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IoTの現況:各社取り組みおよび連携、そしてCEATEC JAPANにて

人工知能(AI:artificial intelligence)の急激な進展に目を奪われ過ぎた嫌いがあるやもしれずであるが、スマホに続く新分野の中の先駆けであるIoT(Internet of Things)の着実な進化、進展の現時点に注目している。各社の動きでは、ライバルのARMとIntelがIoT運用への主要な障壁を取り除く狙いの戦略的連携を発表、という大きな動きが見られ、焦点の絞りにくさのあるIoTに一石が投じられている。そして、IoTによる共創を1つに謳うCEATEC JAPANの見学から、多くの分野に及ぶ現況とともに、かつてのエレクトロニクスショーからの変遷を改めて辿っている。

≪多彩な分野、業界への展開≫

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)について、"コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行う"と、ネットの百科事典の定義にあるが、応用分野が非常に広範囲、多岐にわたるだけに、標準化、生産対応はじめ鳥瞰図のまとめに難しさを感じるところがある。

各社の取り組みは活発に続いており、現時点の中から、STMicroelectronicsおよびNXP SemiconductorsのハードウェアでのIoTセキュリティへの対応である。

◇MCUs Deliver Hardware-Based IoT Security (10月17日付け EE Times)
→STMicroelectronicsおよびNXP Semiconductorsがともに、IoTセキュリティを高められるようTrustZone統合のArm Cortex-M33を活用したmicrocontrollers(MCUs)を打ち上げの旨。STMicroelectronicsは今週、Cortex-M33ハードウェア-ベースのセキュリティに立脚するSTM32L5 microcontroller(MCU)を発表の旨。

◇STMicro and NXP in New IoT Security Bid-Pitches ARM-based MCUs at the problem (10月18日付け EE Times India)

産業用IoT(IIoT)を牽引するSiemensを取り巻く現下の競合環境があらわされている。

◇産業用IoTに攻め込むIT巨人、迎え撃つシーメンス (10月18日付け 日経 電子版)
→独シーメンスが、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」基盤の強化を急ぐ。これまで産業用IoTで共存関係にあったIT企業のエッジ(ネットワークの端末)分野への進出に備え、この分野で確かな地位を築くため。同じく産業用IoTに活路を見いだす日本のメーカーにとっても、シーメンスの状況は対岸の火事ではない旨。産業用IoTで製造業は主導権を握れるのか――。産業のデジタル化に伴って大手IT企業の影響力が日増しに高まる中で、全てのメーカーが直面する課題にシーメンスが先陣を切って挑んでいる旨。同社は、IoT基盤「MindSphere」を次の中核事業として育てるべく、矢継ぎ早に手を打ってきた旨。

半導体大手のライバル同士、IntelとArmが、IoTの展開について戦略的に連携する動きがあらわれてきて、今後に注目である。鳥瞰図が見やすくなるのではという内内の期待感である。

◇Intel, Arm to Collaborate on IoT (10月15日付け EE Times)
→IntelとArmが、IoT運用への主要な障壁を取り除く狙いの戦略的連携を発表、該連携は、Armのデバイスを含めてIntelのSecure Device Onboard onboardingサービスのcapabilityを拡げる狙いの旨。該コラボにより、ArmのPelion IoT PlatformがArm-ベースIoT devicesおよびgatewaysに加えてx86プラットフォームの搭載&管理も可能になる旨。

◇Rivals ARM and Intel make peace to secure Internet of Things-Arm teams with Intel to secure IoT devices, networks (10月15日付け Reuters)
→ライバルの半導体大手、ARMとIntelが、両社からのconnected機器ネットワークスの管理運営での協働に合意、いわゆるInternet of Things(IoT)の市場成長に対する大きな障害を取り払う旨。

家電・ITの国際展示会、「CEATEC Japan 2018」(10月16-19日:幕張メッセ)が開催され、IoTをキーワードの1つとして概要が以下それぞれにあらわされている。

◇シーテック開幕へ、ローソンなど異業種続々 (10月15日付け 日経 電子版)
→家電・IT国際見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2018」の報道陣向け公開が15日、始まった旨。「IoT」の技術やサービスが並び、ローソン(未来のコンビニ:ウォークスルー決済)やライオン(舌の画像をAIで分析)など異業種の出展が目立つ旨。

◇CEATECきょう開幕、「IoTのファナック」発信、工場向け基盤、拡販に意欲 (10月16日付け 日経産業)
→国内最大の家電・IT国際見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2018」が16日開幕。人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」など先端技術を競う旨。コマツやローソンの社長らが基調講演するなど業界の外に開かれた展示会を印象づけているが、なかでも気勢をあげているのが2年連続で参加するファナック。19日までの4日間で昨年を上回る16万人の来場者を見込んでいる見本市で、ファナックは2017年10月に展開を始めた工場向けのIoT基盤「フィールドシステム」をアピールする旨。

◇CEATEC Japan 2018 opens (10月17日付け DIGITIMES)
→CEATEC Japan 2018が16日開幕、日本の成長戦略およびIoT, ロボットおよびAIがすべて重要な役割を果たす将来のsuper-smart communityのビジョン、Society 5.0を披露する4日間のイベントの旨。今年のテーマは、2016年から続いて"つながる社会、共創する未来(Connecting Society, Co-Creating the Future)"、ITおよびelectronicsに加えて、finance, 旅行, toys, 住宅, machine tools, cars, 建設, 通信, 農業, ヘルスケアなどの分野からの展示がある旨。CEATEC Japan 2018には、725社/機関が参加、150以上のconferencesがあり、345社/機関が初出展の旨。

最終日に足を運んでIoTのゾーン「IoT TOWN」を一回り、上記の内容を目にしたところである。

会場で手にした資料の中に、「CEATECの変遷」があらわされていて、かつてのなつかしさとご無沙汰気味の近年から改めて振り返っての抜き出しである。

・1962年に始まった「日本電子工業展」
 …東京・晴海の東京国際貿易センターにて
・1964年の第3回から「エレクトロニクスショー」に改称
 →第25回の「1986年エレクトロニクスショー」、過去最多、44万3500人が来場
・2000年、「COM JAPAN」と統合、「CEATEC JAPAN」へ
・2011年、「東京モーターショー」と連携
・世界情勢や業界動向の変化、2015年、初のサービス産業のCEATEC参画
 →近畿日本ツーリストと楽天
・2016年、「IoTタウン」に進化
 →IT・エレクトロニクス業界以外の"IoTのフロントランナー"が続々と出展
 →CEATECはIoTの総合展に生まれ変わった

展示のデモの不具合に追われたこと、晴海から有楽町まで歩いた帰路、など浮かんでくるのが1980年代半ばあたりのこと。上記の時間軸と合わせているところである。

CEATECは、2016年開催から「CPS/IoTの展示会」と銘打っているとのこと。
CPSとは、ネットの百科事典では、サイバーフィジカルシステム(Cyber-Physical System)であり、現実世界(フィジカル空間)でのセンサネットワークが生みだす膨大な観測データなどの情報について、サイバー空間の強力なコンピューティング能力と結びつけ数値化し定量的に分析することで、これまで「経験と勘」に頼っていた事象を効率化し、より高度な社会を実現するために、「あらゆる社会システムの効率化」「新産業の創出」「知的生産性の向上」などを目指すサービスおよびシステム、とあらわされている。確かにかつてとは違う時間軸は、国際政治・経済の情勢の激動、そして半導体業界もMoore則後の新たなロードマップの模索を見ても然り、何としてもついていかないとという改めての心境にさせられている。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連】

さまざまな切り口での摩擦の波及が見られており、まずは、台湾・ASEとその顧客による混乱回避策である。

◇ASE and clients are ready for US-China trade war, says COO-ASE COO plans for fallout from US-China trade war (10月15日付け DIGITIMES)
→ASE Technology HoldingのChief Operating Officer(COO)、Tien Wu氏。
同社およびその顧客は、中国と米国の間で引き続く貿易衝突からくる混乱を最小限にする方法を求めており、同社は、北米における車載electronics実装の市場需要に応えるようメキシコ拠点への投資を高める一方、台湾拠点への投資を続ける旨。

我が国と中国の間で知的財産について新たな対話が持たれようとしている。

◇日中、知財巡り新対話、首脳会談で合意へ (10月16日付け 日経 電子版)
→安倍晋三首相と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は26日の北京での首脳会談で関係改善を確認する旨。習主席の来日時期も詰める旨。新技術や知的財産保護で新対話を設ける旨。米中の貿易戦争は覇権争いに発展しており、中国は牽制効果を期待して日本に接近する旨。合意内容の実効性は未知数で、日本は米中のはざまで難しい外交のかじ取りを迫られる旨。

株価の連日急落を前回示しているが、今回は反発持ち直しが見られている。

◇米国株、ダウ大幅反発で547ドル高、好決算銘柄に買い、VIX低下も追い風 (10月17日付け 日経 電子版)
→16日の米株式市場でダウ工業株30種平均は大幅に反発し、前日比547ドル87セント(2.2%)高の2万5798ドル42セントで終えた旨。上げ幅は3月下旬以来の大きさ。16日朝に米主要企業が発表した好決算を受けた買いが広がった旨。米株の変動性指数(VIX)の低下も追い風となった旨。

半導体技術を盗んだと、米国のSilicon Valley startupが中国・Huaweiを訴えているが、昨年の提訴に対するやり返しの様相である。

◇U.S. Startup Accuses China's Huawei of Trying to Steal Semiconductor Technology-Allegations are part of countersuit in response to a complaint Huawei filed last year accusing CNEX Labs of theft (10月18日付け Wall Street Journal)
→半導体技術の優越性について米国と中国の間でエスカレートする戦いが、中国のテレコム大手、Huawei Technologies Co.およびMicrosoft社とDell Technologies社が支援するSilicon Valley startup、CNEX Labs社(San Jose, Calif.)の間で連邦裁で行われている旨。

中国経済にも摩擦がプラスに働くわけがなく、7-9月経済成長率は金融危機以降最も低い水準となっている。

◇China's economy to brace for slower growth pace as trade war with United States takes its toll-Chinese growth hits lowest rate since financial crisis (10月19日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→第三四半期の中国経済成長が6.5%、第二四半期の6.7%から低下、米国との通商摩擦が激化して中国の会社に影響を与え始めている旨。第三四半期の成長率は、金融危機以降最も低い旨。

◇中国6.5%成長、2期連続で減速、7〜9月 (10月19日付け 日経 電子版)
→中国国家統計局が19日発表した2018年7〜9月の国内総生産(GDP)は物価の変動を除く実質で前年同期より6.5%増。実質成長率は4〜6月より0.2ポイント縮小し、2期連続の減速となる旨。政府が進める企業や地方政府の債務削減でインフラ建設などが低迷した旨。米国との貿易戦争の影響も表れており、先行きはさらに下押し圧力が高まりそうな旨。実質成長率はリーマン・ショックで経済が落ちこんだ2009年1〜3月期(6.4%)以来の低水準。
2018年の中国政府の目標(6.5%前後)と同じだった旨。

【7-nm半導体の競い合い】

Samsungが、extreme ultraviolet(EUV) lithographyを用いる7-nm半導体の立ち上げをSamsung Tech Day(10月17日)にて以下の通りあらわしている模様である。少し先を行くTSMCの投資家会合での表し方との対比である。

◇Samsung Ramps 7nm EUV Chips-Multiple tapeouts race toward 2019 announcements (10月17日付け EE Times)
→Samsungが、extreme ultraviolet(EUV) lithographyを用いる複数の7-nm半導体をtape outして立ち上げ、ライバルの最大ファウンドリー、TSMCが今月始め行った同様の発表に続く旨。Samsungはまた、supporting IPおよびEDAインフラを高め、TSMCのecosystemに追いつくべく実装capabilitiesを詳説の旨。

◇Samsung carves faster processors with new, sharper light scalpel-It's the first manufacturer to use extreme ultraviolet --chipmaking technology promised for decades but difficult to roll out in factories.-Samsung uses EUV chipmaking for faster smartphones (10月17日付け CNET)
→Samsungが、同社7-nm半導体に向けてextreme ultraviolet(EUV)半導体製造技術の使用を開始、トランジスタを40%縮める旨。該技術により20%の性能向上の一方、電力消費の半分削減が得られ、Samsungが次期Exynosモバイル半導体で用いる様相のアップグレードの旨。

◇Samsung debuts semiconductor innovations at Samsung Tech Day (10月19日付け ELECTROIQ)
→Samsung Electronics Co., Ltd.が、Samsung Tech Day(10月17日)にて、ファウンドリー並びにNANDフラッシュ, SSD(solid state drive)およびDRAMにおける次世代技術を含む包括的半導体ecosystemへのいくつかの草分けの追加を発表、合わせてこれらの展開がSamsungの半導体事業にとって非常に大きな前進の一歩となる旨。7-nm LPP EUV, SmartSSDおよび256GB 3DS(3-dimensional stacking) RDIMMなどが導入されている旨。

◇TSMC expects 7nm chip sales to account for 10% of 2018 revenues (10月19日付け DIGITIMES)
→TSMCのCEO、CC Wei氏が10月18日の投資家会合にて。TSMCは、2018年末までに7-nmプロセス技術の半導体設計50以上をtape outの運び、2019年末までに7-nmおよびenhanced 7-nm with EUV nodes両方の半導体設計が100を越える旨。TSMCは、7-nm半導体販売が2018年第四四半期にウェーハ売上げ全体の20%を上回る比率、2018年全体では約10%となる旨。2019年にはこの比率が20%を越えそうな旨。

【Arm Tech Con】

Arm Tech Con(2018年10月16-18日:San Jose Convention Center)にて、Armが、スマートフォンおよびembeddedコアから踏み出して世界中でconnecting機器用のNeoverse cloud-to-edgeインフラの展開を図ろうとしている。サーバでの難航が見られるだけに、Cloudへの活路を見い出そうとしている。

◇Arm Climbs into the Cloud-Neoverse cores promise 30% annual performance boosts (10月16日付け EE Times)
→今日までサーバでの牽引力を多く得られず、Armが、インフラ装置に向けて設計されたコアのロードマップを擁してcloudへの突入を更新、この動きは、スマートフォンおよびembeddedコアを席巻している同社にはre-commitmentとなるが、cloudあるいはAI accelerators新興市場での位置づけを画さなければならない旨。来年から、Armおよびパートナーは、サーバ, ネットワークス, およびストレージシステムに最適化されたコア, IP, およびSoCsを展開、新しいプロセスnodesの歩みとともに年次のテンポで出てくる旨。Armは、Arm Tech Con(2018年10月16-18日:San Jose Convention Center)にて発表、Neoverseブランドのコアで30%の性能の年次利得を約束の旨。

◇Arm's Neoverse will be the infrastructure for a trillion intelligent devices-Arm unveils a cloud-to-edge infrastructure for IoT devices (10月16日付け VentureBeat)
→Armが、世界中でconnecting機器用のNeoverse cloud-to-edgeインフラを展開、同社およびその技術パートナーが、ネットワークス、サーバおよびストレージシステム用のcores, intellectual property(IP)およびsystem-on-a-chip(SoC)デバイスを投入、30%の性能改善を約束する旨。

◇ARM Shoots for the Cloud-Not giving up on server plans, revamps roadmap to include infrastructure gear (10月17日付け EE Times India)

このArm Tech Conの場で、NXP Semiconductorsはソフトウェアtoolsに中心を置いたAI戦略を次のようにプレゼンしている。

◇NXP Plans GHz MCU as AI Moves to Edge-Focusing strategy on software, NXP stays mum on AI accelerators (10月16日付け EE Times)
→NXP Semiconductorsが、今週のArm TechCon(2018年10月16-18日:San Jose Convention Center)にて、ソフトウェアtoolsに中心を置いたAI戦略を披露、edge向けAIソフトウェア開発環境、eIQおよびcustomizable system-levelソリューションをお披露目の旨。NXPのsenior vice president and general manager of microcontrollers(MCUs)、Geoff Lees氏は、現状のAIは依然流動的として、「第一および第二世代AI acceleratorsはscalableでない」としている旨。たくさんのAI SoC startupsが新しいaccelerationアーキテクチャーを開発しているけれども、今日の顧客は彼らのAIニーズに応えるよりscalableな汎用プロセッサを望んでいる、と特に言及する同氏。

【ウェーハ当たり売上げ】

プロセッサと汎用メモリ半導体についてウェーハ当たり売上げの開き(前者が高い)を気にした時期があるが、ここでは専業ファウンドリー大手4社の処理ウェーハ平均売上げのデータの推移をIC Insightsがあらわしている。ファウンドリーウェーハ売上げは2014年がピークであること、そしてTSMCの抜きんでた様相に改めて注目している。

◇Advanced Technology Key to Strong Foundry Revenue per Wafer-Analysis shows more than a 16x difference between the average revenue generated by 0.5µ 200mm wafers ($370) and ≤ 20nm 300mm wafers ($6,050) (10月12日付け IC Insights)

◇Advanced technology key to strong foundry revenue per wafer (10月15日付け ELECTROIQ)
→IC InsightsのSeptember Update to The 2018 McClean Report。専業ファウンドリー最大手4社(TSMC, GlobalFoundries, UMC, およびSMIC)での処理ウェーハ平均売上げが、200mm-換算ウェーハであらわして2018年において$1,138の見込み、2017年の$1,136から実質的に横這いの旨。ファウンドリーBig 4の間のウェーハ当たり平均売上げは、2014年の$1,149がピーク、それから昨年までゆっくり減っている旨。
TSMCの2018年のウェーハ当たり平均売上げは、$1,382の見込み、GlobalFoundriesの$1,014より36%上回る旨。UMCは$715にとどまり、TSMCの約半分の見込み。さらにTSMCは、Big 4のなかで2018年のウェーハ当たり売上げが2013年より唯一大きく(9%増)、対照的にGlobalFoundries, UMC, およびSMICのウェーハ当たり売上げ平均は、2013年に対しそれぞれ1%, 10%, および16%下回る見込みの旨。

◇Revenue per foundry wafer peaked four years ago-IC Insights: Foundry wafer average revenue down from 2014 peak (10月15日付け Electronics Weekly (UK))

【Qualcommの802.11ay標準チップセット】

Qualcommが、60GHz帯の無線通信規格、WiGigに向けた新しい802.11ay標準チップセットを発表、5G cellularへのミリ波(mmWave)サポートへの対抗で、表舞台に立てるかどうか、今後にかかってくる。

◇60-GHz Wi-Fi Gets a Refresh-Qualcomm rolls out chips for 802.11ay (10月16日付け EE Times)
→Qualcommが、新しい802.11ay標準に向けたチップセットを発表、数年留まっているニッチ状態から60-GHz Wi-Fiをそっと突き出す期待の旨。該市場状況は同社にとって警告的な話になる可能性、他は5G cellularへのミリ波(mmWave)サポートに取り組んでいる旨。

◇Qualcomm's new Wi-Fi chips are meant to rival 5G speeds-Qualcomm develops 802.11ay WiGig chipsets (10月16日付け The Verge)
→Qualcommが、WiGig(Wireless Gigabit:60GHz帯の無線通信規格)機器用の同社初、802.11ay 60GHz Wi-Fiチップセットを開発、最大10 Gbpsおよび1 millisecond未満のlatencyの速度が得られる旨。送信機と受信機の間を結ぶ直線距離を必要とする該標準は、最大100m先でのtop speed到達可能、とQualcommのモバイルおよびcompute connectivityグループのhead、Dino Bekis氏。

◇Qualcomm offers first 802.11ay 60GHz Wi-Fi chipsets for WiGig devices (10月16日付け VentureBeat)

◇60GHz Networking Gets a Boost-Qualcomm announces chips for the updated 802.11ay 60GHz WiFi standards (10月17日付け EE Times India)

【40周年のMicron】

米国Idaho州BoiseにはHewlett-Packardが顧客としてあり、そこにDRAMの新たな競合としてMicronが登場、という1980年代前半の蘇りである。いろいろな経過が思い起こされるが、エルピーダメモリを買収して小生のかつての後輩も活躍している現時点でもある。

◇Micron celebrates 40 years of leadership and innovation (10月18日付け ELECTROIQ)
→Micron Technology社が本日、Idaho州議会議事堂にて40周年のお祝い、世界中のMicron拠点での多くの祝賀の1つの旨。40年前Boiseでのstartupとしての始めの日々から、Micronは、該業界でメモリおよびストレージ・ソリューションの最も広範なportfolioを擁して、世界第4位の半導体メーカーとして構築してきている旨。今日、Micronはグローバルに17か国で34,000人以上を雇用の旨。Micronは、同社の歩みにわたって約40,000件の特許に寄与、革新へのcommitmentが同社の拡大および成長に向けたエンジンとして引き続き働いていく旨。ここ40年にわたってMicronの高性能メモリおよびストレージ・ソリューションは、Personal Computing, Mobile Smartphones, NetworkingおよびCloud Computingなど多角的な末端応用での多くの広範な技術の進展を可能にしている旨。今後Micronの製品は、ストレージおよびデータアクセス高速化に実体的な役割を果たしていき、artificial intelligence(AI), machine learning(ML)および自動運転など新しい領域でのブレイクスルーを引き続き引っ張っていく旨。


≪グローバル雑学王−537≫

バルト三国、南からリトアニア、ラトビア、そして首都がヘルシンキから高速艇で1時間半ほどのエストニアという位置関係の確認から始まって、

『世界の路地裏を歩いて見つけた「憧れのニッポン」』
 (早坂 隆 著:PHP新書 1149) …2018年7月27日 第1版第1刷

よりそれぞれの歴史と今も残る街角の雰囲気、そして我が国とのつながりに触れていく。リトアニアは「命のビザ」の「杉原千畝」、ラトビアの軍事博物館には樺太での日本人抑留者たちが培った友情に対して贈った多くの寄せ書きの日の丸、そしてエストニアと言えば大相撲の元大関「把瑠都」、といろいろな時間軸、経緯のつながりが見えてくる。著者の目を通したバルト三国の光景、市民生活から、小生なりのグローバルな目や考え方にアップデートが追加されている。


第五章 バルト三国―――一枚の色褪せた「日の丸」

□歴史をどの立ち位置から見るか?
・「バルト三国」の1つ、リトアニア
 →最も南に位置する人口320万人ほどの小さな国
 →首都、「ヴィリニュス」
 →中世期には「リトアニア大公国」を築いた歴史も
 →ロシアやドイツといった周辺の国々の覇権争いに切り刻まれてきた歴史
・1918年、紆余曲折を経てリトアニア共和国が成立
 →その後、領土問題で対峙したのが、国境を接するポーランド
 →リトアニアというさらなる小国から見た歴史においては、ポーランドも領土的野心の強固な大国
 →1944年、ソ連軍が再び侵攻、以降、ソ連邦を構成する共和国の1つに

□現地で語り継がれる杉原千畝の「命のビザ」
・「杉原千畝」の「命のビザ」の舞台となったのがリトアニアの地
 →リトアニアのカウナス(当時臨時の首都)にあった日本領事館に領事代理として赴任
 →1940年7月、日本領事館の前に現われた多くのユダヤ難民
 →ナチスの迫害を逃れ、「日本の通過ビザ」を求めた
・約6000人とも言われる多くのユダヤ人の命が救われた
 →今もヴィリニュス市内には、「スギハラ通り」と命名された通り、ネリス川の河畔には立派な記念碑も

□KGB博物館の戦慄の拷問部屋
・リトアニアの国旗は横縞の三色旗
 →上から黄(太陽)、緑(自然や自由)、赤(祖国のために流された血)
・我が国とは異なり、血の色を国旗に持つリトアニア
 →第二次世界大戦が終わっても、ソ連による厳しい弾圧の時代
・ヴィリニュスに建つ「KGB博物館」
 →ソ連時代にKGB(ソ連国家保安委員会:ロシア語では「カーゲーベー」)が拠点としていた建物
 →地下には、かつて実際に使われていた拷問部屋や処刑場などがそのまま保存
・世界的なベストセラー『共産主義黒書』(1997年にフランスで出版)
→共産主義体制下で殺害された犠牲者の数は、ソ連で2000万人、中国で6500万人など総計で1億人超
 →第二次世界大戦の犠牲者数、およそ5000万〜8000万人を上回ることに
・リトアニアがソ連からの独立を果たしたのは、1990年
 →翌1991年1月13日にはソ連軍がのテレビ塔などを攻撃
  …「血の日曜日事件」
 →この惨劇を世界で最初に報道したのは2人の日本人記者
  →後にリトアニア政府は、褒章を授与

□ラトビアの日の丸に凝縮された日本人の魂
・バルト三国の中央に位置するラトビア
 →ヴィリニュスから長距離バスで5時間ほど北上、首都のリーガに
・バルト三国はそれぞれ別種の異なる言語
 →リトアニア語、ラトビア語、どちらも同じインド・ヨーロッパ語族のバルト語派
  …互いに会話が成立しないほどの違い
 →エストニア語のみウラル語族に分類
 →彼らの民族的なアイデンティティの礎石に
・バルト三国における最大の都市、リーガ
 →「バルト海の真珠」
 →経済的な発展を支えたのがハンザ同盟
  …中世後期、ドイツ北部を拠点としながらバルト海沿岸地域の貿易を独占
 →「ハンザ」とは古いドイツ語で「同盟」の意
・リーガの街のシンボルは「自由記念碑」
 →1935年に建造、51mの高さ
 →自由を奪われたソ連時代、ラトビア人の心の支えに
・リーガの旧市街に建つラトビア軍事博物館
 →多数の展示物の中に意外なもの
 →天井から吊るされていた1枚の色褪せた「日の丸」
  →ラトビア人医師が、樺太で出会った日本人抑留者たち
  →培った友情に対して抑留者たちが贈った多くの寄せ書きの日の丸 

□バルチック艦隊はこの地から出航した
・ラトビアにおける第3の都市、バルト海に面したリエパーヤ
 →日露戦争時、バルチック艦隊が日本へ向かうために集結したのが、不凍港であるこのリエパーヤ軍港(リパウ軍港)
  →バルチック艦隊…「バルト海に展開するロシア軍の艦隊」
 →苦境に陥ったロシア軍は、バルチック艦隊を遥か極東まで派遣することを決断
  →しかし、同艦隊の航海は苦難の連続
  →日本近海に到着した艦隊はすでに疲弊し切っていた
 →「世界史上、最も差の付いた海戦」とも

□人々を幻想へと誘う幽霊の街
・バルト三国の中で最も北に位置するエストニア
 →かなりこぢんまりとした雰囲気の首都、タリン
  →海を挟んだフィンランドのヘルシンキとは目と鼻の先、高速艇で1時間半ほど
 →近年、日本でエストニアと言えば、大相撲の元大関「把瑠都」
  …現在は祖国に戻り、国会議員を目指している旨
 →近年ではIT先進国としても知られ、「スカイプ」発祥の地でも
・13世紀にデーン人(デンマーク人)が侵攻、現在のタリンに連なる街の基礎
 →タリンとは、エストニア語で「デンマーク人の城」という意
・「ダネマルカ(ルーマニア語でデンマークのこと)人」が拓いたタリンの旧市街
 →その後、この地に多く入植したのはドイツ人
 →街にはドイツの地方都市のような雰囲気が薫る
 →もちろん、ハンザ同盟の一都市
・タリンには数多くある幽霊にまつわる話
 →厳しい冬が長期にわたる地域では、想像力や妄想は飛翔の翼を得て、独特の文学や口承が発達
 →タリンは人々を幻想へと誘う不思議な街

□歴史は〈舌の叫び〉によってつくられた
・バルト三国の主食として共通、ライ麦を使った黒いパン
 →緯度によって決まる食卓…モンゴルでもライ麦パン
・野菜ではジャガイモが主役
 →葡萄づくりにも適さないため、ワインはブルーベリーやカシスなどからつくられたもの
・バルト海は魚の種類自体は決して多くない
 →それほど多彩ではない海鮮料理
 →日本は、質、量ともに極めて優れた海を持っていることに
・エストニアの皿の上には魚介類よりも牛肉や豚肉、乳製品など
 →名物料理の1つに、豚の煮凝り「スルトゥ」
・(著者が)タリン滞在中、相部屋となったインド人の弁
 →「ヨーロッパを旅行していると、彼らがなぜアジアを植民地にしたのかがよくわかる。ヨーロッパにはスパイスがない。ヨーロッパ人の『うまいものを食べたい』という欲求が、世界史をつくった。歴史は〈舌の叫び〉によってつくられた」

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