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熱を帯びるAI半導体:「iPhone」新機種発表、Intelはじめ取り組み

Appleが「iPhone」新機種を発表、中でも顔認識の高速化および写真の高品質化などにつながる人工知能(AI)技術を搭載した半導体、A12 Bionicが"最も強力なスマートフォン半導体"と謳われている。先月末に発表されたHuaweiのKirin 980とともに、「最初の7-nmプロセッサ」とAIおよび微細化の最先端を競い合っている。クラウドへの依存を減らして自ら学習していくAI半導体は、すべてを変えるcomputing時代への先触れとして世界中の注目の熱気が一層感じられており、Intelはじめさらなる具体的な取り組みが方々であらわれてきている。

≪すべてを変えるcomputing時代へ≫

Appleの「iPhone」新機種およびApple Watchの新モデルの発表が行われ、注目のAI半導体、custom 7-nm A12 Bionicプロセッサをはじめ概要が以下の通りである。

◇Apple Describes 7-nm iPhone SoC-New handsets expand to 512 GB and $1,099-Smartwatch puts dual-core CPU in SiP (9月12日付け EE Times)
→Appleが、最大512 GBytesのメモリを可能、7-nm SoC搭載、3種のiPhonesファミリーを発表、$749〜$1,099の価格、電池寿命が30-90分増加、そして2-6週間以内に出荷の旨。該スマートフォンおよびApple Watchの2つの新モデルは、概して画面が大きくなり半導体が更新されている旨。これらどれも今年後半にswitching開始見込みの5G cellularネットワークスをサポートしないが、Qualcommがサポートを始めたばかりのLTE capability、Gbit/sデータレートをサポートする旨。
Appleの7-nm A12 Bionic半導体は、6.9 billion個のトランジスタを収容、"スマートフォンでは最も強力な半導体"と、同社chief executive、Tim Cook氏。A12の2つの高性能CPUコアは、先のA11より15%高速、40%大きい効率の旨。4つの他のコアは、先のそれに対して50%大きい効率の旨。10-nm A11はその前より25%増の性能および70%大きい効率と謳われており、7-nm nodeでは優位性が低下するという報道を補強している旨。

◇Apple unveils 7-nanometer A12 Bionic chip for new iPhones-Latest iPhones feature Apple's 7nm AI chip (9月12日付け VentureBeat)
→Appleが、同社の新しいiPhone XR, XSおよびXS Maxに搭載のcustom A12プロセッサの詳細を説明、7-nmプロセスで作られ、6.9 billion個のトランジスタを収め、TSMCが製造したartificial intelligence(AI)半導体である旨。Appleが設計した該ICは、machine learning向けの6-core CPUおよび8-core neuralエンジンとともに、該新phonesのグラフィックスcapabilitiesを50%高める4-core graphics processing unit(GPU)を特徴としている旨。

◇Apple's upgraded A.I. chip design should lead to faster Face ID and better photos-Apple's new neural engine component should lead to better photos. (9月12日付け CNBC)

◇Apple's 7nm A12 Enables 512GB of Memory-A12 Bionic is “the most powerful chip in a smartphone,” according to Tim Cook (9月13日付け EE Times India)

3つの新iPhoneそれぞれの概要である。

◇新iPhone、大画面「Xs Max」は12万円超え (9月13日付け 日経 電子版)
→米アップルは12日にカリフォルニア州クパチーノで開いた発表会で、スマートフォン「iPhone」の新製品、次の3機種を発表の旨。
 5.8インチの「Xs」…「X」の後継機
 6.5インチの大画面を採用した「Xs Max」
 6.1インチの「XR」…有機ELではなく液晶ディスプレイを使って単眼カメラにすることで価格を抑えた
2017年に発売した3機種は5インチと5.8インチで、全体的にサイズを大きくした旨。9月21日から順次発売の旨。iPhoneはアップルの売上高の約6割を占めており、新機種の売れ行きが業績を大きく左右する旨。

価格帯を拡げたという新iPhoneのバージョン展開であるが、新興経済圏への浸透の度合いが如何にという見方である。

◇アップル成長に新興国の壁、廉価版、効果は不透明 (9月14日付け 日経 電子版)
→米アップルは12日、スマートフォン「iPhone」の新機種を発表、高級モデルを充実する一方で、苦戦する新興国をにらみ廉価版も展開する旨。端末とネットサービスの両輪で稼ぐには世界で一定のシェアを握ることが中長期の成長の前提となるが、1万円台のスマホが普及する新興国で廉価版が効果を出すかどうかは不透明の旨。

Appleの発表が刺激を与えるところ大と思われるが、並行してAI半導体に纏わる様々な動きが見られている。

IntelのAI関連の今後の取り組み、考え方が説明されている。

◇Gadi Singer interview - How Intel designs processors in the AI era-Intel's Singer discusses AI tech in processors (9月9日付け VentureBeat)
→Intelが、artificial intelligence(AI)応用で用いられるXeonプロセッサから2017年売上げ$1 billionを実現、AI半導体が2022年までに$8 billionから$10 billionの売上げの全体市場に伸びると見ている旨。「2019-2020年を見ると、実際deep learningの成熟となる」と、Intelのvice presidentでAIアーキテクチャーのgeneral manager、Gadi Singer氏。

◇Intel's Next Move-Company's push into deep learning opens door to a variety of new architectures, including tiles, advanced packaging and more customized solutions.-Intel's AI leader discusses state of the technology (9月11日付け Semiconductor Engineering)
→Intelのvice presidentでArtificial Intelligence(AI) Products Groupのgeneral manager、Gadi Singer氏が、AI, deep learning関連の話題について。「deep learningは、進化しながらに誰が問題を最もよく理解しているかに基づいて各社が競う領域である。」と同氏。

インドを代表する大学とIBMのインドでのリサーチ連携である。

◇IIT Bombay and IBM Team Up to Accelerate AI Research in India (9月13日付け EE Times India)
→インドの主要大学、Indian Institute of Technology - Bombay(IIT-B)とハイテク大手、IBMが水曜12日、AIリサーチ推進multi-yearコラボの一環として、同大が‘AI Horizons Network’に参加する旨。

startup、BrainChip(米国)が、初の商用spiking neural network(SNN)アーキテクチャーを披露、搭載したAkida neuromorphic system-on-a-chip(SoC)デバイスを来年市場投入するとしている。因みにIntelは、人間の脳の構造を応用したAI半導体技術を「Neuromorphic Computing」と名づけている。

◇BrainChip Discloses SNN Chip-Machine-learning accelerator due in Q319 (9月10日付け EE Times)

◇US company unveils first commercial spiking neural network architecture-BrainChip, has become the first company to bring a production spiking neural network architecture - the Akida Neuromorphic System-on-Chip(NSoC) - to market. -Startup debuts neuromorphic SoC with versatile architecture (9月10日付け New Electronics)
→BrainChipが、production-spiking neuralネットワークアーキテクチャー搭載Akida neuromorphic system-on-a-chip(SoC)デバイスを投入、該scalableアーキテクチャーは、advanced driver-assistance systems(ADAS), 自動運転車, drones, machine-visionシステム, 監視装置およびvision-guided roboticsにおけるedge応用に適する旨。

◇BrainChip Announces Computer Vision Chip-Spiking neural network accelerator to be the first to market in 2019 (9月12日付け EE Times India)

AI半導体の挑戦課題および事業機会について、如何に物凄いか、IBM Researchより語られている。

◇AI Chips: Challenges and Opportunities-Semiconductor industry to benefit from new era of AI chips (9月12日付け Semiconductor Manufacturing & Design)
→半導体業界executivesが、artificial intelligence(AI) microchipsの開発がプレゼンするopportunitiesに熱を上げている旨。「これは、前の時代を小さく見せる規模であり、我々のビジネスすべて、そして我々の業界すべて、そして我々の生活すべてを変えるやり方にあるcomputing時代である。」と、IBM ResearchのCognitive Solutions、Senior Vice President、Dr. John E. Kelly, III氏。

新型「iPhone」への市場反応とともにAI半導体の世界中でのいろいろなアプローチの展開に日々刻々注目するところである。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連の動き】

米国SIAより中国の知財侵害への米国政府の現状の対応に不満があらわされている。

◇Trump Advisers Weigh Hacking Sanctions on Chinese Entities (9月8日付け Bloomberg)
→Semiconductor Industry Association(SIA)のchief executive officer、John Neuffer氏。「関税賦課が半導体業界の中国との実際の問題、特にIP盗用にほとんど対策となっていないことに依然不満である。IP施行となると政府がもっと強いスタンスを取り入れる独創的な活動を期待する。忘れてならないのは、IPなしでは現代のアメリカ経済は萎んでいき、守らなければならない。」

中国では、摩擦による影響を受ける半導体関連はじめ輸出企業の支援策が打ち出されている。

◇中国、輸出企業下支え、半導体関連など、税還付拡大 (9月8日付け 日経)
→中国財政省は7日、輸出企業への税金の還付を拡大すると発表、金属や半導体関連など397品目を対象に還付額を上げる旨。米国との貿易戦争で輸出企業が打撃を受けており、経営を下支えする狙いがある旨。15日から実施。企業が輸出する商品を製造する際などに負担した付加価値税や物品税を払い戻す旨。中国では品目ごとに輸出価格に対してどれだけの税を払い戻すかが決まっており、この比率を上げる旨。

上記の通り新製品を発表したAppleは、中国への相次ぐ関税賦課が自社製品値上げにはね返るとしている。

◇Apple Says New China Tariffs Will Boost Prices on Some Products-Apple: China tariffs will increase product prices (9月9日付け BloombergQuint (India))
→AppleがOffice of the US Trade Representative(USTR)に対し、中国製品への米国の関税提案はApple Watch, AirPodsヘッドフォン, Mac mini desktop computerなどたくさんのconsumer electronicsの価格を上げることになる、としている旨。Donald Trump大統領は、対策としてそれら製品を中国ではなく米国でつくること、と述べている旨。

米国でのいろいろな業界が連立を組んでTrump政権の関税に反対するキャンペーンが、以下の通り沸き起こっている。

◇Wide range of businesses step up campaign against Trump's tariffs-US business coalition opposes Trump tariffs (9月12日付け CNBC)
→いろいろな業界からの米国ビジネス連立組織が、Trump政権の関税に反対するmultimillion-dollar活動を導入、該グループのキャンペーンには、広告宣伝, lawmakersへのアウトリーチおよび激戦州でのtown hallイベントなどがある旨。

◇As Trump embraces more tariffs, U.S. business readies public fight (9月12日付け Reuters)

◇U.S. Businesses Ramp Up Lobbying Against Trump's Tariffs -Organizations representing thousands of companies are cooperating on a lobbying campaign called Tariffs Hurt the Heartland (9月12日付け The Wall Street Journal)

【IntelのM&A】

Intelが、system-on-a-chip(SoC)設計capabilities強化に向けてnetwork-on-a-chip(NoC)のstartup、NetSpeed Systemsを買収している。同社のCEOは、Intelの半導体設計出身とのこと。

◇Intel Buys NetSpeed for NoC, Fabric IP-Startup becomes part of Intel's Silicon Engineering Group; Intel shifts direction.-Intel purchases NetSpeed Systems for SoC design tech (9月10日付け Semiconductor Engineering)
→Intelが、system-on-a-chip(SoC)設計capabilitiesを高めるためにnetwork-on-a-chip(NoC)およびinterconnect fabric intellectual property(IP)開発のstartup、NetSpeed Systems(San Jose, CA)を買収、NetSpeedチーム全体をSilicon Engineering Group内で働くよう採用の旨。NetSpeedはIntelを投資家および顧客としており、CEOのSundari Mitra氏はかつてIntelで半導体設計者として働いていた旨。

◇Intel acquires NetSpeed Systems for SOC design tools-NetSpeed's network-on-chip(NoC) tool should help Intel more quickly and cost-effectively develop and test new SoCs. (9月10日付け ZDNet)

◇Intel acquires NetSpeed Systems to boost its system-on-a-chip business (9月10日付け TechCrunch)

◇Intel Buys SoC IP Vendor NetSpeed (9月11日付け EE Times)

【我が国発のM&A 2件】

今月始めに報じられたルネサスエレクトロニクスの米国・Integrated Device Technology(IDT)買収が、以下の通り正式に発表されている。IDTはSRAMはじめ1980年代に馴染みがあるが、時代が移りこのM&Aでは自動運転車を軸に広範な新市場対応展開が期待されている模様である。

◇Renesas in $6.7 billion deal for IDT to boost chips for self-driving cars-Renesas to buy IDT for $6.7B (9月11日付け Reuters)
→Renesas Electronicsが、Integrated Device Technology(IDT)を買収する$6.7 billion取引に調印、来年の前半に完了予定の該買収は、Renesasが自動運転車分野での半導体presenceを拡大する助けになる旨。

◇Chipmaker Renesas goes deeper into autonomous vehicles with $6.7B acquisition (9月11日付け TechCrunch)

◇ルネサス、米社買収発表、7330億円で全株取得 (9月11日付け 日経 電子版)
→ルネサスエレクトロニクスが11日、米同業インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を買収すると正式に発表、買収額は約67億ドル(約7330億円)、全株を取得し完全子会社とする旨。IDTが強みを持つ通信用半導体と自社製品を組み合わせ、顧客企業への提案力を高める旨。

◇IDT Deal Fuels Renesas Growth Ambitions (9月12日付け EE Times)
→Renesas ElectronicsがIntegrated Device Technology(IDT)を買収する計画は、車載分野を越えてデータセンターおよび通信を詮索していくRenesasの欲求を示している旨。

もう1つ、加賀電子が富士通エレクトロニクスを以下の通り子会社化する発表が行われている。

◇加賀電子、富士通エレクトロニクスを子会社化、約200億円で (9月10日付け 日経 電子版)
→加賀電子は10日、電子デバイスの設計・開発を手掛ける富士通エレクトロニクス(横浜市)を子会社化すると発表、取得価格は約200億円、2021年12月にかけ段階的に全株式を取得する旨。電子部品や半導体分野でのシェア拡大を目指す旨。

◇Kaga buys Fujitsu Electronics-Kaga Electronics is to buy 70% of Fujitsu Electronics Inc.(FEI) from Fujitsu Semiconductor(FSL) and plans to also acquire the remaining 30% shares held by FSL by the end of 2021.-Kaga to acquire 70% of Fujitsu Electronics, expanding EMS business (9月11日付け Electronics Weekly (UK))
→Kaga Electronics(加賀電子)が、Fujitsu Semiconductor(FSL)からFujitsu Electronics Inc.(FEI)の70%を買収、残るFSL所有の30%株式も2021年末までに買収する旨。

【Qualcommのsmartwatchチップセット】

上記のApple新製品発表にはApple Watchの新バージョンが含まれるが、2日先駆けのタイミングでQualcommがsmartwatches用超低電力co-processor、Snapdragon Wear 3100を打ち上げている。

◇Q'comm Winds Up Smartwatches-Near-voltage co-processor expands battery life (9月10日付け EE Times)
→Qualcommが、電池寿命を延ばすためにsmartwatches用最新チップセットにbare-bones RTOS搭載の超低電力co-processorを追加、該新3100チップセットは、smartwatchesおよびwearablesの現在のリーダー、Apple Watchの新バージョンをAppleが発表する予定の2日前のお披露目の旨。Qualcommは、同社Snapdragon Wear 3100がこれまでのチップセットより4-12時間電池寿命が長いとしており、GoogleのWear OSをオフにすれば代表的なsmartwatch電池で1ヶ月間動作できる旨。

◇Qualcomm's Snapdragon Wear 3100 smartwatch chipset promises up to 2 days of battery life-Qualcomm: Snapdragon Wear 3100 smartwatch chipset boosts battery life (9月10日付け VentureBeat)

◇Snapdragon Wear 3100 Extends Battery Life -Ultra-low-power co-processor hits market just before Apple's new watch (9月12日付け EE Times India)

【メモリ半導体価格関連】

先行き敏感にならざるを得ないメモリ半導体価格であるが、SamsungはDRAM需要について年内いっぱいは大きく変わらないと同社ならでは当然ながらの見方である。

◇Samsung exec sees no changes in demand for DRAM chips this year-Samsung Electronics president predicts DRAM demand to hold in Q4 (9月12日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→デバイスソリューションズ部門を担うSamsung ElectronicsのPresident、Kim Ki-nam氏が、ソウル南のSamsung buildingで開催のフォーラムにて。
少なくとも今年の第四四半期までは、DRAM半導体需要に大きな変化はない旨。

ここにきてのインテルの14-nmプロセッサの供給逼迫が、DRAM価格を引き下げる可能性があらわされている。

◇Intel CPU shortage to impact DRAM prices, says TrendForce (9月13日付け DIGITIMES)
→TrendForce発。Intelの14-nmプロセッサの供給逼迫で2018年後半の世界notebook出荷にマイナスの影響の見込み、DRAM価格をさらに引き下げる様相の旨。Intelは当初、notebook市場がピークを迎える2018年第三四半期に次世代14-nm "Whiskey Lake" CPUsの量産開始予定であったが、PC OEMsはCPU不足に見舞われており、各社急ぎ2018年後半の出荷目標を下げていく模様の旨。

NANDフラッシュはすでに下げ足状況となっており、SSDs価格低下でnotebooksはじめ機器での採用が促進されていく見方となっている。

◇Falling SSD prices to drive greater adoption in notebooks, others (9月13日付け DIGITIMES)
→業界筋発。NANDフラッシュ半導体価格が2年前の水準に低下する一方、SSD価格は最高の結果をもたらす領域に当たっている旨。SSD価格低下で、notebooksなどconsumer computing機器でのSSDs採用が促進されていく旨。artificial intelligence(AI), 車載electronicsおよびビデオ監視が、SSD市場の長期的伸びを引っ張る応用と同定されている旨。


≪グローバル雑学王−532≫

トランプ大統領がさらに追加関税賦課の規模の押し上げをちらつかせる中、

『「米中関係」が決める5年後の日本経済新聞・ニュースが報じない貿易摩擦の背景とリスクシナリオ』
 (渡邉 哲也 著:PHPビジネス新書 393) …2018年5月11日 第1版第1刷発行

の読みおさめとなる。沈静化どころか米中双方の応酬合戦が激しさを増して、米国の中間選挙までは膠着状態となりそうに見えている。大方米国を二分する中でトランプ支持層が根強い一方、半導体業界関連では今回の関税措置で多大な損害を被るとして政権&議会への反対の働きかけが続いている。
活況の半導体販売高にも冷め加減が見えている中、世界の政治・経済情勢の展開&推移に当分は目が離せない日々である。


第5章 米中対立から日本経済の「勝ちパターン」を読み解く ―――後半

■ポスト平成で真価が問われる日本経済

Q75:日本の製造業の生き残り戦略は?
・日本に求められるのは経済的な自立
 →現在、日本でつくられているものの多くは、日本でつくるのが有利であるか、または日本でしかつくれないものばかり
・携帯電話の例:特殊部品や製造機械の多くは日本製
 →商品の輸出先を最終消費地に変えればよい
・保護貿易色が強くなっている以上、今後は、最終消費地または同一経済圏内で製品をつくるほうが有利に
 →政府機関向けビジネスであるB to G分野で花を開き始めている
 →日本の電車車両や運行システムが世界でも採用され始め
 →まさに日本の「勝ちパターン」

Q76:日本が取り組むべきAI戦略は?
・人工知能(AI)にとって最も手強い敵は誰か
 →それは人間
・最も問題になるのが人権
 →誰が責任を取るのか
・中国や新興国の方がAIは普及しやすい、(著者は)見る
 →日本と比べて人権意識が希薄で、一人ひとりの人命に対する考え方が違う
・AIやインターネットを用いた応用技術というのは日々発達
 →省力化できる分野とできない分野がある
  →後者として法律はその一つ
   →解決するまでに多くのプロセスが必要
・日本として製造業のIoTを中心に地道に技術革新を進めていく
 →米中に対抗できる方法ではないか

Q77:世界トップになれる産業はズバリ何?
・日本の産業で最も優位性を発揮できる可能性を秘めているのが再生医療
 →山中伸弥教授のiPS細胞が有名、日本が最先端
・創薬の分野も期待できる
 →新しい薬をつくれる国は世界で7ヵ国程度
 →日、米、英、仏、独が大部分
・政府は2018年、革新的な創薬を創出する環境整備を進める「日本創薬力強化プラン」を作成
 →薬をつくることは産業であるという見方に変更
 →実現するには自国言語で高度な、大学や大学院レベルの教育を最後まで行なえることが大前提
  →米英仏独以上に日本は充実

Q78:TPPは日本の農業に追い風か?
・2018年3月8日、TPP参加11ヵ国が「包括的および先導的環太平洋連携協定(CPTPP)」に署名
 →5億人規模の貿易圏が誕生
・TPPで日本の農業の行く末は厳しいという声
 →しかし、当面は心配ない
 →中国の13億人を筆頭に世界中でいま食料が不足
・日本のコメと食感、食味が似ていて競争相手になりえるのはカリフォルニア米ぐらい
 →日本としては、おいしい米を高く売れる環境をつくるという強み
 →需要を拡大していく方向に向かうべき
 →中国人観光客が日本に来て購入している1位は炊飯器
・日本の農家は、価格を正確に反映させてマーケットで確実に売るための仕組みを早期に構築しなくては
 →日本農業再興の分かれ道に

Q79:少子高齢化は移民で解決できる?
・当面の課題は、少子高齢化による人手不足の問題
 →とくに人手不足が予測されるのが、物流業や、介護・看護、建設業
 →外国人など臨時の労働力で対応しようという安易な考えもあるが、外国人も共に年を取り、いつまでも安価で働いてくれるわけではない
・介護ひとつをとってもより良いサービスの提供には、お金と人が必要
 →人手不足の影響はすでに物流業でも
  →無料配達から有料に切り替える通販業者も
・バブル崩壊以降25年にわたるデフレの影響
 →結果的に日本社会の弱体化と貧困化を招いていた
 →値下げをするには、物流コスト、生産コスト、販売コストの圧縮が必要
  →不況倒産やリストラの原因に
 →利益の減少、賃金の下落で消費はさらに冷え込み
・デフレスパイラル現象、現在の日本の姿でも
 →最大の要因がグローバリズム
・グローバリズムからナショナリズムの時代に変わりつつある世界
 →デフレからの脱却を図ると同時に、「日本」を再び世界へ拡大する必要
・最大の問題は、デフレに慣れ切った日本人の感覚
 →日本は人的側面からも社会的側面からも変わらなくてはいけない時期を迎えている
 →求められる変化対応力

Q80:2023年、日本経済はどうなっているか?
・2019年4月30日、新天皇が即位、同時に改元も
 →ようやく激動の時代が終わり、日本は新しい時代へ
 →2020年の東京オリンピック・パラリンピックの後には、2025年に大阪万博が開催されるかも
・いまから5年後、両イベントの中間点の2023年は、日本経済の絶頂期になる可能性は高い
 →この時代を勝ち抜くためには、広い視野と正しい指針の下で、自らの頭で考え、判断する必要

[SUMMARY OF CHAPTER ――5年後を予測するヒント]
・日本の生産構造はB to Cモデルから、B to B、B to Gモデルに移行
 →アメリカの鉄鋼、アルミ輸入制裁の影響はほとんどない
・世界がグローバリズムからナショナリズムに移行
 →日本はデフレを克服し、製造業のIoT活用、創薬、農業に注力するべき

≪おわりに≫

・いかに新聞やニュースが報じる内容が「憶測」に基づいているか
 →報じられたら、なぜこれが起きたかと考える習慣をつけるといい
・本書で述べた80の要素が道しるべの一つになれば幸い

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