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メモリが引っ張る大幅更新の熱い市場、新分野の躍動:2017年半導体

新しい年、2018年を迎え、ちょうど週の区切りとなったことで2017年の半導体業界をここで振り返ってみる。販売高が2016年の後半から盛り返して同年10月から毎月$30 billionを越え、2017年3月から最新データの10月まで前月比増が続いている。2017年販売高は約20%増、$400 billionを越える勢いが見込まれているが、世界の政治経済の激動のなか、米国および中国が牽引する実態が半導体市場データにくっきりあらわれている。データセンター、人工知能(AI)、自動運転はじめ新分野、新技術の躍動が、これまでのモバイル機器、PCs市場に熱い相乗効果を生み出している2017年でもある。

≪2017年の動きを振り返る≫

2017年の半導体業界について本欄のタイトルを分類する形で振り返って以下示しており、次の6つに分けて数字は項目数である。

【世界半導体販売高】      12件
【メモリが引っ張る熱い市況】  12件
【激動の世界の波紋】       5件
【各社取り巻く動きから】    11件
【新分野・新技術の躍動】    10件
【中国半導体業界の構築】     2件


【世界半導体販売高】 12件

米国Semiconductor Industry Association(SIA)からの定例の月次世界半導体販売高の発表を追って、以下のこの1年各月の見方となっている。史上最高、記録づくめといった表現が止まない形の2017年である。

11月の世界半導体販売高が前年比7%増;米中半導体摩擦が高まる様相」 (1月)
2016年の世界半導体販売高、1.1%増の$339 billion、史上最高更新」 (2月)
1月として史上最高の半導体販売高、6年以上ぶりの前年比伸び」 (3月)
5ヶ月連続$30 billion台、3ヶ月連続二桁%増、世界半導体販売高」 (4月)
半年連続$30 billion台、メモリが牽引、3月の世界半導体販売高」 (5月)
当面目が離せない世界半導体販売高、7ヶ月連続$30 billion台」 (6月)
世界半導体販売高が8ヶ月連続$30 billion越え、Samsungの最高業績」 (7月)
9ヶ月連続の$30 billion超え、四半期および月次販売高が最高に」 (8月)
12ヶ月連続前年比増、10ヶ月連続$30 billion超、続く増勢基調」 (9月)
最高潮の半導体販売高、8月単月最高、11ヶ月連続$30 billion超」 (10月)
記録づくめ、史上最高の四半期販売高、12ヶ月連続$30 billion越え」 (11月)
10月の世界販売高、月次史上最高、1-10月累計で昨年全体の97%に」 (12月)

ここのところSIAからの発表ごとに掲載している2016年からの販売高の推移の最新版である。まもなく2017年11月データが発表予定であるが、年間で$400 billionを越えるかどうか、大台のかくも早い更新が成るかに注目するところである。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
2016年 1月
$26.88 B
-5.8 %
-2.7 %
2016年 2月
$26.02 B
-6.2 %
-3.2 %
2016年 3月
$26.09 B
-5.8 %
0.3 %
2016年 4月
$25.84 B
-6.2 %
-1.0 %
2016年 5月
$25.95 B
-7.7 %
0.4 %
2016年 6月
$26.36 B
-5.8 %
1.1 %
2016年 7月
$27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月
$28.03 B
0.5 %
3.5 %
2016年 9月
$29.43 B
3.6 %
4.2 %
2016年10月
$30.45 B
5.1 %
3.4 %
$272.1 B
2016年11月
$31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月
$31.01 B
12.3 %
0.0 %
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2017年 1月
$30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月
$30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月
$30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月
$31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月
$31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月
$32.64 B
23.7 %
2.0 %
2017年 7月
$33.65 B
24.0 %
3.1 %
2017年 8月
$34.96 B
23.9 %
4.0 %
2017年 9月
$35.95 B
22.2 %
2.8 %
2017年10月
$37.09 B
21.9 %
3.2 %
$329.4 B
…前年比21.1%増

冒頭で米国および中国が牽引する実態と触れているが、SIAの2017年10月データから地域別の販売高比率を示すと次の通りである。

 Americas        23.0%
 Europe          9.1%
 Japan          8.6%
 China          31.4%
 Asia Pacific/All Other   27.9%

半導体市場での我が国の現時点の位置づけに改めて感じ入るところである。


【メモリが引っ張る熱い市況】 12件

メモリ、しかもその高値が大方押し上げる半導体販売高の状況を、頻繁に取り上げざるを得ない2017年であり、以下の通りである。

熱気高まる第一四半期各社業況、メモリが牽引、新市場への期待」 (5月)
新分野&メモリが引っ張る市場模様:Nvidia関連および1Qランキング」 (5月)
$400 billionの大台を一気に超える読みのなか、業界各分野への波紋」 (7月)
メモリ高値が押し上げる$400 billion大台の分析と今後の読み&備え」 (7月)
M&Aの嵐が過ぎ去って、メモリが引っ張る熱い波乱&活況の半導体市場」 (7月)
メモリ市場最高潮の中でのFlash Memory Summit関連の動き」 (8月)
盛り返しから1年、半導体販売高活況、一層敏感になる今後の動き」 (8月)
半導体も大きく引っ張る好調な世界経済、大型M&Aの復調、IPOsの復活」 (11月)
燃え盛るメモリ半導体市場、一層の飛躍を図る韓国はじめ活況の動き」 (11月)
半導体過熱の渦中、メモリ急伸のランキング予想、先行きへの警戒感」 (11月)
半導体販売高予測$400 billion台が固まる中、M&Aの注目すべき動き」 (12月)
年中鳴り止まぬメモリ高値"狂騒曲"、関連各社&市場の乗ってる動き」 (12月)


【激動の世界の波紋】 5件

米国トランプ政権の登場が、半導体の世界でもインパクトを与えている。アジア半導体業界でもこの新年、世代交代が見られていく。

激動を控えて迎えた2017年、政治&経済、新市場・新技術の展開如何?」 (1月)
米国の政権交代間近、米国、中国および台湾における業界の動き&反応」 (1月)
米国の政権交代のタイミング、半導体業界であい続く落ち着かない動き」 (1月)
トランプ大統領に対する反発と備え、半導体業界から見る両面」 (8月)
アジア半導体業界で続く去就模様、活況&激動の渦中での世代交代」 (10月)

【各社取り巻く動きから】 11件

「東芝メモリ」の売却を巡る度重なる局面の展開に注目させられたのをはじめ、市場特性の変化、新分野の台頭の目まぐるしい速さに対する各社の動きが目立っている。アップルはじめ半導体設計の自己完結を図る動きが、今後に向けた戦略的なカギを握る様相となっている。

Qualcommを取り巻く状況に見るモバイル機器市場の2年前との時代変化」 (1月)
半導体業界の脈打つ動きから…東芝分社、米国新政権、新技術分岐」 (2月)
SamsungとTSMCの最先端微細化凌ぎ合い & 関連する市場の動き」 (3月)
それぞれの先行き、インテルの10-nmとSIAのリサーチビジョン」 (4月)
半導体設計の自己完結を図る動きが急:アップルおよび中国」 (4月)
インテルのIDF中止など、市場構造激変に絡む各社相次ぐ動き」 (4月)
G'foundriesの7-nm FinFET発表とファウンドリー市場の競合熱気」 (6月)
「東芝メモリ」の売却、日米韓連合との交渉決定、米韓台の反応を追う」 (6月)
「iPhone X」発表に呼応する、7/10-nmプロセス対応の打ち上げ」 (9月)
次に備えるインテル、グーグル、そして両社連携、それぞれの戦略」 (9月)
改めて"グローバルな協調と競争"の重み、東芝−WD:SEMICON JAPAN」 (12月)


【新分野・新技術の躍動】 10件

IoT、wearableからいつのまにかAI、自動運転が主役になっているようなキーワードの展開を感じさせる新分野・新技術の展開の慌ただしさが、以下のピックアップにもあらわれていると思っている。激動と早さへの対応性が求められる今後をうかがわせている。

混乱の喧噪の一方、IoT、AIはじめ新分野・新技術の取り組み進捗」 (2月)
熱い注目2件:IoTおよび5GのMWC前哨戦;東芝分社への各社の動き」 (2月)
激動の煽りの中、MWCでの華やかな打ち上げ、一方の舞台裏事情」 (3月)
新分野へのうねり…インテルのMobileye買収:Embedded World」 (3月)
"AI-first"戦略はじめintelligentアプリ開発に向けた熱いアプローチ」 (5月)
PC、モバイルから新分野対応と時代を画すComputex Taipeiでの動き」 (6月)
本格始動に向かう"胎動"、AIの取り組みと中国半導体製造関連」 (7月)
熱気高まる一途、人工知能(AI)の半導体関連の取り組み」 (9月)
根本的な変化をもたらす脈動、量子コンピュータ、自動運転関連」 (10月)
AI(人工知能)に向けた各社&世界的連携の取り組みの一層の高まり」 (10月)


【中国半導体業界の構築】 2件

件数は少なかったが、目が離せない中国市場であり、国家計画に掲げる半導体業界自立化への道程を定期的に見据えていく必要がある。なにしろ上記の市場の販売高の大きさであり、設計・生産対応の推移に注目している。

中国市場に見る"グローバルな協調と競争":FD-SOI、DRAMはじめ」 (5月)
中国市場動向アップデート…新技術・新分野;M&A;新工場;業界関連」 (10月)


≪市場実態PickUp≫

【それぞれ2018年に向けて】

新分野、新技術に向けて来る2018年、embedded技術の新たな取り組みが重みを増していく見方である。

◇Get Ready for a Wealth of Embedded Design Hardware and Software Options for 2018-Senior Technology Editor Bill Wong examines the future of embedded development with his annual forecast. -Analysis: Embedded hardware and software uses in 2018 (12月22日付け Electronic Design)
→internet of things(IoT), machine learning, persistentデータストレージおよびmesh networkingが、来る新年、新たなやり方でembedded技術に頼る旨。IntelがOptane dual-inline memory module(DIMM)を2018年に投入、computerメモリconfigurationsに大きな変化がもたらされる、と予期するObjective AnalysisのJim Handy氏。

アップル対応はじめ先陣争いで引き続き覇を競い合うファウンドリー業界の2018年である。

◇Foundry Challenges in 2018-Growth will remain steady, but it's getting harder and more expensive to move to the next nodes.-Analysis: What the foundry market faces in 2018 (12月27日付け Semiconductor Engineering)
→GlobalFoundries, Intel, Samsung ElectronicsおよびTSMCが、2018年の間に10-nmおよび7-nmプロセスnodesへの移行に引き続き直面する一方、複数のSiファウンドリーが新しい22-nmプロセスを育んでいく旨。「成長driversとしてAI, 車載およびセンサなどがある。」と、Semico ResearchのJoanne Itow氏。

LTEから5G前倒しへ、米国通信業界の波乱に富む2018年の見方である。

◇米通信業界、5G前哨戦に突入、周波数獲得へ奔走 (12月28日付け 日経 電子版)
→ドナルド・トランプ米大統領の誕生は、2017年の米放送通信業界にも大きな影響を与えた旨。モバイル・ブロードバンド業界では、価格競争に明け暮れる高速通信規格「LTE」を嫌い、大手携帯電話事業者を中心に次世代通信規格「5G(第5世代)」ブロードバンドへの移行が加速。2018年には、固定ブロードバンドを中心に5Gサービスが米国では始まる旨。ソフトバンクが仕掛けたスプリントとTモバイルUSの合併交渉が決裂する一方、米AT&Tによるタイム・ワーナー買収に米国政府が反対するなど、業界再編の動きも活発化した旨。

今年の落ち込みを来る新年で回復を、と台湾・MediaTekの目論見である。

◇MediaTek looks to regain market share-MediaTek aims at regaining market share in 2018 (12月28日付け The Taipei Times (Taiwan))
→Qualcommなどと激しく競合しているMediaTekは今年、モバイルプロセッサの市場シェアを落としているが、来年はmidrangeスマートフォン向けプロセッサ、Helio Pラインを擁してモバイルmarketplaceでの立ち位置を戻す計画の旨。

【iPhonesでの電池の問題】

「iPhone」新機種買い換え促進に向けて旧機種の速度を意図的に抑えたとして、アップルへの集団訴訟に関わる動きが次の通り見られている。今年始めから電池の問題として焦点が当てられた経緯となっている。

◇Investigating the iPhone Battery Slowdown -Geekbench founder saw “something going on” (12月27日付け EE Times)
→Apple iPhonesでの電池の問題から8件の訴訟が生じており、集団訴訟が求められている旨。よく知られたbenchmarkプログラム、Geekbenchを開発したPrimate Labsのfounder、John Poole氏が、今年始めこの問題を照らしている旨。

◇アップル、iPhone旧機種の速度低下で謝罪、電池を安値で交換 (12月29日付け 日経 電子版)
→スマートフォン「iPhone」の基本ソフト(OS)更新にあたり、旧機種の動作速度を意図的に抑えたとして集団訴訟に直面しているアップルは28日、旧機種の電池交換価格を大幅に下げると発表、iPhone6以降の電池交換価格は79ドル(約8900円)から29ドルへ引き下げる旨。通告なしで意図的に性能を下げられたとの消費者の不満に対応する旨。

【設計人材争奪】

グーグルによるアップルのiPhone半導体設計エンジニアの人材獲得が以下の通りであり、引き続く動きとなっている。グーグルのモバイルプロセッサの打ち上げが近いという業界の観測を一層賑やかにしている。

◇Google poaches another Apple chip engineer (12月23日付け The Business Journals/San Jose, Calif.)

◇Google Hires Apple Chip Engineer John Bruno, Likely to Build Its Own Custom SoC: Report-Apple chip designer hired by Google for mobile push (12月25日付け NDTV (India))
→ここ5年間iPhone ICsに取り組んだAppleの半導体エンジニア、John Bruno氏がGoogleに渡っており、Googleは今年AppleおよびQualcommから半導体設計者を採用してきている旨。Tirias ResearchのprincipalアナリストでfounderのJim McGregor氏は、Googleのモバイルプロセッサがたぶんsystem-on-a-chip(SoC)デバイスとしてまもなく打ち上げられる可能性、としている旨。

【NANDフラッシュ価格】

メモリの高値増勢が鳴り止まないなか、NANDフラッシュについて、各社の3D NAND化が進んで大容量品が値を下げ、低容量品が品薄横ばいの状況となっている。引き続き値動き、市場の反応に随時注目である。

◇NAND型フラッシュ、大容量品、量産進み1割安、低容量品は品薄で横ばい (12月26日付け 日経)
→NAND型フラッシュメモリの大容量品が値下がりに転じた旨。大口価格は2カ月で1割強下落。サーバーやスマートフォン向けの需要が拡大するなか、容量アップに適した3次元品の量産が進み品薄感が和らいでいる旨。
従来の低容量品は生産ラインが3次元NAND向けに切り替えられ供給が細り、同値圏が続いている旨。3次元NANDのうち米マイクロン・テクノロジーなどが手掛けるTLC(トリプル・レベル・セル)の384ギガビット品は、12月の大口価格が1個10.5ドル前後、768ギガビット品は1個21ドル前後。2カ月で1割強下がった旨。不足感から夏場まで上昇が続いたが、11月以降の下落で年初水準まで戻った旨。

一方、NANDフラッシュの今年の値上がりぶりには中国政府も神経を尖らせている模様であり、主要サプライヤを相手取った価格操作の告発が検討されている。

◇China ponders price-fixing moves against NAND producers-China may charge NAND suppliers with price fixing (12月27日付け Electronics Weekly (UK))
→China Daily紙発。TrendForceによると、モバイル用NANDフラッシュメモリ半導体の価格が今年32%以上上昇、中国・National Development and Reform CommissionのPricing Supervision Departmentが、支配しているサプライヤ、Samsung Electronics, 東芝/Western Digital, SK HynixおよびMicron Technology/Intelを相手取って価格操作の告発を検討している旨。

【車載関連】

Qualcommが、Californiaでの同社チップセット搭載自動運転の実車テストの認可を受けている。

◇Qualcomm can start testing its self-driving tech in California-The company's autonomous driving chipset gives cars the power to communicate with each other. -Qualcomm gets OK to test self-driving car tech (12月24日付け Engadget)
→Qualcommが、同社の自動運転車の1つについてCaliforniaでのテストに青信号を得ている旨。Qualcommの車には、9150 C-V2Xチップセットが入っており、360-degree non-line-of-sight(NLOS:見通し外) awarenessおよび他のconnected vehiclesおよび交通信号など都市インフラとの通信対応が行なえる旨。

新年早々のConsumer Electronics Showにて、車の運転者が元気かどうか監視するカメラ-ベース監視システムが披露される運びである。

◇Using Facial Recognition to Monitor Driver's Vital Signs (12月28日付け EE Times)
→来るConsumer Electronics Show(2018年1月9-12日:Las Vegas, NV)にて、FZI Research Center for Information Technology(ドイツ)が、カメラ-ベースdriver state監視システムを披露、乗車の間の元気ある徴候を測るembeddedシステムおよびセンサ技術について最新リサーチのprototypeである旨。

GlobalFoundriesが、先端車載半導体に向けた技術プラットフォーム、AutoProを発表している。

◇Globalfoundries gearing up to tap lucrative automotive chip market-GlobalFoundries unveils automotive chip platform (12月28日付け DIGITIMES)
→GlobalFoundriesが、先端車載electronicsに入る半導体市場に対応するAutoPro技術プラットフォームを開発、Dresden, Germanyの同社Fab 1が、車載チップセット生産に現在充てられている旨。


≪グローバル雑学王−495≫

サンフランシスコ平和条約、日ソ国交回復交渉そして日米安保条約改定と第二次大戦後から1960年にかけて我が国が位置づけられた大きな動き、そしてキューバ危機を巡るアメリカの緊迫した経緯について、

『国際法で読み解く戦後史の真実 −文明の近代、野蛮な現代』
 (倉山 満 著:PHP新書 1116) …2017年10月27日 第1版第1刷

より世界の大国に絡む歴史的出来事に国際法で読み解く目で迫っていく前半である。後半ではベトナム戦争そして文化大革命に焦点を当てている。今となってはその時々のパワーバランスで決まってしまったあくまで結果を受け止めるしかないが、著者の振り返る視点の先に注目させられている。


第4章 キューバ危機・ベトナム戦争・文化大革命 …前半

□スターリンを批判しつつ東欧の自由化運動は鎮圧
・1953年、アメリカでは大統領がトルーマンからアイゼンハワーに
 →ソ連ではスターリンが死去、後継のマレンコフは、朝鮮戦争の休戦を働きかけ、休戦協定が成立
・スターリンの死後3年、マレンコフの後にソ連の最高指導者となったフルシチョフ
 →突如としてスターリン批判を始めた
  →東欧の衛星国にも衝撃を与え、東ドイツでの自由化運動や、ハンガリー動乱を誘発
 →イスラエル建国に端を発したスエズ動乱(第二次中東戦争)では、いきなりアメリカと手を組んで、英仏を核の恫喝で黙らせた
 →東欧の衛星国の自由化を許すことはなく、軍を送って鎮圧

□サンフランシスコ平和条約は「片面講和」?
・1951年9月8日に結ばれたサンフランシスコ平和条約が、1952年4月28日に発効
 →日本の戦争がようやく終わった
  …宣戦布告で始まって講和条約発効で終わるのが戦争
・この講和条約交渉については、日本国内で「片面講和か全面講和か」という論争があった
 →「全面講和」…すべての国々と講和条約を結ぶべき
  「片面講和」…まずは西側を中心とした諸国と
 →しかし、これはおかしな話。「多数講和」と称するべき
・ソ連は、サンフランシスコ平和条約の調印を拒否
 →近年、ソ連崩壊後に流出した極秘文書から、ソ連は最初から調印しないと決めていたことが明らかに
 →ソ連が目論んだのは中立などではなく、「日本は、いつでも侵略できる更地になれ」ということ
  →日本以上にアメリカが絶対にのめない内容

□日ソ国交回復交渉と売国奴
・スエズ動乱の前年の1955年
 →日本では「55年体制」と呼ばれる自由民主党の長期政権が始まる年
 →鳩山一郎が首相の座につき、日ソ国交回復交渉に臨んだのが、ソ連のフルシチョフ
・日ソ双方ともに「両国は戦争状態のままである」という認識でいたことが重要
・1956年の日ソ交渉、北方領土問題で答えが出ず、交渉は難航
 →ソ連に入って交渉を進めたのは農林水産大臣の河野一郎
 →外交官出身の外務大臣、重光葵は親米派の吉田茂の路線を守り四島一括返還を譲らない一方、鳩山、河野は歯舞・色丹の二島で妥協してもよいとの考え
・アメリカは早い段階から、「二島で妥協することを決めたら、こちらも沖縄の領有権を要求する可能性がある」と示唆していた」

□安保条約改定、せめてなりたや満洲国
・1960年に岸信介政権下で、日米安保条約の改定が行われた
 →岸が考えていたのは、少しは対等な条約に近づけようということ
・日本は、いまもまだシアター(=場)のまま
 →国際社会の中で、世界一国際法を遵守し、世界の平和を守りたいのであれば、まず日本が小国でいいから、アクターに戻らなければ
 →しっかりとした「自力救済能力」を身につけつつ、せめて"きちんとアメリカの属国"ができなければ

□集団的自衛権について内閣法制局を糾す
・2015年8月19日参議院・我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会での質疑応答
・戦後レジームからの脱却どころか、拉致被害者の奪還すら心もとないのが安倍内閣
 →安倍さんよりマトモな政治家が見当たらないのも、日本政治の現状

□国際法で読み解くと「自衛隊」とは何なのか?
・「軍隊」と呼ぶには、2つの要件
 →1)有事法制が絶対にやってはいけないことだけを定めた禁止事項列挙型のネガティブリスト方式になっていること
   →日本の自衛隊は「許可事項列挙型=ポジティブリスト方式」
  2)自己完結型の組織であること
   …軍が必要と判断したときは政府の指示を待たずに動くことができる
・1995年1月17日の阪神・淡路大震災など
 →自衛隊は政府から命令を受ける存在、一行政組織の枠を超えてはいない
・国際法で認められている権利の行使
 →行使するかどうかの決断は、日本人の責任
 →軍隊を持ち、自分の国を守ることは、当然の権利だといっても構わない

□カストロとゲバラのキューバ革命
・自分の庭先である中南米には好き勝手を許していないアメリカ
 →現在に至るまで、民主党も共和党も関係なく、国是に
・アメリカの保護下に置かれたキューバ
 →1952年、アメリカの息がかかった軍人のバティスタがクーデターを起こし、独裁政権を立てた
 →反発して抵抗活動を始めたのが、フィデル・カストロとチェ・ゲバラの2人
 →1959年、キューバ革命が成立
 →1961年1月にアメリカとキューバは国交を断絶
・結果として、キューバ政府は共産主義国へ転じる態度を鮮明にし、さらにソ連へ接近

□キューバ危機はアメリカの大きなマイナス
・翌1962年、カストロはソ連と軍事協定を結び、ソ連から支援を受けるように
 →1つがソ連の核ミサイル
 →核戦争がありうる時代で起きたキューバ危機、解決までの2週間、全世界が恐怖に怯えた
・結局、ソ連はキューバから核ミサイルを引き上げることに同意して解決へ
 →アメリカ側は、トルコに配備していた核ミサイルの撤去に応じた
・当時のアメリカの軍事力は「21/2戦略」
 →欧州とアジアでのソ連との2正面の大戦争と、1/2の規模の地域紛争に同時に対応可
 →オバマ政権下で1/2までに激減
  …そのオバマ政権末期の2015年にキューバとの国交を回復

□グアンタナモでテロリストを拷問したアメリカの言い分
・9・11テロの後、捕虜にしたテロ容疑者を収容、キューバ領のグアンタナモ基地
 →ここでCIAが非人道的な拷問を行なったことが問題視に
・アメリカの言い分
 →理由1:戦時の捕虜ではなく、犯罪の容疑者であるからジュネーブ条約の適用外
 →理由2:グアンタナモはアメリカではないからアメリカの国内法の適用はない(治外法権)
・国際法と国内法の区別もつかないから、こういう言い訳も平気に

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