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最高潮の半導体販売高、8月単月最高、11ヶ月連続$30 billion超

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米国・Semiconductor Industry Association(SIA)から恒例の月次世界半導体販売高が発表され、今回はこの8月について$35.0 billionと単月の史上最高を記録、前月比4.0%増、前年同月比23.9%増と、依然増勢基調が続いている。$30 billion越えが11ヶ月連続と1年に迫るとともに、販売高自体も6ヶ月連続で増えて$35.0 billionに達している。延々と続いた従来の学習曲線(Learning Curve)、Moore's Lawの流れからの大きな様変わりとともに、メモリ、新分野など今後の市場特性如何に一層注目するところとなっている。

≪8月の世界半導体販売高≫

米国SIAからの発表内容が、以下の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
〇月次グローバル半導体販売高が、8月に初めて$35 Billionに−8月の世界販売高が、前年比24%増、前月比4%増;Americas市場が、前年比39%増、前月比9%増で先頭に …10月2日付け SIA/NEWS

半導体製造、設計および研究の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2017年8月の世界半導体販売高が$35.0 billionに達し、前年同月、2016年8月の$28.2 billionに対して23.9%増、前月、2017年7月の$33.6 billionに対して4.0%増、と発表した。主要地域市場すべてで、8月は前年比および前月比ともに増加し、Americas市場が前年比39.0%増、前月比8.8%増で伸びを引っ張っている。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「8月のグローバル半導体販売高は大きく増加、13ヶ月連続の前年比増、初めて$35 billionに達している。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、John Neuffer氏は言う。「8月販売高は全面的に増加、どの主要地域市場も、どの半導体製品カテゴリーも、前年比および前月比でプラスを示している。メモリ製品が全体の市場の伸びを引き続き大きく引っ張っているが、メモリを除いた販売高でも8月は増えている。」

地域別の前年8月比での販売高は、Americas(+39.0%), China(+23.3%), Asia Pacific/All Other(+19.5%), Europe(+18.8%), およびJapan(+14.3%)とすべて大きく増加している。前月比では、Americas(+8.8%), China(+3.7%), Japan(+2.8%), Asia Pacific/All Other(+2.2%), およびEurope(+0.6%) とすべての地域にわたって増加している。

                         【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Aug 2016
Jul 2017
Aug 2017
前年同月比
前月比
========
Americas
5.43
6.94
7.55
39.0
8.8
Europe
2.71
3.20
3.22
18.8
0.6
Japan
2.73
3.04
3.13
14.3
2.8
China
8.99
10.68
11.08
23.3
3.7
Asia Pacific/All Other
8.35
9.77
9.98
19.5
2.2
$28.22 B
$33.63 B
$34.96 B
23.9 %
4.0 %

--------------------------------------
市場地域
3- 5月平均
6- 8月平均
change
Americas
6.27
7.55
20.5
Europe
3.11
3.22
3.8
Japan
2.95
3.13
6.0
China
10.25
11.08
8.1
Asia Pacific/All Other
9.43
9.98
5.9
$31.99 B
$34.96 B
9.3 %

--------------------------------------

「グローバル半導体(国籍別)シェアの約半分を占める米国半導体業界は世界のリーダーであるが、米国各社は激しいグローバル競争に直面している。」
とNeuffer氏は言う。「我々の業界が引き続き母国で伸びて新生面を開いていくために、Washingtonのpolicymakersは米国の税体系を他の国々との競争力において高められる法人税改革を施すべきである。先週議会およびTrump政権の指導者がリリースした法人税改革の枠組みは重要な前進ステップであり、我が業界および米国経済を強化する法人税改革施行に向けてpolicymakersとの協働に期待している。」

※8月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
https://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/August%202017%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた業界各紙の反応が続いている。需要を満たせず価格が上昇する状況、特にメモリのそれがうかがえている。

◇Monthly Chip Sales Hit $35 Billion for First Time-SIA: Aug. chip sales reached $35B, an industry record (10月3日付け EE Times)

◇America continues to drive chip market growth-America remains the hottest geographic market in a global chip market that has recorded its thirteenth consecutive month of year-on-year growth. (10月3日付け EE News Europe)

◇Monthly semiconductor sales reach $35B globally for first time in August (10月4日付け ELECTROIQ)

◇As chip sales hit record levels innovation costs rise-The global chip industry is having a boom year as prices jump on key components leading to higher computing costs (10月5日付け ZDNet)
→半導体価格が月ごと跳ね上がり、メモリのようなkeyコンポーネントの不足が製品製造ラインを休止させて、半導体需要が非常に大きくなっている旨。Semiconductor Industry Association(SIA)は今週、最高記録となる$35 billionの8月販売高を発表、前年同月比24%増、13ヶ月連続の前年比増の旨。

◇Global semiconductor sales seen to continue to record favourable growth (10月5日付け The Edge Markets)

恒例で見ている昨年来の月次世界半導体販売高の推移が、SIA発表時点のデータで次のようになる。1月から8月までの累計が、本年は昨年の20.8%増と改めて知る増勢ぶりである。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
2016年 1月
$26.88 B
-5.8 %
-2.7 %
2016年 2月
$26.02 B
-6.2 %
-3.2 %
2016年 3月
$26.09 B
-5.8 %
0.3 %
2016年 4月
$25.84 B
-6.2 %
-1.0 %
2016年 5月
$25.95 B
-7.7 %
0.4 %
2016年 6月
$26.36 B
-5.8 %
1.1 %
2016年 7月
$27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月
$28.03 B
0.5 %
3.5 %
$212.25 B
2016年 9月
$29.43 B
3.6 %
4.2 %
2016年10月
$30.45 B
5.1 %
3.4 %
2016年11月
$31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月
$31.01 B
12.3 %
0.0 %
 
2017年 1月
$30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月
$30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月
$30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月
$31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月
$31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月
$32.64 B
23.7 %
2.0 %
2017年 7月
$33.65 B
24.0 %
3.1 %
2017年 8月
$34.96 B
23.9 %
4.0 %
$256.38 B
…前年比20.8%増

このような半導体市場の好調が、日銀の短観にも以下の通り反映されている。

◇日銀短観、景況感10年ぶり高水準、半導体・車向け好調−9月、大企業製造業プラス22 (10月2日付け 日経 電子版)
→日銀が2日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス22、前回の6月調査から5ポイント上昇し4四半期連続で改善した旨。10年ぶりの高水準となり、2008年秋のリーマン・ショック後で最も高い旨。半導体や自動車向けの部品の生産が好調で、企業の景況感を押し上げた旨。人手不足などを背景に先行きは慎重な見方が多い旨。

◇景気回復、広がる裾野、半導体など需要伸び期待、人手不足対応、焦点に (10月3日付け 日経)
→企業の景況感の改善が続いている旨。日銀が2日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、全規模全産業の業況判断指数(DI)は26年ぶりの高水準。大企業製造業だけでなく、非製造業、中小などに回復の裾野は広がっている旨。・・・米半導体大手、マイクロン・テクノロジーは広島工場(広島県東広島市)に今後2〜3年で20億ドル(約2200億円)を投じる旨。スマートフォンや自動運転車など半導体需要は伸びが期待される旨。

NANDフラッシュ市場の現状そして見通しがあらわされている。

◇NAND Market Expected to Regain Balance in 2018-Forecast: NAND flash market will rebalance in 2018 (10月3日付け EE Times)
→DRAMeXchange発。NANDフラッシュ市場が、NAND生産が需要適合に向けて立ち上がって、2018年はより良い平衡に向かう見込みの旨。2016年第三四半期以来6四半期連続、NANDの需要は供給を上回っており、力強いサーバ市場およびスマートフォンのメモリ搭載増大から2017年を通してNAND需要は増加し続けている旨。一方、供給は主に3D NANDへのNANDフラッシュメーカーの技術移行により制約がある旨。

以下に示す東芝メモリへの出資を決めている韓国のSKハイニックスであるが、その効果について論じている以下の記事に、現下の市場の率直な見方が示されている。メモリメーカーならではの考え方、そして改めての現在の市場の実態がうかがえるところとなっている。

◇SKハイニックスの東芝メモリ投資、すぐには実益ないが中国の追撃を遅らせる効果 (10月3日付け 韓国・中央日報)
→「短期的な実益は大きくないが、中長期的に東芝との協業シナジーを期待できる」というのが、多くの半導体関連専門家の評価。以下の見方:
 *一つは、中国の追撃をかわず時間を稼いだこと。もう一つは、長期的に技術協業をする機会が生じたこと。
 *メモリ半導体業況が非常に良くても、価格が落ちればトップ1-3位企業だけが規模の経済と技術力で持ちこたえることができ、したがってSKハイニックスが東芝メモリ買収の主体に含まれたということだけで企業の価値が一段階高まる可能性がある。
 *半導体の輸出が急増したのは昨年から続く半導体スーパーサイクル(長期好況)の影響が大きい。人工知能(AI)・モノのインターネット(IoT)などの技術が速いペースで発展し、メモリ半導体の需要は急増している。
 供給が需要に追いつかず、半導体価格も上がっている。DRAMeXchangeによると、DRAM価格は4ギガビットDDR4基準で前年4-6月期の1.3ドルから1年間に3.1ドルまで上昇した。
 *Gartnerは、半導体市場が2019年には供給過剰でDRAMを中心にマイナス成長するという見方を示した。中国などが建設中の半導体ラインから本格的に製品があふれて価格が暴落し、全世界のDRAMの売上高が24.7%減少し、2020年にも28.6%減少すると分析している。


≪市場実態PickUp≫

【東芝メモリ関係】

米ベインキャピタルが率いる日米韓連合への東芝メモリの売却契約の正式発表が行われ、先行き多くの壁が立ちはだかる中、以下の動きが続いている。
米ウエスタンデジタル(WD)は、サンディスク時代からの長年にわたるパートナーであり、東芝との係争解決が依然最大の壁となっている。

◇HOYA、東芝メモリ買収目的会社に270億円出資と発表 (9月28日付け 日経 電子版)
→HOYAが28日夕、東芝の半導体メモリ事業の買収目的会社、パンゲア(Pangea)に対して270億円を出資すると発表の旨。

◇Bain files for China antitrust approval on $18 billion Toshiba chips deal: source (10月4日付け Reuters)
→本件事情通筋発。東芝の半導体部門を$18 billionで先週買収したBain Capitalが引っ張るコンソーシアムが、中国におけるantitrust承認を求めて申請、しかし青信号には9ヶ月以上待たされる可能性の旨。

◇米ベイン「WDとの係争解決を支援」、東芝半導体買収−都内で会見、差し止めリスクには語らず (10月5日付け 日経 電子版 16:19)
→東芝の半導体メモリ事業を米ベインキャピタル率いる日米韓連合が買収することが決まり、ベイン日本法人の杉本勇次代表が5日、都内で記者会見、売却を巡って対立を深める米ウエスタンデジタル(WD)について「重要なパートナー。我々が入り早期に係争解決できるように支援する」と話した旨。WDの法的措置による売却差し止めリスクについては同席弁護士が「守秘義務がある」として回答しなかった旨。

◇東芝半導体、売却停止リスク消えず、差し止め裁定なら−ぬぐえぬWDの影 (10月5日付け 日経 電子版 19:50)
→東芝の半導体子会社「東芝メモリ」を買収する「日米韓連合」の米ベインキャピタルは5日に記者会見を開き、買収の枠組みなどを説明、総額2兆円の大型案件をまとめた高揚感を示すなか、ぬぐい切れないのが米ウエスタンデジタル(WD)による係争リスクの影。売却の暫定差し止めを求めるWDの主張が全面的に通った場合、売却手続きが停止する可能性を否定しなかった旨。

東芝と日米韓連合の間の株式譲渡契約の内容が、以下の通りあらわされている。

◇東芝半導体、売却にハードル、譲渡契約に3条件−独禁法、WD訴訟、外為法をクリア (10月6日付け 日経 電子版 20:27)
→東芝が半導体子会社の東芝メモリを売却するため「日米韓連合」と結んだ株式譲渡契約の内容が明らかになった旨。各国独禁法、米ウエスタンデジタル(WD)との係争、外為法(安全保障)の3つをクリアすることが売却の前提条件と明記。WDとの係争を巡り日米韓側に損失が発生した場合、東芝が最大500億円を補償する規定も盛り込んだ旨。計画通りの売却完了にはなおハードルが残る旨。

【CEATEC JAPAN】

昨年「脱・家電見本市」が宣言され、新たな装いの2回目となる「CEATEC JAPAN 2017」(10月3-6日:幕張メッセ)についての記事を取り出している。「Society5.0」が柱、半数近い49%が新規出展と、顔ぶれ、中身ともに新時代の色合いを一層鮮明にしている。

◇「シーテック」3日開幕、脱・家電見本市へ−LIXIL、三井住友FGなど初出展 (10月2日付け 日経 電子版)
→国内最大の家電・IT見本市「CEATECジャパン2017」が3日開幕、家電の新製品を競っていたかつての姿は昨年の方針転換から一層様変わりし、主軸はあらゆるモノがネットにつながる「IoT」へ移った旨。今年は三井住友フィナンシャルグループ(FG)やLIXILなどが初出展し、IoTが日常生活をどう変えるかをより具体的に見せる旨。

◇Foxconn Nudges Sharp into 'Post-LCD' Era-Forget 8K? (10月3日付け EE Times/Blog)
→CEATEC Japan(日本のConsumer Electronics Show相当)にて、台湾・Foxconn傘下、シャープのLCDリサーチエンジニアとの話。残って過ごしているのではなく、新たな取り組みの第2の人生で活気づいているのを見て、気持ち良い驚きの旨。

◇「シーテック」車業界にも新風、AI、VR…展示続々 (10月3日付け 日経 電子版)
→日本最大の家電・ITの見本市、「CEATEC(シーテック)ジャパン」が3日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開幕、大手電機メーカーの展示に注目が集まる中、自動車を巡る出展も熱を帯びている旨。米国の家電見本市、CESは自動車関連の新サービスなどが相次ぐ業界注目のイベントになっているが、日本のシーテックからはどんな次世代技術が飛び出すのか。

◇IoT技術前面、スマートホームなど展示、シーテック開幕 (10月3日付け 日経産業)
→国内最大の家電・IT見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2017」が3日開幕、昨年から展示内容が大きく見直され、目玉となるのはあらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術などに移った旨。今年はLIXIL(多岐にわたる建材・設備機器と幅広い住関連サービス)など異業種による初出展も目立つ旨。

今回の全体概要が良くうかがえる以下の内容である。

◇Cobot Invasion at Japan's CEATEC-Intelligent Speaker focused on ‘dialogue’-Ping pong, anyone?
 -Visualize your bowing
 -IoT comes to a baseball
 -Folded paper crane, now connected and flying?
 -5G for ‘telexistence’
 -Cocotto gets ‘baby talk’
 -Is a cup you hold virtually hot or cold?
 -Monitoring driver inattention
 -3D LiDAR for autonomous robots (10月6日付け EE Times)
→TV sets, video cams, そして携帯電話を競って披露する伝統的なConsumer Electronicsブランドは過ぎ去って、急速に推進力を得ているのがOmron, Rohm, Alps, Murataなどpartsおよびコンポーネントのサプライヤであり、センサおよびconnectivityモジュールを展開している旨。

【TSMC関連】

TSMCを創設、ファウンドリー業界の現在を導いたMorris Chang氏が、来年6月の引退を発表、業界の即座の反応を呼んでいる。時を同じく、世界をリードする3-nm半導体fabの計画が発表され、後に託す感じ方がある。

◇TSMC、張董事長が引退へ、脱カリスマへ二頭体制−AIなど成長分野狙う (10月2日付け 日経 電子版)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が2日、事実上の創業者で経営トップを務める張忠謀(Morris Chang)董事長が2018年6月の株主総会をもって引退すると発表の旨。2人の共同最高経営責任者(CEO)のうち、劉徳音(Mark Liu)氏が董事長(chairman of the board)に、魏哲家(C.C. Wei)氏が総裁(CEO)に就任する旨。カリスマによる一極集中の経営から「二頭体制」にシフトし、人工知能(AI)などで成長する半導体需要の開拓を加速する旨。

◇Founder of Apple's Top Chipmaker to Hand Over Reins in June-TSMC founder to retire; foundry sets 3nm fab (10月2日付け Bloomberg)
→TSMCのfounder and chairman、Morris Chang氏が、来年6月に退任予定と発表、co-CEOのMark Liu氏がchairmanとして引き継ぐ一方、co-CEOのC.C. Wei氏がCEOポストに就く旨。一方、TSMCは台湾のTainan Science Parkに$15.7 billionのウェーハfab拠点建設を進め、3-nm featuresの半導体が作れる旨。

◇TSMC Chairman Morris Chang Announces Retirement (10月2日付け EE Times)

◇Morris Chang to retire from TSMC in June 2018 (10月2日付け DIGITIMES)

◇Founder of Apple's top chipmaker to hand over reins in June (10月4日付け Indian Express)

Morris Chang氏自身のコメントも見られる業界各紙のそれぞれ思いの入る表し方である。

◇TSMC's Chang, known as father of Taiwan's chip industry, to retire (10月2日付け Reuters)

◇Semiconductor Industry To Lose Titan As Morris Chang Sets TSMC Retirement Date (10月2日付け Forbes)

◇All feasts must come to an end: Q&A with TSMC chairman Morris Chang-Analysis: TSMC's future without its founder (10月3日付け DIGITIMES)
→TSMCを年間売上げ世界最大、約NT$5.72 trillion($188.1 billion)の市場価値づけのファウンドリーにしたMorris Chang氏。来年の6月にTSMCのchairmanを退任する決定には達観しており、「もちろん、中国のことわざにもある通り、どんな饗宴にも終わりがあり、今年始めにすでに心の備えをしていた。」と、インタビューで同氏。

◇Commentary: The arrival of post-Morris Chang era (10月3日付け DIGITIMES)

◇Smooth Succession Expected at TSMC (10月4日付け EE Times)
→TSMCを取り上げているアナリストによると、TSMCでは来年6月に現在のChairman、Morris Chang氏が退任、新しいマネジメントへの円滑な移行が見られそうな旨。しかしながら、同氏の後を継いでいくのは容易ではなく、同氏は1987年にTSMCを世界初の専業ファウンドリーの1つとして創設、当時は半導体ecosystemの中で懐疑的に見られたstartupであった旨。

3-nm半導体fabの計画概要が以下の通りあらわされている。

◇TSMC Aims to Build World’s First 3-nm Fab (10月2日付け EE Times)

◇Officials vow to help TSMC build plant-GREAT RESPONSIBILITY: The plant could be the biggest investment in Taiwanese history, but before it can be realized, permits, water and electricity supply need to be taken care of (10月2日付け The Taipei Times (Taiwan))
→TSMCが、Southern Taiwan Science Park(南部科學工業園)の一部、Tainan Science Park(台南科學園區)に先端3-nmファウンドリーを建設する狙いの旨。

◇TSMC 3nm fab plan to create huge biz opportunities for supply chains-Taiwan's supply chain to benefit from TSMC's 3nm fab (10月5日付け DIGITIMES)
→TSMCのSouthern Taiwan Science Parkに3-nmウェーハfab拠点を建設する決定は、IC組立&テストサービスを供給するところなど複数の会社に追加のビジネスを生み出す見込みの旨。TSMC Grand AllianceのメンバーであるChunghwa Precision Test Techは、次世代ウェーハprobe cardsに向けて現地人材およびR&Dを高める投資を行うとしている旨。

◇TSMC、3-nm半導体工場、台南、2020年に量産見通し (10月5日付け 日経産業)
→半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は、回路線幅3-nmの半導体工場を台湾南部の台南に建設すると発表、現行の世界最先端は10-nmで、国際的に独走態勢が鮮明になる旨。台湾南部の「南部科学工業園区」のうち台南市の区画に決め、TSMCは「完全に整備されたサプライチェーン(供給網)のメリットを生かす」とした旨。台湾の科学技術部によると、量産開始は2022年になる見通しの旨。

【Intel関連】

何よりも、2013年まで8年間IntelのCEOを務めたPaul Otellini氏の突然の訃報に驚いている。以下の内容、感慨を改めて受け止めている。

◇Former Intel CEO Paul Otellini Dies (10月3日付け EE Times)
→Intelで初、non-engineerでCEOを務めたPaul Otellini氏が月曜2日死去、66才。Otellini氏は2005年から2013年までIntelを率い、この間同社の年間売上げが$34 billionから$53 billion以上に高まった旨。Intelによると、Otellini氏在職8年の間の売上げはそれ以前45年の合計を上回っている旨。

◇Former Intel CEO Paul Otellini dies in sleep-Paul Otellini was almost 67 and spent his entire professional life at Intel. (10月4日付け ZDNet)
→「Paul Otellini氏がCEOになったとき、IntelのPC市場市場シェアが急減、AMDが食っていたことを思い起こす人は少ない。」と、VLSI ResearchのG. Dan Hutcheson氏。

現下のビジネスの動きから、Appleの自前半導体設計の拡大がIntelはじめベンダー各社へのインパクト如何と取り上げられている。

◇Apple: A semiconductor superpower in the making-US company's chip ambitions risk disrupting supply chain-Sources: Apple to expand its chip designs (9月29日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→業界筋発。Appleが、artificial intelligence(AI)応用対応に向けて独自固有の半導体を設計するプログラムを拡大する計画、この動きは、半導体ベンダーとしてのIntelおよびQualcommへの依存を削減することになる旨。

◇Intel Shouldn't Worry Too Much About Apple's Chip Ambitions (10月4日付け Forbes)

足もとの台湾でのマザーボードに向けた新しいプロセッサ&チップセットの投入である。

◇Intel readies Coffee Lake lineup-Intel debuts "Coffee Lake" processors, chipsets (10月6日付け DIGITIMES)
→Intelが、同社14-nmプロセス技術で作られた3つの"Coffee Lake" desktopプロセッサをともに動くZ370チップセットとともに投入、ASRock, Asustek Computer, Elitegroup Computer Systems, Gigabyte Technology, Micro-Star Internationalなどのマザーボードメーカーが、Z370-ベースマザーボードの販売を開始の旨。

【M&A関連】

あの吹き荒れたM&Aの嵐はどこへやらという感じがある中、英国のDialog Semiconductorが、Configurable Mixed-signal ICs(CMICs)の米国・Silego Technologyを買収している。その発表前日のSilegoのCEOのコメント記事とともに以下の通りである。

◇Silego CEO Talks Configurable Mixed-signal ICs-Silego CEO touts configurable mixed-signal chips (10月4日付け EE Times)
→Configurable Mixed-signal ICs(CMICs)を30億個出荷しているSilego Technology(Santa Clara, California)のCEO、John Teegen氏。
CMICsは、複数の応用に向けて適合する何にでも使える半導体である旨。
「2010年に戻って我が社がPC clock半導体の会社からこの新しいカテゴリー作成に枢軸を置いたとき、我々の顧客はcomputer guysであり、我々が始めるに合うところであった。」と同氏。

◇Dialog Semi to Buy Silego for up to $306 Million (10月5日付け EE Times)
→Dialog Semiconductorが、configurable mixed-signal IC(CMIC)ベンダー、Silego Technologyを最大$306 millionで買収、Dialogの既存顧客での売上げを伸ばすとともに顧客基盤を拡げる旨。Dialogのexecutivesは、Silegoの技術を自社のpower managementおよびconnectivity offeringsを高度に補足するものとしており、該取引によりDialogの対応可能市場全体が$1.4 billion以上に拡大すると見ている旨。

◇Dialog Semiconductor to buy Silego to expand into Internet of Things-Dialog adds IoT chips with Silego acquisition (10月5日付け Reuters)
→Dialog Semiconductor(Reading, United Kingdom)が、configurable mixed-signal ICs(CMICs)のサプライヤ、Silego Technology(Santa Clara, California)の買収に合意、$276 million in cashおよび売上げ目標に応じて追加最大$30.4 millionの旨。Dialogは、Fitbit, GarminおよびGoProなどinternet of things(IoT)応用向けにSilegoの半導体を用いているいくつかの顧客を獲得する旨。

◇Dialog to acquire Silego (10月6日付け DIGITIMES)


≪グローバル雑学王−483≫

米国トランプ政権の対中国政策、その前に政権内の落ち着き具合の経過、実態を、

『「米中経済戦争」の内実を読み解く』
 (津上 俊哉 著:PHP新書 1105) …2017年7月28日 第1版第1刷

より日々のニュースで知る断片を埋めていく。つい最近のこと、政権の閣僚としては初めて、厚生長官が辞任に追い込まれているが、絡み合う力学の理解が深められる感じ方がある。米国と中国の経済、とくにマネーの世界は、分かれたくとも分かれられない深い関係にあることがポイントであり、北朝鮮を巡る最近の米中の動きを見るにつけても、片方だけでは踏み込めない国際政治および経済の現在というものを受け止めている。


第3章 トランプの対中政策 ――「米中貿易戦争」の内実

・2017年1月、トランプ大統領就任、電撃侵攻作戦を思い起こさせる挙に
 →永年米国の政治・経済・外交を担ってきたワシントンの住人には、クーデターを起こされたようなもの

〇ナショナリスト対グローバリスト ――政権内の権力闘争
・トランプ政権の混乱と喧噪の最初の100日間が過ぎていく過程で、情勢は第二幕へ
 →政権内部の「権力闘争」が始まった
  …経済面では、ナショナリスト対グローバリスト
  …外交・安全保障面では、オルタナ・ライト(alt-right:ネット発の新しいタイプの右派層)と呼ばれる一派と安保の主流派の間の路線対立
・トランプ政権を構成する人々
 →大統領の身内で信任がとくに厚いイヴァンカ、クシュナー夫妻
  →トランプ政権とエスタブリッシュメントの架け橋という特異な役割
 →夫妻がエリート、主流派の側についた結果
  →グローバリストの政策が採用されやすくなり、外交安全保障面でも伝統的な主流派が実権を奪還した見え方
・トランプに働いている「バランス感覚」
 →クシュナー夫妻の懸命の残留働きかけにも拘らず、2017年6月、気候変動に関するパリ協定から脱退

〇トランプ政権の公約は実現するのか
・米国政治が大災厄にはならずに済みそうという期待の一方、新たな「期待外れ」も
 →議会の中で共和党がバラバラで団結できないことが露呈
  →オバマケア(医療保険制度拡充)を撤廃する法案づくりが、下院共和党の内輪もめで3月に頓挫
・ワシントンでは、「トランプ政権は2017年に大きな仕事は何も進められない。進展があるとしても2018年以降」という見通しが強まっている

〇「ロシア・ゲート」 ――トランプ大統領は弾劾されるのか
・トランプ大統領・政権は、多くの点で歴代米国大統領・政権とは異質。とくに「ロシアとの距離」
 →ロシアと無用に対立、反目。米国はいつまで経っても中東の軍事的な泥沼から足抜けできないという思い
 →トランプは大統領選挙に出馬前から、本業の不動産ビジネスでロシアと深い関係があったとされる
  …トランプはロシアの富豪に人気。知り合いになれることを喜んで部屋を買った者がかなりいるという
 →「どす黒い」イメージがつきまとっているトランプとロシアの関係
・トランプの弾劾を内心待望する空気があるが、それは短慮
 →第1:トランプには今なお熱狂的な支持者が大勢。米国社会の分断はいっそう深まる。
 →第2:トランプの性格からして、辞任圧力を受ければ頑なに拒むだろう
 →第3:そうしても、トランプ政権が危機を脱せる訳ではない。米国政府の麻痺状態が続く恐れ

〇対中通商政策が決まるのもまだ先
・懸念されてきた対中通商政策
 →トランプ政権の混乱と転変による視界不透明が続いている
・第1案:国境調整税
 →与党共和党が推進する「輸出に減税し、輸入に増税する」というアイデア
 →実現可能性がどこまであるか疑わしい
・第2案:為替操作を理由とする相殺関税
 →国家通商会議(ナヴァロ委員長)が一時期検討、外国政府の補助金を得て安く売られる輸入品に対する相殺関税
 →ナヴァロが政権内で力を失っていくのと同時に立ち消えになった模様
・第3案:鉄鋼製品などを対象とする反ダンピング課税
 →中国からの輸入素材(鉄鋼、化学品など)に反ダンピング税を発動、中型の米中通商紛争を演出するというアイデア
・実際に発動できそうなのは第3案くらいのもの
 →最後は「交渉妥結、ウィンウィンの結末」、出来レースの米中貿易戦争に
・2017年4月の米中首脳会談にて、トランプは「『中国が北朝鮮問題を解決するなら、米国との通商合意ははるかに良いものになる』と習主席に説明した」と述べた由
 →「豹変するトランプ」の面目躍如だが、対中通商政策の行方はいよいよ不透明に

〇為替問題 ――米中関係の「不都合な真実」
・トランプが中国との為替問題に関する公約を撤回した2つの理由
 →1つ:中国経済の急激な変化、為替操作との米国に根強い見方が時代遅れで事実と符合しなくなってしまった
  →資本流出を食い止めるのに中国当局は苦労。為替介入は、元安防止のために外貨を売る介入が当たり前に

〇中国は「経済核爆弾」を使えない
 →2つ目:米国と中国の経済、とくに金融が分かれたくとも分かれられない深い関係に
  →とくに、中国政府が膨大な量の米国国債(treasury bill)を保有していること
  →米国債をたたき売る「経済核爆弾」みたいな使い方も、およそ考えられない

〇中国に米国債の大量売却をさせるな
・FRB(米国連邦準備制度)は、リーマン・ショック後の2008年以降、QE(Quantitative Easing:量的緩和策)として、債券などの金融資産を大量に買い入れ
 →最近、FRBはバランスシート減量の検討を正式に始めた
・FRBが急膨張させた期間中、中国人民銀行(PBOC:People's Bank of China)の外貨準備も同じ期間に膨張の後、最近は急減という経過
 →この中国のハイピッチな外貨準備取り崩しが問題
  →そのペースは本家FRBの減量に匹敵する恐れ
・米国の金融関係者は早くからトランプに「いま為替で火遊びするのは止めてほしい」という働きかけをしていたはず

〇米中経済関係は抜き差しならぬ深さ
・以上のように、米国と中国の経済、とくにマネーの世界は、分かれたくとも分かれられない深い関係に
 →中国と米国は、互いに戦争をしたり、抜き差しならぬ対立関係に陥ったりできる相手ではなくなっている
・中国の協力を得ないと進められない課題は様々
 →北朝鮮問題、中東問題、反テロ対策、地球環境問題、……
 →米国が中国の力を借り、中国が国際的役割と重みを増していく現実は否応なしに進んでいる
 →このトレンドを阻止する決定的な力は、我々日本にはないという現実を見据える必要も

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