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半導体サプライチェーンが地政学的な影響を受けやすくなってきた

半導体のサプライチェーンはグローバルであり、地政学上の影響を受ける動きが増えてきた。TSMCはJASMの第2工場を日本に置くことを表明していたが、6nmプロセスを作ることが判明した。中国資本が入っているNexperiaをオランダ政府が管理することを表明したことに対して、ドイツ政府から横やりが入った。Applied Materialsが中国ビジネス減少の影響で1400名をリストラする。

JASM第1工場

図1 JASM(TSMC Fab 23)の第1工場 出典:JASM


TSMCの熊本工場であるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)が第2工場の建設に着手したことを先週報じたが、24日に第2工場建設地の菊陽町と立地協定を締結した、と10月25日の日本経済新聞が報じた。菊陽町は第1工場のある町。第1工場では22/28nmプロセスから12nmプロセスへと微細化を進めていたが、第2工場は6nmプロセスを中心に運営していくという。

第2工場への総投資額は139億ドル、経済産業省からも巨額の支援金を受ける。建設面積は6万9000平方メートル。工場棟のほか電力や水などを制御・管理するCUP棟なども備える。従業員は1700人で、1700人規模の第1工場と合わせると3400人体制になる。日本への投資に関して、「TSMC 世界を動かすヒミツ」という書籍の著者であるジャーナリストの林宏文氏は「JASMはTSMCの海外工場の中で最も成功しそうな工場だ」と述べている(参考資料1)。


Nexperiaは元々、オランダのNXP Semiconductorからスピンオフしたディスクリート半導体の会社。この会社を2016年に中国資本が買収、その後2018年に中国の電子機器大手Wingtech Technologyが買収提案を行い、傘下に置いた。中国資本が買収した時点で地政学的な不安定な要素を筆者は心配していたが、米国政府も承認し中国傘下に置かれた。

2025年9月になってオランダ政府がNexperiaを、経済安全保障を理由に接収、その対抗措置で中国政府はNexperiaの中国工場からの出荷禁止を命じた。これによって被害を受けたのが中国に工場のあるドイツの自動車メーカーだ。「Nexperiaは最終製品の8割を中国で生産しており、日本などの顧客企業に一部製品の出荷制限・停止を通告した。ドイツではVolksWagen(VW)が本社工場で主力車「ゴルフ」の生産の一時停止を計画中で、半導体不足が影響した恐れがある」と25日の日本経済新聞は報じている。欧州自動車工業会(ACEA)は、「Nexperiaのチップ供給が即座に解決しなければ欧州の自動車製造に重大な悪影響を及ぼす可能性がある」と述べている(参考資料2)。Nexperiaはパワートランジスタやディスクリート半導体を製造していることから、東芝D&Sにとってこのことは認定が求められるが、チャンスかもしれない。


中国の地政学的な影響は製造装置メーカーにも表れている。25日の日経は、「半導体製造装置の米最大手Applied Materialsは23日、世界で従業員の4%の人員削減をする」と報じた。この所、AMATは四半期ごとに中国売上の割合が減少してきており、「8月時点で、25年8〜10月期の売上高は前年同期比5%の減収を見込んでいた」と報じている。約1400人のリストラ費用を1.6億ドル〜1.8億ドルと見込んでおり、次期会計年度決算の2025年8〜10月期に費用を計上するという。「Gary Dickerson最高経営責任者(CEO)は従業員宛てのメモで『自動化やデジタル化、地理的な(市場環境の)シフトで求める人材が変わった』と説明した」と日経は報じた。

参考資料
1. 「日台相互協力が今後の半導体の鍵に〜2024年台湾半導体デーから」、セミコンポータル、(2024/04/05)
2. “ACEA calls for quick resolution to critical chip supply shortage”, ACEA Press releases, (2025/10/16)

(2025/01/06)
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