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先行きへの懸念と選択:市場の暗雲模様、最先端プロセス委託

米中摩擦が引き続くなか、アップルのiPhone販売不振による生産削減の見方が広がり、メモリ半導体価格の下落が相まって、にわかに市場の暗雲模様が度を増して漂ってきている全体的な様相が見られている。1つとして、北米半導体装置メーカーの10月の世界billingsが、5ヶ月連続で前月比減少、ここ11ヶ月で最低水準となっている。インテルの10-nmでの立ち後れが目立ってきている最先端プロセスの取り組みでは、IBMが次世代サーバ用にTSMCに生産委託する動きも見られている。先行きに向けて懸念の払拭を図る策を探る一方、容赦のない選択を推進していく現下の情勢を受け止めている。

≪求められる先々への打開≫

米中摩擦と設備投資の後回しが、半導体製造装置メーカーの業績見通しを厳しくしている状況がある。

◇半導体装置、業績踊り場、米中摩擦・投資遅延が重荷 (11月16日付け 日経 電子版)
→日米欧の半導体製造装置メーカー大手10社の2018年7〜9月期(一部は8〜10月期)決算は純利益が前年同期比で15%増となった旨。半導体メーカーの旺盛な設備投資に支えられたが、ただ、先行きには厳しい見方が台頭する旨。日本の6社のうち3社が業績予想を下方修正し株価も軟調。米中の貿易摩擦と設備投資の遅延という2つの要因が業績の重荷となっている旨。

米中摩擦は、APEC(アジア太平洋経済協力会議)の場でも応酬が展開されている。

◇APEC首脳会議が開幕、米中攻防が激化、通商で応酬-首脳宣言とりまとめは難航も (11月17日付け 日経 電子版)
→日米中など21の国・地域でつくるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が17日夜、パプアニューギニアで開幕した旨。これに先立つ関連会合では、米国のペンス副大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が通商政策を巡って批判の応酬を繰り広げており、首脳会議でも激しい攻防が予想される旨。

インテルのCPUs供給不足など不利な要因が折り重なって、マザーボードおよびグラフィックカードの来年前半に向けた展望を厳しいものにしている。

◇Motherboard, graphics card makers see bleak prospects for 1H19 (11月19日付け DIGITIMES)
→業界筋発。米中貿易戦争の渦中、仮想通貨分野での冷え込み継続、インテルCPUsの供給不足、および端末市場での購買意欲低迷など多くの不利な要因が2018年第三四半期にあらわれてきて、マザーボードおよびグラフィックカードの台湾のサプライヤは2019年前半を通してますます厳しいビジネス展望となる見込みの旨。該マイナス要因が2018年第三四半期におけるAsustek Computer, Gigabyte Technologyなどマザーボードあるいはグラフィックカードのpeerメーカーでの在庫水準を急激に引き上げて、peak seasonに向けた売上げが予想を下回ってくる旨。

半導体業界の下降に向かう局面の兆しを、Morgan Stanleyが指摘している。

◇Semiconductor firms may face inventory risks-Morgan Stanley: Inventory issues strike the chip industry (11月19日付け The Taipei Times (Taiwan))
→ここ数ヶ月車載、cloudおよび産業応用向けmicrochips弱含みを示しているMorgan Stanleyが、中国におけるTSMC、Hon Hai Precision Industry(Foxconn)などの株価を結果として格下げの旨。「今やスマートフォンsupply chainでも悪いニュースが見え始めており、それが半導体downcycleのインパクトを広げていく」と、同社アナリストがレポートにて。

月毎の指標であるSEMIの北米半導体装置メーカー10月世界billingsデータが以下の通り示されている。5ヶ月連続で前月比減少となり、ここ11ヶ月で最低の$2.06 billionと前年同月比2.0%増、二桁%増がこの5月まで続いていた経緯である。

◇North American Semiconductor Equipment Industry Posts October 2018 Billings (11月20日付け SEMI)
→SEMIのOctober Equipment Market Data Subscription(EMDS) Billings Report発。北米半導体装置メーカーの2018年10月世界billingsが$2.06 billion(3ヶ月平均ベース)、前月、2018年9月の最終レベル、$2.07 billionを0.9%下回り、2017年10月の$2.02 billionより2.0%増。
「北米装置サプライヤの10月billingsは、PC, 携帯電話およびサーバの需要の短期的な軟化を反映、加えて、メモリメーカーが最近のメモリpricing軟化に反応、投資を撤退させている。」と、SEMIのpresident and CEO、Ajit Manocha氏。
ここ半年の推移(金額:USM$):

Billings
Year-Over-Year
(3ヶ月平均)
May 2018
$2,702.3
19.0%
June 2018
$2,484.3
8.0%
July 2018
$2,377.9
4.8%
August 2018
$2,236.8
2.5%
September 2018 (final)
$2,078.6
1.2%
October 2018 (prelim)
$2,059.1
2.0%

   [Source: SEMI (www.semi.org), November 2018]

◇North American semiconductor equipment industry posts October 2018 billings (11月21日付け ELECTROIQ)

◇North America semi equipment industry billings fall to 11-month low (11月21日付け DIGITIMES)
→SEMI発。北米半導体装置メーカーの世界billingsの3ヶ月平均が、2018年10月において5ヶ月連続で前月比減少、ここ11ヶ月で最低の$2.06 billionとなっている旨。

メモリ半導体のトップ2サプライヤ、サムスン電子とSKハイニックスが大きく引っ張る韓国経済には、この市場の暗雲は想像を越える打撃である。そのインパクトの度合いを表わす韓国発の記事である。

◇【社説】半導体にも暗雲…革新がなければ韓国経済は沈没する (11月20日付け 韓国・中央日報)
→韓国経済を「一人で」支えてきた半導体産業に赤信号が灯っている。メモリ半導体であるDRAMの価格は下落し、輸出増加傾向も鈍化している。そのうえに、世界最大の半導体需要国である中国が「半導体崛起」を前面に出してサムスン電子とSKハイニックスなど半導体会社に対する寡占規制の動きを露骨に表している。ただでさえ経済展望が暗いのに半導体産業まで成長の勢いが落ちれば、来年の韓国経済に苛酷な北風が吹き付けるかもしれないという懸念の声が大きくなっている。政府の戦略である革新成長になるためにも規制緩和や労働改革、新しい成長産業の発掘などに積極的かつ迅速な対応が必要な理由だ。先月末を基準に半導体生産・販売会社などで構成されたフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は月初めより16.8%も急落。半導体価格はここへ来て下落傾向に転じた。

◇Semiconductor war: Korean makers should avoid falling victim to US-China fight (11月20日付け The Korea Times)
→米国と中国がグローバル半導体市場の席巻に向けて張り合っており、韓国の半導体メーカーが付帯的な損失に苦しむ情勢の旨。

iPhoneの販売不振の疑いが広がって、アップルショックのインパクトが生じている。

◇アップルショック、アイフォーン不振疑念拡大で (11月20日付け YOMIURI ONLINE)
→米アップル株の下落傾向が強まり、中国との貿易摩擦と並ぶ米株式市場の懸念材料となっている旨。アップルの売上高の約6割を占めるスマートフォン「iPhone」の販売不振を疑う見方が広がっているため。これまで相場を押し上げてきたハイテク株全体の変調の兆しではないかと身構える投資家も増えている旨。16日のニューヨーク株式市場で、アップル株の終値は193.53ドル。14日には186.80ドルまで下落、10月上旬につけた最近の高値(232ドル)から19%余り下がった旨。

世界の主要ハイテク株にも暗雲の波紋が広がっている。

◇世界の主要株、4割「弱気相場入り」、ハイテク目立つ (11月21日付け 日経 電子版)
→世界の主要企業の4割が過去1年間(52週間)の高値から直近で2割以上株価が下がり、「弱気相場入り」とみなされる水準となっている旨。19日には米アップル株が10月につけた高値から2割を超えて下落。世界景気の先行き懸念がくすぶる中で、こうした銘柄への売り圧力が相場の上値の重さにつながりそうな旨。米国市場などでは経験則から高値からの下落率が2割以上になると、上昇局面が終わり弱気相場に入ったことを示すとされる旨。高い株価で買った投資家から戻り売りが出やすいため。

iPhoneを製造する最大手、台湾のFoxconnは、事業削減およびレイオフの計画を打ち出している模様である。

◇Foxconn Reportedly Plans to Slash Billions in Costs (11月22日付け EE Times)
→Bloomberg news service発。contract manufacturing最大手、Hon Hai Precision(trade name、Foxconn)が、競合激化およびAppleによるiPhone生産削減への取り組み、2019年に約$3 billionのコストを削減する計画の旨。社内文書を引用した該Bloomberg記事は、Foxconnがここ12ヶ月にわたって約$6.7 billionを出資、同社は来年iPhone事業を$865 million削減、non-technicalスタッフの10%をレイオフする計画の旨。

◇Foxconn says R&D excluded from expense cut plan (11月23日付け DIGITIMES)
→費用削減についての懸念を払拭すべく、Foxconn Electronics(Hon Hai Precision Industry)が、削減対象としてビジネスadministration, プロセスおよび物流費用は含まれるが、R&Dおよび新製品開発には抵触しない旨。

次に、最先端プロセス委託に絡む先行きへの選択の動きであるが、元はと言えばインテルの最先端10-nmへの取り組みの立ち後れ、そして現下のCPU供給不足に端を発している。IBMが次世代サーバ用にTSMCに製造発注する動きまでも以下の通り見られている。

◇TSMC to challenge Intel data center dominance with IBM win-Taiwanese chipmaker hopes to wean itself off Apple and smartphones (11月19日付け Nikkei Asian Review)
→TSMCが、premiumサーバ半導体についてIBMから非常に重要な受注を得る運び、TSMCをhigh-valueデータセンター市場においてグローバル半導体メーカー、Intelに対する重要な挑戦者と確認している旨。IBMが望む半導体は、Appleの最新iPhonesにおけるcoreプロセッサを動かしており、業界最小そして最先端の半導体である旨。適在supply chain筋がNikkei Asian Reviewに曰く、IBMは同社次世代メインフレームサーバに入れるとしている旨。

7-nm対応の貢献でTSMCの2018年第四四半期は最高業績を記録しそうという見方になっている。

◇TSMC to see record 4Q18 revenues on more 7nm contribution (11月21日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCが、2018年第四四半期について最高の売上げを示す見込み、半導体分野の大方は米中貿易戦争の強まり、仮想通貨需要の弱含みそしてスマートフォン売上げの低迷から該四半期そして2019年すらも抑えめになっている旨。力強い7-nmファウンドリー受注および先端プロセスの売上げ比率の高まりがその見込みとなっており、2018年第四四半期売上げは四半期最高更新となりそうな旨。

7-nmの取り組みを中止したGlobalfoundriesからTSMCに製造委託先を切り換えたAMDについて期待する評価など、以下の通りである。

◇AMD Raises Hopes, Concerns at 7 nm-Researchers call for price relief, better GPU software-AMD's 7nm ambitions cause concern while raising hopes (11月21日付け EE Times)
→AMDの7-nm Epyc x86 CPUおよびVega GPU発表の波紋について。該半導体が、high-endプロセッサのコスト上昇を下げる期待とともに、最先端プロセス技術のreturns減少の例ともなり、accelerators向けopen-source codeの品質懸念を生じている旨。
 IntelおよびNvidiaでのhigh-end半導体の価格上昇で、TSMCの7-nmプロセスで製造されたAMD製EPYC CPUsおよびVega graphics processing units(GPUs)に目を向ける業界の向きがある旨。「AMD, Cavium/Marvell, Fujitsu, Ampereとどうか自分が見えるように。我々の科学は現状から苦しんでいる。」と、Englandの研究者がTwitterにて。

そのGlobalfoundriesからは、7-nm中止の釈明があらわされている。

◇Focus on stability: Q&A with Globalfoundries executives-GlobalFoundries execs: Customers crave stability (11月21日付け DIGITIMES)
→GlobalFoundriesにとって買収、統合そしてプロセス技術R&Dに追われた10年、それが7-nmプロセス開発を延期する決定の要因、と以下のGlobalFoundries executivesの3氏。
CTO and senior VP of worldwide R&D、Gary Patton氏グローバル販売&ビジネス開発senior VP、Michael Cadigan氏VP and 中国ユニットGM、Wallace Pai氏顧客製品の寿命が10年にも達するとすれば、財務の安定性が彼らの製品に向けたファウンドリー支援に重要になる旨。

アップルとともに当面目が離せないインテル・インパクトの実情が以下のまとめである。

◇パソコン景気、CPUが影、インテルの量産難航 (11月22日付け 日経 電子版)
→米インテルのCPU(中央演算処理装置)不足がパソコンや半導体の市場を揺らしている旨。インテルの最先端品の量産が思うように進まず、サーバ向けの供給を優先した結果、対戦競技「eスポーツ」や企業の働き方改革などで盛り上がるパソコンメーカー側の需要を満たせなくなってきた旨。このまま量産にてこずれば、パソコンや関連市場の回復に水を差しかねない旨。・・・回路線幅の呼び方はメーカーによって定義が異なるが、インテルの10-nmとTSMCの7-nmはおおむね同じ水準とみられている旨。TSMCは米アップルが9月に発売した「iPhoneXS」に搭載したチップですでに回路線幅7-nmの製品を量産しており、インテルは微細化の最先端をさらわれた格好の旨。


≪市場実態PickUp≫

【ISSCC 2019】

半導体デバイスのオリンピックと言うと、遠い昔の響きに年々なってきているが、ISSCC(International Solid-State Circuits Conference) 2019(2月17-21日:San Francisco)の概要が以下の通りあらわされている。大規模メモリが残るくらいで伝統的な色合いが薄まって、AI、5G、machine learningはじめ新分野、新技術が大きく前面を占めてきている。

◇AI, 5G, Big Memories Define ISSCC-ISSCC to feature papers on 5G, AI, bigger memory chips -Toshiba describes 1.33-Tbit NAND flash chip-Samsung, Intel detail rival 5G transceivers-Advances reported in DRAM, radar, and implants (11月20日付け EE Times)
→ISSCC 2019(2月17-21日:San Francisco)について:
 *machine learning, 高速ネットワークス, およびfatメモリがリード
 *SamsungとIntelから5G/LTE combo半導体の詳細
 *NANDフラッシュでは、東芝の1.33-Tbit半導体およびWestern Digitalの128-層
 *DRAMでは、SK HynixおよびSamsungがDDR5およびLPDDR5について
 *Samsungからスマートフォン用deep-learning accelerator
 *5-nm SRAMsあるいはテスト半導体の論文は今回なし。高速7-nm networking半導体はいくつか
 *もう1つの急変、flagship CPUsについての論文はなし

【中国での業界イベント】

対中国の馴染みを一層広く深める必要があることと感じるが、半導体はじめ業界関連の中国におけるイベントとして、Global CEO Summitの初回そしてグローバル通商セミナーが最近開催されている。

◇China Comes Down to Earth at CEO Summit (11月21日付け EE Times)
→800人以上が出席、inaugural Global CEO Summit(2018年11月8日:深セン)について。我々の大方には依然謎めく中国、face-to-face meetingsで我々の議論を憶測から行動に移す助けになり得るフォーラムが必要の旨。

◇SEMI Global Trade Seminar in China focuses on shifting U.S.-Sino relations-Meeting Attended by More than 100 Tech Company Representatives (11月21日付け ELECTROIQ)
→SEMIが今年、CompTIA(Computing Technology Industry Association)およびU.S. Information Technology Office(USITO)とともに、中国で2つのグローバル通商セミナーを主催、10月30日上海、11月1日北京の旨。

【AI半導体startups】

AI(人工知能)半導体についてstartupsの取り組みをいろいろ目にしてきているが、その第1陣が具体化したシリコンの生産段階に入っている以下の状況である。

◇AI Silicon Startups Report Traction -Graphcore shows Dell system, Intel leads $75 Habana round (11月19日付け EE Times)
→AI半導体startups第1陣が有望に思われるシリコンを擁して生産に今や入っているという年初の報告を補強、Graphcoreは、Dellと共同開発したシステムを披露、ライバルのHabanaは、Intel Capitalが主導する融資roundで$75 million獲得の旨。

◇AI Processor Startups Revelling-Graphcore cooperating with Dell, Habana funded by Intel Capital-and it's just the tip of the iceberg (11月20日付け EE Times India)

【サムスン電子の知財へのゆさぶり】

韓国の新聞(経済紙)、毎日経済新聞の日本語版記事より、サムスン電子が半導体・モバイル機器などの分野で知財関連の攻撃、乃至アプローチを受けている現況である。

◇サムスン電子をゆさぶる反独占・特許訴訟 (11月19日付け 韓国・毎日経済)
→サムスン電子は台湾のIT企業のCyWee(サイウィー)グループから、モーションセンサ・プロセッシング技術と関連して特許侵害訴訟を受けた旨。サムスン電子が世界市場シェア1位を占めて業界をリードしている半導体・モバイル機器などの分野で、今年に入って△反独占調査・訴訟、△合意金などを狙った特許トロール(patent troll)訴訟、△莫大な投資を通じたサムスン追従など、各種の牽制があふれている旨。
サイウィーは訴状で、「わが社はウェアラブルデバイスなどを活用してスクリーンを制御する入力装置の3Dポインティングデバイスと動作方法の特許を保有している」とし、「アルゴリズムが類似していることを含め、(サムスン電子の製品の動作原理は)6つの部門にわたって同一だ」と主張した旨。

【半導体IP盗用削減策】

米中摩擦の要因の1つに半導体IPの盗用があり、最近も米国による中国DRAMメーカーへの輸出禁止・起訴の展開が見られたばかりであるが、このIP盗用を如何に防ぐか、方策、戒めなど10項目が挙げられている。

◇Top 10 List for Reducing Threat of Semi IP Hacking-How to reduce the theft of semiconductor IP (11月19日付け Electronic Design)
→Smartflow Compliance SolutionsのCEO、Ted Miracco氏による世界的問題である半導体intellectual property(IP)の盗用を減らす方法以下10点。
IPのhackingを避けるためにスパイがやるように考える、との同氏忠告。
 1. Don't use pirated(海賊版) software. It's often laden with malware.
 2. Protect your network.
 3. Remember that protection is over-rated.
 4. Humans are the weakest link.
 5. Use strong license agreements.
 6. Leave digital fingerprints everywhere (for later forensic data analysis).
 7. Use tools like the Chip DNA Analysis.
 8. Provide awareness training for all employees.
 9. Hack your own organization.
 10. Work with foundries, who are a key to stopping semiconductor IP theft

【electronica 2018】

ミュンヘンで30年以上にわたり隔年開催され、世界のトップメーカーの最新技術と製品が勢揃いする、業界屈指のリーディングメッセといわれる国際コンポーネント・システム・アプリケーション専門見本市、「electronica 2018」(11月13-16日)から以下の抽出である。

◇Highlights of electronica 2018 (11月20日付け EE Times)
→electronica 2018(11月13-16日:Munich, Germany:隔年開催)について。
今年のテーマ:“Connecting everything - smart, safe & secure”。

◇Separating AI Hype From Reality (11月22日付け EE Times)
→electronica 2018(11月13-16日:Munich, Germany:隔年開催)でのCEO roundtableにて、NXP Semiconductorsのpresident、Kurt Sievers氏。AIは今日過度に宣伝されており、この不思議なものはどこの何たるか誰も知らないし、その定義はどうかも大方は分かっていない旨。


≪グローバル雑学王−542≫

観光旅行先の1つ、サイパン、そして天皇皇后両陛下が拝礼しておられるパラオご訪問のテレビ画面を思い起こす一方、付きまとう先の大戦での戦禍を知るところであるが、この島、諸島の両方を訪れた著者の目を通して、

『世界の路地裏を歩いて見つけた「憧れのニッポン」』
 (早坂 隆 著:PHP新書 1149) …2018年7月27日 第1版第1刷

より絶対に繰り返してはならない悲劇の歴史、光景に改めて迫っていく。我が命、我が身を捧げるに至る切迫した経緯には、本当にずしんと心の痛む内容を思い知らされている。その中でいまだ日本語が残っている現状にほっと救われる感じ方である。


第十章 サイパン・パラオ―――日本流委任統治の光芒

□日本統治時代を懐かしむ島民たち
・サイパン国際空港から島の中心部、ガラパンへ向かうバスの中、大粒の雨が忽然と
 →この島特有の激しいスコール、地面に突き刺さるような降り方
・サイパン島は、「北マリアナ諸島」に属し、「アメリカ合衆国の自治領」という位置づけ
 →小豆島くらいの大きさ
・この地に降りつける豪雨のように激しいこの島が辿った歴史
 →1521年、ポルトガル人の探検家、マゼランが発見、スペインの統治下に
 →1898年、米西戦争でこの島はドイツへと売却
  →流刑地として利用、島内は一挙に荒廃
 →1914年、第一次世界大戦が勃発、日本軍はドイツ軍に勝利、サイパン島を含む赤道以北の南洋諸島を占領
  →日本の委任統治領に
・サイパン島の日本語表記は「彩帆島」…島の雰囲気を見事に表わして巧みな当て字
 →日本は産業の振興やインフラ整備を積極的に推進
 →特に傾注したのが砂糖の生産
  →準国策会社、南洋興発株式会社を立ち上げ
  →初代社長、松江春次は、島内に映画館や劇場などを次々と建設
 →多くの日本人が移住、沖縄からは1万人近く。その他、朝鮮や台湾からの移民も
 →日本は教育制度の充実も図った
  →今も日本語を話せる島民が少なくない。日本統治時代を懐かしむ島民
  →委任統治政策がうまく機能していた証し

□バンザイクリフの悲劇は今も
・穏やかな時代は、大東亜戦争の始まりに伴い、終焉を迎えることに
 →米軍はサイパン島の奪取に大規模な戦力を注ぎ込んだ
  …新型の長距離爆撃機B29による日本本土への空襲が広く可能になるため
・1944(昭和19)年6月11日、米軍の多数の艦上機がサイパン島を空襲
 →13日からは艦砲射撃も、米兵の上陸が始まったのは15日から
 →熾烈な攻防戦が続いたが、奮戦虚しく日本軍は次第に窮地へ
 →24日には大本営が「サイパン島の放棄」を決断
 →中でも悲劇の地となったのが、島の最北端に伸びるマッピ岬
  …多くの民間人が身を投じた断崖は現在、「バンザイクリフ」と呼称されている
  →この岬の先が、ちょうど日本の方角にあたる
   …海の彼方にあるはずの故郷のぬくもりを追想しながら、彼ら彼女らは身を投じたのであろう
・突如として不快な喚声と哄笑
 →断崖周辺の平和記念公園内で、韓国人や中国人のツアー客の姿
 →(著者は)彼らとの間に存する歴史認識の溝が絶望的に深いことを改めて感じ、哀しき諦念を得るに至った

□「天皇の島」のサクラサクラ
・サイパン島に続く形で激戦の地となったのが、南西部に位置するパラオ諸島
 →サイパンと同様、第一次世界大戦後に日本の委任統治領に
・パラオで最も大きな町、コロール
 →日本側は、都市の整備に注力、産業も推進
・大東亜戦争開戦後、パラオは南方戦線の中継基地に
 →サイパン島が前述のごとく玉砕すると、パラオは次なる標的に
 →そんなパラオに赴任した司令官が、中川州男大佐
  →パラオ南部のペリリュー島に天然の洞窟を利用した地下壕を網の目のように
 →1944(昭和19)年9月15日、米軍はペリリュー島への上陸作戦を開始
  →日本軍の戦力は約1万、対するアメリカ側は約5万
 →この南方の孤島での戦況に対し、昭和天皇は毎朝、御下問されたという
  →「天皇の島」と呼ばれるように
 →11月24日、米軍の上陸部隊は、中川大佐のいる作戦司令部に肉薄
  →中川大佐は自決、享年46。最後の電文は玉砕を伝える〈サクラサクラ〉という言葉
 →27日、米軍はペリリュー島を占領。日本側だけでも1万人以上もの犠牲者

□立ったまま手を振り続けられた両陛下
・天皇皇后両陛下がパラオを行幸啓されたのは、「戦後70年」の節目にあたる2015(平成27)年4月のこと
 →(著者は)このご訪問に同行取材する僥倖に恵まれた
・出発の4月8日、関東地方には季節外れの雪
 →両陛下は羽田空港発のチャーター機に搭乗され、取材陣は同乗が許されていた
 →パラオ本島(パペルダオブ島)にあるロマン・トゥメトゥール国際空港までは4時間半ほどのフライト
  …パラオは日本のほぼ真南に位置、時差もない
 →空港からコロールまで用意されたバス、道の両脇にはパラオと日本の国旗を持つ現地の人々で埋め尽くされた
・翌朝、同行取材陣はペリリュー島へスピードボートで
 →1時間ほどで、ボートはペリリュー島の小さな桟橋へ着岸
 →両陛下の乗られた大型ヘリコプターの到着を待った
 →ついに「天皇の島」の大地を、両陛下が踏みしめられた
 →その後、島の最南端、ペリリュー平和公園内の「西太平洋戦没者の碑」へ向かわれた
 →到着された両陛下は、二人寄り添うようにして静かに慰霊碑へ、白菊の花を献花
 →ペリリュー島と同じく多数の犠牲者が出た近隣のアンガウル島に向かって深々と拝礼された
 →その後、両陛下は生存者や遺族の方々と対面された
 →移動のバスに戻られて、立ったままずっと手を振り続けておられた

□パラオ語の中に組み込まれた日本語
・同行取材陣は両陛下とともに帰国したが、(著者は)パラオ本島に残り、追加の取材を続けることに
 →現在のパラオの人口は2万人ほど、公用語は英語とパラオ語
・パラオ語の中に組み込まれて使用されている日本語も多い
 →「ヨロシク」「ダイジョウブ」「デンワ」「センプウキ」「ベンジョ」
・食事にも日本時代の名残りを感じさせる
 →白米も一般的:マグロなどの刺身も食卓に:スーパーマーケットには醤油やワサビ、納豆、日本のお菓子などが豊富に
・コロールの中心地の野球場、「アサヒ・スタジアム」
 →日本時代の痕跡
 →イチロー選手は、パラオの野球少年たちの憧れの的

□神事としての「慰霊の旅」
・ペリリュー島へも改めて渡ってみた
 →かつて日本兵たちが立て籠もった地下壕へ
  →漆黒の闇と四方から押し寄せる独特の圧迫感
  →どこの国でも闇は同じ色
・先人たちがここで生きた証しを前に
 →他にどうすることもできないまま、静かに手を合わせた
 →この島で命を散らした約1万人の日本兵のうち、およそ2600柱ものご遺骨が未だに地下壕に眠っているという
・両陛下が供花された「西太平洋戦没者の碑」にも改めて足を運んで、立ってみる
 →今回の両陛下のご訪問がまさに神事であったことにようやく思いが至った
 →神話の中に迷い込んだかのような感覚の中、祭政一致を基にした建国以来の日本史の重みに震える思い

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