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インテルのIDF中止など、市場構造激変に絡む各社相次ぐ動き

世界の政治・経済が日々激動に見舞われるなか、エレクトロニクス・半導体市場も大きくはスマートフォンからIoT、AR/VR、AI、自動運転など新分野・新市場の開拓そして展開を迫られる情勢が色濃くなってきている。伝統的な業界の国際半導体技術ロードマップ(ITRS)に続いて、インテル社が同様に20年の積み重ねがあるイベント、Intel Developer Forum(IDF)開催の中止にこのほど踏み切っている。半導体市場の構造そして個々の取り巻く環境の激変に戦略的に対応していく半導体各社の動きが相次いでいる。

≪それぞれの戦略的対応≫

インテル社のIDFイベント開催中止の決定が、以下の通り発表されている。
20年の歴史があり、同社の最新の技術、プラットフォームはじめ披露されて関連業界の大きな注目を集める場となってきたが、このほど突然のキャンセルに至ったという受け止め方である。後日、改めて説明が行われる模様である。

◇Intel rids of annual Intel Developer Forum, cancels 2017 event-From PC to cloud: Intel Developer Forum gets nixed ahead of IDF17 set for San Francisco in August.-Intel will not hold Developer Forum in Aug. (4月17日付け ZDNet)
→Intelが、20年間行っている夏のイベント、annual Developer Forumの中止を決定、よりdata-centric focusに移行する旨。

◇Intel cancels developer events as it moves beyond PCs-The Intel Developer Forum program is ending after 20 years (4月17日付け Engadget)

◇Intel cancels IDF for 2017 (4月17日付け DIGITIMES)
→Intelが、2017年のIntel Developer Forum(IDF)イベント開催中止を決定、元々4月のShenzhen, China(深セン)および8月のSan Franciscoと予定されていた旨。Intelは該キャンセルを確認、後でより詳細な発表を行う旨。IntelのIDF showsは1997年に始まり、同社の最新技術、革新およびプラットフォームが披露され、すでにIT業界にとって重要な開発指針となっている旨。

市場の色合いも変わり、競争も激しさを増して、その都度のプレゼン対応になっていくと思われるが、早速のこと、予定を前倒ししたプラットフォームおよびmicroarchitectureの打ち上げが行なわれようとしている。

◇Intel to unveil Basin Falls, launch Coffee Lake ahead of schedule (4月19日付け DIGITIMES)
→台湾のPCベンダー発。Intelが、当初予定より2ヶ月早く5月30日〜6月3日台北でのComputex 2017にて、同社Basin Fallsプラットフォーム、すなわちSkylake-X, Kaby Lake-XプロセッサおよびX299チップセットを披露、そして14-nmプロセスnodeベースのCoffee Lake microarchitectureの打ち上げを当初の2018年1月から2017年8月に前倒し、AMDのRyzen 7およびRyzen 5プロセッサからくる競合増大に対応する旨。Basin Falls-ベース製品は6月米国でのE3 gaming showにて打ち上げ予定、公式リリースはその月末の旨。

ファウンドリー対応もインテル社の戦略的な取り組みの1つであるが、中国のSpreadtrum Communications向けの半導体製造が2番目を数えようとしている。

◇Intel to build second Spreadtrum chip-Sources: Spreadtrum opts for 2nd Intel chip (4月19日付け DIGITIMES)
→業界筋発。IntelとSpreadtrum Communicationsがファウンドリー連携を延長、Intelが中国のモバイルSoCサプライヤ、Spreadtrumに向けてもう1つの14-nm半導体を作り始める旨。Intelは、2017年第三四半期に打ち上げ予定のSpreadtrumのSC9853シリーズ半導体を製造する旨。Spreadtrumは2017年始めに、Intelのcustomファウンドリーサービスにより生産したmid-rangeおよびhigh-end LTE SoCプラットフォームとして新しいSC9861G-IAを発表している旨。

メモリの高値&盛り上がりで目下の業績が好調に推移しているSamsungは、業界最先端の10-nmプロセスについて第2世代の準備を完了させて、先行性の補強を図っている。

◇Samsung completes qualification of its 2nd gen 10nm process technology (4月19日付け ELECTROIQ)
→Samsung Electronics Co., Ltd.が、同社第2世代10-nm FinFETプロセス技術、10LPP(Low Power Plus)について品質評価を行って生産への準備ができている旨。3D FinFET構造をさらに強化、10LPPは、第1世代10LPE(Low-Power Early)プロセスと比べて同面積scalingで最大の10%の高性能化あるいは15%の低電力消費化が可能の旨。Samsungは業界で初めて、昨年10月10LPEでのsystem-on-chips(SoCs)製品の量産を開始、最新Samsung Galaxy S8スマートフォンにこれらSoCsのいくつかが搭載されている旨。

◇Samsung completes qualification of 2nd-gen 10nm process technology (4月21日付け DIGITIMES)

スマートフォンはじめモバイル機器関係の特許はじめ知的財産に絡むビジネス慣行で各国からの訴訟を抱え、中国、韓国はじめ罰金支払いを求められたQualcommは、こんどは過払い請求でカナダ・ブラックベリーに続いてアップルへの対応を迫られる事態となっている。モバイル機器市場の伸びの減速が1つに影を落としているところを感じている。

◇クアルコム、知財紛争で10%減収、1-3月 (4月20日付け 日経 電子版)
→米半導体大手、クアルコムは19日、1-3月期の売上高が前年同期比10%減の$5.016 billion(約5400億円)、純利益が同36%減の$749 millionと発表の旨。カナダ・ブラックベリーとの知財紛争で過払い使用料を返還したのが響いた旨。同社は各国で独禁法違反の訴訟を抱え、それを根拠に米アップルなど取引先から特許料の過払い請求を受けており、業績の不確定要因が増えている旨。

◇Legal Woes Overshadow Qualcomm's Results (4月20日付け EE Times)

広くは高性能computingの今後の展開に期待をかけて、Advanced Micro Devices(AMD)の性能および価格ともにインテル社を追い越そうという意気込みが特に伝わってくるここのところの動きとなっている。

◇AMD launches new Polaris-powered Radeon graphics cards for gamers on a budget-AMD targets budget-minded gamers with new graphics cards (4月18日付け VentureBeat)
→Advanced Micro Devices(AMD)が、$79〜$229の価格レンジで第2世代Polaris-architecture半導体搭載の新しいRadeon RX 500グラフィックスカードを提示の旨。AMDのproduct manager、Simon Ning氏は、大方のgaming PCsはvirtual reality(VR)に向けた装備はなく、gamersにとって今年グラフィックスカードを格上げする動機が得られる、と特に言及の旨。

◇AMD really wants you to upgrade your graphics card in 2017-The Radeon RX 500 series of graphics processors includes a new, cheap RX 550 if you want to take a baby step up from your two-year-old card for a pittance. (4月18日付け CNET)

これはまだ研究開発段階であるが、RambusがMicrosoftと連携して以下のような"Cold DRAM"の取り組みを進めている。

◇Rambus, Microsoft Heat Up With Cold DRAM-Rambus, Microsoft tout cryogenic DRAM tech (4月17日付け EE Times)
→リアルタイムデータ処理向けシステム需要急増への対応に努めているcomputer科学者communityに朗報、Rambusが、Microsoftの研究者とコラボ、cryogenicメモリの試作に成功、該新技術は、業界で"現在最もメモリ消費で伸びている"データセンターに重要となる、とRambusのchief scientist、Craig Hampel氏。

◇Cryogenic DRAM may be ‘essential’ for future systems, says Rambus-Rambus and Microsoft are to extend their collaboration on new memory technologies to cryogenic memory. (4月18日付け Electronics Weekly (U.K.))
→RambusおよびMicrosoftが開発しているCryogenic DRAM技術は、米国・National Institute of Standards and Technology(NIST)が-180°C or -292.00°F or 93.15 K以下と定義しているcryogenic temperaturesにてDRAMおよびロジック動作に向けたエネルギー効率を改善する旨。

この取り組みには、以下に示すデータセンターに向けた半導体の新時代への究極の備えという趣きを感じている。

◇Cloud Computing Chips Changing-As cloud services adoption soars, datacenter chip requirements are evolving.-A new era for cloud, data center chips (4月19日付け Semiconductor Engineering)
→データセンターにおけるサーバ用プロセッサ供給でのIntelの席巻に対し、AmazonおよびGoogleがubiquitous x86アーキテクチャーへの代替を開発、低電力ARMコアに向かうサーバ半導体設計者が増えて、それぞれ挑んでいる旨。Microsoftは、同社Azure cloudデータセンターでARM-ベース・プロセッサを用いる計画である旨。

最後に現実のビジネス前線に戻ると、台湾のMediaTekがTSMCへの28-nm半導体発注を大幅に落とすという観測が市場を駆け巡っている。中国設計メーカーの台頭、自前設計の増大とここのところの流れが思い浮かんでくる。

◇MediaTek reportedly slashes 28nm chip orders to TSMC, says report (4月19日付け DIGITIMES)
→中国語・Economic Daily News(EDN)発。MediaTekが最近TSMCに向けた6月から8月の28-nm半導体発注を総数約20,000枚ウェーハ削減という憶測が、半導体市場を駆け巡っている旨。この28-nm半導体発注削減は、MediaTekの四半期ごと該プロセスウェーハstarts全体の約30%を占める旨。
MediaTekは、2017年第三四半期の同社handset-半導体事業の見込みについて慎重な様相の旨。


≪市場実態PickUp≫

【フェイスブック、アマゾンの打ち上げ】

半導体各社の激変環境への現時点の取り組みを以上見てきたが、フェイスブックは年次開発者会議(SAN JOSE, Calif.)を開催、AR/VRそしてAIと新たな技術の打ち上げを以下の通り行っている。脳の動きを読み取る技術となっているが、雑念はどう扱われるのか、何ともスゴイ時代を感じさせている。

◇Facebook Likes Augmented Reality-AR Studio, VR-based Facebook Spaces debut (4月18日付け EE Times)
→Facebookのannual developer conference(2017年4月18-19日:McEnery Convention Center, San Jose, CA)にて、Facebookが、スマートフォン・カメラに重点化した新しいプラットフォームをもってaugmented reality(AR)に向けた最初のsteps、また、virtual reality(VR)に向けた同社初のsocial networking experience、Facebook Spacesも打ち上げの旨。

◇フェイスブック、脳で操作するコンピュータ技術を開発へ (4月20日付け 日経 電子版)
→米フェイスブックが19日、シリコンバレーで開催中の年次開発者会議「F8」にて、頭に思い浮かべるだけで文章が書けるコンピュータの入力技術、「ダイレクト・ブレイン・インタフェース」の研究開発を進めていることを明らかにした旨。フェイスブックは社内に60人の技術者からなるチームを発足。外科手術で特殊なセンサを脳に埋め込むのではなく、光学画像装置を使って外側から脳の動きを読み取り言葉に変換する技術の確立を目指している旨。

フェイスブックと同じ日に、アマゾンは、音声やテキストを用いる会話型インタフェースで開発者がアプリ構築できるサービスを打ち上げている。新分野対応ではこれら新たな超大手プレーヤーが加わって、ベンチマーキング解析に一層込み入るところを感じている。

◇Amazon Turns Up the Vocals-Lex service debuts as OEMs tap into Alexa (4月20日付け EE Times)
→Amazonが、開発者に音声アプリを可能にする同社Alexa音声認識サービス版、Lexサービスをリリースの旨。Amazon Lexは、音声やテキストを使用した会話型インタフェースをさまざまなアプリケーションに構築するためのサービスであり、自動音声認識(ASR)という音声をテキストに変換するための高度な深層学習機能と、テキストの意図を理解するための自然言語理解(NLU)を利用できる旨。

【東芝メモリ入札関係】

日々の激しい出入りの動きが続く東芝を巡る動きに、引き続き目が離せないところである。Western Digitalの独占交渉権の要求、SK Hynixの働きかけはじめ、それぞれの動きに注目するとともに、大勢がどう傾いていくか、時間経過の流れの中で落としどころを感じ取っていくことになる。

◇Toshiba Rumor Mill Runs at Full Capacity (4月14日付け EE Times/Blog)
→東芝メモリを巡る最新の噂&未確認報道について。

◇Toshiba creditors likely to approve chip unit collateral for $9.2 billion finance: sources (4月14日付け Reuters)

◇Toshiba's sale of memory-chip business hits snag as Western Digital objects (4月17日付け The Globe and Mail)
→Western Digitalのchief executive officer(CEO)、Steve Milligan氏が4月9日、東芝のboard membersに書簡を送り、メモリ半導体事業売却の前に自分の会社と独占的に交渉すべき、としている件。

◇Western Digital would consider Japan partners for Toshiba chip unit bid (4月20日付け Reuters)
→東芝の半導体合弁での米国パートナー、Western Digital社のsenior officialが木曜20日、同社は日本政府支援の投資家と話し合っており、該半導体事業に向けて共同入札を考えている旨。

◇東芝半導体売却なお溝、米WD「分社は約束違反」 (4月21日付け 日経 電子版)
→ウエスタンデジタル(WD)が9日付で送った意見書などによると、東芝とは提携の合弁契約を巡り、いくつもの見解の相違が生じている旨。両社はWDによる買収前の米サンディスク時代から数えて旗艦工場を17年間、共同運営してきた旨。深い間柄にあるWDの理解を何らかの形で得なければメモリ子会社の売却作業が難航する可能性もある旨。

◇Toshiba Acquisition: SK Group Striving to Acquire Toshiba -Sources: Creditors may accept Toshiba sale (4月17日付け BusinessKorea magazine online)
→東芝の債権者が同社半導体事業の売却を受け入れる様相の一方、SK Hynixには東芝の半導体部門を買収する特別な誘因があり、NANDフラッシュメモリデバイスの同社市場シェアを高められる旨。

◇Japan government fund, bank mull bid with Broadcom for Toshiba chip unit: media-Japanese fund may jump into Toshiba auction (4月18日付け Reuters)
→日本政府が支援する投資ファンド、Innovation Network Corp. of Japan(INCJ:産業革新機構)のChairman、Toshiyuki Shiga(志賀 俊之)氏。同社は、東芝の半導体事業への入札を行おうとしているが、競売第1ラウンドには参加していない旨。競争力のある入札に向けては、パートナーを必要とする可能性もある旨。

◇東芝、主要事業を分社化へ、2万人転籍 (4月18日付け 日経 電子版)
→経営再建中の東芝が社会インフラなどの主要事業を分社する方針を固めた旨。各事業の経営の機動力を高めるだけでなく、発電といった大規模工事に必要な建設業の許可を更新できるようにする旨。稼ぎ頭の半導体メモリ事業を今年度内にも売却するため、今後の柱のインフラ事業をテコ入れするため分社に踏み切る旨。分社で転籍対象となるのは、東芝単体の従業員数の約8割にあたる2万人規模になるもよう。水処理、鉄道システムなど社会インフラ、火力発電などのエネルギー、半導体メモリ以外の電子デバイス、ICTソリューションの主要4部門を軸に分社する方針。半導体メモリ事業は既に新会社「東芝メモリ」として4月1日に分社し、約9千人が転籍した旨。

◇東芝の半導体買収、シャープが参加も、鴻海の陣営に (4月18日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業の売却を巡り、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が傘下のシャープを自陣営に参加させることを検討していることが18日分かった旨。鴻海は既に関係が深いソフトバンクグループに協力を要請。米アップルにも連携を打診したもようの旨。中国や台湾企業への技術流出を懸念する声があるなか、日米の企業を巻き込んで状況を打開する狙い。鴻海は約3兆円の買収額を提示し、1次入札を通過したもようの旨。

◇SK hynix teams up with Bain Capital for Toshiba deal: sources (4月19日付け Yonhap News Agency (South Korea))

◇Toshiba's fate tied to US-China tussle for chip dominance -Washington's policy has implications for electronics maker's survival-Chip clash may decide Toshiba's future (4月19日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→半導体優勢に向けての米国と中国の間の競合の高まりが、メモリ半導体事業を競売に出している東芝の生き残りに影響がある旨。一方、市場筋によると、Bain CapitalがSK Hynixに加わって東芝半導体部門への入札を行う旨。

◇韓国ハイニックス会長、東芝経営陣に面会へ (4月21日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業に買収提案している韓国SKハイニックスの崔泰源(チェ・テウォン)会長は、24日ごろ訪日して東芝の経営陣に面会する旨。崔会長は韓国3位の大手財閥、SKグループの創業家会長でもあり大型M&A案件の交渉で全権を握る旨。トップ自ら交渉に出向き、東芝や日本政府に誠意を示す狙いとみられる旨。

◇東芝半導体売却、米KKR・革新機構が軸に、WD合流も (4月22日付け 日経 電子版)
→東芝が進める半導体メモリ事業の入札手続きに、米投資ファンド大手、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と官民ファンドの産業革新機構が共同で応札することが21日わかった旨。東芝と提携関係の米ウエスタンデジタル(WD)もこの枠組みに合流する可能性もある旨。東芝の再建の鍵を握る事業の争奪戦が日米連合を軸に進む旨。

【3D NANDが引っ張る装置市場】

歩留り問題の匂いが残る感じの3D NANDフラッシュメモリであるが、この10-12月四半期には従来の2D NANDを上回る規模になるとの見方が表されている。活況の半導体製造装置市場を引っ張る3D NANDと言われているが、いろいろ改善されてこのシナリオ通りの進み方如何に注目である。

◇3D NAND flash output set to expand in 2H17 (4月18日付け DIGITIMES)
→業界筋発。2017年後半の3D NANDフラッシュメモリ半導体のグローバルoutputが大きく拡大して、第四四半期には2D NAND半導体を越える見込みの旨。Samsung Electronics, Micron Technologyおよび東芝など主要NANDフラッシュサプライヤが64-層3D NANDフラッシュ製品を展開しており、SK Hynixに至っては業界初、72-層3D NANDフラッシュ半導体を投入している旨。にも拘らず、これら主要サプライヤの3D NAND技術の歩留りは2017年以降安定していない一方、半導体メーカーは3D NANDへの移行に一層重点化、2D NANDのoutputが大きく減っており、結果として、NANDフラッシュメモリのグローバル供給が2017年以降逼迫しているが、2017年後半には緩和する見込みの旨。

◇6カ月連続で需要超過、半導体製造装置 (4月20日付け 日経)
→日本半導体製造装置協会(SEAJ)が19日に発表した3月の日本製半導体製造装置のBBレシオ(3カ月移動平均の受注額を同・販売額で割った値、速報値)が1.12。6カ月連続で1を上回った旨。

【日本での後工程買収】

メモリ後工程の台湾・Powertech Technology(PTI)が、Micron Akitaの完全買収およびTera Probeの持ち株買収と、Micron Technologyからの譲渡を受けて、日本での後工程ソリューション構築を図っている。

◇Powertech to acquire two Japanese firms-Powertech will buy assembly/test firms in Japan (4月15日付け The Taipei Times (Taiwan))
→Powertech Technology(台湾)が、Micron Technologyがもつ日本の半導体組立&テスト工場、Micron Akitaの買収、および別の日本の組立&テストメーカー、Tera Probeにおけるequity stakeをMicronの持ち株を購入して50%以上に高めることに合意の旨。「clientsに半導体probingからテスト&実装サービスまで完全なソリューションを供給するために、日本での製造operationsを構築したいと思っている。」とPowertechのChairman、D.K. Tsai氏。

◇PTI to buy Micron backend plant in Japan (4月17日付け DIGITIMES)
→NANDフラッシュおよびDRAMメモリ半導体に特化するbackend house、Powertech Technology(PTI)(台湾)が、Micron Technologyの日本の組立&テスト工場、Micron Akitaを完全買収する計画を発表の旨。

【メモリ価格の上昇と波及】

昨年後半からの半導体市場盛り返しを支えているメモリの逼迫と価格上昇であるが、当面の4-6月四半期も引き続く以下の見方である。

◇4GB DDR4 contract prices to rise 12.5% in 2Q17, says DRAMeXchange -Forecast: DDR4 module prices to increase 12.5% in Q2 (4月18日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2017年第二四半期の4Gb DDR4モジュールの平均契約価格が、第一四半期の$24から$27に12.5%上昇の旨。第二四半期の契約価格が予想を上回っており、sub-20nmプロセス技術による製品での品質問題から供給の需要に対する不足がより厳しくなっている旨。

◇Server DRAM ASP to rise over 10% in 2Q17, says DRAMeXchange (4月19日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2017年第二四半期のサーバDRAMメモリASPsが前四半期比10%以上上昇する見込み、供給逼迫が収まらず第三四半期も続いていく旨。

ついにパソコンの最新モデルの店頭価格も上げにもっていく勢いとなっており、引き続き注意深く見ていく必要がある。

◇パソコン、最新モデルの店頭価格1割高、部品値上がりが波及 (4月19日付け 日経 電子版)
→パソコンの店頭価格が最新モデルを中心に値上がりしている旨。記憶用メモリなど電子部品の取引価格の上昇を受け、前年同時期の最新タイプに比べ1割ほど高くなった旨。主力部品の値上がりが、最終製品にも波及した旨。


≪グローバル雑学王−459≫

北朝鮮を巡る緊張が続く現時点であるが、米国、EU、ロシアと中国、そしてアジアと何処も激動、波乱の要素&要因が思い浮かんでくる情勢のなか、

『日本人として知っておきたい「世界激変」の行方』
 (中西 輝政 著:PHP新書 1076) …2017年2月21日 第1版第4刷

を今回より読み進めていく。国際政治、国際関係が専門の著者による世界を動かす大きな流れの分析が表わされて、日本人の覚悟が問われている。まずは、世界を震撼させた開票の経過という表現も見られる米国のトランプ大統領誕生の背景分析、そしてこうなってしまった今後への我々のあるべき備えである。


第1章 トランプのアメリカで世界に何が起きるか

◆グローバリズムの終焉とトランプを生んだ「三すくみ」
・2016年11月、ドナルド・トランプ大統領の誕生
 →大きな潮流、「グローバリズムの終焉」
 →この背景のもと、「英国のEU離脱」も「トランプの勝利」も、そして「プーチンの進撃」も見ていく必要
・「アンチ・グローバリスト」そして従来のグローバリズムの推進勢力、と「ネオ・グローバリスト」
 →この三者がそれぞれの思惑で動き、三すくみにせめぎ合っている状況が、トランプの勝利を現実化した

◆終末期の堕落形態として登場した「ネオ・グローバリスト」
・「冷戦の終結」から「ソ連の崩壊」へと至る流れを受けて、「一極支配」を完成させたかと思われていたアメリカ
 →イラク戦争やリーマン・ショックなど大きな失策
 →先進国でのもはや許容できないほどの「格差」、いつ果てるとも知れぬテロとの戦争、世界中に溢れる難民、地に満ちる不安と反感
・この状況下、生まれる3つの勢力
 →1)オールド(旧)・グローバリズム
   …「グローバル化」を主導してきた(主としてアングロサクソン系の)大手金融機関や投資家、それを取り巻くメディアや主要先進国の既成政党
   →ヒラリー・クリントンを支持したようなエスタブリッシュメント勢力
   →テロや保護主義、極右排他勢力が生み出されることを強く懸念
 →2)アンチ(反)・グローバリズム
   …職を失ったり、薄給を強いられつつある人びとと、その代弁者になろうとする勢力
   →"隠れトランプ"として投票、「反格差」の訴えに共鳴した層
 →3)ネオ(新)・グローバリズム
   …最も不可視かつ複雑
   →冷戦後の国際秩序の再調整を試みようと動き出しつつあった「オールド・グローバリスト」に反発、ニヒルな調子でいっそう強くグローバル化の推進を主張
   →新興のヘッジファンドやIT業界関係者、あるいはネオコン(新保守 主義)の残党勢力
   →「グローバル・アナーキスト」あるいは「ライトウィング(右翼的)・グローバリスト」と呼ぶべき存在
    …徹底的に自己利益のみを追求

◆「アンチ+ネオ連合」の同床異夢
・トランプ大統領の当選(さらにいえばイギリスのEU離脱)を後押し
 →表面的には「アンチ・グローバリスト」たち
 →しかし注意しておくべきなのは、「ネオ・グローバリスト」たちが、この潮流に便乗したこと
・2016年6月の「ブレグジット(英国のEU離脱)」を決めた国民投票の過程における構図
 →「アンチ+ネオ連合」が、「オールド」のエスタブリッシュメントをなぎ払った
・「アンチ」と「ネオ」は元来、同床異夢
 →利害の異なる両者の矛盾と葛藤、そして再び「三つ巴」になった三勢力間の主導権争いが、今後の経済政策と政治における大きな不安定要素となる可能性が高い

◆トランプ政権が「オールド・リベラリズム」を揺るがす
・そもそもアメリカの政治・外交の方向性を見定めるためには、つねに世論やメディア、金融界を含めた経済界など、広くアメリカの全体像を捉える必要
・アメリカの東アジア外交において重要なカギを握っているのは「ニューヨーク」
 →この地は「オールド・グローバリズム」の牙城
・従来から、オールド・グローバリズムの勢力を代表、アメリカの国策の一大発信拠点になっている典型例
 →CFR(Council on Foreign Relations:外交問題評議会)
 →最近、最も注目したCFRの報告書の1つ、アメリカの対北朝鮮政策に関するもの
  …リベラルでバランスの取れたリアリズム外交を本旨とするCFRが、ついに「北朝鮮を空爆せよ」と言い出した
  →「オールド・グローバリズム」派の変質をよく示している
・ネオ・グローバリズム勢力の「利潤のためなら誰とでも手を組む」というニヒリズム
 →裏を返せば中国との結託や、北京からの対米工作に対する脆弱さをも意味している
・選挙中からトランプ陣営の経済アドバイザーとして重要な位置を占めている、と伝えられていたジョン・ポールソン
 →トランプ政権の陣営のなかに萌芽的に見える「親中的な兆候」
・トランプの安全保障担当のアドバイザーを務めるジェームズ・ウールジー元CIA(中央情報局)長官
 →中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加すべきだったのでは、というニュアンスの発言
・トランプ政権の対中姿勢を、我々としては腰を据えてじっくりと見てゆく必要

◆アメリカが「普通の国」になる日」
・今回の「トランプ勝利」を通じてもう1つはっきりした、「普通の国、アメリカ」の始まりの浮上
 →アメリカは建国以来、特別な(あるいは例外的=exceptionalな)国、という意識が色濃く
・トランプの有名なスローガン「Make America great again」の「great」
 →道徳的な立派さを伴わず、単純に「大きい存在」「スゴイ存在」というほどの意味
・トランプが追求する政策「アメリカ・ファースト(アメリカ第一)」
 →多かれ少なかれ孤立主義に傾斜
 →ニヒリスティックで戦略的、便宜的な本質
・問題は、稀代の戦略家であるとともに究極の現実主義者、ニヒリストでもあるトランプの外交が今後、世界のさらなる不安定化を惹起するのか否か、ということ

◆「トランプ=ポピュリスト」論の誤り
・以上のような認識に基づいて、トランプ政権を分析
 →経済問題に加え、政治・外交においても、絶えずアメリカに「梯子を外される」可能性があることを肝に銘じておかなければ
・日本人が犯しやすいトランプに対する2つの誤解
 ⇒第1:「トランプ=ポピュリスト」つまりトランプを一本調子のポピュリストとしてのみ見る見方の誤り
  …「ポピュリズム」=大衆迎合主義
・選挙期間中の「暴言王」的なイメージは、あくまで選挙に勝つためのもの
 →選挙後の豹変ぶりこそが、トランプが稀代の戦略家であるとともに、究極の現実主義者、ニヒリストであることを象徴的に示すもの
 →日本人の多くは、冷徹かつ理性的なトランプの戦略的思考を正面から見据えることがなかなかできない

◆日本の保守陣営が抱くトランプ期待論は筋違い
 ⇒第2:日本の一部の保守陣営が抱く「トランプへの期待」論の誤り
・我々が想起すべきは、「トランプとレーガンの類似性」
 →レーガン政権が、じつは裏では根深い「親中政策」を推進いていたことが、今日では明らかになっている
・トランプ政権の対中批判は、あくまでも雇用を奪う、人民元安を狙った中国の「為替」操作だけを問題視
 →いつ何どき、対中宥和策に転じるかわからない
・「トランプ政権は日本の味方」と捉える日本の一部保守層のナイーブな甘い期待は、「梯子を外される」恐れを多分に含んでいる
 →外国に頼って日本の自立を考えるのは筋違いというもの

◆「普遍的価値」はもはや決定的に時代遅れ」
・日本はトランプのアメリカとどう向き合うべきか
 →キーワードは「共通の利益」と「日本の自立」
  …「共通の利益」に軸足を置いて、日米の協調を維持していく
・「日米同盟は普遍的価値で結ばれた揺るぎない同盟」と、安倍首相
 →ニヒルでドライ、じつはきわめて戦略的なトランプの言動を前にして、もはや「決定的なまでに時代遅れ」
・トランプは当初こそ、対露接近を演出
 →やがてトランプのニヒルな現実主義に、きっとあのプーチンでさえ欺かれることに
・米露両者、いずれも日本などが一筋縄で相手にできるような連中ではない
・トランプ政権の誕生に見る「唯一の超大国、アメリカの衰退と『孤立主義』化」
 →四半世紀続いてきた冷戦後の世界秩序がいよいよ本当の終わりを迎えたことを明瞭に示す出来事

◆最も重要な目標は「自立」の二文字
・(著者が、)25年前の時点以降、「冷戦後世界の崩壊」について訴え続けてきた「世界秩序暗転の五つのシナリオ」
 →1.中東秩序の混乱とテロの蔓延
  2.ロシア民主化の挫折と暗転
  3.中国の膨張と軍事大国化
  4.超大国、アメリカの衰退と「孤立主義」化
  5.EUの分裂と欧州統合の挫折
  →今般のトランプの勝利で、これらすべての予言が的中したことに
・日本にとって今後20年の最も重要な目標
 →何を置いても「自立」
 →世界はますます「理念」ではなく、各国の「利害、均衡、調整」で動く 時代に
・大きな潮流を見失わぬこと
 →もはや、次の時代ははっきりと見えている

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