第六巻、4026番に」
→「GENERAL HIGUCHI」という名前を確かに確認できた
→「ヒグチ・ビザ」によって助けられた難民たちが、御礼と感謝の気持ちを込めて樋口の名前で献金をしたのだろう、とのこと
・なぜ、樋口の名前は杉原と比べて歴史の陰に埋もれてしまったのか
→外交官だった杉原と違い、樋口が陸軍軍人だったことに大きく起因するであろう
→戦後日本の過剰とも言える陸軍への批判
□戦後日本の核心を突く言葉
・エルサレムからテルアビブへとバスで戻り、今度は列車に乗ってベンヤミナという町へ移動
→目的のユダヤ人入植地、アミカームへ
→「樋口に助けられたユダヤ難民を実際に目撃した」という女性の存在を聞いて訪ねた
・1926年、ドイツ・ベルリン生まれのクララさん
→12才のときに父親の仕事の関係で関東州の大連へ
→「1939年か1940年の春」、大連駅に多くのユダヤ難民が到着したのを目撃
・「ヒグチは偉大な人物。日本人はヒグチのことをあまり知らないのですか?」
→クララさんの言葉が、戦後日本の核心を一気に突いた