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盛り返しから1年、半導体販売高活況、一層敏感になる今後の動き

世界半導体販売高が目に見える増加に転じたのが昨年の夏であり、10月以降9ヶ月連続の$30 billionを越える各月販売高と、熱い活況が続いている。
World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)も、この6月時点で今年の販売高が昨年比11.5%増と久々二桁の伸びを予測したが、現下の勢いを受けてこのほど17%増の$397 billionと、$400 billionの大台が間近に見える上方修正を表している。今年前半のデータを締めて、今後の動きを日々見つめ占っていく敏感な空気が張り詰めるところがある。

≪さらなる予測の上方修正≫

毎月始めの米国Semiconductor Industry Association(SIA)による月次世界半導体販売高を追ってきているが、このところ恒例で示している通り、昨年1月から現時点に至る推移が次のように表わされる。この1年の目に見える増加を確認するとともに、間近に迫るこの7月の販売高発表を待つところである。

販売高
前年同月比
前月比
2016年 1月
$26.88 B
-5.8 %
-2.7 %
2016年 2月
$26.02 B
-6.2 %
-3.2 %
2016年 3月
$26.09 B
-5.8 %
0.3 %
2016年 4月
$25.84 B
-6.2 %
-1.0 %
2016年 5月
$25.95 B
-7.7 %
0.4 %
2016年 6月
$26.36 B
-5.8 %
1.1 %
2016年 7月
$27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月
$28.03 B
0.5 %
3.5 %
2016年 9月
$29.43 B
3.6 %
4.2 %
2016年10月
$30.45 B
5.1 %
3.4 %
2016年11月
$31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月
$31.01 B
12.3 %
0.0 %
2017年 1月
$30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月
$30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月
$30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月
$31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月
$31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月
$32.64 B
23.7 %
2.0 %

WSTSは、この推移、勢いを受けて、以下の通り6月時点からさらにこのほど予測の上方修正を行っている。かつての二桁増が当たり前であった時期、時代を彷彿させている。

◇WSTS Revises Chip Growth Forecast to 17%-WSTS 2017 forecast now calls for 17% growth in chip sales (8月21日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)が、2017年半導体販売高予測を改定、現時点2016年に対して17%の伸びを見ている旨。これで予測を上方修正している多くの他の市場watchersに加わる形、半導体業界は、capacity供給不足の渦中のメモリ半導体価格の急上昇が大方の奏功、2010年の不況からの回復以来最大の伸びを謳歌する軌道にある旨。

◇WSTS raises 2017 chip market forecast…again (8月21日付け EE News Europe)
→メモリコンポーネントの価格上昇から、World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationが2017年グローバル半導体市場伸長予測を17%増に上方修正、この6月時点の11.5%増からの上昇の旨。

◇Semiconductor market to grow 17% in 2017, says WSTS (8月23日付け DIGITIMES)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)発。2017年の世界半導体市場について、17%増の$397 billionと予測、前回は11.5%増に見ていた旨。
メモリ分野がASPs上昇から2017年は予想を上回る伸び、前回の30.4%増から今回50%以上の売上げの伸びを見ている旨。2018年の半導体市場についてもWSTSは楽観的な見方、4.3%増の$414 billionの売上げを予測の旨。

関連業界データのアップデートにますます敏感になってくるが、半導体製造装置についてSEMIによる北米業界の7月billingsが次の通り表わされている。前年同月比の%数字が示す勢いであり、先行き目が離せないところである。

◇North American semiconductor equipment industry posts July 2017 billings (8月23日付け ELECTROIQ)
→SEMIのJuly Equipment Market Data Subscription(EMDS) Billings Report発。北米半導体装置メーカーの2017年7月の世界billings(3ヶ月平均)が$2.27 billion、前月($2.30 billion)比1.4%減、前年同月($1.71 billion)比32.8%増。ここ6ヶ月の推移(金額:USM$):

Billings
Year-Over-Year
(3ヶ月平均)
February 2017
$1,974.0
63.9%
March 2017
$2,079.7
73.7%
April 2017
$2,136.4
46.3%
May 2017
$2,270.5
41.8%
June 2017 (final)
$2,300.3
34.1%
July 2017 (prelim)
$2,268.4
32.8%

[Source: SEMI (www.semi.org), August 2017]

2017年の半導体設備投資(capex)の予測についても、IC Insightsは20%増と改めて表わしているが、今年前半だけですでに前年同期比48%増となっている。

◇Semiconductor industry capital spending forecast to jump 20% in 2017 (8月22日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsの最新予測、August Update to The McClean Report 2017発。今年の半導体業界capital spendingが20%踏み上がると見る旨。

◇Chip Capex Expected to Soar 20%-IC Insights: Samsung leads leap in chip capex (8月23日付け EE Times)

◇Semiconductor industry capital spending to rise 20% in 2017, says IC Insights (8月24日付け DIGITIMES)
→IC Insightsが、2017年の半導体業界capital spending見通しを20%成長に改定、2017年前半ですでに前年同期比48%増となっている旨。

現下の熱い活況を引っ張っているメモリ、そしてその高止まりの価格であるが、DRAMについてこの第二四半期の状況である。史上最高の販売高更新とともに引き続く基調となっている。

◇Global DRAM revenues increase 17% in 2Q17, says DRAMeXchange (8月21日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2017年第二四半期のグローバルDRAM市場販売高が、前四半期比16.9%増の$16.51 billion、PC DRAM契約価格が10%超上がった旨。
該四半期売上げは史上最高更新でもあった旨。「DRAM市場は、ASPs上昇およびサプライヤの技術移行の継続的進展の恩恵を被っている」と、DRAMeXchangeのリサーチmanager、Avril Wu氏。

◇Global mobile DRAM revenues increase 14.8% in 2Q17, says DRAMeXchange (8月24日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2017年第二四半期のモバイルDRAMメモリのグローバル販売高が、前四半期比14.8%増の$6.21 billion、第三四半期にはさらに踏み上がると見ている旨。スマートフォンbrandsは第一四半期に低迷、2017年の出荷目標を下方修正したが、第二四半期に需要が持ち上がり始めて在庫補充を急いでいる旨。

NANDフラッシュについても同様のデータが見られており、むしろこれから打ち上げられるスマートフォンの新製品に向けて供給不足が懸念されている。

◇Global 2Q17 NAND flash market posts 8% growth, says DRAMeXchange (8月22日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2017年第二四半期の世界NANDフラッシュメモリ市場売上げが$13.22 billion、前四半期比8%増、引き続き供給が逼迫しており、各種NANDフラッシュ製品の契約価格が前四半期比3-10%上がっている旨。

◇NAND Prices Expected to Continue Rising (8月22日付け EE Times)

◇Flash Memory Shortage Hits Smartphone Supply (8月24日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Conn.)発。2017年第二四半期のグローバルスマートフォン販売総数が366.2 million台、前年同期比6.7%増、しかしながら、フラッシュメモリなどコンポーネントの供給制約が年後半のスマートフォン供給にインパクトを与える見込みの旨。NANDフラッシュおよびOLEDディスプレイのコスト上昇および出回り減少が、残る今年のpremiumスマートフォン販売に影響を与える旨。

もう1つ、著しい伸びに注目させられたTDDI(touch and display driver integration)半導体の特に今後に向けた読みである。

◇Digitimes Research: Global TDDI chip shipments for 2017 to shoot up 191% on year-Forecast: TDDI chip shipments to rise 191% in 2017 (8月21日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Research発。2017年のグローバルTDDI(touch and display driver integration)半導体出荷が191%増と激増する見込み、主にhybrid in-cell TDDI半導体の出荷増およびディスプレイパネルへのTDDI半導体の取り入れの伸びが効いており、過去の米国・Synapticsの席巻を打ち破って台湾の半導体メーカーがこの分野で約40%のグローバル市場シェアを占めている旨。

◇Chipbond, ChipMOS see rising orders for TDDI chips (8月25日付け DIGITIMES)
→業界筋発。backend houses、Chipbond TechnologyおよびChipMOS Technologiesには、18:9スマートフォンパネル立ち上げに向けたTDDI(touch with display driver integration)半導体受注が見えて、2017年後半の販売高を高めていく旨。

今後を占う上で重要になるのが、半導体業界の自立化を図る一方で市場での非常に大きなプレゼンスを示す中国であるが、その中国そして台湾からの業界キーパーソンからの見方、コメントが以下の通りである。

◇China to phase in 14nm semiconductor process in 2018, says top tech master-Official: China to make 14-nm chips next year (8月22日付け DIGITIMES)
→Institute of Microelectronics under the Chinese Academy of Science(IMECAS)のdirector、Ye Tianchun氏。中国は、2018年に完全に産業化される14-nm半導体の製造装置、プロセス、実装および材料における系統だった運用を進めており、また、2016-2020年の第13次5ヶ年開発計画のもと5-7-nmプロセスおよび3Dメモリへの主要な支援を行う旨。税関統計によると、2016年の中国のIC製品の輸入高は$227 billionで同年の原油輸入の2倍、一方、IC輸出は$61.4 billion止まりの旨。この非常に大きな貿易赤字は、主に中国の輸出向けhigh-end半導体製品の不足からきている旨。
米国は最近、中国のintellectual property(IP)政策&慣行が不合理あるいは差別的かどうか判断する通商法301条("Section 301")調査を打ち上げ、広範な憶測として調査対象のハイテク分野に米国は半導体を挙げており、中国の半導体業界の増大を抑える狙いの旨。Ye氏はこれに対して、何年にもわたって西側先進諸国は重要IC技術の中国への流れを厳しく阻止しており、中国メーカーが対抗する最善の方法は自分たちで技術革新およびブレイクスルーを追及することである旨。

◇China could enhance its position in post-Moore's Law era, says former TSMC COO-The end of Moore's Law could benefit China (8月23日付け DIGITIMES)
→TSMCの前executive vice president & co-chief operating officer、Shang-yi Chiang氏。Moore's Lawの終焉は、中国の半導体業界にはopportunityと見る旨。Moore's Lawが約10年で物理的限界に達するにつれ、中国の半導体科学技術者は世界中のcounterpartsと一層対等な立場となり、3-nm以下のfeaturesの半導体の時代革新を行っていく旨。

≪市場実態PickUp≫

【東芝メモリ入札関係】

東芝が半導体メモリ事業の売却を巡り、交渉が膠着している日米韓連合から態度を変えて、米ウエスタンデジタル(WD)陣営と優先的に協議することを経営会議で決定、今月内に決着を図らざるを得ない圧力が相乗的に働いて、以下の推移で局面の大きな転換が図られている。肝心のNANDフラッシュメモリ市場の業況を見ても、首位のサムスンとの差が拡がって東芝とWDを合わせても追いつかないデータとなっており、半導体の活況もいつまで続くか目が離せないなか、争っている場合じゃないとの声の高まりを受け止めるところである。そして、最新記事として、東芝がWD連合と大筋合意、月内にも契約の動きが見られている。

◇Hynix looking to acquire Toshiba says Korean report-SK Hynix wants to buy Toshiba Memory, report says (8月21日付け Electronics Weekly (UK))
→Korea JoongAng Daily newspaper(韓国・中央日報)発。Korea Institute for Industrial Economics and Trade(KIET)の調査は、Hynixが東芝のメモリ事業買収を図っている、としている旨。

◇東芝、WDとトップ会談、訴訟撤回を再び要請か、半導体売却、月内決着探る (8月22日付け 日経)
→東芝の半導体メモリ事業売却を巡って対立する米ウエスタンデジタル(WD)のスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)が月内にも来日し、東芝の綱川智社長と会談することが21日わかった旨。ミリガン氏は自社陣営への売却を求め、綱川氏はWDによる訴訟取り下げを要請するもよう。東芝は月内の売却先決定を急いでおり、トップ会談が膠着する売却交渉の転換点となる可能性もある旨。東芝は銀行団から8月末までの売却契約締結を求められ、尻に火が付いており、WDと和解しないと日米韓連合への売却も難しいため、綱川社長は早期の訴訟取り下げを再度求める見通しの旨。ただWD側は自陣との売却契約を結ぶことを訴訟取り下げの条件としているもようの旨。

◇東芝の半導体売却、WDと協議、月内決着へ機構と連携 (8月23日付け 日経 電子版)
→東芝が半導体メモリ事業の売却を巡り、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)と月内決着に向けて協議に入ったことが22日明らかになった旨。WDは官民ファンドの産業革新機構などと買収連合をつくる旨。東芝は法廷で争うWDを取り込み、膠着していた売却交渉を前進させる旨。合意すればWDは売却差し止めを求めた裁判所への申し立てを取り下げる旨。WDは東芝との合意に基づき半導体メモリ事業の資産査定に入っており、来週にも作業を終える旨。東芝は月内の取締役会で承認を得た上で最終契約を結ぶ計画。
ただ、WD陣営との協議が不調に終わった場合、東芝は新たな資本増強を含めた再建策の練り直しを検討することになる旨。

◇Toshiba, Western Digital enter talks on memory sale-Partners seek to move on from bruising legal battle with deal by month-end-Toshiba talks with WD about memory chip unit (8月23日付け Nikkei Asian Review (Japan))

◇SK hynix may be far from acquiring Toshiba-SK says ‘negotiations are underway’ (8月23日付け The Korea Herald (Seoul))

◇Western Digital May Get Toshiba Memory After All (8月24日付け EE Times)

◇Western Digital group to offer $17.4 billion for Toshiba chip unit: sources-WD group reportedly bids $17.4B for Toshiba chip unit (8月24日付け Reuters)
→Western Digitalのコンソーシアムは、東芝の半導体事業に向けて$17.4 billion(1.9 trillion yen)を支払う用意である旨。KKR & Co., 産業革新機構(Innovation Network Corp. of Japan)およびDevelopment Bank of Japanが該入札でWDに加わっている一方、東芝の融資筋は新たな貸し付けで約$6.4 billionを供給する用意の旨。

◇東芝・WD歩み寄り、月内決着へ銀行が圧力 −WDは減損懸念 (8月24日付け 日経 電子版)
→東芝は半導体メモリ事業の8月中の売却合意を目指し、対立してきた協業先の米ウエスタンデジタル(WD)の陣営と協議に入った旨。早期打開は絶望的にも見えた対立が歩み寄りへと急展開した背景には、東芝とWD、そして銀行がそれぞれ直面する瀬戸際の事情があった旨。

◇東芝半導体売却、WDと優先協議、日米韓連合から変更 (8月24日付け 日経 電子版)
→東芝は24日、社内外の取締役が集まる経営会議を開き、半導体メモリ事業の月内の売却契約締結に向けて米ウエスタンデジタル(WD)陣営と優先的に協議することを決めた旨。韓国SKハイニックスなどが参加する日米韓連合との交渉が進展しないため、優先交渉先を切り替える旨。8月末までの最終合意を目指し、買収額やWDの出資形態などの条件交渉を加速させる旨。

◇東芝、売却2兆円軸に、半導体、WDと優先協議 (8月25日付け 日経)
→東芝は24日、半導体メモリ事業の8月末までの売却合意に向けて米ウエスタンデジタル(WD)陣営と優先的に交渉することを決めた旨。売却額は2兆円を軸に詰めの調整に入り、出資形態などの条件交渉も進める旨。WD陣営と合意できれば、東芝が上場廃止を回避するために不可欠な売却手続きが大きく前進する旨。

◇サムスン対抗へ復縁狙う、東芝・WDの半導体協議大詰め (8月25日付け 日経 電子版)
→半導体事業の売却を巡り対立していた東芝と協業先の米ウエスタンデジタル(WD)が復縁に向けてかじを切った旨。フラッシュメモリ世界首位の韓国サムスン電子が独走し、両社ともに競争力を失うとの危機感が背景にある旨。もともとWDが買収した米サンディスクと東芝はサムスンへの対抗軸をつくるため手を組んだ旨。原点に立ち返り、東芝とWDが復権を目指し合意すれば世界シェアは30%を超え、サムスンに近づく旨。

◇Western Digital won't seek management role in Toshiba chip business: sources-Sources: WD won't manage Toshiba chip unit (8月25日付け Reuters)
→本件事情通、金曜25日発。Western Digital社が、東芝のメモリ半導体部門買収について、該事業のマネジメントの役割は求めないとしている旨。

◇「将来の上場」東芝メモリ売却条件…WD前向き (8月26日付け YOMIURI ONLINE)
→東芝が、メモリ子会社「東芝メモリ」の売却先の軸としている米半導体大手、ウエスタン・デジタル(WD)などの企業連合に対し、国際仲裁裁判所にWDが求めた売却差し止めの取り下げと、東芝メモリの将来的な上場を合意の条件としていることが分かった旨。24日の交渉では、WDは前向きな姿勢を示した旨。WD側が無条件で受け入れれば、交渉は8月末までの合意へ向けて大きく前進するとみられる旨。

◇東芝、WD連合と月内にも契約へ、半導体売却で大筋合意 (8月27日付け 朝日新聞DIGITAL)
→東芝が半導体子会社「東芝メモリ」の売却で、協業先の米半導体大手ウエスタンデジタル(WD)などでつくる「新日米連合」と契約をむすぶ方向で大筋合意したことが26日、わかった旨。WDが将来的にもつ議決権を3分の1未満に抑えることで合意した旨。今後、細部を詰めたうえで月内にも契約をむすぶ旨。関係者によると、買収額は約2兆円。WDは普通株に換えられる社債で1500億円を出す旨。

【Hot Chips】

恒例のHot Chips conference(2017年8月20-22日:Flint Center for the Performing Arts, Cupertino, California)が開催され、今年はneuromorphic computingおよびmachine learningが半導体設計の最先端を席巻している、と大方の見方となっている。誰もがartificial intelligence(AI)絡みの取り組みと、最後のまとめの記事にも表わされている。

◇Q'comm Details ARM Server SoCs-Centriq built up from dual-core processors (8月21日付け EE Times)
→Qualcommが、今週のHot Chips(2017年8月20-22日:Flint Center for the Performing Arts, Cupertino, California)にて、同社最初のサーバプロセッサに入ったcustom ARM coreをプレゼン、該Falkor CPUは、同社10-nm Centriq 2400の中核であり、ビッグデータセンター向けに今年後半出荷される48-core SoCである旨。今までいくつかのメーカーがARM-ベース製品を擁してのサーバでの足場獲得を試みているが、Intelのx86-ベースXeonの性能に対抗できずこれまで概して失敗している旨。しかしながら、今年始めにMicrosoftのデータセンターグループはQualcommそして競合のCavium製SoCsをテストしていると発表の旨。

◇Startup Unveils Graph Processor at Hot Chips (8月21日付け EE Times)
→5年のstartup、ThinCI(“Think-Eye”と読む:El Dorado Hills, CA)が月曜21日、Hot Chips symposium(2017年8月20-22日:Flint Center for the Performing Arts, Cupertino, California)にて、同社の“Graph Streaming Processor(GSP)”をプレゼン、machine learningおよびcomputer visionに向けた半導体を開発する同社は、GSPおよびGraph Computing compilerを展開する運びの旨。

◇Microsoft Describes Next Xbox SoC-Scorpio picks 12GB GDDR5 over HBM memory-Microsoft details SoC for next-gen Xbox (8月22日付け EE Times)
→Microsoftが、Hot Chips conference(2017年8月20-22日:Flint Center for the Performing Arts, Cupertino, California)にて新しいXbox X Oneゲーム機の中のScorpio system-on-a-chip(SoC)デバイスの詳細をプレゼン、該半導体は7 billion個のトランジスタ、TSMCが16FF+プロセスで製造、359mm2で6 TFlopsのグラフィックス性能の旨。AMDとの連携で設計された該半導体はまた、2.3 GHz動作の8個のx86 coresがあり、4 Mbytes L2 cacheを共有の旨。

◇Hot Chips Spotlights Chip Stacks-Chiplets seen as the future of IP blocks-Chip companies sign on for DARPA program (8月23日付け EE Times)
→Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA)傘下のCommon Heterogeneous Integration and IP Reuse Strategies(CHIPS)プログラムについて。向こう8ヶ月にわたって、open半導体インタフェースの定義づけ&テストを目指し、3年以内に、複数のメーカーが該linksを用いて洗練されたコンポーネント形成に向けて広範囲のdieを接続することを期待の旨。Intelは該プログラムに参加、同社のembedded multi-die interconnect bridge(EMIB)を開示するかどうか社内で議論している旨。
同社はEMIBの現時点最も詳細をHot Chips event(2017年8月20-22日:Flint Center for the Performing Arts, Cupertino, California)にて示している旨。

◇Google Fellow: Neural Nets Need Optimized Hardware (8月23日付け EE Times)
→Hot Chips conference(2017年8月20-22日:Flint Center for the Performing Arts, Cupertino, California)にて、Googleのsenior fellowでdeep learning artificial intelligence(AI)リサーチプロジェクト、Google Brainのリーダー、Jeff Dean氏の基調講演。如何にdeep neural netsがcomputational機器の新生面を劇的に開き、音声, vision, 検索, roboticsおよびヘルスケアなどの領域を大きく進歩させているか、プレゼンの旨。

◇FPGAs power deep learning platform-Microsoft uses Intel FPGAs for deep learning (8月23日付け New Electronics)
→Microsoftが、IntelのStratix 10 field-programmable gate arrays(FPGAs)搭載加速化deep-learningプラットフォームでreal-time artificial intelligence(AI)を可能にしている旨。「Intel FPGAsのflexibilityを探求、新たな革新を急速に取り入れる一方、多くのASIC-ベースdeep learningプロセスunitsに匹敵、あるいは上回る性能を得ている」と、Microsoft Research NExTのdistinguished engineer、Doug Burger氏。

◇16 Views of Hot Chips ‘17 (8月24日付け EE Times/Slideshow)
→machine learningが席巻したHot Chips conference(2017年8月20-22日:Flint Center for the Performing Arts, Cupertino, California)、誰もがAIの何かをやっているのは明らかであった旨。以下の全体内容:
 Many roads up the machine-learning mountain
 Microsoft goes soft on FPGAs
 M'soft’s Doug Burger on AI and more
 Jeff Dean peers into the AI horizon
 The story of Google's gigantic hammer
 Amazon goes soft on FPGAs, too
 China's online bear seeks an XPU(…CPUs, GPUsおよびFPGAsのhybrid)
 Intel does machine learning four ways
 A fairly long list of AI silicon startups
 ASIC done in nine months for $1.3M
 AMD Vega, Nvidia Volta go head-to-head, sorta
 A call to action on chip design
 Cisco flexes some networking muscle
 Mainframes live, and they still run Cobol

【Intelの最新PC半導体】

Intelが、Laptops PC高速化に向けて第8世代Kaby Lake Coreプロセッサを打ち上げている。10年に1度の高性能化が謳われており、14-nmから10-nmに向かう展開に注目である。

◇Intel Unveils Newest Chips To Speed Laptops (8月20日付け Fortune)

◇Intel to launch new 8th generation Kaby Lake Core processors today-New i7/i5 chips for laptops are the first to land.-Intel debuts 8th-generation Kaby Lake chips (8月21日付け ZDNet)
→Intelが、第8世代Kaby Lakeアーキテクチャー搭載の4つの新しいquad-core laptop半導体を投入、2つのCore i7プロセッサおよび2つのCore i5プロセッサの旨。この世代は、当初14-nm+ Kaby Lakeアーキテクチャーで製造される一方、今後の半導体は14-nm++ Coffee Lakeおよび10-nm Cannonlakeアーキテクチャーで作られる旨。

◇Intel Says New PC Chip Is ‘Once-in-a-Decade’ Performance Boost (8月21日付け Bloomberg)

【SamsungのGalaxy Note8】

昨年はNote7の発火事故で大変苦しんだSamsungが、「iPhone」対抗の新型、Galaxy Note8を披露して巻き返しを図っている。該機種は、Qualcomm Snapdragon 835モバイルプラットフォームを採用、10-nm FinFET技術による最初のSoCが搭載されている。

◇Qualcomm Snapdragon 835 chip powers Samsung Galaxy Note8 (8月24日付け DIGITIMES)
→Qualcommが、同社premiumモバイルプラットフォームについてSamsungの選択地域に向けた最新flagshipスマートフォンに搭載と発表、Samsung Galaxy Note8は、Qualcomm Snapdragon 835モバイルプラットフォームであり、10-nm FinFET技術により製造される最初の商用SoCの1つの旨。

◇サムスン、米で大画面の新型スマホ、発火事故から巻き返し狙う (8月24日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が23日、米ニューヨークでスマートフォン最新機種、「ギャラクシー・ノート8」を披露、2016年夏発表の前モデルでは電池発火事故を起こし苦境に立たされたが、大画面や書き込み機能を向上させた新型機種で巻き返しを狙う旨。今秋には米アップルの「iPhone」の新型機種の発表も控えており、高級スマホ市場での競争が一段と激しくなりそうな旨。

【戦略的な動き関連】

パナソニックと連携して富山県にも進出しているTowerJazz(イスラエル)であるが、中国での拠点作りに向けて南京での半導体工場設立を次の通り発表している。

◇Israel's TowerJazz to set up China chip plant with Tacoma Semi-TowerJazz teams with Tacoma Semi for fab in China (8月21日付け Reuters)
→イスラエルの半導体メーカー、TowerJazzが、Tacoma Semiconductor Technology Co(2003年香港で設立:光CMOS指紋認識システムに特化)と連携、8-インチウェーハ製造工場を江蘇省南京市(Nanjing)に設立、世界第2の経済圏での足場を求める旨。

◇TowerJazz and Tacoma announce a partnership for a new 8-inch fabrication facility in Nanjing, China (8月21日付け ELECTROIQ)

Trump大統領に工場建設をアピールしたTerry Gou氏を最近見かけているが、メモリ半導体およびディスプレイで韓国メーカーに直接挑むというFoxconnの戦略を韓国紙が取り上げている。メモリ半導体の方は、上記の通り順調にいかない経緯となっている。

◇Adapting to Tastes of US: Foxconn Rising as New Threat to Korean Semiconductor, Display Industries -Sources: Foxconn will take on Korea in chips, displays (8月21日付け BusinessKorea magazine online)
→業界筋発。世界最大のcontract electronicsメーカー、Foxconnが、同社の"Flying Eagle"戦略を追及しており、メモリ半導体およびディスプレイで韓国メーカーに直接挑む旨。Foxconnのシャープの買収、LCDパネル工場をWisconsinに建設する計画、そして東芝メモリ買収のWestern Digital支援がすべて、該包括的戦略の一部である旨。

リソグラフィ装置のASML(オランダ)が、TSMCの工場建設を追って中国・南京での拠点オフィス開設を発表している。南京は、上記のTowerJazzと重なる立地でもある。

◇ASML opens branch office in Nanjing (8月24日付け DIGITIMES)
→ASMLが、Nanjing(南京), Chinaでの新しいbranchオフィス開設を発表、そこでは主要clientのTSMCが新しい12-インチウェーハ工場を建設している旨。TSMCは該新工場の建設を完了させて2018年に16-nm半導体生産に直接入っていく旨。


≪グローバル雑学王−477≫

トランプ大統領を巡る軋轢のニュースが日々駆け巡る渦中、グローバル化の加速が上がる一途の中での保護主義的動きが各国・地域で沸いてきている現状の問題意識を確認してきているが、もがきにもがく通商政策そして国際経済の方向性というものに、

『世界経済の「大激転」――混迷の時代をどう生き抜くか』
 (浜 矩子 著:PHPビジネス新書 378) …2017年6月1日 第1版第1刷発行

より以下迫っている。自由な(越境的)資本移動の野生力に振り回されることなく、これを制御すべく知恵を絞り、共有し、実現のために共に働くことが求められると強調されている。孤立に向かう時代の逆流を許さないために如何にあるべきか、本書の締めに入ることになる。


第3章−2 激転妖怪たちが目論む政策異変 ――簡単越境時代への妖怪的逆襲

3 通商政策の歯止めなきタイムスリップ

●保護主義に戻らないことが各国の共通認識だった
・自由で開かれた経済関係を戦後秩序の基盤にすえる
 →第二次大戦の終焉を迎えた時の国々の共通認識
 →1945年から今日に至るまで、事あるごとにこの共通認識の確認の繰り返し

●トラ鬼の手足に三本の金棒
・この戦後秩序の基本原理に、激転妖怪、トラ鬼は傲然と背
 →握りしめている通商的金棒
  …その一:貿易取引への政策的介入主義
   その二:二国間主義
   その三:相互主義
・金棒その一
 →高関税や課徴金、あるいは数量制限
 →輸出については、通貨安や補助金支給などで後押し
・米国で1930年に成立した「スムート・ホーリー法(Smoot-Hawley Tariff Act)」
 →2万品目に及ぶアメリカの輸入品について一気に平均50%近くの関税引き上げ

●門戸を開放したルーズベルト
・1934年6月12日、ルーズベルト大統領は「1934年互恵通商協定法」に署名
 →「スムート・ホーリー法」による輸入絶対禁止体制を大きく転換
 →自国市場への門戸を思い切って開放

●「買って欲しいなら、買いやがれ」
・ルーズベルト大統領の一大方針転換
 →アメリカの諸産業にとって、輸出市場が命綱であることを思い知った
 →「買いますから、買って下さい」
・トラ鬼さんは、まるで逆のこと
 →「買って欲しいなら、買いやがれ」

●二国間主義は戦前への回帰
・金棒その二
 →二国間主義。特別あつらえの通商協定
 →対峙概念が、多国間主義あるいは多角主義。特別あつらえはなし
・戦前の国家間通商は、その全てが二国間主義
・トラ鬼さんは、「通商交渉は二国間方式で」と強調

●均等扱いは時に恫喝に繋がる
・金棒その三
 →「相互主義」
  …自分は絶対に相手より損はしないことを目指す構え
・均等と公平は違う。均等と公正も違う
 →強い者と弱い者が全くのハンディキャップ無しで競い合うことで、どこまで公平性が確保されているか?
 →機械的で一方的な相互主義の適用には、明らかに問題

●相互主義は暴力的な報復主義に転じやすい
・要注意点がもう1つ。相互主義は容易に報復主義に転じるということ
 →おのずと暴力性のエスカレーションにつながっていく
 →激転妖怪たちが求める公平公正には、この論理が最もしっくり来るよう

●平和のための通商理念「自由・無差別・互恵」
・相互主義の対極にあるのが、互恵
 →相手に損をさせないことを基本理念
 →今日のWTO(World Trade Organization:世界貿易機関)が掲げる「自由
  ・無差別・互恵」の三理念につながる
  …囲い込みと報復主義の世界に、国々が二度と足を踏み込まないための防波堤。平和のための通商理念

●TPP離脱宣言のトラ鬼、TPPに執心のチーム・アホノミクス
・トラ鬼さんはTPPからの離脱を宣言、一方、チーム・アホノミクスの親分はTPPの締結になおも至ってご執心
 →多角的互恵主義の守護神だということを意味?

●TPPは多角的互恵主義に繋がるか
・決してそうではない、と理解すべき要因が2つ
・第一:TPPは多角的な通商協定ではない
 →全方位的、互恵的な貿易自由化の推進ではない
 →多角的互恵主義、すなわち平和のための通商理念の守り手となることに繋がるとは、到底言えない

●拡張主義男と引きこもり男
・第二:チーム・アホノミクスの大将のTPPの戦略的価値が驚異的だという妖怪アホノミクス的認識は、戦後世界の経済秩序に対する重大なルール違反
・拡張主義男(チーム・アホノミクスの大将)と引きこもり男(トラ鬼さん)は、全く良く気が合っている
 →戦後体制から逃れ出したくてもがいている。いずれも、行きたい先は戦前の世界

●モナ・リザ習近平の不気味な微笑み
・懸命になってグローバル時代に微笑みかけている中国のモナ・リザ、習近平さん
 →新参者ながらどんどん大舞台の中央に躍進しつつ、古参役者たちのサポートも大いに必要に
 →ニューフェース時代のアメリカとよく似た愛想笑いの側面

4 トリレンマが消える時、妖怪たちが目覚める

●国際経済のトリレンマとは
・「国際経済のトリレンマ」
 →次の3つが同時には成り立たないという問題
   (1) 為替安定
   (2) 自由な(越境的)資本移動
   (3) 自律的金融政策
・(1)の為替安定と(2)の自由な資本移動を選択
 →(3)の金融政策の自律性は諦めなければならない
 →金融政策は為替相場の動向に振り回される
・(2)+(3)の場合:カネが容易に国境を越えて移動する環境の下で、独自の金融政策を展開するケース
 →国内のデフレ解消を目指して金融を緩和すればするほど、為替相場は下落
・(3)+(1)の場合:デフレ脱却を目指して金融大緩和を進めながら、為替を堅持しようとするケース
 →(2)の自由な資本移動は阻止。円安を招くという力学を阻めない
●歴史的には 椨△了代が続いた

  ・国際金本位制の時代が、(1)+(2)の時代
 →19世紀半ばから1930年代初頭まで
・ドルを軸とする固定為替相場制度の時代も、原理的には(1)+(2)の時代
 →1ドル=360円の対ドル固定相場を維持するために、日本はしばしば金融引き締めへ

●グローバル時代は何レンマ時代?
・どこまでが内側、どこからが外側、判然としない簡単越境時代
 →実を言えば(1)についても(3)についても、国々は自己決定力を失っている
 →国際経済のトリレンマは、グローバル時代には、実はあてはまらない

●カネがヒトとモノを荒々しく振り回す展開
・グローバル時代においては、資本の簡単越境が国民経済ベースの政策的外部装置をその体内面でも対外面でも失調させる
・カネがヒトとモノを勝手気ままに、そして荒々しく振り回す
 →グローバル時代には、我々が取扱いを誤れば空恐ろしい展開に繋がってしまう面が内在
・我々がグローバル時代をしっかり制御、その良き特性が狂暴性を毒消しできる方向に向かって育て上げていかなければ

●越境力の高い資本を「共に」制御すべきだが……
・グローバル時代においては、(2)自由な資本移動の野生化した力が、(1)の為替安定と(3)の自律的金融政策を振り回す
 →正統性のある対応は、グローバルな経済社会の構成員たちが、(2)の野生力を制御すべく知恵を絞り、共有し、実現のために共に働くこと
・だが、激転妖怪たちは、単独で引きこもったり、世界の真ん中で独りだけ輝いたりしたがる

●「見えざる手」に襲いかかる妖怪たちの「見える手」
・かのアダム・スミス大先生の国富論。あの「見えざる手」という言葉は、たった一回、登場
 →国家や政府などが余計な介入をしなくても、人々の行動は経済活動をおのずと社会的に好ましい方向に導いていく、というのが先生の趣旨
 →国家権力が「見える手」をもって経済活動に介入するのは、百害あって
  一利なしの愚行。先生はそう言いたかった
・時代の逆流を許さないためには、どうすればいいのか。それを次章で

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