"AI-first"戦略はじめintelligentアプリ開発に向けた熱いアプローチ
人工知能(AI)はじめ高性能computingの広範囲のアプリを積極的に展開している米国Nvidiaに続いて、GoogleおよびMicrosoftの開発者向けイベントが開催され、AI一色と言えるほどのintelligentアプリ開発に向けた製品、サービスが打ち上げられる熱気の高まりを感じさせている。中でもGoogle IO(2017年5月17-19日:Mountain View, CA)では、"mobile-first"から"AI-first"戦略に移行して、すべての製品を見直しているとのこと。自動運転から楽曲作りと、本当にどこまで我々のやること、考えること、はたまたそれ以上をAIが賄っていくのか、変わりゆく世界の流れがあらわれている。
≪モバイルからAIへ≫
GTC(GPU Technology Conference)(2017年5月8-11日:Silicon Valley)では、deep learning技術についてアプリ開発者の教育訓練を行う“Deep Learning Institute”の活動計画、deep learningなどAI応用に向けた大規模処理プロセッサ、そして自動運転におけるトヨタ自動車との提携など、Nvidiaの積極的な取り組みがプレゼンされたばかりであるが、Google IO(2017年5月17-19日:Mountain View, CA)では、すべての製品を考え直すよう従来のモバイル一辺倒志向から“AI-first”戦略に移していく、と以下の基調プレゼンが行われている。
◇Android, Google Home Get AI Upgrades-Machine learning on center stage at GoogleIO (5月17日付け EE Times)
→Google IO(2017年5月17-19日:Mountain View, CA)にて、同社chief executive、Sundar Pichai氏の基調講演。Googleは、“mobile-first”から“AI-first”戦略に移行しており、AI-firstの世界の中ですべての製品を考え直している、と同氏。machine learningをより広く使えるようにするtoolsおよびアプリを開発する新しいグループ、Google.aiを発表の旨。
そして、中核となるプロセッサ、TensorFlow Processor Unit(TPU)の次世代版である。
◇Google Revs Faster TPU-Machine-learning ASIC doubles performance (5月17日付け EE Times)
→Googleが、同社TensorFlow Processor Unit(TPU)の第2世代を設計&運用、商用顧客および研究者に向けてmachine-learning ASICへのアクセスをcloudサービスとして与えている旨。4個のいわゆるCloud TPUs搭載サーバにより180 TFlopsが得られ、教育訓練および推論tasks両方に用いられる旨。Googleのcloudサービス利用促進に向けてmachine learningへの関心の高まりを利用する狙いの旨。
◇Google to Offer New AI `Supercomputer' Chip Via Cloud-Google Cloud offers TPU chip to all (5月17日付け Bloomberg)
→Googleが、artificial intelligence(AI)およびmachine learning応用に向けて第2世代tensor processing unit(TPU)半導体, Cloud TPUを披露の旨。
◇Google unveils next-gen TPUs to both train and run machine learning models-At Google I/O, CEO Sundar Pichai said Google's high-power chips should make Google Cloud Platform the best public cloud for machine learning. (5月17日付け ZDNet)
アメリカで爆発的な人気のスピーカー型音声アシスタント「Amazon Echo」といわれているが、Googleからも「Google Home」が我が国で年内発売と発表されている。
◇グーグル、スマートスピーカーを日本で年内発売 (5月18日付け 日経 電子版)
→米グーグルは17日、同社の会話型人工知能(AI)「グーグルアシスタント」を搭載したスマートスピーカー「グーグルホーム」を年内をメドに日本で発売すると発表、現在は米国と英国のみで販売しているが、新たに日本語など3カ国語に対応させる旨。本社を置くカリフォルニア州マウンテンビューで17日から始まった開発者向けの年次会議「I/O」で、スンダル・ピチャイ最高経営責任者(CEO)らが明らかにした旨。グーグルは昨秋にグーグルホームを米国で発売。米アマゾン・ドット・コムが切り開いたスマートスピーカー市場に参入した旨。米調査会社イーマーケッターによると、米国のスマートスピーカー市場におけるアマゾン「エコー」のシェアは71%で、2位のグーグル(24%)は大きく水をあけられている旨。
台湾・MediaTekからも、このスマートスピーカーに向けたチップセットが投入されている。
◇MediaTek launches chipset supporting Google Assistant and Android Things (5月18日付け DIGITIMES)
→MediaTekが、Google AssistantなどVoice Assistant Devices(VADs)およびsmart speakersに向けて設計された同社最新full-featuredチップセット、MT8516を投入の旨。
Microsoftのイベント、Build conference(Microsoft Build 2017:5月10-12日:Washington State Convention Center, Seattle, WA)では、AIをソフトウェア開発に取り入れるサービスの取り組みが打ち上げられている。
◇Microsoft brings AI to mainstream software developers (5月15日付け EE Times India)
→Microsoftが、同社Build conference(Microsoft Build 2017:5月10-12日:Washington State Convention Center, Seattle, WA)にて、intelligentアプリ開発に向けた同社Cognitive Services bundleの一環として、4つの新しいサービス、Bing Custom Search, Custom Decision Service, Custom Vision ServiceおよびVideo Indexerをリリース、開発者がこれらのサービスを用いてほんの数ラインのcodeでアプリの中にアルゴリズムを作成できる旨。
各社・機関からAIが主軸の発表が続いており、ベルギー・Imecからは音楽を作曲する半導体があらわされ、その自己学習による腕前のほどに注目である。
◇Imec Tips Novel AI Chips-ReRAM, MRAM arrays target machine learning-Imec touts AI memory chips for machine learning (5月16日付け EE Times)
→Imecが、machine learning応用に向けてmagneticおよびresistiveメモリarraysに取り組んでおり、artificial intelligence(AI)をneural networks代替としている旨。今年特許出願後に該技術についてさらに詳細を披露する旨。
◇Imec chip composes music-Imec says it has made the world's first self-learning neuromorphic chip with the ability to teach itself and compose music.-Self-learning chip can compose music (5月18日付け Electronics Weekly (U.K.))
→Imecが、楽曲の作り方を自らに教えられるself-learning neuromorphic半導体を開発、この進展は、artificial intelligence(AI)およびmachine learning技術が如何にして他のtasksに適用できるか、示している旨。
AI car computingの世界での競合ぶりが、はやくも表わされている。
◇Nvidia builds momentum in AI car computing battle (5月16日付け EE Times India)
→MobileyeおよびIntelの自動運転車プラットフォームへの閉じたアプローチにOEMsおよび開発者が少し引いており、Nvidiaがパートナーを増やしている、とアナリストの見方の旨。
AIの絡み方如何があるが、Googleの自動運転車プロジェクトからきているWaymoが、配車サービスの米Lyftと以下の通り連携するとしている。
◇Waymo-Lyft Tie Opens Door to 5 Questions (5月16日付け EE Times/Blog)
→前Googleの自動運転車プロジェクト、Waymo(a new way forward in mobilityを表わす)とライドシェアリングサービス大手、Uberのライバルとして、しのぎを削るLyftの連携について。以下の5つの点:
1. Lyft and GM going separate ways?
2. Natural evolution for Lyft and Waymo?
3. Who will build Lyft-Waymo vehicles?
4. Has Waymo developed its own autonomous car inference engine?
5. Autonomous cars for mobility as a service
◇Waymoと配車サービスのLyft、自動運転車で提携 (5月17日付け 日経 電子版)
→米Google(グーグル)の親会社、Alphabet(アルファベット)が設立した米Waymo(ウェイモ)と配車サービスの米Lyft(リフト)が、自動運転車の開発に関して提携した、と米ウォール・ストリート・ジャーナルや米ニューヨーク・タイムズなど複数の海外メディアが現地時間2017年5月15日までに伝えた旨。
自動運転車の製作の低コスト化、容易化を目指すAI startupの取り組みである。
◇Self-driving cars could soon be cheaper and easier to build -Thanks to AImotive's autonomous software and hardware.-AI could ease cost of self-driving cars (5月12日付け Engadget)
→AImotive(Budapest, Hungary)の自動運転車用ハードウェア&ソフトウェアは、self-driving carsを作る方法の低コスト化、容易化をもたらす可能性の旨。該artificial intelligence(AI) startupが、自動運転車でNvidia graphics processing units(GPUs)と競い合える半導体を開発の旨。
≪市場実態PickUp≫
【東芝メモリ入札関係】
Western Digital(WD)が売却差し止めを国際商業会議所(ICC)国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てるなか、2次入札の締め切りを迎えた東芝メモリを巡る経過が、捉えた範囲ながら以下の通りである。東芝・WDトップ交渉、そして買収に向けた連携など陣営づくりが本格化する流れに引き続き注目である。
◇Toshiba Auction of Chip Unit Is Slowed by Dispute With U.S. Partner-Western Digital sues Toshiba over chip unit (5月14日付け The New York Times)
→Western Digital(WD)が、東芝メモリの売却提案を巡る法的係争を決着させるためにInternational Court of Arbitrationに申し立ての旨。WDは、東芝とのメモリ製造合弁のassetsを該メモリ半導体スピンオフに入れて、それらassets売却拒否権をWDに与えるよう求めている旨。
◇Western Digital takes legal action to block sale of Toshiba's chip unit (5月15日付け Reuters)
◇半導体売却、誤算と不信の連鎖、東芝・WD交渉 (5月15日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業の売却を巡って、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)が米国時間14日、売却差し止めを求めて国際商業会議所(ICC)国際仲裁裁判所に仲裁申立書を提出した旨。両社が5月10日に開いたトップ会談ではメモリ売却を巡る議論はほとんどなく物別れに終わっていた旨。WD側には「一体誰と交渉していいのか」という不満が蓄積され、強硬手段に打って出た事情もある旨。
◇東芝社長、WDの申し立て「売却手続き止める根拠ない」 (5月15日付け 日経 電子版)
→東芝の綱川智社長は15日午後、半導体メモリ事業の売却を巡り、半導体を共同生産する米ウエスタン・デジタル(WD)が売却の差し止めを求める申し立てを行ったことについて「売却のプロセス(手続き)を止める根拠はない」との認識を示した旨。そのうえで「(入札参加者に)東芝の主張の正当性を説明し、理解を得て、手続きを進めていく」と語った旨。
◇米WD、東芝の半導体売却差し止め請求、再建計画遅れも (5月15日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業の売却を巡り、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)が米国時間14日、売却差し止めを求めて国際商業会議所(ICC)国際仲裁裁判所に仲裁申立書を提出した旨。両社は同事業の売却可否を巡り対立していた旨。ICCの裁定が出るまでには一定の時間がかかる見通しで、売却手続きが難航すれば東芝の再建計画に影響が出る恐れもある旨。
◇Japan urges Toshiba, Western Digital to get along as chip spat flares-Japanese officials want Toshiba, WD to settle dispute (5月16日付け Reuters)
→日本政府が火曜16日、東芝とそのパートナー、Western Digital社が協力するよう望み、東芝の半導体部門の売却をひっくり返す恐れのある2社間の論争激化に懸念を表明の旨。
◇韓経:東芝メモリ入札の5大変数は…SKハイニックス、WDと組めば「勝算」 (5月16日付け 韓国経済新聞/中央日報)
→世界半導体業界を再編する東芝メモリ売却の本入札が19日に行われる旨。
SKハイニックスを含む韓国、米国、中国などの代表的な企業が買収戦に参加し、世界IT業界の注目を集めている旨。専門家らは、今後の半導体産業の覇権をめぐる主要国の政治・経済的力学関係が勝負を左右する核心要素になると予想している旨。
◇東芝、米WDに対抗措置見送り、情報アクセス遮断 (5月16日付け 日経 電子版)
→半導体メモリ事業の売却を急ぐ東芝は16日、事前通告していた協業先の米ウエスタンデジタル(WD)による四日市工場(三重県四日市市)への情報アクセスの遮断を見送った旨。WDは米国の開発拠点と四日市工場をインターネットで結んでメモリの設計開発を分担しており、遮断されれば開発業務が滞る恐れがあった旨。東芝はWDとの協議を続けるとしている旨。東芝の遮断見送りの判断が両社の対立が改善に向かう転換点となる可能性もある旨。
◇Arbitration Could Delay Sale of Toshiba's Chip Unit (5月17日付け EE Times)
→Western Digital(WD)社が今週要求している仲裁裁判により、パートナー、東芝の半導体事業売却が複雑化、あるいは遅れる可能性の旨。
◇米ベイン、MBO提案、東芝半導体、入札期限先延ばし (5月19日付け 日経)
→東芝の半導体メモリ事業の入札で、米投資ファンドのベインキャピタル(BainCapital)がMBO(Management Buyout:経営陣が参加する買収)を提案することが18日わかった旨。同事業を分社した「東芝メモリ」にベインが51%以上出資し、残りは東芝メモリ経営陣や東芝本体などが保有する形を取る旨。ベインは少数株主として官民ファンドの産業革新機構にも出資を打診する方針で、新たな有力候補になる可能性がある旨。ベインは東芝メモリ株の過半数の取得のために特別目的会社(SPC:Special Purpose Company)を設立、メモリー大手の韓国SKハイニックスがSPCに資金供給する格好で連合を組む旨。
◇東芝、WD、深まる溝、競争力に影、半導体入札、きょう「期限」、活況「四日市」は冷淡 (5月19日付け 日経産業)
→東芝による半導体メモリ事業の売却手続きが難航している旨。19日に2次入札の締め切りを迎えるが、主力拠点の四日市工場(三重県四日市市)などを共同運営する米ウエスタンデジタル(WD)との対立が激化しているからの旨。四日市工場はかつて世界を席巻した日本の半導体産業にとって「最後の砦」。両社の係争が長引いて戦略投資など打つ手が遅れれば、工場の競争力は低下し共倒れになりかねない旨。
ただ、四日市工場に目を向ければ、現場は活気にあふれている旨。NAND型フラッシュメモリは需給が逼迫し販売価格も安定しており、「作れば、作るほどもうかる」(東芝幹部)状態。さらに、次世代品の64層の最先端「3次元メモリ」の歩留まり向上は想定通りに進んでおり、「 サムスン電子との(生産技術の)開発の遅れを今年は取り戻せるかもしれない」(東芝幹部)旨。
◇Bain, KKR, Broadcom among suitors lining up for Toshiba's chips business-Toshiba's chip unit auction heats up (5月19日付け Reuters)
◇東芝半導体、4陣営が応札、WDは個別提案 (5月20日付け 日経 電子版)
→東芝による半導体メモリ子会社「東芝メモリ」の売却手続きで、19日、2次入札の期限を迎えた旨。4陣営(KKR:BainCapital:鴻海精密工業:Broadcom)が応札したもようである一方、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)は参加しなかった旨。WDが第三者への売却に反対し入札自体も否定しているための旨。東芝は高値売却を狙い入札方式をとっているが、締め切り後の参加も可能で別路線も存在する旨。各社の思惑が激しく交錯するなか、買収に向けた連携など陣営づくりが本格化する旨。
【2016年の販売高データ】
米国・Gartner社より、2016年のグローバル半導体販売高が、2.6%増の$343.5 billionと締めて表わされている。M&Aのインパクトが大きなベンダーランキングの内容となっている。
◇Consolidation Continues to Rewrite Chip Vendor Rankings-Gartner: Chip sales rose 2.6% in 2016 (5月15日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Conn.)発。2016年のグローバル半導体販売高が$343.5 billion、2015年に比べて2.6%増。この伸び率は、2月時点で1.1%増としていたWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationなど他の市場watchersが以前に行っていた見積もりを上回る旨。トップ25ベンダーの販売高合計が2016年に10.5%増、対してそれ以外のベンダーでは15.6%減っている旨。ベンダーランキング・トップ10、下記参照。
⇒http://www.eetimes.com/document.asp?doc_id=1331743&image_number=1
◇Worldwide semiconductor revenue grew 2.6% in 2016, reports Gartner (5月15日付け ELECTROIQ)
◇Global semiconductor revenue grew 2.6 percent in 2016: Gartner-Global semiconductor revenue reached $343.5 billion during 2016, up from 2015's $334.9 billion and 2014's $340.3 billion. (5月16日付け ZDNet)
◇Worldwide semiconductor revenues grow 2.6% in 2016, says Gartner (5月16日付け DIGITIMES)
ICセンサについて2016年の販売高がIC Insights社から表わされ、IoTはじめ新分野の伸びから$7.3 billionの史上最高を記録している。
◇Sensor Sales Finally Catch Fire-IC Insights: The time has come for sensors (5月17日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)発。2016年のICセンサ販売高が14%増の$7.3 billionと史上最高を記録する一方、actuatorsの販売高が19%増の$4.5 billion。強烈な価格圧力および精彩を欠く数量の何年かを経て、embedded制御, wearable electronicsおよびInternet of Things(IoT)機器の伸びが奏功の旨。
【Samsung関連2点】
Samsung Electronicsがファウンドリー部門を独立させて、メモリ、システムLSIとの3本柱の事業体制になろうとしている。ファウンドリーのベンダー・ランキングの明確な一角を占めることになる。
◇Samsung Spinoff Likely to Grab Foundry Share (5月16日付け EE Times)
→Samsung Electronicsがファウンドリーoperationsを事業部門からスピンオフする計画により、Samsungのグローバルcontract半導体製造のシェアがTSMC以下のライバルを抑えて高まる見込みの旨。Korea Economic Dailyによると、メモリおよびシステムLSIから成り立っているSamsungの半導体operationsが3つに分けられ、ファウンドリー事業が独立した部門となる旨。
メモリ絶好調の最中のSamsungであるが、それに向けて今年の半導体設備投資が$21.95 billion規模になるとの見方が表わされている。
◇Samsung may invest $22bn in IC capex this yesr-Samsung will invest $21.95 billion in its chip business this year, according to KoreaBusiness quoting Shinhan Investment analyst Choi Do-Yoen. (5月17日付け Electronics Weekly (U.K.))
◇To Keep Top Position: Samsung Electronics to Make 10 Trillion Won More Investment in 2017 -Analyst predicts Samsung capex budget of $22B (5月17日付け BusinessKorea magazine online)
→Shinhan InvestmentのChoi Do-yeon氏の見方。Samsung Electronicsの今年のcapital expenditure予算が、メモリ半導体需要についていくよう$21.95 billionとなる旨。うち$10.8 billionがNANDフラッシュメモリデバイスの生産に向けられる旨。
【Qualcommを巡る係争関連】
Qualcomm社の取引条件についての米国regulatorの訴えを、Samsung, Intelが支持を表明して、世界的に同社を取り巻く環境が厳しくなっている。
◇Samsung, Intel Back U.S. Regulator's Suit Against Qualcomm -Companies say Qualcomm used its dominant position in cellphone chips to force customers to accept unfair terms -FTC suit vs. Qualcomm backed by Intel, Samsung (5月12日付け The Wall Street Journal)
→Samsung Electronics Co.およびIntel社が金曜12日、米国regulatorのQualcomm社を相手取った訴訟を支持する趣意書を提出、Qualcommがcellphone半導体における支配的な地位を利用して顧客に不公正な条件を受け入れるよう強制している旨。
◇Qualcomm Takes on the World, in Court (5月18日付け EE Times)
→Qualcommにとってさらに悪化する事態について。
特許の対価を巡ってApple社と係争中のQualcomm社であるが、iPhonesおよびiPadsの製造メーカー4社を相手取って特許料支払い拒否に対して提訴する事態に広がっている。
◇Qualcomm files breach of contract complaint against Apple manufacturers for non-payment of royalties (5月17日付け DIGITIMES)
→Qualcommが、世界中で販売されているすべてのApple iPhonesおよびiPadsの製造メーカー4社、FIH Mobile and Hon Hai Precision Industry(一緒にFoxconnとして知られる), Pegatron, Wistron, およびCompal Electronicsを相手取ってSouthern District of Californiaの米地裁に提訴、Qualcommとのlicense合意などcommitments不履行およびQualcommのlicensed技術使用への支払い拒否についての旨。
◇Qualcomm ups ante in fight with Apple, sues four Taiwanese suppliers (5月18日付け Reuters)
◇クアルコム、アップルの委託先4社を提訴、特許料支払い拒否で (5月18日付け 日経 電子版)
→米半導体大手、クアルコムが17日、米アップルの指示に従い特許料支払いを拒否したことを不当として、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業などアップルの製造委託先4社を米連邦地裁に提訴したと発表、クアルコムは製造会社との直接取引にアップルが介入するのは不当として別途アップルを訴えた旨。クアルコムとアップルは特許の対価をめぐり係争中で、法廷闘争が取引先企業にも波及した旨。
【M&A関連】
久しぶりに目に入ったM&A審査の進捗であるが、まずはBroadcomのBrocade買収提案をEuropean Commission(EC)が条件付きで承認している。
◇Broadcom wins conditional EU okay for $5.5 billion Brocade buy-EU gives green light to Broadcom's Brocade buy (5月12日付け Reuters)
→European Commission(EC)が、BroadcomによるBrocade Communications Systemsの$5.5 billion買収提案を暫定的に承認、Broadcomは、競合と協働、ネットワークswitches, データストレージおよびソフトウェアのサプライヤ、Brocade買収における機密データを守ることを誓っている旨。
半導体実装&テストの大手同士、台湾のASEおよびSPILの合併提案について、米国公正取引regulatorsが承認している。今後、中国当局の承認を待つばかりとなっている。
◇ASE, SPIL get US antitrust approval-US regulators approve merger of ASE, SPIL (5月17日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)とSiliconware Precision Industries(SPIL)が、両社の合併提案について米国公正取引regulatorsから承認を受けた旨。該合併提案は中国の公正取引当局が依然見直しており、OSATメーカーの主要市場、中国での公正取引承認は両社が得るのは2017年6月までになる見込み、と業界筋の見方。
≪グローバル雑学王−463≫
グローバル経済の流れと各国・地域の民意が相容れない結果になっていることを、ギリシャの国民投票、そして英国のEU離脱と見せ知らされている現実があるが、経済格差はじめ「グローバリズムの限界」に直面して流動化する世界を、
『日本人として知っておきたい「世界激変」の行方』
(中西 輝政 著:PHP新書 1076) …2017年2月21日 第1版第4刷
より著者の切り口から2回に分けて考えていく前半である。ソ連の崩壊によって、冷戦構造は大きくその様相を変え、グローバル経済はさらに世界規模へと拡大していくなか、自分たちの市場の確保&拡大に向けてグローバルな流れに合わせるべきか、我が市場を守るべきか、繰り返す世界の政治経済の激動のうねりが表されている。
第4章−1 「グローバリズムの限界」に直面し流動化する世界
◆イギリスは世界の激動の先導役となる・今後、世界はどのように大きく動いていくのか→本章では、イギリスの「EU離脱問題」とはいかなる意味を持つものであったのか、考える
・近代以降において世界の大きな底流が動くとき、つねにイギリスがその端を切り、歴史の先導役を務めてきた
→近代議会制という政治文化
産業革命
自由貿易という制度
現在のグローバル・エコノミーの基礎となる秩序体制
→19世紀のパックス・ブリタニカ(イギリスの平和)
・そのイギリスの運命は、世界各国に大きな影響を与えずにはおかなかった
→明治維新(1868年)を行った日本
…イギリスの制度を自ら学び、採り入れ
→日英同盟を結んだ日本は、ロシアとの戦いに勝利(日露戦争:1904-05年)、遅ればせながら列強のなかの1つの大国に
・イギリスの時代が反転するのが1929年
→世界大恐慌が起こり、世界の国々が右往左往するなか、英本国と広大な植民地のなかに閉じこもるブロック経済へと移行
→第二次世界大戦の大きな原因に
・第二次大戦終了後も、国境の壁が高かった世界の国々
→戦後の日本の高度成長成し遂げが可能に
・1970年代に始まったイギリスの衰退
→そこから出てきたのがサッチャー改革
→新自由主義的な構造改革を世界の先頭を切って推進
…「サッチャリズム」
・このときもアメリカはいち早く追随、レーガン政権の新自由主義経済政策、「レーガノミクス」を始める
→冷戦終焉後、ドイツやフランスなどヨーロッパ各国もこれに続く
→日本でも同じ頃から構造改革の議論が始まる
・1993年、EC(欧州共同体)と呼ばれていたものが、EUへと転換
◆グローバル経済の限界に気づきだした金融界
・ソ連の崩壊によって、冷戦構造は大きくその様相を変え、グローバル経済はさらに世界規模へと拡大
→新興国の経済発展も次々と、一方、経済格差がそれ以上の規模でどんどんと広がっていった
・そのような潮流のなか、アメリカで突如として起きた「トランプ旋風」
→民主党でもバーニー・サンダース(Bernard "Bernie" Sanders)の「サンダース旋風」
・外交雑誌『Foreign Affairs』でもついに2016年には、格差を問題視する特集
→「グローバリズム礼賛」路線からの宗旨替えを、一定程度、始めた
・ウォール街には意外に多かった親トランプ派
→トランプやサンダースを攻撃しようとせず、むしろヒラリーに冷たかった
・まったく同じ構図が、イギリスにも見てとれる
→今回もイギリスは、EU離脱という「古いグローバリズム」からの転換の必要を突きつけることによって歴史の先導役を果たした
・金融の最先端に立つ人たち、つまり"ネオ・グローバリスト"たちは、すでに従来のグローバリゼーションの限界に気づいている
◆民主主義の「敵」としてのグローバリズム
・イギリスのEU離脱は、民主主義とグローバリズムが相容れないものであることを示したとも
→国民投票の結果と、世界経済が望むこととが、まったく相容れない結果となることも
→典型がギリシアの国民投票
・「EUの緊縮策を受け入れない」ギリシアの民意
→EUはギリシアの国民投票や総選挙の結果をすべてはね返し
・グローバル・エコノミーを優先するなら、国際市場に従わなければならない
→日本も今後、この問題に直面するだろう
・EU離脱を選んだイギリスは、EUとは違う別の国際市場を探ろうとしている
→妥協的な発想が、イギリスの離脱派の主流
・国境の撤廃は、ユートピアニズム(理想郷を求める政治的思考)としては立派な考え
→近代技術を駆使した国境を新たに設けなければならない
→国境再強化への動きが、いま各国で着々と進行している
◆アングロサクソンの覇権のための「嘘」
・1980年代、日本とドイツが製造業を中心とした経済で隆盛を極め、一方でアメリカは経済の覇権を失っていった
→世界貿易の枠組みがほとんど崩れ、ドルと金の連動も失われた
・やがて現われてきたのが「新自由主義」
→この思想の根幹には「究極的には人知を超えた予定調和の機能がある」という信念
→「自由主義」の重要性を指摘しつつも、競争が効率よく働くシステムを慎重につくっていく必要性は十分に認めていた
・1990年頃、ある高名なアメリカの経済学者
→「グローバリゼーションをやるのは、アメリカが世界の覇権を取り戻すため」
→「機軸通貨としてのドルの地位をいかに保つか。これがアメリカ覇権の肝の肝。」
◆「ここで行けるところまで行ってしまう」
・アメリカとイギリスが世界的なリーダーシップを発揮、ソ連崩壊後の世界で共産主義を一掃し、「自由」「人権」「法の支配」といった普遍的価値観を再確立しようとした
→彼らにとっての「グローバル化」「市場経済中心」「規制緩和」「民営化」
→「ここで行けるところまで行ってしまう」ための1つのお飾りにすぎなかったのかも
・それがいま、わずか20年あまりで綻びが見え、そればかりか世界が大きく乱れだした
◆歴史を転換させた5つの出来事
・1つ参考になるアメリカのジャーナリスト、クリスチャン・カリル(Christian Caryl)の『すべては1979年から始まった―21世紀を方向づけた反逆者たち』
→歴史を転換させた重大な年、「1979年」。5つの出来事に焦点
・(1)イランのホメイニ革命 →イランが、一瞬にしてイスラム化、これこそイスラム原理主義の走り
(2)ソ連のアフガニスタン侵攻 →ソ連崩壊への道が始まる
(3)ローマ法王に就任した直後のヨハネ・パウロ二世が、母国ポーランドを訪問
→じつに450年ぶり、イタリア系以外からのローマ法王
→共産主義体制の崩壊を精神面から導いた
(4)中国で小平による経済改革が始まる
→1979年から今日の中国の市場経済化につながる路線を大々的に設定
(5)サッチャー保守党政権の成立
→当時のイギリスの常識では、「トランプ」のごときイメージ
→1979年当時、「ゴミの谷間」を二階建てバスが走るというのが、ロンドンの光景
→ところが、サッチャリズムの経済政策は先進資本主義諸国に対し、画期的な新しい方向性を打ち出した
→1980年、アメリカに飛び火、レーガノミクス提唱
→英米の改革が「成功」、ソ連の崩壊ももたらされて、グローバル・エコノミーへの流れは圧倒的なものに
→「野蛮な原理主義」が熱狂的に大手を振ることになった