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5月の半導体販売高、単月史上最高、14ヶ月連続前年比20%以上増

米国が半導体など対象に対中国制裁関税を予定通り7月6日に発動、間髪を置かずに中国が大豆・自動車などに対米国報復関税を発動して、まったく同規模の応酬が本格的に始まったばかりである。これに4日先立って、米国SIA(Semiconductor Industry Association)から月次世界半導体販売高のデータが発表され、この5月について$38.7 billionと単月の史上最高を記録、前年比21.0%増と14ヶ月連続20%以上増の熱い活況が依然続いている。この現下の半導体業界に米中摩擦の波乱が如何に影響を及ぼすか、勝者のない無益な争いという声が強まる中での当面そして今後に目が離せないところである。

≪5月の世界半導体販売高≫

米国SIAからの発表内容が、次の通りである。

〇5月のグローバル半導体販売高が前年比21%増−史上最高の月次販売高;Americas市場は前年比32%増 …7月2日付け SIA/NEWS

半導体製造、設計および研究の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2018年5月の世界半導体販売高が$38.7 billionに達し、2017年5月の$32.0 billionから21.0%増と発表した。
5月のグローバル販売高は前月、2018年4月の$37.6 billionを3%上回った。
月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「グローバル半導体市場は14ヶ月連続一貫して20%以上の前年比の伸びを示しており、2018年5月は業界史上最高の月次販売高となっている。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、John Neuffer氏は言う。「Americas地域がふたたび引っ張って、販売高が前年比30%以上増加しており、すべての主要半導体製品カテゴリーにわたって前年比および前月比両方ともに販売高が増加している。」

次に示すように、地域別では、販売高前年同月比がすべての地域にわたって堅調に増加している。前月比ではぐっと控え目になってすべての地域にわたって増加している。

Americas
前年同月比 +31.6%/
前月比 +1.1%
China
+28.5%/
+6.3%
Europe
+18.7%/
+1.0%
Japan
+14.7%/
+2.6%
Asia Pacific/All Other
+8.7%/
+1.2%

                      【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
May 2017
Apr 2018
May 2018
前年同月比
前月比
========
Americas
6.27
8.16
8.24
31.6
1.1
Europe
3.11
3.65
3.69
18.7
1.0
Japan
2.95
3.30
3.38
14.7
2.6
China
10.25
12.38
13.16
28.5
6.3
Asia Pacific/All Other
9.43
10.13
10.25
8.7
1.2
$31.99 B
$37.61 B
$38.72 B
21.0 %
3.0 %

--------------------------------------
市場地域
12- 2月平均
3- 5月平均
change
Americas
8.25
8.24
-0.1
Europe
3.44
3.69
7.1
Japan
3.18
3.38
6.4
China
11.71
13.16
12.4
Asia Pacific/All Other
10.18
10.25
0.6
$36.77 B
$38.72 B
5.3 %

--------------------------------------

※5月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
https://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/May_2018_GSR_table_and_graph_for_press_release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた業界各紙の反応、取り上げである。

◇Chip Industry Posts Another Monthly Sales Record (7月3日付け EE Times)

◇Semiconductor Sales Soar Sustainedly (7月3日付け EE Times India)

◇Global semiconductor sales increase 21% in May, says SIA-SIA: Chip sales hit $38.7B in May, up 21% on year (7月3日付け DIGITIMES)

◇Global semiconductor sales in May increase 21% year-to-year (7月6日付け ELECTROIQ)

2016年後半から盛り返して急激な増勢を保っている世界半導体販売高の推移が次の通りであり、当面は引き続き見守っていくデータ内容と思っている。
22ヶ月連続の前年同月比増、そして14ヶ月連続前年同月比20%以上増があらわれるところとなっている。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
(月初SIA発表)
2016年 7月
 $27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月
 $28.03 B
0.5 %
3.5 %
2016年 9月
 $29.43 B
3.6 %
4.2 %
2016年10月
 $30.45 B
5.1 %
3.4 %
2016年11月
 $31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月
 $31.01 B
12.3 %
0.0 %
$334.2 B
 
2017年 1月
 $30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月
 $30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月
 $30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月
 $31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月
 $31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月
 $32.64 B
23.7 %
2.0 %
2017年 7月
 $33.65 B
24.0 %
3.1 %
2017年 8月
 $34.96 B
23.9 %
4.0 %
2017年 9月
 $35.95 B
22.2 %
2.8 %
2017年10月
 $37.09 B
21.9 %
3.2 %
2017年11月
 $37.69 B
21.5 %
1.6 %
2017年12月
 $37.99 B
22.5 %
0.8 %
$405.1 B
 
2018年 1月
 $37.59 B
22.7 %
-1.0 %
2018年 2月
 $36.75 B
21.0 %
-2.2 %
2018年 3月
 $37.02 B
20.0 %
0.7 %
2018年 4月
 $37.59 B
20.2 %
1.4 %
2018年 5月
 $38.72 B
21.0 %
3.0 %


2018年1-3月四半期の半導体販売高およびサプライヤ・ランキングデータが示されている。

◇Global semiconductor industry reached $115.8B in Q1 2018 (7月2日付け ELECTROIQ)
→IHS Markit発。2018年第一四半期のグローバル半導体業界売上げが、前四半期比3.4%減の$115.8 billion、ワイヤレス通信市場における販売高減少および第一四半期の季節性がマイナスに影響しているが、車載およびconsumer半導体など他の分野は通常の市場の伸びとなっている旨。
2018年第一四半期の半導体サプライヤ・トップ10データ:
https://electroiq.com/wp-content/uploads/2018/07/Top10_Semi_Mfrs_Q118_IHSM.png

メモリ半導体の高価格がいつまで続くか、当面の見方に関連する以下記事内容である。米中摩擦インパクトとの両にらみで注視していくことになる。

◇DRAM prices to rise slightly in 3Q18, says DRAMeXchange (7月3日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。DRAM average selling prices(ASPs)が、第三四半期に前四半期比僅かに増加、第四四半期には横這いと見ている旨。サプライヤのビットoutputは技術移行を通して引き続き伸びていく一方、DRAM ASPsは大方は従来のpeak seasonを控えた補充の需要から第三四半期に僅かながら上昇すると見ている旨。

◇Price Rise Slowing Down-Is Global Memory Chip Boom Coming to an End?-Will the memory boom slow down, maybe end? (7月3日付け BusinessKorea magazine online)
→DRAMeXchange発。DRAMおよびNANDフラッシュメモリのpricingが、2018年後半の間に下がるか、あるいは最小限の伸びという兆候がある旨。"DRAMスポット価格は下がる兆しを示しており、NANDフラッシュの需給は第三四半期にバランスがとれて価格が上がらない様相"と、特に言及の旨。

◇注目リポートから、半導体祭りの「終祭」宣言[市場点描] (7月3日付け 日経)
→クレディ・スイス証券はこのほどアジアの半導体市場の調査を踏まえ「NAND祭りの閉祭宣言」というリポートを出した旨。NAND型フラッシュメモリはSDカードやUSBメモリなどに使われる記憶媒体で、半導体の代表種。同社は2016年6月に需給の逼迫を受け関連企業の活況を予想した「NAND祭り」を宣言しており、この幕を引いた旨。株式市場では、3〜5年で好不況を繰り返す半導体市況の変動が変わり、好況が長く続く「スーパーサイクル」に入ったとの期待がこの数年高まっていた旨。ただ、リポートによると直近ではスマートフォン向けの需要が減り、生産の歩留まりも良くなったことで需給が緩んでいる旨。

メモリ半導体での中国の台頭ぶりが注目されるが、2-3年でトップの韓国勢に並んでいくのは困難と、韓国発の記事が見られている。

◇S. Korea to maintain lead over China in semiconductor market: Moody's (6月30日付け YONHAP NEWS AGENCY)
→グローバル格付けagency、MoodyのInvestors Service、土曜30日発。韓国が引き続きグローバルメモリ半導体業界を引っ張って、少なくとも向こう2-3年は中国のインパクトは限定的の旨。世界最大の半導体消費者として、中国は海外メーカーへの依存を減らすために該分野に過大な投資を行っている旨。しかし、Samsung Electronics Co.およびSK hynix社など韓国の半導体メーカーは、"技術およびノウハウ両方で抜きん出ていて、容易に再現できない"、とMoodyのエキスパート、Gloria Tsuen氏。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦、制裁ついに発動】

制裁関税発動を控えて、2大国のぶつかり合いから世界が大きく揺れ始めている。

◇ハイテク覇権、米国揺るがす中国、安全保障にも波及 (7月2日付け 日経 電子版)
→米国と中国が対立を深めている旨。制裁関税の応酬など貿易摩擦にとどまらず、ハイテク分野での競争も激しさを増す旨。根底にあるのは将来の覇権をにらんだ争い。「超大国」として世界秩序を主導してきた米国の揺らぎと、「中華民族の偉大な復興」を掲げる中国の挑戦。2つの大国の衝突は世界を揺らし始めた旨。

◇米中に身構えるマネー、アジア企業、6割が株価下落 (7月2日付け 日経 電子版)
→米国と中国の貿易摩擦と米利上げで、アジアの株式市場に警戒感が広がっている旨。「Asia300」(6月末時点で325社)を構成する自動車、IT、不動産などの企業の株価は2018年1〜6月、幅広く下落した旨。資源や小売りなど上昇した銘柄はあるものの、保護主義への懸念などで株安は中国以外の企業にも広がり、アジアの成長に期待してきた投資家は一転してリスクに身構えている旨。

◇米中貿易摩擦、身構える世界 米制裁関税6日発動期限 (7月5日付け 日経 電子版)
→米国と中国は6日、広範な輸入品に25%の追加関税を発動する期限を迎える旨。米国が制裁関税をかければ、中国もすぐに報復に動くとみられ、二大経済大国が高関税をかけあう異常事態に突入するかの分岐点となり、世界は保護貿易の連鎖による影響に身構えている旨。

その予定の日を迎えて、トランプ米大統領がその通りの発動を表明、即日すぐさま中国はまったく同規模の報復を行って、合戦に突入している。

◇対中制裁関税、予定通り6日発動、トランプ氏表明 (7月6日付け 日経 電子版)
→トランプ米大統領は5日、中国の知的財産侵害に対する制裁関税を予定通り6日に発動すると表明、産業用ロボットや電子部品など340億ドル(約3兆8千億円)に相当する輸入品に25%の追加関税を課す旨。中国も同日、大豆などに同規模の報復関税をかけて対抗する構え。米国の関税は米東部時間午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に発動する予定。米通商代表部(USTR)は同時刻以降に米国に到着したり保管庫から引き出されたりした品物から関税を徴収すると通知を出している旨。関税の対象は自動車や半導体、医療機器、産業機械など818品目が対象。中国のハイテク産業育成策「中国製造2025」の重点投資分野から選んだ旨。携帯電話やパソコン、テレビ、衣料品など中国に大きく依存する消費者向け製品は関税の対象から取り除いた旨。

◇中国が対米報復関税発動、大豆・自動車など545品目 (7月6日付け 日経 電子版)
→中国は6日、大豆や自動車など545品目・340億ドル(3兆8千億円)相当の米国製品を対象に25%の追加関税を発動した旨。中国外務省の陸慷報道局長が同日の定例記者会見で「中国による米国の一部製品への追加関税はすでに効力を発生した」と明らかにした旨。

半導体については、双方傷つくだけの勝者のない戦いになるという見方があらわされている。

◇Trade War Seen As 'Zero-Sum Game' for Chip Industry-Chip segment faces "zero-sum game" in trade war, analyst says (7月6日付け EE Times)
→今日の中国で作られる製品への新しい関税の賦課は、半導体業界に確実にマイナスの効果となる旨。「半導体領域では、米国と中国の間のエスカレートする関税係争は勝者のないともに有害な傷つくzero-sum gameになる。」とIHS Markitの半導体value chain researcher、Myson Robles-Bruce氏。

世界の半導体業界をずっと主導してきている米国のリーダーシップを戦略的に如何に維持していくか、来週のSEMICON WestにてWhite Houseがリードする議論の場が予定されており、米中摩擦の情勢と合わせて注目するところとなる。

◇Strategy for U.S. semiconductor leadership to be previewed at SEMICON West (7月6日付け ELECTROIQ)
→来週のSEMICON West(2018年7月10-12日:San Francisco)にて、半導体に期待される国家リーダーシップ戦略のWhite House主導の議論が行われる旨。来週の水曜11日、該戦略に関わるagenciesの代表メンバーパネルが、米国が半導体業界のグローバルリーダーであり続けることを目指したfederal research and development(R&D), 投資およびacquisitionの優先順位を扱う旨。

【中国のマイクロン製品販売差し止め】

台湾・UMCが特許侵害で米国・マイクロン・テクノロジーを訴えたのが発端、中国・福州中級人民法院がマイクロンの半導体製品の一部について中国での製造、販売の差し止めを求める仮の命令を出している。現下の活況の半導体市場を引っ張るメモリ半導体の第3位サプライヤのマイクロンであり、知的財産から展開している米中摩擦に直結する動きの1つとして、以下の通り多くの波紋を呼んでいる。

◇Chinese Court Said to Block Sale of Some Micron Chips (7月3日付け EE Times)
→台湾のファウンドリー、UMC(Hsinchu, Taiwan)発。中国の裁判所が、Micronに対し中国での販売を禁止する予備差し止めを出しており、対象は、UMCが1月に申請した特許侵害訴訟から出ているいくつかのDRAMおよびNAND半導体並びにsolid state drives(SSDs)の旨。Micron(Boise, Idaho)は、まだ差し止めは受けておらず、そのdocumentsをさらに見直すまではコメントしないとしている旨。UMCは、Fuzhou Intermediate People's Courtによる該差し止めはあるSSDsおよびメモリsticksなど26のDRAMおよびNAND-関連アイテムの中国での販売を禁止、としている旨。
(注) Fuzhou…福建省福州市

◇China court bans Micron chip sales in patent case: Taiwan's UMC (7月3日付け Reuters)

◇Micron barred from selling chips in China, rival says -Court in China bars sales of Micron chips over patent dispute (7月4日付け CNNMoney)

◇China court rules in favor of UMC in patent lawsuit against Micron (7月4日付け DIGITIMES)

◇中国、マイクロン製品の一部販売差し止め命令−台湾UMC発表 (7月4日付け 日経 電子版)
→台湾の半導体大手、聯華電子(UMC)は3日夜、特許侵害などを巡り係争中の米マイクロン・テクノロジーに対し、中国・福州中級人民法院が一部製品の販売を差し止める仮の命令を出したと発表、米ナスダック市場でマイクロンの株価は一時、前日比約8%下落の旨。業界では、ハイテク分野での米中の覇権争いの悪影響が及んだとの見方が出ている旨。UMCによると、福州中級人民法院は3日までにマイクロンに対し、同社の30項目近い製品について中国での生産・販売を一時的に差し止める仮の命令を出した旨。

◇中国、米半導体の販売差し止め、背景にハイテク摩擦 (7月4日付け 日経 電子版)
→中国の裁判所が米半導体大手、マイクロン・テクノロジーに対し、一部製品の生産・販売の差し止めを命じた旨。パソコンなど電子機器に使う半導体メモリが対象で、実際に販売が止まると幅広い製品に影響が広がる旨。
ハイテク分野を巡っては米中が覇権を激しく争っており、米国による対中追加関税の発動が6日に迫るなか、過熱する貿易摩擦への警戒が広がる旨。マイクロンの売上高のうち中国顧客向けは51%を占める旨。電子機器の受託製造サービス(EMS)が多く立地する中国は世界のIT機器の生産拠点になっており、マイクロンのメモリが使えなくなると影響は甚大。特にDRAMはサーバー需要の高まりから品不足が続いており、需要家の代替調達は難航する可能性がある旨。
株式市場も貿易摩擦の激化に警戒を強める旨。3日の米市場でマイクロンは6%安となったほか、半導体大手、エヌビディアが2%安。日本では4日、半導体製造装置を手がける東京エレクトロンやアドバンテストが4%安となるなど、半導体関連株が総崩れとなった旨。

Samsung、SK Hynixとメモリ半導体1位、2位を擁する韓国での、この事態を見つめる非常に穏やかではない状況があらわされている。

◇Starting US-China Trade War?: Korean Chipmakers Become Tense as China Bans Sale of Micron Products in China (7月4日付け Business Korea)
→中国が米国との貿易戦争をエスカレートさせており、Micronの中国での製品販売について禁止措置を発表。Micronは、Samsung ElectronicsおよびSK Hynixに続く第3のDRAMメーカーであり、韓国半導体メーカーは、分け前の期待よりも中国の制裁が韓国に及ぶのを恐れて、この状況を敏感に見つめている旨。

今回の差し止め命令のさらに詳細が以下の通りである。

◇China firm claims patent lawsuit victory over Micron (7月5日付け DIGITIMES)
→Fujian Jinhua Integrated Circuit(JHICC:福建省晉華積體電路有限公司)が、中国でMicron Technologyを相手取った訴訟で勝利、MicronのCrucialブランドなどあるメモリ製品に関する特許の侵害を主張している旨。JHICCの技術パートナー、UMCが、中国・Fuzhou Intermediate People's Courtが3日にMicron Semiconductor (Xi'an)およびMicron Semiconductor (Shanghai)に対してあるsolid-state hard drives(SSD)およびメモリsticksを含む26のDRAMおよびNAND関連アイテムの販売活動を禁止する予備差し止めを出している、と発表したばかりの旨。

マイクロンは、この差し止め命令の売上げへの影響は軽微とする一方、控訴に動いている。

◇Micron says China ban unfair but won't hurt revenue (7月5日付け Reuters)
→Micron Technology社が木曜5日、ある半導体販売の一時的な中国の禁止について事業に与えそうなインパクトを軽く扱ったが、米中通商摩擦に加わる決定に控訴する旨。

◇マイクロン、販売差し止め影響「売上高の1%」 (7月6日付け 日経 電子版)
→米マイクロン・テクノロジーは5日、中国・福州中級人民法院が同社の半導体製品の一部について中国での製造、販売の差し止めを求める仮の命令を出したことを認めた旨。影響を受ける製品の規模はマイクロンの年間売上高の約1%にとどまり、6〜8月期の売上高は従来予測していた80億〜84億ドルの範囲に収まる旨。マイクロンは福州中級人民法院に命令の再考を求める旨。

【人工知能(AI)への取り組み】

本欄の定常メニュー項目となった感じ方のAIへの各社、各方面の取り組みであるが、IBMは、AI training半導体なるものの開発を行っている。

◇IBM researchers design a fast, power-efficient chip for AI training-IBM's power-efficient AI chip aims at training neural networks (6月29日付け VentureBeat)
→IBMが、neuralネットワークスをより高速に、そしてエネルギー効率を高めて訓練するといわれるartificial intelligence(AI)デバイスを開発、該AI training半導体は、2つのphase-change memoriesを1つのcapacitorおよび3つのトランジスタと組み合わせて該ネットワークの特定のneuronsに順応させる旨。

中国・Baidu(百度)主催のBaidu Create 2018(7月4-5日:北京国家会議センター)にて、Intelとの連携、そしてBaidu自身のAI半導体が発表されている。

◇Intel Pushes AI at Baidu Create (7月4日付け EE Times)
→中国のインターネット大手、Baidu(百度)主催の第2回annual AI developer conference、Baidu Create 2018(7月4-5日:北京国家会議センター)が、ますますSilicon ValleyでのGoogle I/OあるいはApple Worldwide Developers Conferenceのように見えてきている旨。今回の場に合わせて、Intel/Mobileyeが発表、MobileyeのResponsibility Sensitive Safety(RSS)モデルが、Baiduのopen-source Project Apolloおよび商用Apollo Driveプログラムの両方に作り込まれる旨。

◇Baidu unveils AI chip, Level 4 autonomous mini-bus (7月5日付け DIGITIMES)
→Baidu Create 2018 AI developer conference Beijing(7月4-5日:北京国家会議センター)にて、中国の検索エンジン大手、Baiduが、AI scenariosに向けた高性能computing搭載のKunlun半導体、および同社Apollo open自動運転プラットフォーム・ベースのApolong 14-席 Level 4 autonomous mini-busを披露の旨。
cloudデータセンターサーバおよび端末機器でのedge computingで用いられるKunlunは、Samsung Electronicsの14-nmプロセス・ベース、260TOPS, 512GB/secメモリバンド幅および電力消費100Wを特徴として、deep learningアルゴリズム, 自然言語処理, 音声認識, large-scale recommendationsおよび自動運転に適用できる旨。Kunlunには2つのバージョンがあり、deeplearning訓練向けの818-300および推論向けの818-100の旨。

◇Baidu Accelerator Rises in AI-Kunlun chip claims 30x performance of FPGAs (7月6日付け EE Times)

【業績発表から】

台湾・Nanya Technologyの6月業績に、3ヶ月連続史上最高更新、そして四半期最高と、DRAMの活況ぶりが反映されている。

◇Nanya revenues hit record for 3rd consecutive month (7月4日付け DIGITIMES)
→DRAM半導体メーカー、Nanya Technologyの6月売上げが前月比3.1%増のNT$8.59 billion($281.1 million)、3ヶ月連続史上最高を更新。第二四半期売上げがNT$24.59 billionとなって、前四半期比30.8%増、四半期最高の旨。

メモリ半導体首位で半導体ランキングでも首位のSamsungはどうか。半導体は堅調ながらスマートフォンやディスプレイが足を引っ張る状況が見えてきている。

◇Samsung Electronics profit growth slows on smartphone weakness (7月6日付け Reuters)

◇サムスン営業益5%増、4〜6月、半導体堅調 (7月6日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が6日発表した2018年4〜6月期連結決算の速報値。売上高が前年同期比5%減の58兆ウォン、営業利益が前年同期比5%増の14兆8000億ウォン(約1兆4800億円)。サーバなどに載せる半導体メモリが堅調だったとみられるが、自社製スマートフォン事業やディスプレイ事業は苦戦した模様の旨。

【電気化学センサ】

Analog Devicesより、次世代のintelligent電気化学センサを可能にするセンサインタフェースICが発表されている。病状管理、工業ガス管理、などに向けた電気化学sensingと、センサ技術の多彩な奥行きである。

◇Most advanced biological and chemical sensing Interface IC-Analog Devices debuts sensing interface IC for electrochemical sensors (7月2日付け New Electronics)
→Analog Devicesが、次世代のintelligent電気化学センサを可能にするセンサインタフェースICを投入の旨。

◇Cortex-M3 chip supports electrochemical sensors with low-noise 16bit ADC, and more-ADI offers sensor interface chip based on Cortex-M3 (7月5日付け Electronics Weekly (UK))
→Analog Devicesの包括的smart電気化学センサインタフェースICは、potentiostatおよびelectrochemical impedance spectroscopy(EIS)を単一の半導体に組み合わせ、これは初めての旨。Arm Cortex-M3 microcontroller(MCU)設計ベースの該ADuCM355電気化学sensingインタフェースICは、disease management, industrial gas management, instrumentationおよび生存兆候monitoringに用いられる旨。


≪グローバル雑学王−522≫

米国による対中追加関税の発動が7月6日と、まさに足もとで火がつき始める事態を迎えている米中経済摩擦は、本報では主に半導体業界の視点から追い続けて先の展望の読みに努めているところであるが、折も折時宜に適った新書、

『「米中関係」が決める5年後の日本経済 新聞・ニュースが報じない貿易摩擦の背景とリスクシナリオ』
 (渡邉 哲也 著:PHPビジネス新書 393) …2018年5月11日 第1版第1刷発行

を見い出して読み進めていく。著者は、内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評がある作家・経済評論家で、貿易会社を経て独立、複数の企業運営に携わっている方である。広い視点に立って、「知っているようで知らない」米中対立の背景と日本経済への影響について、80のQ&Aの構成で解説が繰り広げられている。


≪はじめに≫

◆米中貿易戦争勃発! 市場は混乱、株価は乱高下
・2018年3月23日午前0時(米国東部標準時)、アメリカの生産者を守るため、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の新たな関税賦課
・3月22日には、アメリカは中国に対する制裁措置を発表、知的財産権の侵害を理由、高関税をかける
 →これに対し、中国は強く反発、報復関税の準備をするとして応酬
・株価の乱高下が続き、経済や投資に与えた影響は、リーマン・ショック級

◆ニュースや新聞は世界経済を断片的、一面的でしか捉えていない
・情報の真偽を見極めるのはもちろん、自分たちが優位にビジネスを進めるために、ニュースの背景から世界経済の流れを読み解くこと
 →こうした情報の取得に心掛けるべき
・2008年のリーマン・ショック以降、世界各国が市場経済から計画経済に移行
 →国家の介入のもと、物財バランスに基づいた計画によって配分される経済体制に
 →その象徴ともいえる国が、アメリカ
  →自動車のビッグ3(GM、フォード、クライスラー)を救済、一時は国有化に近い形に
・一方の中国
 →2018年3月11日、全人代で憲法改正案が採択
  →習近平国家主席の「永世皇帝」の可能性も
・こうした世界の潮流を目の当たりに
 →完全な自由主義は幻想にすぎないことに、世界中の人たちが気づいたのでは
・世界の覇権をめぐっての、覇権国家アメリカと覇権を奪いたい挑戦者の中国との戦いでも

◆「知らない」では済まされない米中の政治と経済
・米中の政治・経済の対立は近年のトレンド
 →正しく情報を読み取らなくては命取りになりかねず、「知らない」では済まされない
 →原因と過程を正しく読み解くこと

◆ビジネスパーソンと投資家にとって必要不可欠な思考
・テクノロジー分野はいま、アメリカと中国の対立構造のうえで成長し続けている
 →両国の思惑に着目することなくして、将来の展望を語ることはできない
・5年後の2023年は、AI(人工知能)や自動運転車、IoTの勢いが最高潮に達しているとき
 →米中関係をつねにイメージすることが必要不可欠
・東西冷戦体制を支えてきた思想は現在も継続
 →むしろ昨今、その勢いは急激に拡大されている
・日本経済は米中の二大経済圏との関わりなしには成り立たず、両国の思惑が今後の世界の経済の行方を決定する
・本書では、知っているようで知らない米中関係と日本経済の行方について、「80の疑問(Q)」をもとに解説・分析
・各章の位置づけ
 →序章  米中経済対立に至った背景
  第1章 今回のアメリカの制裁を中心に米中貿易摩擦の現状
  第2章 米中対立のきっかけともいえる政治事情(主に北朝鮮問題)
  第3章 中国経済の実態
  第4章 アメリカが中国をどう見ているか、米中対立が世界経済に与える影響
  第5章 米中関係が日本経済に与える影響と将来に向けた日本の戦略

序章 米中経済対立の背景を読み解く ―――前半

[POINT OF VIEW]
・冷戦後からトランプ政権誕生までの米中関係
 →グローバリズムと保護主義の関係性
 →リーマン・ショックがもたらした弊害
 →トランプ大統領誕生の背景
・現在の米中関係をしっかり押さえていれば、5年後、10年後の日本の姿、世界経済の様相もきっと見えてくる

■米中貿易戦争はなぜ起きたか

Q1:アメリカによる鉄鋼とアルミニウムの輸入制限発動の目的は?
・トランプ大統領の思惑は何?
 →主に中国を対象にしたこの輸入制限
・自国産業保護のために一般的な輸入制限を行なうことは、WTO体制を否定、断じて認められない
 →アメリカは、米国内法、通商拡大法(Trade Expansion Act of 1962)232条を根拠に、安全保障上の問題として行なった

Q2:対立リスクで「お金」はどう動く?
・過去の政権には見られないレベル、トランプ大統領の中国への対抗心
 →2018年3月16日、「台湾旅行法」(Taiwan Travel Act)成立、米台首脳会談の実施も可能に
 →中国全人代の開催中に大統領が署名
・これに黙っていない中国
 →3月17日、全人代で王岐山 前共産党中央規律検査委員会書記を国家副主席に選出
 →対米経済外交に辣腕を振るうと見られる
・米中の経済対立の本格化、アメリカの保護主義への旋回という不安からの株価下落
 →「世界的にリスクが高くなると円高になり、株が下がる」

【COLUMN】キャリートレードの仕組みと為替への影響
・キャリートレード(Carry Trade)
 …低金利通貨で借り入れて高利回り通貨の資産に投資すること
 →相場リスクが低い状態のときは、日本円でお金を借り、それを海外に投資する動きが広がる
  →円売り・ドル買いの動きとなり、円安方向に為替を動かす
 →相場リスクが高まると、逆の動き
  →現地通貨からドルに、そして円に戻す
   …リワインド(rewind:巻き戻し)
・レパトリエーション(Repatriation:本国送還)
 …決算に向けて、海外の利益を確定したり、配当や税など決算対策で母国にお金を戻す動きが強まる
 →先物取引のSQ(Special Quotation:特別清算指数)日に合わせて動くことが多い
 →こうした「特別要素」を無視して、日本の国内事情だけで株価や為替を判断するのは避けた方がよい

Q3:保護主義とグローバリズムは表裏の関係か?
・グローバリズムの本質は、ヒト・モノ・カネの移動の自由化、国境やさまざまな障壁をなくすことによって3つの要素が自由に移動できる体制
 →成立する要件として、世界が1つのルールで動くということ
・しかし、それを守らない国が出てきた
 →中華人民共和国

Q4:中国が進める一帯一路、AIIBの現状は?
・中国は、リーマン・ショックによる新自由主義、自由主義勢力の解体とともに力をつけ、アメリカの意に逆らって自らのルールを世界に押しつけようとしている
 →「一帯一路(新シルクロード経済圏構想)」
 →AIIB(アジアインフラ投資銀行)
・現地に技術移転をする際、中国は自国から人員や物品を導入する形での開発投資推進
 →世界銀行やアジア開発銀行の融資基準に合致しない
 →このような状況をお金の力で解決しようとしたものが、ある意味AIIBであり、一帯一路
 →ほとんどの例がうまくいっていない実態

Q5:国際社会に悪影響をもたらす中国の租借権問題とは?
・さらに、いま国際社会への悪影響
 →一帯一路に伴う中国の融資、借款による租借権問題
 →借金で首が回らなくなってしまった国は、中国に無償で港や鉄道を取られる結果に
・パリクラブ(債権国会合)
 …パリで行われる国家間の債務滞納などに関する協議会
 →その償還の延期や債務の減免などを認めるという制度
・世界的規模のシステムを無視する中国の登場
 →従来のグローバリズムを支えてきた「ワンルール」「ワンシステム」という概念が徐々に成立しない時代に

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