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記録づくめ、史上最高の四半期販売高、12ヶ月連続$30 billion越え

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米国・Semiconductor Industry Association(SIA)から月次の世界半導体販売高データが発表され、今回はこの9月、そして7-9月四半期、第三四半期についてあらわされている。メモリの高値が続き、そしてデータセンター、IoT、AI、自動運転など新分野の活発な展開が繰り広げられて、この9月販売高は$36.0 billionに達し、前月比2.8%増、前年同月比22.2%増、そして7-9月四半期では$107.9 billionに達し、前四半期比10.2%増、前年同期比22.2%増、と史上最高を更新する増勢が引き続いている。

≪9月の世界半導体販売高≫

米SIAからの発表内容が以下の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
〇史上最高の四半期販売高となったグローバル半導体業界−第三四半期の世界販売高が前四半期比10.2%増;9月販売高が、前月比2.8%増、前年同月比22.2%増 …10月30日付け SIA/NEWS

半導体製造、設計および研究の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2017年第三四半期の世界半導体販売高が$107.9 billionに達し、該業界の史上最高の四半期販売高となり、前四半期比10.2%増、と発表した。2017年9月の販売高は$36.0 billionで、前月の$35.0 billionを2.8%上回り、2016年9月の$29.4 billionに対して22.2%の増加である。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「9月のグローバル販売高が前年比急激に増加、1-9月販売高累計は前年同期を20%以上上回っている。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、John Neuffer氏は言う。「我々の業界は第三四半期に史上最高の四半期販売高となり、2017年のグローバル市場は史上最高の年間売上げに達しようとしている。」

地域別では、9月の販売高は市場全部にわたって前年比/前月比ともに増加している。

Americas
(前年比 +40.7%/前月比 +5.9%)
China
(    +19.9%/    +2.5%)
Europe
(    +19.0%/    +1.8%)
Asia Pacific/All Other
(    +16.8%/    +1.9%)
Japan
(    +11.9%/    +0.5%)

                        【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Sep 2016
Aug 2017
Sep 2017
前年同月比
前月比
========
Americas
5.68
7.55
8.00
40.7
5.9
Europe
2.76
3.22
3.28
19.0
1.8
Japan
2.81
3.13
3.14
11.9
0.5
China
9.47
11.08
11.36
19.9
2.5
Asia Pacific/All Other
8.71
9.98
10.17
16.8
1.9
$29.43 B
$34.96 B
$35.95 B
22.2 %
2.8 %

--------------------------------------
市場地域
4- 6月平均
7- 9月平均
change
Americas
6.59
8.00
21.4
Europe
3.16
3.28
3.7
Japan
2.98
3.14
5.5
China
10.40
11.36
9.2
Asia Pacific/All Other
9.50
10.17
7.1
$32.63 B
$35.95 B
10.2 %

--------------------------------------

「Americas市場が引き続き際立っており、7年以上ぶりの前年比販売高増をあげている。」とNeuffer氏は言う。「半導体製品カテゴリーで目立つのは、ともに9月に大きな前年比の伸びを示したDRAMおよびNANDフラッシュなどメモリ製品、並びに前年比二桁の伸びとなったロジック製品などである。」

※9月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
https://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/Sept.%202017%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた業界各紙の取り上げである。昨年、2016年の第三四半期の世界半導体販売高も$88.3 billionに達して、該業界史上最高の四半期販売高を記録、と発表されている。1年経ってまた繰り返すこの1年の増えっぷりとなっている。

◇Semiconductor Sales On Pace For Record Year (10月30日付け Electronic Purchasing Strategies)

◇Global chip industry records highest-ever quarterly sales in Q3 (10月30日付け Korea Herald)

◇Semiconductor Sales Hit $108 Billion in Q3-SIA: Q3 chip sales reached $108B, a record (10月31日付け EE Times)

特にAmericas地域の急伸、復活ぶりが注目されている。

◇Americas region resurgent in global chip market (10月31日付け EE News Europe)

◇Global semiconductor industry posts highest-ever quarterly sales (11月1日付け ELECTROIQ)

◇Global semiconductor industry posts highest-ever quarterly sales, says SIA (11月1日付け DIGITIMES)

品種カテゴリー別ではメモリ、特にDRAMの高値牽引が目立っているが、ビット伸長率では今後どうなるか。2018年にはもっと高まると、DRAMexchangeの見方が以下あらわされている。一方、中国勢の参入が見えてきて、需給は緩む可能性、と触れている。

◇Higher DRAM Bit Growth Seen For 2018 (11月1日付け EE Times)
→DRAMexchange(台湾)発。逼迫したDRAM供給状態が年中続いており、サプライヤには大きな高揚感を生じているが、2018年には終わる可能性、Samsung Electronicsが競合に対するリードを拡げ、中国からの新たな参入を市場から食い止めるようcapacityを上げていく旨。2018年のDRAMビット供給が22.5%増と、2017年の約19.5%増から上がる見通し、9月時点では2018年は19.6%増と予想していた旨。

◇DRAMeXchange predicts higher DRAM bit growth in 2018 (11月2日付け DIGITIMES)

2018年もまだ供給逼迫は続く、と業界筋の見方である。

◇Supplies of mature IC parts to remain tight in 2018, say sources -Sources: Supply tightness will continue in 2018 (11月2日付け DIGITIMES)
→業界筋発。ウェーハ、passiveコンポーネント, およびDRAM, MOSFETおよびNORフラッシュ半導体などいくつかのIC partsおよびコンポーネントの供給が、主要サプライヤのcapacity立ち上げが見られないことから2018年も依然逼迫する旨。これらどちらかと言えば成熟したIC partsおよびコンポーネントへの需要が2017年はじめ以降力強い一方、IoT/AR/VR応用, cloudサービス, drone機器, およびsmart voice assistant製品の急増が不足を強めている旨。

米SIAの毎月はじめの発表時点での販売高データを、昨年からの推移で示すと、次の通りである。月$30 billion越えも1年を数えるに至っている。前月比もこの3月からはプラスが続いて、増勢基調を端的に示すところである。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
2016年 1月
$26.88 B
-5.8 %
-2.7 %
2016年 2月
$26.02 B
-6.2 %
-3.2 %
2016年 3月
$26.09 B
-5.8 %
0.3 %
2016年 4月
$25.84 B
-6.2 %
-1.0 %
2016年 5月
$25.95 B
-7.7 %
0.4 %
2016年 6月
$26.36 B
-5.8 %
1.1 %
2016年 7月
$27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月
$28.03 B
0.5 %
3.5 %
2016年 9月
$29.43 B
3.6 %
4.2 %
$241.68 B
2016年10月
$30.45 B
5.1 %
3.4 %
2016年11月
$31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月
$31.01 B
12.3 %
0.0 %
 
2017年 1月
$30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月
$30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月
$30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月
$31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月
$31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月
$32.64 B
23.7 %
2.0 %
2017年 7月
$33.65 B
24.0 %
3.1 %
2017年 8月
$34.96 B
23.9 %
4.0 %
2017年 9月
$35.95 B
22.2 %
2.8 %
$292.33 B
…前年比21.0%増

以下にも激動要因を孕んだ世界の政治・経済の半導体業界に及ぼすインパクトの動きがあらわれていると受け止めているが、今後のグローバルないろいろな切り口、側面での推移の注目を要するところである。


≪市場実態PickUp≫

【絶好調のメモリ】

上記の通りこれまでの記録を大きく塗り替える世界半導体販売高となっているが、高値で引っ張っている牽引役のメモリの最大手、Samsungの四半期業績が以下の通りである。ここでも最高記録が相並ぶ形であるが、同社経営トップが収監されている事態があり、この絶好調の機会をとらえて人事の刷新が行われている。

◇Samsung's Chip Sales Hit New High (10月31日付け EE Times)

◇Samsung Electronics names new-generation leaders as profit soars-Samsung posts record profit, names new leaders (10月31日付け Reuters)
→Samsung Electronicsの第三四半期profitが$12.91 billionと同社最高を記録、一方、売上げは前年同期比29.8%増。Co-CEOsのJ.K. Shin氏およびYoon Boo-keun氏が退任する一方、Chief Financial Officer、Lee Sang-hoon氏がchairman就任、Kim Ki-nam氏がDevice Solutions部門を率い、Koh Dong-jin氏がIT and Mobile Communicationsを担い、そしてKim Hyun-suk氏がConsumer Electronicsを統率の旨。

◇サムスン半導体部門、4四半期連続最高益、7〜9月−通期設備投資も最高見通し (10月31日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が31日発表した2017年7〜9月期連結決算。売上高が前年同期比30%増の62兆500億ウォン、営業利益が同2.8倍近くの14兆5300億ウォン(約1兆4530億円)。全体の営業利益に加え、売上高も四半期ベースとして過去最高。前年はサムスンのスマートフォンに品質問題が起きて生産・販売停止に伴う多額の損失を計上したため、変化率が大きくなった旨。
主力の半導体部門の営業利益が4四半期連続で最高益を更新、同時に2017年通期の設備投資額が2016年実績比8割増の46兆2000億ウォンと過去最高になるとの見通しも発表した旨。部門別の営業利益は、半導体部門が9兆9600億ウォンと前年同期の3倍弱に拡大、データセンター向けの引き合いが強い主力の半導体メモリ(DRAMとNAND型フラッシュメモリ)が伸びた旨。

◇サムスン3代目体制へ世代交代、代表取締役に50代3人 (10月31日付け 日経 電子版)
→韓国のサムスン電子は31日、代表権を持つ取締役3人全員が2018年3月に退任する人事を発表、3人はいずれも60代、後任に50代の幹部を任命する旨。グループを事実上率いる李在鎔(イ・ジェヨン)副会長(49才)に近い世代を登用し取締役会の陣容を刷新する旨。同氏は業績好調の機をとらえ、拘置所の中からグループ内の引き締めを図った旨。

本年の設備投資もさらに増額が見込まれている。

◇Samsung capex to reach KRW46.2 trillion in 2017 (11月1日付け DIGITIMES)
→Samsungが2017年のcapital expenditure(capex)について、2016年から大きく増加、約KRW46.2 trillion($41.5 billion)と見込む旨。半導体事業およびディスプレイ事業にそれぞれ、KRW29.5 trillionおよびKRW14.1 trillionの旨。

Samsungに次ぐメモリ2番手、韓国・SK Hynixも、中国での新たなDRAM fabの計画の噂が見られている。

◇SK Hynix to expand DRAM production capacity in China -SK Hynix will make more DRAMs in China (11月2日付け DIGITIMES)
→中国の現地メディア報道。SK Hynixが、中国の無錫(Wuxi)市政府と新しいDRAM fabの現地設立で最近契約締結、総投資が$8.6 billionと見込まれる旨。該新拠点は、1X-nm技術を用い200,000枚のウェーハ処理が可能の旨。
しかしながら、SK Hynixは無錫での該新DRAM fabの計画を披露していない旨。

【iPhone X】

アップル社注目の最先端機種、「iPhone X(テン)」が、生産歩留まりからくる供給不安の問題が挙げられるなか、テレビはじめニュース報道ですでに目にする通り発売されている。

◇X-factors Hobble iPhone X (10月31日付け EE Times)
→台北では、AppleのiPhone Xに絡む歩留り問題があると街の噂が広まっている旨。該モデルの製造をすべて行っているFoxconnが充分に作れない様相、いくつかのメディア報道にある通り、Appleはこのholiday seasonの同社flagship、iPhone Xの出荷について50%削減を余儀なくされており、40 million台から20 million台に削られる旨。

◇iPhoneX販売開始、アップルストアに予約者の列 (11月3日付け 日経 電子版)
→米アップルは3日、iPhoneの最上位級機種「X(テン)」を発売、有機ELパネルを採用したほか、ホームボタンをなくして顔認証技術でロックを解除する新機能を備える旨。都内のアップル店には店頭で受け取りを希望する予約者が行列を作った旨。発売当初は出荷台数が少ないとの懸念があり、当面は家電量販店など店頭での在庫不足が予想されている旨。

早速のteardown概要である。

◇Apple iPhone X Packs Intel, Q'comm-Two logic boards stacked in microvia sandwich (11月3日付け EE Times)
→iPhone Xのteardown解析。Appleは引き続き、QualcommおよびIntelのcellularベースバンドプロセッサを混用、また、features収容に新旧のtricksを組み合わせている旨。iPhone Xは、Appleが今日まで作っている最も高価なhandsetであり、該新モデル立ち上げにsupply chain問題があると言われているが、Appleはこれまでのところコメントを控えている旨。

アップル社の業績発表が同時に行われており、ここでも最高記録の表現が見られる結果となっている。

◇Apple Reports Records, Mum on X-CEO bullish despite challenging iPhone ramp (11月3日付け EE Times)
→Appleが最高記録の四半期および年間業績を発表、売上げは12%増、サービスが最大の伸び。AppleのタブレットおよびMacは力強く上昇、しかし矢面に立つiPhoneの売れ行きは昨年比数量および売上げでほぼフラットの旨。

◇Apple、2017年Q4決算でウォール街予測を一蹴 (11月3日付け techcrunch)
→Appleは2017年第4四半期決算でウォール街予測を大きく上回った旨。決算の主な数値:
 *Q4売上: 526億ドル、ウォール街予測 507億ドル(前年比12%増)
 *Q4利益: 1株当たり2.07ドル、ウォール街予測 1.87ドル
 *iPhones販売台数: 4670万台、ウォール街予測 4610万台(前年比3%増)
 *iPads販売台数: 1030万台(前年比11%増)

【Qualcommを巡って】

Qualcommを巡る波乱に富んだ動きが続いている。アップルが次世代iPhoneでQualcommのmodem半導体を外すのではという以下の観測があらわれている。

◇Apple May Drop Qualcomm Chips (10月31日付け EE Times)
→匿名筋を引用、Wall Street Journal, Reuters news serviceおよびBloomberg news serviceなど複数のメディア報道。Appleが、QualcommではなくIntelおよびMediatek製のmodem半導体を用いるiPhonesおよびiPadsの設計に取り組んでいる旨。Appleは、来秋リリース予定の次世代iPhone setにおいてQualcommのmodemsを置き換える可能性の旨。

◇Apple's Qualcomm Grudge Runs Deep (11月2日付け EE Times/Blog)
→AppleがQualcommの2018年モデルmodem半導体には見向きもしないかもしれないという憶測で該業界が沸き上がっている旨。Appleは、どんなに費用をかけても法廷闘争に勝つようこれらすべての作戦行動を展開しているのか?

Qualcommの四半期業績が発表され、アップルとの係争などの問題を抱えて減少が見られるなか、市場予想を上回る内容とされている。

◇Demand for modem, IoT chips helps Qualcomm top estimates-Qualcomm sees demand for auto, IoT, phone chips (11月1日付け Reuters)
→Qualcommが今四半期(2018年度第一四半期)売上げについて$5.5 billion〜$6.3 billionと予測、アナリストの平均評価、$5.9 billionを上回る旨。
前の第四四半期では、Snapdragonプロセッサおよび車載、internet of things(IoT)用半導体の需要が力強かった旨。同社は、Appleとの法廷係争およびantitrust侵害を巡るTaiwan Fair Trade Commissionからの$775 million以上の罰金などいくつかの問題に依然包囲されている旨。

◇Q'comm Profits Dive Amid Patent Disputes-Net income falls 57 percent in fiscal year (11月2日付け EE Times)
→Qualcomm社の2017年第四四半期および年間売り上げがそれぞれ$5.9 billionおよび$22.3 billion、ともに2016年比5%減。

◇クアルコム決算、アップルとの訴訟が響くも予想上回る (11月2日付け CNET Japan)
→Qualcommが米国時間11月1日、市場の予想を上回る内容の2017会計年度第4四半期決算(9月24日締め)を公開、売上高はGAAP基準で$5.95 billion、前年同期$6.184 billion。

台湾からは、Qualcommに罰金を科すと我が身に重大に振り返ってくる、と以下の見方があらわされている。

◇Qualcomm fine will hurt Taiwan: Shen-Taiwan's minister sees consequences from Qualcomm fine (11月2日付け The Taipei Times (Taiwan))
→台湾のMinister of Economic Affairs、Shen Jong-chin氏がlawmakersに対し、Qualcommを相手取ったantitrust侵害に対するTaiwan Fair Trade Commissionの$775 million以上の罰金は近い将来台湾にとって重大である旨。「ministryの観点からは、国家利益に関わることから産業の発展が公正取引に優先されるべきである。」と同氏。

Qualcommについては、最新の動きで以下に示すBroadcom関連につながっていく。

【中国ファンドのM&A】

中国政府が支援するファンドによる米国・Lattice Semiconductor社買収を米国政府が阻止した経緯があるが、そのファンドのfounderがインサイダー取引で米国当局から告発されている。

◇China-backed buyout fund founder charged in U.S. insider trading case (10月31日付け Reuters)
→米国当局、月曜30日発。中国政府が支援するprivate equity firmのfounderが、Lattice Semiconductor社買収の試みに関連するインサイダー取引で告発されている旨。

◇Canyon Bridge Head Charged With Insider Trading in Lattice Deal (11月1日付け EE Times)
→中国の中央政府が一部出資の投資会社、Canyon Bridge Capital Partnersのmanagingパートナーが、半導体ベンダー、Lattice Semiconductorを買収する入札不調に関連するインサイダー取引で告発されている旨。

一方、該ファンドは英国・Imagination Technologiesの買収を進めており、Imaginationの株主はこれを承認している。上の告発の1日後のことである。

◇Imagination shareholders back takeover after Canyon founder charged with insider trading in US (10月31日付け The Telegraph (London))

◇Imagination investors approve sale to China-backed fund-Sale of Imagination approved by shareholders (11月1日付け Reuters)
→Canyon Bridge Capital PartnersによるImagination Technologiesの$730 million買収が、火曜31日に株主の承認を得た旨。該票決は、Canyon Bridgeのfounder、Benjamin Chow氏がLattice Semiconductorの買収不調に絡むインサイダー取引で告発された1日後のこと、Chow氏はその件を否定している旨。

さらに、英国の高等裁判所はこの買収を認める判断を行っている。

◇Canyon Bridge bid for Imagination Technologies approved by UK court-UK court authorizes Canyon Bridge purchase of Imagination (11月2日付け Reuters)
→英国・高等裁判所(High Court)が、Canyon Bridge Capital PartnersによるImagination Technologiesの$718 million買収を認可、ImaginationのLondon Stock Exchange上場廃止につながる旨。米国政府は9月に、国家セキュリティの根拠を引用、Canyon BridgeによるLattice Semiconductorの事業継承を阻止している旨。

【Broadcomの揺るがす動き】

米国Trump政権の意向に沿って、Avagoが買収した経緯のあるBroadcom(シンガポール)が、本拠アドレスを米国に移すという発表を、大統領同席で行っている。

◇Trump announces semiconductor company's return to US (11月2日付け The Washington Post)
→Donald Trump米国大統領が木曜2日発表、シンガポールの$100 billion半導体メーカー、Broadcom Limitedが、home addressを米国に法的に移転する旨。株主の承認を受けてDelawareに移転、$20 billionの年間売上げを米国にもたらし、厄介な連邦reviewプロセスを避けられる旨。

◇Broadcom to Moves Headquarters to U.S. (11月3日付け EE Times)

◇Trump hails tax reform as US$100bn Singapore chip maker Broadcom relocates to US-Broadcom CEO Hock Tan says Republican tax plan will make it easier to do business, but the firm which makes chips for Apple and Chinese electronics makers would have relocated anyway (11月3日付け South China Morning Post (Hong Kong)/The Associated Press)

まさに直下の話として、Broadcomが上記の通りもまれているQualcommの買収を検討という動きが目に入っている。

◇ブロードコムがクアルコム買収検討、米報道、10兆円規模か (11月4日付け 日経 電子版)
→半導体大手のブロードコムが同業クアルコムの買収を検討していることがわかった旨。複数の米メディアが3日、関係者の話として報じた旨。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、今週末にも交渉入りする旨。クアルコムの時価総額は911億ドル(3日終値:約10兆3800億円)にのぼり、実現すれば半導体業界で最大の買収となる旨。

【後れの危機感】

メモリそして新分野台頭で新たに格段の飛躍を見せている世界の半導体業界となっているなか、我が国の立ち位置の後れがいろいろな切り口で高まる問題意識を掻き立てている。産官学挙げた結集が改めて早急に求められるところとなっている。

◇瀬戸際の技術立国、新たな創造の循環を−ニッポンの革新力 (11月1日付け 日経 電子版)
→景気回復や株高が続きながら、高揚感に欠ける日本社会。新産業を生み続ける米国や急成長する中国に押され「技術立国」の看板が色あせているためだ。問われるのは技術を生かし社会や産業を変革するイノベーションの力。世界は進化する人工知能(AI)など新たな産業革命のさなかにある。技術立国をどう再建するか。その挑戦がニッポンの未来のかたちをつくる。

◇AI研究の論文引用ランキング、マイクロソフト首位 (11月3日付け 日経 電子版)
→日本経済新聞と学術出版大手エルゼビア(Elsevier B.V.:オランダ・アムステルダム)が分析した人工知能(AI)に関する世界の論文動向から、研究開発競争の実態が明らかになった旨。質の高い研究の指標として論文が引用された回数(2012〜16年)を機関別に1000位まで集計すると、大学中心の中国が躍進する一方、米国はマイクロソフトやグーグルなど企業の存在感が際立つ旨。進歩が速く「知の総力戦」とされるAIの研究開発で、日本の産学は後れをとる旨。


≪グローバル雑学王−487≫

今の中国経済を表して「2スピード・エコノミー」、すなわち急成長するサービス・IT中心のニューエコノミーと中国共産党のもとでの硬い岩盤のオールドエコノミーが並存する実態に、

『「米中経済戦争」の内実を読み解く』
 (津上 俊哉 著:PHP新書 1105) …2017年7月28日 第1版第1刷

より迫っていく。習近平2期目のチャイナセブンの顔ぶれには後継世代が見られないとのこと。根を張る腐敗を撲滅していく一方、先端科学技術を強化して世界に冠たる強国の実現を図っていくに要する時間軸というものを感じさせている。


第7章 中国経済の今後 ――グッドニュースとバッドニュース

・今後の中国が中期的にどれだけ成長できるか
 →経済全体の生産性をどれだけ引き上げられるか、がカギ
・引き上げるための2つの課題
 →1)ニューエコノミーと呼ばれるサービスや消費などの成長産業をどれだけ伸ばしていけるか
 →2)投資バブルで劣化が進んだ重厚長大産業などのオールドエコノミーをどれだけ速やかにリストラし、成長分野に振り向けられるか

〇グッドニュース ニュー・エコノミーの急速な成長
・今の中国経済についていちばんしっくりとくる形容
 →「2スピード・エコノミー」
  …急速に成長するサービス・IT中心のニューエコノミー
  …深刻な不況に直面する鉄鋼を始めとするオールドエコノミー
・ニューエコノミーは急速に成長、高度化。むしろ我が日本の方が周回遅れになっている

〇モバイル・ネットサービス
・躍進するニューエコノミーの代表
 →スマホ上で利用できるアプリサービスの大隆盛
・個人事業者がサービスの提供を競い合える舞台(プラットフォーム)がスマホ上に出現
 →単純な物販や定型サービスの範囲を超えて広がり、多様なニュービジネスが誕生
・レーティングが大きな役割を果たしている
 →伝統的に赤の他人を信用しない中国人が、大勢の人が高い評価を与えているサービス提供者を信用
・ソフトなインフラが社会に根付いた結果、小規模事業者にもビジネスチャンスが拓けた
 →この点では、世界でいちばん進んでいるのはいまの中国かも

〇スタートアップ支援のインフラ
・シリコンバレーばりのベンチャー投資がビジネスとして発達
 →アイデアが面白ければ思い切った額の資金がequity(出資募集)の形で調達できるように
 →バイク(自転車)レンタルサービスがその一例
・起業環境が格段に進化したのも、この数年の中国の革新的な出来事

〇バッドニュース 問題の根っこは「国のかたち」そのもの
・中国共産党内の改革派、保守派の立場が真っ向から食い違う、最もホットな争点の1つ、国有企業問題
 →保守派にとっては、イデオロギー上の信念と既得権益が化合してできた硬い岩盤があって、改革に断固抵抗
 →中国共産党の中では、やはり「国有企業」の利権、影響力が極めて大きい
・国有企業改革とバブルの清算をしないのでは
 →中国の生産性向上は、オールドエコノミーの浪費で食い潰されてしまう

〇国有企業の不良債務は処理できるか
・問題は大多数を占める国有企業、とくに地方政府系の会社の潜在的不良債務(債権)
 →国有企業でも債務不履行の事故が増加
・注目されているのが、企業が抱える過重な負債を株式に転換する「債務の株式転換(Debt Equity Swap:DES)」
・いま中国の地方政府系国有企業で起きている債務の株式転換
 →自分の責任は棚に上げて(持分はそのままにして)銀行に債務の株式転換を承諾しろと圧力をかけるといった、利益相反の極みのようなやり方
 →そんな理不尽がまかり通るのは、地方政府の持分が、逸失することの許されない「神聖な国有財産」だから
・この「観念の壁」が突破されないかぎり、中国の債務株式転換は粉飾でしかない
 →「見せかけの不良債権処理」では経済の活力は戻ってこない

〇「暗黙の保証」は共産党体制の「業」
・過去に財務内容の悪い国有企業でもお金を借りられたのは、「暗黙の保証」の慣行があったから
 →「企業のバックに『お上』がいると見込んで貸す」式
 →してはいけない融資がどんどん行われる「モラル・ハザード」現象
 →そういう時代が終わろうとしており、いまやこの慣行が中国経済の屋台骨を揺るがしそうに
・「お上の信用」を纏ったセクターで、金融リスクが「煮詰まり」つつある
 →2016年の景気アクセルは、そういう融資を急増させたから、罪が重い

〇不動産バブルはなぜ続くのか
・2016年からの景気アクセルの不動産への波紋
 →とくに値上がりの激しかった北京や上海では、わずか1年半で住宅価格がさらに3-4割高騰
・中国のビジネス・パーソンたちとの話
 →以前は強気、自信に満ちていたが、中国経済の将来に自信を失いつつある
 →「いまみたいに先が見えない時期は不動産がかえって安全」という感覚

〇独裁政党と国民の共犯関係
・いまの中国経済の病理を検討
 →すべての根っこに、万事を支配・統制しないと気が済まない「家長マインド」の旺盛な共産党の厄介な体質が伏在
 →権力に付きものの「腐敗」も深刻化
・「暗黙の保証」をはじめとする中国経済の様々な病理現象
 →共産党の体制につけ入る、食いものにする人々を内包した「国のかたち」なのでは
 →この「制度」を急に変えたり、壊したりすることは、経済秩序を動揺させる
・中国の「官」の経済実力は、他の国の比ではない
 →国民も「官」の力と意思を信じている
 →これを当て込んだ無謀なリスクテークが止まらない……悪循環

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