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新たな潮流:M&A頭打ち、中国傾斜、技術イベント、スマホ中国

急変した仮想通貨はあるもののデータセンター、IoT、AI、自動運転、AR/VRなど新市場が着実に伸びてきて、世界半導体市場をますます比率を高めて支えているという実感がある。そんな中の新たな潮流の台頭をいくつか。数年前半導体業界を揺るがした大型M&Aが頭打ち、中国市場に傾く連携の色合いが強まってきている。IoTにしろ、AIにしろ、関係する領域が広く、ハイテク関連の会議・展示会開催それぞれの焦点の当て方に大きな移行を迫られている。スマートフォンの中国市場からサムスンが大きく後退する方向、新基軸の構築を余儀なくされている。

≪新分野・新市場マップ対応≫

振り返ると「市場の飽和感、吹きまくるM&Aの嵐が席巻&進行中」と、2015年を締めているが、2016年後半からいまだに続く世界半導体市場の増勢そして史上最高を更新し続ける現下の勢いとなっている。このM&Aについて、いろいろな壁に当たって抑えられる流れがあらわされている。QualcommのNXP買収提案が、中国当局の審査が通らず頓挫しているのが最近のことである。

◇Size of semiconductor acquisitions may have hit limit (8月14日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsの見方として、主要な半導体合併合意の金額の伸び、大規模事業を一緒に結びつける複雑さ、そしてサプライヤの国内基盤保護に向けた政府の精査の高まりなど、要因が組み合わさって見える先々の半導体業界における大型化の一途のmega-transactionsを妨げている旨。
このところの大型M&A案件トップ10、下記参照。
https://electroiq.com/wp-content/uploads/2018/08/size-of-ma1.png

◇Size of semiconductor acquisitions may have hit limit, says IC Insights (8月15日付け DIGITIMES)

◇Size of Chipmaker Acquisitions May Have Peaked (8月17日付け EE Times)

その一方、M&Aからグローバルな連携が活発化しており、以下の例が見られている。まず、IoT ecosystemの展開に向けたドイツ・Infineon Technologiesと中国のe-commerce会社、JD Groupとの戦略的提携である。

◇Infineon signs strategic partnership agreement to build smart IoT ecosystem-Infineon partners with JD Group for a smart IoT ecosystem (8月13日付け New Electronics)
→Infineon Technologiesが、中国のJD Groupとコラボ、より効率的で安全確実なIoT offeringsに向けてinternet of things(IoT) ecosystemを展開していく旨。JD.com websiteは、中国で最大のオンラインretailerである旨。

◇Infineon to Deliver Chips for Chinese Retailer's IoT-Infineon to provide chips for JD Group (8月16日付け EE Times)
→Infineon Technologiesが、中国のe-commerce会社、JD Groupに対し、今週両社が発表した戦略的提携のもとinternet of things(IoT)半導体を供給する計画を発表の旨。該半導体は、JD GroupのIoT製品およびサーバ・ソリューションで用いられる旨。

組立&テストの最大手、台湾のASE Technology Holdingは、蘇州の子会社の一部を中国・Tsinghua Unigroupに売却している。

◇ASE to sell part of Suzhou stake-Tsinghua to buy a minority stake in ASE's Suzhou subsidiary (8月13日付け The Taipei Times (Taiwan)/CNA)
→ASE Technology Holding(日月光投資控股)が、Suzhou ASEN Semiconductors(蘇州日月新半導體)における30% equity stakeをTsinghua Unigroupに$95.33 millionでの売却に合意、10日で完了の運びの取引の旨。ASEは、Advanced Semiconductor EngineeringとNXP Semiconductorsの間の合弁として2007年に始まったSuzhou部門における70% stakeを保持の旨。

◇Tsinghua Unigroup to buy stake in ASE subsidiary (8月14日付け DIGITIMES)

少し趣きを変えて、EDAのCadenceは南京に進出している。台湾のTSMCが製造拠点を設けることに連動するものかと思われる。

◇Cadence to open subsidiary in Nanjing-Cadence Design Systems plans Nanjing subsidiary (8月16日付け DIGITIMES)
→業界筋発。EDAベンダー、Cadence Design Systemsが、9月にNanjing(南京), Chinaの新しい子会社を動かし始める予定、現地でのIPサービス供給に専心、他社からの新たな出資を除外しない旨。

新分野、新市場の活発な展開に伴っていろいろな切り口の業界模様が大きな変貌を遂げているが、ハイテク関連の国際会議、展示会のイベントでも大幅な移行を迫られる現状があらわされている。日々次々目に入るイベント情報であるが、IoT、AI、AR/VRなどのキーワードがどこでも盛り込まれる感じ方である。

◇Big Shifts In Tech Conferences-New technologies and trends have created an explosion of shows; some attempt to go broad, others narrow and deep, with plenty of confusion all around.-The changing face of chip industry conferences (8月16日付け Semiconductor Engineering)
→甚だしい数の技術conferencesが、各機関にそれぞれのイベント差別化を難しくしている旨。半導体業界内では、いくつかの分野を横断している新市場がイベントを1つのテーマのもとでのグループ分けを一層難しくしている旨。

スマートフォン市場も中国で地元勢が躍進、世界首位のサムスン電子が、新基軸の展開そして中国での生産停止の検討と大きな潮目の変化を迎えている。

◇サムスン電子 世界初の折りたたみスマホへ意欲 (8月13日付け 韓国・聯合ニュース)
→韓国・サムスン電子のITモバイル(IM)部門トップ、高東真(コ・ドンジン)社長が米ニューヨークでこのほど記者懇談会を開き、世界初となる折りたたみ(foldable)式スマートフォン発売に意欲を示した旨。同氏は「世界初というよりは、消費者に本当に好まれ受け入れられる『革新』に集中している」としながらも、「フォルダブルフォンだけは『初』を奪われたくない」と語った旨。世界の端末メーカー大手がこぞって折りたたみ式スマホを準備する中、中国の華為技術(ファーウェイ)が世界初の発売を公言したことに対し、このような反応を示した旨。

◇スマホ中国生産、停止検討、韓国紙報道、サムスン、販売減で (8月14日付け 日経)
→韓国サムスン電子が中国でスマートフォンの生産停止を検討していることが分かった旨。13日付の韓国紙・電子新聞が報じた旨。早ければ年内に生産をやめる可能性がある旨。サムスンは中国でスマホの販売が大幅に落ち込み、直近の市場シェアはゼロ%台に低下したとみられ、スマホ市場の成長鈍化を受け、生産網の見直しを迫られる可能性がでてきた旨。

まだ続いていく潮流の変動に注目していくことになるが、常にところでと気になってくる現下のメモリ半導体価格である。最新の動きが以下の通り、これも潮目の変化間近と言われ続ける中での注目となる。

◇DRAM prices to weaken in 4Q18, says DRAMeXchange (8月17日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。DRAMサプライヤが8月半ば以降第四四半期に向けた契約価格についてclientsとの交渉に入っているが、9四半期連続の伸びの後弱含みの見込みの旨。"需要の伸びがかなり抑えられながらの供給増大"による流れであり、第四四半期の平均DRAM契約価格は前四半期比1-3%低下する見込みの旨。

◇NAND flash market remains in oversupply-NAND flash prices fall due to oversupply in Q2 (8月17日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2018年第二四半期のグローバルNANDフラッシュ市場は、売上げは前四半期比3.5%増であったが、依然供給過剰の旨。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連の動き】

米国が中国メーカーの技術使用を禁じる一方で、中国ではブレーキがいろいろかかり政府の統制が強まる事態が以下の通り見られている。

◇New defense bill bans the U.S. government from using Huawei and ZTE tech-Government agencies banned from using Huawei, ZTE tech (8月13日付け TechCrunch)
→Defense Authorization Actのもと、米国政府機関は、HuaweiおよびZTEなどある中国ハイテクメーカーからの技術の使用が禁じられる旨。また、各機関は該新指針のもと技術を置き換えなければならない各社に向けて資金の割り当てを担う旨。

◇中国、消費・投資ブレーキ、7月、債務削減・貿易戦争が影 (8月15日付け 日経)
→中国の消費と投資の低迷が続いている旨。14日発表の7月の小売売上高(社会消費品小売総額)、固定資産投資はいずれも6月から伸び率が縮小、政府が進めてきた過剰債務削減が重くのしかかる旨。7月から本格化した米国との貿易戦争が生産に波及する兆しもある旨。習近平指導部は景気対策の取りまとめを急ぐが、その場しのぎで改革を先送りする恐れが拭えない旨。7月の小売売上高は前年同月比8.8%増と6月から0.2ポイント減速。
業界団体がまとめた小売り大手50社の7月の売上高は3.9%の減少だった旨。

◇ゲーム業界、中国ショック、共産党が統制強める (8月16日付け 日経 電子版)
→「中国ショック」がゲーム業界を揺さぶっている旨。ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)の人気オンラインゲームシリーズ「モンスターハンター:ワールド(モンハン)」が当局の指示により発売5日で配信停止となった旨。さらに3月以降に認可を申請した新作ゲームの審査はすべて凍結されている旨。背景には中国共産党の意向があるとされ、ゲーム関連銘柄の株価は軒並み下落している旨。

追加関税の発動を目前に、次官級での米中貿易協議がやっと再開されようとしている。

◇米中貿易協議再開へ、中国商務次官、8月下旬に訪米 (8月16日付け 日経 電子版)
→中国商務省は16日、王受文商務次官が8月下旬に訪米し、貿易摩擦を巡ってマルパス米財務次官(国際問題担当)と事務レベルで協議すると公表、米中の公式協議は6月初旬に北京で開いて以降、途絶えている旨。両国の溝は埋まっておらず、閣僚級協議の再開につながるかどうかは不透明の旨。
商務省の発表によると、米国からの要請に応じた旨。王氏は商務省で貿易交渉を担当している旨。米中貿易協議では習近平国家主席の側近である劉鶴副首相が中国側代表団を率い、王氏は劉氏の下で交渉実務を取り仕切ってきた旨。

◇貿易摩擦めぐる米中次官級協議、22日から、米紙報道 (8月17日付け 日経 電子版)
→米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は16日、米国と中国の貿易摩擦を巡る事務レベルの協議が22〜23日に開かれると報じた旨。米中が互いに追加関税を発動する予定の23日を目前に、膠着していた公式対話を再開する旨。閣僚ではなく次官級の協議であり、目立った進展につながるかどうかは不透明な旨。

関税措置で米国経済にどれだけ負担がかかるか、ある品目についての試算が行われている。

◇CTA study: China tariffs will cost the U.S. economy up to $2.4B annually (8月17日付け ELECTROIQ)
→Consumer Technology Association(CTA)による最新委託研究。Trump政権が検討する中国のprinted circuit組み立て品およびconnected機器への関税賦課で、10%および25%関税でそれぞれ年間$520.8 millionおよび$2.4 billionの経済コストとなる旨。

【AI関連】

AI半導体の取り組みとして、インドのstartupの新しいアーキテクチャーでの開発である。

◇Startup AI Chip Passes Road Test-X86 vet revamps ISA for machine learning-AlphaICs beats Volta in Visteon race-Programming a whole new ISA-Startup develops an AI chip with a new architecture (8月13日付け EE Times)
→1)startup、AlphaICs(Bangalore)が、自動車、ロボットおよびdrones用の13-W machine-learning acceleratorを6月前にサンプル配布、画像認識でNvidia GPUsに楽勝の旨。Visteonは、該デバイスのFPGA版のテスト結果に基づいて、今後の車載システムでの該半導体使用を検討している旨。
 2)startup、AlphaICs(Bangalore, India)が、自動車、dronesおよびroboticsで用いるmachine-learning acceleratorに向けて仕立てたinstruction set architectureを発案、deep learning, reinforcement learningおよび同様なtasksでのアプリを目指している旨。

電気自動車のTesla社は、社内でのAI半導体の開発を行っている。

◇Inside Tesla's Model 3 (8月13日付け EE Times)
→同社最新の電気自動車、Model 3の生産を続けているTesla社、この断固として型にはまらない自動車メーカーは、グラフィックスプロセッサの先を社内開発の"AI半導体"に移行してautopilotのような重要機能のアップグレードを図っている旨。

AIアーキテクチャーは、従来路線を脱皮して変わらなければならない、との大学教授の主張である。

◇AI Architectures Must Change-Using the Von Neumann architecture for artificial intelligence applications is inefficient. What will replace it?-AI needs to move beyond the Von Neumann architecture (8月13日付け Semiconductor Engineering)
→artificial intelligence(AI)技術は、その可能性にこたえるために従来のVon Neumann半導体アーキテクチャーに関わらない何かを必要としている旨。「processing in memoryを取り入れた成熟したシリコンが手に入らないということで、Von Neumannアーキテクチャーを用いるAI 1.0が依然ある。」と、台湾・National Tsing Hua University、電気工学科教授、Meng-Fan (Marvin) Chang氏。

IntelのAI startup買収、そして韓国・SK TelecomのXilinx FPGAsを用いるAI加速化である。

◇Intel buys deep-learning startup Vertex.AI to join its Movidius unit-Intel acquires deep-learning specialist Vertex.AI (8月16日付け TechCrunch)
→Intelが、"どのプラットフォームにも向けたdeep learning"の開発に重点化するstartup、Vertex.AI(Seattle)を買収、artificial intelligence(AI)への取り組みを拡げている旨。

◇SK Telecom deploys Xilinx FPGAs for AI acceleration-SK Telecom turns to Xilinx FPGAs for data center AI acceleration (8月16日付け New Electronics)
→SK Telecomが、自動音声認識応用に向けたartificial intelligence(AI)加速化にXilinx field-programmable gate arrays(FPGAs)を選択、該使用で性能が最大5倍改善の一方、16倍優れたper-watt性能が得られる旨。

【IoTへの取り組み】

IoT構築には広範な知識・ノウハウの習得が必要、たやすくはないとの戒めである。

◇Overwhelmed by IoT Designs? (8月14日付け EE Times/Blog)
→IoT構築はたやすいことではない旨。embeddedソフトウェアからハードウェア技術の深い知識、そしてディジタルoperationsのより広いノウハウまですべて習得するたくさんのものが、コーヒーmachinesを接続する前に控えている旨。

BluetoothおよびセキュリティIoT機能に向けた電力消費のbenchmarksが、次の通り備えられてきている。

◇IoT Gets Security, BLE Benchmarks-EEMBC sets IoT benchmarks for Bluetooth, security (8月16日付け EE Times)
→Embedded Microprocessor Benchmark Consortium(EEMBC)が、Bluetoothおよびセキュリティinternet of things(IoT)機能に向けた電力消費のbenchmarksを置いている旨。該SecureMarkは11の機能が消費したjoulesおよび要したmicrosecondsに基づいて1,000から100,000のスコアを計算する一方、Bluetooth benchmarkは約1ヶ月で発表される旨。

【注目の四半期業績】

まず台湾のTSMCについて。生産拠点でのcomputerウイルス汚染のインパクトについて、以下の通り説明されている。今年の販売高は10%に近い増加という従来目標はそのままである。

◇TSMC posts increased July revenues-TSMC reports July revenues up 3.9% from a year ago (8月13日付け DIGITIMES)
→TSMCの2018年7月の連結売上げがNT$74.37 billion($2.41 million)、前月比5.6%増、前年同月比3.9%増。2018年1-7月累計では前年同期比約7%増のNT$555.73 billion。
TSMCは、8月始めの同社生産のcomputerウイルス汚染部分が2018年第三四半期売上げの最大2%にインパクトを与えるとしている旨。最近の投資家会合にて同社は、第三四半期売上げを$8.45 billion〜$8.55 billionと見ている旨。TSMCは、第三四半期での出荷遅れは第四四半期には回復し、2018年全体では高い一桁の売上げの伸びの予測を維持している旨。

もう1社、Nvidiaであるが、業績自体は予想を上回ったものの仮想通貨の落ち込みが一抹の不安要素として払拭しきれない状況が見られている。

◇Nvidia forecast lags Wall Street as crypto demand evaporates (8月17日付け Reuters)

◇エヌビディア株下落、仮想通貨向けGPU売り上げ「ゼロ」の衝撃 (8月17日付け 日経 電子版)
→画像処理半導体(GPU)大手、米エヌビディアが16日に発表した2018年5〜7月期決算は市場予想を上回ったが、慎重な業績見通しを受けて株価は時間外取引で下げた旨。売上高が前年同期比40%増の$3.123 billion、純利益が同89%増の$1.11billion。
仮想通貨向けGPUの需要が後退したため今期中の収益貢献を見込まず、売上高の見通しが市場予想を下回った旨。仮想通貨ブームがなくても高成長を続けられると証明できるまでは株価の高値更新は難しい様相の旨。

【Qualcomm対台湾の決着】

Qualcommが、特許licensing訴訟について台湾の当局と和解合意が得られたが、Qualcommが支払う罰金が当初提案を桁違いに下回っている。

◇Qualcomm settles with Taiwan antitrust regulator for T$2.73 bln-Qualcomm will pay $89M to settle Taiwan's antitrust case (8月10日付け Reuters)
→Qualcommが、台湾のFair Trade Commissionと特許licensingについて決着合意、$89 millionの罰金支払いで同commissionが昨年提案した$778 millionのpenaltyを大きく下回る旨。

◇クアルコム、台湾独禁当局と和解、見返り投資約束 (8月11日付け 日経)
→台湾の公平交易委員会(公正取引委員会に相当)は10日、米半導体大手、クアルコムと、独占禁止法違反を巡る訴訟での和解で合意したと発表、台湾側は当初、234億台湾ドル(約840億円)とした課徴金を大幅に減額。見返りとしてクアルコムは通信向け半導体の研究開発拠点の建設など、台湾で7億ドル(約770億円)規模の投資を行うと約束した旨。

台湾での見返り投資が約束された模様であるが、1つとして以下が挙げられている。

◇Qualcomm to set up engineering center in Taiwan by year-end 2019-Report: Qualcomm plots engineering center in Taiwan (8月13日付け DIGITIMES)
→Qualcommが、operationalおよび製造技術拠点を来年末までに台湾に設ける計画の旨。この動きは、台湾・Fair Trade Commission(FTC)と同社の間のantitrust決着合意の一環といわれている旨。


≪グローバル雑学王−528≫

企業規模トップ10、国際特許出願およびR&D費用支出と、中国勢がトップランクに躍り出ているが、中国政府当局が規制や保護を行っているためで実態が伴わないと、

『「米中関係」が決める5年後の日本経済新聞・ニュースが報じない貿易摩擦の背景とリスクシナリオ』
 (渡邉 哲也 著:PHPビジネス新書 393) …2018年5月11日 第1版第1刷発行

より、著者の疑念が色濃く表わされている中国経済の実態を読み解く後半である。人脈がすべての中国社会、上海の活気がいまでは低下しているとか、一般でも報道されているように習近平国家主席の権限が皇帝並みに強化されて李克強首相のグローバル路線の経済政策が通らなくなってきているなど、具体的な実態を知って今後の推移に改めて注目である。この実態すらもいつどうなるかがあり、それぞれの国・地域の根深い情勢の刻々の変化に目が離せないところである。


第3章 中国経済の実態を読み解く ―――後半

Q50:アリババ、テンセント、バイドゥはなぜ急成長を遂げたか?
・企業規模で世界でもトップ10に入る存在
 →金融系のアリババ(阿里巴巴集団:Alibaba Group Holding Limited)
  ネット関連サービスのテンセント(騰訊:Tencent)
  ネット関連サービスのバイドゥ(百度:Baidu)
 →あくまでバブル経済の一過性のものにすぎず、過大な評価をすべきではない
・アリババは、いわばインターネット興行師ともいうべき存在
 →中国当局がさまざまな形で関税障壁を設けて、海外からの企業進出を防いだ
・2017年8月、米自由アジア放送(RFA)のニュース、「アップルに続いてアマゾンも中国に屈服した」
 →米アマゾンの中国現地パートナー、北京光環新網科技(Sinnet)が、中国当局のインターネット接続規制を回避できる仮想プライベートネットワーク(VPN)の使用をストップ
 →一方で、アリババやテンセントは日本やアメリカに進出できる
  →一民間企業の国内での活動に統治行為論が持ち出される可能性はゼロ
  …「自由な貿易」ではなくて「自由で公平な貿易」であることが大事

Q51:特許の国際出願件数世界一の理由は?
・2017年の特許の国際出願件数、中国が日本を抜いて初めて2位に
 …2018年3月21日、世界知的所有権機関(WIPO)発
 →1位:アメリカ 5万6624件
  2位:中国   4万8882件 前年比13%増
  3位:日本   4万8208件 前年比 7%増
 →先々、米中2強から中国1強の可能性も
・中国の実態は、国の後押しによる官製イノベーターが増えていると見るべき
 →一方で、中国における模倣被害は相変わらず
 →相変わらず多い「パクリ」
・トランプ大統領が中国からの知的侵害に対して制裁を発動したのは、こういった背景
 →「パクって儲けた分を、開発者の援助に充てている」という構図

Q52:中国は研究開発(R&D)費支出世界一になれる?
・中国当局の確信:中国は2019年に研究開発(R&D)費支出が世界一に
 →本当に見合うだけの研究開発ができるかどうかは疑問
 →基礎的な開発技術の土台がないに等しいので、かなり難しい、と(著者は)見る
・中国のスーパーコンピュータがなぜ速いか
 →組み立てるだけで完成するいまのCPU
 →いわゆる並列計算型、ビットコインの採掘と一緒の基本原理
  …採掘(mining):二重払いや不正を防ぐため、過去の取引履歴のデータの整合性を取りながら取引の承認・確認作業をネットワーク上で行うこと
  →グラフィックボードなどを横のつながりで連結、ひたすら計算速度を上げていくというパターン

Q53:なぜ深センにシリコンバレーから技術者が大量流入するのか?
・「中国のシリコンバレー」、広東省の深セン
 →最近ではシリコンバレーからかなりの数の中国人とインド人が流入とのこと
 →中国当局が、規制緩和や税金を安くして会社ごと呼び寄せているという側面はあるかも
・深センのお隣の香港でも中国のハイテク企業を積極的に誘致
 →さまざまな規制が掛かっている中国本土
 →中国本土に行きたがらない旧西側諸国の人たち

Q54:広がる省間の格差の実態は?
・中国で広がっている省間の格差
 →中国の政治は人知主義、人脈がすべて
  …王岐山国家副主席がいるから海南航空集団に政府系の仕事が入る
・中国で上海は最も早く発展、しかし、上海閥の弱体化に伴い不動産価格も一早く上限に
 →いまの上海に活気が感じられない背景

Q55:一人っ子政策と破綻必至の社会保障は今後どうなる?
・2012年から2013年に中国は、人口ボーナスから人口オーナスに切り替わり
 …人口ボーナス(demographic bonus):総人口に占める働く人の割合が上昇し、経済成長が促進される
 …人口オーナス(onus):人口構成の変化が経済にとってマイナスに作用する状態
 →若年層の低賃金労働者が多い社会から、中高齢の高賃金労働者が多い社会に
・1979年に始まった一人っ子政策の影響で、いびつな人口構造に
 →男児が多いという状況下で今後、人口は急減へ
・今後も人口オーナスの状態が続けば、日本以上に一人の子どもが背負わなくてはいけない大人の数が多く
 →多くの中国人が自分のことは自分で養わなくてはならなくなる
 →多くの人が高利回りの商品を求めていった
  →理財商品の売り買い
  →個人間のお金の貸し借りをネットで仲介する「Peer to Peer(P2P)金融」の勃興
・投資用の資金でダブついた資金が投機的投資に回り、バブルをさらに膨れ上がらせたというのが現在の中国の姿
・私有財産を禁止するという論文が2018年1月、中国政府系の報道機関、新聞紙の一部に
 →紙面を読んだ中国人はおそらく混乱したのでは

■共産党主導の経済政策が世界に与えるインパクト

Q56:習近平と李克強の経済政策の違いは?
・習近平国家主席は、端的にいえばマルキスト、対して李克強首相はグローバリスト
 →2018年の全人代、王岐山国家副主席が誕生、李首相はナンバー2の座から滑り落ち
・習主席の中国国有企業改革は、中国共産党が核となり民間企業を国有化
 →李首相はすべての国有企業を取りあえず上場、民間に開放することによって民営化していく国営企業改革の立場
  →李首相の改革は、外国企業がその中国企業の株式を購入できる、という点に他国のメリット
 →習主席の改革と相反、李首相は何の影響力も行使できない立場へと

Q57:「一帯一路」構想は今後どうなる?
・習近平国家主席肝煎り、「一帯一路」構想
 →中国が提唱する中国と欧州を結ぶ巨大な広域経済圏構想
 …「シルクロード経済ベルト(一帯)」
 …「21世紀の海上シルクロード(一路)」→「真珠の首飾り」戦略:インド包囲

Q58:中国のライバル・インドはどう動くか?
・早くから安倍首相は対中カードとして、インドの存在を意識、同時に中国を凌駕する巨大マーケットとして期待
 →一帯一路構想に対抗する戦略として、「自由と繁栄の弧」とその延長線上にある「セキュリティ・ダイヤモンド構想」がどういった動きを見せるか
 →「セキュリティ・ダイヤモンド構想」…日本とハワイ(アメリカ)、オーストラリア、インドの4ヶ所をひし形に結ぶ

[SUMMARY OF CHAPTER ――5年後を予測するヒント]
・現在、多くの中国企業が金詰りで苦しんでいる。お金の流れが変わり始めた
・バブル経済崩壊が囁かれる半面、海外企業の参入を許さない中国政府による規制が強まっている
・習近平の一帯一路政策によってアジアの構図が転換しつつあるなか、経済成長を続けるインドが、日米と連携を強化

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